香 川 大 学 経 済 論 叢 第71巻 第2号 1998年9月 307-320
研究ノート
購買時の重視点、からみたパーソナル・コンビューター
(パソコン)の商品特性
し は じ め に関
義 雄
*(1)馬 淵 キ ノ エ 村
岡 内 雄 司 *
近年,パソコンの普及率が急速に上昇している。経済企画庁の報告によると,パソ コンの普及率は1987年が 11..7%,1993年が 11.9%と 1990年代前半はほぼ横這いで あったのが, 1997年に 22..1%,1998年 3月には 252%とこの数年急激に上昇してい る。現在これほど急激に普及率が上昇している家電製品はない。また,パソコンには 他の家電製品にない大きな特徴を持っている。よく言われるように,パソコンはソフ トウェアがなければただの箱でしかない。ソフトウェアの充実とパソコンの普及率と は密接な関係があり,最近の急激な普及率の上昇はマイクロソフト社のウインドウズ 95が大きな役割を果たしていると思われる。しかし,ウインドウズ 95はo
s
の1種で あり,それだけでパソコンが有用な仕事をするわけではなく,パソコンに仕事をさせ るためにはアプリケーション・ソフトが必要である。このようにパソコンは単独では 機能しない商品であるという点から,商品学的にも興味深い商品であり,また,消費 者がパソコン本体とソフトウェアの関係を理解して,パソコンを購入しているのか輿 (1) ホ香川大学経済学部。“四国大学経営情報学部。 (2 ) 経済企画庁 r消費動向調査J,経済企画庁のホームページ参照;http: j jwww. epa go jpjj-jjdocjmenu htmlOLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
-308- 香川大学経済論叢 502 味深い問題である。今後ノfソコンがさらに普及率を上昇させるかどうかを判断するた めにも,購買時の重視点から見たパソコンの商品特性を知ることは重要であると考え られる。 著者らは商品の特性を明らかにするために,商品が持つ固有の品質特性だけではな く消費者が購買する時その商品をどのように捉えているかという消費者から見た視点 も重要であると考え,これまで携帯情報機器としてのPHS,通信販売における商品特
w
w
~ 性,非日常的商品である和服,衣料品としての外出着,実用衣料,及び下着,さらに 経済成長が著しい中国におけるテレビ及び外出着についてそれぞれの商品特性を明ら かにした。しかし,これまでに取り上げた商品の数は少なし商品特性を普遍化する ような有用な知見を得るためには,より多くの商品について同様な研究が必要である。 このような観点から,本研究では購買時の重視点から見たパソコンの商品特性を明ら かにすることを目的とした。 II.パソコン購買時における重視度 消費者がパソコンを購入する際の重視点の構成要素は,著者らの先行研究および消 費者インタビューの結果などに基づき,パソコンにふさわしい項目として,商品属性 13項目,庖舗属性12項目を作成し,アンケート調査で回答を求めた。 (3 ) 関義雄・馬淵キノエ・岡内雄司「購買時の重視点から見た携帯情報機器の商品特性 -PHSを一例としてーJ I香川大学経済論叢』第71巻,第l号,1998年,157-168ぺ}ジ。 (4 ) 関義雄・馬淵キノエ「通信販売における商品特性Jr香川大学経済論叢』第67巻,第1 号, 1994年, 49-70ページ。 (5 ) 馬淵キノエ・関義雄「消費者意識から見た和服の商品特性J I商品研究』第45巻,第3・ 4号, 1995年, 12-20ページ。 (6 ) 関義雄・馬淵キノエ・川本和明「庖舗属性の重視度から見た衣料品の特性Jr商品研究』 第43巻,第1・2号, 1992年, 31-40ページ。 (7) 郭云容・馬淵キノエ・関義雄「中国における庖舗属性の重視度から見たテレビおよび外 出着の特性Jr商品研究』第48巻,第I・2号.1998年, 18-29ページ。(
8
)
アンケート調査ではパソコンの購入を考えたとき,どんな点を重視して商品/庖を選 びますか。次にあげる各項目の中から重視する項目にO
をつけてください。」という質問 をしている。データ分析ではO
のついた項目には r2 Jを.0
のつかない項目には r1J を与えた。サンプノレは,香川県高松市に居住する20歳以上60歳未満の市民を対象とし, 選挙人名簿より等間隔法で1043人を抽出し郵送法で行った。実施期聞は1996年6月 ~7 月。有効回答者数 439 名。回収率は 42% である。分析は SPSSfor Macintoshによる。503 購買時の重視点からみたパ}ソナル・コンピュータ- (パソコン)の商品特性 -30少ー 25項 目 の 重 視 点 に つ い て の 平 均 お よ び 標 準 偏 差 を 図 表 1に示す。平均値が高いほど 重 視 度 が 高 く , 最 も 重 視 度 が 高 い 項 目 は r使いやすさ」および「価格」などの商品属 性 で あ る 。 最 近 の パ ソ コ ン は ユ ー ザ ー ・ イ ン タ ー フ ェ ー ス が 飛 躍 的 に 向 上 し て い る と は い え , テ レ ビ の よ う に ボ タ ン を 押 す だ け で 誰 も が 簡 単 に 使 え る 商 品 で は な い 。 パ ソ コ ン の 持 つ 機 能 ・ 性 能 を 発 揮 さ せ る た め に は , キ ー ボ ー ド 入 力 の 技 能 や 専 門 用 語 の 理 解 な ど が 要 求 さ れ る 。 そ の た め に , 消 費 者 は 使 い や す さ を 最 も 重 視 す る も の と 考 え ら れ る 。 ま た , 価 格 の 重 視 度 が 高 い 理 由 と し て 1つ は パ ソ コ ン が 比 較 的 高 額 商 品 で あ ること 2つ は , 低 価 格 の 入 門 機 種 , 中 価 格 の 普 及 機 種 , 高 価 格 の 上 位 機 種 と い う よ 図表1 パソコンの重視度 項 日 平均 使いやすさ 1.68 価格 1 68 アフターサービス 1.61 定員の専門知識 1 59 信頼できる庖 1.53 品揃えが豊富な庖 149 豊富なソフト 1. 42 処理速度 140 ハードディスクの容量 1 31 耐久性 1.30 貿わ貿なう定く前員てにのも試接気用軽客で態にき度入るれ底る庖 1127 . 28 1. 27 メモリー 1 22 省スペース 1.20 蒙?い商駐仲有卓品名
R
場K
メ5の霊品ーいあカてるー性脂いる応 1 19 1.19 1 15 1.15 1.14 携帯性 1 11 ソフトなどがもらえる庖 1. 09 色・デザイン 1 09 買いお物酒に落便な利底な!吉 11.0.071 標準偏差 47 47 49 ..49 .50 50 49 49 46 .46 45 ..45 45 41 .40 39 39 36 36 .35 ..31 28 28 26 .08 うに,価格と性能の関係が比較的明白 であること 3つは,パソコンはイノ ベ ー シ ョ ン に よ る 進 化 が 著 し く , 半 年 後 に 新 モ デ ル が 登 場 す る と 旧 モ デ ル は 一 気 に 機 能 的 陳 腐 化 し 急 速 な 価 格 低 下 が生じる,などが考えられる。 次 に 重 視 度 が 高 い 項 目 は rア フ タ ー サ ー ビ ス が よ い 庖j,r庖 員 の 専 門 知 識 が あ る 庖jr信 頼 で き る 庖j,r品 揃 え が 豊 富 な 庖 」 な ど の 底 舗 属 性 で あ る 。 パ ソ コ ン は 永 く 使 お う と 思 え ば 使 え る 耐 久消費財であるが,前述したようにイ ノ ベ ー シ ョ ン に よ る 機 能 的 陳 腐 化 が 著 し い 商 品 で あ る 。 こ の よ う な 状 況 下 で ( 9) たとえば,マッキントツシュのPowerMac G 3シリーズでは市場価格が 20万円弱の 入門機から 30万円弱の普及機. 50数万円の最上級機があり. Powe Bookシリーズでは 30万円弱から 70数万円。 PowerMac用の G 3アップグレードカードは 19種類,約 9万 円から 32万円まである。消費者にとっては選択肢が多いことは歓迎できるとしても,そ のためにいっそう商品選択が困難になっている。そこで,パソコン誌では消費者が一目で 比較できるように,価格と性能チャートによって商品選択の判断材料を提供している。 「特集 1 最新 G 3バイヤーズガイドJr 日経 MAC~ 日経 BP 社. 1998年 7月号. 98-115 ページ。OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
-310-ー 香川大学経済論叢 504 消費者が商品選択するためには新製品情報の取得や商品知識が不可欠となる。また, パソコンは本体,モニターおよびキーボードがあればその機能を発揮することができ るが,プリンター,モデム,スキャナーなどさまざまな周辺機器を接続することによっ て機能が飛躍的に増大する。消費者は使用目的と予算に合わせてハードウエアを構成 することが出来る。しかし,パソコンは一度購入すればそれで終わりというわけにい かない。新しい
os
が登場すれば,対応ソフトウエアもヴァージョン・アップされ,そ れにともないメモリの増設が必要になり,さらには新しいモデルに貿い換えるといっ たハードウエアの整備が必要となる。多くの多機能商品の場合,例外的に,たとえば, マニアがオーディオなどを自分流に組み立てることはあっても,一般的な消費者は メーカーによってシステム化された商品を購入すればよい。ところが,パソコンでは 消費者自らが様々なハードウエアとソフトウエアを組み合わせて商品のシステム化を 行っている。これは,消費者によって使用状況が異なることを意味すると同時に,多 様な使用環境がもたらすトラブルの多様性を意味する。万一,重大なトラブルが発生 すれば,消費者が自ら修理することは不可能であり,そのためには安心できるメンテ ナンス・サービスが必要となる。このような理由で,消費者は品揃えが豊富で,専門 知識をもっ庖員がいて,アフタ}サービスも充実した,信頼おける底を重視するもの と考えられる。 その次に重視度が高い項目は「豊富なソフトj,r処理速度j,rハードディスクの容 量j,r耐久性」などの商品属性である。パソコンのパフォーマンスはソフトウエアに よって規定され,ソフトウエアのパフォーマンスはパソコン本体の処理速度やハード ディスクの容量などのハードウエアによって規定されるからである。 一方, 24項目の中で最も重視度が低い項目は rお酒落な底」である。次いで低い順 にあげると「買い物に便利な庖j,r色・デザインj,rソフトやマウスパッドなどがも らえる底j,r携帯性」となっている。これらは底舗の利便性や付加的なサービスにか かる項目である。「お酒落な庖」や「色・デザイン」は,衣料品のような買回品におい て重視され r買い物に便利な底」は日用品のような最寄品において重視される項目で ある。これらの重視度が低いのはパソコンが買回品や最寄品ではなく専門品であり, 高額商品で購買頻度も低く消費者が購買時に買い物努力を惜しまないためと考えられ505 購買時の重視点からみたパ}ソナル・コンピューグー(パソコン)の商品特性 -311ー る。 以上のように,パソコンの購買時の重視度は「使いやすいj,r価格j,rアフターサー ビスがよい庖j,r底員の専門知識がある底」などが高く,機能が目的として購入され る専門品の特徴を反映していることが明らかとなった。 III.パソコンの使用経験と重視度の関連 パソコンのように機能が重視され消費者の知識や使いこなし能力が要求される商品 では,商品の使用経験年数が購買時の重視度に影響を与えるであろうと考えられる。 図表2は使用経験2年未満と2年以上について比較したものである。重視度の高い項 目を順にあげると,使用経験が2年 図表2 パソコンの使用経験と重視度との関係 全 体 経験別平均 項 目 2年 2年 平 均 未満 以上 使いやすさ 1.68 1.71 1.53* 価 格 168 171 1.69 アフターサービス 1 61 160 1 65 庖員の専門知識 159 148 1 62 信頼できる庖 153 156 1. 45 品揃えが豊富な}苫 1.49 1.52 1.43 豊富なソフト 1 42 1. 33 149 処理速度 140 1 60 158 ハードディスクの容量 1. 31 138 1. 58・ 耐久性 1.30 1.21 1.22 買う別に試用できる底 128 1.21 120 気軽に入れる底 1.27 115 122 庖員の接客態度がよい庖 1. 27 1. 25 1.22 メモリー 122 1. 33 1.42 省スペース 1.20 1.10 1.13 有名メーカー 119 129 122 安い商品を置いている底 1 19 1.19 127 拡張性 1.15 1. 25 128 仲間と互換性 1.15 110 1 25事 駐車場のあるJ苫 1.14 1.08 1.08 携帯性 111 108 1 14 ソフトなどがもらえるl苫 109 106 1. 08 色・デザイン 109 102 109・ 買い物に便利な底 1.07 1.13 1.02‘ 注 l 本 P<..05 未満(ライトユーザー)では, 1.r使 いやすさj,r価格j,3.rアフター サービスがよい庖」,「処理速度j,5. 「信頼できる庖j,6 r品揃えが豊富 な庖」であるのに対し,使用経験が 2年以上(ヘビーユーザー)では, 1日「価格j,2叶「アフターサービス がよい庖j,3れ「庖員の専門知識が ある庖j,4.rハードディスクの容 量j,r処理速度j,6..r使いやすさ」 の順になっている。ライトユーザー とヘビーユーザーでは重視項目の順 位が異なっている。 両者聞に有意差が認められたのは 5項目である(P<05)。そのうち, ライトユーザーの方がヘビーユー ザーより重視度が高い項目は r使い やすさ」と「買い物に便利な底」の
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
312- 香川大学経済論叢 506 2項目である。また有意差は認められなかったものの,傾向として r信頼できる庖」 や「有名メーカー」についても,ライトユーザーの方が重視度が高い。ライトユ}ザー では r使いやすさ」とか「有名メーカー」という抽象的な商品属性や「買い物に便利 な庖」とか「信頼できる庖」という抽象的な庖舗属性によって購買意思決定が行われ ている。一方,ヘビーユーザーの方がライトユーザーより重視度が高い項目は rハー ドディスクの容量j,r仲間と互換性があるj,r色・デザ、イン」の3項目である。ヘビー ユーザーでは rハ!ードディスクの容量j,r仲間と互換性がある」といったような,具 体的な商品属性に注目して矯貿意思決定が行われていることを示している。この結果 は,消費者が使用経験を重ねることによって新製品情報や商品知識にもとづいた合理 i 的・主体的な商品選択が行われることを示唆している。
I
V
.
パソコン購入における重視度の主成分分析 重視度は消費者の使用経験によって異なることが明らかになったが,一般に消費者行 動は性差,年齢差によって異なる。そこで,性や年齢などの消費者属性とパソコンの 。 曲 重視度の関連を検討するため,まず,最初に 24項目の重視点を主成分分析によって少 数次元に要約した。その結果を図表3に示す。分析は固有値がLO以上の主成分を抽 出した後,解釈を容易にするためパリマックス回転を行っている。累積寄与率は53 2%である。分析結果は24項目の重視点が7つの相互に独立した次元に要約されるこ とを示している。各主成分に高い因子負荷量を持つ項目からその内容を解釈する。 第1主成分に高い負荷を示す項目は rメモリj,rハードディスクの容量j,r拡張性j, 「処理速度」などである。これらはパソコンの基本的な機能・性能であり,客観的に 判断可能な品質であることから r客観的品質」と解釈される。 第2主成分に高い負荷を示す項目は rアフターサービスがよい庖j,r信頼できる 底j,r底員の専門知識がある庖j,r耐久性j,r使いやすさ」などである。これらは主 に商品購入後のメンテナンスにかかる項目であることから rメンテナンス」と解釈さ れる。 (10) rお酒落な底」については,サンプルの反応数が少なかったため,以後の分析では除外 している。-313ー 購買時の重視点からみたパーソナル・コンビューター(パソコン)の商品特性 507 パソコン購入における重視点の主成分分析 主 成 分 質問項目 1 2 3 4 5 6 7 客観的品質 メン7ナンス 商品選択 入りやすさ 携帯性 底E蹴形態 ソフトウエア メモリー 803 008 022 111 126 一目051 042 ハードディスクの容量 760 071 。目80 017 030 -..022 177 拡張性 。701 073 164 156 068 049 - 200 処理速度 673 .113 .132 一.008 .057 .010 .162 77ターサービスがよい 105 691 001 146 002 -..018 228 信頼できる庖 023 660 l44 081 -..001 186 -..059 庖員の専門知識がある庖 252 540 223 014 059 - 042 129 耐久性 061 527 074 172 .295 109 - .177 使いやすさ 一.172 .522 .448 .138 .105 一.001 一.040 価格 075 219 716 033 041 130 018 買う前に試用T.'きる庖 050 241 568 162 218 - 170 096 安い商品を置いている庖 293 -337 。529 164 ..003 302 047 品揃えが豊富な底 .034 .239 .365 .204 .022 .177 .136 府員の接客態度がよい庖 107 238 175 655 096 -..006 -..027 気軽に入れる庖 117 083 291 649 099 -..119 - 082 駐車場のある庖 011 .091 一.035 .632 .101 .213 .255 携帯性 132 062 001 -0.22 。789 - 014 053 省スペース 068 213 102 134 653 099 140 色・デザイン .084 .081 .169 .327 .609 .215 一.019 有買名いメーカー 010 161 176 107 115 660 - 081 物に便利なj苫 一.035 .028 一.099 .420 .144 .576 .046 仲間と互換性 150 008 010 013 114 274 704 ソフトなどがもらえる庖 029 063 160 139 017 406 578 豊富なソフト .281 .301 .107 一.010 .141 .180 .321 図表3
t
i
l
l
-i
i
「アフタ}サービスがよい庖J. r信頼できる庖J. r底員の専門知識がある庖」の関 連が高いことから,販売底の専門性とアフターサービスが消費者から信頼されるため の重要な要素であることが示唆される。 第3主成分に高い負荷を示す項目は r価格J.r買う前に試用できる底J.r安い商品 を置いている庖J.r品揃えが豊富な庖」などである。これらは主に商品の選択性にか かる項目であることから r商品選択」と解釈される。 第4主成分に高い負荷を示す項目は r庖員の接客態度がよい底J.r買わなくても気 軽に入れる庖J. rj駐車場がある庖」などである。「庖員の接客態度がよい底」は抽象的 な内容であるが r買わなくても気軽に入れる庖」と関連していることから,庖員の接 客態度がよいとは,底員が強引な押し売りをすることなし消費者の求めに応じて的 確なアドバイスを提供するなど,消費者が庖員の圧力を感じることなし主体的に購OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
314- 香川大学経済論議ー 508 買意思決定することができるかどうかにある。従って, これらは心理的・物理的な庖 舗への入りやすさということを意味している。そこで,第4主成分は「庖の入りやす さ」と解釈される。 第5主成分に高い負荷を示す項目は r携帯性j,r省スペースj,r色・デザイン」な どである。これらはいずれも商品の形態にかかる項目である。具体的にはパソコンの 持ち運びにかかる項目とも考えられることから r携帯性」と解釈される。 第6主成分に高い負荷を示す項目は r有名メーカーj,r買い物に便利な庖」である。 解釈が困難であるが rソフトなどがもらえる庖j,r安い商品が置いてある庖」などと も関連しており, これらは主に底舗にかかる項目であることから, ここでは「庖の販 売形態」と解釈する。 第7主成分に高い負荷を示す項目は r仲間と互換性がある商品j,rソフトやマウス ノfットがもらえる庖j,r豊富なソフト」などであることから rソフトウエア」と解釈 される。 以上のように,パソコンの購買時における消費者の重視点、は r客観的品質j,rメン テナンスj,r商品選択j,r庖の入りやすさj,r携帯性j,r庖の販売形態j,rソフトウ エア」の7つの次元から形成されていることが明らかとなった。また,パソコンの荷 品特性として r客観的品質j,rメンテナンス」が独立した次元を形成し,機能性商品 の特徴を反映していること。ノートパソコンなどに見られるように,使用場所を問わ ないでパソコン環境を実現する「携帯性」というパソコン固有の品質が存在すること も明らかとなった。なお,パソコンでは「客観的品質」が独自の主成分を形成してい るのに対し,先に報告した
PHS
では,客観的品質が分離されずに,PHS
固有の「ネツ トワーク」品質を形成していたのとは大きく異なっている。v
.
パソコン購入における各主成分の重視度 各主成分ごとに,因子負荷量の最大を示した変数の平均値を図表4に示す。図表か ら明らかなように,パソコンの購入において,消費者は「メンテナンスj,r商品選択j, 「客観的品質j,r庖の入りやすさj,rソフトウエアj,r携帯性j,r庖の販売形態」の 順で重視している。「メンテナンス」の重視度が最も高いという点が特徴的である。パ5
0
9
購買時の重視点からみたパーソナル・コンピューター(パソコン)の商品特性 -315-ソコンは一般的な従来の家電製品と比べて,操作が困難であり構造が複雑である。使 いこなすためには時間と経験が必要である。それに加えてパソコンが一般に普及して からまだ日が浅く,消費者は十分な知識を有していない。十分な商品知識を持たない 一般のパソコン・ユーザーが自らトラブルに対処することは困難である。このような ことから,消費者は商品には使いやすさや耐久性を,庖舗にはトラブルに対応できる 専門家やメンテナンス・サービスの充実を期待し重視しているものと考えられる。こ れは複雑で高度な機能・性能が重視されるパソコンという商品の特徴を反映したもの と言えよう。 「商品選択」の重視度も高い。パソコンは初級者用から上級者用まで様々な機種が 販売されており,その価格帯も幅広い。消費者は幅広い選択肢の中から使用目的と自 己の使いこなし能力にあった高品を笑際に触ってみて,なるべく安く選択したいと考 えているからであろう。 「客観的品質」の重視度も比較的高いが iメンテナンスJ,i商品選択」に比べると 低い。この結果から,現在の消費者はパソコンの性能よりも使いやすさや価格などに 関心が高いことが推察される。同時にパソコンの客観的品質が消費者にとって非常に 分かりづらいものであることを示している。消費者のパソコンに対する知識や使用経 験が豊富になればパソコンを自由に使いこなすことができ,優れた客観的品質を求め るようになりこの重視度は高まることが予想される。 「庄の入りやすさ」もパソコンの特徴と考えられる。かつてのパソコンユーザーは 特殊な層であったが,ウインドウズ9
5
の発売以降一気に一般化した。しかし,知識の 少ない一般の消費者にとっては今でもパソコンショップに近寄りがたいイメージを持 (11) この結果はパソコンに特異的な結果であり,成熟商品であるテレビや衣料品とは全く 異なっている。中国と日本では厳密な意味で比較できないが,中国におけるテレビでは 『商品の品質J,r顧客サービスJ,r操作性J,昧JI使性J,r高級感』という 5つの次元から 形成されている。 テレビはパソコンと同様に機能が重視される商品であるが,消費者は「商品の品質」を 最も重視していた。テレビは成熟商品で消費者にとって馴染みのある商品であり,パソコ ンに比べて操作は簡単であり, トラブルの頻度も少ないからであろう。 郭雲叡・馬淵キノエ・関義雄「中国における庖舗属性の重視度から見たテレビおよび外 出替の特性Jr商品研究』第48巻,第1・2号, 1998年, 18-29ページ。OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
316 香川大学経済論叢 510 つ人も多く,そのために庖の入りやすさを重視するものと考えられる。 「ソフトウエア」の重視度はそれほど高くない。パソコンは本体の機能もさること ながら,いかに優れた性能を有する上級機種であろうともソフトウェアがなければそ の使用価値を実現することはできない。また,パソコンは優れたソフトウェアによっ てその使用価値が飛躍的に増大する。従って,ソフトウェアの重視度は比較的高いと 予測していたが,意外な結果となった。この理由として以下のように解釈される。現 在マイクロソフトの
o
s
が世界シェアの80%を占めている。また,パソコンメーカー は販売時において複数のアプリケーション・ソフトをインストールした形で販売して おり,初めてパソコンを購入する消費者はソフトウェアを別途購入することなしパ ソコンを使いこなせる状況である。また,現在,ソフトウェアの寡占化が進み,一般 に広く利用されているアプリケーション・ソフトは限られており,それらのソフトウェ アが購入したパソコンにインストールされていれば,消費者はソフトウェアに関して 不満を持つことはない。つまり,消費者はパソコンとソフトウェアは一体と考えてい るため,ソフトウェアの重視度が低くなったものと解釈できる。 「庖の販売形態J,r携帯性」の重視度は低い。しかし,近年ノート型パソコンの出 荷台数は年々増えており,最初にデスクトップパソコンを購入したユーザーも2台目 パソコンとして,あるいは大学などで学生が必携となっているパソコンも多くはノー トパソコンである。現在のパソコンは商品のライフサイクルで言えば成長期商品に相 当すると考えられるが,PHS
などの移動体通信端末と組み合わせることによって,い 2 3 1 4 7 5 6 図表4 パソコン購入における重視度 主成分 平均 標準偏差 メンテナンス L54 “32 商品選択 L41 ..29 客観的品質 L27 .33 庄の入りやすさ L23 ..30 ソフトウエア L22 .25 携帯性 1..13 制25 庖の販売形態 1 13 制26 つでもどこでも情報の受発信が可能 となる持ち運び、に使利な小型で軽量 パソコンが主流になることも考えら れる。したがって,商品のライフサ イクルの変化にともない商品競争の 重点が携帯性に移行することも考え られ,今後はその重要性は高まる可 能性がある。511 購買時の重視点からみたパーソナル・コンピコーター(パソコン)の商品特性 -317
-V
I.パソコンの重視点と消費者特性との関連 前述したように,消費者行動は様々な要因によって規定されるが,とりわけ性,年 齢の影響力が大きいとされる。そこでパソコンの購買時においても性差と年齢差で重ω
視度がどのように異なるかを2次元配置分散分析により明らかにした。独立変数であ る性は2水準(男性,女性),年齢は 3水準 (20-29歳, 30-44歳, 45-59歳)である。 従属変数は重視度の7主成分である。図表5は性別,年齢別の因子得点の平均値およ び分散分析の結果を示している。 分析の結果,消費者の重視度の最も高かった「メンテナンス」では性の主効果が認 められた (F=9“40 P < Ol)。すなわち iメンテナンス」については確実に男女差 が認められ,女性の方が男性より重視度が高いことを示している。次に重視度が高かっ た「商品選択」については,性の主効果,年齢の主効果,性および性と年齢の交互作 用のいずれも認められなかった。これは i商品選択」が性差,年齢差に影響されるこ 図表5 性と年齢がパソコンの重視度に及ぼす影響 因子得点の平均値 二元配霞分散分析(
F
値) 20-29歳 30-44歳 45-59歳 男性 女性 男性 女性 男性 女性 性の 年齢 性と年齢の 主効果 主効果 交互作用 N=40 N=63 N=63 N=ll5N=73 N=85 メ ン テ ナ ン ス 0.35 一0.08 -0 24 0.27 一0.02。
..04 9..40** 2.63 205 商 品 選 択 一0.27 0..23 0.03 0.04 -0.10 -0..02 2..34 0.55 215 客 観 的 品 質 0..82 -0.09 0..48 -0..26 -0..01 -0.30 44.57** 6.66** 392本 底の入りやすさ 0..02。
..26 -0.16 0..09 -0..22 -0..04 538ホ 2.88* 005 ソ フ ト ウ エ ア -0..06 0..27 0.17 -0..03 一0.13 -0 17 0.04 3..29* 238 携 帯 性 0..06 -0.00 0..07。
..12 -0..11 -0 04 079。
.72 0,54 庖 の 販 売 形 態 -0.08o
17 0..19 -0.08 -0..11 -0 01 0,.01 0,.65 2,58 村 P~三 .01 二元配置分解分析 (METHOD=SSTYPE SEQUENTIAL) * P ~ 05 (12) 各セルのサンプル数が異なる点を考慮し,MANOVAではSSTYPE=SEQUENTIAL を用いている。OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
318- 香川!大学経済論叢 512 となく共通して重視度が高いことを示している。「客観的品質」では,性の主効果(F= 44..57 Pく“01),年齢の主効果 (F=666P<Ol),性と年齢の交互作用 (F=3“92 P <05)が認められた。すなわち r客観的品質」は性差,年齢差が明らかにあり, 男性の方が女性より重視度が高く,若年齢層ほど重視度が高いことを示している。た だ,男性も 45-59歳では重視度が極端に低くなり,20-29歳の女性と同程度となってい る。「庖の入りやすさ」については,性の主効果 (F=538Pく 05)と年齢の主効果 (F=288 Pく,,05)が認められた。すなわち r庖の入りやすさ」は男女差,年齢差 が明らかにあり,女性の方が男性より重視度が高く,若年齢層ほど重視度が高いこと を示している。「ソフトウエア」については,年齢の主効果 (F=329P <ρ5)のみ が認められた。すなわち rソフトウエア」は年齢差が明らかにあり,若年齢層ほど重 視度が高いことを示している。なお,重視度が相対的に低かった「携帯性」およびr,吉 の販売形態」については,性の主効果,年齢の主効果,性および性と年齢の交互作用 のいずれも認められなかった。すなわち,これらの次元は男女差,年齢差がなく共通 して重視度が低いことを示している。 以上のように,パソコンの購買時の重視度は rメンテナンスJ,r客観的品質J,r庖 の入りやすさ」の3つの次元で男女聞で特徴的な差異が認められた。男性では具体的 な商品属性である性能面の重視度がより高いのに対し,女性では抽象的な商品属候で ある使いやすいさや抽象的な庖舗属性であるメンテナンス・サービスや入りやすさな どの重視度が高くなっている。すなわち,男性がパソコンという商品を使いこなす(挑 戦する)ことに関心があるのに対し,女性はパソコンを生活の道具として関心を持つ Q3) ていることを示している。この結果は,カントロウィッツの指摘するところの r男性 は情報機器に即目的魅力(それを使うこと自体に魅力がある)を感じるが,女性は道 具としてしか見ていないので,必要最小限の使い方しかせず,必要が生じなければ利 Q~ 用しない」を裏付けるものである。また,最近の博報堂の調査結果でも,男性は情報 処理や生産プロセスに自分らしさや自らの能力を感じる傾向があり,女性に比べ,情 (13) 村松泰子・宮田加久子編著『女性のパソコン利用と情報社会の展望u997年, 32-33ペー ジ:Kantrowitz, B “Men, women, and computers
ぺ
Newsweek,May 16, 19940513 購買時の重視点からみたパ}ソナル・コンピューター(パソコン)の商品特性 -319 報処理能力が高いと指摘がなされている。別の調査では,男女が同程度にコンピュー タ利用をしていても,その内容が男性の方が多彩で笑験的であり,女性はJレーティン ワークが多いという指摘もある。 パソコンの購買時の重視度は年齢聞によっても r客観的品質j,r庄の入りやすさj, 「ソフトウエア」の3つの次元で特徴的な差異が認められた。すなわち,加齢するに したがって r客観的品質j,r庖の入りやすさj,rソフトウェア」などの重視度が低下 し rメンテナンス」の重視度が高くなっている。若年齢層ほど具体的な商品属性・庖 舗属性志向であるのに対し,高年齢層では抽象的な庖舗属性志向である。この結果は, 関心度,商品知識,使用経験などの差異が反映したものと考えられる。 50歳代以上は パソコンについての関心度が他の年代と比べて低いという調査結果もある。一方, 20 歳代の若い世代では,生まれたときから家庭には家電製品が揃っており,その扱いに は慣れている。他の世代よりパソコンに対する関心も高く,商品知識も持っており, パソコンの使いこなしに関しでも不安感が低いものと考えられる。
V
止 ま と め 購買時の重視点からみたパソコンの商品特性として,メンテナンスが最も重視され ていることが明らかとなったが,メンテナンスの主成分は「アフターサービスがよい 庖」や「庖員の専門知識がある庖」のような庖舗に関する項目と「耐久性」や「使い やすさ」のような商品に関する項目から構成されていた。また,すべての項目の中で 「使いやすさ」の重視度が最も高くなっていた。これは消費者がパソコンをどのよう に捉えているかを明らかにしている。パソコンの機能は,ワープロ機能,表計算,グ ラフイツク機能などであるが,それらの使いやすさ,つまりパソコンの使いやすさは アプリケーション・ソフトの能力に依存しているにもかかわらず,消費者はパソコン 本体が持っている機能として理解している。つまり,OS
,アプリケーション・ソフト, およびパソコン本体を含めてパソコンとして理解していることを示しており,これが 第7主成分である「ソフトウェア」の重視度が低くなった要因と解釈される。また, (15) 博報堂生活総合研究所,前掲書, 120ページ。OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
320ー 香川大学経済論叢 514 ライトユーザーほど使いやすさを重視していることから,この傾向は初心者に強く出 ている。 消費者特性との関連で,女性がパソコンを抽象的な商品属性(使いやすさ)や抽象 的な庖舗属性(メンテナンス,入りやすさ)を男性よりも重視していることは,女性 はパソコンを道呉として認識し,何ができるかを重視していることを示している。女 性にとってパソコンはパソコン本体と