141 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(42) リヨウ ヒデ キ(昭和30
医学博士 乙第1041号平成元年9月22日
学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者) 膵嚢胞性病変の臨床病理学的研究 (主査)教授 羽生富士夫 (副査)教授 笠島 武,福山 幸夫論 文 内 容 の 要 旨
目的 近年の画像診断の進歩に伴い,小さな膵嚢胞性病変 が発見され,また切除される機会が増加した結果,こ れまでの膵嚢胞に対する概念や分類は一変したといえ る.これに加え,臨床の場では非腫瘍性と腫瘍性との 鑑別,さらには良悪性の鑑別が問題となってきた.本 論文はいわゆる仮性嚢胞(外傷や膵炎,癌の閉塞に続 発するもの)を除く膵嚢胞性病変について,鑑別診断 の指標を得るべく検討を行った. 対象と方法 東京女子医科大学消化器外科学教室で1987年までに 経験した膵嚢胞切除例21例を対象とした.年齢は29歳 から83歳(平均58歳),男女比1:0.8.内視鏡的膵管 造影あるいは切除標本の膵管造影で得られた所見,切 除標本の肉眼所見,Hematoxylin Eosin染色による組 織診断をもとに,分類を試み,臨床的病理学的検討を 行った. 結果 1.膵嚢胞性病変21例は貯留嚢胞6例,嚢胞腺腫10 例,嚢胞腺癌5例に分類され,嚢胞腺腫は上皮の性状 から,粘液型嚢胞腺腫9例と漿液型嚢胞腺腫1例とに 二分し得た. 2.粘液型嚢胞腺腫(9例)は嚢胞形態から,巨大嚢 胞型(4例),主膵管型(2例),分枝膵管型(3例) の3型に分類した. 3.貯留嚢胞,嚢胞腺腫,嚢胞腺癌の比較検討 1)嚢胞腺腫と嚢胞膝癌は全例臨床症状を有したが, 貯留嚢胞の6例中2例は無症状であった. 2)嚢胞形態分類から嚢胞腺癌と貯留嚢胞をみると, 嚢胞腺癌は全例巨大嚢胞型を示し,貯留嚢胞は6例中 5例が分枝膵管型,!例が巨大嚢胞型の類似型であっ た. 3)主膵管の拡張や粘液透亮像が著名な病変は粘液 型嚢胞腺腫(5例)であった. 4)嚢胞壁内野への肉眼的乳頭増殖を示す病変は粘 液型嚢胞腺腫(5例)か嚢胞腺癌(4例)であった. 5)嚢胞肝が3cmより大きい病変は粘液型嚢胞腺腫 (6例)か嚢胞腺癌,3cm以下は嚢胞腺腫(4例)か貯 留嚢胞であった. 6)漿液型嚢胞腺腫は画像上充実性を示し,粘液型嚢 胞性病変との鑑別は容易であった. 考察 膵嚢胞の病理学的概念や分類が混乱している現状に おいて,本論文では限局嚢状に拡張する病変を広く嚢 胞と定義し,嚢胞形態を反映し,臨床にも応用可能な 分類を試みた.鑑別診断上とくに問題となる粘液型嚢 胞性腫瘍(粘液型嚢胞腺腫と嚢胞腺癌)は症状を有し なおかつ,D形態が巨大嚢胞型か主膵管型,2)著名 な主膵管の拡張や粘液透亮像,3)壁内腔への肉眼的乳 頭増殖のいずれかを特徴とした.このうち主膵管型の 形態と2)の条件を示すものが良性であることを除け ば,良悪性の臨床的鑑別はでぎなかった.また嚢胞径 3cmを境に癌の有無を大別することが可能であった. 結論 仮性嚢胞を除く膵嚢胞の,嚢胞形態に関して著者が 試みた分類と,膵管像,乳頭増殖,嚢胞径を総合的に 判定することは鑑別診断や治療指針の決定に有用と考 えられた. 一743一142