∼講 義 の構 造 と授 業分 析∼
Study of Systems of′
reaching―Learning in the Classroom
The Structure of Lectures and An Analysis of「 reaching
教育方法学
/Jヽ 林洋 一 郎
`ま じbうに 小学校 における授業 について,発
言 を分析 してみると,発
関数が多いのに驚かされる。 また,教
師の発言率 は,10数
例の分析 によると,大
体70%前
後 に集中 している。教師の発言量が子 どもに比 較 して多 くなるの は当然であるとして も,特
に教育実習生の一問一答的な単純発間のサイクルがあ まりにも多いように思われる。 この場合の発間 というのは,子
どもの応答や反応 を期待 してなされ る教師の問いか け(質問)なのであるが,先
行する質問に対する応答 を要求す る指名発言 などを含 め ると, 1時
限(45分)の授業で,教
育実習生の場合 は平均 して100回を越 えているのである。一般教 師の発関数 は60回を越 えることが多い。全国的 に有名 なベテラン教師の場合 は,3事
例('の平均で33 回 となっている。発関数が多 くなると,学
習課題 を追究 するため,何
が問題であるかを把握 させ,思 考 を発展 させ るとい うよりも,断
片的な情報や知識の交換 といった低次の認識の水準で授業が流 れ やすい とい うことである。つ まり,教
師は学習課題 にお ける問題性や問題解決 に関 して十分 な理解 をしていないままに授業 に望 む と,十
分な説明がで きないので子 どもたちの発言に依存することに なる。そのために一問一答形式の授業の進行 にな りやすいのである。要す るに,子
どもたちにほん とうに理解 させたい こと,発
見 させたいことの説明内容 を学習課題の形式で明確 にした上で,授
業 を展開す るな らば発間 は制限 されて くるはずであるし,実
際 に発間は少な くて も積極的な学習反応 を引 き出す ことはで きるのである。 この小論の意図は,講
義法の見直 しをはか り,基
本的な教授法 としての位置づ けと,講
義法の一般的モデルの応用 として,相
互作用的講義法 を授業の設計や授業 の展開に活用 してい く方法 を明 らかにすることである。授業 は,教
師の教授行動 と子 どもの学習行 動 との相互作用の関係 を通 して成立 してい くのであるが,理
解 しに くい授業 となるのは,学
習課題 が何であるのか,ま
たその問題性 および問題解決の方法 を教師 自身が講義(説明)できないか らであ ると思われ るのである。 I。 基 本 的 な教 授 法 ラスカ(John A.Laska)は
,学
習者が受容する学習刺激のタイプを,期
待 される学習結果の役 割にもとづいて,四
つのカテゴリーに分類 し,そ
れらを四 つの基本的又は一般的な教授法の分類の小林洋一郎 :学 習指導体制の研究 基準にしようとしているぞ各教授法は,その下位の教授技法 とも考えられる特定の方法か ら成立 して いるとみることができる。例えば
,提
示法(一般的方法)は,講
義,テ
キス トの朗読,実
験室におけ る演示のような特定の方法を含んでいる。 これ らの特定の方法は,一
般的方法(4つ
の教授法)の応 用 として考えられている。ラスカは,四
つの基本的な教授法の本質的な特質を要約 して,表
1の よ うに整理 したのであるP
表1
四つの基本的教授法の比較 これ らの教授法 は,人
間が過去か ら現在 までに発展 させて きたすべての基本的教授法の総合的分 類 を構成 しているとい う。 そして,表
1の中で提示法,実
践法,発
見法 は,古
代 ギ リシャや ローマ の文献 に記録 されてい るので,「伝統的」方法 と彼 は呼び,残
りの強化教授法 を20世紀 の発明による ものであると考 えてい る。強化教授法 は,「伝統的J方法 にも適用で きる重要 な原理 を含 んでいると 思 う。 ラスカも指摘 しているように,実
際の授業では一 つの教授法だけを純粋 な形で用い ることはほ と ん どない。例 えば,教
師 は講義 をしなが ら突然 に問いかけた り,発
間の種類 に もとづいて提示 と発 見又 は実践方法の組 み合わせが生 まれるのである。また;教
師 は望 ましい行動 を演示 または描写 し, それを学習者が行な うように指示するといったように提示 と実践方法の組み合わせが とられるので ある。 しか しなが ら,教
授過程の分析で用い られている教授法が,
どのタイプの ものであるかを決 定することが常に可能であるというのが,この基本的教授法の分類価値であると思われ るのである。 ところで,ラ
スカの基本的教授法では提示法 に分類 されている講義法について,そ
の特質 と構造 を明 らかに しようとするのが次の課題である。 H。 講 義 法 の構 造(1)講
義法について 講義 とい うのは,歴
史的にみると人間が言葉 を話す ようになってか ら生 まれた最 も古い教授の形 であると考 えられ るが,教
育 の世界では頼 みの綱 としている反面,欠
点が強調 されて軽視 されてい 方 法 学習過程 につ いての仮定 教師の役割 学生の役割 応用 (特定の方法) 提 示法 学習者の努力 な しに自動的 に 心 は容量 である 外か らの知識 適当な順序で学習刺激 を選 択 し提供す ること 受 動 的 ・講義法 ・ フイルム ・実地見学 。演示 等 実践法 ・ 知 られた 目標 を達成 または学習 課題 を遂行 するため学習者の努 力の結果 として次第 に 。実践 を求 める 学習 目標 を設定 し,また実 践活動 を組織づ ける 能動的 暗誦 (朗読)
・ ドリル ワークブ ックの課題 モデルの模倣 等 発見法 ・ 意図 された学習結果 を発見する ために学習者の努力の結果 とし て突然に 。内か らの知識 発見活動 に学習者 を位置づ け,引き入れる 能動的 ツ クラ テス法 (問答法) デ ィス カ ッシ ョン 実験 等 強 化法 ・ 望 ましい行動後 の報酬 。強化が 学習結果 を示 され る 組織的 な強化 を与 えること 能動的 。行動修正 ・ プログラム教授 等ると思われ るのである。すなわち
,講
義法 は,生
徒数が多い場合 に,新
しい考 えや体系づ けられた 知識 を提供する手段 として用いると経済的で しか も効果的であると思われる。 また,教
師が学習者 に対 して自分の情熱 を吐露 して,生
徒の想像力 を刺激するのにも都合が よい。 しか し,教
材 に習熟 していなか った り,生
徒の要求や レディネスを考慮 しなかった り,話
術 を身 につけていない と,退
屈で無味乾燥な ものになって しまいやすいのである。確かに,戦
後の経験主義の教育観か らすれば, 「講義 法は教師が知 識 を外か ら詰 め込み,
子 どもを受動 的立場 に立たせ 自発的活動 を抑圧す る方法 であるとして,こ
れ を軽視するに傾 いた。Υのである。 しか しなが ら,「学習内容 の中には時間的空 間的に制約せ られて,子
どもが 日常の生活の中で じかに見聞することのできない ことが らが相当に 多い。 これ らの内容 は講話や説明 によって,習
得 させ る以外 に方法がない。講義法の無視 は,そ
れ だけ学習指導の不備 を意味す る。?と思われ るのである。 請義 は情報 を与 え,理
解 を生み出 し,か
つ興味 を創 り出す口頭の方法である。興味がなければ注 意 は失なわれ,伝
えるべ き情報がなければ理解す ることもで きない。ブラウン(George Brown)は, 「講義法は,
複雑 な問題解決や態度変容 にとって小集団指導ほど効果的ではないが,観
念や情報 を 伝 えるためには,他
の教授法 と同様効果的である。 これ らの ことはもちろん議論や講義の質 に依存 している祀 と述べている。 また,ブ
ラウンは,講
義 を通 しての学習過程 を調べ るために,図
1のよ うな簡単なシェマを示 している?学習者たちは講義 を聞 き,観
察 し,要
約 し,ノー トに記録すること によって学習する。 これ らの活動 にか くれている変数 は理解であ り,そ
れは講義か ら得 られた り, 後で自分のノー トした ものか ら得 られ る。 〔指導者の解説〕 学 習 者 図1(2)講
義 に関 す る基礎 的 スキル 講義の基本 は説明 をす ることである。ブラウンは,説
明の主要なタイプを三つに分類 してい る(μす なわち,(a)解釈的な説明,(b)記述的な説明,(C)理由づ ける説明である。(a)は,例
えば「小説 とは何 かJという質問に対する答 に相当 し,用
語や所説 の意味や問題 をはっきりさせ るものである。(b)は, 例 えば「水でっぽうの しくみ」 を明 らかにしようとして,そ
のメカニズムの構造や過程や手順 な ど を述べ ることである。(C)は,「・……す るのはなぜか」という質問に対する答 に相 当す るもので,原
理 又は一般化,動
機,義
務又 は価値,お
よび原因 を含 んでいる。 これ らのタイプの説明 は,教
授で用 い られ る主要なものであるが,多 くの場合 はこれ ら二つのタイプの説明 を含 んでいる。ブラウンは, 効果的な説明について次のようにまとめているP
Oよ い説明者 は適当に「間」 をとるし,重
要な点 を示すために板書する。 また,話
のスピー ドを 変 え,あ
る親 しみのある個人的な関係 をクラスのメンバーたち とつ くる。 、Oよ
い説明者 は普通「さて,
くわ しく…… を見てみましょう」の ような課題 の方向性 を示 し,「そ れ」 とか「それ らは」のような代名詞 よ りも名詞 を使 う割合が高 く,問
題点 をはっきりさせ る 文 を含んでいる。小林洋一郎 :学習指導体制の研究 ○効果的な説明 は,「三つの主要な領域がある。第一 は……」のような道 しるべ を含 んでいる。
O効
果的な説明 は,「私たちが・…・・を見た限 りでは,…
…」 とか,「さて,…
…」の ような説明の さまざまな要素 と結びつ くことばを適 当に含 んでいる。 ○効果的な説明 は,明
確な表現の構造 と興味 をもつ提示の要素 を確認す ることがで きるような訓 練 をすることによって可能になってい くのである。 ブラウンはまた説明の準備 に関 して三つの段階 と,説
明の計画について四つの段階 をあげてい る ので,NHKの
学校 放送 番組 「 リポー ト日本J(小 学校五年社会科)の中か ら事例 を とりあげなが ら 説明 してみよう。 第一段階,説
明 したい と思 うことをはっ きり決める。 `例 えば
,死
米が出た り,実
をつけない トマ トや きゅうりがで きるのはどうしてか。 第二段階,隠
されている変数(探究すべ き事柄)を調べる。 ○「病 める土」……・やせた上に原因があるのではないか。 第三段階,要
点 を述べることがで きる。 O日本の農業の特徴(近代化,農
薬や化学肥料)と関係がある。 死米が出た田の土(化学肥料 にたよっている)…
…かたい土,上
の香 りがない,酸
素が不足。 よく米の とれ る田の上(堆肥 を与 えている)… Ⅲ…やわ らかい土,微
生物がい る。O昔
なが らの堆肥 をやる農業 はうまいや り方であった。(しか し,安 くて便利 な化学肥料 にた よら ざるを得 ない現実 をどうした らよいのだ ろうか。) 第四段階,解
決の方法 をデザインすること。(a)解
決のカギ となる原理 を簡単 な力強い ことばで表現する。O死
米や実のつかない野菜ができるのは,病
める土 に主 な原因がある。(b)一
つか二 つの適当な実例 を選ぶ。 ①よい土 と悪い上の性質 を比較 した り,実
際 に稲のなえを植 えてその成長過程 を比較 した結果。 第五段階,結
論 を要約する。 提案 された問題 に対 する解答が結論である。 ○病める上の因果関係 をしらべ化学肥料 に頼 らない農業のあ り方が求められる。 第六段階,導
入の工夫 をする。 ◎相手や自分の経験 に関連 して始 める。例 えば,主
食や給食の米に関連 してはじめ る。 ◎質問 僚J激的であれば効果的)で始 める。例 えば,「死米 とはどんな米か知 っていますか。」 「土がな くて も野菜がつ くれると思いますか。Jな
ど。 ◎簡潔なエ ピソー ドで始める。 ◎ いつ もと違 った対象や絵 を示す。 第七段階,デ
ザ インを記録 する。 ◎説明 され るべ き問題。例 えば,病
める上 について,日
本の近代化農業の弊害 な ど。 ◎方向づ け。例 えば,農
作物 と土地 との密接 な関係。 ◎解決のカギ。例 えば,肥
えた よい土 にす るには,堆
肥 などの有機肥料が必要であ る。 ◎要約。病 める土地 と日本 の農業 との関係 を理解す る。 次に,講
義 を行 なう場合 に考 えなければな らないい くつかの基礎的なスキル を列挙 してみるよ°a.説
明す ること…………理解 を容易にするため,実
例や図解 を用いる。b,方
向づ け………講義 を開始 して,話
題や論題 を導入す る。C.終
局 ………話題 と論題 を結びつけ,論
題 を要約す る。d,陽
気 さ………興味や熱意 を生 じさせ,注
意 を持続 させ る。e.視
聴覚教具 を用 いること………黒板,OHP,ス
ライ ドおよびモデルな どの効果的な利用。f.学
習者の活動 を多様 にすること中:●……課題 について短時間のディスカッションを行 うバズグ ループな ど。g.指
示すること………方法の手順やいろいろなタイプの問題の解決の仕方 を述べ ること。h.比
較す ること……… さまざまの方法や予想 に関 して類似性 と差異,長
所 と短所 を示す こと。i.物
語 ること… ……作品や観点 を例示す るためテキス トを読 む。 これ らのスキルは重複 しているものがあるが,講
義の主要な目的 としての情報の提供,理
解 させ ること,興
味の喚起 に役立つであろう。(3)講
義の主要 なタイプ ブラウンは,講
義の主要なタイプを五つに分類 しているより 第一 は,一
般法(The classical method)と呼ばれ るもっとも普通の講義の型である。 こ れは計画す るのが容易であ り
,ノ
ー トもとり やす く,特
に トピックの主要な特徴 を概観 す るのに有効である。一般法 をうまく活用す る ためには次の点 に注意す る必要がある。 ① 講義 で取 り上 げるもの と無視する事柄 をはっき り把握 してお く。 O導入 O主要 な点 ○要約 ○方向づ け O問題 について述べ る ことO解
決1 -
解決2-―
―→ 解 決3 雰:喬
決 肇孫
雰 率
:蟄
限 鳥 条件率
率
O要
約 図2 -般
法の様 式 ② 各々の主要な部分をはっきり区別する必要がある。 ③ 講義 をするとき,各 部分の始めと終 りを,要 約 して板書 した り,言 葉で例 えば,「だか ら,〈間〉 主要な点は………」のように,は
っきり示す ことが必要である。 第二は,問
題中心法(The prOblem centred method)で ある:これは,「精神 と肉体 の間 にはどんな関係が あるか」とか,「言語 と思考 はどのように相互 連関 しているか」とか,「漱石 は偉大な英文学 者であったか」の ような問題 に
,い
ろい ろな 観点か ら解決策 を調べ るのに有効である。 こ の方法で成功す る必要条件 は,問
題 をはっき りと簡潔 に述べ ることである。そうしなけれ ば,こ
の講義の構造 は くずれて しまうことに なる。 また,最
後の要約が大事であるが,最
終的な決断 は,相
手 にまかせることが適当な 場合 もある。第二 は
,連
鎖法 (The sequential method) と呼ぶ ものである。連鎖法 は,普
通結論へ導 びかれ る一連の関連 した説明か ら成立 してい○方向づけ ○問題 の提起 O解決 のカギ (叙述) (1) ↓ (2) ヤ 偲) ↓ 要約 問 題 方 法 解 決 僻) ↓ 低) │ 脩) ↓
解
/
要 約 O要 約 (手続) 図4
講義一一 連鎖法 小林洋一郎:学習指導体制 の研究第 四 は,上ヒ較 法(The cOmparative method)
で ある。これ は名前 の通 り,二つ以上 の過程, 主題
,作
品,理
論,観
念 又 は システムの比 較 をす る ことで ある。類似 又 は差異,利 点又 は不 利益 を求 め る もの で あ る。比較法 は,一
般 法 や連鎖法 と共通 した要素 を もってい る。また, 類似性 や差異 の説 明 は,比
較 す る問題 として 提示 され るの で,い
ずれ に して も上 記 の二 つ の主要 な方法が用 い られ ることにな る。 ○方向づ け……主命題 を述べ る。推論・ 命題 に 取 り組 むた めに用 い る方法 の説明。 O命題 の再説明 1、 第一 の推 論 →証拠 と仮 定→結論 2、 3、 4、 O要約 と結論 図6
命題法 ○方向づ けXttY
○特 質 ○要 約 る。 これ は,歴
史,科
学, 数学 な どの教科 に適 してい る。説明 の各段 階 は学 習者 の把握 で きる範囲 にな るよ う用語等 に気 を配 り,適
当 な ところで要約 す るこ とに 努 め る こ とが大切 で あ る。 講義 の 内容 をお も しろ くす るた め に,他
の トピ ックや 問題 に関連 した証 明 を した り,そ
れ らの歴 史的起 源 や 美 にふ れ る こ とも必 要で あ る。 図5
講義――比較法第五 は
,命
題法(The thesis method)で ある。 この方法 は,主
要 な分節 あるいは問題 の形で与 えられ る広範囲の証拠や論点 を示す ことによっ て,そ
れ を正当化する主張や断言で始 まるので ある。それ は相対 する命題や主張 を含 んでいる のである。命題法 は比較法 と同様知的 に挑戦す ることである。それは,用
意周到な準備 と巧み な話術 を必要 とし,さ
もない と命題 と聞 き手 は 行 くえ不明 になって しまうのである。 以上五つのタイプの講義の構造 を考察 してきたが,共
通 しているのは,講
義 は,導
入,提
示, 約 という二 つの部分 に分割 されるとい うことである。 これ は,授
業過程で言 えば,導
入,展
開, 理 という二 つの段階に対応 していると考 えることがで きる。 “)講
義法の利点又 は特定の 目的 講義法 は,多
くの目的に とってす ぐれた道具であ り,適
切 に用い られるな らば きわめて有効 であ る。講義法の一般的モデルか ら,講
義法の利点 をあげてみ よう。 クラーク(Leonard H Clark)は , 要 整講義法 を用いると有効 な場合 を次のようにまとめている解
1)特
定の事実又 は観念 を教 えるためによ りも,む
しろ一般的な観点や心の状態 を確立す るために 講義技術 を用いる。2)情
報 をすばや く配布す るために講義 を用いる。3)興
味 を引 き起 し動機づ けるために型 にはまらない講義や講話 を用 いる。 しか しなが ら,長
い形 式的な講義 は興味 を失わせて しまう。4)新
しい単元や課題 を導入す るために,い
ろいろな形の講義や教師の話 を行 な う。5)テ
レビ,大
集団,テ
ィーム・ ティーチ ング計画における必要 として請義法 を用 いる。 しか しな が ら,単
に必要 としているように見 えるとい うだけではな く,
もっとも適 しているときのみ講義 法 を用いるべ きである。(5)効
果的 な活用のための方策 講義法は,一
般的に子 どもたちを能動的に学習過程 に参加 させ ることに限界がある。例 えば,学
級内の子 どもたちの個人差 に対応す る柔軟性 に欠けるし,子
どもたちの反応 を評価す る機会 も制限 されているのである。 したが って,指
導的な効果 を生み出すためにいろいろな手だて を用いること が必要 となる。 いろいろと考 えられ る手だてを集約 してみると次のように整理 され る。 1)説明の論理が よ くわか るように組織化すること。(方法論,機
器の利用,演
示材料,プ
リン トな どの計画 を含 む)2)視
聴覚教材 を活用す ることによって,興
味 を喚起 し,講
義の効果 を高める。3)講
義の中に発間 を含 めることによって,純
粋 な講義 をさける。 この場合,二
種類 の問いかけが あ り,一
つは,自
問 自答の形 になる修辞的 な発間である。二つには,実
際 に学習者が応答す るこ とを期待 してなされ るものである。いずれ も発間の後 に 〈間〉 をお くことによ り,注
意 を講義 に 集中させ,解
答 を求 める思考 をうながす ことがで きる。 また,後
者の場合 は,学
習者の反応 を評 価することによって,請
義の中味 を一部分 で も変 えた り補足 して,柔
軟 に対処 してい くことによ り,フ
ィー ドバ ックの効果 を意図的に活用 してい くことが大切 である。4)講
義の途中や後 で,論
じられた事柄 を発展 させ るために,小
グループによるデ ィスカ ッション の時間や質問の時間 を設 けることである。 Ⅲ。 相 互 作 用 的 講 義 法 の モ デ ル 相互作用的講義法 とい うのは,一
般的講義方式の一方的なコ ミュニケーション形式の欠点 をな く するために,講
義の過程の中に,教
師の発間 を取 り入れ,ま
た,学
習者か らの質問 を許容す る雰囲 気 をつ くり,講
義の展開に際 して学習者の明確 な反応や活動 を取 り入れ る方法である!9 林竹二氏 は,大
学での授業の他 に,全
国の小学校,中
学校,高
等学校 で多 くの授業 を実施 し,児
童生徒に感銘 を与 えたばか りでな く,多
くの教育関係者 に注 目され,今
日なお大 きな影響力 を与 え ている。氏の授業 は講義方式で進 め られている。 しか しなが ら,そ
れ は単 に一般的に考 えられ る純 粋 な講義ではない。講義の中に子 どもへの間いかけや発間があ り,子
どもたち との相互作用がある。 視聴覚教材 (例えば,ペ
リーのサインのあるペ リーの写真 など)も かな らず活用 して興味 を喚起 し, 積極的な学習への構 えを形成 しているのである。氏の授業記録の中か ら,授
業の特徴 をみるため, 「開国」の授業の導入の最初の部分 を引用 してみよう。小林洋一郎:学習指導体制の研究 授業「開国」一一 久茂地小学校六年二組 に対 す る授業 の記録(μ … (林先生
)今
日は,開
国 の授業 を します。 さて,開
国 とい うこ とは,ど
うい う こ とで した か。 (生徒 た ち) (「
鎖 国 をや めて国 を開 くこ と」 な ど と口々 に答 える) (林)
え え,そ
うですね。鎖国 をや めて,国
を開 く,そ
れが 開国ですね。 だ け ど,そ
の,国
を 開 ぐとい うの は,こ
う,戸
で もあける ように,あ
けるんですか。 (生徒)
い いえ (林)
じゃ, どうい うこ とか しら。 (生徒 た ち) (「
外 国 と貿易 をす る こ と」 な ど と口々 に答 える) (林)
最初 か ら,貿
易 を しま したか。 (生徒)
いいえ。(その他 の声) (林)
これ (と年表 を さ して)を
み て ご らん な さい。貿易 をす るって約束 したの は1858年 の こ とですね。 しか し,最
初 の は,和
親 条約 で すね。 それで もや っぱ り,開
国,一
種 の開 国 で す。 それ まで,国
を閉 ざ していた。鎖国 を していた。 ところで,鎖
国 を して い た とい うの は,ど
うい うこ とで しょうか。 (生徒 た ち) (「
ア メ リカ とか、外 国 と貿易 を しなか った こと」 な どと口々 に答 える。) (林)
外 国 と貿易 を しない とい うだ け じゃな いです ね。貿易 は,物
を売 った り買 った りす る こ とですね。鎖国 は,そ
うい うこ とを しないだ けで はない。 もっ とひ どいんです。 (生徒) (少
数 の声)外
国人 を一人 で も…… (林)外
国人 を一人 で も国の 中 に入 れない。一人 で も入れない とい うよ り,も
っ とひ どいか も しれ ない。 日本 の付近 で,船
が沈 んだ としますね。す る と,そ
の難破船 を助 ける とい うこ ともゆ るされ ない,鎖
国 っての は。 だか ら,日
本 の近 くの海 で,仕
事 を して い る船 は,
と って も困 るで しょう?
それか ら,船
で長 い こ と航海 して きて,野
菜 が な くな る,あ
るい は水 が な くな って しまう とい う時 に,困
るで し ょう?そ うす る と,ど
う して も水 が欲 しい とか,野
菜 を売 って くれ ませ んか とい うこ とにな りますね。 その時 に,水
をや った り,野
・菜 をわ けてや った りす る こ とは, どうなんですか ? (生徒)
ゆ るされ ない。 (林)
ゆ る され ない。少 し残 酷ですね。 だか らそ うい うことが,だ
んだ んや か ましい問題 にな って きたんです。 ところで,
ここに,地
図 をは って あ りますが,ペ
リーが,浦
賀 に来 る まで に,
どん な路を通ってきたか,そ れをまず
,考
えてみましょう。〔
最初の学習課題の提示〕
浦賀に来たのは,こ れによると
(年表をみて)1853年 ですね。
(生徒)
はい 以下省略……… 氏の授業の特徴の一つは,導
入か ら展開への移行がなめ らかであることである。引用 したのは導 入の部分で展開に入 るところまでであると思われ る。 まず,開
国の ことばの意味 を鎖国の概念 と対 照的にうきば りにして把握 させた上 で,最
初の学習課題 に入 っている。 しか も教 師 と子 どもたち と の対話が成立 しているらしいことが,な
め らかな進行状況でわかるのである。 これ は教師の技量に かかわっているが,教師の問いかけに対 して応答す るのは子 どもの自由意志であ り,あ るいは単に, クラス内の誰かが応答 して くれればよいのである。 この ように,講
義の目的に即 して,一
般的又 は 容易に答 えられ る質問をクラス全体 に対 して発問 し,あ
る応答 を引 き出す ことによって,学
習者 を授業 に参加 させ ることがで きるのである。す ぐに期待 する応答が得 られな くて も
,補
助説明や ヒン トを与 えることによって,子
どもたちの正 しい発言が引 き出されてい くのである。 また,先
の学習課題 につし斗て, 般
の教師な らば,「 (1853年に)浦
賀 に来 るまでに,
どうい う路 を通 って きた と思 いますか。」で切 って子 どもの応答 を待つ ことになるのではなか ろうか。 しか し, 林氏 は,「地図を見 る と,ア
メ リカは,こ
っちですね。 日本 はここですね。(生徒,は
い。)そうす る と,一
番近 いのは,
こっちの,海
(太平洋)を渡 って来 るのが近いですね。太平洋を通 って きた と思 いますね,普
通 な ら。(生徒,
はい。)」 と考 え方 を示 した上 で,太
平洋 を通 って きた と思 う人 と, こっちの東狽Iの太西洋 を通 ってきた と思 う人 と,ど
ち らが多いか挙手で予想 させ る。 これですべて の子 どもたちは授業 に関心 を持たざるを得 な くなる。(太平洋 を通 ってきた と思 うもの21名,大
西洋 と思 うもの15名)そ
して,少
ない方ではあるが,正
解の方の太西洋 を通 って きた と思 う子 どもの自 発的説明 を求め, 2名
の応答者の理由説明で,共
通点 とそうでない部分 を確認 し,そ
れ らの要点 を とりあげて説明 し,正
解 を強化 しているのである。 そ して,子
どもたちは,色
々な角度 か ら鎖国 を していることの重大 な意味 を知 らされてい く。 しか も,具
体的な事実にもとづ きなが ら,開
国せ ざ るを得なか った 日本の状況 と開国の必要性 を感 じとらせてい く講義 になってい くのである。 先 にふれたように,航
路 を予想 させて も普通の授業のように話 し合いや討論 を(いたず らに)さ せ るのではない。学習者の興味 を喚起 し,学
習者の注意 を集中させるための発間の手だてであ り,応
答 に対 しては,不
完全 な ものは補完 し,正
しい反応 にはあ らゆる場合 に積極的な強化 を与 えて,子
どもの反応 はすべて無駄 にされ ることな く,解
答への思考 に関連 させ られてい くのである。 この林氏 の授業 は2時
間続 きで行なわれたのであるが, 1時
間 目の授業 は,鎖
国 を守 ることのむ ずか しさを整理 し,次
の時間は,開
国 というむずか しい仕事 をしたのは誰か とい う話 をしたい と予 告 されて終 るのである。2時間 目の終 りで,整
理 は次の ようになっている。「そ うい ういろんな,た
くさんの犠牲者の犠牲の上 に,何
とか国の政治の し くみを変 えるというようなこと,そ
れか ら産業 の近代化 を遂 げるとい うようなことがで きるようになったんですね。 そういう人たちのおかげで, 植民地 にな らず,今
日まで日本 は独立 を維持 して きたんだ というようなことを記憶 してお く必要が あ りますね。 それでは, この開国の授業 はここまでに しますが,開
国のむずか しさとい うこと,そ
れが鎖国 を維持す ることに劣 らないむずか しい仕事 だったんです。その ことは,わ
か りましたか? (生徒)は
い。(林)そ
れ じゃ,こ
れで授業 をおわ ります。」。このように最後 は,講
義の内容 を要約 し,基
本的なテーマを問いかけて終 っている。 林氏の授業 は,講義調であ りなが ら子 どもの関心 をそ らさないような語 りかけ と問いか けが あ り, 子 どもの表情 によって も,教
師 と子 どもの対話が成立 していることがわかる。 この物語 るような林 氏の授業 は,歴
史教育 のあ り方 を提起 してい ると同時 に,一
種 の ドラマであるとみることもで きる。 子 どもは単 なる観客ではな くて,ドラマに主体的 にかかわ る成員 となる。教師の問いか け(問題提起) が,子
どもの学習課題 にみごとに転化 してい く。 この「開国」の授業によって,
この授業 を受 けた 沖縄 の子 どもたちは,歴
史 を動かすエネルギーのような ものを吸収 し,歴
史的な認識 のみな らず何 か人間的な感化 を受 けたはずである。 林氏の授業 は,単
なる講義ではな くていわゆる相互作用的講義法である。 それ は,単
なる言葉 に よる情報の提示ではな くて,イ
メージの ともな う思考実験があ り,問
答 による発見があ り,そ
れ を 明快 な説明で強化するという,まさに多様 な教授技法が含 まれていると見 ることがで きるのである。小林洋一郎:学習指導体制 の研究 お わ りに 授業における教師の発言率 は
,一
般 に,小
学校 か ら大学へ と進 むにつれて高 くなってい く。 それ は教師の指導観 ばか りでな く,獲
得すべ き知識や情報の量 と質の問題,さ
らに学習者の経験 および 思考力や判断力の拡大 とも関連 していると思われるのであ る。教科の指導のね らいは,具
体的事実 をもとに知 的経験 をさせ,科
学的概念形成の能力 を高めてい くことである。授業の機能が,人
間や 社会や自然 に関す る一般的法則 の認識 を通 しての陶冶,す
なわち人間形成 にあるとす るな らば,人
間や社会や 自然 に関す る事実や現象や関係 を正 しく理解 させ ることが必要である。 もちろん重要な 観点 は,単
に提示 され与 えられた情報や知識 を受身で受容 してい く能力ではな くて,学
習者 に主体 的な知識の創造過程 を体験 させ,自
己形成力や情報処理能力の育成 をはか ることである。 そのため に教師は,専
門的,学
問的な研究成果 をたえず吸収す るとともに,教
授法 を理解 し,基
本的な教授 スキルを身につけなければな らない。 この小論では,基
本的教授法の うち,特
に講義法 に焦点 をあ て,一
般的モデル とその応用 としての相互作用的講義法の考察 をしたのである。 江 (1)拙稿,「学習指導体制の研究∼発間 による授業分析∼J,鳥取大学教育学部研究報告(教育科学),第27巻,第 2号,昭和60年,p446
(2)」Ohn A Laska,The Four Basic Methods of lnstruction,educational techn。 10gy,Volume XXIV,
Number 6, 1984,pp 42-45 (3) Ibid, p 43
催
)山
田栄,工藤泰正編,「教育原理J,協同出版,昭和43年,p143
0
同書,p143
(6) George Brown,Lecturing and Explaining,Ⅲ /1ethuen,1978,p 41 (7) Ibid, p 44
(8) lbid, p 9 (9) Ibid, p ll (10 1bid,p 47 (10 1bid,pp 62-74
Cか Leonard H Clark,TEACHING SOCIAL STUDIES IN SECONDARY SCHOOLS,Macmillan,1973,p
84
113) JOhn 」 Sヽveeney and Charles M Reigeluth, The Lecture and lnstructional Design, educational
tecnology,ヽ「olume XXIヽ「,Number 8, 1984,p 10
00 林竹二