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36(298) 35 3 a) Lund & Manchester Group の分類 (1994) 前頭側頭葉変性症 (FTLD) 1 前頭側頭型認知症 (FTD) 2 進行性非流暢性失語 (PNFA) 3 意味認知症 (SD) b) 臨床分類 (Karageorgiou & Miller 201

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2015年 9 月 30 日 (297)35

Ⅰ.原発性進行性失語の概念の変遷と用語   原 発 性 進 行 性 失 語(PPA:primary progressive aphasia)は,100 年以上も前に,Pick や Serieux に よって既に言及されていたと報告されている(Har-risら 2014)が,明確に症候群として認識されたの は,Mesulam の 6 例の報告によるところが大きい (Mesulam 1987)。これは,アルツハイマー病など の認知症を主症候とする変性疾患と区別され,言語 症状のみが,他の症状より最低 2 年程度先だって, 選択的に進行する症候を括った臨床症候群である。 通常,未知の変性疾患は,最初は,臨床症候群とし て提起され,そこに様々な検査所見や経過・予後の 知見,そして病理所見が加わって,ひとつの疾患単 位として確立してゆく。しかし,PPA に関しては, その用語・分類が,複雑な変遷を経て,混乱してい たことに加え,今なお,疾患単位としては十分確立 していない現状がある。  PPA は前述したように,Mesulam(1987)の提唱 に由来し,後に PPA の用語が提起されるが(Me-sulam 2003),当初は亜型分類などは提唱されてい なかった。その後,PPA の概念とはまったく別に, 認知症のひとつのカテゴリーとして,アルツハイマ ー病と区別し,前頭側頭葉変性症(FTLD:fronto─ temporal lober degeneration)という概念が提唱さ

れた。これはʻ病巣の首座が前頭葉や側頭葉にある 変性疾患ʼという概念であった。これも,初期には 用語の混乱があったが,1990 年代の半ば~後半に, 欧州を中心に類似用語が統一され(The Lund and Manchester Groups 1994,Snowden ら 1996, Nearyら 1998),FTLD に 3 つの臨床型,すなわち, frontotemporal dementia(FTD:前頭側頭型認知症), semantic dementia(SD:意味認知症),progressive non─fluent aphasia(PNFA:進行性非流暢性失語) が提起された(図 1─a)。この時点では,FTLD と いう用語は,主に病巣の首座,すなわち,臨床的に は画像で確認できる萎縮部位を表す用語として用い られていた。ところが,近年になって,神経病理の 分子基盤に関する知見が増え,それらの知見を反映 さ せ る 表 現 と し て,FTLD ─ tau,FTLD ─ TDP, FTLD─FUS などの表記が用いられるようになった。 FTLDの後に表記されている─tau,─TDP,─FUS 等 は,蓄積蛋白を表わしている。近年,このような用 いられ方が主流となり,FTLD は,病理学的な単位 を表現する語として認識されるに至った(Karageo-giouら 2014)。一方,臨床的な表現型としては, FTDの用語が用いられる傾向にある(Karageogiou ら 2014)。ここで,FTD は臨床症候群として,3 つ の亜型,すなわち,behavioral variant FTD(bvFTD), non─fluent variant PPA(nfv PPA),semantic variant

■シンポジウムⅣ:認知症の言語症状を徹底的に討論する

進行性非流暢性失語の症候と経過

大 槻 美 佳 * 要旨:進行性非流暢性失語(PNFA/nfvPPA)24 例を対象に,神経学的所見,神経心理学的所見,画像所見, および経過を検討した。その結果,少なくとも 3 群に分類された。①前頭葉性失語型(古典的失語症分類 ではブローカ失語,超皮質性運動失語に該当する言語症状を呈する群),②前部弁蓋部症候群型,③純粋 失構音型である。①は発症 3 ~ 5 年以内に,bvFTD と同様の精神症状や行動異常を呈した。②は発症早 期に流涎や口部顔面失行を呈し,1 ~ 3 年以内に嚥下障害を呈した。③は失構音のみ進行する場合,失調 症状を伴う場合,発症から 2 ~ 5 年以内に,パーキンソニズムや中心回症状を呈し,CBS と診断される に至った場合など,いくつかの亜型分類がさらに可能であった。これらの群は,画像診断で明らかな所見 が得られない時期でも,初診時の症候学的検討で,分類することが可能であると考えられた。 (高次脳機能研究 35(3):297 ~ 303,2015) Key Words:進行性非流暢性失語,臨床所見,予後,失構音,発語失行,前頭側頭葉変性症

progressive non─fluent aphasia,clinical symptoms,prognosis,anarthrie,apraxia of speech,FTLD

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PPA(primary progressive aphasia)(svPPA) に 分 類されている(図 1─b)。したがって,図 1─a にお ける①②③は,図 1─b における①②③と,それぞ れ対応する。  本稿では,このうち,図 1─a における PNFA, すなわち,図 1─b における nfv PPA の症候と経過 について検討した。 Ⅱ.対象と方法  1.対象  対象は脳血管障害やその他の脳損傷,神経疾患の 既往のない患者で,2011 年の診断基準(Gorno─ Tempiniら 2011)(図 2)において,PPA の基準を 満たした上で,非流暢 / 失文法型の基準を満たした 者とした。対象患者は 24 名(55─82 歳:平均 69.5 歳, 男 14, 女 10)であった。全例に MRI を施行し,脳 血管障害や脳損傷の既往,病巣の有無を確認した。 いずれも発症から初診までは,1 ~ 3 年であった。  2.方法  全例に,神経学的所見,神経心理学的所見を得た。 神経心理学的所見としては,以下を施行・確認した。  1)言語および関連症候

 WAB 失語症検査(Western Aphasia Battery)を 施行し,言語の基本的所見(失構音・音韻性錯語の 有無,単語・文の理解,呼称・語列挙障害の有無) から,失語型を判断した。失語型の判断としては, 成書・既報告(大槻 2002,2008)に依拠した。また, 失構音に関しては,音の連結不良と構音の歪みを検 図 1 前頭側頭葉変性症(FTLD)と前頭側頭型認知症(FTD)の臨床分類

a) Lund & Manchester Group の分類

(1994) b) 臨床分類(Karageorgiou & Miller 2014)

①行動型(bv FTD) ②非流暢型進行性失語(nfv PPA) ③意味型(svPPA) ①前頭側頭型認知症(FTD) ②進行性非流暢性失語(PNFA) ③意味認知症 (SD) 前頭側頭型認知症(FTD) 前頭側頭葉変性症(FTLD) 図 2 原発性進行性失語(PPA)の臨床的な診断基準概要 (Gorno ─ Tempiniら 2011より抜粋・改変) 1.PPA であることの診断基準 必須要件 1.言語の症状が最も顕著である 2.言語の症状が主訴であり,日常生活に影響を及ぼしている 3.初発症状および初期の最も顕著な症状が失語症である 除外項目 1.他の変性疾患や医学的な疾患によるものとして説明しうる 2.精神科的疾患で説明しうる認知障害である 3.初期から明らかなエピソード記憶障害,視覚性記憶障害,視知覚障害がみられる 4.初期から明らかな行動異常がみられる 2.3 タイプの分類:臨床特徴のまとめ ロゴぺニック型 以下の両者を満たす 1.自発話と呼称で喚語困難 2.文や句の復唱障害 以下のうち 3 つを満たす 1.自発話や呼称における 音韻性錯語の出現 2.単語理解・対象知識の保存 3.発語は保存 4.文法障害なし 非流暢/失文法型 以下のうち 1 つを満たす 1.失文法的な発話 2.発語失行(=失構音) 以下のうち 2 つを満たす 1.複雑な文理解の障害 2.単語の理解は保存 3.対象の知識は保存 意味型 以下の両者を満たす 1.呼称障害 2.単語理解障害 以下のうち 3 つを満たす 1.対象の知識の障害 2.表層性失読・失書 3.復唱能力の保存 4.発語は保存

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2015年 9 月 30 日 (299)37 討した。加えて,文産生課題(数個の単語を視覚的 に文字で提示して文を作成する課題)を施行し,そ の可否を確認した。その他,言語関連症候として, 同時発話(シラリア)・保続の有無・吃音の有無を 確認した。  2)その他の神経心理学的所見  FTD に関連する精神・行動障害の有無,口部顔 面失行の有無を確認した。  3)その他  その他の症候として,流涎や嚥下障害,中心回所 見として拙劣症(肢節運動失行),二点識別覚障害 の有無を確認した。 Ⅲ.結  果(表 1)  1.失語症タイプ  対象は,診断基準(Gorno─Tempini ら 2011)の 非流暢・失文法型を満たす者であるので,失構音が あるか,または失文法的な発話がみられることは前 提条件である。その上で,下位項目として,1.複 雑な文理解の障害,2.単語の理解は保存,3.対象 の知識は保存のうち 2 つを満たすものである。これ らの基準に一致する症候群に該当する古典的失語症 候群は,ブローカ失語,超皮質性運動失語,純粋失 構音(=純粋発語失行,=純粋語唖)などである。  結果は,失語症型の分類では,患者 1 ~ 6 と 7 ~ 24に 2 分された。両群のもっとも顕著な相違は, 患者 1 ~ 6 では,喚語困難(=語の想起障害)が明 らかであったのに対し,患者 7 ~ 24 は,喚語困難 は認めなかった点である。発語に関しては,両群と も,失構音があると判定されたが,両群の違いとし ては,患者 1 ~ 6 は構音の歪みは目立たなかったが, 音の連結不良が認められ,患者7~24は構音の歪み・ 音の連結不良がいずれも顕著にみられた。また,3 ~ 4 個の単語を文字で提示し,それを用いて文を作 成する課題(文産生課題)を施行したところ,患者 1~ 6 では,いずれも低下を示した。言語理解に関 しては,患者 1 ~ 6 では,単語レベルでは症例によ ってばらつきがあったが,文レベルでは全例に低下 表 1 結果 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 76 56 69 68 63 69 81 71 77 82 73 75 M F M M F M F F M M M M PA PA PA PA PA PA PA PA PA PA PA PA - - - - - - - - - - - - + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - + + + - - - - - - - - - - - - + - - + - - - - - - - - - + + + - + + - - - - - - - - - + - + - - - - - - + - - + - - 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 55 66 60 65 69 70 76 67 74 61 78 66 M M F F F F M F M F M M B B B B B B PA PA PA PA PA PA + + + + + + - - - - - - + + + + + + + + + + + + ± - - - - - + + + + + + + + + + + + - - - - - - + + + + - - - - - - - - - - - - + + - - - - - - + + + + + + - - - - - - - - - - - - + + + + + - - - - - - - + + + + + - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 年齢 性別 失語型 喚語障害 失構音  連結障害  構音の歪 文産生障害 シラリア 保続 精神症状 他 OFA 流涎+嚥下障害 失調 Parkinsonism 拙劣症 2 点識別覚 吃音様発語 OFA:口部顔面失行 B:ブローカ失語~超皮質性運動失語 PA:純粋失構音

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がみられた。また,患者 7 ~ 24 では,単語レベルに 理解障害は認めず,文レベルでは患者によってばら つきがみられた。以上より,患者 1 ~ 6 は,古典的 失語症分類理による失語型で表現すると,ブローカ 失語ないし超皮質性運動失語,患者 7 ~ 24 は純粋 失構音(=純粋発語失行,=純粋語唖)と判断した。  2.同時発話・保続  その他の言語の特徴として,ブローカ失語・超皮 質性運動失語型(患者 1 ~ 6)では同時発話(シラ リア:syllalia)あるいは保続がみられた。純粋失構 音型(患者 7 ~ 24)ではいずれも認めなかった。  3.口部顔面失行  初診時,すなわち発症から 1 ~ 3 年以内に,口部 顔面失行がみられたのは純粋失構音型の中で,特に, 患者 7 ~ 11 であった。その他は,少なくとも初診 時に,口部顔面失行は認めなかった。  4.経過  ブローカ失語・超皮質性運動失語型(患者 1 ~ 6) は,発症から 3 ~ 5 年後までには,bvFTD でみら れるような精神症状や行動障害を認めた。具体的に は,被影響性の亢進や環境依存症候群,脱抑制,わ が道を行く行動,常同行動などである。この群の中 の患者 3 の脳血流 SPECT(123I─IMP)を図 3─A に示

した。左前頭葉背外側全般に血流低下が認められた。  一方,純粋失構音型(患者 7 ~ 24)では,精神 症状や行動障害は認めなかったが,いくつかの特徴 的な経過を呈した一群があった。それは,患者 7 ~ 11で,上述 3.での検討により,初診時(発症から 1~ 3 年)という早期に,口部顔面失行を伴ってい た群である。この群では,全例,発症とほぼ同時に 流涎がみられ,1 ~ 3 年以内には嚥下障害が認めら れた。一見,運動ニューロン疾患の球麻痺症状に類 似するが,全例,舌に萎縮は認めず,筋電図でも明 らかな所見を認めず,下位運動ニューロン障害の証 拠は得られなかった。この症候は,患者が自然な状 況下では,嚥下が可能であることが多いなど,いわ ゆるʻ意図性と自動性の解離ʼがみられ,前部弁蓋 部症候群(= Foix─Chavaney─Marie 症候群)と診断 された。本群の患者 7 の脳血流 SPECT(123I─IMP) を図 3─B に示した。左に優位な血流低下が,下前 頭回およびその近傍に限局していた。  失構音型は,上記の前部弁蓋部症候群以外では, 発症 5 ~ 7 年までの時点でも,失構音のみが進行す る型(患者 12 ~ 14),失構音の進行とともに,発 症 2 ~ 3 年後に,小脳症状(体幹失調や四肢失調で, 患者によって異なる)を呈する型(患者 15 ~ 17), 発症 2 ~ 5 年以内に,パーキンゾニズム,中心回症 状(拙劣症,二点識別覚障害)などを呈し,臨床的 には CBS の診断に至る一群があった。眼球運動障 害を呈する患者もあったが,全例ではなかった。ま た,この群の発語は,失構音の範疇には入るが,引 き延ばしやプロソディーの平坦化を認め,特異性を 認めた。吃音を認める場合もあった。 Ⅳ.考  察  以上より,PNFA/ nfvPPA に関して,臨床的な所 見・経過から,さらに下位分類がなされることが推 測された。下位分類およびその臨床経過・言語およ び関連症状・病巣の首座・臨床診断あるいは病理診 断の特徴は,図 4 に示した。詳細は他報告を参照 されたい(大槻 2010a,2010b,2012)。亜型分類と しては,①前頭葉性失語型(ブローカ失語・超皮質 性運動失語),②前部弁蓋部症候群型,③純粋失構 音型の 3 つに大別され,③はさらに細かい亜型に分 類できる可能性が示唆された(図 4)。  1.前頭葉性失語型(ブローカ失語・超皮質性運 動失語)  この群は初診時に失構音の他,喚語障害(=単語 想起障害),文産生障害,文理解障害を中核にした 図 3 患者 3,7 の脳血流 SPECT(123I ─ IMP) A:患者 3 B:患者 7

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2015年 9 月 30 日 (301)39 失語症を呈し,加えて,同時発話・保続など,前頭 葉機能低下を示唆する所見を認めた。その後,少な くとも 3 ~ 5 年以内には,bvFTD にみられるような 精神症状や行動異常がみられた。脳血流 SPECT で は,典型例では左前頭葉背外側全般の低下がみられ た。これは,要素的症状と病巣の関係(図 5)から 図 4 PNFA/nfvPPA の症状・経過・病巣 経過 言語および 関連症状 病巣の首座 臨床診断 (病理) ブローカ失語 超皮質性運動失語     ↓   3 ~ 5 年以内  ・精神症状  ・行動異常 失構音 喚語障害 文産生障害 同時発話/保続 前頭葉全般 前頭葉性失語型 純粋失構音  +流涎   ↓ 1 ~ 3 年以内 ・嚥下障害 前部弁蓋部 症候群 (FTLD ─ TDP) 島~前部弁蓋部 早期の口部 顔面失行 前部弁蓋部 症候群型  純粋 失構音 ↓ 5 ~ 7 年後 他症状 (-) 中心前回 純粋 失構音 ↓ 2 ~ 3 年 失調 純粋失構音 ↓ 2 ~ 5 年以内 ・Parkinsonism ・中心回症状 CBS 中心前回  ~ 基底核 失構音  引き延ばし  プロソディー平坦化 純粋失構音型 失 構 音 の み 図 6 PNFA/nfv PPA の分類 前頭葉型 前部弁蓋部 症候群 純粋失構音限局型 失調型 文産生障害型 発語失行(失構音)型 病理所見 FTLD ─ TDP FTLD ─ tau CBS/PSP型 図 5 要素的症状と病巣部位 失構音 失構音のない 音韻性錯語 喚語困難 理解障害(単語) 喚語困難 (語列挙障害>> 視覚性呼称障害) 喚語困難 語音弁別障害

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みても,その機能低下の首座が,下~中前頭回およ び中心前回下部であり,一致すると考えられた。た だし,画像所見に関しては,全例が初期からこのよ うな脳血流 SPECT 所見を呈していたわけではなく, 初期診断には,臨床所見がもっとも有用と推測され た。  2.前部弁蓋部症候群型  発語障害とほぼ同時期から流涎・嚥下障害がみら れ,前部弁蓋部症候群を呈し,発症から 1 ~ 3 年と いう短い期間で,経口摂取できないほど嚥下障害が 進む群である。進行性偽性球麻痺の形を呈し,運動 ニューロン疾患に一見類似するが,下位運動ニュー ロン障害の所見は,少なくとも発症から数年間は認 められない。類似報告も散見される(Lampl ら 1997, 中島ら 1994,Tyrrel ら 1991)。本検討の患者 9 では, 剖検所見を得たが,病理診断は GTLD─TDP であっ た(Otsuki ら 2010)。  3.純粋失構音型  ここでは,①失構音のみで,発症 5 ~ 7 年経ても, 発語症状は進行するが,他の症状は伴わない群と, ②この群と基本的に同様の症状であるが,加えて, 発症 2 ~ 3 年後に失調症状も伴う群,③ 2 ~ 5 年以 内に中心回症状やパーキンソニズムを呈し,やがて CBSと診断される群がある。②の失調症状の内容 は,体幹失調が前景で歩行障害を呈する場合や,四 肢失調を呈する場合もあり,患者によって異なった。 ③の群の失構音には,引き延ばしやプロソディーの 平坦化がみられ,特徴的であった。  4.進行性非流暢性失語の考えかた  Gorno─Tempini ら(2011)の診断基準が提示さ れてから,その基準に依拠した多くの報告がなされ たが,一方で,その診断基準の是非も多々指摘され ている。そのような流れの中で,例えば,Wick-lundら(2014)は,進行性失語患者 84 例中,この 診断基準で分類可能であったのは 69%に過ぎなか ったと報告している。特に,PNFA/nfvPPA に関し ては,その要件として,1.失文法的な発話と 2. 発語失行(=失構音)のいずれかを満たすとされて いるが,これに対しての批判も少なくない。むしろ, 分類として感度が高いのは,AOS(発語失行)の有 無であるという知見(Croot ら 2012),文産生障害 型と発語失行型に分けたほうがよいという見解もあ る(Harris ら 2013)。なぜならば,文産生障害型は FTLD─TDP に よ り 関 連 が 深 く, 発 語 失 行 型 は, FTLD─tau であることが多いという病理診断につな がるからである(Harris ら 2013)。また,早期の軽 症時には,文法障害タイプ(PPA─G)と発語障害タ イプ(PPA─Sp)に分類したほうがよいという提言 もある(Mesulam 2012)。これらを総括すると, PNFA/nfvPPは,少なくとも,発語失行型と,文産 生障害 / 文法障害型に分類する必要があることはコ ンセンサスが得られていると考えられる。  本検討でも,文産生障害・文法障害型は,患者 1 ~ 6 の前頭葉性失語型(ブローカ失語・超皮質性運 動失語)に対応する。また,純粋発語失行型は,純 粋失構音型に対応する。また,本検討では前部弁蓋 部症候群が進行する一群があること,加えて,純粋 失構音型にも,さらに下位分類がありえる可能性が 推測され,これらの分類は病理学的所見との整合を 得る上でも重要と推測される(図 6)。 ま と め  1)言語症状を前景に呈する変性疾患のうち,い わゆる非流暢性失語として,現時点で,3 型の臨床 型が推測された:①前頭葉性失語型,②前部弁蓋部 症候群型,③純粋失構音型である。  2)これらは,画像所見で特徴が明らかでない時 期でも,初診時に,失語症のタイプ,特徴ある所見 (失構音,喚語障害,文産生障害,同時発話,保続, 口部顔面失行)などを検討することで,どの群に入 るのかある程度推測が可能である。  文  献

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■ Abstract

Symptoms and prognosis of PNFA/ nfvPPA

Mika Otsuki*

 This study aimed to propose the classification of the patients who met the criteria of PNFA/ nfvPPA, which predicts the prognosis. Patients with nfvPPA were included(n=24). All patients underwent a stan-dardized clinical assessment, neuropsychological examinations including Western Aphasia Battery, sen-tence making test and, neuroimaging examinations(MRI and regional cerebral blood flow using SPECT). Six patients were diagnosed as having aphasia such as Broaʼs aphasia or transcortical motor aphasia which are caused by the frontal lobe lesions. The rest 18 patients showed pure anarthrie/ apraxia of speech were divided into some subgroups:1)5 patients developed pseudobulbar symptoms and showed anterior oper-culum syndrome, 2)3 patients showed only anarthrie/ apraxia of speech for 5─7 years from the onset, 3)3 patients were accompanied ataxia in 2─3 years, 4)7 patients developed parkinsonisms or central gyrus syndromes and diagnosed as having CBS in 2─5 years. The result indicated that the PNFA/ nfvPPA could be divided into at least 3 subtypes, and these clinical symptoms at first consult after 1─3years from the onset could predict the prognosis.

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