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Academic year: 2021

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まえがき

化学のイメージとはどのようなものであろうか? きっとフラス コに液体が入っていて煙がでているような情景を思い描くのではな いだろうか.液体は水などの分子が主役であるが,世の中には例外 がある.たとえば水銀は金属でありながら常温で液体である.では カチオンとアニオンからなる塩はどうであろうか? 通常の塩は固 体で,溶融させるのには高温まで加熱する必要がある.ところが, 室温でも液体状の塩がつくられた.このような液体は 1983 年に Husseyらにより“ionic liquid”と名づけられて今日に至っている. わが国では「常温溶融塩」,「イオン性液体」,「室温イオン性液体」 などいくつかの呼び名があったが,2005 年に文部科学省科研費特 定領域研究 「イオン液体の科学」 が発足した際に筆者らは「イオン 液体」に統一することに決めた.用語の定着にはある程度時間がか かるものだが,ようやく 「イオン液体」 に統一されてきた. イオン液体のサイエンスが発展した歴史は面白い.常温で融解し ている「常温溶融塩」の最初の報告は 1914 年の Walden(ドイツ・ ロストック大学)によるエチルアンモニウム硝酸塩に始まるが,そ の後の 61 年間は何の進展もなかった.1975 年になりコロラド州立 大学の Osteryoung らがピリジニウムおよびイミダゾリウム AlCl4 塩が「常温溶融塩」であることを報告して少し動き始め,1992 年 の Wilkes による 1―エチル―3―メチルイミダゾリウムテトラフルオ ロホウ酸イオンの報告以降にイオン液体の研究が進み出した. 1999年前後から爆発的に発展し,論文数が急増した.これは,ちょ うど,グリーンケミストリーの考えが世の中に広がるのと時を同じ くしている.ユニークな溶解性をもつ液体ということのみならず, 化学の要点シリーズ 【37】巻 イオン液体 日本化学会 編・西川 惠子・伊藤 敏幸・大野 弘幸著 https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320044784

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vi  まえがき 揮発しない,燃えない溶媒で,グリーンケミストリーのコンセプト に合う溶媒として,研究者人口の多い有機合成化学分野で広がっ た.ついで,液体としての性質の面白さで物理化学の分野で研究が 広がり,その後はメインのトピックスが変わりつつも研究分野が拡 大し続け,1999 年から本年までに 10 万報を超える論文が発表され ている.最近では,観点を違えたイオン液体の用途がどんどん広が り,グリーンケミストリーを超える幅広い領域での利用が期待され ている.設計指針の進歩に伴い,機能をもった新しい液体としても 注目を集めるようになった. 本書では,イオン液体の基礎から最前線に至るトピックスまでを 紹介するが,イオン液体という面白い物質群のサイエンスを包括的 に眺めることで,本書がみなさんの研究のヒントになり,常識を覆 すサイエンスの萌芽になれば幸いである. なお,イオン液体の正式名称は長い場合が多い.このため,本文 中ではできるだけ略号で示すようにした.イオン液体の具体的な構 造は本文中でも示しているが,本書で紹介するおもなイオン液体の 略号,名称ならびに構造式をリストにして目次の後の表 1 にまとめ たので参照していただきたい. 2021年 2 月 著 者 一 同 化学の要点シリーズ 【37】巻 イオン液体 日本化学会 編・西川 惠子・伊藤 敏幸・大野 弘幸著 https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320044784

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