1 遠 藤 利 彦 (東京大学) 2 http://www.snoopy.com/comics/peanuts/meet_the_gang/meet_linus.html 移行対象(transitional object) 「ライナスの安心毛布」 D. W. ウィニコット 育児で大切なのは「ほどよい関係」 • 子育ち・子育てに「たった一つの理想型」はない • なぜならば、子どもも大人(親・保育者)もみんな、 元来、一人ひとり違うから、それぞれの子どもと 大人が置かれた生活状況も異なるから • 「基本」だけをおさえて、あとは一人ひとり高度 に個性的な子どもに教えてもらいながら、また 自分の個性を活かしながら、さらに自分たちが 置かれた状況を現実的に見据えながら、「それ ぞれの形」を創っていくべきもの • 「基本」の一つ=
アタッチメント
3 • 新型コロナウイルス感染症に伴う乳幼児の 保育・生育環境の変化に関する緊急調査 • 〈園対象〉『保育・幼児教育施設における新型コロナウ イルス感染症に関わる対応や影響に関する調査』 • 〈保護者対象〉『新型コロナウイルス感染症流行に伴う 乳幼児の成育環境の変化に関する緊急調査』 • http://www.cedep.p.u-tokyo.ac.jp/projects_ongoing/covid-19study/ 4コロナ禍の状況下における保育
• マスクがあっても感情伝達は十分可能 顔の上部だけでも表情は豊かに伝わる • 「目は口ほどにものを言う」 目は効果的なコミュニケーション・ツール • 白目と黒目のコントラスト→視線の動きを伝達 視線→「~に対して」 表情→「どんな気持ちを」 • 視線と表情の組み合わせ→「~さんは、今、 □□について○○の気持ちを持っているはず」 →「社会的参照」(他者の心をコピーして活用) 5 6 見る・見られる・見せる 読む・読まれる・読ませる コミュニケ-ション・ツール としてのヒトの目の進化 視線→「何について?」 表情→「何を?」 なんか不気味! でも、あれって、食べられるのかな? ニコニコ ドリアン、おいしそう、食べたい 社会的参照 (social referencing) 7 視線→「~について」 表情→「どんな」 子どもは他者の視線と表情 から、他者の心(=評価等) をコピーして、活用する →最も効率的な学習 参照される側の養育者 →養護的感情の高まり • 顔の複数の表情筋が心の状態を多重発信 • 眉毛の引き上げ・目の見開き・瞳孔の開き →「興味関心の大きさ」「特別な感情・愛情」など • 眼輪筋→「うそのない微笑み」(喜び・愛情)など • 愁眉筋→「困難・禁止・嫌悪」など etc. • ヒトの子どもは視覚刺激としてのヒトの顔を最 も好み、とりわけ目に特別な関心を寄せる。 • 視線+顔上部の表情+言葉かけ+身振りを フルに使って、子どもの気持ちとつながろう • 感情伝染:大人の感情は子どもにうつる →どっしりと構え、明るく安心感を与えよう 8• 広い場所で激しく動くことがなくとも、狭い場所で も身体の小さな子どもは、ちょこまか頻繁に動く →運動量はそれなりに確保される • 子どもの遊び→「乱雑の中の探索」 「なければ探す、自分で作る」 “Less is More” • 子どもの想像・創造の世界は無限大 物理的には制約されていても、イメージの中 で自由に活発に遊ぶことができる • 「ごっこ遊び」→子どもの想像は重なり合う 物理的世界と想像世界をまたいだ仲間遊び 9 • 「密」の回避が関係の希薄化を招くことはない • 『アタッチメント』は『スキンシップ』ではない • 大切なのは、身近な大人が子どもが信頼できる 「安全な避難所」「安心の基地」であること • ただ、たくさん、長く抱っこしてあげることではな く、子どもの感情が崩れた時にはそれを受け止 めて、共感しつつ立て直してあげること、 • そして、元気になったら、自分のもとに留めてお かずに、一人で、あるいは仲間と自発的に遊べ るよう、ちゃんと背中を押し応援してあげること 10
生涯発達における乳幼児期の布置
-縦断研究が示すアタッチメントの枢要な役割- 11• 日本における縦断コホート調査
• 川崎プロジェクト • ベネッセ・家庭教育縦断調査 • 慶應義塾大学・日本こどもパネル調査• JST・すくすくコホート縦断調査 Japan Children's Study (JCS)
• 保育コホート研究
• 子どもに良い放送プロジェクト
• 子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)
The Japan Environment and Children's Study (JECS)
• 21世紀出生児縦断調査 etc.
13 • 世界における長期縦断研究の実際 • アタッチメントの連続性・非連続性に関する30~40年に亘る長 期縦断研究(米独中心) • 遺伝と環境の相互規定的影響・エピジェネティクス等に関する双 生児研究(欧米圏中心) • 精神障害の発生に早期経験が及ぼす影響を問う発達精神病理 学的研究(e.g. Dunedin) • 特異な歴史的状況下に置かれた特定コホートの長期追跡調査 (e.g. 大恐慌) • 子どもを取り巻く家庭内外の保育も含めた環境全般の発達的影 響を問う総合型縦断研究(e.g. NICHD, EPPE) [東大Cedep] • Natural Experiment:非定型的な養育環境に置かれた剥奪児
に関する縦断研究(e.g. BEIP)
• Experiment:特定の早期介入の長期的効果の検証を目的にし た追跡研究(e.g. Perry, Abecedarian・・・・) etc.
14 Nelson, C. A., Fox, N. A., & Zeanah, C. H. (2014). Romania's Abandoned Children: Deprivation, Brain Development, and the Struggle for Recovery. Harvard University Press.
BEIP(Bucharest Early Intervention Project)の中間的成果
・チャウシェスク政権が残した未だ癒えない深い爪痕 ・深刻な環境剥奪にさらされた遺棄児の心身発達のその後 ・知情意・人格・アタッチメント障害(RAD/DSED)等の指標 ・身体発育(FTT)・頭囲・脳神経・細胞(e.g. テロメア)等の指標 ・環境変化(施設→里親)がもたらす影響:ランダム割り当て ・環境変化のタイミング・施設生活の長さ等と予後 ・里子は施設に残った子より発達は良好だが一般児には及ばない ・全般的に斉一な遅滞・歪曲というよりは不均一な心身発達etc. ◇乳児期のアタッチメントの剥奪→殊に自己と社会性発達に長期的ダメージ
自己と社会性の力=「非認知」
• 「自己」にかかわる心の性質 (→個性化) (自分を大切にし、自分を律し、自分を高めていくための力) 「自尊心/自己肯定感」・「自制心」・ 「グリット」・「自立心/自律性」 など • 「社会性」にかかわる心の性質 (→社会化) (集団の中に溶け込み、人との関係を作り維持していくための力) 「心の理解能力」・「共感性/思いやり」・ 「協調性」・「道徳性」・「規範意識」 など • 両側面に関わる「感情の制御・調節」 15 16 ジェームズ・ヘックマン(労働・教育経済学:2000年ノーベル経済学賞) ・子どもに対する教育投資効果→乳幼児期への投資が最も効果的 ・就学後の教育の効率性を決めるのは、就学前の子育て・保育の質 ・乳幼児期への投資は大人になってからの15~17%の利益還元に通じる ・ペリー就学前計画:乳幼児期の保育が40歳時の経済状態・幸福を分ける ・特に恵まれない環境にある子にとって乳幼児期の保育はきわめて重要 ・それは「認知」以上に「非認知」能力を促すことを通して生涯発達に影響 ◇家庭外の安定した大人との関係→「非認知」=自己と社会性の発達を補償17
Heckman, J. (2006).
Skill Formation and the Economics of Investing in Disadvantaged Children.
Science, Vol. 312 no. 5782 pp. 1900-1902. 18
「 子 育 て 支 援 」 政 策 (保育サービス・産休 育休・児童手当など) が、他のいかなる政 策よりも、「労働生産 性 」 「 経 済 成 長 率 」 「出生率」を引き上げ、 「子ども貧困」「自殺 率」を低下させる。 19
What do we know about the effectiveness of early education programs? The international context for understanding VIDA December 9, 2013
21
効果の大きさをいかに評価するか?→介入群と一般サンプルの隔たり 何が効果を上げたのか?→介入の中身はブラックボックス Small-size / Intensive / High-cost → Generalization ???
• 子どもの発達と教育をめぐる世界的動向
(e.g. OECD諸国の動き)• 見直されつつある「乳幼児期」の重要性
• 生涯発達の基礎工事:高度な学校教育も確かな 「土台」の上に積み上げられてこそ益をなす• 見直されつつある「非認知」の大切さ
• Well-beingに至る基礎工事+「認知」「学力」も 「非認知」の支えがあってこそ確実に伸張する• 「非認知」の中核→自己と社会性の心の力
• それを育む揺りかごとしてのアタッチメント
22 • マシュマロ・テスト: ウォルター・ミシェル 1970年~追跡調査 • 幼稚園4歳児を対象 • 「1個、すぐに食べてもいいけど、15分待っていられたら2個あげるね」 • 1/3が待って2個もらう→その後の学業成績や社会的成功を長期的に予測 • 幼児期の「IQ」(認知)以上に「自制心」(非認知)が重要 • 「異時点間の選択のジレンマ」(アリとキリギリス) / 「自他間の選択のジレンマ」 • それは社会性にも強く影響をもたらす:自己利益中心にばかり行動すると仲間の信 用を失って長期的には集団の中で幸せになれない(「将来の影」) 23 • OECDレポート(2015)が掲げる「非認知」“Skills for Social Progress : The Power of Social Emotional Skills”
• 「認知」「非認知」スキルが予測する多様な心理社会的適応 • 所得は「認知」だけでは説明され得ない→「非認知」の重要性 • 「非認知」→「認知」の因果関係は“robust”:その逆因果は× • ターゲットとする「非認知」=「社会情緒的」スキル • 個人および社会における生産性への寄与が期待されるもの・ 成長可能性が見込まれるもの・測定可能なもの • 「長期的目標の達成」 / 「他者との協働」 / 「感情の管理」 • 「スキルがスキルを生む」(Skills beget Skills)
• 殊に社会情緒的スキルの土台を就学前期に築くことの重要性 → “Starting Strong” 「人生の始まりこそ力強く」
Education 2030 (OECD)
『“vuca”な世界を生き抜く力』
Volatility(激動) Uncertainty(不確実) Complexity(複雑) Ambiguity(曖昧) Agency(責任主体性)/Co-agency(共同主体性) 25 26 ・子ども貧困の重い枷 ・時代推移→社会的流動 性の狭まり(格差の増大) ・バッファーとしての睡眠等 の生活習慣、読み聞かせ、 温かい関係性・感情的風 土、親と子どもの教育アス ピレーションの高さ、学校 等の周囲からの支援など ・胎内環境の重要性(胎児 プログラミング:DOHaD 仮説) ・・・・・・・ 27 • Feinstein Graph • 22 か 月 時 に 低 SES で 知的に高水準の子は、 高SESで知的に低水準 の子に6~10歳の間に 抜かれてしまうFeinstein, L. (2003), Inequality in the Early Cognitive Development of British Children in the 1970 Cohort. Economica, 70: 73–97. doi:10.1111/1468-0335.t01-1-00272 • 大阪府箕面市データ • 貧困状態にある子ども の学 力が10歳を境に 急激に低下 • 一 方 で 家 庭 の 生 活 習 慣と子どもの「非認知」 がバッファーになる 28
29
自己と社会性のゆりかごとしての
アタッチメント
生涯発達の鍵となるアタッチメント
• 子どもは容易に怖がる・不安がる存在 • そして泣きながら身近な誰かにくっつこうとする • くっついて安全感・安心感に浸ろうとする= アタッチメント
• 一日に何回も繰り返される至極当たり前のこと • しかし、これがいかに確実に安定して経験できる かが、生涯に亘る心身の健康な発達の鍵になる 30 31 Bowlby, J. • 不適応児・施設児への心理治療/戦争孤児研究 →「母性的養育の剥奪」 (cf. ホスピタリズム) • 二次的動因説(おっぱいを求めてくっつく)の否定 →一次的欲求としてのアタッチメント (何かのためにではなくくっつきたいからくっつく) • アタッチメント理論 →早期経験と関係性・パーソナリティの生涯発達• ヒトの赤ちゃんの特殊性
生理的早産:摂食・運動・体温維持→無力 体重の重さ → 養育負担の大きさ → 父親の子育て参加(父母子) → 「おばあちゃん」の役割 → 「集団共同型子育て」 脳の未完成状態→発生プロセスの重要性 養育的投資の長期化 • ヒトの乳児→能動的近接能力に乏しい 本源的環境・養育者依存性(くっついてもらう必要) 3233
アタッチメントと安心感の輪
34•Attachment
= 何らかの危急時あるいは危機が予 期された時に生じる恐れや不安等のネガティヴな情動 を、特定他者への近接性の確保を通して制御・調整しよ うとする行為傾向(→心理行動/神経生理的制御機構) • 一者の情動の崩れを二者の関係性によって制御 外界と内界の間にあって「緩衝帯」として機能 → 特定他者への近接を通した「安心感」の回復・維持 → 保護してもらえることへの確かな「見通し」 → 「見通し」に支えられての自発的「探索」 → 「一人でいられる能力」=自律性の獲得・拡張「安心感の輪」
(circle of security) 35 物理的に「くっついていること」そのものよりも 「いざとなったらいつでもくっつける」という感覚の重要性 [感情の調律・制御] [探索の支持・促進]『安心感の輪』
・・・→ 危機との遭遇 → ネガティヴな情動経験(恐れ・不安・欲求不満等) → 「安全な避難所」への近接(アタッチメント) → ネガティヴな情動の調節 / 情緒的燃料補給 → 「安心の基地」からの探索・遊び → 危機との遭遇・・・ • この輪がいかに自然にかつ確実に機能し得るか →子どもの健やかな心身の発達のカギ • 子どもの成長=徐々にこの輪を広げること 「一人でいられる時間」の拡張 「避難所」:感情を立て直す / 「基地」:探索を促す 36Autonomy / Relatedness
• 「危急の場合には必ず2人になれる・2
人でいられる」という高度な見通し・確信
に支えられて「1人で自律的にいられる」
37 • アタッチメントとは恐怖管理・安全確保のための 心身の仕組み(危機に際して特定他者に「くっつ く」ことを通して定常状態に戻ろうとする) • 緊急反応状態(恐れ・不安)から平常状態への 回復(ホメオスタシス)を可能にする中で、脳神 経も含めた心身の健康な発達が支え・促される • 恐れ・不安時に特定他者に確実にくっつける経 験を基に、その他者は「避難所・基地」化し、危 急の際には、そこに近接できるという見通しに 支えられて、子どもは高度に自律的になり得る 38• 子どもは親を選べない
• 親が自分にどう応じてくれるか合わせて、辛う じてでも何とか安心感を維持しできるように、 自分のくっつき方を徐々に調整し始める→アタッチメントの個人差
「安心感の輪」の回り方に違いが生じる 39 養育者との分離に際し、泣いたり混乱・苦痛を示すという ことがほとんどない。 分離時に泣いても、その後の再会場面でスムーズに養育 者を迎え入れることができる。 養育者をスムーズに受け入れられず、逆に怒りを示した りして、グズグズとして状態を長く引きずってしまう。 分離場面で苦痛を 示すか 養育者とスムーズに 再会ができるか NO NO YES YES A: 回 避 B: 安 定 C: アンビヴァレント ストレンジ・シチュエーション法41 A 回避型 (シグナル最小化) B 安定型 (シグナル最適化) C アンビヴァレント型 (シグナル最大化) D 無秩序・無方向型 Organized (行動にまとまりあり) Disorganized (行動にまとまりなし) 養育者にくっつきたいのか、養育 者から離れたいのかよく分からな い、どっちつかずの行動を示す(フ リーズ:固まる・すくむ・うつろ)。不 適切な養育(虐待等)と強い連関。 「虐待は解決不可能なパラドクス」 • 安定型 報酬的応答確率[高]・一貫性[高] • 回避型 報酬的応答確率[低]・一貫性[高] • アンビヴァレント型 報酬的応答確率[中]・一貫性[低](ランダム性[高]) • 無秩序・無方向型 侵襲的応答確率[高]・一貫性[低] 43
• 臨床的視座からのアプローチ
→アタッチメント障害
• DSM-5
RAD:反応性アタッチメント障害
Reactive Attachment Disorder
DSED:脱抑制型対人交流障害
Disinhibited Social Engagement Disorder
• RAD:反応性アタッチメント障害 (A)行動抑制・情動的引きこもり 心的苦痛時でも養育者に慰撫を求めない、慰撫に反応しない (B)持続的な社会的・情動的混乱:以下の少なくとも2つ ①他者への社会・情動的反応の乏しさ ②ポジティヴ情動の少なさ ③説明不可能ないらだち・悲しみ・恐れ(非脅威的相互作用でも) (C)極端に不適切な養育状況:以下の少なくとも1つ ①社会的ネグレクト・剥奪(基本的な情動的欲求の持続的無視) ②安定したアタッチメントを阻む主要な養育者の頻繁な入れ替わり ③対象選択を阻む異常な環境(子に対して大人の数が極端に少ない施設等) (D)基準(C)の養育が行動障害の原因をなす (E)自閉症スペクトラム障害とは異質 (F)5歳よりも前に顕在 (G)最低9か月以上の発達年齢 45 • DSED:脱抑制型対人交流障害 (A)見知らぬ大人への近接・相互作用:以下の少なくとも2つ ①見知らぬ大人への近接・相互作用に抑制・遠慮がない ②過剰になれなれしい言語的・身体的行動 ③探索で離れて行く際に大人を振り返らない ④見知らぬ他者から離れるのに躊躇が認められない
(B)基準(A)の行動が衝動性(e.g. ADHD)だけでは説明不可
(C)極端に不適切な養育状況:以下の少なくとも1つ ①社会的ネグレクト・剥奪(基本的な情動的欲求の持続的無視) ②安定したアタッチメントを阻む主要な養育者の頻繁な入れ替わり ③対象選択を阻む異常な環境(子に対して大人の数が極端に少ない施設等) (D)基準(C)の養育が行動障害の原因をなす (E)最低9か月以上の発達年齢 46 47
好奇心を満たす
自発的な「遊び」こそ真の「学び」
• 自発的な遊び/学びを支えること
• 「子どもの豊かな遊び/学び」の両輪
• 「孤独な科学者としての学び」(Piaget的学び) • 子どもは環境との相互作用の中で学ぶ • 自発的に仮説をもって実験・検証・修正する →自分の頭で考える力 • 「社交的な法律家としての学び」(Vygotsky的学び) • 子どもは他者との社会的相互作用の中で学ぶ • 「2人の心のやりとり」を内面化する →他者と共同して学び合う力 48『幼児期の終わりまで育って欲しい10の姿』 2018~ 保育所保育指針・幼稚園教育要領・・・ 1. 健康な心と体 2. 自立心 3. 協同性 4. 道徳性・規範意識の芽生え 5. 社会生活との関わり 6. 思考力の芽生え 7. 自然との関わり・生命尊重 8. 数量・図形、文字等への関心・感覚 9. 言葉による伝え合い 10. 豊かな感性と表現 -主体的で対話的な深い学び- 49 50 “Gardener”か“Carpenter”か 「木工職人」よりも「庭師」としての養育者・教師 思い描いていたたった一つの形、完成体を設計 図通りに作るよりも、適宜、陽に当て、水やりを する中で、思ってもみなかったところに思いもよ らない花を咲かすことを楽しむ “Exploration”から“Exploitation”へ 子ども期における乱雑の中の「探索」こそが、そ の後の秩序の中の「活用」につながる • アタッチメントとは恐怖管理・安全確保のための 心身の仕組み(危機に際して特定他者に「くっつ く」ことを通して定常状態に戻ろうとする) • 緊急反応状態(恐れ・不安)から平常状態への 回復(ホメオスタシス)を可能にする中で、脳神 経も含めた心身の健康な発達が支え・促される • 恐れ・不安時に特定他者に確実にくっつける経 験を基に、その他者は「避難所・基地」化し、危 急の際には、そこに近接できるという見通しに 支えられて、子どもは高度に自律的になり得る 51 52
アタッチメントと脳・身体の発達
アタッチメントと脳・身体の発達
• 恐れの状態→逃げるための緊急反応
• 心臓・血管・内臓・脳神経系など、身体各所に 大きな負荷→効率よく元通りにされないと形成 途上の子どもの脳や身体の発達にダメージ • 「隠れた影響経路」 (→hidden trauma : e.g. 被虐待児等)
アタッチメントが神経-生理学的側面に及ぼす影響
e.g. HPA軸(Hypothalamic-Pituitary-Adrenal axis)[視床下部-脳下垂体-副腎皮質系]
SAM軸(Sympathetic-Adrenal-Medullary axis)[視床下部-交感神経-副腎髄質系]
海馬, 左半球, ミラーニューロン・・・/ 心血管・内臓・内分泌系・・・ ストレスセンサー/ 恒常性 /概日リズム / 免疫機能 etc. • 12・18カ月のアタッチメント→32歳時の身体的健康(Puig et al. 2013) →成人期において幼少期の不安定群は安定群の4倍の身体症状を訴える 53 54
アタッチメントと心の発達
アタッチメントと心の発達
アタッチメントの二重過程
• 感情の調節・立て直し
子どもの崩れた感情をなだめ、回復させる →自他への基本的信頼+自律性・たくましさ• 感情の調律・映し出し
子どもの感情に寄り添い、映し出してあげる →心の理解能力・共感性・思いやり 55基本的信頼感と自律性・たくましさ
56 • 特定の他者に対するくっつき(近接)を通して、 安全の感覚を回復・維持し、他者は基本的 に誰でも自分を確実に保護してくれる、自分 は確実に保護してもらえる・愛してもらえると いう基本的信頼感=「愛の理論」を得る • 子は探索する中で自然に適度なネガティヴ 感情を経験→自ら何とかしたいと思い、能動 的にシグナルを送ることで他者を動かし感情 を立て直す→それが自分にはできるという 自信)→自律性・自己効力感・心のたくましさ• 主要な養育者との間で繰り返された関係性 →その後の個人特有の「対人関係テンプレート」 • 主要な養育者によってなされたことを、基本的に、 子どもは他の様々な対象にも期待し、行動する • 被虐待児における社会的情報処理の偏り • 他者の怒りへの過敏性(悲しみ/苦痛への相対的鈍感性) • 真顔を怒りと誤認識する傾向 etc. →悪意のないところに悪意を読み取りがち →対人関係トラブル・関係性の再演・再被害化 57 • Johnson et al.(2007, 2010)による「愛の理論」 (Gopnik, 2009)実験 • 12カ月児:secure / insecure アタッチメント • 安定型の子ども:小○(子)の泣きに大○(親)が 戻ってくることおよび小○が近接することを期待(そ うでないと驚いて長く見る) • 不安定型の子ども:小○(子)の泣きにかかわらず 大○(親)は戻らないこと(回避型はさらに小○が距 離を置くこと)を期待(そうでないと驚いて長く見る) 58
Johnson, S.C., Dweck, C., Chen, F.S., Ok., S.J., Stern, H.L., & Barth, M.E. (2010). At the intersection of social and cognitive development: Internal working models of attachment in infancy. Cognitive Science 34(5), 807-825. 59 ふるえながら 泣き始める 「期待違反法」を用いた実験 60 Harris, P. L. & Corriveau, K. H. (2011). Young children's selective trust in informants. Philosophical Transactions of Royal Society. B,
366,1179–1187 doi:10.1098/rstb.2010.0321
• 養育者は、子どもの感情をただ立て直すだけで なく、自らが「社会的な鏡」となり(つい子どもと同じ ような表情や声の調子に なるなどして)、子どもの 様々な心の状態に調律し、映し出す • ミラーニューロンの関与? • また、子どもの心の状態に合致した発話を伴わ せる→子どもは自分の心の状態に適切なラベ ルを貼りつけ、理解→さらに今度はそれを他者 にもあてはめることで他者の心も理解 • 自身が共感され受容される中で共感性や思い やりが発達する • 養育者は、子どもの感情をただ立て直すだけで なく、自らが「社会的な鏡」となり(つい子どもと同じ ような表情や声の調子に なるなどして)、子どもの 様々な心の状態に調律し、映し出す • ミラーニューロンの関与? • また、子どもの心の状態に合致した発話を伴わ せる→子どもは自分の心の状態に適切なラベ ルを貼りつけ、理解→さらに今度はそれを他者 にもあてはめることで他者の心も理解 • 自身が共感され受容される中で共感性や思い やりが発達する
心の理解能力・共感性・思いやり
61 乳児 養育者 子どもは自分の身体や心の状態に、 それらに合致した適切な言葉を 貼り付けることができる 共感性と心の 理解能力 子どもの動作や感情などに関わる発話 「痛いね」 「可哀想」 「痛いの痛いの飛んでいけ」共感性・心の理解能力
動作や感情などの発動 62 • ミラー・ニューロン サルの脳における風変わりなニューロンの発見 • 意図的な行為や情動の発動に関わるニューロ ンが、他個体の同様の行為や情動を見聞きした 際にも反応→他者の「心」を直接映し込む鏡 • 他者の行動や意図・情動等の理解・推測 • 原初的共感性および社会性の絶対的基盤 • 模倣・言語・自己認識・自己意識等にも深く関与 • この機能不全→自閉症の中核的特徴か? 63• 共感・調律しつつ制御・調整することの意味
• 初めて注射される赤ちゃん(Fonagy, 2003) ①自らは何も動じず、赤ちゃんの気をすぐにそらそうとする母親 ②赤ちゃんと同じような表情になりながら気をそらそうとする母親 ③赤ちゃんの恐れや怒りに巻き込まれて動揺してしまう母親 →②の母親の子が最も泣き止むのが早く、容易になだめられた• 感情の「包容」=「α機能」
(e.g. Bion) →乳幼児が自らの情動に翻弄されないように、それを包容 し、それに意味を与えながら(=表情や言葉を通して映 し出しながら)慰める 64• 被虐待児:養育者の「α機能」の希薄さが、自 己の心や身体状態の覚知・言語化の困難さ を招来しがち • 現に不適切な養育にさらされる中で「β要素」 (身体内部で生じていることそのもの)は潜在 的に人一倍ネガティヴなものになる可能性。 にもかかわらず、それを「つらい」と覚知し言 語化できない→自らリスク回避的行動をとる ことができなかったり、他者から効率的に援 助を引き出すことが難しくなったりする →二重三重のトラウマに巻き込まれやすくなる 65 • 安定したアタッチメント関係の中で、子どもは感 情の制御(立て直し)と感情の調律・映し出し・ ラベリング(寄り添い)を経験する • その確かな経験は、自己と社会性、具体的に は、子どもの自他に対する基本的信頼感およ び自律性や自己効力感、さらには自他の心身 状態の的確な理解や共感性・向社会性などの 発達に深く関わる 66 67
情緒的利用可能性の大切さ
発達心理学における強調点の移行 「敏感性」 「情緒的利用可能性」 (emotional availability) • 大人はいつも子どもの状態を気にかけて、その後ろを心配 してついて回ったり、転ばぬ先の杖になろうとして先回りし たりするのではなく、どっしりと構え、子どもが求めてきた 時に情緒的に利用可能な存在であればいい • 逆に言えば、特に必要とされない時は、子どもの活動にあ えて踏み込まない(侵害的でない)ことが重要 →アタッチメントの基本原則情緒的利用可能性 個人の特性としてではない二者関係の特質 養育者の側の要因 ・敏感であること ・侵害的でないこと ・環境を構造化すること ・情緒的に温かいこと 子どもの側の要因 ・応答的であること ・養育者を相互作用 に巻き込むこと (養育者と子ども) ⇒子どもを主体とした概念
HIT
MISS
FALSE
ALARM
CORRECT
REJECTION
読み取り / 応答 内的状態 / シグナル あり なし 敏感性 あり なし 敏感な読み取りと応答HIT
MISS
FALSE
ALARM
CORRECT
REJECTION
読み取り / 応答 内的状態 / シグナル あり なし 先回り・干渉 あり なし 敏感な読み取りと応答 72 (1)「空腹」(苦痛)→シグナル(泣き)→授乳→充足 (2)親による「空腹の予期」(かなり適確)→授乳→充足 • (2)が可能な親の方が巧みで、できた親なのか? 確かにそこに子どもの負の感情表出はない • しかし実際はどうか? 「欲求のシグナル→応答」: この順序性が損なわれる時の危険性は大 負の感情表出なし=自発的シグナルの発信なしHIT
MISS
FALSE
ALARM
CORRECT
REJECTION
読み取り / 応答 内的状態 / シグナル あり なし あり なし 敏感な読み取りと応答 情緒的利用可能性 侵害的でないこと 構造化(「黒子」)+温かい情緒的雰囲気(「応援団」)→発達の足場を築く子どもとの関係性の基本
• 安心の基地/安全な避難所である:基本的にどっし りと構え、あちこち不規則に動き回わらない • 子どもがシグナルを送ってきたら応える • 弱って帰ってきたら情緒的に燃料補給してやる • 大人の方から子どもが1人でやっていることに踏 み込むことを極力しない(「黒子」として支える) • 心理的に寄り添いつつ、離れたところから「応援 団」として温かく見守り、時折、声かけなどしてエー ルを送り、子どもの自発的な活動を励ます“alloparenting”の役割
-保育・幼児教育の可能性-75 • 行動遺伝学から見るアタッチメント • 行動遺伝学:一卵性・二卵性双生児等のデータに基づきながら、 心身の様々な特徴(表現型)に現れる個人差が、一人ひとりの 遺伝的差異(遺伝子型)によって、また成育する環境の違いに よってどれだけ説明されるのかを%で算出する • アタッチメントの個人差に関わる「遺伝率」は例 外的とも言えるほど、きわめて小さい=大半が 環境の違いによって説明される→小さい子ども は自ら親や被養育環境を選べない • 「共有環境」(主に家庭内の親の養育など)の違いに よって説明されるところとほぼ同等か、それ以上 に「非共有環境」(例えば家庭外における親以外の大人と の関係など)によって説明されるところが大きい 76• Bowlby理論の中核的仮定
• 「モノトロピー」と「階層的組織化」(1つの関係から他へ)
→child care policyに多大な影響(e.g. Rutter, 2008)
園環境・内容・政策等の方向付け(e.g. 担当制) 施設養護の多角的改善・家庭的養護(里親等)への移行 離別親子・虐待等に関する法的対応・措置 etc. • しかし近年、こうした仮定に批判的な見方も・・・ ・社会的ネットワーク理論 ・集団的社会化理論 ・Hrdy, S.の進化論的議論→ヒト本来の子育ては集団 体制・子どもは元来“alloparenting”に順応し得る • 「統合的組織化」「独立並行的組織化」への注目 77 78 79 ◇アタッチメント理論の本流→階層的組織化モデルを仮定 しかし、実証的データはその妥当性を疑いつつある [母子関係]と[他の大人-子ども関係]のアタッチメントはさほど一致しない ◇統合的組織化(複数他者との関係の統合)モデルを支持する証左
van IJzendoorn et al.(1992)のオランダ・イスラエルのデータ
母子関係よりも母子・父子・保育者等と子の合算愛着係数→年長時の適応を予測
◇独立並行的組織化(複数関係個々が特異な機能)モデルを支持する証左
Howes et al.(1998)の縦断研究(~9歳): 最初の保育者と子どものアタッチメント関係
→母子関係以上に、その後の子どもの対保育者、対教師関係を予測 Howes et al.(1997), Oppenheim et al.(1997):
保育者と子どものアタッチメント→仲間関係における社会的コンピテンスを予測 ◇発達早期:自らは選べない強制された関係性が中心→ “niche-picking” (内的作業モデルに沿った関係の選択)稀少→独立並行的組織化 ただし、加齢→"niche-picking"増→統合的組織化→階層的組織化
アタッチメント対象としての保育者・教師
◇主要なアタッチメント対象の条件 ①身体的・情緒的ケアを十分に 付与すること ②子どもの生活において連続的 かつ一貫した存在であること ③子どもに対して情緒的投資を行うこと ◇主要なアタッチメント対象の条件 ①身体的・情緒的ケアを十分に 付与すること ②子どもの生活において連続的 かつ一貫した存在であること ③子どもに対して情緒的投資を行うこと ◇保育者・教師は全要件を充足=子どもの主要なアタッチメント対象 →しかし、保育者・教師と子どもの関係の重要性は過小視されてきた 80「二つの社会的世界」に生きる子ども
• 家庭と園のコミュニケーション・連携・相互信頼はき わめて大切 • しかし、園は家庭とは子どもにとって異質なところで あることの積極的な意味を忘れない • 保育者や教師は子どもにとってもう1人の主要なア タッチメント対象になり得る • 家庭でのハンディキャップを園は十分に補償し得る • 家庭と園のコミュニケーション・連携・相互信頼はき わめて大切 • しかし、園は家庭とは子どもにとって異質なところで あることの積極的な意味を忘れない • 保育者や教師は子どもにとってもう1人の主要なア タッチメント対象になり得る • 家庭でのハンディキャップを園は十分に補償し得る そこでのアタッチメントは特に園や学校等の集団生活の中で、いかに円滑 な人間関係を持つことができるか、どれくらい楽しく過ごせるかなどを予測 →園環境での経験は特に集団状況での適応に寄与 81園環境におけるアタッチメントの留意点
• 子どもにとって最も混乱が大きいのは、「今、誰にくっつ けばいいのか」の見通しが立たない時 • 子どもにとって最も混乱が大きいのは、「今、誰にくっつ けばいいのか」の見通しが立たない時 • 担当制をとるか否かにかかわらず、子どもにとって一 番大切なことは、確実に安全性の見通しが立つこと、そ してそれが大きくは裏切られないこと、仮に裏切られた 場合にはできるだけ素早く修復されるということ • 担当制をとるか否かにかかわらず、子どもにとって一 番大切なことは、確実に安全性の見通しが立つこと、そ してそれが大きくは裏切られないこと、仮に裏切られた 場合にはできるだけ素早く修復されるということ • 複数の保育者・教師が交代で世話をするような場合に は「この時この場ではあの人が必ず応じてくれるはず」 という明確な予測可能性が子どもの中に成り立つよう 配慮 • 複数の保育者・教師が交代で世話をするような場合に は「この時この場ではあの人が必ず応じてくれるはず」 という明確な予測可能性が子どもの中に成り立つよう 配慮 • 「誰かがその都度」よりは「誰がいつ」を徹底する • 「誰かがその都度」よりは「誰がいつ」を徹底する 82• 集団状況に適した“sensitivity” のあり方
• 「保育・幼児教育環境に家庭的雰囲気を」→確 かに一つの課題ではあるが、集団状況で機能す る子どもに対するケアは親子二者間で機能する ケ ア と は 元 来 、 異 質 な も の で あ る 可 能 性(e.g. Ahnert et al., 2006) • 二者関係的敏感性(Dyad-related sensitivity : DS) 個の欲求に対する反応の素早さと的確さ • 集団的敏感性(Group-related sensitivity : GS) 集団全体に対する共感性・許容性・構造化 etc. 83Ahnert, L., Pinquart, M., & Lamb, M. E. (2006). Security of children’s relationships with nonparental care providers: A meta-analysis. Child Development, 74, 664-679.
集団的敏感性(GS)→子どもと保育者の個別のアタッチメントの安定性にも寄与 →しかも、それは集団サイズに左右されない(二者関係的敏感性DSは左右される) 集団的敏感性(GS)が高い保育者のもとにいる複数の子ども →総じてアタッチメントが安定 全体として集団的敏感性(GS)が高い集団状況 →スタッフの異動等によるマイナスの影響が少 子どもは集団状況で二者状況とは異なる形で安全の感覚を求める (出典) 84
• 子どもは複数他者との関係の中で育つ。そこ には重みの序列があるが、子どもは状況に応 じて異なる他者をアタッチメント対象にし得る • 家庭「外」のアタッチメントは時に家庭「内」のア タッチメントを補償し得る • 保育者・教師とのアタッチメントの質は特に子 どものその後の集団生活での適応を予測する • 保育環境では集団的敏感性の高さが個々の 子どもと保育者の関係性を良好なものにする • 「いつでも誰かが」よりは徹底して「今はこの人 が」ケアするという体制を築くことが有効である 85 • 保育所・幼稚園のような集団状況では、保 育者が完全に母親の代わりになることが必 ずしもいいとは言えない。 • 保育・幼児教育現場は、家庭とはまた違っ た形で、子どもとのアタッチメントの作り方 があって然るべき。
まとめ
87日本の保育の強みとは?
「かかわり」の構造
受容・共感 ・傾聴 自発的な遊び・活動の支援 生活・遊びのきまりの明示 好奇心・探究心を ふまえた遊び ・活動の支援 受容・共感 ・傾聴 集団での遊び・活動の支援 温かく受容的な 雰囲気 1歳児クラス 3歳児クラス・5歳児クラス ※いずれかが高いと、もう一方も高いという構造が認められた 生活・遊びの きまりの明示 88「かかわり」の特徴(1歳児クラス)
受容・共感・傾聴 自発的な遊び・活動の支 援 生活・遊びのきまりの明 示 系列1 4.447 4.255 3.998 3.7 3.8 3.9 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 子どもたちの悲しみや怒り等の情動表現を受け止めている 子どもたちの喜びや感動表現に対して肯定的に対応している 子どもに個別に話しかける際、目線の高さを合わせている 他 ※5段階評定(1-5) 回答者数:5062名 89 「かかわり」の特徴(3歳児クラス) 好奇心・探求心 をふまえた遊 び・活動の支援 受容・共感・傾 聴 集団での遊び・ 活動の支援 温かく受容的な 雰囲気 生活・遊びのき まりの明示 系列1 4.014 4.407 4.346 4.159 4.272 3.8 3.9 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 子どもが身の回りの物に興味や関心をもつことを促している 子どもの疑問や好奇心をくみ取り、遊び等に反映させている 子どもの疑問や好奇心について保育者や他の子と共に考える 他 ※5段階評定(1-5) 回答者数:5416名 90 「かかわり」の特徴(5歳児クラス) 好奇心・探求心 をふまえた遊 び・活動の支援 受容・共感・傾 聴 集団での遊び・ 活動の支援 温かく受容的な 雰囲気 生活・遊びのき まりの明示 系列1 4.094 4.363 4.341 4.057 4.261 3.85 3.90 3.95 4.00 4.05 4.10 4.15 4.20 4.25 4.30 4.35 4.40 保育者の子どもたちへの接し方は温かいものである 子どもたちが自分の考えや欲求を表現しやすい雰囲気である クラスは落ち着いてくつろいだ雰囲気である ※5段階評定(1-5) 回答者数:5444名 91 <結果>保育におけるかかわりの質 • 「受容・共感・傾聴」(全年齢) • 「集団での遊び・活動の支援」(3・5歳児) →相対的に高い自己評価 92• 「受容・共感・傾聴」 →感情の「制御・調整」と「調律・映し出し」の効果 • その両側面が伴った関わりは子どもの非認知 の心(自己と社会性)の発達を支え・促す • 「集団での遊び・活動の支援」 →集団規模や「子ども・大人」比にあまり左右され ない「集団的敏感性」の有効性 • 「二者関係的敏感性」が集団サイズの増大とともに相対的に効 果を低下させるのに対して、「集団的敏感性」を豊かに備えた保 育者においては、子ども同士の協調的・親和的関係性や学び合 いなどが促され、結果的に保育者と個々の子どもとの個別の関 係性も総じて安定・良好なものになる傾向がある 93
• この2つの特徴は、日本の保育現場にお
いて暗々裏に培われ、また伝統的に受け
継がれてきた保育の強みなのかも!?
• 強みならば、もっとそのことを自覚し、そ
の背景にある理屈をしっかり理解した上
で、いかなる子どもに対しても、それをぶ
れずに実践できること→「保育の専門性」
94 95 • 乳幼児期の「教育」への関心の高まり • 私たちの内にある素朴な「教育」イメージ • 小学校以降での学校経験に由来:先生を前に、「お勉強」に関わ る話を辛抱強く聴き、一生懸命ノートをとり、難しい問題を課され て、頭を悩ませ、テストに苦しめられる・・・・・ • そのイメージに従って、園の中でなすべき子どもに対する「特別 な働きかけ」とは何だろうと考えがち→将来の「お勉強」につ ながること(読み書きや数の計算、英語など)に関わる働きかけを 早くから子どもにしてあげるのが大切!?(→「専門性」?) • 保幼小接続・自発的な遊びの一環としてなら時に効果的なことも あろうが・・・ • しかし、これよりはるかに重視されなくてはならな い乳幼児期に固有の「教育」があるのでは? 96• 「保育」= “care”[養護]and “education”[教育] • 日本では長く“care”の部分だけが強調されてきた→そして、保 育は「子どもと遊んでお世話していればいいんでしょ」とあたか も誰にでもできるとても簡単なことのように誤解されがちだった • そして、今、“care” に加えて “education” =何か「特別な働 きかけ」を早くから始めることが大切だという論調が高まる • しかし、本来、殊に乳幼児期に関しては • 「“care” + “education”」ともに/それ以上に • 「“care” / “education”」の見方が正当 • つまり“care”と“education”は表裏一体のも のとしてあり、“care”の質を高めることが、イ コール“education”の質を高めることでもある 97 • 乳幼児期に固有の「教育」とは • 質の高い“care”を通して、人の生涯に亘る心 身の健康や幸福の「基盤」をしっかりと築くこと • その「基盤」 ≓ 非認知的な心の力 ≓ 自己と社会性の力 • ややもすると私たち大人は、短期目線で、乳幼児期 から、子どもの頭の中に既にどれだけの「(特に認知 的な)コンテンツ」が備わっているか(何ができている か)に目を向けがち • しかし、より大切なのはもっと長期目線で、これから 先、子どもが、自分に必要な「コンテンツを自分で探 し・集め・創る(非認知的な)力」を養うことのはず 98 99