Title
Coronary artery calcification, arterial stiffness and renal
insufficiency associate with serum levels of tumor necrosis
factor-alpha in Japanese type 2 diabetic patients( 内容の要旨
(Summary) )
Author(s)
廣田, 卓男
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第1439号
Issue Date
2009-03-18
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/25316
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与要件 学位論文題目 審 査 委 員 鹿田 卓男(岐阜県) 博 士(医学) 乙第 1439 号 平成 21年 3 月 18 日 学位規則第4条第2項該当
Coronary artery calcification,arterialstiffness and renal insufficiency associate with serum]evels of tumor necrosis
factor-alphainJapanese type2diabetic patients
(主査)教授 湊 口 信 也 (副査)教授 永 田 知 里 教授 石 塚 達 夫 論文内容の要旨 2型糖尿病患者では心血管疾患が生命予後に大きく影響する。また尿中アルブミン増加や腎糸球 体濾過率低下は腎症や心血管疾患の進展に寄与している。近年脂肪組織や腎などから産生される炎 症性サイトカインによって血管炎症が起こり,糖尿病患者における細小血管及び大血管合併症を引 き起こすと考えられ,そのひとつが腫瘍壊死因子-α(以下TNトα)であり,その産生を増加させる 肥満や腎障害を持った2型糖尿病は心血管疾患発症の高リスクと考えられる。 冠動脈石灰化は動脈硬化の早期より起こるとされ,糖尿病患者は非糖尿病患者と比べ2倍多いと される。近年,無症候性糖尿病患者での早期の冠動脈石灰化の検出に多列検出器型CT(以下MDCT) が有用であり,冠動脈石灰化指数(以下CACS)が動脈硬化重症度と相関することが示され,心血管イ ベントの予知指標になると考えられている。しかし,これらの指標とTNF-αとの相互関連は不明で ある。そこで著者らは,2型糖尿病患者における血中TNF一αレベルと冠動脈石灰化,動脈硬化,腎 障害の程度との関係について解析した。 【対象と方法】 2004年11月から2007年10月までに当院受診し同意を得た50歳から69歳まで の2型糖尿病患者200人を対象とした。心血管疾患などの既往,肝硬変,重度の腎症,悪性疾患, 急性期疾患などを有する患者は除外した。
採血は朝食前の空腹時とし,血管の弾力性・硬さの指標にはbrachial-ankle pulse wave
velocity(以下baPWV)を用いた。尿中アルブミンは30mg/日未満(正常),30"300mg未満/日(微量ア ルブミン尿),300mg/日以上(顕性蛋白尿)に分類した。腎糸球体濾過率はMDRD計算式で算出したeGFR を用いeGFR60ml/分/1.73m2以下を腎障害と定義した。TNF-αは高感度ヒトTNF-αキット(R&Dシ ステム社)により測定した。 冠動脈硬化度は16列検出器型MDCTにて撮像した画像を用い,左主冠動脈,前下行枝,回旋枝, 右冠動脈の石灰化を総計しスコア解析ソフト(GE社)にてCACSを算出した。 CACSは正規分布にするためlog(CACS+1)とした。log(CACS+1),baPWVと動脈硬化危険因子,細小 血管合併症,TNF一αとの関係,また腎障害,アルブミン尿の程度とTNF-αの関係につき解析した。 【結果】1,全症例:糖尿病患者は非糖尿病者に比し性別,年齢,BMI,総コレステロール,喫煙, ABIは有意差認めず,空腹時血糖,HbAIc,中性脂肪,収縮期血圧は有意に高値,HDLコレステロー ル,拡張期血圧は有意に低値であった。また尿中アルブミン,baPWV,CACS,TNF-αは有意に高値で あったが,eGFRは両群で差は認めなかった。糖尿病患者においてeGFRはCACS,baPWVと負の相関 関係,CACSとbaPWVは正の相関関係にあった。 2,腎症:糖尿病患者をアルブミン尿の有無,腎障害の有無で4群に分類した。腎機能低下かつ アルブミン尿を認める群は正常群(正常蛋白尿でかつ腎機能低下のない群)に比し糖尿病羅病期間,
-83-中性脂肪,収縮期血圧,網膜症,神経症で有意差を認め,さらにbaPWV,CACSも有意に高値であっ た。しかし腎障害を有するがアルブミン尿を認めない群は正常群に比しbaPWV,CACSは有意差を認 めなかった。 3,TNF-α:先の4群でTNF-αについて検討したところ,アルブミン尿の有無に関わらず腎機能 低下のある群で高値であった。またCACS,baPWVと正の相関,eGFRとは負の相関を示した。 4,危険因子:ステップワイズ多変量解析においてCACSは年齢,喫煙,網膜症,eGFR,TNF-αが, baPWVは年齢,収縮期血圧,網膜症,TNトαがそれぞれ危険因子として採択された。 【考察】 TNF一αはマクロファージからの産生により血管石灰化の進展に関与し,またNOの生物学 的効果を減弱させることによって血管内皮機能を阻害し動脈硬化を進展するとされる。糖尿病患者 に認められる過剰なTNF-αの産生が血管壁の構造的硬化の病態形成に関与する事によって動脈硬 化や血管石灰化を引き起こすと考えられる。 本研究で著者らは,TNトαが糖尿病患者の大血管合併症のみならず,同時に細小血管合併症の進 展にも鍵となる因子である可能性を示した。即ち,糖尿病患者では,アルブミン尿を伴う腎機能低 下群は冠動脈石灰化,動脈硬化度,TNF-αともに高いこと,TNF-αは冠動脈石灰化,動脈硬化度の 危険因子となることを示した。従来の著者らの知見から,TNF-αは冠動脈石灰化,動脈硬化度の予 知予測因子となり得,冠動脈石灰化において腎機能低下と独立した因子であると言える。一方,米 国の報告でも糖尿病患者の30%は網膜症やアルブミン尿なしに腎障害を示すとされ,本研究でも 9%の患者はアルブミン尿を認めない腎機能障害を有し,腎機能正常群と比しTNトαが高値にもか かわらず動脈硬化の程度は同等であった。このTNF-αと動脈硬化進展に伴う病態との解離の背景と して,測定される血中TNF-αの生成部位の差異が推定されるが,詳細は現時点で明らかでない。 本研究は断面的研究であり2型糖尿病患者における細小血管および大血管合併症の進展とTNF-α との関係を明確にするには更なる前向きな研究が必要である。さらに正常アルブミン尿の腎障害患 者における動脈硬化度とTNFTαレベルとの解離や,スタチンなど薬剤による腎機能,TNF-αへの影 響については今後の研究により明らかにしていかなければならない。 【結論】 著者らは,日本人2型糖尿病において,冠動脈石灰化,動脈硬化,腎障害は共に血中TNF-αと相関することを初めて示した。 論文審査の結果の要旨 申請者 廣田卓男は,日本人2型糖尿病において血中TNF-αレベルが冠動脈石灰化,動脈硬化, 腎機能障害と相関することを示した。2型糖尿病において血管合併症は重要な予防と治療対象であ るが,細′ト血管障害と大血管障害の双方にTNF一αが・関連することを示唆したことは,糖尿病による 血管合併症の病態メカニズムを総合的に考える上で有用な知見であり,糖尿病学の進歩に少なから ず寄与するものと認められる。 [主論文公表誌] TakuoHirota,EijiSuzuki,IsamuIto,MasamiIshiyama,ShinobuGoto,YukioHorikawa,Takahiko Asano,MasayukiKanematsu,HiroakiHoshi,JunTakeda:Coronaryarterycalcification,arterial
stiffness andrenalinsufficiencyassociatewith serumlevels oftumornecrosis factor-alpha
inJapanese type2diabetic patients
Diabetes Research and ClinicalPractice82,58-65(2008).