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学級規模が児童の学級適応に及ぼす影響(1) : 児童の意識調査から-香川大学学術情報リポジトリ

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香川大学教育実践総合研究(jd.&yzjc.j?a. 7cゐ,加w帥.尨即waこノ㎡y),15:33−39,2007

学級規模が児童の学級適応に及ぼす影響

一児童の意識調査からー

j/ I ぐ

大久保 智生*・山本 淳子*・藤井 浩史¨・辻 幸治¨・横山 新二*¨・有馬 道久*

*760 * * * * * 760・ 762 8522 高松市幸町1−1 香川大学敦育学部 0017 高松市番町5−1−1 香川大学教育学部附属高松小学校 0031 坂出市文京町2−4−2 香川大学教育学部附属坂出小学校

Class Size and Pupils’Adjustment (1):From

the

   lnvestigation of Pupils’Consciousness

Tomoo

Okubo,Junko

Yamamoto,

Hiroshi Fujii,Koji Tsuji

       Shinji Yokoyama and Michihisa Arima

      Fac 「ty ofEducation, Kagawa tノ'nh,ers岬,j-l,Saiwai-cho,Takamatsu 760-8522

mkam的u Elementary SehoolAttached to Fa ・ty ofE面c面on,Kagawa U雨ersity,5-l-55,Ban-cho,Takamalsu 760-0017 &訟/壽£/ε匹7肋7び旋晶a/j的涌 「め八7a砂げ瓦んc面o,瓦a卯waび面ノe溺弟2J-2,Bu雨o一cho,Sakaiゐ762-0031 要 旨  本研究では,少人数学級や複数担任による少人数指導という学級規模が児童の学 級適応に及ぼす影響について検討することを目的とした。附属高松小学校の1年生112名。 2年生99名,3年生119名と附属坂出小学校の1年生75名,2年生78名,3年生80名の計563 名を対象に教師の指導行動に対する認知尺度と学級適応淵定尺度を実施した。少人数学 級,複数担任学級,通常学級における敦師の指導行動および児童の学級適応の比較を行った 結果,概して,30名の少人数学徴と40名の複数担任学級の児童のほうが40名の通常学級の児 童よりも教師の指導行動を肯定的に認知しており,学級へ適応していることが明らかになっ た。最後に学級規模とその教育効果についての今後の研究の方向性について示された。 キーワード 学級規模,小学生,教師の指導行勤,学級適応

問 題

 戦後,学級編制の標準人数は,2000年の第7 次改善計圓まで徐々に縮小されてきた。現在は 1学級40名を標準としつつ,一定の条件のもと に少人数学級や複数担任による少人数指導も可 能となっている。特に少人数学級を推進して いる県は2004年で43都道府県に及んでおり,全 国的な広がりを見せている(大谷,2005)。  こうした情勢の中,香川県では複数担任によ る少人数指導を推進しており,他県と比べて積 極的に少人数学級を導入しているとはいえない のが現状である。このような他県と異なる香川 県の現状を鑑みると,少人数学級や複数担任学

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級による少人数指導などの学級規模の教育効果 についての調査を行っていくことは,今後の学 級編制を考える上で必要不可欠な諜題といえ る。  しかし,杉江(1996)が1958年からの学緻 規模とその教育効果に関する研究についてレ ビューをしているものの,実際に行われている 研究の数は多いとはいえない。特に2000年以 降,積極的に導入されている30人学級の敦育効 果についての研究の蓄積は決して多いとはいえ ず,今後の研究が待たれる分野といえる。  最近の学級規模とその効果に関する研究につ いてまとめると,教員の意識調査と児童の意識 調査の大きく2つに分けられるだろう。  教員の意識調査としては,全国の敦員を対象 とした山崎・世羅・伴・金子・田中(2001)の 調査や全国の校長を対象とした水野・藤井・田 中・山崎(2005)の調査や福島県の敦員を対象 とした谷(2003)の調査などが挙げられる。こ れらの調査の結果から,教員は通常学級よりも 少人数学級のほうが望ましいと考えていること が明らかとなっている。一方,少人数指導に対 しては,敦員からは賛否両論があることが明ら かとなっており(谷,2003),教員は少人数学 級が最も望ましいと考えていることが推察され る。  児童の意識調査としては,少人数学級の効果 を検討した山崎・世羅・伴・金子・田中(2002) の調査や算数の少人数指導の効果を検討した西 口(2003)の調査などが挙げられる。これらの 調査では,少人数学級や少人数指導のほうが通 常学級よりも望ましいことが明らかになってい るが,山崎ら(2002)の調査にしろ,西□(2003) 適応し,その中で発達していくことからも児童 の学級への適応の視点から検討する必要がある と考えられる。その際,学級の規模など学級を 分析単位として,見童の学級への適応について 検討する必要があるだろう。  適応に関する研究は,岡田(2004)がレビュー しているように数多く行われているものの,学 撒を分析単位とした検討はあまり行われてい ない。適応と関連する問題行動の研究におい て,学級を分析単位とした研究(加藤・大久保, 2006;大久保・加藤,2006)は行われているが, 学級規摸などの物理的措置の視点からは検討さ れていない。加えて,少人数学級と複数担任学 級と通常学級の3つの学級規模の比較を児童の 適応の視点から行ったものはない。したがっ て,現在,全国的に推進されている少人数指導 だけでなく,香川県で推進されている複数担任 学級も加え,学級規模がどのように児童の学級 への適応に影響を与えているのか検討する必要 がある。  そこで,今回の調査では,小学校1年生から 3年生までの低学年を対象として,学級規模が 児童の学級適応に及ぼす影響について検討する ことを目的とする。  その際,今回の調査では,教師の指導行動ヘ の認知の側面と教師との関係,級友との関係, 学習への意欲,学校への関心といった側面に焦 点を当てて検討することとする。児童が学級に 適応しているのならば,教師の指導行動に対し て肯定的な認知をしやすく,敦師との関係や友 人との関係,学習への意欲なども高くなること が予想される。

の調査にしろ,児童の意識調査は,主に小学校  方 法

高学年を対象としており,小学校低学年を対象

とした調査は行われていない。したがって,小 学校低学年の見童を対象とした調査を行う必要 があるといえる。  児童を対象とした意識調査において,学級ヘ の適応という視点から教育効果を検討した研究 は現在のところ,ほとんど行われていない。教 育効果を検討する際,児童は学級集団の文化に 調査協力者と学級規模  2006年12月に附属高松小学校(以下 高桧小) の1年生112名,2年生99名,3年生119名の計 330名と附属坂出小学校(以下 坂出小)の1 年生75名,2年生78名,3年生80名の計233名 に対して,質問紙調査を実施した。  学級の規模の内訳は以下のとおりである。高

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松小では,1年生に少人数学級(1学級30名, 担任1名)が導入されており,2,3年生は通 常学級(1学級40名,担任1名)である。一方, 坂出小では,1年生に複数担任学級(1学級40 名,担任2名)が導入されており,2,3年生 は通常学級(1学級40名,担任1名)である。  なお,今回の調査実施にあたっては,調査協 力者に学校の成績とは関連がないことや外部に 回答結果が漏れないこと,調査協力者の回答は 研究成果の発表にのみ使用されることを伝える ことで,倫理面への配盧を行った。 質問紙の構成  ①児童の認知する教師の指導行動:「1.わ たしの気持ちをわかろうとしてくれる」,「2. しっぱいしても,やさしくはげましてくれる」 など18項目からなる浜名・松本(1993)の教師 の指導行動に対する認知尺度を用いた。回答形 式は「ぜんぜんそうではない」(1点)から「い つもそうだ」(4点)までの4件法である。  ②兄童の学級適応:「教師との関係」(例:「先 生のそぱにいると,なんだかあたたかいように 思う」,「先生のような人になりたいと思う」), 「級友との関係」(例げ組の友だちはあなたの 気持ちをよくわかってくれると思う),「困って いると,組のみんなは,あなたを助けてくれる と思う」),「学習への意欲」(例げ授業中,先 生に当てられたくないと思う),「勉強には難し V ことが多くて,面白くないと思う」),「学校 への関心」(例:「学校がずっと休みだったらい いのにと思う」「学校にいる間,早く家に帰っ て,遊びたいと思う」)の4因子22項目からな る浜名・桧本(1993)の児童の学級適応測定尺 度を用いた。回答形式は「ぜんぜん思わない」 (1点)から「いつも思う」(4点)までの4件 法である。

結 果

教師の指導行動に対する認知尺度の検討  教師の指導行動に対する認知尺度18項目につ いては,先行研究(浜名・桧本,1993)において, 因子分析を行っているが,因子の解釈が行われ ていないことから,本研究で教師の指導行動に 対する認知尺度18項目に対して因子分析(主因 子法,Promax回転)を行った。その結果,因 子負荷量の絶対値0.4以上を基準に,2因子15 項目を採用した(Table 1)。第1因子は,「い つもあたたかく,やさしく話しかけてくれる」 や「こまっていると自分のことのように心配し てくれる」,「わたしの気持ちをわかろうとして くれる」など,教師の児童への配慮に対する認 知を表す項目からなっているので,「敦師の配 慮に対する認知」因子と解釈した。第2因子は, 「先生がわからないとき,『わからない』と言っ てくれる」や「こまったら『こまった』と,はっ きり言ってくれる」,「先生がまちがえたとき, 正直に『まちがえた』と言ってくれる]など, 教師の児童に対する誠実な対応に対する認知を 表す項目からなっているので,「教師の誠実性 に対する認知」因子と解釈した。  尺度の信頼性を求めたところ,Cronbachの a係数は,「教師の配慮に対する認知」因子が 0.884,「教師の誠実性に対する認知」因子が 0.759であり,一応の信頼性が保証された。そ して,各因子に含まれる項目の得点の合計を項 目数で割り,それぞれ「教師の配慮に対する認 知」得点,「敦師の誠実性に対する認知」得点 とした。 学級規模による教師の指導行動および学級適応 の比較  まず,1学級30名で1名の教師が担任する高 桧小の1年生を「少人数学徴」の群とし,1学 級40名で2名の教師が担任する坂出小の1年生 を「複数担任学級」の群とし,1学級40名で1 名の教師が担任する高松小の2,3年生と坂出 小の2,3年生を「通常学徴」の群とした。  次に学級の規模(「少人数学級」,「複数担 任学級」,「通常学級」)を独立変数とし,教師 の指導行動に対する認知尺度を従属変数とした 1要因の分散分析を行った(Table 2)。その 結果,「教師の配慮に対する認知」(F(2,526) =7.432,p<。01)において3群間に有意差が認 められたので,Tukey法による多重比較を行っ

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Table l 教師の指導行勤に対する認知尺度の因子分析結果        〈項目〉 I教師の配慮に対する認知(a=.884)  いつもあたたかく,やさしく話しかけてくれる  こまっていると自分のことのように心配してくれる  わたしの気持ちをわかろうとしてくれる  しっぱいしても,やさしくはげましてくれる  わたしの気持ちをそのままに感じてくれる  わたしが相談すると気持ちよく相談にのってくれる  うまく言えないような気持ちでもわかってくれる  わたしのことを信じてくれる  相談すると,気待ちにぴったりすることを言ってくれる  がんばっているのをわかろうとしてくれる  授業中,わたしが答えにこまったとき,じっ n教師の誠実性に対する認知(a=.759) く り待ってくれる 先生がわからないとき,「わからない」と言ってくれる こまったら「こまった」と,はぅきり言ってくれる 先生がまちがえたとき,正直に「まちがえた」と言ってくれる 先生がうれしいとき,「うれしい」とすなおに言ってくれる       一一一        因子間相関        H 因 I 子 負 .751 .719 .689 .687 .660 .644 .623 .582 .566 .545 .478 一 130 086 067 333

量H

-一 066 020 010 038 031 022 012 057 116 084 113 .916 .568 .565 .374  I 607 Table 2 学級規模による教師の指導行動に対する認知尺度の平均値と分散分析結果 教師の配慮に対する認知 教師の誠実性に対する認知 カッコ内は標準偏差 少人数学級 複数担任学級  (N=1!O)  (N=74)   3.264    3.294   (0.602)  (0.591)   3.022    3.270   (0.826)  (0.785) た。「敦師の配慮に対する認知」では,「少人数 学級」と[複数担任学級]が「通常学級」より も得点が有意に高かった。  同様に学級の規模(「少人数学級」,「複数 担任学級」,「通常学級」)を独立変数とし,学 級適応測定尺度を従属変数とした1要因の分 散分析を行った(Table 3)。その結果,「教 師との関係」(F(2,548)=9.451,p<。001), 「級友との関係」(F(2,537)=4.742,p<。01), 「学習への意欲」(F(2,526)=3.039,p<。05) 通常学級 (N=369)  3.058  (0.601)  3.159  (0.750) F値      7.432** 少人数>通常¨,複数>通常゛      2.375 *pく.05 **p<,01 において3群間に有意差が認められたので, Tukey法による多重比較を行った。「教師との 関係」では,「複数担任学級」が「通常学級」 よりも得点が有意に高く,「少人数学級」が「通 常学級」よりも得点が有意に高い傾向があった。 「級友との関係」では,「複数担任学級」が「通 常学級」よりも得点が有意に高かった。「学習 への意欲」では,「複数担任学級」が「通常学 級」よりも得点が有意に高く,「複数担任学級」 が「少人数学級」よりも得点が有意に高い傾向

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Table 3 敦師との関係 級友との関係 学習への意欲 学校への関心 学級規模による児童の学級適応測定尺度の平均値と分散分析結果 少人数学級 複数担任学級  (N=110)  (N=74)  3.360    3.541  (0.644)  (0.643)  3.218   3.333、  (0.611)  (0.687)  3.114    3.330  (0.614)  (0.650)  2.876    3.027  (1.043)  (1.018) 通常学級 (N=369)  3.159  (0.625)  3.099  (0.623)  3.124  (0.651)  2,765  (0.975) F値      9.451*** 少人数>通常へ複数>通常***       4.742**     複数>通常*       3.039* 複数>通常*,複数>少人数7       2.334     カッコ内は標準偏差 があった。

考 察

 本研究では,学級規模が児童の学級適応に及 ぼす影響について検討した。具体的には,少人 数学級,複数担任学級,通常学級における教師 の指導行動および見童の学級適応の比較を行っ た。その結果,概して,30名の少人数学級と複 数担任の40名学級の児童のはうが40名の通常学 級の児童よりも教師の指導行動の配慮と教師と の関係を肯定的に認知していることが明らかに なった。級友との関係については,複数担任の 40名学級の見童のほうが40名の通常学級の児童 よりも肯定的に評価しており,学習への意欲に ついては,複数担任の40名学級の児童のほうが 40名の通常学級の児童と30名の少人数学級より も高いことが明らかになった。以下において, これらの結果について考察を加えていく。  教師の指導行勤については,少人数学級,複 数担任学級ともに教師の配慮を肯定的に認知し ていることが明らかになった。これまでの研 究から,少人数学級では敦師との相互交渉が 多いことが明らかになっているように(有馬, 2007),教師の目が行き届き,配慮ある指導が 行われていることを意昧していると考えられ る。複数担任学級においても,敦師との相互交 渉が同様に多くなっていることが推測されるこ とからも少人数学級と同様の結果になったと考 えられる。 p<.1 *p<.05 **p<.01***p<.001  敦師の指導行動の誠実性については,少人数 学級,複数担任学級,通常学級の間に違いはみ られなかったが,誠実性は敦師の人格に対する 認知であるといえる。したがって,学級の規摸 の問題というよりも教師の側の特徴の問題と推 察される。このように考えると,少人数学級, 複数担任学級と通常学級との間に違いがみられ なかったことは妥当な結果と考えられる。  学級適応の各側面についてみていくと,敦師 との関係については,少人数学級と複数担任学 級ともに通常学級よりも肯定的に評価されてい た。山崎ら(2002)の調査において,少人数学 級の児童は教師との良好な関係を築いているこ とが示され,西目(2003)の調査でも少人数指 導の兄童は敦師との関係性の認知が肯定的なこ とが示されていることからも納得のいく結果と いえる。  級友との関係については,複数担任学級が通 常学級よりも肯定的に評価されていた。西□ (2003)の調査では,通常学級よりも少人数指 導のほうがクラスメートとの関係性認知におい て肯定的に評価されていることが明らかとなっ ていることからも納得のいく結果といえる。少 人数学級については,通常学級,複数担任学級 との違いがみられなかったことからも,級友と の良好な関係を築くためには,ある程度級友の 数が多いほうがよいのかもしれない。低学年の 場合,級友との関係において敦師の仲介が中学 年や高学年に比べて重要になる時期であること

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からも,教師の目が行き届く複数担任学級が通 常学級よりも肯定的に評価されていたと考えら れる。  学習への意欲については,複数担任学級が通 常学級や少人数学級よりも高いことが明らかに なった。西口(2003)の研究でも,少人数指導 のほうが通案学撒よりも動機づけにおいても高 いことが明らかとなっているように先行研究 と同様の結果が得られている。ただし,西目 (2003)が指摘しているように少人数指導の 枠組みが学習意欲を高めていると解釈するので はなく,少人数指導の枠組みをどのように生か した授業を計圃し,実践しているかによって学 習意欲が高まっている可能性も考える必要があ るだろう。  今回の調査では,敦師の配慮と敦師との関係 では,少人数学級と複数担任学級のほうが通常 学級よりも肯定的に評価されていたが,級友と の関係では,複数担任による少人数指導のみが 通常学撒よりも肯定的に評価されていた。ま た,学習への意欲では,複数担任による少人数 指導のほうが,少人数学級よりも高かった。し かし,少人数指導に対しては,賛否両論がある ことが指摘されており(谷,2003),また,教 師は少人数学級を求めているという調査結果も 存在しているように今回の調査のみで複数担 任による少人数指導が最も望ましいと結論づけ ることは難しいといえる。今回は,児童の意識 調査から学級規模の効果について検討してきた が,実際に児童と関わる教師の意識調査の結果 や保護者の調査なども含めて,総合的に評価し ていく必要があるといえる。  今後の課題としては,まず学年の効果につい て検討する必要があるだろう。今回の調査で は,少人数学級と複数担任学級による少人数指 導が高松小と坂出小の1年生であり,通常学級 が高松小と坂出小の2,3年生であったことか らも少人数学級や複数担任による少人数指導の 効果よりも学年の効果であった可能性もある。 したがって,附属小学校における年度の違う同 一学年による比較を行い,粂件をそろえた上で 学徴規模の効果について検討する必要もあるだ ろう。  また,対象校の問題も挙げられる。今回の調 査は附属小学校のみの実施であったが,附属小 学校は,一般的な小学校と異なる特徴をもつ学 校と考えられる。これまでの研究から適応には 学校の特徴による差異が影響していることが指 摘されている(Fentze1&Blyth,1986;大久保, 2005)ことからも,今後,様々な特徴をもつ小 学校との比較も行った上で,学級規模の効果に ついて結論づける必要があるといえる。  最後に学級規模の敦育効果について検討す る際,適応をどのように評価するかという問題 もある。適応とは個人と環境の関係を表す概念 であることからも児童の適応を一時点での状態 ではなく,変化も視野に入れて評価していく必 要があるといえる。例えば,クラス替えや担任 教師の異勤など敦師との関係が変化することで 児童の適応が変わることが指摘されている(近 藤,1994)ように現時点において児童が適応 しているからといって,今後も適応し続けると いうものではない。したがって,今後の適応状 態の変化も含めて,多角的に評価していく必要 があるだろう。       引用文献 有馬道久 2007 授業中の敦師と児童の相互作用に  及ぼす少人数学級の効果 平成18年度文部科学省  教員配置に関する調査研究委託 30人規模の少人  数学級における学習集団,生活集団の敦育効果に  ついての実証的研究(香川大学匠’Pp.23-28. Fentzel,L.M.&Blyth,D,A.1986.1ndividua1

 adjustment to school transition: An exploration of

 the role of the supportive peer relations.Jownal  好Ea巾ytd ・esceylce,6,315-329. 浜名外喜男・松本昌弘 1993 学級における教師行  動の変化が児童の学級適応に与える影響 実験社  会心理学研究,33,101-110. 加藤弘通・大久保智生 2006 問題行動をする生徒  および学校生活に対する生徒の評価と学級の荒れ  との関係:困難学級と通常学級の比較から 教育  心理学研究,54,34-44. 近藤邦夫 1994 敦師と子どもの関係づくり:学校

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 の臨床心理学 東京大学出版会. 水野考・藤井宣彰・田中春彦・山崎博敏 2005 学  校規模に隠れた学級規模の効果:公立小・中学校  の全国調査を中心に 広島大学大学院教育学研究  科紀要,54,11-18. 西□利文 2003 少人数授業が学級成員間の関係,学  習への動機づけ,教師の指導理論へ及ぽす影響 中  部大学人文学部研究論集,9,175-208. 岡田有司 2004 学校適応研究における諸問題:理  論と研究方法の側面から 大学院研究年報(文学  研究科篇:中央大学),34,213-229. 大久保智生 2005 青年の学校への適応感とその規  定要因:青年用適応感尺度の作成と学校別の検討   教育心理学研究,53,307-319. 大久保智生・加藤弘通 2006 問題行動を起こす生  徒の学級内での位置づけと学級の荒れおよび生徒  文化との関連 パーソナリティ研究,14,205-213. 大谷泰照 2005 学級規模と教育効果:その関係を  問い直す 滋賀県立大学国際教育センター研究紀  要,10,5-20. 杉江修治 1996 学級規模と教育効果 中京大学教  養論叢,37,147-190. 谷雅泰 2003 福島県の「30人学級編制」に関する  考察:県内公立小1年担任アンケート調査の分析   福島大学教育実践研究紀要,44,9-16. 山崎博敏・世羅博昭・伴恒信・金子之史・田中春彦   2001 学級規模の教育上の効果:教員調査を中  心に 教科教育学研究,19,255-273. 山崎博敏・世羅博昭・伴恒信・金子之史・田中春彦   2002 学級規模の教育上の効果:児童生徒調査  を中心に 教科教育学研究,20,107-124.

Table l 教師の指導行勤に対する認知尺度の因子分析結果                〈項目〉 I教師の配慮に対する認知(a=.884)  いつもあたたかく,やさしく話しかけてくれる  こまっていると自分のことのように心配してくれる  わたしの気持ちをわかろうとしてくれる  しっぱいしても,やさしくはげましてくれる  わたしの気持ちをそのままに感じてくれる  わたしが相談すると気持ちよく相談にのってくれる  うまく言えないような気持ちでもわかってくれる  わたしのことを信じてくれる  相談すると,気待
Table 3 敦師との関係 級友との関係 学習への意欲 学校への関心 学級規模による児童の学級適応測定尺度の平均値と分散分析結果少人数学級 複数担任学級 (N=110)  (N=74) 3.360    3.541 (0.644)  (0.643) 3.218   3.333、 (0.611)  (0.687) 3.114    3.330 (0.614)  (0.650) 2.876    3.027  (1.043)  (1.018) 通常学級 (N=369) 3.159  (0.625) 3.099

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