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有理チェレドニック代数のウェイト加群

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Academic year: 2021

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(1)

有理チェレドニック代数のウェイト加群

八尋耕平

2012

12

1

イントロダクション

有理チェレドニック代数はEtingof-Ginzburg[EG]によって定義されたSymplectic refrection algebraの

特別な場合で、最近活発に研究されている。Lie環の包絡環との類似点も多く、その観点からの研究として、

CategoryO[GGOR]、primitive idealの理論[G]、超局所化[KR]などの理論がある。

この講演では半単純リー環の理論におけるウェイト加群の理論の有理チェレドニック代数における類似につ いて議論したい。 半単純リー環のウェイト加群の分類はFernando[F], Mathieu[M]らによって得られている。この講演では 彼らの方法が有理チェレドニック代数の場合にも適用できることを説明する。

2

半単純リー環のウェイト加群

この節では半単純リー環の既約ウェイト加群の分類についてまとめる。 gを半単純リー環とし、hをそのカルタン部分環とする。 定義1. 有限生成g加群V がウェイト加群であるとは、V がウェイト分解V =λ∈h∗Vλを持ち、ウェイト 空間の次元がすべて有限であることをいう。 ウェイト加群の例としては有限次元表現や最高ウェイト加群がある。 最高ウェイト加群から最も遠い加群として、次のようなクラスのウェイト加群がある。 定義2. ウェイト加群V がカスピダルであるとは、すべてのルートベクトルがV に全単射で作用することを 言う。 カスピダル加群に関してはLemireらによる研究がある。 次の問題は表現論では基本的である。 問題 既約ウェイト加群を分類せよ。 この問題はFernando, Mathieuらによって解かれた。 Fernandoは次のことを示した。 定理3. 1. [F, Lemma4.5] V を既約ウェイトg加群とし、g = g1× g2であるとする。

(2)

このとき、既約ウェイトg1加群V1、既約ウェイトg2加群V2が存在し、V ∼= V1⊠ V2を満たす。

2. [F, Theorem4.18] V を既約ウェイトg加群とする。

このとき gの放物型部分環p と、pのレビ部分環lの既約カスピダルウェイト加群V′ が存在して

V ∼= T op(U(g) ⊗U(p)V′)を満たす。ただしここでpの冪零根基はV′に自明に作用するものとする。

3. [F, Theorem5.12]カスピダルウェイト加群はA型とC型のときにしか存在しない。 定理3の1により既約ウェイト加群の分類は単純リー環の場合に帰着される。定理3の2, 3によりslおよ びspの場合にカスピダルウェイト加群を分類すればよいことがわかる。 Mathieuはカスピダル加群を認容最高ウェイト加群から構成する方法を発見し、すべてのカスピダル加群 がこの方法で得られることを示した。この方法については有理チェレドニック代数の場合に§4で説明する。 Mathieuは既約認容最高ウェイト加群の分類も与え、既約ウェイト加群の分類を完成させた。

3

有理チェレドニック代数

有理チェレドニック代数は複素鏡映群に対して定義できるが、ここでは実鏡映群に限って話を進める。 W ↷ hを実鏡映群、SW の鏡映の集合とする。c : S→ Cを共役類上で一定なS上の関数とする。 定義4. Wに付随する有理チェレドニック代数とは代数T (h⊕ h∗)⋊ W を以下の関係式で割ったものである。 [x1, x2] = 0 (x1, x2∈ h) [y1, y2] = 0 (y1, y2∈ h∗) [y, x] =⟨y, x⟩ −s∈S ⟨y, ˇαs⟩⟨αs, x⟩c(s)s (x∈ h, y ∈ h∗) ただしここでαs, ˇαsはルート、コルートを表し、⟨αs, ˇαs⟩ = 2となるようにとるものとする。 以下では有理チェレドニック代数をHcとかく。 cが0のときはワイル代数とW の半直積になる。cが一般のときにも似たような性質をもつ そのひとつはPBW-propertyである。定義より、自然な写像S(h)→ HcおよびS(h∗)→ Hcがある。こ れらの射に対し次が成立する。 定理5 (PBW-property,[EG]). 積写像S(h)⊗ C[W ] ⊗ S(h∗)→ Hcは線形同型 また、有理チェレドニック代数には微分差分作用素(Dunkl作用素)を用いた次のような実現が知られて いる。 定理6. [D] Hc ,→ D((h∗)reg)⋊ W x 7→ x y 7→ ∂y+ ∑ s∈S ˇ αs(y) ˇ αs (s− 1) w 7→ w 有理チェレドニック代数に対し、オイラー作用素の類似を次のように定義する 定義7 (オイラー元). hの基底{xi}をとり、その双対基底を{yi}とする。Hcの元をEu = 12i(xiyi+ yixi) で定める。これをHcのオイラー元と呼ぶ

(3)

オイラー元は次の交換関係を満たす。 補題8. [Eu, x] = x(x∈ h) [Eu, y] =−y(y∈ h∗) [Eu, w] = 0(w∈ W ) この関係式からもわかるように、オイラー元はDunkl作用素を用いた実現ではほぼオイラー作用素になる。 Wが実鏡映群のときにはさらにオイラー元が半単純元であるようなsl2-tripleを構成できる。{xi}W 不 変なh上の内積に関する正規直交基底とし、その双対基底を{yi}とする。e := 12 ∑ ixi, f :=−12 ∑ iyiと定 める。

補題9. {e, Eu, f}はsl2-tripleをなす。

このsl2-tripleに対しては次のことが知られている。 定理10. {e, Eu, f}の随伴作用から定まるsl2のHcへの作用は局所有限であり、したがってHcは有限次元 既約sl2加群の直和となる。 とくにad(e), ad(f )Hcへの作用は局所冪零である。

4

有理チェレドニック代数の既約ウェイト加群

有理チェレドニック代数にはカルタン部分環にあたるもので、ウェイト分解を定義するのにちょうどよい部 分環が見つかっていないので、ここではEuler元が対角的に作用するものをウェイト加群と呼ぶ。 定義11. Hc加群V にEuler元が対角的に作用し、各固有空間が有限次元のとき、V をウェイト加群とよぶ。 例 12 (最高ウェイト、最低ウェイト加群). hC[W ]で生成されるHcの部分環はPBW-propertyから S(h)⋊ W と同型である。W の既約表現σに対し、S(h)⋊ W 加群構造をhが0で作用するように定める。 すると誘導加群IndHc S(h)⋊Wσ =: V↓(σ)はウェイト加群である。PBW-propertyによりV↓(σ)S(h∗)⋊ W 加群としてはS(h∗)⊗ σと同型である。 同様にσS(h∗)⋊ W 加群とみなして得られる誘導加群をV↑(σ)とかく。これはS(h)⋊ W 加群として はS(h)⊗ σと同型になる。 半単純リー環のVerma加群と同様にV↓(σ), V↑(σ)はただひとつの既約商を持つ。それらをL↓(σ), L↑(σ) とかくことにする。 V↓(σ), V↑(σ)から全射がある(ウェイト)Hc加群をそれぞれ最高ウェイト加群、最低ウェイト加群と呼ぶ。 既約最高ウェイト加群および既約最低ウェイト加群はL↓(σ)およびL↑(σ)しかない。 ウェイト加群をこのように定義するとカスピダル加群はe, f を用いて次のように定義できる。 定義13. ウェイトHc加群Ve, fが全単射で作用するとき、V をカスピダルウェイト加群とよぶ。 この定義の下で、次が成立する。 定理14. 既約ウェイト加群は最高ウェイト、最低ウェイト、カスピダルのいずれかである。

(4)

今はカルタン部分環に当たるものが1次元なので放物型誘導に対応するものは現れない。 証明の方針 Ve:={v ∈ V | ∃n, env = 0}とし、Vf も同様に定める。ad(e)H cに局所冪零に作用するので、これら はVHc部分加群である。 Ve̸= 0ならばV が最高ウェイト加群であることを示す。するとVf ̸= 0ならばV が最低ウェイトである ことが同様に示せ、Ve= Vf = 0ならばウェイト空間の有限次元性によりカスピダルであるので証明が完了 する。 Ve̸= 0ならばV が最高ウェイト加群であることを示すには、まずsl2の表現論を使ってV のウェイトが上 に有界であることを示す。すると有理チェレドニック代数の圏Oの理論から0でない写像V↓(σ)→ V の存 在がわかる。V は既約なので最高ウェイト加群となる。 すでに述べたとおり既約最高ウェイト加群と既約最低ウェイト加群の分類はわかっているので、既約カスピ ダル加群について考える。そのためにまずはMathieuの方法を述べる。 環Hceで局所化した環Hc[e−1]を考える。この環の中で等式 enae−n= i=0 ( n i ) ad(e)iae−i (a∈ Hc[e−1], n∈ N) が成立する。ad(e)が局所冪零なのでこの式の右辺はnを任意の複素数sに置き換えても意味を持つ。 補題15. Hc[e−1]からHc[e−1]への線形写像を a7→ i=0 ( s i ) ad(e)iae−i でさだめると、これはHcの自己同型を与える。 最低ウェイト既約表現Veで局所化し、それを補題で得られた自己同型でひねることにより新しいHc加 群が得られる。これをe−sV とかく。これが半単純リー環のカスピダル表現を統一的に得るためにMathieu が用いた方法である。 e−sV のウェイト空間が有限次元であること保障するためにはV に次の仮定が必要である。 定義16. ウェイトHc加群V のウェイト空間の次元がある整数で一様に上から抑えられていて、さらに無限 次元であるとき、V を認容ウェイト加群とよぶ。 すると次の定理が成立する。 定理17. 1. V を既約認容最低ウェイトHc 加群とする。このとき、ある有限集合 S ⊂ Cがあって、任意の s∈ C \ (S + Z)に対しe−sV は既約カスピダルウェイト加群となる。 2. V を既約カスピダルウェイトHc加群とする。このときある既約最低ウェイトHc加群V′s∈ Cが あってV ∼= e−sV′となる。 証明の概略 1. ウェイトHc 加群M がカスピダルであることとMe = Mf = 0は同値である。sl2 の表現論から (e−sV )e= 0はsの値によらず成り立つ。

(5)

あるsについて(e−sV )f ̸= 0とする。このとき圏Oの一般論からある0でない写像M(σ)→ e−sV が存 在する。そこでS ={12(V のウェイトのひとつ)21(M↑(σ)の最低ウェイト)| σ : W の既約表現}とおけ ばよい。 2. (esV )f ̸= 0なるsがあればよい。このようなsの存在はsl 2の場合[M, Lemma5.1]から直ちに従う。

5

既約認容最高ウェイト加群の分類

既約ウェイトHc加群の分類は認容最高ウェイト加群の場合に帰着されたが、既約認容最高ウェイト加群の 分類は部分的にしか得られていない。既約認容最高ウェイト加群の分類が得られているのは, A, B, I2, H3型 の実鏡映群の場合である。A型およびB型の場合については[W], [SV]を参照せよ。この節ではI2, H3型の 場合の分類を述べる。

5.1

I

2

(m)

この場合には、Chmutova[C]により既約最低ウェイト加群をEuの作用の固有値によりC次数つき加群と 思ったときの次数つき指標が計算されている。 W = WI2(m)は群としては⟨a, b|a

m= b2= abab = 1と同型で⟨a, b|am= b2 = abab = 1⟩ → GL(2, C),

a7→ ( cos( m) − sin( m) sin(m) cos(m) ) , b7→ ( −1 0 0 1 ) により与えられる。 mが偶数か奇数で様子が異なる。 mが奇数のときはパラメータがひとつなのでそれを cとおく。同型 Hc → H−cx 7→ x, y 7→ y, a, b7→ −a, −bにより得られるのでc > 0としてよい。 L↑(σ)が認容となるcσの組は、cが半整数のときの自明表現だけである。 mが偶数のときは鏡映の集合がS = {b, a2b, . . . am−2b} ⊔ {ab, . . . am−1b} と二つの共役類にわかれる。 n := m2 とする。c1 := c(b), c2:= c(ab)とおく。Hc1,c2 → H±c1,±c2, x7→ x, y 7→ y, a, b 7→ ±a, ±bという 4つの同型とHc1,c2 → Hc2,c1, x7→ x, y 7→ y, a, b 7→ a, abという同型がある。W の既約表現は1次元表現 が4つと(n− 1)個の2次元表現τi, a7→ (

cos(2iπm) − sin(2iπm) sin(2iπm) cos(2iπm)

) , b7→ ( −1 0 0 1 ) (1 < i≤m2 − 1)がある。 したがってc1, c2> 0としてよく、またc1, c2に関して対称である。 L↑(σ)が認容となるc1, c2とσの組は (1) c1が半整数、c2は半整数でない、c1+ c2はnr, rnで割れない、を満たすc1, c2と自明表現。 (2) c1+ c2は rnrmで割ったあまりは±lc1− c2はnrrmで割ったあまりは±l|k1||k2| の小さいほうが半整数でない、を満たすc1, c2とτl (1≤ l < n) である。

5.2

H

3

この型に対しては最高ウェイト加群の指標がBalagovic-Puranik[BP]によって得られている。この小節で の記号は[BP]に従う。 このときはパラメータはひとつしかないので、それをcとかく。I型の場合と同様、c > 0としてよい。 L↑(σ)が認容であるcσの組は、c = 51,95 のときの˜3c = 2 5, 3 5, 7 5, 8 5のときの1+, 3c = 45, 6 5のと

(6)

きの1+, ˜3c = r3, r : oddのときの1+, 4+、c = r3, r : evenのときの1+, 4 である。

参考文献

[BP] Balagovic and Puranik, Irreducible representations of the rational Cherednik algebra associated

to the Coxeter group H3 arXiv:1004.2108v3

[C] Chmutova, Representations of the rational Cherednik algebras of dihedral type, J. Algebra 297 (2006), no. 2, 542–565.

[D] Dunkl, Differential-difference operators associated to reflection groups, Trans. Amer. Math. Soc., 311 (1989), no 1, 167–183.

[EG] Etingof and Ginzburg, Symplectic reflection algebras, Calogero-Moser space, and deformed

Harish-Chandra homomorphism, Invent. math., 143 (2002), 243–6348.

[F] Fernando, Lie algebra modules with finite-dimensional weight spaces. I, Trans. Amer. Math. Soc. 322 (1990), no. 2, 757–781.

[G] Ginzburg, On primitive ideals, Selecta Math. (N.S.) 9 (2003), no. 3, 379–407.

[GGOR] Ginzburg, Guay, Opdam and Rouquier, On the category O for rational Cherednik algebras, Invent. math., 154 (2003), 617–651.

[KR] Kashiwara and Rouquier, Microlocalization of rational Cherednik algebras, Duke Math. J. 144 (2008), no. 3, 525–573.

[M] Mathieu, Classification of irreducible weight modules, Ann. Inst. Fourier (Grenoble) 50 (2000), no. 2, 537–592.

[SV] Shan and Vasserot, Heisenberg algebras and rational double affine Hecke algebras, J. Amer. Math. Soc. 25 (2012), no. 4, 959–1031.

[W] Wilcox, Representations of the rational Cherednik algebra, Thesis (Ph.D.)-Harvard University. 2011.

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