構造用アルミニウム合金の
繰り返し弾塑性構成則
宇佐美 勉
1・倉田 正志
2・佐藤 崇
3・葛西 昭
4・萩澤 亘保
5 1フェロー 名城大学教授 理工学部建設システム工学科(〒468-8502 名古屋市天白区塩釜口) E-mail:[email protected] 2学生会員 名城大学大学院理工学研究科建設システム工学専攻修士課程(同上) E-mail: [email protected] 3正会員 (株)長大 耐震技術部(〒305-0812 茨城県つくば市東平塚730) E-mail: [email protected] 4正会員 名古屋大学講師 大学院工学研究科社会基盤工学専攻(〒464-8603 名古屋市千種区不老町) E-mail: [email protected] 5日本軽金属(株) グループ技術センター 企画室(〒421-3291 静岡市清水区蒲原) E-mail: [email protected]. 本研究は,構造用アルミニウム合金を用いた履歴型制震ダンパーの開発研究の一環として,構造用アル ミニウム合金の一軸繰り返し弾塑性構成則について触れたものである.そのために,構造用アルミニウム 合金の繰り返し引張-圧縮試験を多数実施し,鋼材の挙動との相違点を明らかにし,鋼材に対して多くの 実績のある修正2曲面モデルを修正することにより構造用アルミニウム合金に対する新しい構成則を構築 した.最後に,開発した構成則によりランダム載荷の実験結果を予測し,提案構成則の妥当性を検証した.Key Words : aluminum alloy, cyclic elasto-plastic model, modified two-surface model 1. 緒言 我が国における土木建築構造への構造用アルミニウム 合金の年間の需要は1万トン程度(2004年)で,全需要 の0.25%程度といわれ,非常に少ないのが現状である1). 理由の大きなものとしてコスト高が挙げられよう.しか し,アルミニウム合金には,鋼材にない優れた点があり, これらの特長を生かした土木建築構造への利用を模索す ることは重要である. 本研究は,構造用アルミニウム合金を制震ダンパーと して利用するための基礎的な研究である.制震ダンパー として適していると考えられる5000系構造用アルミニウ ム合金は,0.2%耐力が125~195MPa,引張強さが275~ 355MPa,伸びが16%以上に規定されている1).これらの 性能および降伏棚のない特性は,伸び能力は劣るが極低 降伏点鋼LY100に似たような特性を持つことが分かる. アルミニウム合金の比重は鉄鋼材に比べ約1/3であり, 強度差を考慮しても1/2の重量である.さらに空気に触 れることにより,表面に薄い酸化皮膜を作り,アルミニ ウム合金表面を保護し腐食を防ぐ1), 2).そのため鉄鋼材 に比べ腐食に対する考慮が必要なくなる.またアルミニ ウム合金は押し抜きによる形成が容易に出来るため,場 合によっては溶接が不要になり,溶接部の疲労に対する 配慮も回避できる. 構造用アルミニウム合金を制震ダンパーの一つである せん断パネルダンパー(SPD)として使用しようとする 研究3), 4)はあるが,実験的研究にとどまり,履歴挙動を 求めるための数値解析的研究はまだのようである.また, 軸降伏型の制震ダンパーである座屈拘束ブレース (BRB)5)への適用例は著者らの知る限りない. 構造用アルミニウム合金を制震ダンパーに使用するた めには,実験的研究を補完する数値解析も必要である. そのためには精緻な繰返し弾塑性構成則の開発が必須で ある.これに関しては,中込ら6)による先駆的研究があ る.本研究では,制震ダンパーの素材として最も適する と考えられるA5083P-Oアルミニウム合金を取り上げ, 種々の載荷プログラムでの繰り返し引張-圧縮載荷実験 を行った.その結果を基に,鋼材に対して著者らが開発 した精緻な構成則(修正2曲面モデル7), 8))を構造用アル ミニウム合金の挙動を予測出来るように修正を行い,新 しいモデルを構築する.さらに,中込らのモデル6)と開 発したモデルの相違点についても考察を行っている.
2. 実験概要 (1) 実験供試体と座屈拘束材 実験では,平行部を有する中実丸棒試験体を用いた. 素材は構造用アルミニウム合金A5083P-O(JIS H4000/JIS H4100)である 1).平行部は,変位計が取り付けられる 長さを確保するため,56mm(S-供試体)および 100mm (L-供試体)としている.供試体の形状を図-1,寸法を 表-1 に示す.表-1 において L は全長,lは平行部の長 さを示す.S-供試体は座屈防止のため供試体長を短くし てあるが,それでも圧縮でのデータを得ることは難し い場合がある 7).そのため,L-供試体では,座屈拘束ブ レースのアイデア5)を基に,平行部をS-供試体の倍程度 にし,そこに座屈拘束材を設置することを考えた.座 屈拘束材の寸法を図-2,概念図を図-3 に示す.座屈拘 束材は鋼材(SS400)を使用し,供試体の全体座屈が生 じないよう安全係数 5)は,53.5 と十分大きくしてある. 供試体と座屈拘束材との隙間(隙間量は 1 mm)には, 摩擦が極力生じないようアンボンド材として1 mm厚の ブチルゴムまたはグリースで充填した. (2) 実験装置 実験装置は名古屋大学所有のMTS試験機(容量 250kN)を用い,試験体の両端を試験機の治具にねじ込 み固定した7).実験装置および座屈拘束材を設置した L-供試体を写真-1に示す.また,ひずみ速度は,10 -4mm /mm/sec 程度にし,供試体にひずみ速度の影響が出ない ようにした. 測定データは,軸方向荷重と軸方向変位である.荷重 は,実験装置に取り付けられているロードセルによって 測定し,軸方向変位は試験体の平行部に取り付けた2個 の変位計(最小感度0.001mm,写真-1 参照)により測定 した.標点間距離は,S-供試体は50mm, L-供試体は 100mmである.また,弾性係数およびポアソン比測定の ため,試験体軸方向とそれに直交する方向が一体の2軸 ゲージを供試体の中央部付近の表裏に一枚ずつ貼付した. シリーズ 合金種 L (mm) l (mm) A (mm2) 適用 S-供試体 226 56 座屈拘束なし L-供試体 A5083P-O 270 100 254 座屈拘束あり 表-1 供試体寸法 図-1 供試体形状 15 70 φ 18 70 15 l L φ3 6 M36×2 15 70 φ 18 70 15 l L φ3 6 M36×2 図-2 L-供試体に用いた座屈拘束材 12 .5 45 12 .5 15 15 70 20 30 20 70 15 15 30 25 20 25 20 図-3 座屈拘束材の概念図 アンボンド材 (ブチルゴムまたはグリース) 実験供試体 座屈拘束材 アンボンド材 (ブチルゴムまたはグリース) 実験供試体 座屈拘束材 変位計 座屈拘束材 実験供試体 変位計 変位計 座屈拘束材 実験供試体 変位計 写真-1 実験装置と座屈拘束材を設置したL-供試体
(3) 実験方法 測定した軸方向荷重 P と,軸方向変位を初期の標点 間距離で除した軸方向工学ひずみe を用いて,実験デー タとして真応力σ ,真ひずみε ,真ひずみの弾性成分 e ε および真ひずみの塑性成分ε を次式により計算した. p 真応力σ
σ
= 1
P
(
+
e
)
/
A
(1) 真ひずみεε
=
ln
(
1
+
e
)
(2) 弾性ひずみε eE
/
eσ
ε
=
(3) 塑性ひずみε pε
p=
ε
−
ε
e (4) ここに,A は試験片の実測断面積,E はヤング係数であ る. 構造用アルミニウム合金の繰り返し弾塑性挙動を把握 するために,表-2 に示す 7 種類の異なる載荷パターン の実験を行った.表-2 において,S から始まる供試体は S-供試体,L から始まる供試体は L-供試体であり,T は 引張試験,C は圧縮試験を表し,L-供試体の内,R の付 いた供試体は座屈拘束材を設置して実験を行った供試体 である. 実験の種類は以下の7種類である. [1]単調引張,[2]単調圧縮,[3]塑性変形に伴う 弾性域の大きさの変化を調べるための実験,[4]片振 り載荷,[5]両振り載荷,[6]定振幅載荷,[7]ラ ンダム載荷. 実験[1]は材料定数決定のための実験,実験[3]~ [6]は構造用アルミニウム合金の繰り返し載荷におけ る挙動を照査するための実験であり,モデルパラメータ 決定のための実験でもある.実験[7]は提案モデルに よる予測結果の検証のための実験である.また,実験 [2],[4],[5]は L-供試体で座屈拘束材を設置し た場合としない場合とで座屈拘束材の機能を検討した. 3. 実験結果 (1) 単調引張および単調圧縮実験 単調引張あるいは単調圧縮実験から得られた構造用ア ルミニウム合金のヤング係数Ε ,0.2%耐力σ
0.2(0.2%の 残留ひずみが生ずる応力1)),0.2%ひずみ 2 0.ε
(0.2%耐 力におけるひずみ),引張強さσ
u,伸びε
u,ポアソン 比ν を表-3に示す.表-3はすべて真応力,真ひずみで表 示してある.供試体L-R3-C,L-R4-Cにおいては座屈拘束 材を設置してある.なお,本論文の応力および,ひずみ は特に断らない限り全て真応力,真ひずみで示す. 図-4に(a)単調引張および(b)単調圧縮実験での真 応力-真ひずみ関係を示し,図-5は両関係を同一の図で 比較したものである.まず,すべての単調載荷実験結果 を見ると,構造用アルミニウム合金には降伏棚が存在し ない.単調引張実験結果を比較するとL-1-Tの実験結果 は,S-1-T,S-2-Tに比べ,伸びが約3%程度小さい.これ シリーズ 供試体名 実験の種類 載荷パターン(数値は工学ひずみ値(%)で,引張を正とする) S-1-T [1] 破断時まで単調引張載荷 S-2-T [1] 破断時まで単調引張載荷 S-3 [4] 0.00,0.25,-0.30,0.50,-0.30,0.75,-0.30,1.00,-0.30,1.25,-0.30,1.50,-0.30,1.75,-0.30,2.00,-0.30,2.25,-0.30,2.50,-0.30,2.75,-0.30,3.00,-0.30,3.25, -0.30,3.50,-0.30,3.75,-0.30,4.00,-0.30,4.25 S-4 [5] 0.00,0.25,-0.25,0.50,-0.50,0.75,-0.75,1.00,-1.00,1.25,-1.25,1.50,-1.50,1.75,-1.75,2.00,-2.00,2.25,-2.25,2.50,-2.50,2.75 S-5 [3] 0.00,0.20,0.25,0.30,0.35,0.40,0.45,0.50,0.55,0.60,0.65,0.70,0.75,0.80,0.85,0.90,0.95,1.00,1.05,1.10,1.15,2.15,3.15,4.00,5.00,10.00,15.00 S-6 [3] 0.00,0.20,0.25,0.30,0.35,0.40,0.60,0.80,1.00,2.00,3.00,4.00,5.00,10.00,15.00 S-7 [6] 0.00,2.00,-2.00,2.00,-2.00,2.00,-2.00,2.00,-2.00,2.00,-2.00,2.00 S-8 [6] 0.00,0.50,-0.50,0.50,-0.50,0.50,-0.50,0.50,-0.50,0.50,-0.50,0.50,-0.50,1.00,-1.00,1.00,-1.00,1.00,-1.00,1.00,-1.00,1.00,-1.00,1.00,-1.00,1.00 S-9 [6] 0.00,3.00,-1.00,3.00,-1.00,3.00,-1.00,3.00,-1.00,3.00,-1.00,3.00 S-供試体 S-10 [7] 0.00,0.60,0.10,0.40,-0.30,0.30,-0.90,-0.20,-0.40,0.80,0.50,1.30,0.20,1.60,-0.90,1.90,-1.20,3.25,2.83 L-1-T [1] 破断時まで単調引張載荷 L-2-C [2] -15まで単調圧縮載荷 L-R3-C [2] -10まで単調圧縮載荷 L-R4-C [2] -9まで単調圧縮載荷 L-R5 [4] 0.00,-0.50,0.30,-1.00,0.30,-1.50,0.30,-2.00,0.30,-2.50,0.30,-3.00,0.30, -3.50,0.30,-4.00,0.30,-4.50 L-6 [5] 0.00,0.25,-0.25,0.50,-0.50,0.75,-0.75,1.00,-1.00,1.25,-1.25,1.50,-1.50,1.75,-1.75,2.00,-2.00,2.25,-2.25,2.50,-2.50,2.75 L-供試体 L-R7 [5] 0.00,0.25,-0.25,0.50,-0.50,0.75,-0.75,1.00,-1.00,1.25,-1.25,1.50,-1.50,1.75,-1.75,2.00,-2.00,2.25,-2.25,2.50,-2.50,3.00,-3.00,3.50 表-2 載荷パターンは供試体の長さの影響と考えられる.単調圧縮実験結果 の真応力-真ひずみ関係を見ると座屈拘束材を設置して いない供試体L-2-Cは,供試体の座屈により耐荷力が低 下していることが分かる.しかし,座屈拘束材を設置し ている供試体L-R3-C,L-R4-Cは引張側とほぼ同様の曲線 を描いており,座屈拘束材の効果を確認できる.写真-2 は残留ひずみ9%でのL- R3-C供試体の変形状態を示した ものであり,座屈拘束材により供試体が2次のモードで 座屈していることが分かる.図-5に示す,真応力-真ひ ずみで表現した応力-ひずみ関係は,座屈を起こした一 体を除き,引張と圧縮でほとんど同一の曲線が得られる ことが分かる.なお,構造用アルミニウム合金でよく見 られるセレーション9)(引張試験を行う際に生じる鋸歯 状の荷重変動)は,本実験では確認することが出来なか った. (2) 片振りおよび両振り載荷実験 図-6に非対称な繰り返しである片振り載荷実験の真応 力-真ひずみ関係を示す.圧縮側で載荷したL-R5も引張 側で載荷したS-3と同様の曲線を描くことが分かる. 図-4 単調載荷実験結果 (a)単調引張 5 10 15 20 100 200 300 400 0 S-1-T S-2-T L-1-T true-strain(%) tr ue -s tre ss (MP a) -10 -8 -6 -4 -2 0 -300 -200 -100 0 true-strain(%) tr ue -s tre ss (M P a) L-2-C L-R3-C(アンボンド材:ゴム) L-R4-C(アンボンド材:グリース) (b)単調圧縮 図-5 単調載荷実験の真応力-真ひずみ関係の比較 5 10 15 20 100 200 300 400 0 true-strain(%) true-s tress(M P a) 引張 圧縮 座屈拘束なし 5 10 15 20 100 200 300 400 0 true-strain(%) true-s tress(M P a) 引張 圧縮 座屈拘束なし 写真-2 残留ひずみ9%での L-R3-C供試体の変形状況 供試体名 実験の種 類 ヤング係数 E (GPa) 0.2%耐力 σ 0.2 (MPa) 0.2%ひずみ ε 0.2 (%) 引張強さ σ u (MPa) 伸び ε u (%) ポアソン比 ν S-1-T [1] 70.1 146 0.408 371 18.7 0.27 S-2-T [1] 72.6 146 0.401 370 17.8 0.35 L-1-T [1] 72.6 148 0.404 357 14.0 0.30 単調引張実験結果の平均値 71.8 147 0.404 366 16.8 0.31 L-2-C [2] 70.3 -148 -0.411 - - 0.38 L-R3-C [2] 69.8 -149 -0.414 - - 0.39 L-R4-C [2] 69.0 -153 -0.422 - - 0.37 表-3 材料定数
図-7に両振り載荷実験の真応力-真ひずみ関係を示す. S-4とL-6の実験結果を比較すると,S-4(l/r =11.1)に比べ L-6(l/r =22.2)は圧縮側で供試体が座屈し,耐力が低下 していることが分かる.一方,L-6と同様の供試体に座 屈拘束材を設置したL-R7は,L-6のような荷重低下は見 られなかった.図-8は座屈拘束材を設置した供試体L-R7 と,設置していない供試体L-6を比較した真応力-真ひ ずみ関係である.圧縮側での座屈拘束材の効果を確認す ることができる.片振および両振載荷ともに座屈拘束を している供試体を見ると,圧縮側で一旦微小な耐力低下 が生じ,さらに変形が進むと再び耐力上昇が生じる現象 (いわゆる,ピンチング現象)が見られる.これは座屈 拘束材からはみ出した部分で供試体に座屈が生じたのが 原因と思われる.本実験装置(写真-1参照)では,変位 計を取り付けのため,供試体平行部は片側15mm拘束材 からはみ出している.従って,圧縮と引張で同一の履歴 曲線を得る,あるいは,より大きなひずみ領域までのデ ータを取得するためには,この露出する部分をさらに短 くする等の工夫が必要であろう. (3) 塑性変形に伴う弾性域の大きさの変化を調べるため の実験 塑性変形に伴う弾性域の大きさの変化を調べるための 実験は,次章で述べる修正2曲面モデルのパラメータ値 図-6 片振り載荷実験結果 0 1 2 3 4 -400 -200 0 200 400 true-strain(%) tr ue -s tre ss (M P a) S-3 -5 -4 -3 -2 -1 0 -400 -200 0 200 400 true-strain(%) tr ue -s tre ss (M P a) L-R5 図-7 両振り載荷実験結果 -3 -2 -1 0 1 2 3 -400 -200 0 200 400 true-strain(%) tr ue -s tre ss( M P a) L-R7 座屈拘束あり(L-供試体) -3 -2 -1 0 1 2 3 -400 -200 0 200 400 true-strain(%) tr ue -s tre ss (M P a) L-6 座屈拘束なし(L-供試体) 座屈拘束なし(S-供試体) -3 -2 -1 0 1 2 3 -400 -200 0 200 400 true-strain(%) tr ue -s tre ss (M P a) S-4
を決定するための実験である.この実験は,除荷域での 勾配(ヤング係数)が除荷開始時での勾配に比べて1% 変動した点を弾性域終了点(塑性開始点)として再載荷 し,これを一定間隔のひずみで繰り返した.図-9 に真 応力-真ひずみ関係を示す.構造用鋼材は,累積相当塑 性ひずみ10)(塑性ひずみ履歴において過去最大の塑性ひ ずみを越えた塑性ひずみの和で,後述の図-14(a)の太 実線の塑性ひずみの和)の増加に伴い弾性域の大きさは 減少するとされているが 7),8),構造用アルミニウム合金 の弾性域は累積相当塑性ひずみの増加に伴って弾性域の 大きさは増大する傾向が見られる. (4) 定振幅載荷実験 図-10 に定振幅載荷実験の真応力-真ひずみ関係を示 す.構造用鋼材に対する修正2 曲面モデルによると,一 定のひずみ幅で繰り返し載荷を行うと,累積相当塑性ひ ずみは変化しないので,後述の境界線間の距離は変化し ないとされている.しかし,構造用アルミニウム合金は 繰り返すごとに応力範囲が膨らみ,明らかに境界線間の 距離が変化していることがわかる.対称な一定振幅の繰 り返しを行った場合(S-7)も非対称な場合(S-9)も同 様な挙動を示していることが分かる.この事実は,アル ミニウム合金の繰り返し弾塑性挙動が鋼材のそれと大き く異なる点の一つである. 図-8 座屈拘束材の効果 -3 -2 -1 0 1 2 3 -400 -200 0 200 400 true-strain(%) tr ue -s tre ss( MP a) L-6 L-R7 図-9 塑性変形に伴う弾性域の大きさの変化を調べるための実験結果 0 5 10 15 0 200 400 true-strain(%) tr ue -s tre ss (MP a) S-6 0 5 10 15 0 200 400 true-strain(%) tr ue -s tre ss( MP a) S-5 -2 -1 0 1 2 -400 -200 0 200 400 true-strain(%) tr ue -s tre ss (M P a) S-7 -2 -1 0 1 2 3 4 -400 -200 0 200 400 true-strain(%) tr ue -s tre ss (M P a) S-9 図-10 定振幅載荷実験結果
4. 構成則の提案 (1) 単調引張および単調圧縮載荷での構成則 単調引張および圧縮載荷での構成則(応力-ひずみ関 係)は,後述の繰り返し弾塑性構成則(修正2 曲面モデ ル)に包含されるが,適用の便を考えて,単調載荷に対 する構成則を別途求めておく. アルミニウム構造物の解析には,次式の応力-ひずみ 関係式であるRamberg-Osgood 式(R-O 式)がしばしば用 いられる2),11). n E ⎟⎠ ⎞ ⎜ ⎝ ⎛ + = 2 . 0 002 . 0
σ
σ
σ
ε
(5) ここに,n は硬化パラメータであり,本実験で用いた非 熱処理系の構造用アルミニウム合金にはn<10~20 程度 の値が用いられている 2),11).式(5)は,σ =σ0.2のとき, 2 . 0 ε ε= となる. 式(5)は後述のように 1%程度のひずみまではよい近 似を与えるが,本研究では 5%程度の大ひずみまでを適 用範囲に考え,R-O 式を修正した式を次のように提案す る. 0 σ σ≤ のとき Eσ
ε
= (6) 0 σ σ≥ のとき n E E ⎟⎠ ⎞ ⎜ ⎝ ⎛ − ⋅ ⋅ + = 2 . 0 0 2 . 0σ
σ
σ
σ
α
σ
ε
(7) ここに,σ
0は比例限応力(0.8σ
0.2とする), α は形状 パラメータである.また,式(7)は,σ =σ0のとき, E / 0 0 σ ε ε= = となる.座屈を起こした L-2-C 供試体を 除いたすべての引張・圧縮実験結果より式(5)の未知 量n および式(7)の未知量α , n の値を非線形最小 2 乗法により算出した.図-11 は式(5),式(7)と実験 結果との比較を示す.算定したα ,n の値は図中に示さ れている.ここで,式(5)の硬化パラメータ n の値は, 文献 11)に従い,0.1%および 0.2%耐力を用いて決定し た.式(5)は,1%を超えるひずみ領域になると,安全 側ではあるが実験値と大きく異なってくる.一方,式 (7)は非常によく実験結果を予測できていることが分 かる. (2) 繰り返し引張・圧縮載荷での構成則 片振りおよび両振り載荷実験(図-6, 7),塑性変形 に伴う弾性域の大きさの変化を調べるための実験(図-9),および定振幅載荷実験(図-10)の結果を精査する と,弾性域が累積相当塑性ひずみの増大に伴い増大して いることが分かる.従って,繰り返し載荷での構成則は 弾性域が変化しない移動硬化や Ramberg-Osgood12)などの 構成則の適用は難しいことが分かる.このことを踏まえ, 構造用アルミニウム合金に用いる構成則は,弾性域の変 化も考慮できる修正 2 曲面モデル 7),8)などの適用が妥当 だと考えられる.ここでは,修正2 曲面モデルを取り上 げるが,鋼材用に開発された修正2 曲面モデルを構造用 アルミニウム合金に適用させるために,前章で述べた鋼 材との挙動の相違点に配慮する必要がある.以下に,修 正2 曲面モデルを構造用アルミニウム合金用に適用する ときのモデルパラメータの決定法について,鋼材との相 違点を主体に述べる. a ) 境界線の傾きに関するパラメータ 鋼材では,境界線(Bounding line)の傾きは累積塑性 仕事量の増大に伴い減少するとされている 7),8).境界線 とは,図-12 の応力-塑性ひずみ関係において,再載荷 点(A または B 点)から始まる塑性域での応力-塑性ひ (7)式 式 1.82 24.7 13.8 (5)式 - α n 1 2 3 4 5 100 200 300 0 true-strain(%) tru e-st res s(MPa ) 実験データ (5)式 (7)式 (7)式 式 1.82 24.7 13.8 (5)式 - α n (7)式 式 1.82 24.7 13.8 (5)式 - α n 1 2 3 4 5 100 200 300 0 true-strain(%) tru e-st res s(MPa ) 実験データ (5)式 (7)式 図-11 単調引張での構成則の精度ずみ曲線が漸近する直線のことである.そこで,構造用 アルミニウム合金に対しても鋼材に対して提案されてい る次式(但し,降伏応力,降伏点ひずみを,それぞれ比 例限応力
σ
0,比例限ひずみε
0.に置き換える)を境界線 の傾きを求める式とする. ) / ( 1 / 0 0 0 0ε
σ
ω
P i P P i W E E E E ⋅ + = (8) ここに,ω は未知量, P i E0 はi 番目と(i+1)番目の荷重 反転点間の載荷経路(以降,i 載荷経路と称する)を決 定するための境界線の傾き(図-12 参照), P i W は載荷 の初期からi 番目の荷重反転点までの総累積塑性仕事量, P E0 は初期(WiP =0)の境界線の傾き,ε
0は比例限ひ ずみ(=σ0/E)である. 式(8)のパラメータEP/E 0 およびω を決定するため に,載荷経路 i の塑性ひずみの大きさが 3%以上になる と応力-塑性ひずみ曲線が境界線に接するとし,3%以 上の塑性ひずみが得られている実験データのみを用い, 図-13 に示すように縦軸にEP E i/ 0 ,横軸にWiP/σ0ε0の 無次元量をプロットし,非線形最小 2 乗法により式 (8)の未知量EP/E 0 およびω の値を求めた.結果を 表-4 に示す.また,求められた提案式は図-13 にプロッ トされている. b ) 境界線半径に関するパラメータ 修正2曲面モデルでは,鋼材は引張および圧縮の両領 域に位置する境界線間の距離(以降,境界線間の距離の 1/2である境界線半径κ を用いる)は累積相当塑性ひずi みの増大に伴って,拡大するとされている. この定義に従って,一定のひずみ幅で繰り返し載荷を 行うと累積相当塑性ひずみの変化はないため,境界線は 移動せず,従って境界線半径は変化しないはずである. ところが,図-10の定振幅載荷実験結果を見ると,繰り 返すごとに応力は増大し,明らかに境界線半径は拡大し ていることが分かり,累積相当塑性ひずみのみでは構造 用アルミニウム合金の挙動をうまく表現できないと考え られる.従って,累積相当塑性ひずみに加え,累積塑性 ひずみ(塑性ひずみの絶対値の総和で,図-14(b)の太 実線の塑性ひずみの総和)を導入し,次式で示される換 算累積塑性ひずみ量を考える.(
)
p S P E A p S P A p convβ
ε
. . . 1β
ε
. . . .ε
= ⋅ + − ⋅ (9) 図-13 境界線の傾きと累積塑性仕事量の関係 200 400 600 800 0.01 0.02 0.03 0.04 0 WiP / σ0ε0 E0i P / E S-3 S-4 S-7 S-9 S-10 L-R5 L-R7 提案式 図-14 累積相当塑性ひずみおよび累積塑性ひずみの定義 (a)累積相当塑性ひずみ(太実線の塑性ひずみ総和)の定義 t p ε t p ε c p ε p ε t p ε t p ε c p ε p ε (b)累積塑性ひずみ(太実線の塑性ひずみの総和)の定義 t p ε t p ε 境界線 (i+1載荷経路) i+1載荷経路 σ 0 X Y X′ Y ′ i p ε 1 + i A B Z Z′ i 載荷経路 1 1 1 境界線(i 載荷経路) 境界線 (i 載荷経路) P i E0 1 2κi+ P i E0+1 i κ 2 2κi P i E0 境界線 (i+1載荷経路) i+1載荷経路 i+1載荷経路 σ 0 X Y X′ Y ′ i p ε 1 + i 1+ i A B Z Z′ i 載荷経路 i 載荷経路 1 1 1 境界線(i 載荷経路) 境界線 (i 載荷経路) P i E0 1 2κi+ P i E0+1 i κ 2 2κi P i E0 図-12 応力-塑性ひずみ関係図こ こ に , p conv
ε : 換 算 累 積 塑 性 ひ ず み (Converted accumulated plastic strain ) , p
S P A. . .
ε : 累 積 塑 性 ひ ず み (Accumulated plastic strain), p
S P E A. . . .
ε :累積相当塑性ひず み(Accumulated effective plastic strain),β :重みを表す係 数である. 重 み を 表 す 係 数 β は , β =0 の 時 に は , p S P E A p conv ε . . . . ε = となり従来の修正 2 曲面で定義されてい る累積相当塑性ひずみとなる.また,β =1の時は, p S P A p conv ε . . . ε = となり累積塑性ひずみのみの関係式になる. ここでは,試行錯誤の上,β =0.5と置いて次式を構造 用アルミニウム合金に対する境界線半径を測る新しい量 とする.
(
Ap.P.S. Ap.E.P.S.)
/2 p convε
ε
ε
= + (10) 次に境界線半径の算定式を求める.図-15 は,縦軸に 境界線半径κ を比例限応力iσ
0で除したκi/σ0,横軸に 載荷の初期からi 番目の荷重反転点までの塑性ひずみを 基に算定した換算累積塑性ひずみの半分εconvp ,i/2を比例 限ひずみε
0で除したεconvp ,i/2ε0を取り,実験結果をプ ロットしたものである.ここでも,前と同様,i 載荷経 路での塑性ひずみの大きさが3%以上の実験データのみを採 用している.境界線半径の算定式として,文献7),8)を参 考に,次式を仮定する. ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎣ ⎡− ⋅ ⋅ ⎟ ⎠ ⎞ ⎜ ⎝ ⎛ − + = ∞ ∞ 0 , 0 0 0 0 0 2 expε
ε
ζ
σ
κ
σ
κ
σ
κ
σ
κ
i convp i (11) ここに,κ は初期の境界線半径(0 εconvp ,i =0の時の境界 線半径),κ =∞ σu( p =∞ i conv, ε の時の境界線半径で引 張強度に等しいものとする),ζ は未知量である.非線 形最小2乗法により式(11)の未知量κ0/σ0,ζ の値を 求めると表-4に示したようになる.また,求められた提 案式は図-15にプロットされている. c ) 弾性域の大きさに関するパラメータ 修正2 曲面モデルでは,鋼材の弾性域の大きさは累積 相当塑性ひずみの増大に伴って指数関数的に減少すると されている 7),8).しかし,構造用アルミニウム合金は, 弾性域の大きさが累積相当塑性ひずみの増大に伴って増 大する傾向が見られる(図-9).従って,図-16 に示す ように縦軸に弾性域の大きさの1/2 であるκ を比例限応i 力σ
0で除したκi/σ0,横軸に前述の換算累積塑性ひず み p i conv, ε を比例限ひずみε
0で除したεconvp ,i/ε0を取り, 実験結果をプロットした.提案式として,式(11)と同 じ形の次式を仮定する. 図-16 弾性域の大きさと換算累積塑性ひずみの関係 100 200 1 2 0 ε p conv,i / ε0 κi / σ0 S-3 S-4 S-5 S-6 S-7 S-8 S-9 S-10 L-R5 L-6 L-R7 提案式 図-15 境界線の半径と換算累積塑性ひずみの関係 50 100 1 2 3 0 ε p conv,i / 2ε0 κi / σ0 S-3 S-4 S-7 S-9 S-10 L-R5 L-R7 提案式 内容 パラメータ 値 ヤング係数(MPa) E 7.18×104 初期硬化係数(MPa) P st E 3.86×104 比例限応力(MPa) σ0 118 ひずみ硬化開始点ひずみ p st ε 1.64×10 - 3 ポアソン比 ν 0.31 引張強度(MPa) σ∞ 366 E / EP 0 3.00×10 - 2 境界線の傾き ω 4.94×10 - 3 0 0 σ κ / 1.23 境界線半径 ς 3.50×10 - 2 0 σ κ∞/ 2.55 弾性域の大きさc
5.98×10 - 3 e -104 形状パラメータ P E / f 0 18.6 注)ひずみ硬化開始点ひずみは比例限ひずみε
0に等しい. 表-4 修正 2曲面モデルのパラメータ値(入力値)⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎣ ⎡− ⋅ ⋅ ⎟ ⎠ ⎞ ⎜ ⎝ ⎛ − + = ∞ ∞ 0 , 0 0 0 exp 0 . 1 ε ε σ κ σ κ σ κ p i conv i c (12) ここに,εconvp ,i=0の時は弾性域の大きさの 1/2 のκ はi 比例限応力σ としている.図-16 に示すデータを用い,0 非線形最小 2 乗法を適用することにより,未知量 0 /σ κ∞ ,c の値を求めると表-4 のようになる.また, 求められた提案式は図-16 にプロットされている. d ) 形状パラメータ 鋼材に対する修正 2 曲面モデルに倣い,i 載荷経路で の応力-塑性ひずみ曲線の接線の傾きEPを次式のよう に表す7),8)(図-17 参照).
δ
δ
δ
− ⋅ + = in P P P P h E E E E 0 0 0 (13) ここに,δ は再載荷点 Aから境界線までのin σ 軸に平行 な距離,δ は i 載荷経路上の任意点から境界線までの σ 軸に平行な距離, h は形状パラメータである.式 (13)は再載荷点 A(δ =δin)ではEP =∞,境界線に 接した状態では P i P E E = 0 となり,境界線の傾きと等し くなる. i 載荷経路での塑性ひずみの大きさが 3%以上の実験デ ータのみを用いて,形状パラメータhを式(13)より求 めた.また,図-18 に示すようにh EP 0 / δ − 関係を実験 結果より求めた.この図よりh EP 0 / δ − 関係は直線で近 似できるとし,文献 7),8)に従い次式を仮定し,線 形最小2乗法により未知量e,f EP 0 / の値を算定した. P P E f E e h 0 0 + ⋅ =δ
(14) 結果は,表-4 にまとめられている.また,h の提案式 は図-18 にプロットされている. e ) 仮想境界線および記憶線 鋼材用に開発された修正2 曲面モデルでは,仮想境界 線および記憶線の概念を取り入れている 6),7).これは, 繰り返し載荷の予測をする際,実験結果と比較して再載 荷点(図-12 のA または B 点)での曲線が早く曲がって しまうという欠点を解消するために導入された概念であ る.記憶線とは,引張・圧縮両領域に存在し,絶対値で 測った過去最大の応力点を通り,傾きは境界線の傾きと 等しい.仮想境界線は,荷重反転点から記憶線までの垂 直距離だけ境界線より外側に設定される.本研究では累 積相当塑性ひずみの代わりに換算累積塑性ひずみを用い ているが,そのことによる仮想境界線および記憶線の設 定方法に修正はないので,鋼材と同様に仮想境界線およ び記憶線を設定している. 図-18 形状パラメータhと EP 0 δ の関係 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0 20 40 δ / E0P h S-3 S-4 S-7 S-9 S-10 提案式 図-17 応力-塑性ひずみ曲線の形状 0 p ε + i A i 1 載荷経路 1 1 δ in δ p ε Δ P E P i E0 0 p ε + i A i 1 載荷経路 1 1 δ in δ p ε Δ P E P i E0 項目 鋼材 構造用アルミニウム合金 境界線の傾き 累積塑性仕事量の増大に伴い減少 同左 境界線半径 累積相当塑性ひずみの増大に伴い拡大 (定ひずみ振幅載荷では変化なし) 換算累積塑性ひずみの増大に伴い拡大 (定ひずみ振幅載荷でも拡大する) 弾性域の大きさ 累積相当塑性ひずみの増大に伴い減少 換算累積塑性ひずみの増大に伴い増大 表-5 構造用アルミニウム合金と鋼材の修正2曲面モデルの主要な項目の比較f ) まとめ 以上述べてきた構造用アルミニウム合金と鋼材の修正 2 曲面モデルの主要な項目の比較をまとめたものが表-5 である.また,付録 1 に中込ら6)によるアルミニウム合 金を対象とした数理塑性モデルと本論文のモデルとの比 較を示す. 5. 実験と予測結果の比較 前節で構築した構造用アルミニウム合金の弾塑性構成 則を用いて実験結果の予測を行う.表-4 に,入力値 (モデルパラメータ値)を示す.初期硬化係数 P st E は, ヤング係数Ε と応力-ひずみ関係の 0.2%耐力での傾きの 平均値とした.ひずみ硬化開始点のひずみ p st ε は,降伏 棚がないので比例限ひずみと同じである.また,文献 7),8)では,弾性域の大きさを求める式(12)と異な った式を用いているので,表-4 のモデルパラメータと の対応を付録に示す. 図-19 は,実験結果と予測曲線の比較を示す.(a) は,単調引張・圧縮載荷,(b)は片振り載荷,(c)は 両振り載荷,(d)はランダム載荷の比較である.実験 と予測は,細部を検証すると多少の差が見受けられるが, 概ね構築したモデルは,実験結果を良好に模擬している. 6. 結言 構造用アルミニウム合金の弾塑性構成則の開発を目的 に,A5083P-O 材の単調載荷実験および引張-圧縮繰り 返し載荷実験を行った.実験に際しては,高圧縮ひずみ 時のデータを得るため,座屈拘束材を供試体に設置した 新しい実験手法も採用した.また,構造用アルミニウム 合金特有の繰返し弾塑性挙動を表現するため,鋼材に対 して開発された修正 2 曲面モデル 7),8)に修正を施し,塑 性ひずみを計量する新たな量(式(10)の換算累積塑性 ひずみ)を導入し,繰り返し弾塑性構成則を構築した. 本研究によって得られた結論を以下に述べる. 1 2 3 4 5 100 200 300 0 true-strain(%) true -s tress( M P a) 実験 予測
単調載荷
(a)単調引張・圧縮載荷 (b)片振り載荷 0 1 2 3 4 -400 -200 0 200 400 true-strain(%) tr ue -stress( M P a)S-3
実験 予測 -3 -2 -1 0 1 2 3 -400 -200 0 200 400 true-strain(%) tr ue -st res s( M Pa )S-4
実験 予測 (c)両振り載荷 (d)ランダム載荷 -1 0 1 2 3 -200 0 200 true-strain(%) true-s tress (M Pa)S-10
実験 予測 図-19 実験結果と修正 2 曲面モデルによる予測結果単調圧縮でも単調引張と同様の応力-ひずみ関係を 描くことができ,弾塑性構成則の作成の際に,高圧 縮ひずみ側でのデータを得ることが可能になる. 2)単調載荷を受ける構造用アルミニウム合金に対して 従来開発された構成則(式(5))は,1.0 %までの 低ひずみ領域では高い精度で予測できるが,大ひず み領域になると実験値より低い応力が出るため,新 たに式(7)を提案した(図-11). 3)構造用アルミニウム合金に対して,鋼材に用いられ る累積相当塑性ひずみでは境界線半径,弾性域の大 きさの進展がうまく表現できないため,累積相当塑 性ひずみと累積塑性ひずみの平均値で定義される換 算累積塑性ひずみ(式(10))の概念を導入した. 4)構造用アルミニウム合金は,鋼材と異なり,換算累 積塑性ひずみの増大にともない境界線半径は拡大し, 弾性域の大きさは増大する.この実験結果を考慮す るため,式(11),(12)の算定式を提案した. 5)構造用アルミニウム合金と鋼材の修正 2 曲面モデル の主要な項目の比較を表-5 にまとめた. 6)構築した構造用アルミニウム合金用繰返し弾塑性構 成則を用いて,単調引張・圧縮載荷実験,片振り載 荷実験,両振り載荷実験,ランダム載荷実験の結果 を予測したところ比較的良好な結果を得た(図-19). 本論文で開発した構成則は,制震ダンパーなどの部 材あるいは構造物の実験結果を数値解析的に再現する (例えば,文献 5)参照),あるいは実験供試体の力学 的パラメータ(例えば,幅厚比パラメータ,細長比パラ メータ等)の範囲を拡大するために用いることを意図し た学術的なものである.それらの目的のためには,構成 則は実用的な範囲内で,可能な限り精緻なものがよいの は言うまでもない.本文中にも述べたが,構成則として 多用されている移動硬化あるいは Ramberg-Osgood モデ ルは,簡単ではあるが実現象を忠実に再現するためには 十分ではない.一方,設計実務のためには,少なくとも 現状では,可能な限り簡単な構成則が望ましい.そのた めに部材・構造物の実験,あるいは精緻な構成則を用い た解析から得られる履歴挙動をある程度の精度を持って 再現できる簡略化した構成則が用いられる.これは,一 般に,部材あるいは構造物の種類に応じて個別に開発さ れるもので,本論文が取り扱う課題の範囲外である. 謝辞:アルミニウム合金については大阪大学大学院大倉 一郎准教授をはじめ,アルミニウム橋研究会(会長:倉 西 茂 東北大学名誉教授)の委員の方々から貴重なご教 示を得た.また,実験供試体は日本軽金属(株)から無 償提供を受けた.記して関係各位に深謝したい. 代表者:宇佐美 勉),ならびに平成 19 年度文部科学省 私学助成ハイテクリサーチセンター整備事業で名城大学 に設置された「高度制震実験・解析研究センター(代表 者:宇佐美 勉)」の助成を受けて実施されたものであ る.高機能制震ダンパーの開発研究は,同センターの主 要な研究課題として現在も続行中である. 付録 1 中込らによるモデルと本モデルの比較 中込ら6)は,藤本ら13)による鋼材用繰返し弾塑性モデ ルを基に,構造用アルミニウム合金の数理塑性モデルを 開発している.表-A.1 は中込らのモデルと本論文にお けるモデルを比較したものである.この表を踏まえ,両 構成則の相違に関して若干の補足をする. 1)中込らのモデルには,素材の機械的性質(σ ,0.2 u σ )以外に,硬化パラメータといわれる 4 個のパラメ ータがある.これらのパラメータの初期値は単調引張試 験から求められるが,繰返し引張―圧縮載荷を受ける砂 時計型試験体の実験結果を基に,実験供試体の有限要素 解析結果をフィードバックしながら試行錯誤的に最終値 が決められている13). 2)中込らのモデルはパラメータの数が少ないため,使 いやすいと思われるが,本論文で取り扱った A5083P-O 構造用アルミニウム合金のようなひずみ硬化が大きい材 料に対しては,境界線の傾きを固定したモデルでは,比 較的ひずみが小さい領域で実験と予測が合わなくなる恐 れがある.文献 6)中の図-14,図-15 にもその傾向が見 られる. 付録 2 弾性域の大きさを求める式(12)と文献 7),8)の式の対応 鋼材の場合に提案式されている式 7), 8) は以下のようで ある. ) 100 exp( ) 1 ( ) 100 exp( . . . . . . . . 0 × ⋅ − ⋅ − − − × ⋅ − ⋅ − = p S P E A p S P E A i c a b a ε α ε α κ κ (A.1) ここに,κ は初期の弾性域の大きさの 1/2で降伏応力に 0 等しい,また,a,b,c,α は未知パラメータである. 今 , 式 (A.1 ) で , b=c と し , κ0 =σ0 , p i conv p S P E A. . . . ε , ε = とおくと次式を得る. ) 100 exp( ) 1 ( 0 × ⋅ − ⋅ − + = p conv i b ε α α σ κ (A.2)
式(A.2)と式(12)を比較すると次式を得る. 0 100ε c c b= = , 0
σ
κ
α
= ∞ (A.3) ここで,式(A.1)のa を含む項は式(A.2)を導く際に 消滅するので,入力値としては任意の値でよい. 1) 大倉一郎,萩澤亘保,花崎昌幸:アルミニウム構造 学入門,東洋書店,2006.2) Mazzolani, F. M.: Aluminium Alloy Structures, 2nd Edition, E & FN Spon, pp.59-64, 1995.
3) Rai, D. C. and Wallace, B. J.: Aluminium shear-links for enhanced seismic resistance, Earthquake Engineering and
Structural Dynamics, Vol.27, No.4, pp.315-342, 1998.
4) Di Sarno, L. and Elnashai, A. S.: Special metals for seismic retrofitting of steel buildings, Progress of
Structural Engineering and Materials, Vol.5, pp.60-76,
2003. 5) 宇佐美勉,加藤基規,葛西昭:制震ダンパーとして の座屈拘束ブレースの全体座屈,構造工学論文集, Vol.52A, pp.37-48, 2006.3. 6) 中込忠男,山田丈富,市川祐一,杉江篤司:アルミ ニウム合金の多軸応力状態における繰返し応力-歪 関係の数理塑性モデル,日本建築学会構造系論文集, 第558 号,pp.227-232,2002.8. 7) 田中良仁,水野英二,沈 赤,宇佐美勉::降伏棚を有 する鋼材の繰り返し弾塑性モデル,構造工学論文集, Vol.37A, pp.1-14, 1991.3.
8) Shen, C., Mizuno, E. and Usami, T.: Further Study on Two-Surface Model for Structural Steels under Uniaxial Cyclic Loading, Structural Eng./Earthquake Eng., JSCE, Vol.9, No.4, pp.257s-260s, 1993.1. 9) 大谷茂生,遠藤誠一,小松原俊雄,稲垣裕輔:Al-Mg 系合金の引張変形におけるセレーションの発生,軽 金属学会秋季大会第99 回秋期大会講演概要,pp.147-148, 2000. 10) 皆川 勝,西脇威夫,増田陳紀:塑性流れ域における 構造用鋼材の単純繰り返し挙動の推定,構造工学論 文集,Vol.35A, pp.53-65, 1989.3. 11) 大倉一郎,長尾隆史,石川敏之,萩澤亘保,大隅心 平:構造用アルミニウム合金の応力-ひずみ関係お よび接合によって発生する残留応力の定式化,土木 学会論文集A,Vol.64, No.4, pp.789-805, 2008. 12) 柴田明徳:最新耐震構造解析,第 2 版,森北出版, 2003. 13) 藤本盛久,橋本篤秀,中込忠男,山田丈富:構造用 鋼材の多軸応力状態における繰返し応力-ひずみ関 係,日本建築学会構造系論文集,第 356 号,pp.93-100,1985.10.
14) Dafarius, Y. F. and Popov, E. P.: Plastic Internal Variables Formalism of Cyclic Plasticity, Transaction of ASME,
Journal of Applied Mechanics, pp.645-651, 1975.12.
(2009. 3. 25 受付) 項目 本論文 中込ら6) 基本モデル Dafarius・Popov の 2 曲面モデル14) 同左 モデル パラメータ 素材の引張試験か ら得られるパラメ ータ以外に,素材 の引張―圧縮試験 から得られる8 個 のパラメータ(表-4). 素材の引張試験か ら得られる機械的 性質 2 個(σ0.2, u σ ),および同 試験から得られる 硬化パラメータ 4 個 ( 比 例 限 応 力 0 σ ,初期の境界 線半径κ0,境界線 の傾きEP 0 ,降伏 域の移動・拡大を 表 す パ ラ メ ー タ χ. 境界線の傾き 累積塑性仕事量に 応じて減少 変化しない 境界線半径 換算累積塑性ひず みの変化に伴って 非線形的に変化 (式(11)) 累積塑性ひずみの 変化に伴って線形 的に変化 弾 性 域 の 移 動・拡大 換算累積塑性ひず みの増大に伴い非 線形的に移動・拡 大する (式(12)) パラメータχ に応 じた混合硬化則に より移動・拡大す る 曲線(曲面) の種類 降伏,仮想境界, 記憶,境界 降伏,中間,境界 注)中込ら6) の論文の記号は,パラメータχを除いて,す べて本論文の記号に直してある.
STRUCTURAL ALUMINUM ALLOY
Tsutomu USAMI, Masashi KURATA, Takashi SATO, Akira KASAI
and Nobuyasu HAGISAWA
This study is aimed at developing a cyclic elasto-plastic constitutive model for a structural aluminum alloy, which is expected to exhibit excellent inelastic behavior for seismic dampers in steel structures. To determine various model parameters used in the modified two-surface model that has been extensively utilized to simulate the elasto-plastic cyclic behavior of steel structures, a series of cyclic tension-compression tests have been carried out under various loading conditions. The model parameters have been decided in reference with the previous studies for steels. The simulation to verify the validity of the developed model has also been executed for random loading experiments.