Title
小児期発症腎疾患患者における慢性腎不全移行例の臨床的
検討( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
有元, 克彦
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第960号
Issue Date
1995-03-24
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15299
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氏 名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 有 元 克 彦(岡山県) 博 士(医学) 乙第 960 号 平成 7 年 3 月 24 日 学位規則第4条第2項該当
小児期発症腎疾患患者における慢性腎不全移行例の臨床的検討
(主査)教授折
居 忠 夫 (副査)教授高
橋 優 三 教授 高 見 剛 論 文 内 容 の 要 旨 近年の腎臓病学の進歩と,学校検尿による腎疾患の早期発見は,小児腎臓病治療に著しい進展をもたらしてい る。しかし日本透析医学会の1993年の報告では,この1年間で23,440人が新たに透析療法を導入されており,そ のうち14歳以下で161人が,19歳以下で401人の患者が透析療法を受けている。腎疾患の最も大きな問題は将来の 腎不全への進行であり,多数の症例の中からこのような予後不良例を早期に発見し,適切な治療管理により腎不 全への移行を阻止する事が重要となる。そのためには末期腎不全症例のレトロスペクティブスタディーから悪化 進行例の特徴,その問題点を検討し,今後の診療に還元する事も重要と考えられる。学童期に発見された尿異常 者の中で,末期腎不全に移行した症例は近年減少傾向にあるとされているが,成人期まで尿異常を持ち越す,い わゆるキャリーオーバー例の中から末期腎不全にいたる症例が出現する事が問題となっている。これらの観点か ら,15歳以下の小児期に発症した腎疾患患者についてt 内科領域に至るまでの長期の経過を観察し,慢性腎不全・ 末期腎不全症例の臨床的検討を行った。 【研究方法】 1970年4月から1993年12月までの期間に経験した,15歳以下の小児期に発症した(発見さ.れた)腎疾患患者 1811例を母集団とした。これらの症例のうち,1994年12月現在で,内因性クレアチニンクリアランス(以下Ccr と略す)が70ml/min/1.73Ⅱf以下の腎機能低下を認めた症例は86例であった。これらの症例を対象に腎不全の発 症率,臨床的問題点などについて検討を行った。なお対象とした施設は垂井医学研究所附属病院および国立岡山 病院小児医療センターの2施設である。 【研究結果】 母集団の疾患分類はt 無症候性血尿490例(27.1%),慢性胃炎202例(11.2%),ネフローゼ症候群254例(13.9 %),急性腎炎166例(9.2%),遺伝性腎炎6例(0.3%),紫斑病性腎炎63例(3.5%),尿路感染症and/or腎尿 路異常(UTIand/or congenitalabnormality)606例(33.5%),溶血性尿毒症症候群8例(0.4%),その他の 腎疾患16例(0.9%)であった。なお「尿路感染症and/or腎尿路異常」では,慢性腎孟腎炎,逆流腎症,低形成 腎,閉塞性尿路疾患などをまとめて取り扱った。 これらの症例の内,規在Ccrが70ml/min/1.73nf以下の症例は86例(4.7%)であり,その内,透析導入に至っ てない症例(慢性腎不全症例)が29例(1.6%),既に透析に導入された症例(末期腎不全症例)が57例(3.1%) であった。 全症例での末期腎不全移行率は3.1%であった。疾患別の末期腎不全移行率は,無症候性血尿と急性腎炎では 0%であった。以下,慢性腎炎12.4%,ネフローゼ症候群4.3%,遺伝性腎炎33.3%,紫斑病性腎炎7.9%,尿路 感染症and/or腎尿路異常2.0%,溶血性尿毒症症候群12.5%であった。 (1)慢性腎不全症例 慢性腎不全症例は29例で,男17例,女12例,平均経過観察期間は.12.8±6.9年,現在(1994年12月)の平 137均年齢は17・1±10・5歳であった。またCcr値は12.2∼61.9ml/min/1.73rrfで平均39.7±14.Oml/min/1.73Ⅱfであっ た。 29症例の原疾患分類は,IgA腎症6例,巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)1例,遺伝性腎炎2例で,腎炎 性の疾患は31%であった○一方,逆流腎症,低形成腎,閉塞性尿路疾患などの,尿路感染症and/or腎尿路異 常が17例と多くみられ,非腎炎性の疾患が20例69%と多数を占めた。これら29症例を1980年以前に発症した群 と・1981年以後に発症した群にわけて検討すると,この傾向はさらに明かで,最近の10年前後で腎炎性の疾患 が減少し,非腎炎性の疾患が増加(1981年以後94.7%)していることがわかった。 (2)末期腎不全症例 末期腎不全症例は57例で,男38例,女19例,平均経過観察期間は19.4±7.8年,現在の平均年齢は27.9±9.6 歳であった。 原疾患分類では慢性腎炎25例(IgA腎症9例,FSGS2例,急速進行性腎炎1例,組織不明13例),ネフロー ゼ症候群11例(FSGS6例,先天性ネフローゼ症候群2例・組織不明6例),紫斑病性腎炎5例,遺伝性腎炎 2例で,腎炎性の疾患が43例75・4%と多数を占めた。一方,非腎炎性の疾患は14例24.6%で,そのうち12例は 尿路感染症and/or腎尿路異常症例であった。また1980年以前に発症した症例と,1981年以後に発症した症例 にわけて検討しても,疾患分類に差は認めなかった。 発見動機は,20例35・1%が学校検尿あるいは集団検尿で発見されていた。また偶然の機会に受けた検尿で5 例8・8%が発見されていた○両者を合わせると25例43・9%とはぼ半数は検尿異常で発見されており,学校検尿 や集団検尿の有用性が示唆された。 透析導入までの平均期間は10・8±8・2年・透析導入時の平均年齢は19・8±8・6歳であった。また52例中30例は 16歳以上のいわゆる内科領域で導入されていた。また発症後5年未満で19例が導入されていた。尿路感染症 and/or腎尿路異常では,透析開始時の平均年齢は16.7歳と全症例の平均よりも若年で導入されていたが,こ れらの疾患が多くは先天性のものである事を考えると,腎炎性の疾患よりも進行が遅いものと考えられた。 以上15歳以下の小児期に発症した腎疾患患者18別名を対象として,末期腎不全の発症乳臨刺勺問題点を検 討した。Ccr値が70ml/min/1・73nf以下の症例は86例であった。このうち透析療法に至ってない慢性腎不全症例 は29例1・6%で・末期腎不全症例は57例3・1%であった。86例の疾患分類では腎炎性の疾患が60.5%で多数を占め た0末期腎不全症例では1980年以前も1981年以後も腎炎性疾患が多数を占めたが,末期腎不全予備群と言える慢 性腎不全症例では・1981年以後・尿路感染症・閉塞性尿路疾患,低形成腎などの腎尿路疾患が増加していた。透 析導入までの平均期間は10・8±8・2年であり,透析導入時の平均年齢は19・8±8・6歳であった。また52例中30例は 16歳以上のいわゆる内科領域で導入されており,小児期のみならず内科領域にわたる長期の管理が重要と思われる。 論文審査の結果の要旨 申請者 有元蒐彦は・15歳以下の小児期に発症した腎疾患患者1811名を対象に,腎不全の発症率,臨刺勺問題 点を検討し以下の結果を得た。末期腎不全症例は57例(3.1%)であった。1981年以降末期腎不全予備群といえ る慢性腎不全症例では・尿路感染症,閉塞性尿路疾患・低形成腎などの腎尿路疾患が増加しており,原疾患構成 に変化がみられた。透析導入は52例でそのうち30例は16歳以上で導入されており,小児科のみならず内科領域に わたる長期の管理が重要であることが示された。この研究は小児科学ならびに腎臓病学の進歩発展に少なからず 寄与するところが大きいものと認める。 [主論文公表誌] 小児期発症腎疾患患者における慢性腎不全移行例の臨床的検討 平成7年3月発行予定 岐阜大医紀 43(2):掲載予定 138