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エマージング マーケット マンスリー 1 年 月号 債務増加は誇張であり ギリシャ債務危機の再現は杞憂か もっとも 前述の新政権による政府債務の定義が広すぎるのも事実です 一般的な財政統計では 保証債務は偶発債務として認識され 政府の直接債務には含まれません 政府は従来より保証債務の残高を公表してお

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Academic year: 2021

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※「エマージング諸国」とは、アジア、中南米、東欧・ロシアなどの新興諸国を指します。 *注)本稿は、「アジア・マーケット・マンスリー」からの転載です。

経 済 調 査 室

【マレーシア】 徐々に明らかになる新政権の財政政策~政権交代後のリンギ相場を考える ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1ページ

【メキシコ】 NAFTA再交渉は米中間選挙後に持ち越しの見込み、7月1日の選挙に注目・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7ページ

【エマージング・マーケット・ウォッチ】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9ページ

【マレーシア】 徐々に明らかになる新政権の財政政策~政権交代後のリンギ相場を考える

*

【図1】 民間消費は底堅く拡大したものの、固定資本投資が急減速(右)

 新政権が「前政権下で発生した多額の政府債務」を公表

出所)マレーシア統計局、CEIC 出所)マレーシア統計局、CEIC マレーシア・リンギ相場が堅調です。同通貨は年初より対米ドルで+1.8%上昇する など、世界的な新興国からの資本流出や予想外の政権交代に伴う不透明感にもかか わらず底堅く推移。新政権による巧みな初期動作が、建国後初の政権交代による不 安感に伴うパニック売りを抑え込みました。一方、新首相が「前政権が作った多額の 政府債務」が判明したと発言する一方、新政権は選挙公約に基づく減税や歳出拡大措 置に着手するなど、財政悪化と信用力低下に関わる懸念は拭えません。新政権の下、 リンギは今後も底堅く推移するのか。本稿では、上記の政府債務問題や新政権の政 策による財政悪化の可能性について分析し(1-3頁)、景気物価状況(3-5頁)と金融政策 動向を概観した上で(5-6頁)、今後のリンギ相場の動向について考察します(6頁)。 首相就任より12日後の5月21日、マハティール首相はマレーシア政府の負う債務は 約1兆リンギと、従来公表されていた6,868億リンギを大きく上回ることが判明したと 発言。新政権が前政権による財政統計の粉飾の事実を公表して始まった2009年のギ リシャ債務危機の連想も浮上し、海外投資家の間に動揺が広がりました。ナジブ前 首相は、上記の公表を「金融市場をいたずらに動揺させ、格付会社や投資家の信認を 損ねるもの」と非難。これに対して、リム財務相は、5月24日に1兆リンギの負債の内 訳を公表し、新政権は「黒いものを黒いと言っただけ」であると反論しました。財務 相の声明によれば、2017年末時点の政府債務の6,868億リンギ(GDP比50.8%) に加え、 政府の保証債務のうち保証履行の可能性が高いもの(保証先の債務返済能力の低いも の)が1,991億リンギ、官民連携型(PPP)の開発計画に対する政府のリース支払い債務 2,014億リンギが存在。これを合計すると1兆873億リンギ(GDP比80.3%)となります (図3左)。同声明は、多額の政府債務という厳しい現実を直視しその解決に向けて断 固として取組めば、財政状況を改善することが可能になるであろうと訴えました。 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 2008 2010 2012 2014 2016 2018 民間消費 在庫投資 注) 直近値は 2018年1-3月期 (%) 実質GDP前年比と寄与度(四半期) 固定資本 投資 純輸出 政府消費 実質GDP (年) -15 -10 -5 0 5 10 15 2008 2010 2012 2014 2016 2018 実質GDP成長率(四半期) (%) 前期比年率 (棒: 季節調整済) 前年比 (線) 注) 直近値は 2018年1-3月期 (年) -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 2008 2010 2012 2014 2016 2018 (%) 鉱業 製造 実質GDP(部門別)の前年比(四半期) 注) 直近値は 2018年1-3月期 (年) 建設 サービス 農林漁業 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 35 2008 2010 2012 2014 2016 2018 建設 注) 直近値は 2018年1-3月期 (%) 実質固定資本投資前年比と寄与度 設備等 総投資 (年)

【図2】 サービス部門は堅調に拡大した一方、建設や農林漁業が鈍化(右)

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 債務増加は誇張であり、ギリシャ債務危機の再現は杞憂か

【図3】 「前政権の作った隠れ債務」ではなく、単なる債務定義の拡大(左)

【図4】 新政権の公約には歳出拡大や減税など財政赤字拡大要因が多数

 懸念すべきは、新政権の財政政策による信用力の悪化

出所)希望同盟(PH) “Baku Harapan: Rebuilding our Nation Fulfilling our Hopes”

もっとも、前述の新政権による政府債務の定義が広すぎるのも事実です。一般的な 財政統計では、保証債務は偶発債務として認識され、政府の直接債務には含まれませ ん。政府は従来より保証債務の残高を公表しており(図3右)、今回新たな債務が発見さ れたわけではありません。新政権は、政府債務の定義を拡大することによって、前政 権が多額の隠れ債務を負っていたかのような印象を与えたものとみられます。 「多額の政府債務の存在が明らかに」との報道を受けて、投資家の間には政府の格付 け(長期・外貨: A3/A-)の引下げへの懸念も浮上。しかし、格付会社が従来よりその存在 を知る偶発債務を理由に格下げを行うとは考えられません。もし、今後格下げがある とすれば、それは新政権の拡張的な財政政策が財政収支や財政構造を悪化させた場合 に起こるでしょう。後述するとおり、新政権の公約は財サービス税(GST)の廃止や燃料 補助金の復活など、歳入の減少や歳出の増加を伴うものを含みます(図4)。新政権によ る唐突な政府債務定義の拡大は、今後起こりうる格下げや、財政悪化を防ぐために行 われるであろう歳出削減等に伴う痛みは「前政権による債務拡大のせい」という印象を 有権者に与えるための戦術である可能性も否定できないと考えられます。 出所)マレーシア財務省、バンク・ネガラ・マレーシア(BNM)、CEIC 新政権による財政措置に伴う財政構造悪化の懸念は拭えません。5月16日、政府は選 挙公約に従って財サービス税(GST)の廃止に着手。法律を改正しGSTの税率を従来の 6%より6月1日以降0%とする方針を公表しました。GSTによる歳入減少を補うために 復活する売上・サービス税(SST)は、9月より導入されるものの(5月30日に公表)、実際 の徴税は11月以降となる見込みです。政府の試算では、税制変更による歳入の減少は 170億リンギ(GDP比1.2%)。GSTが供給網の中で付加価値が発生する毎に課税を行うの に対し、SSTは生産と流通の一時点のみで課税。このため、前者の方が課税基盤が広 く安定的な税収を生みます。GST導入前のSSTによる年間の歳入はGDPの約1.5%に対 してGSTは3%前後でした(図5左)。税制変更に伴って家計の消費行動も変化するとみら れ、上記政府試算による減収幅はGDP比1.4%まで拡大する可能性が高いでしょう。 政府は、燃料の小売価格(図6右)に関して、今年末までガソリン(RON95)を1リッター 2.2リンギ、軽油を同2.18リンギに固定し、プレミアム・ガソリン(RON97)は市場価格連 動を再開すると公表。政府試算による補助金の増加額は30億リンギ(同0.2%)であるも のの、現状の原油価格が続けば歳出増加額は同0.4%程度まで拡大するとみられます。 就任100日以内に実現 就任5年以内に実現(主要項目) 財サービス税(GST)の廃止等生活費の抑制 政治行政制度の改革 燃料補助金の復活(燃料小売価格の抑制) 最低賃金を漸進的に月1,500リンギまで引上げ 大規模農場(FELDA開発)移住者の債務免除 低所得家計向け現金支給(BR1M)の継続 専業主婦向け従業員積立基金(EPF)の設立 公立大学の学費の免除 最低賃金の引上げと地域差の是正 外国人労働者数の制限 低所得者による学生ローン返済の猶予 通貨リンギの安定化 汚職疑惑に関する調査委員会の設立 有料道路運営権の見直し 小型車輸入関税の引下げ 首相府予算の削減 低所得家計の民間医療費補助制度の導入 開発予算の半分を低所得州に配分 外国資本による大型開発計画の見直し 低所得層向け住宅を10年間で100万戸供給 サバ・サラワク州との合意(1963年) につき協議する特別委員会の設立 希望同盟(PH)による選挙公約の概要 0 10 20 30 40 50 60 70 80 2000 2003 2006 2009 2012 2015 広義政府債務のGDP比(四半期) (%) 注) 直近値は2017年10-12月期 (年) 保証債務(b) 政府債務(a) 広義債務 (a+b) 債務額 GDP比 (億リンギ) (%) (1) 政府債務 6,868 50.8 (2) 政府保証債務 1,991 14.7 Danainfra Nasional Bhd 422 3.1 Govco Holdings Bhd 88 0.7 Prasanara Malaysia Bhd 266 2.0 Malaysia Rail-link Bhd 145 1.1 1MDB 380 2.8 その他 690 5.1 (3) PPP向けリース債務 2,014 14.9 総合計 10,873 80.3 債務内訳 政府債務(現政府による定義) 注)保証債務は、保証履行の可能性が高い(保証先 の信用力低い)もののみを記載

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 今年の財政赤字は小幅拡大でも、財政構造悪化が懸念

【図5】 新政権の政策によって財政赤字のGDP比は3.1%程度まで拡大か(右)

【図6】 前政権が削減した補助金支出(左)、据置かれる燃料小売価格(右)

 格付け会社は見通しをネガティブに変更し様子見か

出所)バンク・ネガラ・マレーシア(BNM)、マレーシア財務省、CEIC、Bloomberg GST廃止に伴う歳入減少と燃料補助金歳出の増加による財政赤字の拡大を相殺する ため、政府は、石油関連歳入や国有企業の配当の積増しによる歳入強化(104億リンギ、 GDP比0.7%)や、開発プロジェクトの見直しと縮小による資本歳出の削減(100億リンギ、 同0.7%)を行う方針です。ブレント原油価格は5月末時点で1バレル77.59ドルと、前政 権による予算案前提の同52ドルを大きく超過。上記の歳入強化が達成される可能性は 高いでしょう。政府は既に前政権の始めた大型インフラ開発を凍結する方針を公表。 景気の下押しというコストを払いつつ、上記の歳出削減も実施されるとみられます。 政府の試算によれば、今年度の財政赤字は401億リンギでGDP比は2.8%と前政権の予 算案と同水準(図5右)。しかし、前述した通りにGST廃止による歳入不足額の上振れと 燃料補助金に伴う歳出増加額の上振れが生じた場合、赤字は同3.1%前後まで拡大する 見込みです(図5右)。この程度の財政赤字の拡大であれば、信用力の低下に伴う格下げ を懸念することは不要と思われます。もっとも、一連の措置が財政構造を悪化させる のも事実です。課税基盤の広いGSTを廃止し、変動の大きい石油関連収入への依存度 を高めたことにより、前政権が強化した財政構造は再び不安定なものとなりました。 出所)バンク・ネガラ・マレーシア(BNM)、マレーシア財務省、CEIC また、今回固定した燃料の小売価格を今後引上げることが政治的に可能かは疑問で す。今後も国際燃料価格の上昇が続けば、補助金歳出は拡大を続けることになるで しょう。大手格付け会社は、同国格付けを直ちに引下げはしないものの、格付け見通 しを「ネガティブ」に変更した上で、現政権が来年度以降に歳入強化や歳出の削減を 行って財政を安定化させられるのかを見極めようとする可能性が高いと考えられます。 足元では、景気の勢いがやや鈍化。5月17日公表の1-3月期の実質GDPは前年比+5.4% と前期の+5.9%より減速し、市場予想(Bloomberg集計の中央値)の+5.6%を下回りました。 一方、季節調整済みの前期比年率は+5.6%と前期の+4.2%より加速しました(図1左)。需 要側では、民間消費が好調な一方、固定資本投資や政府消費が急減し、内需(在庫投資 を除く)の寄与度は+3.8%ポイント(pt)と前期の+5.7%ptを下回り、在庫投資も▲2.5%pt と前期の+0.1%ptより反落。成長鈍化を和らげたのは、総輸入の低迷に伴う純輸出の寄 与度の改善でした(図1右)。民間消費は前年比+6.9%と前期の+7.0%よりやや鈍化しつつ 好調。雇用所得状況の改善(図7)や家計向け融資の伸び等に加え(図8左)、総選挙前の2 月に前政権が実施した低所得家計向けの現金給付(BR1M給付)などが背景とみられます。 年度 2015 2016 2017 2018 2018 2018 単位: 億リンギ 実績 実績 改定見込 前政権 新政権 当社予想 総歳入(a) 2,191 2,124 2,253 2,399 2,333 2,310 税収 1,654 1,693 1,802 1,916 1,800 1,777 内)石油関連 116 84 109 114 168 168 総歳出(b) 2,563 2,508 2,652 2,797 2,734 2,764 経常歳出 2,170 2,102 2,199 2,343 2,380 2,410 内)利払い 243 265 289 309 - - 内)補助金 273 246 231 265 295 325 資本歳出 393 406 453 454 354 354 財政収支(a-b) -372 -384 -399 -398 -401 -454 GDP比: % 総歳入(a) 18.9 17.3 16.8 16.6 16.1 16.0 税収 14.3 13.8 13.4 13.2 12.4 12.3 内)石油関連 1.0 0.7 0.8 0.8 1.2 1.2 総歳出(b) 22.1 20.4 19.7 19.3 18.9 19.1 経常歳出 18.7 17.1 16.4 16.2 16.5 16.7 内)利払い 2.1 2.2 2.1 2.1 - - 内)補助金 2.4 2.0 1.7 1.8 2.0 2.3 資本歳出 3.4 3.3 3.4 3.1 2.4 2.4 財政収支(a-b) -3.2 -3.1 -3.0 -2.8 -2.8 -3.1 中央政府予算(年度: 1月~12月) 0 2 4 6 8 10 12 14 16 2000 2003 2006 2009 2012 2015 中央政府の義務的歳出(四半期) (%) 公務員 給与等 補助金 利払 注) 4四半期移動累計のGDP比 主要歳出項目のみ 直近値は2017年 10-12月期 (年) 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 2.6 2.8 3.0 3.2 2010 2012 2014 2016 2018 ガソリン小売価格(日次) (リンギ/リッター) ガソリン (RON95) プレミアム・ガソリン (RON97) (年) 注) RON (Research Octane

Number)は、ガソリンの オクタン価の指標 直近値は2018年6月6日 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 2000 2003 2006 2009 2012 2015 中央政府歳入のGDP比(四半期) (%) その他歳入 直接税 売上・サービス税 注) 4四半期移動累計 直近値は2017年10-12月期 (年) GST (財サービス 税)

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 民間消費が堅調な一方で固定資本投資は鈍化

【図7】 低下する失業率(左)、上昇する製造業の賃金伸び率(右)

【図8】 家計向け融資の伸びが加速(左)、資本財の輸入は鈍化(右)

 底堅く拡大する製造業と加速するサービス部門

出所)バンク・ネガラ・マレーシア(BNM)、マレーシア統計局、CEIC 1-3月期の実質政府消費は同+0.4%と前期の+6.8%より減速。主に前年同期の急伸(季 節調整済の前期比年率は+57.6%)からの反動(ベース効果)によります。固定資本投資は 同+0.1%と前期の+4.3%より鈍化。主体別では公的投資が同▲1.0%と前期の▲1.4%より 下げ幅を縮めた一方で、民間投資が同+0.5%と前期の+9.2%より急減速。前年同期の急 加速からの反動(ベース効果)が生じたことに加え、総選挙の時期が近づき政治的な不 透明感が高まる中で新規投資が手控えられた影響もあったとみられます。分野別では 建設投資が+2.8%と前期の+3.3%より鈍化し、設備投資が▲3.6%と前期の+8.3%より反 落しました。外需では、総輸出が同+3.7%と前期の+6.7%より鈍化し、総輸入も同 ▲2.0%と前期の+7.3%より反落。工業製品輸出の減速に伴って中間財の輸入が低下し たことに加え、投資の減速を背景に資本財の輸入も鈍化しました。この結果、純輸出 の寄与度は+4.0%ポイント(pt)と前期の+0.2%ptより押上げ幅が拡大しました(図1右)。 生産側では、好調な家計消費を背景にサービス部門が加速し、底堅い輸出の伸び等 を背景に製造業も堅調に拡大したものの、住宅関連等の建設投資の減速から建設業が 鈍化し、主要農産物の生産の鈍化に伴って農林漁業も減速しました(図2右)。 出所)マレーシア統計局、CEIC 農林漁業は同+2.8%と前期の+10.7%より鈍化しました。油やしが同+12.5%と前期の +24.4%を下回り、天然ゴムも同▲28.5%と前期の▲2.8%より下げ幅が拡大。国際ゴム 価格の低迷に対処するための輸出制限が背景です。鉱業は同+0.1%と前期の▲0.3%よ り反発。原油生産が回復しました。製造業は同+5.4%と前期と同率でした。運輸機器 や加工食品など内需関連部門が鈍化した一方、底堅い外需を背景に電器・電子が同 +6.1%と前期の+5.7%より加速。原油生産の回復とともに石油・化学・ゴム等も加速し、 土木建設の伸びを受けて金属製品など建材関連も加速しました。建設業は同+4.9%と 前期の+5.9%より鈍化。運輸や石油化学や発電関連の土木建設が好調であったものの、 住宅や商業施設の建設が鈍化。住宅販売の不振や商業施設の過剰供給などが背景です。 サービス部門は同+6.5%と前期の+6.2%より加速。輸出入の減速に伴って運輸・倉庫 等が+5.7%と前期の+6.0%より鈍化したものの、好調な家計消費を背景に卸売・小売は 同+7.7%と前期の+7.8%とほぼ同水準の堅調な伸びとなり、金融も同+6.8%と前期の +5.0%より力強く加速。家計向け融資の堅調な伸び等が背景です(図8左)。通信も同 +8.3%と前期の+8.1%より伸張。データ通信サービス需要が伸びた影響とみられます。 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 2.6 2.8 3.0 3.2 3.4 3.6 -2 0 2 4 6 8 2011 2013 2015 2017 失業率と製造業雇用者数(月次) 製造業雇用者数 前年比(左軸) 失業率(右軸) (%) 注) 3ヵ月移動平均 直近値は2018年3月 (年) (%) -4 -2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 2008 2010 2012 2014 2016 2018 (%) 個人 家計向融資の前年比(月次) 注) 直近値は 2018年3月 自動車 住宅 カード (年) 50 75 100 125 150 175 200 225 250 275 2008 2010 2012 2014 2016 2018 資本財 中間財 品目別輸入額(月次) (年) 消費財 注) リンギ建て輸入額の 季節調整済3ヵ月移動平均 2008年1月=100 直近値は2018年4月 -4 -2 0 2 4 6 8 10 12 14 2014 2015 2016 2017 2018 製造業賃金と労働生産性の前年比 名目賃金 実質賃金 (%) 注) 賃金は3ヵ月移動平均 消費者物価指数で実質化 直近値は、賃金:2018年3月 労働生産性:2018年1-3月期 (年) 労働生産性

(5)

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【図9】 低位で推移する総合物価とコア物価(左)、鈍化する食品物価(右)

【図10】 2回連続で政策金利を据置き(左)、底堅く推移するリンギ相場(右)

 落着いた物価の下で政策金利を据置く中央銀行

出所)バンク・ネガラ・マレーシア(BNM)、Bloomberg 今後も、恵まれた雇用所得環境の下で家計消費が伸びる一方、固定資本投資は勢い を欠くとみられます。4-6月期の景気は、選挙関連支出による消費に支えられるでしょ う。今年後半には、(a)新政権によるGSTの事実上の撤廃、(b)燃料補助金の部分的な復 活による燃料価格の抑制、(c)最低賃金の引上げなどが、家計の購買力を押上げ民間消 費の伸びを支えるとみられます。一方、資本財輸入の鈍化が示唆するとおり(図8右)、 固定資本投資は今後も勢いを欠く見込みです。また、予想外の政権交代に伴う不透明 感も、企業の投資意欲を減じると思われます。加えて、新政権による大型インフラ投 資の見直しも建設投資を下押しするでしょう。乗数効果を考慮すると、投資の下押し は減税や燃料価格の押下げによる消費の押上げをほぼ相殺すると考えられます。今年 通年の成長率は+5.5%前後と好調であった昨年の+5.9%より鈍化すると予想されます。 足元の物価は落着いています。5月23日公表の4月の総合消費者物価は前年比+1.4% と前月の+1.3%より上昇しつつ(図9左)、市場予想の+1.6%に届かず。食品が+2.6%と前 月の+2.8%より鈍化し(図9右)、総合物価を押下げました。野菜が同▲0.5%と前月の +0.9%より反落し、肉、魚、卵、乳製品等高タンパク食品の伸びが鈍化した影響です。 出所)マレーシア統計局、CEIC 運輸燃料は前年比▲0.3%と前月の▲3.7%より下げ幅を縮めつつ3ヵ月連続のマイナ スとなりました。食品と燃料を除くコア物価は同+1.5%と前月の+1.7%より低下。衣 類・履物が同▲0.8%と前月の▲0.7%より下げ幅を広げ、通信もマイナスの伸びが継続 し、家具・内装の伸びも鈍化しました。今後は、GSTの廃止による物価の押下げや燃料 価格の据置きもあり、物価は低位で安定するでしょう。GST廃止を6月初に控え、買い 控えを避けるための6%値下げの動きが既に広まりつつあります。また、選挙前より据 置かれているガソリン価格は今後も年末まで据置かれる予定です。今年通年の総合消 費者物価の前年比は+2%前後と、昨年の+3.9%より大きく低下すると予想されます。 落着いた物価の下で、バンク・ネガラ・マレーシア(BNM)は政策金利の据置きを続け ています。総選挙の翌日の5月10日、BNMは政策会合で政策金利を3.25%に維持するこ とを決定。今年1月の利上げ(3%→3.25%)以降、金利の据置きは2回連続となります(図 10左)。BNMの政策声明は、景気は民間部門の消費や投資と外需に支えられ、今後も 拡大すると予測。総合物価の軌道は国際原油価格等に左右されるものの、堅調なリン ギ相場による輸入物価の抑制もあり穏やかに推移するだろうとしました。 -4 -2 0 2 4 6 8 10 2008 2010 2012 2014 2016 2018 (%) コア物価 総合物価 消費者物価の前年比(月次) 注)直近値は 2018年4月 (年) -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 2011 2013 2015 2017 野菜・果物 穀物等 食品物価 食品物価の前年比(月次) (%) 注) 食品物価の前年比と主要項目別寄与度、 直近値は2018年4月 牛乳・卵・ 肉・魚 その他 (年) 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 2008 2010 2012 2014 2016 2018 政策金利と市場金利(日次) (%) 10年国債 3年国債 政策金利 注) 直近値は 2018年6月6日 銀行間3カ月 金利(KLIBOR) (年) 2.6 2.8 3.0 3.2 3.4 3.6 3.8 4.0 4.2 4.4 4.6 4.8 700 800 900 1,000 1,100 1,200 1,300 1,400 1,500 1,600 1,700 2008 2010 2012 2014 2016 2018 為替相場と外貨準備 (億米ドル) (リンギ/米ド 外貨準備(左軸) 直近値:2018年5月15日 リンギ相場:(右軸) 直近値: 2018年6月6日 (年) リ ン ギ 高 ↕ リ ン ギ 安

 好調な消費と冴えない投資という構図が今後も継続か

(6)

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 物価が低位で安定する中、来年半ばまで金利据置きか

【図11】 割高感のないリンギ相場(左)、足元で拡大する経常黒字(右)

【図12】 過熱感なき債券投資資本(左)、海外先物市場の流動性は低下(右)

 強弱材料が混在する中で、リンギは当面横ばいで推移か

出所)バンク・ネガラ・マレーシア(BNM)、DTCC、CEIC、Bloomberg 現在の金融緩和の度合いについては、「低インフレ下での堅調な景気拡大を維持する 政策スタンスと整合的」と、前回と同じ文言を使い、当面金利を据置くことを示唆しま した。今回の声明は、総選挙や新政権による政策への影響には一切言及せず。マハ ティール氏が正式に首相に就任する直前の決定であったためとも考えられます。足元 では、製造業の賃金が労働生産性を上回る速度で上昇し(図7右)、単位労働コストが上 昇するなど、賃金上昇圧力の兆しも見られます。しかし、前述の通りGSTの廃止や燃 料価格の据置きによって総合物価の伸びが抑えられる中で、期待インフレ率も抑制さ れるでしょう。新政権の政策による家計消費の押上げは、投資計画見直しに伴う固定 資本投資の下押しによって相殺され、景気も大きく加速しない見込みです。BNMは賃 金動向を注視しつつ、今年から来年半ばにかけて政策金利を据置くと予想されます。 通貨リンギは年初より6月6日にかけて対米ドルで+1.8%上昇と(図10右)主要アジア通 貨ではタイ(+2.1%)と中国(+1.9%)に次ぐ上昇率。4月下旬以降の新興国からの資本流出 や、5月上旬の予想外の政権交代に伴う不透明感にもかかわらず堅調に推移しました。 新政権が投資家の動揺を抑えるべく素早く動いたことも、相場の安定に貢献しました。 出所)バンク・ネガラ・マレーシア(BNM)、CEIC、Bloomberg 5月9日水曜日の総選挙で誕生した新政権は、翌10-11日を休日とし金融市場を閉鎖。 市場再開までの4日間に、前BNM総裁や元財務相など5名の有識者からなる賢人会議を 組成し、主要な格付会社や海外投資家との対話を実施。不要な誤解や動揺をなくすべ く努めました。また、ペナン州の首相として同州の経済発展に貢献した中国系のリム・ グアンエン氏(民主行動党:DAP)を財務相に指名。同財務相は新政権の財政政策の概要 を5月末に公表するなど、投資家の嫌う不透明感を払拭するべく素早く動いています。 前述の通り、新政権の政策は財政構造を悪化させるとみられ、信用力を巡る懸念が 通貨の重石となるでしょう。一方、割高感のない相場(図11左)、一次産品価格の上昇 による交易条件の改善と拡大する経常黒字等が支援要因です(図11右)。リンギ建て国 債を保有する外国人の多くが短期売買を行わない機関投資家であり、投資持高に過熱 感もありません。低物価の下で相応に高い実質金利や当面の利上げの可能性の低さも、 債券投資資本の流入を促すでしょう。当局の規制に伴って投機筋の好む海外為替先物 (NDF)の流動性は落ち(図12右)、国内市場の流動性が改善。支援要因と制約要因が混在 する中、リンギは当面横ばいのレンジ内で推移すると予想されます。(入村) 80 85 90 95 100 105 110 2000 2005 2010 2015 リンギの実質実効為替相場(日次) 注)直近値は2018年6月5日 (年) 実質実効為替 相場(REER) 期中平均 (2000年1月3日~) 0 10 20 30 40 50 60 70 2015 2016 2017 2018 NDFの日々取引高(日次) マレーシア・リンギ インドネシア・ルピア 注) 20日移動平均 直近値は2018年6月5日 (年) (億米ドル) フィリピン・ペソ -300 -250 -200 -150 -100 -50 0 50 100 150 2014 2015 2016 2017 2018 国債(MGS) 短期債 注) 短期債は中央銀行債 (BNB)と短期国債 直近値は2018年4月 合計 外国人の国債投資額増減(月次) (億リンギ) (年) イスラム 国債(GII) -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100 120 140 160 2008 2010 2012 2014 2016 2018 財貿易 経常移転 所得 注) 直近値は 2018年1-3月期 サービス 経常収支 経常収支(四半期) (億米ドル) (年)

(7)

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【図1】 メキシコ・ペソは節目の1米ドル20ペソを抜けて、ペソ安

【図2】 オプション市場は選挙への警戒を高める、議会選にも注目

 ペソの下落は、NAFTA再交渉とメキシコ大統領選が背景

【メキシコ】 NAFTA再交渉は米中間選挙後に持ち越しの見込み、7月1日の選挙に注目

メキシコ・ペソ、ブラジル・レアルが軟調です。米10年債利回りが3%を超えたこ とを受け、新興国通貨が軟調となりました。経常赤字、対外債務などで問題を抱える アルゼンチンとトルコの通貨が特に大幅に下落し、ついでブラジルとメキシコの通貨 が下落しています(図1左)。ブラジルやメキシコは、経常赤字や対外債務は相対的 に健全で、アルゼンチンやトルコほど売られる可能性は低いとみていますが、年内に 大統領選を控えるため(メキシコは7月1日、ブラジルは10月)、政治的な不透明感が 為替市場で嫌気されているとみています。本稿では、先に選挙を迎えるメキシコにつ いて、選挙を含めた政治動向、景気物価動向、金融政策について考察します。 メキシコ・ペソは、対米ドルで1米ドル20メキシコ・ペソの節目をあっさりと上抜 けるなど、通貨が下落しています(図1右)。同水準を上回るのは、トランプ米大統 領の誕生を受け、米国によるメキシコ国境の壁建設や北米自由貿易協定(NAFTA) 離脱のリスクが警戒されて以来となります。足元の下落は、①NAFTAの不透明感、 ②7月1日の大統領選・総選挙などが意識されていることが背景とみています。 NAFTA再交渉は、米国の貿易赤字是正を目的に行われてきました。メキシコが7月 に大統領選、米国が11月6日に中間選挙を控えるため、早期の合意が急がれていまし たが、米国議会が求めた5月17日の期限を過ぎても合意には至っていません。米国が 提案する賃金条項(40%の部材は時給16ドル以上の地域で生産)などメキシコにとっ ては受け入れがたい内容が障害となっています。米中間選挙後に交渉は再開する見込 みですが、6月1日に米国、6月5日にメキシコが関税措置を発動するなど、両国間で貿 易摩擦懸念が高まっており、合意は当初の想定より難しくなっているとみられます。 7月1日は、メキシコの大統領選、総選挙が行われます。ブラジルの大統領選(10月 7日に第1回投票、28日に決選投票)と異なり、メキシコの場合は1回の投票のみで新 大統領が決まります。足元の支持率では、元メキシコ・シティ市長のロペス・オブラ ドール(AMLO)氏が勝利するとみられています。AMLO氏は、年金の倍増、教育の 無償化、エネルギー改革の見直しを公約としています。これら公約を実現する上では、 総選挙の行方にも注目です。AMLO氏の人気を受け支持政党のMORENA(国家再生 運動)の連立グループが支持を伸ばしていますが(図2右)、仮に議席の過半数を集 めたとしても、エネルギー市場の方針変更など憲法改正が必要な案件は3分の2の合意 が必要とされるため、新政権が大きな構造改革を実現するリスクは低いとみています。 出所)Bloomberg メキシコ・ペソのインプライド・ボラティリティ メキシコ議会の議席数(選挙前) 出所)Bloomberg、各種報道 メキシコ・ペソ(対米ドル) 注)左図の直近値は2018年6月6日。右図の支持率は4月時点。合計の括弧は議席数の半数。 -25 -20 -15 -10 -5 0 韓国 台湾 シンガポール マレーシア タイ フィリピン インドネシア インド ブラジル メキシコ コロンビア アルゼンチン ポーランド ロシア トルコ 南アフリカ アジア NIEs 東南 アジア 南アジア 中南米 欧州 中東 アフリカ (%) 主要新興国通貨の対米ドル相場騰落率 (2018年3月30日~2018年6月5日) 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0 20.0 2017/01 2017/07 2018/01 (%) (年/月) 3ヵ月物 1ヵ月物 リスクを警戒 リスク低下 単独 連立 単独 連立 PAN 34 108 PRD 7 53 MC - 21 MORENA 47 PT 19 -PES - 12 PRI 55 204 PVEM 6 38 PNA - 12 無所属 7 7 5 5 4.1% 未定 - - - - 17.3% 合計 82.7% 61 (48%) 254 (51%) 13.6% 128(64) 500(250) 41 (32%) 182 (36%) 18.1% 19 (15%) 59 (12%) 46.9% 政党名 略記 議席数(占有率) 支持率 上院 下院 16.0 17.0 18.0 19.0 20.0 21.0 22.0 23.0 2016 2017 2018 (ペソ/米ドル) (年) ペソ安 ペソ高 注)右図の直近利は6月5日。

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 景気は軟調な一方、通貨防衛の利上げを市場は織り込み

【図4】 インフレ率は鈍化するが中銀目標を依然として上回る

 通貨防衛には為替ヘッジ・プログラムの再拡充で対応か

【図3】 成長率は減速、NAFTA再交渉の不透明感などが投資を抑制

メキシコ景気は軟調です。GDP成長率では、2017年1-3月期に前年比+3.3%をつけて 以降は鈍化が続いています(4-6月期は同+1.8%、7-9月期は同+1.6%、10-12月期は同 +1.5%、2018年1-3月期は同+1.3%、図3左)。労働市場や海外労働者送金が堅調なこと から民間消費は底堅く推移する一方で、固定資本投資や純輸出が軟調です。 メキシコは通貨防衛(または通貨安による輸入インフレの抑制)のために利上げを 実施しており、政策金利は2015年11月時点の3.00%から7.50%へと引き上げられました。 この大幅な利上げにより企業の資金調達環境は悪化しています。またNAFTA再交渉に より不透明感が高まっていることも、企業が新たな設備投資をためらう要因となって います。設備稼働率は高水準にあるため(図3右)、NAFTA再交渉で合意が達成され、 利下げが行われれば、景気刺激策として有効に機能するとみられます。ただ4月以降の 通貨安や、今後の選挙・NAFTA再交渉などによる通貨安懸念がある現状では、利下げ というより、利上げの可能性にも注意が必要とみています。エコノミストのサーベイ 調査では年内7.50%への据え置きが予想されていますが、短期金利の織り込みでは 0.75%以上の利上げが89.2%、1.00%以上の利上げが49.7%と高確率の織り込みです。 インフレ率は2017年12月を境に鈍化しています(図4左)。2017年1月にガソリン価 格が自由化され、政府からの補助金も廃止されました。これにより国際価格より低く 抑えられていた国内ガソリン価格は上昇し、インフレ率の押し上げ要因となっていま した。2018年に入り前年のベース効果が剥落し 、足元4月のインフレ率は前年比 +4.55%へと低下しています。ただ中銀の物価目標である2-4%を依然として上回ってい ることや、今後の政治イベントを控え通貨安の懸念もあることから、政策金利は引き 続き据え置きが続くとみています。NAFTA再交渉が大きな変更なく合意が達成されれ ば、2020年には軟調な景気サポートという理由からも利下げが行われるとみています。 通貨ペソは大統領選挙後も、NAFTA再交渉リスクを抱え上値は抑えられるとみてい ます。リスクが高まる局面で利上げをしたいものの、実体経済が軟調なこともあり、 まずは為替ヘッジ・プログラムの規模拡大が行われる可能性のほうが高いとみていま す。同プログラムは2017年2月に導入され、同年10月に規模が拡大され通貨安の防衛に 寄与してきました(図4右)。同プログラムが下値を抑えるとはみるものの、NAFTA 再交渉の不透明感が払拭されるまでは、ペソは軟調な展開が予想されます。(永峯) 出所)メキシコ国立地理統計情報院、メキシコ中銀 GDP成長率(前年比) 設備稼働率と固定資本投資 出所)メキシコ国立地理統計情報院 政策金利と消費者物価 中銀の為替介入政策 -16 -12 -8 -4 0 4 8 12 16 2007 2009 2011 2013 2015 2017 (%) 純輸出 在庫投資 民間消費 固定資本 投資 政府消費 2018年1-3月期 実質GDP+1.3% (年) 統計誤差 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 (%) (年) 政策金利 2018年2月8日より、7.50% 消費者物価(前年比) 2018年4月+4.55% -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 86 2007 2008 2010 2012 2014 2015 2017 (%) (年) 設備稼働率(左軸) 2018年3月81.2% 固定資本投資 (除く住宅投資、右軸) 2018年3月前年比▲2.35% (%) 2014年 12月 自動介入メカニズムの導入 2015年 3月 機械的なドル売り介入の導入 5月 機械的なドル売りの延長 7月 自動介入メカニズムの拡充 9月 機械的なドル売りの再延長 11月自動介入メカニズムの再拡充 機械的なドル売りの中止 2016年 1月 自動介入メカニズムの延長 2月 自動介入メカニズムの中止 2017年 2月 為替ヘッジプログラムの導入 10月 為替ヘッジプログラムの拡充

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【エマージング・マーケット・ウォッチ】 ①新興国の債券・株・金利スプレッド

【エマージング・マーケット・ウォッチ】 ①新興国の債券・株・金利スプレッド

出所)Thomson Reuters Datastream

出所) Thomson Reuters Datastream

出所)Bloomberg 注2:信用スプレッドは米国債との利回り格差。高利回り社債はBB格以下の投機的等級の社債。

注1: ICE BofAML US High Yield Index 、 J.P. Morgan EMBI Global Diversifiedより、同社の許諾を得て作成。

注: 自国通貨建て債券指数には、 J.P. Morgan GBI-EM Broadを使用。 注:ドル建て債券指数には、J.P. Morgan EMBI Global Diversifiedを使用 出所) Thomson Reuters Datastream

80

130

180

230

280

330

2005

2007

2009

2011

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2015

2017

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新興国 ドル建て債券指数

(2005年初=100) 2008年9月 リーマン・ブラザーズ破綻 中東 中南米 新興国 アフリカ アジア 中・東欧 注)直近値: 2018年6月6日 2007年7月~ 米国サブプライム問題深刻化 (年) 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018 (ベーシスポイント:bps)

新興国債券と米国高利回り社債の信用スプレッド

2007年7月~ サブプライム問題 深刻化 2008年9月 リーマン・ブラザーズ 破綻 米国高利回り社債 新興国債券 (年) 注)直近値: 2018年6月6日 90 140 190 240 290 340 390 440 2005 2009 2013 2017

新興国 自国通貨建て債券指数

(2005年初=100) 2007年7月~ 米国サブプライム問題深刻化 2008年9月 リーマン・ブラザーズ破綻 中南米 中・東欧 新興国 全体 中東・アフリカ アジア 注)直近値: 2018年5月1日 (年) アジア 中東欧 新興国全体 中南米 中近東 アフリカ 0 100 200 300 400 500 2005 2009 2013 2017 (2005年初=100) (年)

MSCIエマージング株価指数

注)直近値: 2018年6月6日 2008年9月 リーマン・ブラザーズ破綻 2007年7月~ 米国サブプライム問題深刻化

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【エマージング・マーケット・ウォッチ】 ②主要新興国通貨の対ドル相場:過去3年間

自国通貨高 米ドル安 自国通貨安 米ドル高 自国通貨高 米ドル安 自国通貨安 米ドル高 自国通貨高 米ドル安 自国通貨安 米ドル高 (自国通貨/1米ドル) 出所) Bloomberg 注) 直近値は2018年6月6日 240 260 280 300 320 2015/6 2016/6 2017/6 2018/6 ハンガリー・フォリント (年/月) 6.0 6.1 6.2 6.3 6.4 6.5 6.6 6.7 6.8 6.9 7.0 2015/6 2016/6 2017/6 2018/6 中国・人民元 (年/月) 12,000 13,000 14,000 15,000 2015/6 2016/6 2017/6 2018/6 インドネシア・ルピア (年/月) 1,000 1,050 1,100 1,150 1,200 1,250 2015/6 2016/6 2017/6 2018/6 韓国・ウォン (年/月) 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 2015/6 2016/6 2017/6 2018/6 トルコ・リラ (年/月) 10 12 14 16 18 2015/6 2016/6 2017/6 2018/6 南アフリカ・ランド (年/月) 5 10 15 20 25 30 2015/6 2016/6 2017/6 2018/6 アルゼンチン・ペソ (年/月) 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 2015/6 2016/6 2017/6 2018/6 ブラジル・レアル (年/月) 40 50 60 70 80 90 2015/6 2016/6 2017/6 2018/6 ロシア・ルーブル (年/月) 60 65 70 2015/6 2016/6 2017/6 2018/6 インド・ルピー (年/月) 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 2015/6 2016/6 2017/6 2018/6 メキシコ・ペソ (年/月) 3.2 3.6 4.0 4.4 2015/6 2016/6 2017/6 2018/6 ポーランド・ズロチ (年/月)

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【エマージング・マーケット・ウォッチ】 ③主要新興国通貨の対ドル相場:過去6ヵ月間

(自国通貨/1米ドル) 自国通貨高 米ドル安 自国通貨安 米ドル高 自国通貨高 米ドル安 自国通貨安 米ドル高 自国通貨高 米ドル安 自国通貨安 米ドル高 出所) Bloomberg 注) 直近値は2018年6月6日 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 3.7 3.8 3.9 4.0 2017/11 2018/2 2018/5 ブラジル・レアル (年/月) 6.20 6.30 6.40 6.50 6.60 6.70 6.80 2017/11 2018/2 2018/5 中国・人民元 (年/月) 16.0 18.0 20.0 22.0 24.0 26.0 28.0 2017/11 2018/2 2018/5 アルゼンチン・ペソ (年/月) 63 64 65 66 67 68 69 70 2017/1 2017/4 2017/7 2017/10 2018/1 2018/4 2018/7 インド・ルピー (年/月) 13,100 13,300 13,500 13,700 13,900 14,100 14,300 14,500 2017/11 2018/2 2018/5 インドネシア・ルピア (年/月) 1,040 1,060 1,080 1,100 1,120 1,140 1,160 1,180 2017/11 2018/2 2018/5 韓国・ウォン (年/月) 3.40 3.60 3.80 4.00 4.20 4.40 4.60 4.80 2017/11 2018/2 2018/5 トルコ・リラ (年/月) 11.0 11.5 12.0 12.5 13.0 13.5 14.0 14.5 15.0 2017/11 2018/2 2018/5 南アフリカ・ランド (年/月) 54 56 58 60 62 64 66 2017/11 2018/2 2018/5 ロシア・ルーブル (年/月) 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 3.7 3.8 2017/11 2018/2 2018/5 ポーランド・ズロチ (年/月) 17 18 19 20 21 22 2017/11 2018/2 2018/5 メキシコ・ペソ (年/月) 240 250 260 270 280 290 2017/11 2018/2 2018/5 ハンガリー・フォリント (年/月)

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