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坦 癌 ラ ッ ト に 対 す る 低 線 量 全 身 照 射 の 効 果

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Academic year: 2021

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(1)

     博 士 ( 医 学 ) 橋 本 井 子      学 位 論 文 題 名

坦 癌 ラ ッ ト に 対 す る 低 線 量 全 身 照 射 の 効 果

―肺転移の抑制と腫瘍局所での抗腫瘍効果ー

学位論文内容の要旨

    「対象および方法」

  予備実験としてin vitroでの可移植性の肝細胞癌(KDH.82の放射線感受性を測定した。

WKAHラ ッ ト の 右 足 の 筋 肉 内 に 、KDH・8細 胞 を5xln5個 移 植 し た 。  腫 瘍移 植 後 14日目 で、各群5匹づっ放射線照射方法により6群に分けた。照射なしで麻酔と固定だ けを行った群(第1群)を対照群とし、全身照射群(第2群゜)では、ラットの全身が含 まれ るように15x15cmの照射野 でO.2Gy/1回の照射を行った。局所照射併用群(第3 群) では、0.2Gyの全 身照射終了 後4時 間以内に、腫瘍以外の部分を鉛ブロックで遮 蔽し3x3cmの照射野を用いて腫瘍局所が10Gyになるように照射した。局所照射群では、

腫 瘍 局所 の みに0.2Gy(第4群) も し くは10Gy(第5群 )の1回照 射 を行 っ た。 ま た、全身照射の肺転移に及ぼす影響が照射による肺組織の変化によるものかどうかを確 認す るために、 肺を鉛で遮 弊した状態 で0.2Gyの全身照射を行い(第6群)、肺遮弊 なしの群(第2群)と比較した。  各群ごとに|連目移植腫瘍の径を測定し、腫瘍体積 の経 時的変化を観察した。また、移植後14日(治療前)、15日、17日、21日、50日の 腫瘍組織を摘出し、ヘマトキシリン一工オジン(H・E)染色により、腫瘍内の変化を組織 学的に検討した。50日目に屠殺したラットで,肺およびりンバ節への転移巣の数とサイ ズを比較した。

「結果」

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(2)

    in vitroでは、1.OGy以下の低線量照射はKDH−8細胞の増殖に影響を与えなかった。

    全身照射単独群では、照射後2〜7日目までは移植腫瘍の成長がわずかに抑制され たが、効果は一時的で、その後腫瘍サイズは対照群と同様の経過で増大し、両者に差は なかった。全身照射併用群では、10Gy局所照射単独群に比べて、移植腫瘍に対する抗 腫瘍効果の有為な増強はみられなかった。

  腫瘍組織のH‑E染色像をみると、全身照射群では、治療後3から7日目に多数のりン バ球系の浸潤細胞が出現していたのに対し、対照群(無治療)では、侵潤細胞は見られ なかった。ioGy局所照射単独群では、腫瘍細胞のほとんどが壊死に陥り、腫瘍組織内 に線維化と顆粒球系の細胞侵潤がみられたが、細胞侵潤の程度は全身照射群には及ぱな かった。0.2Gy局所照射群では、対照群と差がなかった。全身照射併用群では、局所 照射単独群と同様に腫瘍細胞の壊死はみられたが、単独群に比ベ、細胞侵潤の程度が強 く、リンノヾ球系細胞の侵潤も多くみられた。しかし、単独群に比ベ線維化の程度は少な かった。

  局所照射単独群では、移植腫瘍の増大が抑制されたため、転移も抑制された。全身照 射群では、対照群に比して移植腫瘍のサイズに変化がないにもかかわらず、肺とりンノヾ 節への転移が有意に抑制された.

  また、肺遮蔽の有無に関わらず全身照射群では同様の転移の抑制効果が得られ,一方 0.2Gyの局所照射では転移の抑制はみられなかった。

「考察」

  全身照射による抗腫瘍効果発現機序については、in vitroでの放射線感受性試験の結果 と,めVI VOでの抗腫瘍効果を比較すると,放射線治療による効果が,腫瘍細胞に対する 直接作用(細胞障害作用や増殖抑制作用)だけでは説明できず,宿主の反応が重要と考 えられた。局所照射でも、めレf troで細胞死が起こるより低い線量で,めvfVOで抗腫瘍効 果が得られることは古くから知られており、照射により腫瘍細胞自体に変化が起き,腫 瘍細胞の抗原性が変化することで抗腫瘍免疫が賦活されるという報告もある。しかし、

0. 2Gyの局所照射では抗腫瘍効果はみられないことから、KDHー8細胞に対する照射の直 接効果は無視できると考えられた。

  治療方法と抗腫瘍効果については、これまでの研究によりKDH―8坦癌ラットでは、腫 瘍移植後14〜21日で宿主免疫抑制がピークとなることが判っている。従って、移植腫瘍 の生着が確認でき、肉眼的にはまだ肺転移が出現していない時期に治療を行うよう実験 を設定した。全身照射後3日目で移植腫瘍内にりンバ球系の浸潤細胞が出現し、転移が 抑制されたことから、免疫系の関与する抗腫瘍効果が現われることが示唆された。照射 時の移植腫瘍径は15 mmと大きく、免疫系の賦活による抗腫瘍効果だけでは、移植腫瘍 を制御することはできない。しか′し、転移の抑制効果と組織学的効果(浸潤細胞の増加)

から、局所の腫瘍がより小さい時期に治療すれば局所腫瘍も制御可能かと思われる。

  照射回数の効果では、1回照射では、その効果は7日程度しか持続しないことが示唆 された。繰返し照射を行なうと,腫瘍の縮小や転移の抑制効果がさらに増強するのかど うか、至適な線量、繰り返し回数、照射間隔を検討することが今後の課題と考えられる。

  本実験では、漸進照射により転移が抑制された。肺への照射が肺に問質性肺炎様変化 をもたらすことは古くから知られており、今回の実験系でも,全身照射後の肺組織では 問質の肥厚や細胞浸潤など問質性肺炎様の変化がみられた。しかし、肺を遮弊した場合 にも同様の抗転移効果が得られ、肺転移のみならず、リンバ節転移も同様に抑制された、

従って、転移抑制の機序については、肺組織の変化だけではなく、全身的な免疫系の賦 活 効 果 が 転 移 の 抑 制 に 重 要 な 役 割 を 演 じ て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。

(3)

「結論」

  全身照射後の腫瘍組織内に著明なりンバ球を主体とする浸潤細胞の増加が見られ、転 移が抑制されることから,リンバ球系の細胞が全身照射の抗腫瘍効果に重要な役割を演 じていることが示唆された。

(4)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査    教 授    宮 坂 和 男 副査    教 授    細川 真澄男 副 査    教 授    玉 木 長 良

     学位論文題名

坦 癌 ラ ッ ト に 対 す る 低 線 量 全 身 照 射 の 効 果      ―肺転移の抑制と腫瘍局所での抗腫瘍効果一

  本研究の目的は、低線量全身照射をBRM(Biological Response Modulator)とし て癌治療に応用可能かどうか検討することにある。

  WKAHラッ トの右足の 筋肉内に可 移植性の肝細胞癌(KDH‑8)細胞を移植し、

14日目に、各群5匹づっ放射線照射方法により6群に分けた。照射なしで麻酔と 固定だけを行った無治療群(第1群)を対照群とし、全身照射群(第2群)では、

全身にO. 2G y/l回の照射を行った。局所照射併用群(第3群)では、0.2Gyの全 身照射終了後、腫瘍以外の部分を鉛ブロックで遮弊し、腫瘍局所が10Gyになる ように照射した。局所照射単独群では、腫瘍局所のみに0.2Gy(第4群)もしく は10Gy(第5群)の1回照射を行った。また、全身照射の肺転移に及ぼす効果が 肺へ の照射によ るものかど うかを確認するために、肺を鉛で遮弊した状態で 0.2Gyの全身照射 を行い(第6群) 、肺遮弊な しの群(第2群)と 比較した。

  各群ごとに連目移植腫瘍の径を測定し、腫瘍体積の経時的変化を観察した。

また、摘出した腫瘍組織のへマトキシリンーエオジン染色により、腫瘍ないの変 化を組織学的に検討した。50日目に屠殺したラットで、肺およぴりンバ節への 転移を各群で比較した。

  予 備 実 験 と し てKDH‑8細 胞 のin vitroで の 放 射 線感 受 性を 測 定し た 。   in vitroにおいて0.2Gyの低線量照射は腫瘍細胞の増殖に影響を与えなかった。

(5)

  移植 腫瘍に対す る局所効果をみると、全身照射単独群では、0.2Gyでも、移 植腫瘍の増大が一時的に抑制され、治療後24時間後から7日目に腫瘍組織内に多 数のりンバ球系の侵潤細胞が確認された。無治療の場合、腫瘍内にほとんど侵 潤細 胞は見られ なかった。0.2Gy局所照射群では、無治療群と差がなかった。

lOGy局所照射単独群では、局所腫瘍の増大は50日目まで抑制され、腫瘍細胞の ほとんどが壊死に陥り、腫瘍組織内に線維化と顆粒球系の細胞侵潤がみられた が、細胞侵潤の程度は全身照射群におよばなかった。10Gy局所照射に全身照射 を併用しても、抗腫瘍効果の増強はみられなかった。

  転移に対する効果について、lOGy局所照射単独群では、移植腫瘍の増大が抑 制されたため、転移も抑制された。全身照射群では、無治療群に比して移植腫 瘍のサイズに変化がないにもかかわらず、肺とりンバ節への転移が有意に抑制 された。また、肺遮弊の有無にかかわらず、全身照射群では同様の転移の抑制 効 果 が 得 ら れ 、0. 2Gyの 局 所 照 射 で は 転 移 の 抑 制 は み ら れ なか っ た。

  口頭発表に際し、玉木教授より侵潤細胞の種類と役割について、細川教授よ り他の免疫学的指標の変化の有無について、長嶋教授よルラヅトと人間の放射 線感受性の違いと他の腫瘍系や他の免疫賦活剤の場合について、菊池講師より 胸腺だけに照射されても同様の効果があるかについて、宮坂教授より実験の成 果を臨床に応用する場合の可能性と問題点について質問がなされた。申請者は、

同じ 実験系で行 った免疫染 色の結果や サイトカインのmRNAの検討結果などを 引用し、概ね妥当な回答を行った。

  これまでも低線量全身照射の研究はなされていたが、本研究のように、固形 癌の坦癌動物モデルで低線量全身照射の抗腫瘍効果を証明し、詳細な実験によ って発現の機序について検討を加えた研究は少なく、学位論文に値するものと 判断した。なお、本論文は学会でも高い評価を受け、御園生賞受賞論文となっ た。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得 単位なども併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有する     ‑ 375一

ものと判定した。

参照

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