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創傷

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Academic year: 2021

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序 文  高齢者の皮膚は真皮の菲薄化や皮下組織の減少な ど,加齢による形態学的変化が生じている。このため, 比較的わずかな外力により,四肢や顔面に広範な弁状 創を生じる場合がある。弁状創の治療方法としては, 弁状に剝脱された皮膚を正確に元の位置へ戻すととも に,壊死を防ぐことが重要であるが,初診時において 創縁の血行が保たれているようにみえる場合において も,創縁の離解や皮膚の壊死をきたすこともある。こ れにより,上皮化までに時間がかかる場合や,二期的 に植皮術を要する例も少なくない。  今回われわれは高齢者の弁状創に対して PICO* 創 を用いることで,特にコンプライアンスの不良な高齢 者に対して,最小限の処置で良好な治療結果が得られ たため報告する。 症 例  症例 1:100 歳,男性。介護老人保健施設入所中に 転倒して当科外来受診となった。左上腕に径 6cm 大 の弁状創を認めた。創の深さは皮膚全層に至るもの で,脂肪組織が露出していた。弁状創の皮膚は菲薄で あり,暗紫色を呈していた。創部洗浄後,弁状創の皮 膚を元の位置へ戻し,PICO による持続陰圧閉鎖療法 (negative pressure wound therapy:NPWT)を開始

* 会津中央病院形成外科・美容外科 ** 日本医科大学付属病院形成外科・美容外科 2015 年 2 月 21 日受領 2015 年 5 月 13 日掲載決定 図 1 症例 1  左上腕の径 6cm 大の弁状創に 対して PICO を装着した。

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した(図 1)。介護老人保健施設にて機械トラブルな どなく経過して,受傷後 5 日目外来受診時に PICO を 解除した。被覆材は創面に固着することなく容易に剝 がすことができ,弁状創の皮膚は植皮と同様な経過で 生着を認めた。一部限局して皮膚欠損を認めたため抗 生剤含有ワセリン軟膏(ゲンタシン®)にて軟膏処置 を継続し,受傷後 16 日目で創閉鎖が得られた(図 2)。  症例 2:94 歳,女性。介護老人保健施設入所中に転 倒して当科外来受診となった。左膝部に径 10cm 大の 弁状創を認めた。創の深さは皮膚全層に至るもので, 脂肪組織が露出していた。弁状創の皮膚は菲薄であっ たが,色調は良好であった。関節可動部であったた め,6-0prolene にて数ヵ所縫合処置を行ったうえで, PICO による NPWT を開始した(図 3)。介護老人保 健施設にて機械トラブルなどなく経過して,受傷後 5 日目外来受診時に PICO を解除したが,創縁の壊死や 創離解など認めることなく,良好な創治癒が得られた (図 4)。 考 察  皮膚は加齢に伴い,肉眼的にも組織学的にもさまざ まな変化をきたす。真皮や皮下組織では,ヒアルロン 酸やコンドロイチン硫酸など酸性ムコ多糖類,膠原線 維,弾性線維などはいずれも減少し,菲薄化する1) これにより皮膚の弾力性は低下して脆弱化し,わずか な外力により容易に皮膚は全層で剝脱するため,転倒 (a) (b) 図 2 弁状創は植皮様に生着  一部皮膚欠損部位も保存的加療にて上皮化し良好な創治癒が得られた。  (a)受傷後 5 日目  (b)受傷後 16 日目 図 3 症例 2  左膝部の径 10cm 大の弁状創に対して PICO を装着した。

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などにより四肢にU字型やV字型の広範な弁状創を受 傷することが少なくない。また加齢した皮膚は,血管 内皮機能の低下で内出血が生じやすく,弁状創は暗紫 色となるため,血流を確認するのが困難なときもある。 特に高齢者の場合,血管の石灰化などにより皮膚末梢 の血流も低下しているため,阻血壊死をきたすリスク が若年者と比べて高く,注意が必要である2)。弁状部 分の幅が 5mm 程度で小さい場合は,紡錘状に弁状部 分を切除して縫合することで,壊死や変形をきたすこ となく一次治癒させることができる場合が多いが,弁 状創が広範な場合は,弁状部分を切除すると縫縮する ことができなくなるため,なんらかの工夫が必要とな る。このような場合,薄く斜めに削られた創縁を垂 直に切除して,層を合わせながら縫合処置が施行され る方法や,弁状に剝離した皮膚を切離して皮下組織を 薄層化し,植皮として生着させるといった方法の報告 もある3)。いずれの方法においても,弁状創の皮下は 広範に剝脱されており皮膚の連続性が途絶えているた め,死腔や血腫を形成しないように注意が必要である。 創部の適度な圧迫は,死腔や血腫の形成を防ぐのみな らず,創部の浮腫の軽減や瘢痕形成の軽減にもつなが るため非常に重要であり,このためタイオーバー法な どが用いられる場合もあるが,これらの手技を外来で 行うには時間を要し,やや煩雑である4)  今回われわれが使用した PICO は,2011 年 3 月よ りカナダにて Smith & Nephew 社から発売が開始さ れ,わが国では 2014 年 7 月より保険収載が可能となっ た新しい NPWT システムである(図 5)。NPWT は 既存治療に奏効しない難治性創傷の治癒を促進させる ことを目的とした治療方法であるが,現在植皮片の 固定など幅広い用途で使用されており5,6),わが国に おいては数種類の NPWT デバイスの使用が可能であ る。他の NPWT システムと比較した場合,PICO の 最大の特徴としては,浸出液を保持するキャニスター をなくし,ドレッシング材で浸出液を処理しながら, -80mmHg の均一な陰圧閉鎖環境を維持する点であ る。キャニスターがないという特性上,PICO に適し た浸出液量は少量~中等量までとなっているが,シン プルで小型・軽量な構造になっているため,外来通院 でも使用が可能である。また,構造のみならず,手技 においてもドレッシング材を貼付して周囲を付属の フィルムで補強し,スイッチを入れるのみで,非常に 簡便である。ドレッシングのパッドの製品規格は 8 種 類あり,創面に合わせて適切なサイズを選択する必要 がある。  今回われわれは,高齢者の転倒による上肢および下 肢の弁状創に対して,PICO を利用することで,タイ オーバーのような煩雑な手技を要さず,陰圧閉鎖環境 を維持することにより適度な圧迫を継続することがで き,簡便に良好な治療結果を得ることができた。さら に,弁状創の血流を気にせず,固定してしまうことで, たとえ血流がなくても,植皮のような機序で生着させ られる可能性も示唆された。症例 1 においては,弁状 創の皮膚は非常に薄く色調は暗紫色であったが,植皮 様に生着させることができた。症例 2 においては,創 部がやや広く関節部にかかるものであったため,数ヵ 所縫合処置を行い皮膚のズレが生じないように補強を 行ったが,弁状創皮下に浸出液が貯留することなく, 創部の離解や辺縁の壊死などもきたさずに経過し,一 次治癒させることができた。いずれの症例においても, 良好な皮膚の固定と創部全体の圧迫は自宅においても 維持され,ドレッシング交換も不要で,浸出液管理も 良好であった。  われわれの施設における高齢者への PICO の使用例 としては,弁状創以外にも小範囲の分層植皮術後の植 図 4 受傷後 14 日目  創縁の壊死や離解を認めず一次治癒が得られた。

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皮片の固定などに使用しており,良好な結果が得られ ている(図 6)。NPWT による植皮片の固定は多くの 報告がされているが5,6),通常の NPWT デバイスで は入院加療が必須であった。PICO を用いることで, 術後早期に NPWT を継続しながら,外来通院加療と することが可能である。  PICO を使用する際の注意点であるが,抗凝固剤内 服患者に対する本システムの適応は禁忌になっている ため,特に高齢者の場合においては,既往および内服 薬の十分な確認が必要である。また,陰圧により感染 性老廃物はある程度除去することができるものの,創 部感染が生じた場合は閉鎖環境により増悪する可能性 が高く,汚染を伴う創部への使用は十分に注意する必 要があり,PICO の添付文書にも明記されている。  PICO を使用した場合の患者負担額は,NPWT の 適応期間と創部の大きさによって異なる。今回われわ れが経験した 2 症例はいずれもドレッシングサイズ 15cm × 20cm(パッドサイズ 10cm × 15cm)を用いて, 5 日間外来での NPWT を行った。表 1 に今回の症例 1 に対して,縫合処置を行った場合と,PICO を用い て外来での NPWT を行った場合の,処置に要する保 険診療点数の比較を示す。現状においては通常の創傷 処理を行った場合と比較して,PICO を適応した場合, 患者負担額がやや高額になることが難点であるといえ る。しかし創閉鎖までの期間短縮や,自宅での処置が 不要である点などを考慮すると,一次治癒の見込みが むずかしい症例や,二期的な植皮術が必要となる可能 性のある症例などにおいては,患者および家族に十分 な利点がある方法であると考える。 図 6 92 歳,女性。  左足背部糖尿病性潰瘍に対して網状植皮を施行し, 固定に PICO を用いた。植皮片は良好に生着した。 表 1 症例 1 に対して縫合処置を行った場合と PICO を使用した場合の保険診療点数の比較 縫合処置を施行した場合 ・創傷処理 筋肉に達するもの 5cm 以上 10cm 未満(1,680 点) ・キシロカイン 1%ポリアンプ 10ml(10 点) ・抗生剤含有ワセリン軟膏 2g(2 点) 計 1,692 点 ・初回加算(2,650 点) ・局所陰圧閉鎖処置(270 点) PICO を使用した場合 ・処置用材料(375 点) ・陰圧創傷治療用カートリッジ(2,160 点) 計 5,455 点

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2)Imayama S:Aging changes of the blood vessels in the skin. Nagoya Medical Journal, 2000; 43: 113-9.

参照

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