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メソポーラス金属の大細孔径化に成功

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Academic year: 2021

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同時発表: 筑波研究学園都市記者会(資料配布) 文部科学記者会(資料配布) 科学記者会(資料配布)

メソポーラス金属の大細孔径化に成功

- メソポーラス金属の新展開、金属ナノ構造への新たな提案 - 平成20年6月9日 独立行政法人物質・材料研究機構 概 要 1.独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:岸 輝雄)国際ナノアーキテクトニクス 研究拠点(拠点長:青野 正和)の山内 悠輔 若手独立研究者は、大きなサイズの両親媒 性分子1)であるブロックコポリマーの自己組織化によって形成する分子集合体を鋳型と して用い、電気化学的な手法を適用することによりメソポーラス金属の大細孔径化に成 功した。 2.規則的な細孔配列と高い表面積を有しているメソポーラス金属は、金属のみの骨格で あり、従来のシリカ系メソポーラス物質2)では不可能であった電気化学的な幅広い応用 が期待できる。従来のメソポーラス物質の合成においては、数nmから数十nmの幅広い 範囲で細孔径の制御が可能であったが、メソポーラス金属の細孔径は現在のところ 3~4nm程度に限られ、大きな分子のアクセスや物質拡散能の向上を実現するために、メ ソポーラス金属の大細孔化が求められていた。 3.この課題を克服するため、分子設計されたブロックポリマーを自己組織化させること で大きなサイズの分子集合体を形成させ、それを直接鋳型として用いて、精密な電解析 出の制御のもと、白金イオンを還元させた。その結果、今までにない 10nm をこえる大 きな細孔径を有するメソポーラス白金の合成に成功した。 4.大きなメソ細孔は、従来の小さな細孔では対応できなかった大きな分子を取り込むこ とができ、様々な大きなゲスト分子を細孔の金属表面と効率的に電気化学反応させるこ とが可能となる。本技術は白金に留まらず、様々な金属・合金系に適用でき、またブロ ックコポリマーの分子サイズを変えることで、より広範囲で細孔径を制御することがで き、組成・構造の両面から用途にあった電極材料をテーラーメイドでデザインできる。 5.本研究成果は、今春の日本セラミックス協会年会で学術写真賞『優秀賞』を受賞し、 ドイツ化学会『Angewandte Chemie-International Edition』誌に速報(Communication)とし て近日に発表される予定である。

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研究の背景 ナノメータスケールの金属構造体は、金属のバルク状態では発現しないプラズモン現象3) などの特異な現象を発現し、金属をナノレベルで微細加工することにより金属表面積を大 幅に向上させることができ、高活性な電極材料としての応用が期待されている。また、適 切な金属組成やナノ構造を精密に制御することにより、その機能性を操作することが可能 である。金属のナノ構造を構築させる主な方法として、元の鋳型の精密な構造を最終生成 物に転写させるレプリカの手法が挙げられる。この手法を用いると、元の鋳型と最終生成 物の構造は、ネガポジの関係になる。従来は、種々のナノ構造の金属〔例えば、ナノワイ ヤアレー、連続的ナノワイヤネットワーク、ナノ粒子アレー等〕が、メソポーラスシリカ などの鋳型を用いて合成されてきた。 近年、両親媒性分子である界面活性剤を高濃度にしたときに発現するリオトロピック液 晶4)を直接鋳型として用いる方法が提案され、蜂の巣状に充填されたシリンダー状メソ空間 (二次元ヘキサゴナル構造)を有するポーラス金属・半導体が調製されてきた(図1)。こ の材料は、『メソポーラス金属』と呼ばれ、構成金属自体の持つ触媒特性や高い電気伝導性 を利用して、従来のシリカ系メソポーラス物質とは異なる分野(特に、電気化学分野)へ の応用が大いに期待できる。このリオトロピック液晶を用いた合成では、均一な大きさを もつ金属ナノ粒子が連続的に析出することが明らかになっており、ナノ粒子結合からなる 特殊な細孔壁を形成する。この特殊なナノ構造の形成は、分子集合体を鋳型にする際に特 徴的な現象であり、これまで珍しい磁性、フォトニック及び触媒性を示されてきた。 最近、早稲田大学理工学術院の黒田 一幸 教授らと共同で、溶媒揮発法を適用した液晶 テンプレート法(Evaporation-mediated Direct Templating, EDIT)を新たに提案し、様々な形

態の高規則性メソポーラス金属の合成を報告してきた(図1)。揮発性有機溶媒を用いて低 粘性前駆溶液を調製し、溶媒の揮発を経てリオトロピック液晶を形成させた後、電気化学 的手法により金属を析出する手法である。この手法は、有機溶媒を揮発させるのみで高品 質のリオトロピック液晶を簡便に作製することができ、様々な両親媒性分子や金属イオン に適用することが可能である汎用性の高いプロセスとして注目を浴びている。 【EDIT に関する参考文献】

Y. Yamauchi et al., Chemistry - An Asian Journal, 3, 664-676 (2008).

Y. Yamauchi et al., Journal of the American Chemical Society, 130, 5426-5427 (2008). Y. Yamauchi et al., Chemistry of Materials, 20, 1004-1011 (2008).

Y. Yamauchi et al., Chemical Communications, in press (2008). (DOI: 10.1039/B804072A). しかしながら、これまでのメソポーラス金属の細孔径は 3 nm 以下に限定され、多孔空間 ネットワークにおけるゲスト物質の効果的移動が妨げられやすく、その結果メソポーラス 金属の利点を著しく損なう難点があった。もっと大きなサイズの細孔を均一なサイズで形 成し、それらを規則的に配列させたメソポーラス金属は、多孔空間への比較的大きなゲス ト物質などの取込が可能となり、また、それらゲスト物質の取込により引き起こされる容 量変化の効果的緩和も期待できる。

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研究成果の内容 本研究では、孔径大きさが 4nm を越えてもっと巨大に、しかも均一な孔大きさを有する 大細孔径メソポーラス金属を、制御された細孔径で、かつ、簡単に合成する方法を提案す る。具体的には、分子設計された大きなサイズのブロックポリマーを用いて、EDIT を適用 することにより、これまでにない大細孔径のメソポーラス白金を合成した。実験方法とし ては、まず塩化白金酸水溶液にブロックコポリマー、溶媒であるテトラヒドロフランを混 合し、撹拌することで前駆溶液を調製した。この前駆溶液を導電ガラス基板上に塗布し、 溶媒の揮発を経てリオトロピック液晶を形成させた。リオトロピック液晶は、ガラス基板 全面に均一に形成しており、透明性がある黄色を呈していた(図2)。 その後、この形成させたリオトロピック液晶中において精密な電解制御のもと白金を析 出させた。鋳型除去後、球状の白金粒子が得られた。この試料回転させながらTEMにより HAADF(High-Angle-Annular-Dark-Field)-STEM像を 160 枚ほど撮影し、三次元データとし て構築させ電子線トモグラフィー5)を行った(図3)。ここに示すのは、コンピュータ上に 三次元データとして構築された 3D-imagingと、任意の面でスライスした像である。これら の結果、粒子内部まで 10 nmをこえる大きなメソ細孔が形成しており、またメソ細孔同士 は小さな細孔(Small window pores)で連結している新しい金属の構造体であることが明ら かになった。さらに興味深いことに、SEM観察の結果、細孔壁は白金のナノ粒子が凝集し て形成しており(図4)、一つのナノ粒子は白金の単結晶であり、この白金の結晶性はナノ 粒子をこえても保持されていた。電気化学的測定の結果、表面積は 70 m2 /gと市販の白金黒 6)(はっきんこく)のおよそ 2 倍の表面積を示した。 波及効果と今後の展開 規則的な細孔と高い表面積を有しているメソポーラス金属は、金属のみの骨格であり、 従来のシリカ系メソポーラス物質では不可能であった電気化学的な幅広い応用が期待でき る。大きなメソ細孔は、従来の小さな細孔では対応できなかった大きな分子を取り込むこ とができ、様々な大きなゲスト分子を細孔の金属表面と効率的に電気化学反応させること が可能となる。本技術は白金に留まらず、様々な金属・合金系に適用でき、またブロック コポリマーの分子サイズを変えることで、より広範囲で細孔径を制御することができ、組 成・構造の両面から用途にあった電極材料をテーラーメイドでデザインできる。 【発表論文】

Mesoporous Pt with Giant Mesocages Templated from Lyotropic Liquid Crystals Consisting of Diblock Copolymers by Electrochemical Deposition

Angewandte Chemie-International Edition, in press (2008).

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問い合わせ先: 〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1 独立行政法人物質・材料研究機構 広報室 TEL:029-859-2026 研究内容に関すること: 独立行政法人物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 若手独立研究員 山内 悠輔(やまうち ゆうすけ) TEL:029-860-4635 FAX:029-860-4721 E-mail:[email protected]

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【用語解説】 1)両親媒性分子 水に対する相互作用の相反する 2 つの部分を併せて 1 つの分子。 2)メソポーラス物質 均一で規則的な細孔(メソ孔)を持つ物質のこと。例えば、メソポーラスシリカの 粉末は触媒や吸着材料として、薄膜は光学デバイスやガスセンサー、分離膜などとし て、新しい応用が期待された研究が行われている。IUPAC では、直径 2 nm 以下の細孔 をマイクロ孔、直径 2~50 nm の細孔をメソ孔、直径 50 nm 以上の細孔をマクロ孔と 定義している。 3)(表面)プラズモン現象 表面プラズモン共鳴とは金属表面で起こる光エネルギーと金属の電子振動との共鳴 現象のこと。この現象により、例えば金の微粒子は金色に見えず、他の鮮やかな色に 発色する。 4)リオトロピック液晶 液晶状態とは、結晶のようにその分子配列に一定の規則性を保ちながら、液体のよ うに流動性を兼ね揃えた状態をいう。界面活性剤のような両親媒性分子と水などの溶 媒との共存系において、濃度を変えるのみで液晶状態が現れたり、様々な相の変化も おこったりする。これをリオトロピック液晶と呼ぶ。 5)電子線トモグラフィー 透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたコンピュータトモグラフィー。様々な角度から 撮影した試料の投影像(TEM 像)をもとにコンピュータ上で、三次元像を再構成して、 材料の微細な三次元構造を解析する手法。 6)白金黒(はっきんこく) 高い表面積を有している黒色の微粉末の白金であり、市販され電極などに適用され ている材料。

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図1.溶媒揮発法を用いたメソポーラス金属の合成スキーム

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図3.(a)球状粒子の TEM 像、(b)3 次元的に構築された 3D イメージング、 (c)3D イメージングを任意の面でスライスした像

参照

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