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シグナル伝達の時空間動態を光で制御して光で解析する

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Academic year: 2021

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(1)

磁性研究グル-プ

反芳香族ポルフィリンの安定化および超原子価化合物の異性化に関

する研究

松川史郎

1.研究目的

β-オクタアルキル-meso-テトラフェニルポルフィリンは高度に歪んだ骨格を持っており, これを用いてポルフィリンの 2 電子酸化体を初めて単離することに成功した.これらの酸 化体は,その基本的な物性のみならず,錯体化学における新しい配位子としても期待され るものであった.しかし、これらの酸化体は固体状態では安定であったが,溶液(特に極 性溶媒)中では徐々に分解することがわかった.このような経緯から,酸化ポルフィリン の化学に関する深い知見を得るために、より安定な酸化ポルフィリンが求められている状 況であった.本研究では,安定な 2 電子酸化ポルフィリンを合成するための方法論として, 周辺置換基の立体的な嵩高さに加えて電子的な安定化を目的として検討を行った. 三方両錐構造を有する 5 配位化合物の異性化に対して,二つの機構が提唱されていた. 一つは、現在でも最も広く受け入れられている Berry pseudorotation (BPR),そしてもう一つ は Turnstile rotation (TR) と呼ばれる機構である.理論研究によって BPR の方が TR よりも 低エネルギー過程であるとされており,実験的事実と矛盾しないことから,5 配位化合物の 異性化は BPR によって議論されていた.一方、TR の存在を現実に証明した例はなく,TR の存在自体が疑問視されているという状況であった.これまでに我々は,強固な三座配位 子を用いて超原子価アンチモン化合物が TR によって異性化することを明らかにしたが,合 成が困難であり,適用される配位子が限られるという問題があった.そこで、本研究では, より汎用性のある三座配位子を開発し,超原子価アンチモン化合物の合成と異性化に関す る研究を行った.また,ケイ素化合物についても合成を検討した.

2.2012 年度の研究計画

2012 年度は以下の項目について検討を行った. 1) 安定化された反芳香族ポルフィリンの合成. 2) 新規三座配位子を持つ超原子価化合物の異性化とケイ素化合物の合成.

(2)

3.2012 年度の研究成果

1)安定化された反芳香族ポルフィリンの合成 安定な 16π ポルフィリンを合成するために,既知物である β-オクタメトキシ-meso-テトラフ ェニルポルフィリンを 5 塩化アンチモンで酸化した.その結果,紫外可視スペクトルにお いて,Soret 帯のブルーシフト(333 nm)が観測されたことから,16π ポルフィリンが生成 していると考えられる.しかし,充分な精製ができなかったため,NMR による芳香族性の 議論には到らなかった. そこで、β-オクタメトキシ-meso-テトラフェニルポルフィリンに亜鉛(II)を導入し,同様に 酸化したところ,安定な 16π ポルフィリンを得ることに成功した.紫外可視吸収スペクト ルでは,18π 錯体が 420 nm に強くシャープな Soret 帯を示したのに対し,16π 錯体は 344 nm を中心とする弱くブロードなスペクトルを示した.1 H NMR においては,16π 錯体はポルフ ィリンのプロトンが高磁場シフト(Δδ=0.3~0.5 ppm)し,亜鉛に配位している水分子のプロト ンが低磁場シフト(Δδ=0.9 ppm)した.これらの結果は 16π 錯体が非芳香族または反芳香族的 性質を持っていることを示している.また,16π 錯体は精製したジクロロメタン中で 1 週間 放置しても変化せず,安定であることがわかった. 16π ポルフィリンを安定化する方法論として,meso 位にチエニル基を持つドデカ置換ポ ルフィリン,すなわちβ-オクタエチル-meso-テトラ(5-メチル-2-チエニル)ポルフィリンおよ び β-オクタイソブチル-meso-テトラ(5-メチル-2-チエニル)ポルフィリンの合成に成功した. このポルフィリンのニッケル(II)錯体を合成し,単結晶 X 線構造解析を行ったところ,対応

(3)

す る テ ト ラ フ ェ ニ ル 誘 導 体 よ り も ポ ル フ ィ リ ン 骨 格 が 歪 ん で い る こ と が わ か っ た (ORTPP-Ni, RMS = 0.780; OETThP-Ni, RMS = 0.817).これらのチエニルポルフィリンの酸 化反応を様々な酸化剤を用いて検討したが,ポルフィリンの窒素原子がプロトン化された 状態が非常に安定であるため,現時点では成功していない.しかしながら,テトラチエニ ル誘導体がより歪みやすいことは,これらが 16π 酸化体や 20π 還元体の良い前駆体となり 得ることを示している. 2) 新規三座配位子を持つ超原子価化合物の異性化 これまで我々は,1,1-ジフェニル-2,2,2-トリフルオロエタノール骨格を持つ強固な新規三 座配位子によって位置異性化反応を適度に抑制し,単座配位子として二つの異なるアリー ル基を有する様々な 5 配位アンチモン化合物の合成に成功した.それらの位置異性化反応 の速度論測定を行ったところ,アンチモン化合物としては非常に高い活性化エネルギー(28 kcal/mol)を有することが分かった.分子軌道計算によって遷移状態における各原子の force vector を解析したところ,この異性化反応が Turnstile rotation (TR)によって進行しているこ とが分かった.これは、TR による異性化の存在を初めて実験的に証明した例である.更に は,ドナー性溶媒(THF, MeCN)によって異性化が大きく加速されることも見出した.速度論 解析および分子軌道計算の結果,ドナー性溶媒のアンチモン原子への配位によって,遷移 状態が大きく安定化されていることが明らかとなった. Sb O Ar F3C Xyl Ar = p-ClC6H4, p-CF3C6H4 Sb O Xyl F3C Ar Turnstile Rotation そこで,本研究では 1,3-ジフェニル-2-トリフルオロメチル-2-プロパノール骨格を持つ新 規三座配位子を開発し,超原子価アンチモン化合物の合成と異性化を検討した.下の反応 式のように,配位子前駆体であるジブロモ体から,クロロスチボランおよびジアリールス チボランを合成することに成功した.クロロスチボランについては,単結晶 X 線構造解析

(4)

に成功し,アンチモン原子の幾何構造が理想的な三方両錐構造に近いことがわかった. ここで,Tol, Ar を持つジアリールスチボランは下に示した 2 つの立体異性体 A, B の混合 物として得られた.これらの異性体の間には異性化過程が存在し,平衡混合物を与える. しかし興味深いことに,これらの異性体 A, B はアセトニトリルを溶離液とする逆相高速液 体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって分離することが出来た.これは,一般的に異性化 が非常に速いとされている 5 配位アンチモン化合物としては異例のことであり,今回開発 した新規三座配位子が異性化の活性化障壁を上昇させる効果が高いことを示したものであ る.異性体 A と B の間の平衡化に関して予備的な速度論測定を行ったところ,アセトニト リル中,30℃での活性化自由エネルギーが約 24 kcal/mol であることがわかった. 本三座配位子を他の典型元素化合物に対して適用すべく,下図のようなケイ素化合物を 合成した.この化合物は安定であり,単結晶 X 線構造解析の結果,歪みの少ない四面体構 造であることがわかった.この結果は,本三座配位子がサイズの異なる様々な元素に適用 し得ることを示している.ケイ素化合物は求核剤と反応して 5 配位のケイ素アニオン種を 与える.これまでに三方両錐構造のケイ素化学種の TR が観測された例はないため,本三座 配位子を用いて検討していくつもりである.

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4.成果公表リスト

原著論文

1) Nakamura, K. Imai, N. Igawa, Y.Okamoto, E. Yamamoto,S. Matsukawa, M.Takahashi

155

Gd Moessbauer spectroscopic and powder X-ray diffraction study of CeO2-GdO1.5 solid

solution

Hyperfine Interact. 207, 67-71(2012).

2) S.Sugawara, Y.Hirata, S.Kojima, Y.Yamamoto, E.Miyazaki, K.Takimiya, S.Matsukawa, D.Hashizume, J. Mack, N.Kobayashi, Z.Fu, K.M. Kadish, Y.Mo Sung, K.Suk Kim, D.Kim Synthesis, Characterization and Spectroscopic Analysis of Antiaromatic Benzofused Metallo- porphyrin Species

Chem. Eur. J. 18, 3566-3581(2012).

3) X.Dong. Jiang, S.Matsukawa, S.Kojima, Y.Yamamoto

Synthesis and Characterization of Antiapicophilic Arsoranes and Related Compounds

Inorg. Chem. 2012, 51, 10996-11006.

学会発表、シンポジウム講演

1) Y.Imada, H.Yamamichi, S.Matsukawa, S.Kojima, K.Ando, Y.Yamamoto

Study of the Isomerization of Pentacoordinate Antimony Compounds Bearing a Rigid Triden- tate and a Bidentate Ligand by Turnstile Rotation

The 19th International Congress on Phosphorus Chemistry (ICPC-19) (July 2012.Rotterdam, Netherlands)

2) 今田康公・山道秀映・松川史郎・小島聡志・安藤香織・山本陽介 超原子価 5 配位アンチモン化合物の Turnstile Rotation による異性化機構の研究 第 28 回若手研究者のための化学道場 出雲 (2012 .09) 3) 鈴木かおり・松川史郎・高橋正 回転柵機構の系統的研究を指向した新規三座配位子:5 配位アンチモン化合物の合成へ の応用 日本化学会第 93 春季年会 立命館大学 草津 (2013.03 ) 4) 川戸邦宏・松川史郎・高橋 正 β-メトキシ基を有する 16 πポルフィリン-亜鉛 (II) 錯体の合成 日本化学会第 93 春季年会 立命館大学 草津 (2013.03 )

(6)

5) 會田時大・松川史郎・高橋正 テトラアリールテトラベンゾポルフィリン金属錯体のスルホン化の試み 日本化学会第 93 春季年会 立命館大学 草津 (2013.03 ) 6) 福井新・松川史郎・高橋正 meso 位にヘテロ五員環を有する非平面ドデカ置換ポルフィリンの合成・構造および性 質 日本化学会第 93 春季年会 立命館大学 草津 (2013.03 ) 7) 小沼太郎・松川史郎・高橋正 ケイ素で連結された亜鉛 (II) ポルフィリン二量体の合成 日本化学会第 93 春季年会 立命館大学 草津 (2013.03 ) 8) 綿引裕太・松川史郎・高橋正 ヘキサキス (テルチエニル) ジシロキサンの合成の検討 日本化学会第 93 春季年会 立命館大学 草津 (2013.03 ) 9) 小熊崇大・松川史郎・高橋正 新規三座配位子を持つケイ素化合物の合成 日本化学会第 93 春季年会 立命館大学 草津 (2013.03 )

参照

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