教材との主体的関わりを促す授業づくり
一教師の役割に焦点をあてて一
高度学校教育実践専攻 教 員 養 成 特 別 コ ー ス 山 本 真 悠 子 実習責任教員 実習指導教員 川 上 綾 子 森 康 彦 キーク-FJ
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1 .課題設定の理由 筆者は学部時代「物語教材の演劇的アプロー チの研究一教材「お手紙Jの音読指導を中心に 一」とし、う題目で、卒業研究を行った。「演劇的ア プローチ」とは、作品(物語教材)や登場人物 の理解を深めるために、役割演技を用いて、役 を通して作品を読む手法のことをいう。卒業研 究はこの手法に基づき、役になりきり、声をだ してみたり、動いてみたりするという演劇的な 活動を取り入れた授業計画を試案した。 教職大学院進学後に、「演劇的アプローチJを 用いることでどのような子どもを育てたいのか を改めて検討すると、「物語の世界に浸り、作品 を深く読むことができる子どもJ ということと なり、このことを物語教材だけでなく、すべて の教科に当てはめて考えると、「教材と主体的に 関わり、深く考えられる子どもJが筆者の目指 す子ども像であるということが明らかとなった。 深く考えるということは、与えられた課題を 作業的にこなしたり、ただ正解を探したりする のではなく、教材そのものに興味・関心をもち、 やってみたい、考えてみたいという探究する思 いをもっ子どもを意味している。 このことから筆者は、子どもが教材そのもの に興味・関心をもつことで探究したいという思 いをもつことのできる授業づくりを行うことを 自身の課題とし、 l年次実習(基礎インターン シップ)に向け、「教材との主体的関わりを促す 授業づくりJ を研究主題に設定した。 2. 1年次実習 「教材と主体的に関わり、深く考えられる子 ども」を育てるためには、子どもたちが教材の どのようなところに興味・関心をもつのかを考 えた授業づくりを行う必要がある。そのための 授業設計の方法について検討を行い、 l年次実 習で実践を試みた。また、基礎インターンシッ プの授業実践を経て、児童の実態に合わせた授 業計画や授業実践を行うことができていないと いうことが、自身の一番の課題であると考える ようになった。 l年次の課題を踏まえ、 2年次の実習では、 以下の 2点に留意して、授業設計を行うことと した。 ①「教材の価値 Jr
教材との主体的関わりが達成 された子どもの姿 Jr
方策」の設定 児童の実態に合わせた授業計画や授業実践を 行うことができていないということについては、 特に、筆者が児童の実態をイメージできていな いのではなく、イメージしていない場面がある ことが分かり、それが問題なのではなし1かと思 われた。 そこで、この課題に対する手立てとして、「教 材と主体的に関わり、深く考える」ことが当該 の教材で子どもに実現されるということは具体 的にどのようなことなのか、すなわち「教材との主体的関わりが達成された子どもの姿J を想 定することにする。 また、その教材を通して子どもたちにどのよ うな力をつけることができるのか
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教材の価 値 J)を明確にすること、そして、そのような子 どもの姿が現れるようにするための「方策」を 設定する。 ②活動の絞り込みと比重について考える 活動を詰め込みすぎたり、導入での説明が長 くなることで、児童の活動意欲をそいでしまう 傾向があるため、目標に合わせて活動を絞り込 むことや、どの活動に重きを置くか(比重)に 留意しながら授業計画を作成するようにする。 3. 2年次実習① 前期に行った、第6学年算数科「分数×分数J (2016.5.23)の実践では、基礎インターンシップ の授業実践と比較すると児童の実態を踏まえて いくつかの手立てを考えようとする意識をもつ ようになった。しかし、活動を設定するまでに とどまっており、具体的な場面を想定して手立 てを考えるまでには至っていなかった。 また、この実践を通して自身の新たな課題が 見えてきた。それは、理想、の子ども像を意識す るあまり、目の前の児童の考えを理解すること ができていないということである。 筆者は、「与えられた課題を作業的にこなした り、ただ正解を探したりする授業Jをしたくな いと考え、計算の方法を覚えて答えを出すので はなく、既習の内容や既習の方法を用いて工夫 して課題を解決し、それを説明するということ を児童に求めていた。 しかし、児童にとっては、考え方を説明でき るようになるまでに、考えるための知識を習得 したり、考えるスキルを身に付けたりする必要 があると考えるようになった。 この総合インターンシップ Iの授業実践を終 えて、子どもたちが楽しいと思える授業にした いと強く思うようになった。また、子どもたち と一緒に、自分も授業を楽しみたいと思うよう になった。 そのことから、子どもたちの考えを理解しよ うと努め、自分も子どもたちの学びの輸の中に 入って行って、一緒に考えたり、課題を解決し ようとする姿勢で実践を行うことを優先すべき だと考えるようになった。 そこで、総合インターンシップHでは、教師 と児童との関わりに焦点をあてて実践を行うこ ととした。 具体的には、特に次の点に留意する。 ①児童の実態に即した授業設計 自分の理想の子ども像をもとに授業を計画し てしまうという課題を踏まえ、計画段階では、 子どもたちの生活経験や思考に即した教材設定 や活動の設定を優先し、子どもたちが楽しいと 思える授業づくりを行うようにする。 ②児童とのコミュニケーシヨンを大切にして授 業を進めていく 自分も子どもたちの学びの輪の中に入って行 って、一緒に考えたり、課題を解決しようとす る姿勢で実践を行うために、特に、総合インタ ーンシップ Iで課題だと感じた以下の点に留意 して実践を行う。 机間指導を行う際に、意見交流をする際の見 通しをもつようにすることを意識して児童の考 えを受けとめるようにすること。また、意見交 流の場面で児童の考えを理解することに努め、 児童の考えを取り入れて授業を進めていくよう にする。③活動の絞り込みと比重 引き続き、活動を絞り込んだり、どの活動に 重きを置くかに留意しながら授業計画を作成す るようにする。また、特に導入場面で、より児 童が本時の学習の見通しを立てられるようにす るために、必要な情報を見極め絞り込むように する。 4.
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年次実習② 後期に行った、第 6学年国語科「生活の中の 言葉J(2016. 11.8)の実践について記述する。 (1)単元について 本単元では、生活の中で実際に使われている いろいろな言い回しについて関心をもち、適切 なコミュニケーションを図るために日常よく使 われている敬語の使い方に慣れることや、世代 による言葉の違いを理解することを目指してい る。(
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本時について 本時は、第 l時にあたり、敬語の使い方を理 解し、話す相手の状況や伝える内容に応じた配 慮ある適切な言葉遣いや話し方を心がけること ができるようになることをねらって学習を展開 していく。 (3)授業を行う際の手立て ①児童の実態に即した授業設計 児童の実態を踏まえた授業展開にするために、 キャリア教育の一環として行っている、地域の 商店街で開催予定の 100円商庄街に出庖すると いう活動と関連付け、お客さんと接するときの 場面を設定した。出庖を 11日後に控えた時期に 授業を行うことができたため、お客さんと接す るときの場面を設定することで、実用性を感じ て活動に取り組むことができるのではなし、かと 考えた。 ②児童とのコミュニケーションを大切にして授 業を進めていく 机間指導で、意見交流をする際の見通しをも つために、板書計画で予定している解答が児童 のワークシートに書かれているかを確認するよ うにする。また、児童が発表するときには、児 童の考えを受けとめるため、発表を聞くことに 専念し、ある程度意見を聞き終わった後に、板 書をするようにする。 ③活動の絞り込みと比重 本時は、お庖の庖員になりきって敬語を使っ て話すこと、及び、敬語について復習し、例文 で敬語が使われているところに傍線を引き、ど の敬語にあたるのかを考えることという 2つの 活動を設定した。特に、庖員になりきって敬語 を使って話すという活動に重点を置いて計画を 行った。(
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成果と課題 今回の実践では、児童の実態を踏まえた教材 設定や会話場面の設定を行うことができ、また、 導入場面では児童が本時の学習の見通しを立て られるよう、必要な情報を見極め絞り込むこと ができたと考える。その結果、子どもたちが積 極的に活動を行っていた姿が見られ、筆者の目 指していた楽しい授業に近づけたのではないか と考える。しかし、設定した lつひとつの事柄 がうまく関連付けられなかったことが課題とし て残っている。 また、児童とのコミュニケーションを大切に して授業を進めていくために、前述した 2つの 点に留意して授業を行った。それらについて、 今回の実践では、授業の前半では留意して行動 ができていたが、授業が進むにつれて、時間内 に授業を終わらせなければいけないという焦り から、児童の考えを受けとめることがおろそかになっていった。 5.自己課題の分析 基礎インターンシップ及び総合インターンシ ップ Iを経て、総合インターンシップ Eでは、 教師と児童との関わりに焦点、をあてて実践を行 うこととした。子どもたちの考えを受けとめて、 自分も一緒に授業に参加していくことで、自分 も子どもたちも楽しいと思える授業にしようと いう思いで、実践を行った。その授業計画・実践 のプロセスを通じて、この、楽しいという思い が結果的に、教材に興味・関心をもって取り組 むということにつながるのではなし1かと考える ようになった。 今回の実践を終えて、改めて「教材との主体 的関わりを促す授業づくり」における「教師の 役割Jについて考えてみた。 今、筆者の考える「教師の役割」とは、まず 授業の計画段階で、児童の生活経験や思考に即 した教材設定や活動の設定を行うことで、児童 が教材に興味・関心をもって取り組めるように 工夫することが挙げられる。また、児童の特性 をとらえ、それらを踏まえた活動の設定を行う ことも必要であると考える。 授業実践の段階では、児童の考えを受けとめ てそれを学級全体に広めることで、教師と児童 の問、さらには児童同士でのコミュニケーショ ンが生まれ、教師と児童が一体となって課題を 解決していくことのできる授業ができれば、子 どもたちが教材に対して主体的に関わり意欲的 に活動できるのではないかと考える。 子どもたちが教材に向き合い、主体的に学ぶ 場をつくるために、まず子どもたちの実態を捉 え、それを踏まえた授業を計画すること、そし て、共に考え、共に学ぶ姿勢を大切にしながら 子どもたちが主役になれるよう支援をすること が「教師の役割 Jであると考える。 6.今後の展望 実践研究や 2年間の学びを振り返ることで、 筆者には共通する課題があったということが分 かった。それはまず、児童に対しては、自分が 何かを教えなくてはいけないという心理が働き、 子どもの学びの機会を奪ってしまう傾向にあっ たということである。また、組織の一員として 行動するときには、独りよがりな判断をしてし まい、分からないことを尋ねたり、周りに助け を求めたりすることができなかったということ である。これらのことから、筆者には、自分だ けの思いが先行したり l人で何とかしようとし たりしてしまうという課題があるということが 言える。 教職大学院での学びを通して、このような自 身の課題に気付くことができ、子どもたちに対 しては教師として、他の教職員に対しては学校 組織の一員として、共に考え、共に学ぶ姿勢を 大切にしていきたいと考えるようになった。 大学院入学当初の筆者は、教師として自信を もって子どもたちの前に立てるのかという不安 をもっていた。今でもその不安は消えたわけで はない。しかし、 2 年間の経験を通して、自分 の一番の課題を見つめ、解決しようと試みてき た。そこには、大学院の先生にご指導いただい たこと、実習校の先生から学ばせていただいた こと、そして、子どもたちから教わったことが たくさんある。 教師になった後もたくさんの課題に直面する ことになるだろう。しかし、 2年間学んできた ことを生かして、 lつひとつの課題を乗り越え ていくことのできる教師を目指していきたい。