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ソメイヨシノとサクラ属野生種との交雑に関する生態学的および遺伝学的研究

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Academic year: 2021

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Title

ソメイヨシノとサクラ属野生種との交雑に関する生態学的

および遺伝学的研究( 内容と審査の要旨(Summary) )

Author(s)

鶴田, 燃海

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(農学) 乙第146号

Issue Date

2016-09-26

Type

博士論文

Version

none

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/55538

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

[1] 氏 名(本(国)籍) 鶴田 燃海(愛知県) 学 位 の 種 類 博士(農学) 学 位 記 番 号 農博乙第146号 学 位 授 与 年 月 日 平成28年9月26日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第3条第2項該当 学 位 論 文 題 目 ソメイヨシノとサクラ属野生種との交雑に関する生 態学的および遺伝学的研究 審 査 委 員 会 主査 岐阜大学 教 授 向 井 讓 副査 岐阜大学 教 授 小見山 章 副査 静岡大学 教 授 山 下 雅 幸

論 文 の 内 容 の 要 旨

鶴田燃海氏の学位論文は、サクラの品種ソメイヨシノが、近隣のサクラ属野生種と交雑 していることに着目し、ソメイヨシノとサクラ属野生種との交雑に影響を及ぼす生態学的 および遺伝学的要因の解明を目的としている。 まず、生態学的要因を解明するため、ソメイヨシノが胚珠親になる場合とソメイヨシノ が花粉親となる場合とに分けて解析した。ソメイヨシノが胚珠親になる場合、ソメイヨシ ノに結実した種子の遺伝分析を行い、ソメイヨシノと交雑した野生種の個体を特定(父性 解析)し、特定された花粉親とソメイヨシノとの空間距離、花粉親の個体サイズ、ソメイ ヨシノとの開花時期の重複期間が結実させた種子数に及ぼす影響を解析した。その結果、 ソメイヨシノを結実させた花粉親の95 %は、ソメイヨシノからおよそ 300 m 以内に生育す る野生種個体であり、ソメイヨシノからの距離が近く、個体サイズが大きく、ソメイヨシ ノとの開花期間の重なりが長いほど、より花粉親となりやすいと推定された。一方、ソメ イヨシノが花粉親となる場合については、染井吉野の周辺に生育するヤマザクラから種子 を採集し、その中でソメイヨシノが花親となった種子を特定し、ソメイヨシノとの距離、 周辺のソメイヨシノの株部密度、開花時期の重複期間との関連性を解析した。その結果、 ソメイヨシノの花粉で結実したヤマザクラの種子の数は、ソメイヨシノとの距離が近いほ どが増加したが、200m 程度以上離れたソメイヨシノからも花粉による遺伝子流動が確認さ れた。さらに、開花時期の重なりにも影響を受け、開花時期の重なりが年変動することに よって交雑範囲も変動すると考察された。 花粉親となった種子の数がヤマザクラとエドヒガンとの間で異なっていたことから種に よってソメイヨシノとの交雑にしやすさ(交雑親和性)に差がある可能性も示唆されたた め、ソメイヨシノに複数の野生種を交配し、花粉管伸長、結実率、実生の生存を観察した。 受粉から 受精までの期間の花粉管伸長では、種間の違いは見られず、サクラ属内で広く 種間の交雑和合性があることが示された。一方、野生種との交雑で得たソメイヨシノの種

(3)

子を発芽させ実生の初期成長を観察した結果、エドヒガンと交雑した場合にのみ、生育不 全による実生の生存率の低下が観察された。このことから、ソメイヨシノと野生種との交 雑には個体間距離、花粉親の個体サイズ、開花時期などの生態学的要因以外に実生の生育 不全を引き起こす遺伝的要因が存在することが明らかになった。 実生の生育不全の原因遺伝子座を探索するため、ソメイヨシノとエドヒガンとの交雑家 系においてソメイヨシノのゲノムのほぼ全領域をカバーする連鎖地図を構築し、実生の生 育不全の原因遺伝子座の探索を行った結果、第4 連鎖群に座乗するマーカーEMPaS13 のご く近傍に、生育不全の原因遺伝子座HIs-1を同定した。このとき、HIs-1座におけるソメイ ヨシノの対立遺伝子his1と、エドヒガン由来の対立遺伝子HIS1の異形接合が、生育不全 を引き起こすと推定した。また、HIs-1と強く連鎖するEMPaS13 座の対立遺伝子の出現頻 度をエドヒガンおよびオオシマザクラの野生個体群で調べ、HIS1 および his1 対立遺伝子 を含むゲノム領域が、エドヒガン、オオシマザクラのいずれから由来したのかを推定した。 その結果、HIS1 はエドヒガン由来であると推定されたが、一方のhis1 はエドヒガンでは 稀であり、かつオオシマザクラでは観察されないが、ヤマザクラの中には比較的高頻度で 存在する対立遺伝子である可能性が示された。この結果は、his1 がソメイヨシノの両親と 考えられているエドヒガンとオオシマザクラ以外の種に由来する可能性を示しており、ソ メイヨシノの起源についても再検討する必要があることを指摘した。 以上、鶴田燃海氏の博士論文では、ソメイヨシノと野生種との交雑に影響を及ぼす生態 的要因と遺伝的要因を明らかにしたものであり、ソメイヨシノの大規模植栽による遺伝的 攪乱を防ぐための基礎となる大変貴重な成果が得られている。

審 査 結 果 の 要 旨

鶴田燃海氏の学位論文は、サクラの品種ソメイヨシノが、近隣のサクラ属野生種と交雑 していることに着目し、ソメイヨシノとサクラ属野生種との交雑に影響を及ぼす生態学的 および遺伝学的要因の解明を目的としている。 まず、遺伝子マーカーを用いてソメイヨシノに結実した種子の遺伝分析を行い、ソメイ ヨシノと交雑した野生種個体を特定し、交雑に影響を及ぼす要因の推定を行った。その結 果、ソメイヨシノを結実させた花粉親の95 %は、ソメイヨシノからおよそ 300 m 以内の野 生種個体であり、ソメイヨシノからの距離が近く、個体サイズが大きく、ソメイヨシノと の開花期間の重なりが長いほど、より花粉親となりやすいと推定された。一方、ヤマザク ラの種子の中ソメイヨシノの花粉により結実した種子の数は、ソメイヨシノとの距離によ り異なり、距離が近いほどが増加したが、200m 程度以上離れたソメイヨシノからも花粉に よる遺伝子流動が確認された。さらに、開花時期の重なりにも影響を受け、開花時期の重 なりが年変動することによって交雑範囲も変動すると考察された。 種によってソメイヨシノとの交雑しやすさが異なることが予想されるため、ソメイヨシ ノに複数の野生種を交配し、花粉管伸長、結実率、実生の生存を観察した。受粉から受精 までの期間の花粉管伸長では、種間の違いは見られず、サクラ属内で広く種間の交雑和合 性があることが示された。一方、野生種との交雑で得たソメイヨシノの種子を発芽させ実

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生の初期成長を観察した結果、エドヒガンと交雑した場合にのみ、生育不全による実生の 生存率の低下が観察された。このことから、ソメイヨシノと野生種との交雑には個体間距 離、花粉親の個体サイズ、開花時期などの生態学的要因以外に実生の生育不全を引き起こ す遺伝的要因が存在することが明らかになった。 実生の生育不全の原因遺伝子座を探索するため、ソメイヨシノとエドヒガンとの交雑家 系においてソメイヨシノのゲノムのほぼ全領域をカバーする連鎖地図を構築し、実生の生 育不全の原因遺伝子座の探索を行った結果、第4 連鎖群に座乗するマーカーEMPaS13 のご く近傍に、生育不全の原因遺伝子座HIs-1を同定した。このとき、HIs-1座におけるソメイ ヨシノの対立遺伝子his1と、エドヒガン由来の対立遺伝子HIS1の異形接合が、生育不全 を引き起こすと推定した。また、HIs-1と強く連鎖するEMPaS13 座の対立遺伝子の出現頻 度をエドヒガンおよびオオシマザクラの野生個体群で調べ、HIS1 および his1 対立遺伝子 を含むゲノム領域が、エドヒガン、オオシマザクラのいずれから由来したのかを推定した。 その結果、HIS1 はエドヒガン由来であると推定されたが、一方のhis1 はエドヒガンでは 稀であり、かつオオシマザクラでは観察されない対立遺伝子である可能性が示された。こ の結果は、his1 がソメイヨシノの両親と考えられているエドヒガンとオオシマザクラ以外 の種に由来する可能性を示しており、ソメイヨシノの起源について再検討する必要がある ことを指摘している。 以上の研究は、ソメイヨシノによる遺伝的攪乱の防止など、サクラ属野生種の保全だけ でなくサクラの種間関係の解明や交雑育種にも応用できる優れた研究成果であり、博士(農 学)の学位にふさわしい研究成果であり,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院 連合農学研究科の学位論文として十分価値あるものと認めた。 基礎となる学術論文 鶴田燃海・石川啓明・加藤珠理・向井譲:ソメイヨシノとサクラ属野生種との交雑範囲 および遺伝子流動に影響する要因の推定.日本森林学会誌 94:229-235,2012 鶴田燃海・王成・向井譲:ソメイヨシノの自家不和合性およびサクラ属野生種との交雑 親和性に違いが生じる時期.園芸学研究 11:321-325,2012

Tsuruta, M. and Mukai, Y. Hybrid seedling inviability locus (

HIs1

) mapped on linkage group4 of the Japanese flowering cherry,

Cerasus

×

yedoensis

’Somei-yoshino’. Tree Genetics & Genomes 11:88(Page11),2015 既発表学術論文

Tsuruta, M., Kato,S., Mukai, Y. Timing of premature acorn abortion in

Quercus

serrata

Thunb. is related to mating pattern, fruits size, and internal fruit development. Journal of Forest Research 16:492-499, 2011

牧村郁弥・鶴田燃海・山崎和久・向井譲.三重県多度イヌナシ自生地における絶滅危惧 種マメナシの訪花昆虫相.保全生態学研究20,197-202,2015

鶴田燃海・向井譲:ソメイヨシノの自家不和合性打破の試みと花粉管伸長に及ぼす影響. 園芸学研究(印刷中)

参照

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