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   紅 藻 ツ ル シ ラ モ Gracilariac カ orda Holmes (Gracilariaceae ,Rhodophyta) の再生に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 水 産 学 ) 村 岡 大 祐

     学位論文題名

   紅 藻 ツ ル シ ラ モ Gracilariac カ orda Holmes (Gracilariaceae ,Rhodophyta) の再生に関する研究

学位論文内容の要旨

  

再生とは個体の一部が失われた際に,それに該当する部分が復元 される現象をいい,単細胞・多細胞生物を問わず広く生物界に認め られる修復現象である。

  

紅藻オゴノリ属植物(Gracilaria)は熱帯から温帯に広く分布する 海藻で,強い再生カを持つことが知られている。藻体の細胞間には 寒天成分のアガ口ースを大量に含んでいるため,寒天原藻としての 需要が高く,現在では世界の寒天原藻の約60%を担っている。この 需要に伴い世界各地で様々な方法による増養殖が行われているが,

その中でも口ープに切断した藻体を挾み込む方法,あるいは藻体片 を地まきする方法は,本属植物の強い再生カを利用した最も効率が 良い増養殖の手段として広く採用されている。

  

本研究ではツルシラモ(Gracilaria chorda)の藻体片を培養によっ て再生させ,その形態形成の過程を詳細に観察した。さらに,基質 への接触,再生枝の切断,水温,光周期などが再生におよぼす影響 について実験し,本属植物の繁殖,および増養殖に重要な役割を果 た す 再 生 現 象 に つ い て 以 下 の 点 を 明 ら か に し た 。

  

培養実験に先立ち天然藻体を観察した結果,傷害を受けた部位に は傷害組織(傷害を受けた部位を覆う,皮層状の組織)と再生枝(傷 害部位に形成される新しい枝)の形成が頻繁に起こっていることを 確認した。

  

本種の主軸,および第一側枝から切り取った藻体片(円柱状,直 径約

Imm

,長さ

Smm)

を培養した結果,傷害組織は先端側(藻体片

(2)

の両切断面のうち,元の藻体の先端側)と付着器側(両切断面のう ち,元の藻体の付着器側)の両切断面に形成された。先端側切断面 の傷害組織は3−4層の細胞から成る皮層状の形態を示したのに対し,

付着器側切断面の傷害組織は,縦方向の分裂により藻体片内で細胞 塊にまで発達した。しかし,再生枝(平均2.5本)は先端側切断面の 縁辺部からのみ形成され,付着器側切断面から生じることはなかっ た。以上の観察から,本種の藻体片の先端側と付着器側切断面の間 には,、形態形成上明瞭な極性が存在することを明らかにした。さら に,藻体から皮層組織だけを方形に切り取って培養した場合でも,

先端側の一辺からのみ再生枝を生じ,極性がなお維持されているこ とを示した。

  

先端側,または付着器側切断面を常に基質に接触させた状態で培 養した結果,付着器側切断面からのみ仮根様組織が発達して基質に 着生した。さらに,その仮根様組織からは直立体が発出した。一方,

先端側切断面では,生じた再生枝の伸長が抑制されたのみで,接触 刺激に対する形態形成の反応でも両切断面に極性が存在することを 示した。

  

藻体片の培養で生じた再生枝をすべて切断した場合,藻体片本体 の先端側切断面から新たな再生枝を形成した。しかし,再生枝を1―2 本残した場合,新たな再生枝を生じることはなく,本種の再生枝形 成が残された再生枝によるアピカルドミナンス(頂芽優勢)の支配 を受けていることを示唆した。

  

長さ1―30mmの藻体片を培養し,再生に伴う生物量の変動を測定 した結果,総生物量(藻体片,再生枝,再生側枝を合わせた重量)

の増加は藻体片が長い場合ほど大きかった。特に30mmの藻体片で は再生枝の他に藻体片の側面から多数の再生側枝を生じ,再生枝形 成に次ぐ二次的な生長として生物量の増加に寄与していた。一方,

藻体片の単位重量あたりの増加率は藻体片が短いほど大きかった。

以上の結果は,本種を増養殖する際に,藻体片の大きさを再生側枝 を形成する長さにすることが種苗として有効であることを示した。

(3)

  

藻体の様々な部位から切り取った藻体片を培養したところ,主軸,

側枝ともに下部由来の藻体片で総生物量の増加率が大きく,上部ほ ど低かった。一方,藻体片本体の増加率は逆に上部由来の藻体片で 大きく,中央部,下部のものでは小さい値を示した。この差異は,

各々の藻体片を構成する細胞の細胞年齢を合めた生理状態の差によ るものと考える。

  

藻体片を温度,および光周期条件を変えて培養した場合,藻体片 の状態(長さ,藻体の部位など)に関わりなく,温度では

20

℃で,

光 周 期 で は

20L4D

で 総 生 物 量 の 最 大 増 加 率 を 示 し た 。

  

傷害組織の形成過程を透過型電子顕微鏡で観察し,以下の結果を 得た。藻体に傷害を与えると直接切断された細胞からは核と細胞質 が流失したが,それに直接接する細胞(隣接細胞)は正常な状態に 維持されていた。切断後1‑2日以内に隣接細胞の核と細胞質は切断 面側に移動し,さらに隣接細胞のゴルジ体は増加すると同時に,多 数の分泌小胞を細胞膜と細胞壁の間に放出した。隣接細胞には同時 に多数の多胞体や分裂中の葉緑体も見られた。切断2日目,隣接細 胞で最初の細胞分裂が起こった。分裂は周囲に細胞質を伴った分裂 溝が細胞の両側から求心的に伸長することによって進み,複数核の うち一個を取り込んで新細胞を形成した。本種の細胞は多核である ため,新細胞の形成には核分裂を伴わず,一個の隣接細胞が同時に 複数の新細胞を形成した。新細胞はさらに分裂を繰り返し,切断24 日以I勺に切断而を覆う傷害組織を形成した。ホ稲り新f‖胞形成,お よびその後の傷害組織の形成に至るまでの時間は他種と較べて早か った。これは本種が新細胞形成の際に核分裂を必要としない多核細 胞で構成されていることによるものと考える。また,切断面に露出 した全ての隣接細胞でこの様な新細胞が形成されたことから,分裂 能カを持たないと考えられてきた体の中心部を構成する髄層細胞を 含めて,全ての細胞が傷害という環境変化に反応して新細胞を形成 する潜在能カを有することを確かめた。傷害組織を完成した後,先 端側切断面からは再生枝を,付着器側切断面からは仮根様組織を形 成した。

    ‑ 1040

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

山 本 弘 敏 山 崎 文 雄 中 尾    繁 安 井    肇

、   学位論文題名

   紅 藻 ツ ル シ ラ モ Gracilariac カ orda Holmes (Gracilariaceae , Rhodophyta) の再生に関する研究

  再 生 と は 個 体 の 一 部 が 失 わ れ た 際 に , そ れ に 該 当 す る 部 分 が 復 元 さ れ る 現 象 を い い , 単 細 胞 ・ 多 細 胞 生 物 を 問 わ ず 広 く 生 物 界 に 認 め ら れ る 修 復 現 象 で あ る 。 し か し , 海 藻 の 再 生 に 関 す る 知 見 は 極 め て 少 な い 。

  本 研 究 で は ツ ル シ ラ モ (Gracilaria chorda)の 藻 体 片 を 培 養 に よ っ て 丙 生 さ せ , そ の 過 程 を 詳 細 に 観 察 し た 。 さ ら に , 基 質 へ の 接 触 , 襾 凵 ニ 枝 の 切IVr, 水 温 , 光 川j切 な ど が 丙 生 に お よ ぽ す 影 響 に つ い て 実 験 し , 本 屈 植 物 の 繁 殖 , お よ び 増 養 殖 に 重 要 な 役 割 を 果 た す 再 生 現 象 に つ い て 以 下 の 点 を 明 ら か に し た 。

  本 穏 の 主 軸 , お よ び 第 一 側 杖 か ら 切 り 取 っ た 藻 体 片 ( 円 柱 状 , 直 径 約 Imm, 長 さ Smm)を 培 養 し た 結 果 , 傷 害 組 織 は 先 端 側 ( 藻 体 片 の 両 切 断 而 の う ち , 元 の 藻 体 の 先 端 側 ) と 付 着 器 側 ( 両 切 断 面 の う ち , 元 の 藻 体 の 付 着 器 側 ) の 両 切 断 面 に 形 成 さ れ た 。 先 端 側 切 断 面 の 傷 害 組 織 は 34層 の 細 胞 か ら 成 る 皮 層 状 の 形 態 を 示 し た の に 対 し , 付 着 器 側 切 断 而 の 傷 害 ネfL織 は , 縦 力 向 の 分 裂 に よ り 藻 体 片 内 で 細 胞 塊 に ま で 発 達 し た 。 し か し , 再 生 枝 ( 平 均2.5本 ) は 先 端 側 切 断 面 の 縁 辺 部 か ら の み 形 成 さ れ , 付 着 器 側 切 断 面 か ら 生 じ る こ と は な か っ た 。 以 上 の 観 察 か ら , 藻 体 片 の 先 端 側 と 付 着 器 側 切 断 面 の 間 に は , 形 態 形 成 上 明 瞭 な 極 性 が 存 在 す る こ と を 明 ら か に し た 。   先 端 側 , ま た は 付 着 器 側 切 断 面 を 常 に 基 質 に 接 触 さ せ た 状 態 で 培 養 し た 結 果 , イ 丶JI着 器flIJ切 断 面 か ら の み 仮 根 様 糾 織 が 発 達 し て 基 質 に 着 生 し , そ の 仮 根 様 組 織 か ら 直 立 体 が 発 出 し た 。 一 方 , 先 端 側 切 断 面 で は , 生 じ た 再 生 枝 の 伸 長 が 抑 制 さ れ た の み で , 接 触 刺 激 に 対 す る 反 応 で も 両 切 断 面 に 極 性 が 存 在 す る こ と を 示 し た 。

(5)

けていることを示唆した。

  艮さ1・30mmの藻体H.を培養し,両生に伴

した糸I|i栄,総′lt物瞰(藻仆)1.,|い!1!枝,llj!I J心 カ |Iは 藻 仆H. が 艮 い ほ ど 犬 き か っ た 。 特 に 生枝の他に藻体片の側面から多数の再生側枝

に寄与していた。一方,藻体片の単位重量あ

物量の変動を測定 を 合わせた

m

瞰)

m

の 藻体片では再 じ,生物量の増加 の増加率は藻体片

,主軸,

上 部 ほ 体 片 で 異 は , 差 に よ

光周期では20L4Dで総生物量の最大増加率を示した。

  傷 害 組 織 の 形 成 過 程 を 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 で 観 察 し た 。 藻 体 に 傷 害 を 与 える と1虹 接叨 断 さ れた 舖 川包 か ら は核 とr1JJ包 質が流失し たが,そ れ に 接 す る 舖 川 包 ( 隣 接 細 胞 ) は 正 常 な 状 態 に 維 持 さ れ て い た。 切 断 1‑2日 以 内 に 隣 接 細 胞 の 核 と 細 胞 質 は 切 断 面 側 に 移 動 し , さ ら に 隣 接 翁ll胞 の ゴ ル ジ 体 は 増 加 す る と 同 時 に , 多 数 の 分 泌 小 胞 を 細 胞膜 と 細 胞 肇 の 問 に 放iillし た 。 隣 接 細 胞 に は 同 時 に 多 数 の 多 胞 仆 や分 裂 Lい の 葉 緑 仆 も 見 ら れ た 。 切 断2日 目 , 隣 接 斜Il胞 で 最 初 の 細 胞 分裂 が 起 こ っ た 。 分 裂 は 周 囲 に 細 胞 質 を 伴 っ た 分 裂 溝 が 細 胞 の 両 側 か ら 求 f向 に ャ い 長 す る こ と に よ っ て 避 み ,複 数 核の う ち 一個 を 取 り込 ん で 新 細1胞 を形iに し た。 ホ 穏 のgni胞 は多 核 で あるため ,新鮒11胞の 形成に は 核 分 裂 を 伴 わ ず , 一 個 の 隣 接 細 胞 が 同 時 に 複 数 の 新 細 胞 を 形 成 し た 。 新 細 胞 は さ ら に 分 裂 を 繰 り 返 し , 切 断24日 以 内 に 切 断 面 を 覆 う 傷 害 組 織 を 形 成 し た 。 切 断 面 に 館 出 し た 全 て の 隣 接 細 胞 で こ の 様 な 新 細 胞 が 形 成 さ れ た こ と か ら , 分 裂 能 カ を 持 た な い と 考 え ら れ て き た 髄 層 細 胞 を 含 め て , 全 て の 細 胞 が 傷 害 に 反 応 し て 新 細 胞 を 形 成 す る潜Z『.fjヒ丿亅をイ・j.することを碓かめた。傷害組織を完成した後,先端 側 切 断 面 か ら は 丙 生 枝 を , 付 着 器 側 切 断 面 か ら は 仮 根 様 組 織 を 形 成

2 l

     

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