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CyclospprnA の創傷治癒に与える影響に関する基礎的検討 博士(医学)大久保哲之

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 大 久 保 哲之

学 位 論 文 題 名

CyclospprnA の創傷治癒に与える影響に関する基礎的検討

    学位 論文内 容の 要旨 Iは じめに

  各種 の外科 手術に おける 創傷 治癒は 重要な 課題で ある が,と くに移 植手術では移植組織片の生 着不全 を防 止する ことが 最優先 であ る。移 植手術 では免 疫抑制 剤が 投与さ れるが,免疫抑制が創 傷 治癒 に 与 え る 影響 に っ いては 十分に 検討さ れてい ない 。本研 究ではcarrageenan,抗‑ asia‑

lo GM1抗 体 ,CyclosporinA( 以 下CSA)を 投 与 し 創 傷 治 癒 過 程 に 与 え る 影響 に っ い て 検討 した。

u材 料 と 方 法   1. 実 験動 物

    使 用 動 物は 体 重20から22gのC57 BL/6マ ウ ス,6週 齢 か ら10週 齢 の雌 を 用 い 創 傷 を作 製   ( 作 創 ) し た。 創 傷 治 癒 の 評価 は , 創 抗 張カ と 創 局 所 に折 出 す るhydroxyproline( 以 下 OHP)の定 量 お よ び 組 織像 を 用 い た 。

  2. 免 疫抑 制 の 方 法     1) carrageenanの 投 与

    macrophage( 以 下M¢ ) を 抑 制 す る 目 的 で ,carrageenanを 投 与 し た 。A群 (8匹 )     に はcarrageenan 10mg/kgを 作 創 の4日 前 ,1日 前 ,1日 後 ,4日 後 に腹 腔 内 投 与 し,B     群 (8匹 ) は コ ン ト 口 一 ル 群 と し て 生 理 食 塩 水0. 2紺 /bodyを 同 様 に 投 与 し た 。     2)抗 ―asialo GMl抗 体 の投 与

    natural killer cell( 以 下NK細 胞 )を 抑 制 す る 目 的で , 抗‑ asialo GMl抗 体を 投与 し     た 。A群(8匹 ) は 抗 ―asialo GM1抗 体10mg/kgを 作 創 の4日 前 ,1日 前 ,1日 後 ,4     日後 に 腹 腔 内 投 与し ,B群 (8匹 )は コント 口ール 群と して生 理食塩 水0. 2mE/b odyを同     様に 投 与 し た 。

    3) CSAの 投 与

(2)

    a)CSA投 与 量 の 検 討 :Thelper lymphocyte( 以 下helperT細 胞 ) 機 能 を 抑 制 す る 目 的 でCSAを 投 与 し た 。CSAは 原末 を98% 工夕 ノ ー ル で 溶解 後Intraliposで 希 釈 した 。 以 下 の4群 に 分 け ,A群 (8匹 ) はCSAl. Omg/kgを 作 創 の4目 前 ,1日 前 ,1日 後 ,4日 後 に 腹 腔 内 投 与 し た 。B群 (8匹 ) はCSAl0. Omg/kg,C群 (8匹 ) はCSA100. Omg/kgを 同 様 に 投 与 し た 。D群 (8匹 ) は コ ン ト 口 ー ル 群 と し てIntralipos0. 2mE7bobyを 同 様 に 投 与 し た 。     b)CSA連 日 投 与 の 検 討 : 以 下 の4群 に 分 け た 。A群(10匹 ) ,B群 (10匹 ) はCSA40.

    Omg/kgを作 創 の7日 前か ら14日 後ま で 連 日 腹 腔内 投 与 し ,C群 (10匹 ),D群 (10匹 ) は     Intralipos0. 2mE7bodyを 同 様 に投 与 し た 。2週 目 にA群 ,C群 で は 新鮮皮 膚引 つ張り 試験     を ,B群 ,D群 で は10%form alinに72時 間 固 定 後 に 引 つ 張 り 試 験 を 行 っ た 。     c)TGF‑口 投 与 の 影 響 : 以 下 の4群 に 分 け ,A群 (10匹 ) ,B群 (10匹 ) はCSA40.O     mg/kgを 作 創 の7日 前 か ら14日 後 ま で 連 日腹 腔 内 投 与 した 。C群 (10匹) ,D群(10匹 )は     Intralipos0. 2樹 /bodyを 同 様 に 投 与 し た 。 更 に 作 創3日 後 に ,A群,C群 に はTGF‑声     2.5餌 g/kg,B群 ,D群 に は 生 理 食 塩 水O.2m8/kgを 創 局 所 に 投 与 し た 。   3.作創

    作 創は工 一テル 麻酔 下に背 部皮膚を剃毛した後,皮膚組織に達する約4 cmの縦切開をおいた。

  創 上 端 に 皮下 ポ ケ ッ ト を作 成 し ,OHPを 測 定 す る目 的 で20mgのpolyvinyl alcohol sponge   を 挿 入 後 , ミ ハ エ ル 針 に て 縫 合 閉 鎖 し た 。 抜 糸 は 作 創 後1週 目 に 行 っ た 。   4.創抗 張カ の測定

    2週目 あ る い は3週 目 に 犠 牲 死さ せ , 創 を 中心 に 皮 膚 を 巾2 cm長 さ4cm採 取し , 両 端 を4x   2 cmの サ ン ド ペ ーパ ー と ア 口 ンア ル フ ァ で 固定 し ダ ン ベ ル 型と し た 。 そ の後 , 島 津auto‑

  graph SD形にて 皮膚引 つ張 り試験 を行い 創抗張 カを 測定し た。

  5. OHPの 定料

    20mg sponge中 に含 まれるOHP量 をWoessner法を用 いて測 定した 。   6.組織 学的 検討

    2週 目 ,3週 目 に お い てhematoxyline ‑*eosine染 色 ( 以 下H.E. 染 色 ) お よ びmasson   trichrome染 色によ って組 織学的 検討 を加え た。

  7.統計 学的 処理

    統 計 学 的 処 理 はStudentt・testを 用 い 危 険 率5% 以 下 を 有 意 と し た 。

(3)

m結  果

  1. carrageenan投与群

    創抗張カは,A群では2週目634土89g(mean土S.E.),3週目748土82g,B群では,

  2週目976土46g,3週目1225土104gであり,A群はB群に比較して2週目,3週目ともに有 意に創抗張カが低下していた(PくO. 05)。OHP.量はA群では2週目188土33〃g,3週目22   l土34ロg,B群では2週目166土34Ug,3週目272土34Ugであり,A群,B群間に差はな かった。

  2.抗―asialo GMl抗体投与群

    創抗張カは,A群では2週目928土87g,3週目1017土81g,B群では2週目976土46g,3 週目1225土104gであり,A群とB群の間に有意差は認められなかった。OHP量は,A群で   は2週目平均182土47Ug,3週目278土17肛g,B群でtま2週目平均166土34〃g,3週目272   土34Ugであり,A群B群間に差はなかった。

  3. CSA投与群

    1) CSA投与量の検討

    創抗張カは,A群でfま2週目911土59g,3週目815土74g,B群では2週目594土74g,     3週目808土47g,C群では2週目平均682土69g,3週目799土63g,D群では2週目平均8   29士56g,3週目826土89gであった。2週目においてB群とD群,C群とD群の間には統   計学的有意差を認めた(PくO. 05)。しかし2週目ではA群とD群,B群とC群との間,ま   た3週目には各群問に有意差はなかった。OHP量は,A群では2週目233土21ロg,3週     目313土23Ug,B群では2週目269土37ug,3週目313土34餌g,C群では2週目253土43     ロg,3週目334土34〃g,D群では2週目200士16〃g,3週目331土35Ugであった。A   群,B群,C群,D群間に有意差はなかった。CSA投与群はコント口ール群と比較して,

  2週目ではH. E.染色,masson trichrome染色ともに,上皮化の程度,皮下組織の厚さ   の差を認めなかった。3週目では両群ともに皮下組織が薄くなっていたが,H. E.染色,

    masson trichrome染色でも差を認めなかった。

2) CSA連日投与の検討

    創抗張カはA群658土40g,B群1969士177g,C群853土72g,D群1930土57gであり,

  A群は,C群に比較して有意に創抗張カが減弱していた(PくO. 05)。B群はD群との間に   差がなかった。

3) TGF‑ロ投与による創傷治癒の回復効果

(4)

  A群732土44g,B群578土31g,C群773土76g,D群759土57gであ り,B群 はA群に 比 較して創抗張 カが有意に減弱していた。(PくO. 05)。A群はD群に比較して,C群はD群 に比較して差 はなかった。

IV考  察

  移植手術における創傷治癒の評価には,創抗張カの比較が総合的評価として最適と考え,最も 単純で,正確な定量化の可能な組織片の引っ張り試験を採用した。創傷治癒の過程で産生された 膠原線維が再形成をへて完成に向かい,創抗張カが増すと考えられ,その生化学的指標として OHPを定量した。創 抗張カの測定,OHPの定量は ,膠原線維の量的質的変化の 最も著しい2 週目および3週目に行なった。本研究からM¢は膠原線維量に影響を与えずに,創抗張カを増加 させている可能性が示された。またNK細胞は,創傷治癒過程において創抗張カには影響を与 えていないことが示された。io. Omg7kg以上のCSA投与により創抗張カは減弱すること,減弱 の程度はCSAの投与 量には依存しないことが示された。また組織学的に差がなく,OIIP量に も差がないことから,創抗張カの減弱には膠原線維の総量は関与しないことが示された。新鮮皮 膚抗張カはCSA投与 群で有意に滅弱したが,form alin固定後の抗張力測定では差がなく,膠 原線維の架橋結合の変化が関与していると推測された。またTGF‑ロは正常の創傷治癒は促進 さ せ な い が ,CSA投 与 に よ り 減 弱 し た 創 抗 張 カ を 回 復 さ せ る こ と が 示 さ れ た 。

学位論文審査の要旨

  移植手術において各種の免疫抑制剤が投与されるが,免疫抑制が臓器生着など創傷治癒に与え る影響にっいては十分に検討されていない。本研究では免疫抑制の創傷治癒過程に与える影響に っいて基礎的検討を行った。

  実験 方法はC 57BL/6マウス(6〜10週齢)雌を用い創傷を作製(作創)した。創傷治癒の 評価は ,2週目3週目に創抗張カとhydroxyproline(以下OHP)の 測定および組織像(H.E.

邊 柳

田 小

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

染色,masson trichrome染色 )を用 いた。 免疫抑 制状態として1)carrageenanの投与;A 群(8匹 ) はmacrophageを抑 制 す る 目的 でcarageenan10mg/kgを,B群(8匹 )は対 象群 とし て 生 食l OmE/kgを作創 の4日前 ,1日前 ,1日後 ,4日後 に腹腔 内投与し た。2) 抗一 asialo GMl抗体 の投与 ;A群(8匹)fまnatural killer cell(以下NK細胞)を抑制する目 的で抗‑ asialo Gl¥41抗体10mg/kgを,B群(8匹 )は対象群として生食10mE/kgを1)と同 様に 投 与 し た。3)CSAの 投 与;a)Thelper lymphocyte機能を 抑制す る目的 でCSAを投 与した 。A群(8匹)はCSAl. Omg/kgを,B群、(8匹)fまCSA10. Omg/kg,C群(8匹)は CSA100. Omg/kgをD群 (8匹) は対象 群とし てIntraliposlOmE/kgを1)2)と同様に投与し た。b)CSA連日投 与の検 討:A群 (10匹) ,B群(10匹)はCSA40. Omg/kgを 作創の7日前 から14日後まで連日腹腔内投与し,C群(10匹),D群(10匹)はIntralipos10. OmE7bodyを 同桟に 投与した 。2週目 にA群,C群では新鮮皮膚を用いて,B群,D群では10%fornalinに7 2時間固 定後の 皮膚を用 いて創 抗張カを測定した。c)TGFーp投与の影響:A群(10匹),B 群(10匹 )はCSA40. Omg/kgを,C群(10匹),D群(10匹)はIntralipos10.0紺/kgをb) と同 様 に 投 与し た 。 更 に作 創3日 後 ,A群C群 にはTGF‑ロ2.5〃 g/kg,B群D群 には生 理 食塩水O. 2mE/kgを創局所に投与した。作創はエーテル麻酔下に,皮下組織に達する約4cmの縦 切開とし,創上端に皮下ポケットを作成し20mgのpolyvinyl alcohol spongeを挿入後,ミハエ ル針にて縫合閉鎖し,1週間後に抜糸した。創を中心に巾2 cm長さ4cmの皮膚片を採取し両端を サンドペーパーで固定しダンベル型とし,島津autograph SD型にて皮膚引つ張り試験を行な い創抗 張カを測 定した 。sponge中 に含ま れるOHP量 はWoessner法を用いて測定した。統計 学的処理はStudentt・testを用い危険率5%未満を有意とした。

  結果は ,1)carrageenan投与で の創抗 張カは ,A群で は2週目634土89g,3週目748土82 g,B群 で は2週目976土46g,3週 目1225土104gで,A群はB群 に比較 して2週 目,3週 目と もに有 意に創抗 張カが 減弱し ていた(Pく0. 05)。OHP量はA群B群間で差はなかった。2) 抗―asialo GMl抗体の 投与で は創抗張 力,OHP量に差 はなかっ た。3)CSA投与群でfま,

a) 創抗 張 カ が ,A群 では2週 目911土59g,3週目815土74g,B群 では2週 目594土74g,3 週目808土47g,C群 では2週 目平均682土69g,3週 目799土63g,D群で は2週目829土56g 3週目826土89gであり ,2週目 のB群とD群,C群 とD群の 間に有意差を認めた(Pく0.05)。 A群とD群 との間 ,B群とC群との 間,3週 目では 各群間に 有意差 は認め なかっ た。OHP量は 各群間 に差を認めなかった。組織学的にはCSA投与群は対象群と比較して,2週目3週目とも に上皮化の程度,皮下組織の厚さに差を認めなかった。b)CSA連日投与の検討では,創抗張

(6)

カ はA群658土40g,B群1969土177g,C群853土72g,D群1930土57gであ り,A群 はC群に 比 較して有意に創抗張カが減弱していた(PくO. 05)。B群はD群との間に差がなかった。c) TGF‑B投 与 に よ る 影 響 は ,A群732土44g,B群578土31g,C群773土76g,D群759土57g で あ り ,B群 はA群 に 比 較 し て 創 抗 張 カ が 有 意 に 減 弱 し て い た(PくO.05)。   本研究から以下の結論を得た。1. macrophageは膠原線維量に影響を与えずに,創抗張カを 増加させている可能性がある。2.  natural killer細胞は,創傷治癒過程において果たす役割は 小 さい。3.10. Omg/kg以上のCSA投与により創抗張カは減 弱するが,滅弱の程度はCSAの 投与量には依存しない。また組織所見,OHP量に差がないことから,創抗張カの減弱には膠原 線 維の総量は関与しない。新 鮮皮膚抗張カはCSA投与群で有意に減弱したが,formalin固定 後の抗張力測定では差がなく,膠原線維の架橋結合の変化が関与していると推測された。また TGF‑ロ はCSA投 与 に よ り 減 弱 し た 創 抗 張 カ を 回 復 さ せ る こ と が 示 さ れ た 。   口頭発表において小柳教授よりCSA投与量,投与方法,評価時期,大浦教授より抗張カの測 定 方法,TGF‑ロの投与法,皆川教授より実験方法などに就いて質問があったが,申請者はお おむね妥当ナょ回答を行った。また小柳,大浦両教授には個別に審査を受け合格と判定された。

  肺移植など創傷治癒にっいて臓器生着と免疫抑制に詳細な検討を加えた本研究は,臨床的意義 が少なくなく,学位授与に値すると考えられる。

参照

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