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「書き言葉的」として指導する必要のある語の分析

-『現代日本語書き言葉均衡コーパス』を利用して-

木田 真理(国際交流基金日本語国際センター) 柏野 和佳子(国立国語研究所 言語資源研究系)

Words that Need to Be Taught as "Written Language":

Analysis of the BCCWJ

Mari Kida (The Japan Foundation Japanese-Language Institute,Urawa) Wakako Kashino (Dept. Corpus Studies, NINJAL)

1.はじめに レポートなどを書く際に、文体差を意識した適切な語彙を選択することは、上級レベル の日本語学習者にとっても難しい。そのため、学術的文章作成の指南書は、二通他(2009)、 石黒(2012)など、数多く出版され、大学等では論文作成指導が行われている。しかしな がら、従来「書き言葉」と「話し言葉」という文体差で整理されてきた表現も、近年、メ ールやブログ等に「話し言葉的」な表現が現れやすいという傾向があり、その影響から、 新たな使用実態の調査が必要な語もある。学術的文章で用いるとよい語とそうでない語と いうような、文体差のある語の組をリスト化して示すものや,その文体差を計量的に分析 するような文献や先行研究は十分にはない。 本研究では、大学院の修士課程で学ぶ留学生が、授業における課題やレポートとして書 いた文章から、文体差の指導が必要なものを抽出し、文体差の修正を要する語の代表例を、 『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(以下BCCWJ)で分析した。その分析結果を、BCCWJ の具体的な検索方法とともに報告する。 2.調査方法 2.1 調査対象データ 2012 年度日本語教育指導者養成プログラム1の学生4 人が、大学院の授業における課題や レポート、研究論文などのアカデミックな文章として書いた合計72 文書から抽出した。調 査対象とした文書は、2012 年 11 月から 2013 年 3 月末までの約 5 か月間、1 年間の大学院 コースの前半にあたる秋学期と冬学期に書かれたもので、1つの文書は、A4 サイズ 2 枚~6 枚である。調査対象文書の作成者である修士課程の学生は、インドネシア、タイ、ミャン マー、チェコの大学や高校の教員で、全員日本語能力試験の1 級または N12に合格している。 2.2 調査対象の選定方法 学生が授業や発表会の課題で執筆して提出する文書に対して、週に 1 度、修正すべき箇 所をチューターが添削指導しており、その修正箇所のうち、表記上、文法上、語彙選択上 の明らかな誤用と思われるものを除いた修正例を抽出した。全部で 869 件の修正例が抽出 された。これらの修正例には、最終的には誤用と判断されるものも含まれるが、その理由 の説明が簡潔にはできない、初級レベルの明らかな誤用とは異なるものも含んでいる。そ して、さらにその修正例から、筆者らの判断で、文体的特徴に関係の深い修正例を抽出す ると、294 件となった。 294 件の用例について、まず全体的な傾向を見た。文体的な修正の観点には、日本語教育  Mari_Kida@jpf.go.jp 1 国際交流基金日本語国際センターと政策研究大学院大学の連携大学院 現役の日本語教師を対象とした 1 年間の大学院修士課程 2日本語能力試験は、2010 年に新しく改定され、1 級~4 級の 4 段階評価だったのを、N1~N5 の 5 段階評価 に変更された。合格ラインは旧試験の1 級とほぼ同じ。

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の作文や論文指導の参考書である、アカデミック・ジャパニーズ研究会編(2002)、二通他 (2003)、二通他(2009)、などで指導項目としてあがっている、接続表現、副詞、指示表 現、文体(です、ます体、である体など)、書き言葉、なども多く見られたが、中には、従 来の指導項目としてはあがっていないものも見受けられた。例えば次のような例である。 表1 修正指導が必要とされる項目例 抽出 番号 修正箇所の用例 (太字、下線は修正箇所) 修正の観点 修正後 (太字、下線は修正箇所) 265 関心を寄せているものの 受身表現 関心が寄せられているものの 22 大学での既習者と未習者の混合の問題もタイ の高等教育機関の課題である の→ という 混合という問題 152 などという質問があった という→ の などの質問 24 インドネシア人学習者には外国語はともかく、 「は」を取る 学習者は外国語はともかく 224 大学入学試験の科目に入っておらず 「は」の挿入 科目には入っておらず 82 日本語の学習の動機になり N の N → NN 日本語学習の動機 257 大学の 2 学期試験を受けた 1 年生は NN → N の N 2 学期の試験 51 一番人気なのは日本語だった -な→-がある 人気がある 396 様々の経験を持ち込みながら -の→ -な 様々な 100 学習者が十分に口頭コミュニケーションの練 習ができなく ない→ず できず 170 2 回ともテーマが絞られなくて なくて→ず 絞られず レポートなどの文体には、受身表現のほうがふさわしい場合がある例(抽出番号265 番)、 「~という」と「の」の適切な選択(22 番と 152 番)、「は」の挿入が必要な場合とそうで ない例(24 番と 224 番)、「の」の挿入に関する例(82 番と 257 番)、「-な」「-の」のい ずれかの判断が必要な例(51 番と 396 番)、「ない」ではなく「ず」が適切な例(100 番と 170 番)など、指導上注目すべき項目が複数抽出された。調査対象文書の作成者は、全員日 本語能力試験1 級(N1)合格者で、日本語運用力が高く、文法や語彙選択なども、一文レ ベルでの使用は問題なくできている。しかし、まとまった文章を書き言葉で書く場合には、 取り上げるべき指導項目がかなりあることを示している。 このような指導項目の詳細については、別稿にゆずり、本稿では、そのうち、①「N の N」 か「NN」か、②「―な」か「―あるの/―の」か、③「ない」か「ず」か、の 3 点をとり あげ、BCCWJ の分析方法及び分析結果を報告する。 3.BCCWJ を用いた分析 本章では、前節でとりあげた①~③の 3 点について、実際の書き言葉における使用実態 を確認する。その確認にはBCCWJ を用いる(『中納言』1.1.0 を使用)。BCCWJ は一般に公 開されており、書籍、新聞、雑誌や、Web 文書といった、レジスタの異なるサブコーパス が収録され、現代書き言葉の使用実態を、日本語教育の現場で誰もが検索して確認できる という利点があるため、BCCWJ を用いる。なお、本研究では、BCCWJ のサブコーパスの うち、話し言葉を書き記した国会会議録と、特殊な文体である法律文と韻文は検索対象外 とする。 3.1 「N の N」か「NN」か 例えば、「日本語の教育」、「日本語教育」は、どちらも可能な表現形式である(表 2 126

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番)。しかしながら、アカデミックな文章作成時においては、冗長と判断される「の」は省 かれる場合が多い。今回、「の」を省くべきと修正された事例は表2 に示すとおり、8 件あ った。一方、学習者にとってはその「の」が冗長であるのか否かという判断が時に難しく、 「の」を省くべきではない事例も収集されている。表3 の 6 件である。 表2 「N の N」から「NN」への修正例 表3 「NN」から「N の N」への修正例 表2 と表 3 には、「N の N」および「NN」の表現形式の BCCWJ における頻度を示してい る。一方の頻度が高い場合は高い方に色をつけて強調する。なお、原文通りの表現である 「大学生の生活」および、「大学生生活」はいずれも頻度は0 であったため、表 2 の 139 番 は、「大学の生活」「大学生活」で検索をして得た頻度を示している。表2 の 633 番はいず れも0 であるが、「口頭」を「発表」に変えて検索をしてみると、「発表の練習」は頻度 1、 「発表練習」は頻度4 という結果が得られ、やや「NN」の方が多いことが確認できる。よ って、表2 に関しておおむね「NN」の頻度が高いという結果が得られる。 しかしながら、表 3 は、95 番以外は、ほとんど BCCWJ に用例がない。「NN」よりも適 切と思われる「N の N」の形の用例すらとれないという点は、BCCWJ の規模では限界のあ る場合があることがわかる。日本語教育の現場で、大規模な N グラムデータを簡単に検索 できる仕組みが整えられれば、BCCWJ での低頻度語の確認もしやすくなるかもしれない。 それでも、BCCWJ の範囲内での工夫の仕方はある。例えば、268 番に関しては、「推薦人の 不足」「証人の不足」で頻度2、「職人不足」で頻度 1、402 番に関しては、「勉強の仕方(し 方・しかた)」で頻度42、「勉強仕方(し方・しかた)」で 0、785 番に関しては、「学校の雰 囲気」で頻度7、「学校雰囲気」で頻度0、790 番に関しては、「国語の授業」で頻度27、「国 語授業」は頻度0、との結果が得られる。つまり、似たような、頻度の得られそうな語に変 えて検索をするという工夫により、低頻度語の場合でも、より優勢な形がどちらかを探る ことは必ずしも不可能なことではない。 しかし、中には、検索に、コーパスを駆使する専門的知識が必要な場合がある。例えば、 表2 の 340 番の「蛇の年」などの例である。この場合、まず、「蛇の年」「蛇年」は、「巳年」 抽出番号 修正箇所の用例 (【 】が修正箇所) 「NのN」の頻度 「NN」の頻度 82 【日本語の学習】の動機になり 13 46 94 そのイベントは【毎年の2月】に開かれ 3 524 126 【日本語の教育】の中心は 4 95 139 【大学生の生活】を送った時に 3 68 252 大使館に【就職の希望者】はN2合格者を要求する 0 33 340 2013年は【蛇の年】で 10 521 455 【研究のデータ】によると 1 23 633 【口頭の練習】としては教師からの質問に答える形が主である 0 0 抽出番号 修正箇所の用例 (【 】が修正箇所) 「NのN」の頻度 「NN」の頻度 95 日本語学習者の【交流場】という目的を持っている 136 0 257 大学の【2学期試験】を受けた1年生は 0 4 268 大学院課程に指導できる【修士不足】 0 0 402 データの【収集し方】を見てみると 1 0 785 慣れない【授業雰囲気】 0 0 790 【日本事情授業】の見学体験をした 0 0

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に比べ、そもそもあまり使われない(BCCWJ では、わずかに「蛇年」が頻度 1)ことをお さえ、次に十二支を「巳」に限定する必要もないことをおさえ、広く、十二支(子丑虎卯 辰巳午未申酉戌)に続けて「の年」か「年」か、どちらの表現が使われているのかを検索 すればよいということを思いつく必要がある。次に、例えば、一度でできる限り求める用 例の頻度を得たい場合、次のように検索文字列が書けるとよい。 N の N:[^男女利父母甲乙丙丁戊己庚辛壬癸][子丑虎卯辰巳午未申酉戌亥]の年[^ 齢弱収頃長間金始籍少] NN:[^男女利父母甲乙丙丁戊己庚辛壬癸][子丑虎卯辰巳午未申酉戌亥]年[^齢弱収 頃長間金始籍少] [^~]は、「~」以外の文字、[~]は、~のいずれかの文字、という指定である3。「子年」 の「子」に連なる「男子」「女子」「利子」「父子」「母子」という用例や、「庚申の年」とい った、十干(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)と十二支とを組み合わせる用例が、同時に検索され てしまうため、冒頭にこのように範囲外文字の指定をする。続けて、「(の)年」の直前の[ ] に、十二支の文字を入れて、いずれか1字に該当する場合、という指定をする。そして、「(の) 年」の直後には、「年齢」などの用例が同時に検索されないための範囲外文字の指定をする。 この後、念のため目視で、不要な用例の有無を確認する。この場合は、「の年」の検索結果 に、「死んだ子の年」「種子の年」というものが混じっていたため、最後にそれらを除外す るという操作を行っている。 このように、検索には、分析対象語の性質によって、検索技術の難易度に差があり、検 索方法に習熟を要する場合がある。しかしながら、日本語教育の現場において、ある表現 が使われているかどうか、日本語母語話者でも判断に迷う場合、また、日本語学習者が正 誤の判断をする際、コーパスを利用することによって使用実態を把握できるということは、 非常に有益なことである。例えば、表2 の 82 番「日本語の学習」と 94 番「毎年の 2 月」 のように、「N の N」と「NN」の頻度の比較を手がかりに、誤用に近いのか、両方使用可能 なのかの判断が可能となるのである。 3.2 「―な」か「―あるの/―の」か 例えば「人気」が名詞を修飾する際には、「―な」「―の」のどちらの形もあり得る。次 の表現は、いずれもアカデミックな文章でも特に問題なく用いることができよう。 1) 若者に人気な店 2) 若者に人気の店 しかし、「の」を修飾する、次の表現を比べるとどうであろうか。 3) 人気なのが日本語だ。 4) 人気が(/の)あるのが日本語だ。 3)の表現よりも 4)の表現の方がアカデミックな文章にはふさわしく感じられる。今回の学 習者のレポートにおいても、次の表4 の 51 番に示すように、「人気な」から「人気がある」 への修正が行われていた。 さらに、上記1)と 2)の「人気」の例では、「―な」「―の」の形に文体差はなく感じられ るが、今回の調査結果には、表4 の 347 番から 710 番までの例に示すように、「―な」から 「―の」へ修正された事例と、逆に、表 4 の 396 番に示すように、「―の」から「―な」へ 修正された事例とがあった。いずれも、BCCWJ でその頻度を求めると、修正後の表現の方 が高いという結果が得られている(高い頻度の方に色をつけて強調している)。それぞれの 頻度を表4 に示す。なお、中納言を用いて検索する場合には、適宜、「文字列検索」と「短 単位検索」とを使い分けている。ワイルドカードを用いる場合には、「文字列検索」を、そ うでなければ、表記のゆれが解消され、同音異義語の区別がされている、「短単位検索」を

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表4 「―な」「―あるの/―の」かの修正例 使う。表現それぞれの使用頻度をどちらの検索で調べたかをあわせて表4 に示す。 「―な」か「―の」かは、どちらもあり得る形の場合に正誤は言い難いが、ネイティブ の日本人がより文体差、あるいは、自然さを感じる違いがあるような場合には、このよう に検索結果の頻度差として、そのことを確認することができる。 3.3 「ない」か「ず」か 学習者のレポートの中で、「ない」が「ず」に修正された事例が、次の表5 に示すとお り5 件あった。「ない」も「ず」も、用例が多数あり、必ずしも、お互いに言い換え可能 ではない用例も多数ある。そこで、お互いに言い換え可能であるペアになるような表現形 で検索を行う。ここでは、表5 の 100 番と 435 番より、「できなく」と「できず」の組と、 170 番や 363 番のような用例をできるだけ調べるために、「なくて」(「なく、」を含む) と「ず、」の組を取り上げ、その文体差をBCCWJ のレジスタ別に分析してみることにする。 表5 「ない」から「ず」への修正例 BCCWJ から得られる頻度は、「できなく」3,281、「できず」2,8824である。また、「な くて」(なく、)6,8025、「ず、」33,4206である。BCCWJ のサブコーパスを、硬[白書,教 科書,広報紙,新聞],中[書籍],軟[雑誌,Web データ]の 3 つに区分し、それぞれの使用頻 度を求める。その結果を、表6、表 7 に示す。 表6、表 7 では、出現率を、サブコーパス別に、使用頻度を 100 万語あたりで正規化した 数値(PMW)で求めている。それから硬、中、軟別に出現率の平均を求め、硬、中、軟別 に表現形の比率を求めた。表現形の比率のグラフを、次の図1,2 に示す。 4 「できなく」も「できず」も文字列検索のあと、「キー」でソートし、人手で選別。 5[^かきつしむもすはっだほ][かさたなまやらわえけせてねみれ]なく[て、][^は]」で検索ののち、人手 で選別。 6 単独の用例検索だと、用例が多すぎるため、「ず、(ず:助動詞+「、)で検索。

抽出

番号

修正箇所の用例 (【 】が修正箇所)

修正後

100

学習者が十分に口頭コミュニケーションの練習が【できなく】

できず

435

習った文法知識を使用し、運用【できないこと】、十分に話すことができないといった問題点があり

できず

170

2回ともテーマが【絞られなくて】

絞れず

363

焦点もはっきり【しなく】

せず

415

話し手は難しい文法や豊富な語彙は要求されて【いないで】

おらず

番号 修正箇所の用例 (【 】が修正箇所) 修正後 「な」頻度 「あるの/ の」頻度 「な」検索 「あるの」や「の」 検索 51 一番【人気な】のは日本語だった 人気がある 28 49文字列:人気なの [はが] 文字列:人気[のが] あるの[はが] 347 教師中心の教授法と【逆な】教育観の学習者中心 の活動である 逆の 19 661 短単位:「逆」+ 「な」+名詞 短単位:「逆」+ 「の」+名詞 478 学習ストラテジーは漢字学習に【特有な】認知ストラテジーに限定した 特有の 92 988短単位:「特有」+「な」+名詞 短単位:「特有」+「の」+名詞 702 日本語を【別な】外国語と同時に勉強する 別の 710 【別な】ことばで言うと 別の 396 【様々の】経験を持ち込みながら 様々な 12356 397短単位:「様々」+「な」+名詞 短単位:「様々」+「の」+名詞 429 9537 短単位:「別」+ 「な」+名詞 短単位:「別」+ 「の」+名詞

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表6 「できなく」と「できず」の[硬中軟]別の出現率の比較 表7 「なくて」と「ず、」の[硬中軟]別の出現率の比較 硬軟 サブコーパス 頻度 語数 出現率(PMW) 比率 出版・新聞 26 1061729 24.5 特定目的・教科書 19 928448 20.5 特定目的・広報紙 106 3755161 28.2 特定目的・白書 42 4685801 9.0 20.5 出版・新聞 59 1061729 55.6 特定目的・教科書 19 928448 20.5 特定目的・広報紙 39 3755161 10.4 特定目的・白書 47 4685801 10.0 24.1 出版・書籍 1053 28348233 37.1 図書館・書籍 1025 30377866 33.7 特定目的・ベストセラー 125 3742261 33.4 34.8 出版・書籍 964 28348233 34.0 図書館・書籍 914 30377866 30.1 特定目的・ベストセラー 117 3742261 31.3 31.8 出版・雑誌 139 4242224 32.8 特定目的・ブログ 247 10101397 24.5 特定目的・知恵袋 499 10162945 49.1 35.4 出版・雑誌 104 4242224 24.5 特定目的・ブログ 307 10101397 30.4 特定目的・知恵袋 312 10162945 30.7 28.5 44.6% 46.0% 54.0% できなく できず 52.2% 47.8% 55.4% 中の「できなく」の平均 軟の「できなく」の平均 硬の「できず」の平均 中の「できず」の平均 できなく できなく 硬 中 軟 軟の「できず」の平均 できず できず 硬の「できなく」の平均 硬軟 語 サブコーパス 頻度 語数 出現率(PMW) 比率 出版・新聞 34 1061729 32.0 特定目的・教科書 17 928448 18.3 特定目的・広報紙 25 3755161 6.7 特定目的・白書 10 4685801 2.1 14.8 出版・新聞 535 1061729 503.9 特定目的・教科書 44 928448 47.4 特定目的・広報紙 450 3755161 119.8 特定目的・白書 379 4685801 80.9 188.0 出版・書籍 1540 28348233 54.3 図書館・書籍 1703 30377866 56.1 特定目的・ベストセラー 285 3742261 76.2 62.2 出版・書籍 10644 28348233 375.5 図書館・書籍 13127 30377866 432.1 特定目的・ベストセラー 1820 3742261 486.3 431.3 出版・雑誌 251 4242224 59.2 特定目的・ブログ 1044 10101397 103.4 特定目的・知恵袋 1893 10162945 186.3 116.3 出版・雑誌 1454 4242224 342.7 特定目的・ブログ 2522 10101397 249.7 特定目的・知恵袋 2445 10162945 240.6 277.7 7.3% 92.7% 12.6% 87.4% 29.5% 70.5% 硬 中 軟 硬の「なくて」の平均 なくて ず、 なくて なくて ず、 中の「なくて」の平均 軟の「なくて」の平均 硬の「ず、」の平均 中の「ず、」の平均 軟の「ず、」の平均 ず、

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図1 「できなく」「できず」の比率の比較 図 2 「なくて」「ず、」の比率の比較 図1、図 2、いずれも、硬では「ず」の形(「できず」「ず、」)の比率が一番高く、軟では 「ない」の形(「できなく」「なくて」)の比率が一番高く、中ではその中間となっている。 つまり、文章が硬いほど「ず」が用いられ、軟らかいほど「ない」の形が用いられている といえる。アカデミックな文体は、硬い文体に位置づけられるため、アカデミックな文章 作成時に、「ない」から「ず」への修正を学習者に指導する際には、こういった分析結果を 学習者へ示すことで、より、文体差を理解してもらうことができるだろう。 4.おわりに 大学院の留学生が、課題やレポート、研究論文などとして書いた文書に、文体的な観点 から修正が必要とされる例のうち、①「N の N」か「NN」か、②「―な」か「―あるの/ ―の」か、③「ない」か「ず」か、の 3 点をとりあげ、BCCWJ を用いて分析し、その検索 方法及び分析結果を報告した。コーパスの分析結果が示す使用実態は、日本語教師にとっ ても、学習者にとっても文体差の修正が必要とされる度合いの手がかりとなる有益な情報 である。日本語学習者自身にも、BCCWJ を使用して検索ができるようにする指導を行えば、 学習者が必要に応じて使用実態を確認することもできるようになるであろう。本稿で調査 対象データを作成した学生が在籍する日本語教育指導者養成プログラムでも、日本語学の 授業で、コーパスを使った現代日本語の分析の授業を実施している。BCCWJ を用いて検索 する場合、その検索方法がシンプルで容易な場合と、別な語に置き換える工夫が求められ たり、複雑な検索式を書く必要がある場合などがあり、その検索技術の習熟には、時間を 要する面がある。検索しやすい語とそうでない語の区別も踏まえた上で、学習者自身も、 検索の技術を学んでいくことが重要である。また、本稿で分析対象とした語彙の中には、 「口頭練習」「日本事情の授業」など、学習者が学んでいるプログラムの特徴を反映する ものも含まれている。そして、その検索には、限界があることも確認された。今後、日本 語学習者が自分で容易に検索することが可能となるためには、大きなN グラムデータにお いて簡単に検索ができる仕組みが整えられる必要があるであろう。いずれにせよ、日本語 教育の現場において、BCCWJ の積極的な活用が望まれている。 今後は、文体的な修正を必要とされた例の整理、分類を継続し、BCCWJ を活用した使用 実態の調査分析、そこから得られた情報を、日本語学習者向けの参考書や辞書類に記述す る試みなどに取り組んでいきたい。 謝 辞 調査の補助をしてくださった国立国語研究所コーパス開発センター技術補佐員の田嶋明 日香さんに感謝します。本研究は、文部科学省科学研究費補助金基盤研究(C)「コーパス分 析に基づく辞書の位相情報の精緻化」(課題番号:23520572)の助成を受けたものです。 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 硬 中 軟 ず、 なくて 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 硬 中 軟 できず できなく

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文 献 アカデミック・ジャパニーズ研究会編著(2002)『大学・大学院留学生の日本語 4論文作 成編』アルク 石黒圭(2012)『この1冊できちんと書ける!論文・レポートの基本』日本実業出版社 木田真理、柏野和佳子(2012)「書き言葉均衡コーパスを活用した文体的特徴を持つ語 の分析と記述の試み ―アカデミック・ライティング指導を例に―」『日本語教育国 際研究大会名古屋予稿集』A268. 二通信子、佐藤不二子(2003)『改訂版 留学生のための論理的な文章の書き方』スリー エーネットワーク 二通信子、大島弥生、佐藤勢紀子、他(2009)『留学生と日本人学生のためのレポート・論 文表現ハンドブック』東京大学出版会 堀一成、坂尻彰宏、石島悌(2013)「BCCWJ 教科書データより抽出した頻度情報に基づ く日本語ライティング指導教材の作成」『第4回コーパス日本語学ワークショップ予稿 集』pp.45-52.

表 4  「―な」「―あるの/―の」かの修正例  使う。表現それぞれの使用頻度をどちらの検索で調べたかをあわせて表 4 に示す。  「―な」か「―の」かは、どちらもあり得る形の場合に正誤は言い難いが、ネイティブ の日本人がより文体差、あるいは、自然さを感じる違いがあるような場合には、このよう に検索結果の頻度差として、そのことを確認することができる。  3.3  「ない」か「ず」か  学習者のレポートの中で、「ない」が「ず」に修正された事例が、次の表 5 に示すとお り 5 件あった。「ない」も「ず」も、用
表 6  「できなく」と「できず」の[硬中軟]別の出現率の比較  表 7  「なくて」と「ず、」の[硬中軟]別の出現率の比較 硬軟サブコーパス頻度語数 出現率(PMW) 比率出版・新聞26106172924.5特定目的・教科書1992844820.5特定目的・広報紙106375516128.2特定目的・白書4246858019.020.5出版・新聞59106172955.6特定目的・教科書1992844820.5特定目的・広報紙39375516110.4特定目的・白書47468580110.024.1出版・
図 1  「できなく」「できず」の比率の比較    図 2  「なくて」「ず、」の比率の比較  図 1、図 2、いずれも、硬では「ず」の形(「できず」「ず、」)の比率が一番高く、軟では 「ない」の形(「できなく」「なくて」)の比率が一番高く、中ではその中間となっている。 つまり、文章が硬いほど「ず」が用いられ、軟らかいほど「ない」の形が用いられている といえる。アカデミックな文体は、硬い文体に位置づけられるため、アカデミックな文章 作成時に、「ない」から「ず」への修正を学習者に指導する際には、こういった分析

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