2
1.2
解決すべき課題
ソフトウェア開発の現場において,リモートワーク環境下で実施されるレビュー(以後,
オンラインレビューと呼ぶ)に対して様々な工夫(以後,Tips と呼ぶ)が行われている.
Tips にはオンラインレビューの弱みを回避や軽減,つまり弱点克服するものと,オンライ
ンならではの特徴を活かしてこれまで以上の効果や新たな価値を創造するもの,つまり利
点活用するものに大別できる.しかし,これら Tips の共有は充分に図られておらず,各組
織で独自に工夫しているため効率的かつ効果的な改善が実施されているとも言い難い.ま
た,Tips がレビューにどのような影響を与え,その効果がどのように波及し,最終的にレ
ビューをどのように成功に導くのか,そのメカニズムもまだわかっていない.もしそのメ
カニズムが把握できれば,より適切な Tips を選択し,欲しい効果を首尾よく獲得できる可
能性が高まると考えられる.
上記の課題について筆者らは,以下 2 点を軸としたレビュー改善手法を考案することに
より,オンラインレビューのさらなる品質や生産性の向上が可能であると考えた.
・ オンラインレビューにおける弱点を克服するため,あるいは利点を活用するためには
どの様な Tips があり得るかを検討し,活用可能な形で提供する.
・ Tips がレビューの品質/生産性に影響を与えるメカニズムの解き明かし方を提供する.
これらを踏まえて,本研究では以下を解決すべき課題として設定する.
RQ1:収集または考案した Tips の中から必要な Tips を選択し,オンラインレビューに適
用することで狙った効果が得られるか?
RQ2:Tips がレビューの品質/生産性に影響を与えるメカニズムを理解することで,欲し
い効果を得るために最適な Tips を導出することは可能か?
RQ3:提案手法を適用することでオンラインレビューの品質/生産性は改善されるか?
以降,2 章では先行研究の調査結果を示し,3 章では筆者らが提案するレビュー改善手法
を示す.続く 4 章にて提案手法に対する実験と評価考察を行い,第 5 章でまとめを示す.
2.
先行研究
課題を解決するにあたり,リモートワークを前提としたレビュープロセスの改善に関与
する先行事例を調査した.その結果を表 1 に示す.
表 1 先行研究
先行 研究 概要
オプ ティマ イズ・レビ ュー・マッ
プの 提案[1]
得た い効 果に応 じて レ ビ ュ ー の活動 要素 を 最 適化 する ための 手法
であ る「オ プティ マイズ ・レビ ュー・ マップ 法」の 提案.
レ ビ ュ ー プ ロ セ ス の 現 実 的 な 改
善手 段の提 案[2]
CMMI な ど の プ ロ セ ス 評 価 モ デ ル に お い て 能 力 レ ベ ル 0 か ら 1 ま
での 間を ,段階 的活 詳 細 に 分 割する .こ れ に よる 現実 的な改 善手
段の 提案.
通 勤 困 難 な 状 況 下 で の テ レ ワ ー
ク 実 施 を 可 能 と す る 要 因 に 関 す
る考 察[3]
東日 本大 震災後 にテ レ ワ ー ク を導入 ・実 施 し た企 業を 対象に した
イン タビ ュー調 査結 果 か ら の ,通勤 困難 な 状 況下 での テレワ ーク
実施 を可能 とする 要因に ついて の考察 .
上記がレビュープロセス改善,あるいはリモートワークにおける課題の解決という点で
は関連度の高い研究ではあったが,リモートワークとレビューとを関連付けた視点がない
ため,筆者ら研究員が取り上げた課題を直接的に解決するものではなかった.
4
図 2 レビュー成功要因関連図の例
(2)
レビュー成功要因に影響する Tips の検討
次に各レビュー成功要因に対して,どのような Tips があり得るかを検討する.検討
には既知の Tips の収集は勿論,チーム内での新たな考案も必要であるが,初めは筆
者らが作成した Tips を利用するとよい.その一部を表 2 に全体を付録 2 に示す.
表 2 Tips 一覧(抜粋)
No. 名称 影響 を受け るレビ ュー成 功要因
1 建設 的な反 応をお 互いに 伝えよ う 自 分の意 見が伝 わりや すい/ 相手の 意見が 理解しや すい
2 進み 具合を みんな に見せ よう 今 どこの 話をし ている か共有 しやす い
3 目的 や観点 を常に 意識さ せよう 話 が脱線 しにく い/議 論が発 散しに くい
4 サウ ンドを 効果的 に使お う 話 が脱線 しにく い/議 論が発 散しに くい
5 ピン ポイン トで有 識者に 参加願 おう 有 益な指 摘を得 やすい
6 傍聴 人とし て参加 しよう 確 認 ・ 問 い 合 わ せ 時 間 が 減 る / 内 容 を 理 解 す る 時 間 が 減
る/ 修正に すぐ着 手でき る/チ ームの スキル が向上 する
7 ファ シリテ ータを 置こう 発 言しや すい/ 発言が 一人に 偏らな い
8 記録 係を置 こう 議 事録が 取りや すい・ 解りや すい
9 余白 時間を 前後に 作ろう 指 摘 を 前 向 き に 捉 え ら れ る / 修 正 指 示 に 対 し て 前 向 き に
なれ る/レ ビュー イのモ チベー ション が高く なる
10 資料 を事前 に配布 しよう レ ビュー で有益 な指摘 が増加 する
11 小分 けにレ ビュー を実施 しよう レ ビュー が時間 内で終 わる/ 類似欠 陥の作 りこみが 減る
(3)
レビュー成功要因関連との紐付け
各 Tips がどのレビュー成功要因の効果拡大に貢献する
のかを明示するため,上記(1)で作成したレビュー成
功 要 因 関連 図 上 の 各 要 因 に , その 要 因 へ 直 接 影 響 する
Tips を矢印で紐付ける(図 3).これにより後に行う,
実施すべき Tips の選択が容易となる.
図 3 Tips の紐付け例
6
4.
実験と評価
提案する UnReT 法の研究課題への有効性および実際の業務への適用性を評価すべく,筆
者ら研究員 3 名と研究コースの指導講師 3 名の計 6 名を被験者として検証を行った.
4.1 実験手順
実験手順を以下および表 3 に示す.
(1) 実験用に用意した要求仕様書について,Tips を適用しない状態でレビューを実施す
る.レビュー範囲は仕様書内の 1 ページとする.
(2) 続いて同仕様書の次頁に対し,Tips
を適用した状態でレビューを継続す
る.筆者らが独自に調査した結果,
オンライン環境への変化でコミュニ
ケーションに課題を抱えている人が
多い(付録 4)ことから,適用する
Tips はレビュー成功要因「議論が活
発になる」に影響する Tips,具体的
には Tips1「建設的な反応をお互い
に伝えよう」と,Tips7「ファシリテ
ータを置こう」の 2 つとした.
(図 5)
(3) レビュー実施後に定性評価を実施し狙った効果,すなわち対象とするレビュー成功
要因に良い影響を与えたかを 5 段階で評価した(表 4).また,振り返りを実施し,
新たな気づきが得られたかを確認した.なお,実験データが少ないため統計的な分析
の実施は見送った.
表 3 実施内容
実
験 Tips 前提 条件
実施 内容
Tips 適 用なし Tips 適 用あり
1
Tips1
「建 設的な 反応
をお 互いに 伝え
よう 」
① レ ビ ュ ー 対 象 =
交 通 費 精 算 仕 様
書
② レビューイ=3 名
③ レビューア=2 名
(詳 細は付 録 5 を参
照)
仕様 書 2 ペ ージ目
ビデ オ OFF/通 常の反 応
仕様 書 3 ペ ージ目
ビデ オ ON/相槌,頷く ,ジ
ェ ス チ ャ な ど で大 き く 反
応
2
Tips7
「フ ァシリ テー
タを 置こう 」
仕様 書 4 ペ ージ目
画 面 共 有 な し / ビ デ オ
OFF/ファシ リテー タなし
仕様 書 5 ペ ージ目
画 面 共 有 な し / ビ デ オ
OFF/ファシ リテー タあり
表 4 定性評価項目
適用 する Tips 評価 項目 選択 肢
Tips1
「 建 設 的 な 反 応 を お 互
いに 伝えよ う」
自分 の意見 の伝わ りやす さ +2.良くな った
+1.少し 良くな った
0.変わ らない
-1.少し 悪くな った
-2.悪く なった
相手 の意見 の理解 しやす さ
相互 理解の 程度
議論 の活発 さ
Tips7
「 フ ァ シ リ テ ー タ を 置
こう 」
発言 が一人 に偏ら ない
全員 の意見 が拾え る
議論 の活発 さ
発言 のしや すさ
図 5 Tips1 と Tips7 により
影響を受けるレビュー成功要因
7
4.2
実験結果
定性評価の結果を表 5,振り返りで得た意見のうち主なものを表 6,全体を付録 3 に示す.
表 5 定性評価の結果
適用 する Tips 評価 項目 選択 肢ごと の回答 数(名 )
-2 -1 0 +1 +2
Tips1
「 建 設 的 な 反 応 を お 互
いに 伝えよ う」
自分 の意見 の伝わ りやす さ 0 0 1 4 1
相手 の意見 の理解 しやす さ 0 0 1 4 1
相互 理解の 程度 0 0 0 5 1
議論 の活発 さ 0 0 0 5 1
Tips7
「 フ ァ シ リ テ ー タ を 置
こう 」
発言 が一人 に偏ら ない 0 0 0 0 6
全員 の意見 が拾え る 0 0 0 0 6
議論 の活発 さ 0 0 0 3 3
発言 のしや すさ 0 0 0 6 0
表 6 主な意見
適用 する Tips 主な 意見
Tips1
「 建 設 的 な 反
応 を お 互 い に
伝え よう」
・ 相手の態度や目線が見えることで,相手の理解度を把握しやすい.
・ 感情がより伝わる.良い雰囲気がでてきたときに盛り上がり,話が弾みやすい.
・ 1 対 1 ではなく,n 対 n の横繋がりでも対話ができていたため,周囲のフォロー
が入 りやす く話が 広がる .
Tips7
「 フ ァ シ リ テ
ータ を置こ う」
・ 会話に齟齬が生じても,ファシリテータが気付きフォローしてくれるので相互理
解が 深まっ た.
・ ファシリテータが緩衝材となることで,一方的な結論で終わらず,話が落ち着く
とこ ろに落 ち着い た.
・ 空白の時間が生じなかった.
4.3 考察
実験結果を踏まえ,RQ に照らしながら考察を述べる.
RQ1:事前に整備された Tips を必要に応じてオンラインレビューに適用することで,レ
ビューの品質/生産性は向上するか?
→ 実験の結果,レビューの品質/生産性を向上させるレビュー成功要因に対して,良い
影響を与える Tips を適用することで,狙い通りの効果が得られることを確認でき
た.しかし,実験 1 の結果から判るように,期待したほどの効果が得られないこと
もある.チームの状態やオンライン環境の状態などを考慮して,より効果が期待で
きる Tips を選ぶ,または編み出す必要がある.
RQ2:Tips がレビューの品質/生産性に影響を与えるメカニズムを理解することで,欲し
い効果を得るために最適な Tips を導出することは可能か?
→ 最適な Tips を選択できたかの評価までには至っていないが,レビュー成功要因関
連図を作成し,Tips を紐付けて おく ことで,欲しい効果の獲得がより期待できる
Tips を,チームで合意しながら選択することができた.
RQ3:提案手法を適用することでオンラインレビューの品質/生産性は改善されるか?
→ 実験期間の関係上,効果測定までには至れていない.しかし,これまでに実績のな
い Tips であっても参加者全員が前向きに取り組むことができた.試行という位置
付けではあるが,新たな改善のきっかけになることを確信した.
1
付録 1.
レビュー成功要因関連図の作成
以下にレビュー成功要因関連図の作成の流れを示す.
1.1 レビュー成功要因の洗い出し
レビュー成功要因を導出する手掛かりとするため,最初にレビューがオンラインと化し
たことで生じた弱点および利点の洗い出しを行う.洗い出しは関係者を集めてディスカッ
ションをしても良いし,アンケートのような形でヒアリングを実施しても良い.今回,我々
研究チームでは,レビューの 50%以上をリモートで実施している 34 名を対象にアンケート
実施した.アンケート内容を表 1,そこから得られた結果を表 2 に示す.
表 1 アンケート内容
番号 設問 選択 肢
1 事前準 備(時間調 整,場 所確保 ,資料 準備な ど)のしや すさ
1. オ ン ラ イ ン の 方 が 従 来 よ り
も有 利であ る
2. ど ち ら か と 言 え ば , オ ン ラ
イ ン の 方 が 従 来 よ り も 有 利
であ る
3. ど ち ら か と 言 え ば , オ ン ラ
イ ン の 方 が 従 来 よ り も 不 利
であ る
4. オ ン ラ イ ン の 方 が 従 来 よ り
も不 利であ る
2 レビュ ー本番 での発 言のし やすさ
3 発言機 会の均 等さ( 一人に 発言が 偏らな い度合 い)
4 自分の 意見・ 意図の 伝わり やすさ
5 相手の 発言・ 意図の わかり やすさ
6 話が脱 線しな い度合 い
7 時間通 りに会 議が終 わる度 合い
8 議事録 の取り やすさ
9 レビュ ーの疲 れにく さ
表 2 オンラインレビューの弱点と利点
弱点 利点 中立
① 発言し にくい
② 発言が 特定の 人物に 偏りや すい
③ 自分の 意見/意図 の伝わ りにく い
④ 相手の 発言/意図 が判り にくい
⑤ 事前準 備(時間調 整,場 所確保 ,資 料
準備 など)の負 担が少 ない
⑥ 話が脱 線しに くい
⑦ 時間通 りに会 議が終 わる
⑧ 議事録 を取り やすい
⑨ レ ビ ュ ー の 疲
れや すさ
1.2 因果関係からの深掘り
表 2 に示した弱点と利点を足がかりに,レビュー成功要因の導出を行う.導出にはまず,
弱 点 と し て あ げ ら れ た オ ン ラ イ ン レ ビ ュ ー の 特 徴 を , ポ ジ テ ィ ブ な ワ ー ド に 置 き 換 える
(例:発言しにくい→発言しやすい).これは次に各特徴を因果関係で結びつけるが,その
際に表現をポジティブ側に統一することで因果関係を理解しやすくなるためである.
因果関係を結び付けてみた結果,何処にも結びつかない特徴がある場合は,その中間に何
か別の特徴が隠れていると予想し,それが何かを考える.また,因果関係が紐付いた場合
もそれで終わりとするのではなく,その先,更にその先,逆に手前に何があるかを考えて,
思いついたことを図に書き出していく.
こうしてポジティブなワードで書き出されたオンラインレビューの特徴こそがレビュー
成功要因となる.具体的な様子を図 1 に示す.
4
付録 2.
Tips の紹介
表 9 に今回,筆者ら研究員が整理した Tips を示す.
また,各 Tips の具体的な内容を図 5~図 15 に示す.
付録 3.
振り返りで得た意見
実験1および実験2の振り返りで得た意見を,それぞれ表 3,表 4 に示す.
表 3 Tips1(建設的な反応をお互いに伝えよう)振り返り時の意見
Tips
の適 用 対象 者 意見
適用 前
作成 者
ネガ ティブ
・ 反応がないので不安になる気持ちはある.焦る,自分が上手く説明できてい
るの か,先 に行っ ていい のか判 りにく い.
・ 質問してから回答があるまでに,一定の間があった点が気になった.
・ レビューアがすぐ納得するパターンが多い.本当に判っているのか不安.
・ 同時に話し出し,一方が話し出した場合,もう一方は言いたいことを言えた
のか 心配.
ポジ ティブ
・ カメラを気にしなくて,自分が自由に動けるのは逆にメリットだった.
・ 特に不自由は感じなかった.嫌な思いをしたり,どうしたら良いかなど困る
事も なかっ た.
レビ ューア
ネガ ティブ
・ 相手にちゃんと伝わっているのかの確認が必要なのかな?と思った.
・ 作成者とレビューアに上下関係がある場合,突っ込んで聞いてよいのかを
気に してし まう.
ポジ ティブ
・ 説明者の自信のなさが,説明の仕方に表れていた.
適用 後
作成 者
ネガ ティブ
(該 当なし )
ポジ ティブ
・ 顔が見えるのは不安が少ない.
・ 相手の態度や目線が見えることで,相手の理解度を把握しやすい.
・ 説明状況がわかるのでフォローを入れやすい.
・ 前向きな対応は温かみがあり笑顔になる.進めやすい.
・ 感情が伝わると思った.人となりが判りやすい.ちょっとしたことが笑いな
どに 繋がり ,場が盛 り上が る感じ になっ た(つま らない 会議で なくな る).
・ 良い雰囲気がでてきたときに「乗る」という気持ちになった,全体の雰囲気
が良 くなり やすい .
レビ ューア
ネガ ティブ
(該 当なし )
ポジ ティブ
・ 笑顔の対応がよい.話がしやすくなる.
・ レビューアからの伝達内容が伝わっているのだなとわかる.
・ 他の人のうなずきが見えたり聞こえたりすると,自分の考えが支持された
よう な気に なる.
・ 他の人の様子を見ることができると,自分が話し始めるタイミングを掴め
る.
・ 1対1ではなく,n対nの横繋がりでも対話ができていたため,周囲のフォロー
が入 りやす く話が 広がる .
5
表 4 Tips7(ファシリテータを置こう)振り返り時の意見
Tips
の適 用 対象 者 意見
適用 前
作成 者
ネガ ティブ
・ 音が気になった.(机を叩く,何かが擦れる等)
・ 画面が見えていないので,相手の発言を悪い方にしか取れなかった.褒め言
葉も 悪い方 にしか 捉えら れなか った.
・ メンバーのフォローにどのタイミングで入れば良いのか迷った.
ポジ ティブ
(該 当なし )
レビ ューア
ネガ ティブ
・ 周りの連携が取れなくなる雰囲気がよくわかった.
・ 相手が弱気だとイラっとする.
・ マイナスの場ができあがると,ますます不安になる.
・ オンラインで画面なしのときの無音期間は危険だと思う.
ポジ ティブ
(該 当なし )
適用 後
作成 者
ネガ ティブ
(該 当なし )
ポジ ティブ
・ 間に入って拾って貰い,要所々々を振り返って貰えている.フォローして貰
えて 安心で きた.
・ 空白の時間が生じなかった.
レビ ューア
ネガ ティブ
(該 当なし )
ポジ ティブ
・ 緩衝材となることで,話しが落ち着くところに落ち着いた.
→極 端な結 果にな りにく い.一 方的な 結論で 終わら ない.
・ 前向き,受け入れの態度が見えるので,逆にこちらから歩み寄りたくなる気
持ち になる .
ファ シリ
テー タ
・ ある程度仕様を知っている立場だと良いが,全く前提知識がないとファシ
リテ ータは 難しい と感じ た.
6
付録 4.
オンラインレビューの調査結果
SQiP 研究会(36 年度)の研究員全員を対象にアンケート調査を依頼して得られた結果を
図 4,表 5,表 6 に示す.
(有 効回答 数 34)
図 4 オンラインレビューの評価
表 5 オンラインレビューにおける困り事
困り 事
全員 だまっ てしま う時, 司会進 行役に よって は無言 時間が 長くな る.
当社 も,基 本顔な しなの で,表 情,反 応は, かなり わから ない.
レビ ューに 限らず ,本 来は相 手の顔 を見て 呼吸を 合わせ るとこ ろがあ ったか と思い ます.それが 音声
や画 像だけ の信号 になる ことで 空気感 が分か らない ことが ある気 がして います .で すので,もと もと
奥 ゆ か し い 人 に は ど こ か で 意 見 を 求 め て み る と か , フ ァ シ リ テ ー タ と し て 出 た り 入 っ た り し て い ま
す.(果 たして ,それ も良か ったの だろう か?? と思う ことも 多々で す)
阿吽 の呼吸 を使わ ないの で,説 明や意 見が明 確にな りやす い.
困り 事とし ては,通信 負荷の 関係で ビデオ オンが 許可さ れてい ないた め,相手の 表情が 分からず 理解
度が 掴みづ らいと ころが ありま す.
資料 の直前 送付や ファイ ル形式 によっ ては参 照でき ないも の,参照 できな いフォ ルダの 指定があ った
りす ること .
オン ライン の場合 ,ホ ワイト ボード などに ,さ っと手 書きし て議論 すると いった ことが しづらい と思
いま す.ま だ解が ない状 況です .
オン ライン の方が ,理由は 分かり ません が,脱線 しにく く,時間 も守ら れやす いよう に思いま す.た
だ,一方で ,資料 に沿っ た表面 的な議 論で終 わり,深い議 論がで きてい ないの ではと 懸念して います .
チャ ット欄 に関連 情報の URL を貼 り付け て共有 できる 点は便 利だと 思いま す.
紙ベ ースの 資料が 多数あ る場合 に,情 報共有 が難し いと感 じるこ とがあ る.
タイ ミング がわか らず, 発言し にくい .
疲れ る,時間 を決め ても終わ らない .会議室 でやる場 合は,次 の人が 来る場合 は絶対 に時間通 りに終
わる .
社内 で場所 の確保 が難し い.
個室 が足り ない, 周囲の 音が入 る.
特定 の方の 意見に 偏る方 向にな るので ,その 点を是 正した い.
7
表 6 オンラインレビューにおける工夫点
工夫 点
対面 が好き な人も 居るの で小さ い会議 室をと ってハ イブリ ッド会 議をし ていま す.
そう すれば 話好き な人や 対面が 好きな 人は集 まれて 雰囲気 が良く なりま す.
発言 しにく い会議 でも思 ったこ とが自 由に書 き込め るエク セルを 作って 入力し ている .
チャ ットも はじめ 運用し てみた が,偏 りがあ ったた め今は エクセ ルの形 にして いる.
オン ライン レビュ ーにな り,開催場 所確保 の手間 が省け たのは 効率的 だと思 うが,それ に伴い会 議の
頻 度 が 増 え て い る 気 が す る . ト ー タ ル 的 に 見 て オ ン ラ イ ン レ ビ ュ ー を 用 い る 方 が 効 率 的 だ と は 思 う
が, オンオ フのバ ランス をとる ことが 重要か なと感 じてい る.
相槌 を意識 して入 れるよ うにし ている .
相手 の反応 がわか りにく いので ,基本 ゆっく り話す .資料 説明は より抑 揚を意 識.
相槌 の言葉 を頻繁 に発話 ,肯定 的に話 す(特 に音声 のみ).
最初 ,まと めて発 言する とき, 最後は なるべ く顔出 し笑顔 で.
オン ライン レビュ ーでは ,進行 役の役 割がよ り重要 である ように 感じて います .
クロ ストー クが発 生して しまっ た場合 ,収拾 がつか なくな る可能 性があ ると思 います .
そう ならな いよう ,しっ かり進 行して いくこ とが必 要であ ると考 えます .
付録 5.
実験における前提条件の詳細
実験に用いた仕様の属性を表 7,被験者の属性を表 8 に示す.
表 7 レビュー対象の属性
レビ ュー対 象(ペ ージ) 文字 数 図表 の有無
2 ペ ージ目 約 570 なし
3 ペ ージ目 約 830 あり
4 ペ ージ目 約 910 あり
5 ペ ージ目 約 760 あり
表 8 被験者の属性
被験 者 年代 主業 務 経験 年数 レビ ュー実 施頻度 その うちオ ンライ ンで
実施 する割 合
A さ ん 50 代 SPEG 約 30 年 月に 1 回未 満 ほ ぼ 100%
B さ ん 50 代 品質保 証 29 年 週に 1〜2 回 ほ ぼ 100%
C さ ん 40 代 品質保 証 18 年 週に 1〜2 回 100%
D さ ん 50 代 コンサ ル 35 年 月数 回( 以前は 1 日数回 ) 50% 程度
E さ ん 40 代 プロマ ネ 25 年 週 2 回程度 50%程度
F さ ん 50 代 人財育 成 28 年 週 1 回程度 100%
8
表 9 Tips 一覧
No. 名称 影響 を受け る
レビ ュー成 功要因 期待 する効 果 オン ライン におけ る意味
1 建 設 的 な 反 応
を お 互 い に 伝
えよ う
・ 自分の意見が伝わりやすい
・ 相手の意見が理解しやすい
互 い の 意 見 が 尊 重 さ れ た , 安 心 し
て 意 見 を 述 べ る 事 が で き る 場 を 作
る こ と で , デ ィ ス カ ッ シ ョ ン の 活
性を 図る.
・ 対面でのレビューと異なり,オンライン下では表情,声の
トー ン,仕 草など のいわ ゆ るノン バーバ ルラン ゲー ジ が 伝
わり にくい .
・ オンラインに於いては,これらノンバーバルランゲージを
意図 的に用 いる必 要があ る.
2 進 み 具 合 を み
ん な に 見 せ よ
う
・ 今 ど こ の 話 を し て い る か 共 有 し
やす い
参 加 者 全 員 が レ ビ ュ ー の 効 果 と 効
率の 両面を 意識す るよう になる .
・ オンラインでは参加者一人一人が他者から見られている部
分が 限られ る.そし て共有 情報が1画 面に限 られる ため,現
在状 況が把 握しに くく当 事者意 識が薄 くなり やすい .
・ 画面を通して現在状況と進捗・見通しを共有することで当
事者 意識を 喚起し ,参加 者 一人一 人にレ ビュー の効 果 と 効
率の 両面を 意識し てもら う.
3 目 的 や 観 点 を
常 に 意 識 さ せ
よう
・ 話が脱線しにくい
・ 議論が発散しにくい
参 加 者 全 員 が レ ビ ュ ー の 目 的 や 観
点 を 常 に 意 識 す る こ と で , 意 見 の
発散 や脱線 を防ぐ .
・ レビューの目的や観点を最初に合意し,かつ常に画面に表
示し ておく ことで ,レビ ュ ーの目 的から 逸脱せ ず, 最 後 に
目的 を達成 できた か確認 するこ とがで きる.
4 サ ウ ン ド を 効
果的 に使お う
・ 話が脱線しにくい
・ 議論が発散しにくい
音 楽 や 効 果 音 を 鳴 ら す こ と で , レ
ビ ュ ー 会 議 の 雰 囲 気 を 良 く し , 残
り時 間も意 識する ように なる.
・ オンラインは対面でのレビューと異なり,場の雰囲気,温
度感 が伝わ りにく い.緊 張 感を和 らげ, 時間経 過を 知 ら せ
るた め音楽 (BGM)を 効果的 に使用 する.
・ オンラインではオフラインと異なり,意見を述べたい,話
しを 止めた い等々 の際に 挙 手で注 目して もらう 事が で き な
い. 代わり にチャ イム, ベ ル等を ならす ことで 注目 を 集 め
る.
5 ピ ン ポ イ ン ト
で 有 識 者 に 参
加願 おう
・ 有益な指摘を得やすい 有 識 者 の 時 間 を 長 時 間 拘 束 す る こ
と な く , 判 断 や 評 価 が 難 し い 問 題
を有 識者に 判断し て貰え る.
・ 専門的な知見を得るには,その道の有識者に会議に参加し
て貰 うのが 普通で ある.
・ ただしその場合,有識者の貴重な時間を長時間にわたり拘
束す ること となり ,はな はだ効 率が悪 い.
・ オンラインであれば有識者を拘束することなく,必要な局
面に おいて のみ参 加して 頂 き,意 見を伺 うこと が可 能 と な
る.
9
6 傍 聴 人 と し て
参加 しよう
・ 確認・問い合わせ時間が減る
・ 内容を理解する時間が減る
・ 修正にすぐ着手できる
・ チームのスキルが向上する
議 事 録 か ら だ け で は 読 み 取 れ な
い , 指 摘 の 背 景 を キ ャ ッ チ す る こ
と で , よ り 正 し く 指 摘 の 意 図 を 理
解 し , そ れ に よ り 指 摘 に 対 す る 修
正 案 決 定 ま で の リ ー ド タ イ ム 短 縮
を図 る.
・ 一般的なレビューでは,会議室の制約,あるいは会議の進
行管 理の観 点から ,参加 者 は必要 最小限 に限ら れる . そ の
ため 本来は その場 に参加 す べき開 発者や 修正者 は, 代 表 者
が参 加する だけで 全員が 参加す ること はでき ない.
・ 一方でオンラインの場合,参加人数に制約はなく,またマ
イク ・カメ ラをミ ュート し 「傍聴 人」と して参 加す る こ と
で, 会議進 行を妨 げるこ となく 参加す る事が 可能で ある.
7 フ ァ シ リ テ ー
タを 置こう
・ 発言しやすい
・ 発言が一人に偏らない
時 間 内 に 参 加 者 全 員 の 意 見 を 効 果
的に 引き出 す.
・ オンラインでは発言しないと存在感が薄くなり,ますます
会議 に参加 しづら くなる .
・ 参加者に活発な意見を述べて貰うためには,オンラインで
いは オフラ イン以 上にフ ァ シリテ ータと いう役 割が 重 要 と
なる .
8 記 録 係 を 置 こ
う
・ 議事録が取りやすい・解りやすい レ ビ ュ ー 記 録 が 漏 れ な く , 誤 り な
く記 録され る.
・ オンラインでは,記録している状況がわからないため,記
録係 を置き ,記録 状況を 表 示しな がら進 めるこ とで , 記 録
誤り や漏れ がない か,確 認しな がら進 めるこ とがで きる.
9 余 白 時 間 を 前
後に 作ろう
・ 指摘を前向きに捉えられる
・ 修 正 指 示 に 対 し て 前 向 き に な れ
る
・ レ ビ ュ ー イ の モ チ ベ ー シ ョ ン が
高く なる
レ ビ ュ ー 前 後 の 余 白 時 間 ( 正 式 で
は な い オ フ の 時 間 ) に メ ン バ ー と
の ネ ゴ シ エ ー シ ョ ン や フ ォ ロ ー を
行 う こ と で 参 加 者 の 心 理 的 負 担 が
軽減 される .
・ オンラインでは,会議室への移動がなく,開始時と終了時
の余 白時間 を意図 的に作 っ てネゴ シエー ション やフ ォ ロ ー
に充 てる必 要があ る.
・ オフラインでは会議室の移動時間などが自ずと余白時間と
なっ た.オ ンライ ンには そ のよう な時間 がない ため , 意 図
的に 作る必 要があ る.
10 資 料 を 事 前 に
配布 しよう
・ レ ビ ュ ー で 有 益 な 指 摘 が 増 加 す
る
事 前 に 資 料 を 配 布 し 確 認 し て お く
こと で,レビ ューが 効率化 される .
・ 資料の事前配布を得ることで,レビュー前に指摘内容を事
前に 用意で き,レ ビュー の効率 化が図 れる.
・ オンラインでは紙ベースのレビュー※と異なり,レビュー
イが 画面共 有した 範囲に つ いて説 明する ことに なる の で ,
事前 に資料 を入手 し,手 元に置 いてお く意味 は大き い.
11 小 分 け に レ ビ
ュ ー を 実 施 し
よう
・ レビューが時間内で終わる
・ 類似欠陥の作りこみが減る
レ ビ ュ ー を こ ま め に 実 施 す る こ と
で 次 の 効 果 が 期 待 で き る . ① 前 回
の 内 容 を 思 い 出 す た め の 時 間 が 省
け る . ② 早 期 に 誤 り を 指 摘 し て も
ら う こ と で , 以 後 の 作 業 で の 誤 り
防止 できる .
・ オンラインではメンバーが集まりやすいので,レビューを
一度 にやり 切らず 小分け にする ことが できる .
・ オフラインでは時間や会議室の制約上,頻繁に会議を行う
こと が難し いが, オンラ イ ンでは それが 比較的 容易 に 実 施
でき る.