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PDF/開催および演題募集のお知らせ

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Academic year: 2021

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緒 言 卵巣には各種の組織型の癌が発生するが,そ の発生母地についてはさまざまな議論がなされ てきた.従来,卵巣表面を覆う細胞がいわゆる 表層上皮として注目されてきたが,最近では高 異型度漿液性腺癌の一部が卵管采上皮に由来す ることが示されている.一方,類内膜腺癌や明 細胞腺癌の一部は子宮内膜症から発生すること が知られており,内頸部型粘液性腫瘍も子宮内 膜症との関連が示唆されている〔1〕. 「子宮内膜症と卵巣癌」を議論するうえで, 子宮内膜症の存在が確実に認識され,癌の正し い組織型診断がなされていることが必要であ る.本稿ではまず内膜症の存在診断についてふ れ,次に前癌病変としての異型内膜症,内膜症 と関連する類内膜腺癌,明細胞腺癌,内頸部型 粘液腺癌について,その形態学的特徴と診断の うえで問題となる点について解説する. 子宮内膜症の組織診断と異型内膜症 子宮内膜症の典型的なものは内膜上皮よりな る腺と特徴的な間質の両者がみられ,そのよう な場合には診断は容易である.しかし,両者が そろわないこともまれではなく,上皮のみがみ られる場合や,間質のみがみられる場合がある. 上皮のみがみられる場合に,上皮が萎縮して いると漿液性腫瘍や封入N胞などと鑑別を要す る.形態学的に内膜間質が明らかでない場合に, 内膜間質のマーカーである CD10に対する免疫 染色を行うとその存在が示されることがある (図1). 逆に間質のみがみられる場合,子宮内膜症を 示唆する所見として特徴的な血管網の発達,ヘ モジデリンやセロイド,リポフスチンなどの褐 色色素を貪食した組織球の集簇,泡沫状組織球 の集簇などに注目する.もちろん,間質細胞が CD10を発現していることも重要な所見である. 子宮内膜症を構成する上皮細胞に異型がみら れるものを異型内膜症(図2)といい,前癌病 変として注目されている.異型内膜症は類内膜 腺癌や明細胞腺癌などの癌の背景の子宮内膜症 にみられる頻度が高く,Fukunaga らの論文に よると,子宮内膜症と関連する卵巣癌の約6割 に異型内膜症が合併している〔2〕.異型内膜症 診断基準としては,Fukunaga らは,中等度∼ 高度な多型性を示し,核クロマチンに富むか, 淡明な大型核,核/細胞質比が高い,上皮細胞 の密在,重層化,房状増生のうち3項目以上を 満たすもの,としており〔2〕,後の研究でもこ の基準を採用しているものが多い. 〔シンポジウム1/エンドメトリオーシスと卵巣癌〕

子宮内膜症から生じる卵巣癌の形態学的特徴

岡山大学病院病理診断科 柳井 広之 図1 子宮内膜症 a:ヘマトキシリン・エオジン染色 b:CD10免疫染色により内膜間質細胞が明瞭に 認識できる.

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子宮内膜症と関連があるとされる組織型の卵 巣癌のなかには子宮内膜症の存在が確認されな い症例も存在するが,腫瘍の発育によって子宮 内膜症成分が消失してしまうこともあるであろ うし,手術標本の切り出しを丹念にすることで 子宮内膜症との関連が明らかになることもある と思われる. 類内膜腺癌 子宮内膜の増殖期の上皮に類似した形態を示 す細胞よりなる癌を類内膜腺癌という.筆者の 自験例では類内膜腺癌の82%の症例で子宮内膜 症を合併しており,そのうち77%は異型内膜症 であった. 肉眼的にはN胞内に充実性隆起性病変を形成 するものが多い.典型例は組織学的に円柱上皮 の腺管状増殖を示し,桑実胚様構造や扁平上皮 への分化を部分的にみることがある(図3). 類内膜腺癌は子宮体部の類内膜腺癌に準じて充 実性増殖成分が占める割合によって grading が なされるが,卵巣類内膜腺癌では一般に Grade の低いものが多い. 子宮内膜症のなかに子宮内膜にみられる内膜 増殖症を思わせるような腺の増生をみることが ある.そのような症例のなかには子宮における 異型内膜増殖症と高分化型類内膜腺癌の鑑別が 問題となるような高度な腺の増生がみられるこ ともある.そのような症例については,子宮内 膜において用いられているのと同様な診断基準 を適用することが妥当であると考えられてい る.すなわち,¸ 間質の desmoplasia を伴う 不規則な腺管,¹ 間質が介在しない密な腺管 増殖もしくは篩状構造,º 高度な乳頭状構造, » 間質を置換する扁平上皮の増殖のいずれか がみられるものは癌と診断する〔3〕. 卵巣の類内膜腺癌のうち,高度な異型を示す ものは高異型度の漿液性腺癌との鑑別を要する ことがあり,そのような症例に対しては漿液性 腺癌と診断するのが適切であるとする意見が多 くある〔4〕.これを裏付けるような分子生物学 的な所見も報告されており,高異型度な類内膜 腺癌のなかには 類 内 膜 腺 癌 と し て 特 徴 的 な β―catenin や PTEN の遺伝子変異がみられず, p53の変異が高頻度にみられる〔5〕. 明細胞腺癌 明細胞腺癌は淡明な細胞質をもつ上皮細胞や 核が表面に突出する鋲釘状細胞の出現を特徴と する腫瘍で,乳頭状,小腺管N胞状,充実性な どの構造を示す.間質に基底膜物質の貯留をみ ることも特徴的であり,好酸性硝子状沈着物や 粘液性物質として認識される(図4)〔6,7〕. 海外では卵巣癌の10%に満たない頻度である とされているが〔8〕,本邦では卵巣癌に占める 割合が高く,日本産科婦人科学会の腫瘍登録に よると卵巣癌の約20%が明細胞腺癌である.従 来,明細胞腺癌は子宮内膜症との関連が指摘さ れており,自験例では明細胞腺癌の63%の症例 図2 異型内膜症 核の腫大,高 N/C 比,核の多形性がみら れる. 図3 類内膜腺癌 円柱上皮よりなる腺管と桑実胚様構造を みる.

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が同側卵巣の子宮内膜症を合併していた(図 5).背景の子宮内膜症には異型内膜症だけで なく,上皮の明細胞化生をみることもある. 癌と診断するためには,他の組織型の表面上 皮性・間質性腫瘍と同様に間質浸潤を確認する ことが必要であるが,癌の周囲の子宮内膜症N 胞を観察していると,淡明な細胞質をもつ上皮 の小乳頭状増殖する像をみることがあり(図 6),このような病変が前癌病変と思われる. 卵巣に生じる癌のなかには明細胞腺癌以外に も淡明な細胞質をもつ細胞の増殖を示すものが ある.組織像が明細胞腺癌として典型的ではな い症例のなかには免疫染色でも明細胞腺癌に特 徴的な結果を示さないものが含まれており,そ のような腫瘍は典型的明細胞腺癌と生物学的に 異なるものである可能性がある〔9〕. 内頸部型粘液性腺癌 卵巣の粘液性腫瘍は腸上皮の性格をもつ腸型 の腫瘍と子宮頸部の円柱上皮に類似する内頸部 型に分けられる.内頸部型粘液性腫瘍は,当初 境界悪性腫瘍の1つとして記載された〔10〕. 後に,粘液細胞以外に扁平上皮,鋲釘細胞,線 毛細胞,未分化細胞などが混在する同様な境界 悪性腫瘍がミューラー管型混合性乳頭状N胞 性境界悪性腫 瘍 mixed-epithelial papillary cys-tadenomas of borderline malignancy of mulle-rian type として報告されたが〔11〕,これも本 質的には内頸部型粘液性腫瘍の範疇に含まれ る.これらの腫瘍も子宮内膜症を合併すること があり,Rutgers らの報告では前者で30%,後 図6 明細胞腺癌の周囲にみられる上皮の乳頭状増殖 図4 明細胞腺癌 a:淡明な細胞質をもつ細胞の乳頭状増殖 b:鋲釘状細胞 c:腺管N胞状構造 d:間質の好酸性物質 図7 内頸部型粘液性腫瘍(境界悪性) 繊細な階層性乳頭状構造をみる. 図5 明細胞腺癌 異型内膜症(矢印の部分)のと連続して明細 胞腺癌がみられる.

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者で53%の症例で子宮内膜症を合併していた 〔10,11〕. 組織学的にはやや好塩基性の粘液を細胞質内 に含む上皮細胞が増殖しており,粘液細胞以外 にも扁平上皮,鋲釘細胞,線毛細胞,未分化細 胞が混在しつつ増殖する症例もある.境界悪性 腫瘍では繊細かつ階層状の乳頭状増殖が特徴的 であり(図7),その構築が漿液性腫瘍に類似 することから,本腫瘍を seromucinous と表現 するものもいる〔12〕.癌と診断される腫瘍で は上記の境界悪性成分とともに間質浸潤像がみ られ,浸潤部分では腺管状,篩状などの構造を 示す(図8).内頸部型粘液性腫瘍では間質お よびN胞腔内に多数の好中球がみられることも 特徴的である. 本組織型に分類される腫瘍の多くは境界悪性 腫瘍に相当するが,間質浸潤を示し,腺癌と診 断 さ れ る 症 例 も 少 数 だ が 報 告 さ れ て い る 〔12,13〕.癌の症例においても子宮内膜症の合 併がみられ,Lee らの症例では4例中3例に子 宮内膜症を合併していた〔13〕.自験例では内 頸部型とみなしうる粘液腺癌症例の86%に子宮 内膜症が確認された. まとめ 子宮内膜症の存在診断と異型内膜症,子宮内 膜症との関連が示唆されている類内膜性腺癌, 明細胞腺癌,内頸部型粘液腺癌について,形態 学的な特徴と子宮内膜症との関係について記載 した.近年,これらの病変について分子生物学 的な知見が急速に集積しつつあり,病態の理解 が深まること,治療に新しい展開が開けること が期待されるが,そのような研究も正確な組織 診断の裏付けが必要なことは論を待たないであ ろう. 謝 辞 本稿は第32回日本エンドメトリオーシス学会 シンポジウム「エンドメトリオーシスと卵巣癌」 での発表をまとめたものです.本講演の機会を いただいた,学会長である吉村泰典先生,座長 を務めていただいた片渕秀隆先生,青木大輔先 生に深謝いたします. 文 献

〔1〕Kurman RJ et al. The origin and pathogenesis of epithelial ovarian cancer : a proposed unifying theory. Am J Surg Pathol 2010;34:433−443 〔2〕Fukunaga M et al. Ovarian atypical

endometrio-sis : its close association with malignant epithe-lial tumors. Histopathology 1997;30:249−255 〔3〕Kurman RJ et al. Evaluation of criteria for

distin-guishing atypical endometrial hyperplasia from well-differentiated carcinoma. Cancer 1982;49: 2547−2559

〔4〕McCluggage WG. My approach to and thoughts on the typing of ovarian carcinomas. J Clin Pa-thol 2008;61:152−163

〔5〕Wu R et al. Mouse model of human ovarian en-dometrioid adenocarcinoma based on somatic de-fects in the Wnt/beta-catenin and PI3K/Pten sig-naling pathways. Cancer Cell 2007;11:321−333 〔6〕Mikami Y et al. Basement membrane material in ovarian clear cell carcinoma : correlation with growth pattern and nuclear grade. Int J Gynecol Pathol 1999;18:52−57

〔7〕Kato N et al. Alternate mucoid and hyalinized stroma in clear cell carcinoma of the ovary : manifestation of serial stromal remodeling. Mod Pathol 2010;23:881−888

〔8〕Prat J. Ovarian Endometrioid, clear cell, Brenner, and rare epithelial-stromal tumors. In Robboy SJ, et al eds. Robboy’s pathology of the female re-productive tract. 2nd ed. Philadelphia : Chrchill

Livingstone, 2008

〔9〕DeLair D et al. Morphologic spectrum of immu-nohistochemically characterized clear cell carci-noma of the ovary : a study of 155 cases. Am J Surg Pathol 2011;35:36−44

図8 内頸部型粘液腺癌

篩状増殖をみる.多数の好中球が浸潤し ている.

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〔10〕Rutgers JL et al. Ovarian mullerian mucinous papillary cystadenomas of borderline malignancy. A clinicopathologic analysis. Cancer 1988;61: 340−348

〔11〕Rutgers JL et al. Ovarian mixed-epithelial papil-lary cystadenomas of borderline malignancy of mullerian type. A clinicopathologic analysis. Can-cer 1988;61:546−554

〔12〕Shappell HW et al. Diagnostic criteria and be-havior of ovarian seromucinous(endocervical-type

mucinous and mixed cell-type)tumors : atypical proliferative ( borderline ) tumors, intraepithelial, microinvasive, and invasive carcinomas. Am J Surg Pathol 2002;26:1529−1541

〔13〕Lee KR et al. Ovarian mucinous and mixed epi-thelial carcinomas of mullerian(endocervical-like) type : a clinicopathologic analysis of four cases of an uncommon variant associated with en-dometriosis. Int J Gynecol Pathol 2003;22:42 −51

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