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平成20年度沖縄県医師会臨床検査精度管理調査

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Academic year: 2021

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第4回九州臨床検査技師会・細胞検査精度管理調査結果報告書

はじめに

今回で4 回目となる九州臨床検査技師会主催の病理・細胞検査精度管理調査ですが、この精度管理 の目的は、個人や団体の評価ではなく、九州地区の病理・細胞検査に従事する臨床検査技師の自己研 鑽につながればという思いで事業を展開した。

対象(参加施設)および方法

1.対象(参加施設) 今回の参加施設は、九州全体で153 施設の協力が得られた。参加人数は、406 名の参加がみられ、 その内訳は、細胞検査士334 名、臨床検査技師 72 名であった。 2.方法 今回の細胞検査部門の精度管理は、前回同様にフォトサーベイを実施した。設問数は全部で30 問 あり、2 枚のフォトに対して、回答欄の 5 つの選択肢から、最も適切だと思われるものを 1 つ選び、 施設単位ではなく、個人単位での回答を求めた。 問題に対する注意点として、年齢に関しては個人情報を重視し、真の年齢とは多少異なった形で問 題用に作成してある。写真の倍率は撮影時の対物レンズの倍率を記した。

正解と解説

設問1 年齢・性別: 24 歳 女性 検 体 : 子宮膣部綿棒擦過 臨床所見 : 疼痛、外陰部潰瘍 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.ヘルペス感染細胞 2.多核組織球 3.上皮内癌 4.扁平上皮癌 5.腺癌 正解: 1. ヘルペス感染細胞 解説: 臨床所見では、外陰部へ潰瘍や疼痛を伴っている。細胞所見は、背景に好中球がみられ、 多核から単核の細胞を多数認める。多核を形成している部分では核圧排像を示し、すりガラス 状の核を呈していることから、ヘルペス感染細胞の像を示す。ほぼ100%の正解率を示してい た。(正解率:99.8%)

(2)

年齢・性別: 29 歳 女性 検 体 : 子宮頸部綿棒擦過 臨床所見 : 婦人科検診 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.炎症性変化 2.軽度異形成 3.高度異形成 4.上皮内癌 5.扁平上皮癌 正解: 2. 軽度異形成 組織診断: 軽度異形成 解説: きれいな背景を呈しており、N/C 比の大きな表層型から中層型扁平上皮細胞が出現して いる。核は増大し、クロマチンの増量がみられ、軽度異形成を考慮する像である。(正解率: 86.2%) 設問3 年齢・性別: 26 歳 女性 検 体 : 子宮膣部綿棒擦過 臨床所見 : 黄色帯下 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.クラミジア感染 2.HPV 感染 3.カンジダ膣炎 4.トリコモナス膣炎 5.軽度異形成 正解: 4. トリコモナス膣炎 解説: 背景にライトグリーンに好染した西洋梨状あるいは不整形で、内部に好酸性の顆粒を呈 したトリコモナス原虫が散見される。周囲の扁平上皮細胞も核周囲光暈などの炎症性変化が認 められる。トリコモナス膣炎では、臨床的に黄色帯下や掻痒感、疼痛などを伴う場合がある。 非常に高い正解率であった。(正解率:99.3%)

(3)

年齢・性別: 36 歳 女性 検 体 : 子宮頸部綿棒擦過 臨床所見 : 不正出血 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.頸管円柱上皮細胞 2.化生細胞 3.上皮内癌 4.扁平上皮癌 5.腺癌 正解: 3. 上皮内癌 組織診断: 上皮内癌 解説: 背景に好中球を認め、傍基底細胞大から基底細胞大の細胞が集簇している。N/C 比は高 く、多少の大小不同性を示しているが、単調性な像を呈しており、核は類円形で緊満感があり、 クロマチンは細顆粒状で密に充満し、核小体も小型で数個有し、上皮内癌の像を呈する。(正 解率:85.0%) 設問5 年齢・性別: 38 歳 女性 検 体 : 子宮頸部綿棒擦過 臨床所見 : 不正出血 写 真 : 左図 Pap×60、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.化生細胞 2.再生上皮細胞(修復細胞) 3.頸管円柱上皮細胞 4.上皮内腺癌 5.明細胞腺癌 正解: 4. 上皮内腺癌 組織診断: 上皮内腺癌 解説: きれいな背景で、重積を示した集塊の細胞は、一部柵状配列を示している。個々の細胞 は、N/C 比の高い類円形から楕円形の核で、核の大小不同もみられる。核小体はあまり目立た ないが、以上の所見より腺系の異常所見が示唆され、選択肢の中からは上皮内腺癌を選択すべ きである。(正解率:88.4%)

(4)

年齢・性別: 50 歳 女性 検 体 : 子宮頸部綿棒擦過 臨床所見 : 子宮膣部びらん 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.化生細胞 2.再生上皮細胞(修復細胞) 3.中等度異形成 4.扁平上皮癌 5.内頸部型腺癌 正解: 2. 再生上皮細胞(修復細胞) 解説: 臨床的にびらんを伴っており、大型で広い細胞質を有する細胞が、シート状集塊で一定 方向に流れをもった配列を示し、再生上皮細胞(再生上皮細胞)の所見を示す。高い正解率で あった。(正解率:94.3%) 設問7 年齢・性別: 33 歳 女性 検 体 : 子宮内膜吸引 臨床所見 : 定期検診 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.増殖期子宮内膜 2.分泌期子宮内膜 3.子宮内膜増殖症 4.類内膜腺癌 G1 5.類内膜腺癌 G3 正解: 2. 分泌期子宮内膜 解説: 血性背景で、ややシート状の上皮細胞集塊が出現しており、集塊内の細胞は一定の核間 距離を保持し、蜂巣状構造や細胞質内にグリコーゲンを含んだような所見もみられ、分泌期子 宮内膜の像を呈する。高い正解率を示した。(正解率:97.0%)

(5)

年齢・性別: 58 歳 女性 検 体 : 子宮内膜吸引 臨床所見 : 不正出血、閉経 52 歳 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.増殖期子宮内膜 2.分泌期子宮内膜 3.子宮内膜増殖症 4.類内膜腺癌 G1 5.類内膜腺癌 G3 正解: 4. 類内膜腺癌 G1 組織診断: 類内膜腺癌G1 解説: 臨床的に閉経後の不正出血を呈する。細胞像は壊死性背景で、異常重責を伴う乳頭状の 集塊で出現し、個々の細胞はN/C 比の増大、クロマチンの増量などの所見があり、類内膜腺癌 G1 の細胞像を呈する。(正解率:88.9%) 設問9 年齢・性別: 48 歳 女性 検 体 : 左卵巣腫瘍捺印 臨床所見 : 一側性腫瘍 写 真 : 左図 Pap×60、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.顆粒膜細胞腫 2.未分化胚細胞腫 3.漿液性嚢胞腺癌 4.粘液性嚢胞腺癌 5.明細胞腺癌 正解: 1. 顆粒膜細胞腫 組織診断: 顆粒膜細胞腫 解説: 臨床所見は単一性の卵巣腫瘍で、小型円形細胞が散在性に出現し、強拡大にみられる個々 の細胞の核には、ところどころにコーヒー豆様の溝が認められ、顆粒膜細胞腫の像を呈する。 この設問も高い正解率を示した。(正解率:92.1%)

(6)

年齢・性別: 71 歳 男性 検 体 : 喀痰 臨床所見 : 胸部異常陰影、胸水貯留 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.リンパ球の集簇 2.カルチノイド 3.小細胞癌 4.腺癌 5.悪性リンパ腫 正解: 3. 小細胞癌 組織診断: 小細胞癌 解説: 背景の一部には壊死性物質を認め、小型な細胞が散在性または疎な結合集塊の出現を示 し、一部にはインディアン・ファイル状の配列もみられる。個々の細胞は、裸核様な非常に高 いN/C 比や濃縮状のクロマチンを示しており、小細胞癌の所見を呈する。100%に近い正解率 であった。(正解率:98.8%) 設問11 年齢・性別: 64 歳 男性 検 体 : 喀痰 臨床所見 : 右肺異常陰影 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.カンジダ 2.アスペルギルス 3.クリプトコッカス 4.ブラストマイセス 5.アクチノマイセス 正解: 2. アスペルギルス 解説: ほうき状の分生子頭(頂嚢、梗子、分生子)がみられ、ところどころにY 字型 45°分 岐を示した菌糸が存在し、アスペルギルスを推定する像である。この設問も正解率が高かった。 (正解率:96.3%)

(7)

年齢・性別: 77 歳 男性 検 体 : 喀痰 臨床所見 : 血痰、咳嗽、ヘビースモーカー 写 真 : 左図 Pap×100、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.扁平上皮化生細胞 2.軽度異型扁平上皮細胞 3.中等度異型扁平上皮細胞 4.高度異型扁平上皮細胞 5.扁平上皮癌 正解: 5. 扁平上皮癌 組織診断: 扁平上皮癌 解説: 左図では、壊死性背景中にビザールで濃染性の核を伴った細胞や無核の細胞が混在し、 右図では、N/C 比が高く、比較的粗顆粒状のクロマチンを呈した細胞がみられ、扁平上皮癌の 細胞像である。この設問も、100%に近い正解率であった。(正解率:98.5%) 設問13 年齢・性別: 54 歳 女性 検 体 : 喀痰 臨床所見 : 右肺異常陰影 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.多核組織球 2.杯細胞増生 3.線毛円柱上皮集塊 4.腺癌 5.腺様嚢胞癌 正解: 4. 腺癌 組織診断: 腺癌 解説: 軽い粘液性背景で、不規則重積性のある小型な細胞集塊で出現し、集塊辺縁からは線毛 や刷子縁などはみられず、個々の細胞は核の偏在傾向が強く、核腫大や核形不整を伴い、 核小体も明瞭で、腺癌の像を呈する。この設問も高い正解率を示した。(正解率:98.5%)

(8)

年齢・性別: 61 歳 女性 検 体 : 経気管支針穿刺 臨床所見 : 肺門部腫瘤陰影 写 真 : 左図 Pap×20、右図 Pap×40 回 答 欄 : 1.肺結核症 2.硬化性血管腫 3.腺癌 4.腺様嚢胞癌 5.粘表皮癌 正解: 4. 腺様嚢胞癌 組織診断: 腺様嚢胞癌 解説: 経気管支針穿刺の材料で、細胞像は集塊内に球状の粘液物質をとり囲むように小型の類 円形核がみられ、腺様嚢胞癌の像を呈する。この設問も、非常に良好な正解率を示した。(正解 率:98.5%) 設問15 年齢・性別: 73 歳 男性 検 体 : 気管支洗浄液 臨床所見 : 長期ステロイド治療、胸部すりガラス様陰影 写 真 : 左図 Pap×100、右図 Grocott×100 回 答 欄 : 1.クリプトコッカス 2.ニューモシスチス・イロベチー 3.アスペルギルス 4.カンジダ 5.ムコール 正解: 2. ニューモシスチス・イロベチー 解説: 臨床的に長期ステロイド治療を実施し、肺のすりガラス陰影を呈しており、左図のパパ ニコロウ染色では、淡い泡沫状の無構造物質がみられ、右図のグロコット染色では、黒褐色の の円形または三日月状の菌体を認め、ニューモシスチス・イロベチーの所見を示す。約10%(42 /406)でクリプトコッカスを選択しているが、クリプトコッカスでは、円形で厚い莢膜の分芽 胞子を有し、それが鑑別点となる。(正解率:89.4%)

(9)

年齢・性別: 40 歳 女性 検 体 : 耳下腺腫瘤捺印 臨床所見 : 緩徐な発育を示す無痛性腫瘍 写 真 : 左図 Pap×20、右図 Pap×40 回 答 欄 : 1.多形腺腫 2.ワルチン腫瘍 3.腺様嚢胞癌 4.粘表皮癌 5.唾液導管癌 正解: 1. 多形腺腫 組織診断: 多形腺腫 解説: 背景に粘液腫様間質を伴い、それに混在するかのように上皮性細胞集塊や線維性細胞が みられ、多形腺腫の所見を示す。(正解率:96.1%) 設問17 年齢・性別: 58 歳 女性 検 体 : 胆汁 臨床所見 : 胆石 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.良性上皮細胞 2.肝細胞癌 3.腺癌 4.扁平上皮癌 5.腺扁平上皮癌 正解: 1. 良性上皮細胞 解説: この設問は80%以下の正解率を示した設問の一つで、約 20%(81/406)が腺癌を選択し ている。胆汁や膵液に出現する細胞集塊は、良悪の鑑別が困難な場合が少なくないが、まず良 性上皮細胞では、集塊内の核間距離がほぼ等しく、集塊の辺縁部分に細胞質がみられる。それ に対し、腺癌の場合は、核間距離も不規則になり、ところどころ集塊辺縁部分に細胞質がみら れず、核の飛び出しや核の大小不同、核形不整など異型性を伴ってくる場合が多い。(正解率: 79.3%)

(10)

年齢・性別: 52 歳 女性 検 体 : 直腸腫瘤捺印 臨床所見 : 粘膜下腫瘤 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.潰瘍性大腸炎 2.腺腫 3.腺癌 4.カルチノイド 5.悪性リンパ腫 正解: 4. カルチノイド 組織診断: カルチノイド 解説: 直腸の粘膜下腫瘤で、疎な結合の平面的な集塊から孤立散在性で出現した単調性の細胞 がみられる。細胞質は淡明でライトグリーンに好染し、辺縁はやや不明瞭である。核は類円形 で偏在傾向を示し、クロマチンは粗顆粒状で増量し、カルチノイドの所見を示す。非常に高い 正解率であった。(正解率:98.8%) 設問19 年齢・性別: 66 歳 男性 検 体 : 自然尿 臨床所見 : 無症候性血尿 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.デコイ細胞 2.尿路上皮癌(G1) 3.尿路上皮癌(G3) 4.腺癌 5.扁平上皮癌 正解: 3. 尿路上皮癌(G3) 組織診断: 尿路上皮癌(G3) 解説: 背景の一部には壊死性物質がみられ、結合性の弱い集塊から孤立散在性に出現した細胞 は、大小不同や濃染核を有し異型性が強い。細胞の形状は類円形、多辺形のものが目立ち、核 も偏在傾向を示し、高異型度の尿路上皮癌を考慮する像である。約10%(37/406)でデコイ細 胞を選択していたが、デコイ細胞の核内構造は不明瞭、無構造化しており、出現する細胞も数 が少なく、以上の点で鑑別可能である。(正解率:88.4%)

(11)

年齢・性別: 57 歳 男性 検 体 : 右胸水 臨床所見 : 胸部陰影にて右側の胸水、びまん性胸膜肥厚像、胸膜の結節と腫瘤 写 真 : 左図 Pap×20、右図 Pap×40 回 答 欄 : 1.反応性中皮細胞 2.多核組織球 3.扁平上皮癌 4.腺癌 5.悪性中皮腫 正解: 5. 悪性中皮腫 組織診断: 悪性中皮腫 解説: 臨床所見では、胸膜の肥厚と腫瘤がみられる。細胞像は、背景にリンパ球や組織球を認 め、やや重積性のある集塊性の部分と散在性の部分は同様な細胞で構成され、全体的に単調な 像を呈する。個々の細胞は非常に大型で腫大し、細胞量も多い。多核の花弁状の集塊部分では 核中心性で、核近傍は厚く、辺縁は薄い細胞質を示し、悪性中皮腫を推定する細胞所見である。 (正解率:87.2%) 設問21 年齢・性別: 68 歳 男性 検 体 : 胸水 臨床所見 : 頭蓋骨の打ち抜き像 写 真 : 左図 Pap×100、右図 Giem×100 回 答 欄 : 1.組織球 2.悪性リンパ腫(非ホジキン) 3.白血病(AML) 4.多発性骨髄腫 5.低分化腺癌 正解: 4. 多発性骨髄腫 組織診断: 多発性骨髄腫 解説: 臨床所見でX 線の溶解像を示し、細胞像は単調性のある細胞が孤立散在性で出現してい る。核偏在傾向があり、核の周囲が明るく抜けたような細胞質を示し、核は単核から二核で、 クロマチンは粗大顆粒状(車軸状)を呈し、多発性骨髄腫を考慮する。(正解率:95.3%)

(12)

年齢・性別: 44 歳 女性 検 体 : 乳頭部擦過 臨床所見 : 右乳頭部のびらん様発赤 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.乳腺炎 2.乳頭部腺腫 3.パジェット病 4.アポクリン癌 5.扁平上皮癌 正解: 3. パジェット病 組織診断: パジェット病 解説: 臨床所見で乳頭部のびらん様発赤があり、細胞像は背景に扁平上皮細胞と細胞崩壊物・ 炎症性細胞を認め汚い。小集塊状で出現した細胞の細胞質は泡沫状で比較的広くライトグリー ンに淡染し明るい。また、一部の細胞質には茶褐色のメラニン顆粒を認める。核は大型で、ク ロマチンは密に増量し、明瞭な核小体がみられパジェット細胞を考慮させる。以上の所見より、 パジェット病を選択するのが適切である。(正解率:95.1%) 設問23 年齢・性別: 58 歳 女性 検 体 : 乳腺穿刺吸引 臨床所見 : 1 年前より左乳房のしこりを自覚しつつも放置。約 2 ヶ月前より急速に増大。 US上14cm 大の腫瘤。 写 真 : 左図 Pap×10、右図 Pap×40 回 答 欄 : 1.充実腺管癌 2.硬癌 3.粘液癌 4.基質産生癌 5.悪性リンパ腫 正解: 4. 基質産生癌 組織診断: 基質産生癌 解説: 背景には、ヘマトキシリン淡染性の軟骨基質様物質を認める。出現した細胞は、孤立散 在性でN/C 比は高く、核は類円形で粗顆粒状のクロマチンを有している。以上の所見から基質 産生癌を考慮する。この設問は正解率が低い結果であったが、背景のヘマトキシリン淡染性の 物質を軟骨基質様物質と判断できれば、診断は十分可能である。(正解率:75.9%)

(13)

年齢・性別: 56 歳 女性 検 体 : 乳腺穿刺吸引 臨床所見 : 右乳房に腫瘤を触知し来院。US 上、右 AB 領域に約 1.3cm の形状ほぼ整の充実性 腫瘤。 写 真 : 左図 Pap×10、右図 Pap×40 回 答 欄 : 1.乳管内乳頭腫 2.乳管腺腫 3.腺症 4.管状癌 5.浸潤性微小乳頭癌 正解: 5. 浸潤性微小乳頭癌 組織診断: 浸潤性微小乳頭癌 解説: 小型から中型の細胞集塊が島状に認められる。個々の集塊は、乳頭状あるいは腺管状構 造の集塊で構成されており、集塊内には筋上皮細胞を認めないことから悪性が示唆され、管腔 側に向かって細胞の極性を示しており、浸潤性微小乳頭癌を考慮する像である。(正解率:80.3 %) 設問25 年齢・性別: 77 歳 女性 検 体 : 甲状腺穿刺吸引 臨床所見 : 甲状腺急速増大 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.扁平上皮癌 2.未分化癌 3.粘表皮癌 4.濾胞癌 5.CASTLE 正解: 2. 未分化癌 組織診断: 未分化癌 解説: 臨床的に高齢者で、甲状腺の急速増大を示している。個々の細胞は、非常に大型な細胞 も存在し、細胞の大小不同、多形性が著しい。多核の細胞もみられ、異型性が非常に強く、未 分化癌の像を呈する。(正解率:90.9%)

(14)

年齢・性別: 24 歳 女性 検 体 : 甲状腺穿刺吸引 臨床所見 : 右甲状腺腫瘤 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.悪性リンパ腫 2.濾胞癌 3.腺腫様甲状腺腫 4.髄様癌 5.乳頭癌 正解: 4. 髄様癌 組織診断: 髄様癌 解説: 背景には、ライトグリーン好性の不定形、均一無構造のアミロイドを認める。細胞は疎 な結合性から散在性をなし、平面的に出現している。細胞の形状は類円形~多稜形で、核は偏 在し、粗大顆粒状クロマチンを呈している。髄様癌の細胞所見である。(正解率:80.5%) 設問27 年齢・性別: 35 歳 女性 検 体 : 甲状腺穿刺吸引 臨床所見 : 左甲状腺腫瘤 写 真 : 左図 Pap×10、右図 Pap×40 回 答 欄 : 1.腺腫様甲状腺腫 2.慢性甲状腺炎 3.亜急性甲状腺炎 4.髄様癌 5.未分化癌 正解: 3. 亜急性甲状腺炎 解説: 濾胞上皮細胞はみられないが、リンパ球や線維細胞と共に中型~大型の多核巨細胞が出 現し、亜急性甲状腺炎の像を示す。(正解率:85.2%)

(15)

年齢・性別: 55 歳 男性 検 体 : 頸部リンパ節穿刺吸引 臨床所見 : 頸部、腋下、縦隔、鼠経部リンパ節の腫大 写 真 : 左図 Pap×40、右図 Pap×100 回 答 欄 : 1.反応性リンパ節炎 2.壊死性リンパ節炎 3.非ホジキンリンパ腫 4.ホジキンリンパ腫 5.腺癌の転移 正解: 4. ホジキンリンパ腫 組織診断: ホジキンリンパ腫 解説: 多数の成熟リンパ球を背景に認め、ところどころに大型なホジキン細胞やリード・ステ ンベルグ巨細胞がみられ、ホジキンリンパ腫の細胞所見を呈する。高い正解率を示した。(正解 率:97.8%) 設問29 年齢・性別: 62 歳 女性 検 体 : 脳腫瘍捺印 臨床所見 : 頭蓋内腫瘍 写 真 : 左図 Pap×20、右図 Pap×40 回 答 欄 : 1.髄芽腫 2.髄膜腫 3.膠芽腫 4.星膠腫 5.脳室上衣種 正解: 2. 髄膜腫 組織診断: 移行性髄膜腫 解説: 臨床所見は中年・女性の頭蓋内腫瘍である。細胞像は、結合性の強い細胞が集塊状に出 現し、砂粒小体が認められる。集塊内の細胞は同心円状の渦紋状配列を呈し、それを取り囲む ように紡錘形の細胞がみられ、髄膜腫の細胞像を呈する。渦紋状配列や砂粒小体は、移行性髄 膜腫腫の特徴的所見である。(正解率:97.8%)

(16)

年齢・性別: 44 歳 男性 検 体 : 胸壁皮下腫瘤針穿刺 臨床所見 : 直径 20mm 大の腫瘤 写 真 : 左図 Pap×20、右図 Pap×40 回 答 欄 : 1.結節性筋膜炎 2.神経鞘腫 3.顆粒細胞腫 4.横紋筋肉腫 5.脂肪肉腫 正解: 3. 顆粒細胞腫 組織診断: 顆粒細胞腫 解説: 円形から多角形の細胞質の豊富な大型細胞が平面的に出現している。細胞結合性は比較 的弱く、核は円形ないし類円形で小さく、豊富な細胞質内には微細な顆粒が充満しており、顆 粒細胞腫の細胞所見である。顆粒細胞腫は、成人の体幹、四肢などの真皮、皮下に発生し、他 に舌、消化器、乳房、外陰部などにも認められる。(正解率:89.9%)

まとめ

1.全 30 問の正解率の平均は 91.7%で、この結果は、毎年実施されている日臨技臨床検査精度管理調 査の細胞検査フォトサーベイと同等な結果を示した。 2.臓器別(検体別)から正解率をとらえると、婦人科(9 問)92.3%、呼吸器(6 問)96.7%、消化 器(3 問)91.4%、泌尿器(1 問)88.4%、体腔液(2 問)91.2%、乳腺(3 問)83.7%、甲状腺(3 問)85.6%、リンパ節(1 問)97.8%、神経(1 問)97.8%、軟部(1 問)89.9%の結果で、全セク ション80%以上の成績を示し、ほとんどが 90%前後であった。特に呼吸器、リンパ節、神経では高 い正解率で、乳腺、甲状腺では若干低い正解率を示していた。 3.設問別の正解率からみてみると、80%以下の正解率を示したのは、設問 17 の消化器・胆汁の良性 上皮細胞79.3%と設問 23 の乳腺・基質産生癌 75.9%の二つであった。 設問 17 の胆汁・良性上皮細胞のところで、約 20%(81/406)が腺癌と選択しているが、この症例 は核間距離がほぼ等しく、上皮集塊の外層に細胞質がしっかりみられ、核異型もなく、良性上皮細 胞を選択して頂きたい設問である。次に、設問23 の乳腺・基質産生癌では、約 11%(43/406)が 粘液癌、約8%(33/406)が硬癌と選択しており、背景のヘマトキシリンに淡性した軟骨基質様物 質を粘液と想定したと考えられ、軟骨基質様物質の場合は薄い紫色を呈してくるのに対し、粘液で は重厚性があり、上皮細胞の出現も典型例では大きく異なり、両者の鑑別は可能だと考える。 4.今回の精度管理調査では、乳腺を除くと基本的な症例を出題しており、それを反映してなのか、 参加人数406 名の内訳は、細胞検査士 334 名、臨床検査技師 72 名で、前回(第 3 回)と比較して、 細胞検査士の資格を有しない方の参加が多くみられた。この事業を機会に、細胞検査士を目指すき っかけや会員各位の自己研鑽に役立てて頂けたら非常に幸いである。

(17)

今後も複数年単位の間隔で定例化できればと考える。

結語

最後に、この精度管理事業に参加して頂いた九州臨床検査技師会会員の方々をはじめ、本事業の作 成に携わった協力委員、発送から集計までご協力頂いた九州各県の病理・細胞検査担当者、去る10 月に長崎県佐世保市にて開催された第44 回九州医学検査学会の枠内にて、この事業の報告の機会を 与えて頂いた長崎県臨床検査技師会の方々に深く感謝したい。

細胞検査担当

九州臨床検査技師会・細胞検査部門員 山城 篤 (那覇市立病院 医療支援部検査室) TEL:098-884-5111(内線 177) FAX:098-887-7950 E-mail:yamashiro@nch.naha.okinawa.jp 協力委員 細胞検査士 比嘉 盛治 (中部徳洲会病院) 又吉 理子 (中部地区医師会立成人病検診センター) 阿部 英二 (北九州市立医療センター) 丸田 淳子 (野口病院) 古田 則行 (癌研有明病院) 細胞診専門医 仲里 巌 (沖縄県立南部医療センター・こども医療センター) 九州各県病理・細胞検査担当者 福岡県 大久保 文彦(九州大学病院) 佐賀県 榊 保彦 (佐賀県医師会成人病予防センター) 大分県 丸田 淳子 (野口病院) 長崎県 今泉 利信 (健康保険諫早総合病院) 熊本県 坂本 康弘 (熊本赤十字病院) 宮崎県 大野 招伸 (宮崎大学医学部附属病院) 鹿児島県 舞木 公子 (鹿児島大学病院)

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平成30年 度秋 季調 査 より 、5地 点で 調査 を 実施 した ( 図 8-2( 227ペー ジ) 参照

この点について結果︵法益︶標準説は一致した見解を示している︒

アドバイザーの指導により、溶剤( IPA )の使用量を前年比で 50 %削減しまし た(平成 19 年度 4.9 トン⇒平成 20 年度

2011 (平成 23 )年度、 2013 (平成 25 )年度及び 2014 (平成 26 )年度には、 VOC