• 検索結果がありません。

抗生物質耐性結核菌の研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "抗生物質耐性結核菌の研究"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1 (東京女医大誌 第25巻 第11号頁487−489昭和30年11月) 〔綜 説〕

抗生物質耐「性結核菌の研究

東京女子医科大学細菌学教室

教 授 平

ビラ 野 ノ 憲 ノリ 正 マサ

(受付 昭和3Q年10月20日〕

ストレプトマイシン(SM),パラアミノサリ チル酸(PAS)イソニコチン酸ヒドラジット(I NAH)等,抗結核剤が相次いで登場したが,結核 菌はこれ等の薬剤に対して容易に耐性となり,耐 性菌の問題は,学界の重要課題となるに至った。 耐性菌の病原性 私は耐性菌の研究中,たまたま舟橋1と共lrc,

1cc中50γ以上のINAHに対して耐性となつk

結核菌は,著しく弱毒化し,殊にモルモットに対 しては殆んど無毒化することを認めた。 当教室の福永2は任意に数種の人型結核菌と, 1株の痛点結核菌とを選び,試験管内で507以上

のINAH心隔とし,それ等の病原性を検討し

た。 これによると,INAH(507以上)耐性結核菌 をマウスの静豚内に注射した揚合には,注射後5 週及び10週に至っても,病変の軽微なものがあっ た。これ等の弱毒となったと思われる菌株の申に は,接種菌液に於ける生菌数の著しく少V・ものも あっ尭ので,病変が軽微であったのは,そのため であろうとも考えられるけれども,モルモットに 対しては,殆んどすべての耐性菌株が無毒化し, 肺臓,脾臓及び肝臓に肉眼的変化を認めなかった ばかりでなく,培養試験に於ても,肺臓からは培 養しなかったが,脾臓及び肝臓には結核菌を証明 することは出来なかった。実験に用V・た菌株の 内,牛型菌は1株だけであっkが,この菌株はモ ルモットに対してばかりでなく,マウスに対して も,殆んど無毒であった。モルモットに於ては, 局所淋巴腺に菌を証明しただけで,その他の臓器 には認められなかった。 以上の実験によって,結核菌は1cc中に50γ以

上のINAHに対して耐性となると,著しく弱毒

化するようであるが,これを更に明確にするため に,耐性株の方の菌液に於ける生菌数を,原株に 於けるそれよりも多くして,動物に接種し,どん な病変が起るがを検した。 この実験に於ても,耐性株を接種したモルモッ トに於ては,病変が全然認められづ㍉原株を接種: したものに於ては,著明な病変が認めめられた。 しかし,マウスに対しては耐性株も相当の毒性を 有し,培養試験でも脾臓と肝臓から結核菌が証明 された。

INAH耐性株がモルモットに対する毒性を殆

んど失ってV・ると.とは,以上の実験成績から明か であるが,どの程度に無毒であるのか,多量に注 射すれば結核性病変が起るのかどうか,こういう ことを矢Plろうと思って,われわれは耐性株No. 263(二型)の20日培養を,生理食塩水1ccに対 して30mg(1mgに於ける生菌数5×106)を含有 せしめ,これを体重約2009のモルモットの下腹: ’部皮下に0.1cc宛3匹に注射した。その結果は次 のようであった。 3匹とも接種部に強烈な反応が認められ,後こ れが潰瘍若しくは小結節となったが,内臓には全 然病変が認められなかった。淋巴腺も局所のもの だけが腫脹したが深部淋巴腺には異常を認めなか った。 以上の所見から, INAH耐性結核菌のモルモ ‘ットに対する毒性の低下は,著しV・ものがあると 老えられる。 同様のことがわれわれと無畏係に,’イギリスの

Barllett, Bushby and Mitchison,3アメリカの Steenken and Wolinsky,4 Morse, Weiser,

(2)

2

Kuhns, Fusillo and Evans,5 Middlebrook6及 びpeizer, Widelock and Klein7等によつても

報告されて》・る。Steenken and Wolinskyは INAHで治療した患者から耐性菌を分離し,そ れがモルモットに対して弱毒であるごとを証明し た。 耐性菌の生物学的性状 Middlebrook6によると, INAH:耐性結核菌 はカタラーゼ活性を失い,且病原性も弱まってい ると報告してv・る。福永8の実験成績もこれと全 く同様であった。 :Bloch9やMiddlebrook1Gは弱毒菌に於ては Cord形成能が失われていると述べたが,その後 多くの学者の研究はこれを肯定していなV・。福永

がINAH耐性菌のCord形成を検した成績も,

耐性菌とその高曇のCord形成能に著明な差を認 めていない。 われわれが耐性菌を研究している闇に,たまた ま管口をゴム帽で密封した試験管に於ては,IN AH耐性結核菌が甚だしく登育不良であっ%こと を経験したので,福永が自家呼吸に於ける酸素消 費量を検した。それによると耐性菌と原株との間 に湿菌:量当りでは,有意の差は認められなV・が, 生菌数当りでは,H37 Rvの耐性株は二丁の約3 倍を示している。H37 Rvの耐性株だけは培養3 週で菌の長さが,原株のそれの約2倍となったが, これ,が酸素消i費量と関係があるか,どうかは判ら なv・。 耐性菌の抗原性

SM耐性結核菌はわれわれ(平野,長田,井

上11)の研究によると,SMを分解する性質があ る。かかる菌は元来殺菌されるべき薬品に対して 耐性となったばかりでなく,ごれを分解し,発育 状態もさかんであるから,丁丁と較べて何か強力 なものが体内に出来てV・るに違V・なV・。そのもの は抗原性があるであろうから,その抗原は原株の それに比して強力であろうと考え,この問題を長 田と共に研究した。 結核菌を流動パラフィンに浮游せしめ,殺菌し て動物に接種すると,結核菌に対する過敏症及び 抗体の産生が,通常の死菌よりも,著明であるこ とは,夙にCoulaud・2によって唱えられ,後

Saenz,13 Freund, Casals and Hosmeri4及び

Casals and Freund15等によつて実験され,わ

が国1(:去ては,岡16,岡及び山田17,山田】8,梶 原19,二部20,山田21等によって追求された。わ れわれ(平野,長田22・23)はこの事実を応用し て,SM耐性結核菌とその原株(強力菌)とを別 々に流動パラフィンに浮游せしめて殺菌し,これ 等をマウス及びモルモットに接種:し,一定期間の 後,これ等の動物を強力菌で攻撃した。またBC

GとSM耐性BCGとの抗原性を比較するため

に,エ群のモルモットには:BCGを,他の群には

SM耐性BCGを接種し,一定時日の後山群にツ

ベルクリンを注射してその反応を検し,また強力 結核菌を接種して両群の抗原性を比較した。 その結果,流動パラフィンに浮游せしめた耐性 菌の抗原性は,原点のそれよりも強いと考えられ

る成績を得,またBCGとSM耐性とBCGの抗

原性の比較実験では,SM耐性BCGを接種した

モルモットに於ては,BCGを接種した動物に於 けるよりも,ツベルクリン反応が概して早く且つ

強く現れ,またSM耐性BCGはその原煮たるB

CGよりも抗原性が強いという結論に到達した◎

同じような考えから,INAH耐性牛型菌とB

CGとの抗原性を比較した実験(平野,中西,福 永24)に於ても,同様の成績が得られた。 以上の成績から,抗生物質耐性結核菌の抗原性 は,原株のそれよ1)も強いということは,ます確 からしV’・ 。

わ彫しわれ.とは:無関{系にHobby, Lenert and

Auerbach25もINAH対性牛型菌(Va116e株)

の抗原性をBCGのそれと比較して,全くわれわ れと同様の成績を得ている。 以上述べたことを要約すると次のようになる。

50γ以上のINAH耐性結核菌はモルモットに対

しては殆んど毒性を失っているが,マウスに対し て未だ保たれている。生物学的性状としてはカタ ラーゼ活性が消失する。免疫学的には耐性株の抗 原性が原株のそれよbも強いとbうことは注目す べぎことと思う。 本稿は昭和30年5月束:京女子医科大学圏点例会に於て 述べたものy大要である。 文 献 1, 軍里予, 舟橋:東京医事新誌 70, 87エ (昭23) 2,福尿:東京女医二二25,/53(昭30)

3, Barnett, M., Bushby, S. R. H. and Mitc− hison, D. A.:Brit. J. Exp. Path. 54,

(3)

3

’568, (1953) ,

4, Steenken, . W., and Wolinsky, E.:Am.

Rev. Tuberc. 68, 54,8, (1953)

s, Morse, W, C., Wbiser, O. L., Kuhns, D. M;, FusMo, M. C, and Evans. J. R.: Am.

Rev. Tuberc., 69,・4.64, (1954)

6, Middlebte6k, G.:Am.. Rev. Tuberc. 69,

’471, (1954.)

7, Peizer, L. R., Widelock, D., and Klein, S.

Am. Rev. Tuberc., 69, .1022, (1954)

8,.福豪:東京女医大誌25,319,(昭30)

9,Bloch, H.:工Exp. Med.,91.,197,(1950)...

10, Middlebrbok, G. : Bull. N. Y. Acad. Med.,

Ren6 J. Dubos, Bacterial and Mycotic Infections of Man,2nd Editionによる。

1i,平野,長田,井上;医学と生物学,20,1.74

(昭26)

12, Coulaud, E.:C.ompt. rend. de la Soc. de.

biol., 119, 368, (1935)

13, Saenz, A.:Compt. rend. de.1’a Soc. de biol.

129, 870, (1935)

14, Freumd:. J. Cmpsals, 」, and HOsmer, E. P. :

?roc..Soc. Exp. Biol. and Med., 37, 509,

(1937) ・

15,Casals,.」. a皿d.Freilind,3.:J. Irnmunol.,

36;. 399,’ (1939) . 16,岡:抗酸菌病研究雑誌2,1,(昭22) 17,岡,山田;抗酸菌病研究雑誌3,53,(昭23) 18, 山日1.:抗酸菌研究朶佳誌4, 59, (日召24) 19,梶原,抗酸菌研究雑誌7,48,(昭26) .20,.阨煤F綜合研究結核研究委員会予防接種科会 (昭27) 21,山田:医学研究22,.69,(昭27) 22,平野,.長田:日本細菌学雑誌8,337,(昭28) 23, 軍璽予, 長田: 日本豪田菌学染佳誌8, 743, (日召28) 24,準野,申西,福tt:第6回日本細菌学会関東麦: 部例会(昭29)

25, Hobby, G. L., Lencert, T. F., and Auer− bach, O.:Am. Rev・. Tuberc. 70, 527

(1954)

参照

関連したドキュメント

ƒ ƒ (2) (2) 内在的性質< 内在的性質< KCN KCN である>は、他の である>は、他の

詳細情報: 発がん物質, 「第 1 群」はヒトに対して発がん性があ ると判断できる物質である.この群に分類される物質は,疫学研 究からの十分な証拠がある.. TWA

 スルファミン剤や種々の抗生物質の治療界へ の出現は化学療法の分野に著しい発達を促して

しかしながら生細胞内ではDNAがたえず慢然と合成

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しない こと。動物実験(ウサギ)で催奇形性及び胚・胎児死亡 が報告されている 1) 。また、動物実験(ウサギ

 リスク研究の分野では、 「リスク」 を検証する際にその対になる言葉と して 「ベネフ ィッ ト」

本論文での分析は、叙述関係の Subject であれば、 Predicate に対して分配される ことが可能というものである。そして o

生活のしづらさを抱えている方に対し、 それ らを解決するために活用する各種の 制度・施 設・機関・設備・資金・物質・