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中小企業の海外進出の課題と成功への鍵-重光産業・味千ラーメンの海外進出事例を通して-

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図 .日本の総人口推移 出所:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ(http://www.ipss.go.jp/)

中小企業の海外進出の課題と成功への鍵

―重光産業・味千ラーメンの海外進出事例を通して―

キーワード:中小企業、縮小する国内市場、拡大するアジア市場、 海外進出−失敗と成功、持たざる者の事業戦略

江 崎 康 弘

Ⅰ.はじめに 国内市場は、少子高齢化が加速するなか、総人口が減少するとともに生産年齢人 口も減少に向かっている。国立社会保障・人口問題研究所調査の人口統計資料 によると 年の人口は約 億 万人だが、 年には約 万人、つまり 万人も人口が減少することが予想されている(図 )。さらに、約 万人のなか で %の約 万人が 歳以上の高齢者となり(図 )、労働力の低下と人口減が 同時に発生し、国内市場の縮小は避けがたい事象となっている。

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図 . 年の日本の年齢層別人口構成 出所:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ(http://www.ipss.go.jp/) 一方、新興国諸国、中国、そして今後は特に ASEAN 諸国では、今後人口増(図 )とともに急速な経済成長が予測され(図 )、市場性が期待されている。日本 経済、特に人口減少および高齢化率が顕著な地方に取って、グローバル化が地方経 済創生の鍵を握っていると言っても過言ではない。 実際、JETRO(日本貿易振興機構)の世界貿易投資報告 によると、上場企 業( 社)の 年度の海外売上比率(日本からの輸出は含まれない)は製造業 で .%、非製造業で .%、合計で .%となり、 年度から 年連続で % を超える高水準となっている。 一方、中小企業白書 によるとわが国の輸出企業 社のうち約 %の 社 図 .ASEAN 人口推移 出所:http://www.tsunagu-jp.com/blog/?p=297

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が中小企業であるが、輸出額に関しては、わが国年間輸出額 .兆円のうち中小企 業の占有率はわずか %である。また、この中小企業のなかでの輸出企業数 社 も中小製造業のなかで .%に過ぎず、中小企業全体数 万社に対しては、 . % に過ぎないのである。中国や東南アジア諸国に進出している小規模サービス産業で ある各種の飲食店の詳細データに関しては、バンコクの JETRO 事務所や金融機関 現地事務所等の関係者からヒアリングした限りでは、進出する小規模企業数も確か に多いが、撤退する小規模企業・店舗も相当数になるとのことであった。このよう に、グローバル化の進展に伴い、大手製造企業を中心に海外事業展開が加速する一 方、進展が捗らず停滞する中小企業と二項対立の構図がある。 本稿では、中小企業を中心に海外事業進出の課題をあげるとともに、地方の中小 規模外食企業であるにも拘わらず海外進出に成功している重光産業(本社:熊本、 ブランド名:味千ラーメン、世界店舗数: 店、うち国内 店、中国 店、東南 アジア 店、米国 店他、 年 月現在)の成功要因を関連公知資料および同社 関係者のセミナー講演やインタビュー等より分析・考察のうえ、中小企業の海外進 出の成功の鍵へのインプリケーションを提示することを目的とする。 Ⅱ.先行研究 中小企業の海外進出および外食産業の海外進出に関して、次の 件の論文を先行 図 .ASEAN 経済成長推移 出所:https://finance-gfp.com/

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研究としてあげたい。 .丹下英明、金子昌弘( )「中小企業による海外撤退の実態」『日本政策金融 公庫論集』第 号 年から 年の 年間における直接投資企業の現地から撤退比率は各年度と もに中小企業の撤退比率が大企業の撤退比率を上回っていることが、中小企業白書 ( )で示されている。撤退拠点が所在した国や地域では撤退総件数のなかで、 中国が %、台湾・韓国が %そして ASEAN 諸国が %となっており、東アジ アおよび ASEAN 諸国で %に達している(図 )。もちろん、これらの地域への 直接投資件数が多いため、結果としての撤退件数が多いのは事実であろう。さらに、 図 .撤退拠点が所在した国や地域 出所:http://bizgate.nikkei.co.jp/article/95175119.html 図 .直接投資先からの撤退理由 出所:中小企業の海外展開の実態把握にかかるアンケート調査 https://eikaiwa.weblio.jp/business/information/outbound/withdraw-overseas-advance-company/

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海外拠点からの撤退の最も重要な理由として、「現地環境等の変化による販売不振」、 「海外展開を主導する人材の力不足」、「現地の法制度や商習慣の問題」、「人件費の 高騰」、「従業人の確保・育成・管理の困難性」に加え「提携先との関係悪化」が撤 退理由件数の過半数を占めているのである(図 )。また、撤退時の大きな課題と して、「パートナー企業との交渉」および「現地従業員の処遇」の つが突出して いる。 以上より、東アジアおよび ASEAN 諸国へは多くの中小企業が進出しているが、 一方では撤退件数も多い。撤退理由に関しては、製品需要や販売先等のマーケティ ングの問題も突き詰めれば現地での人材の質であると考えると、現地パートナーや 管理人材も含め現地での人材の確保が大きな課題である。 .川端基夫( )「日系外食企業の海外進出に果たすサポーティング・インダ ストリーの役割」『商学論究』第 巻 第 号 一般に外食企業は経営規模が小さく経営資源(資金、人材、ノウハウ)の制約が 大きい企業が多いがゆえに、食材調達、店舗開発および人材育成の つのサブシス テムから構成されるオペレーションシステムを海外で行うことには困難が伴う。 これらの問題を解決する手段として注目されるのがフランチャイジング (FC) での海外進出である。特に、規模の小さな外食企業ほど、進出先市場でオペレーショ ンシステム構築力に長けた有力パートナーを見出し、そこと FC 契約を結ぶことが 非常に重要である。 この国際 FC 契約には、①ストレート型、②合弁型、③独資型の つが存在する。 ①は現地パートナー企業と直接的に FC 契約を結ぶものであり、②③は現地で運営 会社を合弁か独資で設立し、当該現地法人と日本本部が FC 契約を結ぶものである。 経営資源が不足している中小外食企業の海外進出では、投資や人材を必要としない ①ストレート型の FC が選択されるべきと考えられてきた。日本本部は商標の貸与 とノウハウ供与や味の決め手となる調味料等の供給(日本からの輸出がまずスター ト)を行うのみであり、現地での店舗開発や食材調達、従業員雇用や教育は、すべ て現地パートナー側に委ねることができる。したがって、日本本部側に資金や人材 面での負担は生じず、万一失敗しても投資上のロスは生じないのである。 確かに、このストレート型の展開はメリットが大きいが、一方では、現地パート ナー企業に資金力や運営能力のすべてを依存するため、店舗投資、商品の質や味の 管理、さらにはサービスの質が、日本側が期待したレベルに達しないことが散見さ れるのである。その結果、日本側がブランド保護を目的として、パートナー側にオ

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ペレーションを委ねることを諦めて、FC 契約を解除し撤退する事例も少なくない。 つまり、ストレート型 FC は、投資上のリスクは少ないが、ブランド管理上のリ スクが高まるのである。このブランド管理のリスクヘッジには、日本側が海外パー トナーをモニタリングし続けることが必要となる。しかし、これには日本側に相応 のコスト(頻繁な渡航に関わる費用等)に加え、現地パートナー側との契約交渉に 長けたグローバル人材が必要となるのである。 また、川端によると、日本の外食企業では、中小企業ほどオーナーや創業者の職 人的なこだわりがオペレーションに強く反映し、日本との差や違いを許容せず味や サービスへのこだわりが特に強いのである。もちろん、日本ではそれが重要な競争 優位の源泉であるし、それを海外で再現できれば大きな競争力につなげるであろう が、現実には日本と同じレベルの品質を海外で再現するのは困難である。元来、中 国や ASEAN 等の新興国では転職が頻繁であり、ノウハウの移転が困難な状況に 他ならない。それにも拘わらず、こだわりの強さから現地店舗スタッフに過度な知 見を要求することが少なくない。 以上より、中小規模の外食企業の海外展開にはストレート型の FC 契約が有効で あるが、それを成功裡に導くには現地パートナーの質と力、そして何より日本との 差の許容範囲の見定め等のガバナンスの確立、そしてオペレーションの標準化やマ ニュアル化が不可欠なのである。 Ⅲ.中小企業の海外進出の課題 前述したように、企業の海外進出が大企業だけのものと思われていた時代が終焉 し、中小企業、製造業に加え外食産業等のサービス産業の海外直接投資を伴った海 外進出が加速してきている。 これは、Digima∼出島∼( )によれば、中小企業の経営者において、 ①インターネットの普及等で、海外企業から商品やサービスに関する照会を直接受 けることが増え、国内市場一辺倒から海外市場に関心を抱きはじめた。 ②少子高齢化、人口減そして停滞する経済成長等より国内市場がシュリンクしてき ている不安や懸念から、海外市場に活路を見出したい。 ③アジアマーケットが熱いと聴き及び、自社も是非そのマーケットで勝負をしたい。 ④以前から国内外の商社や代理店を通じて、海外へ商品を販売しているが、思うよ うに売れない。等の考えを持つようになったことが大きな要因であろう。 しかし、丹下・金子( )に加え、帝国データバンク によると、海外進出す

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る日本企業の約 割は進出先でうまくいかず撤退を考えている。この事実を踏まえ ると、海外進出は苦戦すると言える。さらに、シンガポールやバンコクの大手会計 事務所や経営コンサルティング会社によると、進出先の現地企業から見れば、日本 企業が現地の商習慣に対応できていないからとのコメントであった。 本章では、国際ビジネス経験が多くある筆者が、シンガポールやバンコクの大手 会計事務所や経営コンサルティング会社からヒアリングした内容を中心に中小企業 の海外進出の失敗事例と成功の鍵について述べることとしたい。 .現地の情報を十分に知らずに、あるいは事前調査をせずに進出: 日本企業が海外へ進出する上で掌握していなければならないことは多くある。 例えば、中国や ASEAN 諸国では、法規制、税制や外貨規制等が省・州や地域・ 都市間で相違があり、さらに、相手国の事情で頻繁に変更されることがある。法律 自体が当然ながら英文で明文化されておらず、さらには判例そのものが明文化され ておらず、ケースバイケースで政府や行政の主張が変化するのは日常茶飯事である。 最近では、日本でも知られてきているが、インドでは州ごとに法規制、税規制や 外貨規制が異なり、また州を越えるごとに関税が発生するなど日本の常識では判断 できないのである。このため、インドのある地域で事業化を行い、それを近隣の州 に展開しようとしても他国へ進出するのと同等の新たな知見やノウハウが必要とな るのである。 すべての情報を事前に集めることは現実的ではないが、それでも進出予定国やそ の近隣国、さらには地政学を中心にした世界情勢を抑えておくことは海外進出を成 功裡に導くための必要不可欠なことである。まさに、「無知は失敗の元である」と いえる。 .日本の商習慣や日本でのやり方をそのまま展開する: 言うまでもなく、海外は日本とは異なる国や地域であり、日本でのビジネススタ イルをそのまま持ち込んでも通用しないのである。国が異なると言うことは文化や 宗教、そして人種が異なり、そして商習慣も異なるのである。特に、宗教の問題が 大きく、イスラム教では、豚やアルコールを摂取することは「ハラル 」という宗 教上の規制があることが知られている。そのため、イスラム圏に進出する場合は「ハ ラル認証」が、特に食材で必要となる。 また、以前、フランスのスーパー「カルフール 」やイギリスのドラッグストア 「ブーツ 」等が、本国のビジネススタイルをそのまま日本市場に持ち込んで失敗

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し撤退したことを他山の石として捉えねばならない。加えて、「日本製品は品質が 良く評判であり、メイドインジャパンとして現地化せずそのまま売れる」という考 えもリスクがある。何を販売するかを検討する際には、販売予定先の現地市場を十 分調査することは当然である。 さらに、海外へ進出する際は現地人の雇用が伴うが、その場合、現地人への理解 が重要となる。勤勉実直を旨とする日本人とは異なり、新興国では遅刻や無断欠勤 が日常茶飯事であり、会社へのロイヤリティが低く、転職を繰り返すジョブホッピ ングもまた日常茶飯事であることが多い。 単一民族、単一言語、単一国家である日本が世界のなかでは例外であり、日本の 常識が世界の非常識であるとも言えるのである。このような彼我の事情を認識の上、 海外進出を展開することが重要なのである。 .パートナーに頼らず独力で進出: 海外進出に際しては、多くの有意な情報に加えて資金や人的リソースが必要とな る。現地での会社設立のノウハウ、法規制や税制に関する知識、市場調査から販路 拡大・確保等のマーケティング、そして中国や ASEAN 諸国では英語を話せる人 材は一部に限られており、現地顧客や自社従業員との間で言葉の壁を越えて円滑な コミュニケーションを図るには現地語(中国語―北京語、広東語、タイ語、インド ネシア・マレーシア語やベトナム語等)を話せる人材の確保が死活問題となる。 このような課題は、大企業でさえ社内の人的リソースでは足らず、外部委託等の アウトソーシングを活用している。アウトソーシング等をすれば相応の費用はかか るが、経済成長著しい ASEAN では、日々変化が激しく、スピードも海外進出成 功の大きな要因であり、アウトソーシング、つまり“お金”で時間を買っているの である。 一方、中小企業では川端( )が述べているように、経営規模が小さくさく経 営資源(資金、人材、ノウハウ)の制約が大きいため、自社単独での海外展開は非 常に困難である。これは外食産業に限ったことではなく、製造業や流通・小売業等 でも同じである。したがって、中小企業の海外進出においては、現地に精通する最 適なパートナーを見つけることが何よりも重要なのである。 この件に関して、川端( )によれば、ストレート型の FC 契約で成功してい る中小外食企業が、しばしば口にすることは「現地パートナーに恵まれた」という ことである。現地パートナー企業の選定には王道はなく、たまたま現地パートナー に恵まれたケースが多い。

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このように、現地パートナー選定のノウハウは確立されておらず、現地での運営 の質(味、衛生管理やサービス)に拘る傾向が強い日本の多くの外食企業にとって、 ストレート型の FC 契約にはブランド管理のリスクが高いのである。 特に、海外企業との契約交渉の経験が少なく、またその任を担うグローバル人材 がいない中小外食企業にとって、パートナー企業を管理・統制するのは恐らく至難 の業であると推察される。 Ⅳ.重光産業・味千ラーメンの事例研究 中国で最も成功している日本の外食チェーンが、熊本に本社を置き、 年 月 現在、国内で 店(熊本 店)を展開する重光産業―味千ラーメン―である。 国内外食産業が、・少子高齢化による人口減という日本社会の構造的要因、・類 似業態が増加し、競争は更に激化、・景気低迷や法改正により、家計の支出は外食 から中食へシフトという三重苦で停滞するなか(図 )、重光産業はいち早く海外 展開を図り成功している。同社の中国で FC 契約を結んでいるチェーン店が 店、 その他 ASEAN 店、米国 店等世界で 店を展開している(図 )。同社は、当 初より同社の経営戦略として海外進出を考えていたわけではなく、人の“縁”や“出 会い”により海外へ進出し今日に至っている。 同社は、 年に初めての海外進出として台湾に進出した。現地の製麺会社と合 弁会社を設立したが、現地オーナーに同社の考え方を理解して貰えず失敗に帰した。 現地で販売されていたラーメンは味千ラーメンとは似て非なるものであり、再三に わたる改善要求も相手側の同意が得られずに閉店・廃業そして撤退に至ったので あった。この失敗を機にして、同社は、味千ラーメンの味を守ってくれ尊重してく れるパートナーが見つからない限り海外進出はしないと決めたのである。 しかし、 年に信頼できるパートナー 人と出会った。 人とも香港の実業家 で、日本で食べた味千ラーメンの味に感動し、「この味を香港で広めたい」と熊本 までに会いに来た。彼らとの面談を通じ、信頼に値すると同社の経営幹部が判断し た。その後 年に香港へ 号店を出し、また同年に中国法人を設立し、香港のパー トナー 人が共同経営者に就任した。重光産業の中国法人への出資は数パーセント に留まった。その後 店舗まで中国でチェーン店が拡大すると共に海外で 店舗 まで事業が拡大している。その成功要因としては、次の つがあげられる。

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①現地に任せる経営 食習慣やマーケティング等の現地事情は、現地の人が一番精通しているとして、 経営は現地に任せ、日本の本社は味を守る、ブランドを守る等の品質管理に専念し ている。現地法人と日本法人との間で明確な役割を行った。 中国では、「味千ラーメン」の味に傾倒した 人のパートナーに出会い、深い信 頼関係を構築した。日本法人は味の管理に拘り、マーケティングや商品開発等の味 図 .味千ラーメン(拉麺)FC 海外進出先 出所:重光産業ホームページ 図 .国内外食産業市場の縮小」・停滞 出所:https://www.nihon-ma.co.jp/sector/restaurant.php

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の管理以外のすべてを中国法人のパートナーに委託した。まさに、同社の海外展開 が進んだのは、香港株式市場の上場時期まで、中国の事業を牽引した現地の優れた パートナーの存在が非常に大きかったのである。現在でも、嗜好や土地等、現地を 熟知したパートナーを主体に事業を進め、本社は主にサポートを行う形で海外展開 に取り組んでいる。現地を知る信頼できるパートナーと提携し、モチベーションを 高めることが、同社の販売先の市場を世界中に広げている。 ②現地のニーズをつかむ 「食を通じて文化交流の実現」を目指し、熊本の伝統の味を守りつつ、現地の食 文化に合致したメニューの開発を行い、現地の消費者に広く受け入れられた。 写真 .タイの味千ラーメンのメニュー 出所:重光産業のホームページ(写真 、 とも) 写真 .中国の味千ラーメンのメニュー

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例えば、中国での「激辛牛肉ラーメンやあさりのラーメン」を筆頭に、香港での 「海老ワンタンや冷やしカレーつけ麺」、タイの「トムヤムスープと豚骨スープを 合わせたラーメン」、シンガポールの「辛味噌にチリソースを加えたラーメン」等 をあげることができる。 ③利益を過分に追及せずブランドを広める 同社はストレート型の FC 形式を採用している。加速化する海外展開を支えてい るのは、現場のモチベーションを高める FC の方法である。具体的には、FC のロ イヤリティは固定額としており、本社に一定額に納めると、残りは現地のオーナー の手元に残る。したがって、売上を上げれば上げるほど、現地のオーナーは儲かる 仕組みとなっている。これは、先代の社長の「苦労しているのは店舗の現場である 以上、売れたら実入りが店に残るようにしなければならない。」という考えが引き 継がれているものである。加盟店のモチベーションがあがれば味千ラーメンの拡大 につながり、そして味千ラーメンを広めることが、重光産業が一義的に考えている 経営方針とのことであった。 上記 つ以外に、ストレート型の FC 契約展開での課題であるブランド管理リス クとして、以下をあげることができるであろう。 ①企業秘密であるブラックボックス いくら良いパートナーであっても彼らの知らないブラックボックスつまり企業秘 密を持つことが重要である。重光産業の企業秘密は調味料の配合であり、これは中 国法人に開示していないのである。これはコカ・コーラ社の戦略と同じであり、パー トナーに技術やノウハウを吸収されれば、重光産業としての企業価値が無くなるか らである。 また、企業秘密であるブラックボックスを持つことは、商品の品質管理、つまり ブランド管理につながるのである。いくら海外へ多くの店舗を出店しても、味がま ずければ自社のブランド価値が落ち、それでは本末転倒である。したがって、今後 も現地パートナーと緊張感を持ちつつ信頼関係を築き、Win-Win の関係を長期に わたって構築できるようにしたいと考えている。なお、重光産業の売上( 年 月期)が約 億円 であるのに対して、味千中国の売上( 年 月期)は約 億 円 にも達していることが、それを物語っている。

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②海外パートナーを日本側がモニタリングし続けること 川端( )が指摘するストレート型 FC 契約展開でブランド管理のリスクヘッ ジである「海外パートナーを日本側がモニタリングし続けること」に関しては、米 国留学経験がある重光産業株式会社代表取締役副社長の重光悦枝氏が毎年世界を 万マイルから最大 万マイルも海外出張を続けているとのことより、この任を担っ ていると考えられる。 さらに、学生時代に熊本で、アルバイトで働いていた中国人留学生のうち、一部 を正社員として採用し、出店地域での言語に長けた人材の内製化に努めている。 以上のように、重光産業はまさに、グローバル化とダイバーシティ(多様化)を 併存させ、持たざる者の強みを活かした事業戦略なのである。 最後に、味千ラーメンの海外進出の成功の背景として、重光産業株式会社代表取 締役副社長の重光悦枝氏が述べていた言葉より引用のうえ筆者にて一部編集して、 本節のまとめとする。 .アジアの未成熟な市場で重要なのは、安心・安全・高品質を担保するブランド である。 .どうすれば売れるかではなく、どうしたら喜んで食べてもらえるかを考える。 .事業提携は同じ目線で、上下の関係はない。 強みや弱みを互いに認め合うことが重要であり、自己完結できることが非常に 限れており、事業提携は不可欠である。 .腰を据えてその国の発展に貢献する覚悟を持つ。 .パートナーの利益を奪いすぎない。 .日本流を押し付けない。 .パートナーへの支援体制を万全にする。 Ⅴ.まとめとインプリケーション 経営資源が限られている中小企業の海外進出の課題をⅡ節およびⅢ節で述べてき た。そして、そこに述べてきた課題を解決して海外進出を成功裡につなげている中 小外食企業として味千ラーメンの重光産業の事例をⅣ節で述べてきた。 国内で同じようなビジネスを展開している中小企業、特に地方企業や外食産業の 経営者は、狭い地域での価値観に捉われ、ガラパゴスや蛸壺状態と称される状態に

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陥り、既に海外で成功している企業からの情報が入りづらく、海外進出がさらに遅 れる傾向がある。しかし、事前の準備や周到な経営戦略を持たず、海外展開をする ことは無謀に他ならず、短期間で進出先からの撤退を余儀なくされるのである。 撤退の事例や原因については、Ⅱ節の先行研究やⅢ節の中小企業の海外進出の課 題で述べてきたとおりである。この つの節で述べてきた課題や懸念材料を払しょ くし、海外進出に成功している地方中小企業の一例として重光産業の事例をⅣ節に 紹介した。 同社を詳しく調べていくと、グローバル化やダイバーシティ化を非常にうまく推 進し、持たざる者の強みを活かした事業戦略を展開しているのがわかる。その事例 として、同社は国内では外食産業であるが、海外展開に際しては、調味料や麺等の 食品を製造して、FC 先企業や店舗に販売するという食料品製造業にビジネスモデ ルを変えているのである。製造業のサービス化 、つまり、“顧客への価値提供”か ら“顧客との価値共創”へのシフトが必要だと言われている。これは川上から川下 への移行であるが、逆に重光産業では、川下から川上へ移行したサービス業の製造 業化と言えるであろう。ただし、いずれも、顧客との価値共創であることは同じで ある。この意味で、重光産業はファーストリテイリング(ブランドはユニクロ)等 のアパレル業界が採用している SPA(製造小売業)、サービス産業の 次産業化や 次産業化に通じるものがあると言える。 このような重光産業が採用しているユニークなビジネスモデルが、中小企業が今 後、活路を見出すことが出来うる海外進出の成功の普遍的な事例とあり得るか、今 後とも同社の経営状況や海外進出に関する事業戦略を継続して調査・分析し、検証 していきたい。 一方で、中国メディア・長江商報の 年 月 日付けの記事によると 、味千 (中国)が発表した 年上期の売上高は前年同期比 .%減の 億 万元、純 利益は 億 万元(約 億 万円)前年同期比 .%減を記録した。長江商報 によれば、日進月歩の中国の消費者に対し、今の味千ラーメンは古くなったのだと 伝えたが、果たしてどうだろうか。味千(中国)の今後の挽回策をも注視したい。 注 フランチャイズとは、事業者(「フランチャイザー」と呼ぶ)が他の事業者(「フランチャイ ジー」と呼ぶ)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレー ド・ネームそ の他の営業の象徴となる商標、及び経営のノウハウを用いて同一のイメージのもとに商品の 販売その他の事業を行う権利を与え、一方フランチャイジーはその見返りとして一定の対価

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を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導及び援助のもとに事業を行 う両者の継続的関係をいう。一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会(略称:JFA) の定義より (昭和 年 月策定、同 年 月一部改定) 出所:http://dihttp://www.franchising.jp/fctowa2.htmamond.jp/category/s-kaigaitettai 出所:http://diamond.jp/category/s-kaigaitettai イスラムの教えで「許されている」という意味のアラビア語がハラル。逆に「禁じられてい る」のがハラムである。ハラルやハラムはモノや行動が「神に許されている」のか「禁じら れている」のかどうかを示す考え方。ハラルとは神に従って生きるイスラム教徒(ムスリム) の生活全般に関わる考え方であり、ハラルマーケットは、ムスリムの日々の生活全てに関わ る商品やサービスなどの提供を全て含んだ、とても幅の広い市場である。出所:一般社団法 人ハラル・ジャパン協会ホームページ カルフールの進出国における最大の成功要因は極めてシンプルかつ明快であり、「進出国に おける消費者に対してハイパーマーケットとして低価格で商品を提供できる競争力を確保す るために、いかに短期のうちに現地メーカーとの直接取引体制を構築し、規模の経済を高め ていけるか」という点に集約される。このようななかで、カルフールは日本進出に際してメー カーとの直接取引を画策したものの、大手メーカーから相次いで拒否され、間接取引を余儀 なくされたことが、収益構造に直結する商品の調達構造に大きな打撃を与えた。すなわち、 カルフールは、自社が得意としてきた最適な「商品の品揃構造×商品の調達構造」構築に日 本では失敗し、消費者に対して低価格で商品を提供する事業構造と収益構造を作り上げるこ とができなかった。日本進出後のカルフールは、メーカーとの直接取引が実現できず売上原 価が高止まりする一方で、進出後に余分に必要となる販売管理費も重くのしかかり、営業赤 字から脱却できなかったものと推測される。 出所:http://www.newsweekjapan.jp/m_tanaka/2017/02/post-1_2.php 年に日本での展開を開始。東京や横浜の各繁華街に進出し、銀座店はマツモトキヨシと 隣り合わせに出店していたことが「日英ドラッグストア戦争」として話題を呼んだ。しかし、 英国ブーツの“prime but accessible”という概念が、高級派と庶民派に 極分化している日 本市場に於いて支持が得られずに 年に日本撤退。 出所:https://matome.naver.jp/odai/2133622746199961001 年 月 日福岡で開催された「中小機構 海外展開セミナー」「熊本から世界へ∼ 坪 席で創業した味千拉麺の挑戦∼」重光産業株式会社 代表取締役副社長 重光悦枝氏の基 調講演、配布資料および当日の個別質疑応答に基づき筆者にて作成。 出所:重光産業ホームページ http://www.aji1000.co.jp/company/ 出所:日本経済新聞電子版 年 月 日 製造業が従来のように「モノを製造・提供して、それを消費した顧客から対価を得る」とい う考え方から「価値は顧客が経験したときに生まれるものであり、そのためにモノに加え何 かしらのサービス的要素を含めて提供し、顧客と共に価値創りを行う」という考え方にシフ トすること。出所:http://www.jmac.co.jp/column/opinion/021/watanabe_001.html 出所:http://news.livedoor.com/article/detail/14008875/

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参考文献 江上剛( )『負けない日本企業:アジアで見つけた復活の鍵』講談社 小川孔輔( )「マーケティング技術と実務知識の日本から東アジア諸国への移転研究」科 学研究費補助金研究成果報告書 川端基夫( )「日系外食企業の海外進出に果たすサポーティング・インダストリーの役割」 『商学論究』第 巻 第 号 黒田秀雄( )『わかりやすい現地に寄り添うアジアビジネスの教科書』白桃書房 国土交通省( )「国土の長期展望」中間とりまとめ 概要 重光克明( )「熊本発味千拉麺が中国に広まった理由」『経営者通信』 年 月 角 忠夫( )「ものづくりとサービスビジネスの融合」『開発高額』Vol. ,NO. 丹下英明、金子昌弘( )「中小企業による海外撤退の実態」『日本政策金融公庫論集』第 号 Digima∼出島∼( )「日本企業が海外進出で『絶対にやってはいけない つのこと』」 年 月 日号 平 田 譲 二( )「グ ロ ー バ ル 競 争 で 生 き 残 る 術∼世 界 か ら 取 り 残 さ れ な い た め に∼」 『SANNO エグゼクティブマガジン』Vol. ( 年 月∼新春特別号) みずほ総合研究所( )『図解 ASEAN を読み解く:ASEAN を理解するのに役立つ のテー マ』 三井物産戦略研究所国際情報部アジア室( )『アジアをみる眼』共同通信社 参考新聞記事 日本経済新聞 年 月 日付け朝刊 年 月 日付け朝刊 年 月 日付け電子版 年 月 日付け朝刊 付記:本稿は、平成 年度学長裁量教育研究(研究テーマ:地方中小企業の東アジアへの事業 展開に関する研究)による研究成果の一部である。

参照

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