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乳幼児期の移行対象 と指 しやぶ りに関する調査研究
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(2007年 3月31日受理) Keywords:移行対象,指 しやぶ り,家庭,乳幼児期富
田 昌 平
ShoheiTomita要
約
本研究では,乳幼児期における移行対象 (毛布や タオル,ぬい ぐるみな ど-の愛着) とその先駆物 としての指 しや ぶ りの出現の実態について,3歳から6歳の子 どもを持つ保護者261名-の質問紙調査をもとに検討 した。調査 の結果, ①移行対象の出現率は31%,指 しやぶ りの出現率は24%であ り,その うち両者が同時に現れたケースは9%であった。 ②移行対象 と指 しやぶ りは一人っ子,長子,末っ子において同程度に出現 し,中間子において少なかった。③指 しやぶ りは生後 6ケ月以前に出現 し,生後 6ケ月か ら36ケ月でピークを迎えるのに対 し,移行対象はより遅れて生後24ケ月か ら60ケ月がピークであった。また,ぬいぐるみや人形な どの二次性移行対象は,毛布やタオルなどの一次性移行対象 よ りも出現が遅かった。④移行対象 と指 しやぶ りは入出眠時に多 く必要 とされ,その他テ レビ視聴時や退屈な時に必要 と された。それ らは子 どもを落ち着かせ,安心感 を与えると保護者に解釈 されていた。⑤対応については無理にや めさせ ようとした者は少なく,多 くはいつか子 ども自身で手放すだろ うとい う予測の元に, 自然なな りゆきに任せていた。問 題 と 目 的
1.移行対象とは 「私が幼い頃か ら愛着 を持ち続 けていたものは,柔 ら かい布のようなもので した。肌に触れ るとひんや りして とても気持ちよかったのを覚えています。 どこ-行 くに も,いっでもその布がない と泣いていたように思います。 母が 「もうたくさん破れたか ら,そろそろ捨てたほ うが いいかもね」 と言ったことも,はっきりと覚えています。 それでも私は,肌触 りのいい柔 らかい布が大好 きだった ので,ずっともっていた くて,母に見つか らない ように 隠 した りしていました。 私 と柔 らかい布はいっ も一緒が当た り前だったので, 離れ ることはない と思っていたのに,やっぱ り別れの 目 はやってきました。いつもあるはずのあの柔 らかい布が なくて,私は泣きま した。かすかに残っている幼い頃の 記憶の中でも,この思い出はす ぐに思い出せます。--私が生まれた頃の写真をみると,頭 を囲むようにその布 が私を包んでくれています。布がなくなって何年 もたっ けれ ど,今でもひんや りとした柔 らかい布の肌触 りを思 い出せます。それだけ大好きだったのだ と思います。」 (学生の レポー ト(2001) より) 赤ん坊や よちよち歩きの子 どもは, しばしば毛布やタ オル,ぬい ぐるみなどに強い愛着を示す。食事 をす ると きも寝るときも,遊ぶ ときも外に出かけるときも,絶え ず離 さずに持ち歩いた りす る。 とりわけ夜眠るときなど は,それがない と落ち着いて眠ることができず,それを 与えられ ることでようや く眠 りにつ くことができる, と いったこともしばしばである。乳幼児 に よるこ うした対象物-の特別 な愛着 の現象 を,イ ギ リス の小児 精神科 医Winnicott (1953,1971) は "移行 対象 "(transltlonal objects)と名 付 けた。 それは,就寝時や母親の不在,旅行時,あるいは未知の 人物や環境 との遭遇 といった乳幼児にとってス トレスフ ルな状況 にあって,母親の乳房や母親そのものを象徴的 に代理 し,その子の不安や緊張を癒 し,落ち着かせ,慰 めるもの として機能す るとい う(遠藤,1989)。た しかに, 漫画 『ピーナ ッツ』に登場す るライナスや,絵本 『ジェ インのも うふ』に登場す るジェインがまさにそ うである よ うに,毛布 の肌触 りや温 もりは母親のそれを象徴的に 代理 し,その ことが子 ども自身 を落 ち着 かせ る働 きを 担っているよ うである。 また,Winnicottによると,一般的に母親 は,乳児 の ミル クが欲 しい とい う欲求に対 して,即座 に乳房 を差 し 出すな ど,最初の うちは乳児の欲求に完全に適応 してい るが,成長す るに従ってその適応 を不完全なものに して い く。そ して,こ うした母親の関わ り方を通 して,乳児 は "母親 は 自分の一部である" とい う内的心的現実,す なわち "錯覚"(illusion)状態か ら,``母親は自分 と独 立 した存在である" とい う "脱錯覚"(disillusion)を 体験 し,次第 に外的客観的現実を受容 してい くよ うにな るとい う。 この移行過程 において,主観 と客観の間に位 置 し,乳児 の精神生活 を支 える場 として,Winnicottは "中間領域"(intermediate area)を仮定 している。そ して,この中間領域において,両世界の橋渡 しをす る機 能を担 うのが移行対象であ り,これにより脱錯覚 とい う, ある種の喪失体験に伴 う多大な不安を低減す ることがで き,よりスムーズな移行が可能になるとい う (池内 ・藤 原,2004)
。
このWlnnlcott理論で興味深いことは,先に述べた "中 間領域"を単に発達過程上の一時点でのみの問題 として 位置づけるのではな く,人間の一生を通 じて残存 し,遊 ぶ ことや芸術,宗教な どの文化的経験 として発展,保持 され,人間の健全な精神生活 を支えるもの として位置づ けている点にある。その意味で,この "移行対象"現象 の追究は,乳幼児の行動や心理,発達を理解す る上で役 立つばか りでなく,人間の生涯にわたる健全な精神生活 について考える上でも役立っ もの と思われ る。 2.移行対象の出現率 ■ 実証的研究では,多 くの場合, どの程度の子 どもがそ れ を有 しているか といった出現率が問題 とされ る。確か に,移行対象現象そのものの一般性 を考える上でも, ど の程度の子 どもがそれを有 しているのかは気になるとこ ろである。アメ リカ,イギ リス,スウェーデン,ニュージー ラン ドな ど欧米圏の研究によると,お よそ60%か ら80% の範 囲 の 出現 率 が示 され て い る (遠 藤,1989;Litt, 1981な ど)。 この よ うに,欧米圏において移行対象はか な り一般的な現象なのである。 Winnicottは移行対象の出現の基盤 として,母子間の "ほどよい"(good-enough)関係の存在 を指摘 している。 先に述べたよ うに,最初の頃,母親は子 どもの欲求に対 して きわめて正確 に適応す るが,子 どもが成長す るに 従って徐々にその適応 を減 らしていき,適度な欲求不満 を子 どもに生 じさせ るよ うになる。 これはごく健全な母 親 の変化であ り,Winnicottは,移行対象はこ うした母 と子の "ほどよい"関係 を基盤 として初めて出現 しうる, きわめて健全な発達の発露 として位置づけている。先ほ どの欧米圏における高い出現率は, こ うしたWinnicott 理論 とも合致す るものである。 しか しその後,以前 よりも広い国や地域で調査が行わ れ るに従って,移行対象出現の有無を健常な発達の一指 標 とす るよ うなwinnlcott理論 に基づ く考え方は,修正 を迫 られている。例えば,Gaddlnl&
Gaddinl(1970)は, イタ リアの都市部 と農村部 とで移行対象の出現率が異な ることを見出 している (都市部61.5%,農村部4.9%)0 また,Hong & Townes (1976)は,アメ リカ人における 出現率54.0%に対 し,韓 国人 にお ける出現率 は18.0% に過 ぎなかった ことを報告 してい る (アメ リカ在住 の 韓国人は34.0%)。わが国においては,藤井 (1985)の 31.1% (N=415),遠藤 (1990)の38.0% (N=951),井原 ・ 江 ・庄 司 (1997)の31.7% (N=736)とい う研究結果 が 示 されている。 こ うした結果 を受けて,現在では,移行 対象の出現には文化による伝統的な育児法の違い (例 え ば,添い寝か独 り寝か)や子 どもに対す る発達期待の違 いな ど,子育てにまつわる様々な文化的要因が影響す る ことが指摘 されている。129 乳幼児期の移行対象 と指 しやぶ りに関す る調査研究 3.移行対象の出現の背景 移行対象の出現 を生育過程上の諸問題 との関連か ら 検討する研究も数多 く行われている。Stevenson(1954) は,幼少期 に移行対象 を持たなかった子 どもほど依存 傾 向が強 か った こ とを報 告 してい る。Horton,Louy,& Coppo11110(1974)は,健 常者 の約93%には幼少 時, 何 らかの移行対象 があったのに対 し,人格障害者 の約 84%には全 く存在 しなかったことを明 らかにしている。 Provence
&
Rltvo(1961)は,施設収容児には移行対象 の使用がほとんどない とい う研究結果を得てお り,それ は母親的な存在の欠如が原因であろ うと考察 している。 藤井 (1985)は,移行対象出現の有無 と母子関係におけ る心理的密着度 との関連性について調べた結果,年齢が 低い群 (平均月齢13.2カ月)では,母子間の心理的密着 度が弱い方が移行対象が出現 Lやすいのに対 して,年齢 が高い群 (平均月齢35.9カ月)では,母子間の心理的密 着度が強い方が移行対象が出現 しやすいことを明らかに している。また,遠藤 (1990)は,母乳晴青でそれが長 期にわたる場合や母親の添い寝期間が長い場合,また母 親の育児に対する葛藤が少ない場合,移行対象があま り 出現 しないことを明 らかに している。さらに,遠藤(1991) は,移行対象は一人っ子により多 く見 られ,移行対象の 出現の有無,種類はきょうだいで一致 しやすいことを明 らかにしている。 以上のような研究結果をもとに,遠藤 (1989)は,移 行対象の出現には,母親 との間の "ほどよい"関係の中 で母親 についての内的表象を獲得することが前提 として あるが,だからといって,母親 との間に健全な関係 を築 いた子 どもすべてが移行対象を出現 させ るかといえばそ うではなく,子 どもは時に状況に応 じて,適応のすべ と して移行対象を使用 しうるのだ とまとめている。そ して, 移行対象が必要 とされ る状況 として,子 どもにとっての ス トレスが相対的に多かった り,母性的な関わ りの減少 が急速であった り,母親の養育行動や状況の変化が大き かった りした場合に,子 どもは移行対象を出現 させ,使 用すると考察 している。 4.移行対象の種類 ところで,移行対象 に関す る実証的研究 を行 うにあ たっては,その基準にも触れておかねばなるまい。移行 対象の種類は幅広 く, どこまでをそ う呼ぶかは研究者に よって異なるが,主な もの としては毛布,布 団,タオ ル,タオルケ ッ ト,ぬい ぐるみ,人形があげられ,その 他に,枕,ハンカチ,裏地,フリル, リボン,お母 さん のネグリジェ,おんぶひ も,クッシ ョン,パジャマな ど があげ られ る (井原,1996)。移行対象の概念 を提唱 し たWinnicott自身は,当初かな り多様な対象 を想定 して いた。彼は,毛布,タオル,ぬい ぐるみ といった具体的 に手で触れ うる対象の他に,メロディー,子守唄,暗語, 儀式的な行動 といった具体的でないもの,無形 のもの, あ りとあらゆるものを移行対象に含めていたとい う (逮 藤,1989)。 しか し,その後の研究では,ある程度一定 の同定基準が与えられている。 例えば,Gaddin主&
Gaddin主(1970)は,手や指 といっ た乳幼児 自身の身体の一部や母親の身体の一部,お しゃ ぶ り,晴乳瓶等を移行対象か ら除外 し,これ らを移行対 象の前身 とい う意味か ら "先駆物"(precursors)と呼 び,移行対象 とは明確 に区別 している。Busch,Nagera, McKnight,&
Pezzarossi(1973)もまた,手や指 を しゃ ぶるなど口唇愛的な性格 を持つ対象を,移行対象か ら除 外 している。Hong(1978)は,移行対象をその種類 と出 現時期か ら,"移行対象等価物","一次性移行対象","二 次性移行対象"の 3つに分類 している。移行対象等価物 とは,先の先駆物に該 当す るものを指す。一次性移行対 象 とは,毛布やタオルな ど,主に生後6ケ月頃か ら1歳 頃までに愛着が寄せ られ る対象を指す。二次性移行対象 とは,ぬい ぐるみや人形な ど,主に2-3歳頃か ら愛着 が寄せ られ る対象を指す。後者の対象には人格的な特性 が備 わってお り,遊びの文脈で使用 され ることが多い。 このことか ら,子 どもは一次性移行対象には感覚的な満 足を求めているのに対 して,二次性移行対象には対人的 な満足を求めているもの と推察 される。 以上のように,現在では指 しやぶ りは移行対象か ら除 外 して考える見方が一般的であるものの,その一方で, これ らは似通った特性 をもち,似通った場面で出現する ことも事実である。出現時期は生後1- 3カ月頃に始ま り,6カ月頃か らピークとい うように,毛布やぬい ぐる み よ りも早 くに出現す るが (村瀬,2001),毛布やぬい ぐるみ と同様に しば しば子 ども自身の緊張を和 らげ安心 感を与えるはた らきを持つ。また,指 しやぶ りを習癖 として持っ子 どもは,毛布や タオルや ぬい ぐるみ といった 対象 にも強い愛着 を示 しやすい とい う報告 もある(村瀬, 2001)。本研 究では先行研究 と同様 に,指 しやぶ りを "先 駆物" として移行対象か ら除外す る立場 を とるが,移行 対象 との特性面での共通性や現象的な近接性 を考 え,指 しやぶ りについて も併せ て検討す ることにす る。 5.本研究の問題 と目的 本研究では,乳幼児期の移行対象 と指 しやぶ りについ て,3歳か ら6歳の子 どもをもつ保護者 を対象 に質問紙 調査 を行い,そ こで得 られた資料 をもとに,その乳幼児 期 にお ける出現 とその背景,お よび保護者 による現象 の 受容 ・理解 について検討す ることを 目的 とす る。 これ までの先行研究 を振 り返 ると,移行対象 と指 しや ぶ りについての実証的な検討 は も う十分 であるよ うに も 思 われ る。 実 際,本研 究が これ か ら示 してい く資料 は, ある意味では先行研 究が これ まで示 してきた ことの繰 り 返 しである。 しか し,移行対象 と指 しやぶ りとい う現象 の 日常性や実践-の提言可能性 を考 えると,その資料 の 提 出はた とえ繰 り返 しであるにせ よ, し過 ぎるとい うこ とはないであろ う。 本研 究で特 に関心 を寄せ ることは,第一に,移行対象 お よび指 しやぶ りの出現率 と出現 時期,そ の出現 の背 景である。 この点については,すでに先行研 究の中心的 な関心事 として, これ まで数多 くの証拠 が提供 されてき たが,本研 究ではその点を改 めて問い直す とともに確認 してい く。加 えて,先行研究ではあま り触れ られて こな かった,移行対象 とその先駆物 としての指 しやぶ りとい う2つの組み合 わせ の出現パ ター ンについて も検討 して い く。第二 に,今 回のケースの よ うに相対的に頻繁 に認 め られ はす るものの,それ を持つ者 と持 たない者 (ある いは,す る者 としない者) とに二分 され るよ うな現象 に 対 して,保護者 は どの よ うに受 け止 め,理解 してい るの か とい う点について も, 自由記述の内容 をもとに検討 し てい く。現象 に対す る世間一般 の理解や態度 に関 しては, 先行研究において も別段見過 ごされ てきたわけではない が,親 によるその具体的な記述の紹介 はあま りな されて こなかった。本研究で示す保護者 の 自由記述 は,彼 らの 受容 ・理解 のあ り方 について知 る上で役 立っであろ う。
方
紘
1.被調査児 山 口県S市,U市内の私立保育園2園に在籍す る3歳 か ら6歳 の幼児261名 が対象 であった (回答 はその保護 者)。月齢 と性別 の分布 はTablelの通 りである。 き ょう だい構成 は,一人 っ子,長子,中間子,末 っ子 A,末 っ 子Bの 5つ に分類 した。 内訳 はTable 2の通 りで あ る。 末 っ子 を2つ に分類 した理 由は,同 じ末 っ子 で も3人以 上のき ょうだいの末 っ子 と2人 き ょ うだいの末 っ子 とで は,き ょ うだい間の競争や地位 の質が異 なる と判断 した ためである。 Tab一el 被調査児の月齢,性別の分布 月 齢 36--47 48′-53 54.-59 60′-65 66.-71 72-.77 78-83 男児 8 21 22 21 22 17 ll 女児 9 24 23 21 26 26 10 合計 17 45 45 42 48 43 21 TabJe2 被調査児のきょうだい構成の分布 構成 人数 内 訳 一人 っ子 38 一人 っ子 (38) 長子 89 3人 き ょうだいの1番 目 (14),2人 きょうだいの1番 目 (75) 中間子 27 4人 き ょうだいの2番 目 (2) ,4人 きょうだいの3番 目 (1) 3人 き ょうだいの2番 目 (24) 末っ子A 22 4人 き ょうだいの4番 目 (1),3人 きょうだいの3番 目 (21) 末っ子B 85 2人き ょうだいの2番 目 (85)131 乳幼児期 の移行対象 と指 しやぶ りに関す る調査研 究 2.手続き 質問紙 は保育園のクラス担任 を通 して園児の保護者 に 配布 し,1週間後 に回収 した。調査時期は2002年11月か ら12月であった。 3.質問項 目 質問1 お子 さんの年齢は ? 質問2 お子 さんの性別は ? 質問3 お子 さんは何人きょうだいの何番 目ですか ? 質問4 お子 さんは何か決 まったもの (例 えば,毛布 ・ タオル ・ま くら ・ぬい ぐるみな ど) を,いっ も手放 さず に持 っていた り,特 に好んで使 っていた り,特に大事 に しています か ?あるいは指 しやぶ りを しています か ? (はい/今はないが過去 にあった/いいえ) 質問5 「はい」 と答 え られ た方 は,その発生時のお 子 さんの年齢 は ? 質問6 「今 はないが過去 にあった」 と答 え られた方 は,その発生時のお子 さんの年齢 は ? 質問7 その対象は どのよ うなもので したか ?該当す るものに○を して くだ さい (
1
毛布/2
布 団/3
ぬい ぐ るみ/4
ま くら/5
シーツ/6
タオル/7
ミニカー/8
ハ ンカチ/9人形/10ロボ ッ ト/11指 しやぶ り/12その 他) 質問8 その対象 (もしくは指 しやぶ り) とお子 さん の との関係 について,で きるだ け詳 しく教 えて下 さい (例 :お子 さんはその対象 をいっ どの よ うな ときに必要 としていますか ?その対象 を持っている時,持っていな い時の様子は ?その対象 に対 して家族 は どのよ うに対応 していますか ?) 質 問9 お子 さんはなぜ その対象 を持つ よ うになっ た (もしくは指 しやぶ りをす るよ うになった) と思いま すか ?思い浮かぶ理 由を何で も結構ですので教 えて下 さ い。結 果 と 考 察
1.出現率 移行対象 (毛布,タオル,ぬい ぐるみな ど) と指 しや ぶ りの現在 または過去 にお ける出現 の有無 を尋ねた と ころ,261名 の被調査児 の うち現在持 ってい る者 は79名 (30.2%),過去 に持 っていた者 は37名 (14.1%)であっ た。男女別 で見 る と,男児122名 の うち57名 (46.7%), 女児139名 の うち59名 (42.4%)が現在 または過 去 に出 現あ りと回答 してお り,性別 による違いは見 られ なかっ た。また,月齢 ごとの回答 にも差は見 られなかった。 次に,対象物 の種類 を次の5つに分類 した。 ①先駆物--指 しやぶ り,お しゃぶ り,耳たぶ,唇な ど, 自己の身体の一部 を愛着対象 とした場合。 ②先駆物 +一次性移行対象 --先駆物以外 に,以下に 述べ る一次性移行対象 を愛着対象 とした場合。 ③一次性移行対象 --毛布 ,タオル,シーツ,枕,ハ ンカチ,ガーゼな ど,布地 を愛着対象 とした場合。 ④一次性移行対象 +二次性移行対象--一次性移行対 象以外 に,以下に述べ る二次性移行対象 を愛着対象 とし た場合。 ⑤二次性移行対象 --ぬい ぐるみ,人形, ミニカー, ロボ ッ ト,アクセサ リーな ど,ぬい ぐるみや玩具 を愛着 対象 とした場合。 以上の分類 をもとに,対象物 ごとの出現状況をFlgure1 に示 した。Figurelか ら明 らかなよ うに,指 しやぶ り(す なわち先駆物) の出現率 は①② を合わせ ると23.4%であ り,移行対象の出現率は②③④⑤ を合わせ ると30.3%で あった。特に後者の結果 は,藤井 (1985)の31.1%,逮 藤 (1990)の38.0%,井原 ら (1997)の31.7%とい う結 果 ともほぼ一致す る結果 となった。 さらに, き ょ うだい構成 タイ プ別 の各対象物 の出現 状況 の違 いにつ いて検討 した。Figure 2に示す 結果 に つ いて,5 (き ょ うだい構成)× 2 (出現 の有 無 ) の x2検 定 を行 った ところ,有意差 が確認 された (x2(4)= 13.823,pく.01)。移行対象 と指 しやぶ りは一人っ子,長 Figurel 各対象物の出現率田先駆物 日先駆物 +一次性移行対象 Ea一次性移行対 口一次性 +二次性移行対象 El二次性移行対象 口なし 0% 20% 40% 60% 80% 100% 一 人っ子 長 子 中間子 末 っ子A 末 っ子B Figure2 各対象物のきょうだい構成ごとの出現率 千,末っ子A,末っ子Bに比 して,中間子において出現 が少ない (pく.01) とい う結果が示 された。 この点については,遠藤 (1991)が興味深いデータを 提供 している。彼 はきょ うだい数が3人までの子 どもを 対象 としたデータをもとに,出生順位 による移行対象の 出現率の違いについて検討 した ところ,一人っ子での出 現率が他 よりも高率 となったこと,長子 との出生間隔が より近接 した次子の出現率が相対的に高 くなることを報 告 してい る。 また遠藤 は先行研究を レビューす る中で, 母親のかかわ りは第一子 よりも第二子において減衰す る こと,第二子 に対す る母親のかかわ りの減衰は性別の組 み合 わせ によって異な り,姉 を持つ妹の場合 が最大で, 兄を持つ妹が これに次ぎ,第二子が男児の場合はほとん ど生 じないこと,きょうだい間の出生間隔が減衰に反映 され ることな どを報告 している。 以上の結果 について,遠藤は,出生順位や きょうだい 数がこ うだか らこうだ といった短絡的な議論は避 け,よ り広 く,母性的かかわ りを中心 とする環境側の外的要因 と,子 どもの気質な どの内的要因が交差 して生 じる,チ ども自身にとってのス トレスの相対的多少 を想定 し,移 行対象の必要の有無にはそれ らが反映 され ると論 じてい る。本研究 も同様 に,きょうだい構成の群間差をもって, だか らこ うだ と直接的に論 じることは避 ける立場 をとる が, しか し,中間子において移行対象 と指 しやぶ りの出 現が低率であるとい う結果は,従来の結果 とは異なる興 味深い結果である。 仮 に,先行研究の見解や一般的な言説に従 えば,中間 子は最 も母親のかかわ りが減衰 し,ス トレスフルな立場 にあるといえる。 にもかかわ らず,移行対象や指 しやぶ りの出現が少ない とい うことは,それ 自体はやは り遠藤 (1989)が言 うよ うに,単に環境側 の外的要因か らなる ス トレスか ら生 じるのではな く,子 ども自身の必要に応 じて生 じるのだ と解釈できる。ではなぜ,中間子におい て少ないのか と再度問われれば返答に困るが,少なくと も母親のかかわ りの減衰 を最有力 とす る出現仮説は,過 けられ るかもしれない。 これ らの点については今後の課 題である。 2.出現時期 と出現期間 各対象物の出現時期 と出現期間について明 らかにす る ために,出現の開始か ら消失までの時期 を尋ねた。 この 場合,すでに過去のもの となっているケースでは消失時 期は特定できるが,現在継続 中のケースでは消失時期が 特定できないため,現時点での月齢 を現在継続時期 とし て入力 した。次に,出生か ら83ケ月までを 6ケ月 ごとに 区分 した表 に,各被調査児 の開始か ら消失 (現在継続) までの期間を出現時期 として1ずつ入力 した。例 えば, 「6ケ月か ら4歳2ケ月まで」 とい う回答の場合, 6-11,12-17,18∼23,24.-29,30′-35,36-41 ,42-47,48-53のセルにそれぞれ1を入力 した。また,仮 に 「4 歳 まで」とある場合,48-53のセル まで1を入力す るの ではなく,その前月までで入力 した。
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は各対象物の月齢 区分 ごとの出現状況 を示 し た ものである。 このT
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か ら,先駆物は他 のタイプ と 比べて,生後0- 5ケ月 とい う最初期 に早 くも出現 し, 1歳か ら1歳半頃が出現のピークであること,一次性移 行対象は特に生後 6ケ月以降に見 られ始め, 2歳か ら2 歳半月頃が出現のピークであること,二次性移行対象は 特に1歳頃か ら見 られ始め,3歳か ら3歳半頃,または 5歳か ら5歳半頃が出現のピークであることが うかがえ る。 しか し,T
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は単に各時期 での出現頻度 を算 出 したものに過 ぎず,各時期で被調査児の数が異なること を考慮に入れていない。本研究の被調査児 は3歳か ら6 歳の幼児であるため,36-41ケ月までは261名すべてが 回答者であるが,それ以降回答者 は随時減少 してい く ことになる。各時点での被調査児数は42-47ケ月258獲り 48-53ケ月244名,54-59ケ月199名,60-65ケ月154名,133 乳幼児期の移行対象 と指 しやぶ りに関する調査研究 Tab一e3 各対象物の月齢区分ごとの出現状況 ㌶ 抹 36- 4 2-坐 29 21 28 4 9 47 一26 20 27 輯 先駆物 先駆物+一次性移行対象 一次性移行対象 一次性+二次性移行対象 二次性移行対象 0-5 6.-ll 12-1718-2324.-2930-3536-4142-4748-5354-5960-6566-7172-7778.-83 Figure3 各対象物の発達時期ごとの出現率の推移 (出現頻度/被調査児数) 団1年未満 田l年以上3年未満 Ej3年以上5年未満 E35年以上 □不明 0% 20% 40% 60% 80% 100% 先駆物 先駆物 +一次性移行対象 一次性移行対象 一次性 +二次性移行対象 二次性移行対象 Figure4 各対象物の出現開始からの継続期間 66-71ケ月112名,72-77ケ月64名,78-83ケ月21名 と なる。そ こで,各時期 における各対象物の出現率の推移 を正確 に把握す るため,各時期の出現数 を各時期の被調 査児数 で除算 した結果 をFigure3に示 した。 Figure3か ら分かるのは,各対象物の出現率は乳幼児 期 を通 じて減衰 してい くものの,それ は急速 な ものでは な く極 めて緩やかな もの とい うことである。 もちろん, 対象物 によって差異があ り,先駆物は3歳 を過 ぎた頃か らの減衰が 目立つが,それで も5歳以降でも一定程度残 存 していることが分かる。一次性移行対象 は5歳 を過 ぎ たあた りの減衰が少 し目立っが,やは り急激 な ものでは ない。逆に増大 したもの として,二次性移行対象 があげ られ る。 これは3歳頃に一度緩やかに上昇 した後,5,6 歳頃に大きく上昇 している。 では,各対象物は出現 してか らどの くらいの期 間継続 して現れ るのか。Table 3とFigure 3は,各時期 の出現 頻度 と出現率 を明 らかに した ものに過 ぎないため,その 継続 の程度 は一見明 らかであるよ うに見えて,実 は明 ら かではない。そこで今度は消失時期 (現在継続時期)の 月齢 か ら開始時期の月齢 を減算 したものを出現期 間 とし て算 出 し,それ を1年未満, 1年以上 3年未満, 3年以 上5年未満, 5年以上,不明のいずれかに分類 した。
Flgure4は各対象物の出現開始か らの継続期間を示 し たものである。Figure4か ら,二次性移行対象を除 く対 象物は,いずれ も3年以上の長期間にわたって愛着を維 持 されてい ることが分かる。1年持たず消失 したケー スはまれであった。 この結果 について,3年未満群 と 3年以上群 に分 けて5 (対象物)× 2 (継続期 間)の x2検定を行 った ところ,有意差が確認 された (x2(4)
-21.741, pく.01)。二次性移行対象 は他 の対象物 に比 し て,3年未満の継続期間のケースが多いことが示 された (pく.01)。 もちろん,二次性移行対象の継続期間が短いのは,そ れ 自体の出現が遅いこととも関連 している。先ほど示 し たように,その出現のピークは3歳頃 と5,6歳頃 とい うように,他 と比べて遅い。仮に3歳で出現 した とした ら,3年以上 と答 えられ る者 はわずかなのだ。 しか し, その一方で,現在継続中との回答 と過去に出現で現在消 失 との回答の比率が,他の対象物の場合 と同程度である ことにも注 目すべきであろ う。二次性移行対象のみをあ げた18名の うち,現在継続中は12名,過去に出現で現在 消失は6名であ り,他の比率 と同等であった。また,1 年以上3年末満に分類 された11名の うち6名は,実質2 年未満に該当した。 こうした点か らも,やは り二次性移 行対象は比較的短い期間で消失 に至 ることが推察 され る。 こうした結果の解釈には,先行研究の知見が手がか り を与えて くれる。Hong (1978)によれば,一次性移行対 象は生後7-12ケ月頃に愛着が生 じ,接触欲求や分離不 安な どとの関係 において重要な役割 を果たすのに対 し, 二次性移行対象は2,3
歳頃に愛着が生 じ, 自律性や 自 立などとの関係 において重要な役割 を果たす と考えられ るとい う。 この点をふまえて考えると,二次性移行対象 の出現のピークが3歳頃 と5,6歳頃 とい うのも納得が い く。なぜならちょうどその頃は, 自我の芽生えの時期 であ り,"こ うな りたい 自分"をぬい ぐるみや人形 との 関係の中で創 り出す ことによって満足 した り,あるいは 年下のきょうだいの誕生に遭遇 して,親 との関係の中で 寂 しさを感 じた り,甘えたいけど我慢 しなくてはな らな い とい う抑制を多 く経験する時期 と推測 される。そのよ うな時期にあって子 どもを慰 め,困難な現実 と何 とか向 き合 うことを可能にさせてくれ る役 目を,一時的である にせ よ,二次性移行対象は担ってくれているのかもしれ ない。 このように移行対象は,乳幼児期の子 どもの成長 ・ 発達を考える上で大変興味深い問いを投げかけて くれる のである。 3.出現状況と出現理由 移行対象や指 しやぶ りをす る子 どもは,それをどのよ うなときに必要 とす るのだろ うか。Table 4は,保護者 の自由記述 (質問8)の うち主な項 目をとりあげ,その 出現頻度をまとめたものである。何人かの保護者は,出 現状況 として複数の項 目をあげた。従って,各セルの該 当者 は排他的ではない。百分率は出現あ り回答者116名 を母数 として算出 した (以下,同様)0Table4に示す よ うに,保護者の大部分は移行対象 ・指 しやぶ りの出現状 況 として入眠 ・出眠時をあげた (85%)。次いで,テ レ Tab 】e 4 移行 対象・指し やぶ りの出現状況 人数 % 入眠 ・出眠 テ レビ視聴 情緒不安定 退屈 外出 遊び その他 不明 99 85% 16 14% 12 10% 12 10% 11 9% 10 9%
98
% 0 0% Table 5 移行対象・指し やぶ りの出現理由
人数%
情緒安定性 対象物の魅力 授乳の問題 親の不在 理由不明 先行する習慣 生得性 遺伝性 きょうだいの誕生 近接性 遊び相手の不在 空腹 抱き時間の問題 その他 42 36
%
25 22
%
21 18
%
15 13
%
15 13
%
13 11
%
87
%
65
%
43
%
43
%
33
%
33
%
22
%
87
%
135 乳幼児期の移行対象 と指 しやぶ りに関する調査研究 ビ視聴時,情緒不安定時 (不安,怒 られて泣 く,悲 しい, 困ったなど),退屈時 (ぼーっとしている時,手持ちぶ さたの時など),外出時,遊びの時がそれぞれ10%前後 であった。 これ らはいずれも先行研究で指摘 されている 出現状況 と一致する。 では,なぜ彼 ・彼女 らは移行対象や指 しやぶ りを必要 とするのであろうか。Table5は,保護者の自由記述 (質 問9)の うち主な項 目をとりあげ,その出現頻度をま と めたものである。これ らはあくまでも保護者の解釈によ る出現理由であるが,以下にそれぞれの事例を簡単に列 挙 しておこう。波線部は各項 目-の同定箇所であり,波 線の後の ( )内がその項 目である。 (事例1) 0歳0ヶ月か ら3歳4ケ月まで,母親の唇を 触 りながら指 しやぶ りをして就寝。/産まれてからす ぐ の癖なので (生得性)分か りません。唇を触 るのは, がそばにいることを確認する安心材料だったような気が します く情緒安定性)。 (事例7) 1歳 0ヶ月から4歳6ケ月現在まで,指 しや ぶ りと大 きなク ッシ ョン-の愛着。/指 しやぶ りは ぼーっと何もしていないとき,眠るとき。クッションも 同様。また,他の子がクッションを使 うと怒 ります。/ 指 しやぶ りは母乳があま り出ない と分かっていたのに, 意地になって ミルクと混合にせずに母乳にこだわったた め く授乳の問題) と思 う (3ケ月 くらいまで)0 いっも空いていたせいかな? (空腹) お腹が クッションは子 ど もを抱 く時間が他の子 よりも少なかったため (抱き時間 の問題)。
/4
番 目の子なので他の子に忙 しく (親の不 荏),抱き心地のよいクッションが居心地のよい場所 と なったのかもしれません。子 どもの思 うに任せています。 (事例18)1歳 0ケ月から3歳8ケ月現在まで指 しやぶ り,2歳 6ケ月から現在までタオルや服のタグ-の愛着。 /不安なとき,退屈なとき,眠たいとき,緊張 している とき,怒 られてひ どく泣いたとき。指 しやぶ りをすると 落ち着いてくる様子 (情緒安定性)0/タオルや服のタ グは弟を妊娠,出産 したことによるのではないか (きょ うだいの誕生) と思 う。指 しやぶ りは寝るときの添い乳 (寝ながらおっぱい)をやめたから (授乳の問題)かなあ -・と思 う。 (事例30) 1歳 6ケ月か ら4歳 7ケ月現在まで,枕-の 愛着 と指 しやぶ り。/は じめは羽毛の弾力のある枕の角 にす ごく執着 して,暇があればその枕の角を目に入れた り足の裏でさすった りしていま した。その うち指 しやぶ りも始ま りま した。/いつだったか 「なんで指 しやぶ り をす るの?」と聞いた とき,「寂 しいか ら」 と娘が答 え て くれま した (情緒安定性)。父は帰 りが遅 く,娘を布 団に寝かせて後片付けや明 日の準備をした りしていたの で寂 しかったのだと思います (親の不在)0 (事例34) 1歳 2ケ月か ら5歳4ケ月現在まで,毛帯 と ぬいぐるみとお くるみ-の愛着。/寝るときは必ず布団 に一緒に並べて寝る。ないと探 し回る。/赤ちゃんのと き,泣いた りす るとそのぬい ぐるみを抱っこさせたり,
その毛布でくるんで抱っこして寝かせつけた りしていた ためだと思 う (先行する習慣)。 (事例48) 0歳7ケ月か ら5歳2ケ月現在まで,お くる み-の愛着。/赤ちゃんの頃のお くるみなので,ずーっ とそばにある感 じ (近接性)です。寝るときに抱いて寝 ます。洗濯を したときは濡れていても触 りたが ります。 /小 さな頃か らなので, どうして持つようになったかは 分か りません(理由不明)。ただ,においだと思います (対 象物の魅力)。 2,3歳の頃はよくにおいをかいでいたの で。 (事例74)0歳 4ケ月か ら3歳10ケ月まで,下唇 をかむ。 /最初は歯が生え始めてきて気持ち悪いのかと思 ってい ましたが,かむことによって落ち着 くとい うか安 心する ような感 じ (情緒安定性)が しました。/その うち癖に なって一 日中かんで,寝 るときもかんでいたの で,寝 てる隙にはず してあげま した。/なぜ下唇をかむ ように なったのかは分か りません
(理由不明)が,指 しやぶ り の代わ りではない かと思います。 3歳になった頃か ら注 意 していましたが,なかなか治 らなくて,入園前 に自然 としなくな りました。 (事例91) 3歳 0ヶ月か ら3歳8ケ月まで,ぬい ぐるみ-の愛着。/ ちょ うど4人 目の妊娠 が分かった ときに, いつ も検診 に行 くときだけ持 っていた。 出産後 は嘘の よ うに持 ち歩かな くなった。/弟か妹 ができることを本能 で知 って,ち ょっぴ り背伸び したかったのかな ? (き ょ うだいの誕生)検診 中も大事そ うに持 っていた し,ナ-スに も見せ ていた。お兄 ちゃんになることに 自信 を持 ち たかったのか,それ ともぬい ぐるみ を私 と思っていたの か くその他),本人に聞いた ことがないので分か りませ ん。 (事例112) 2歳 0ヶ月 か ら4歳 0ケ月現在 まで,描 しやぶ り。/普段 はまった くないが,怒 られ泣 き出 し甘 える ときは,指が 口に入 る。怒 られてい るときなので
,
「手 は 口か ら出す。それか らどうす るの」 と怒 り,謝 るまで 待 ち,謝れば別 に指 を くわえることについては言いませ ん。/ 自分が本 当に悪い ことを した と自覚が出始 めた頃 だった と思います。悪い ことを して怒 られ て も, どうし て も謝 りた くな くて,それ が甘 えに変 わって, しか し, 親が甘 えることを許 さない とき,指 を 口に入れ ることで その気持 ちを押 さえよ うとしてい るのではない か と思い ます (その他)。 4.受容 と理解 チ ビもたちの移行対象-の愛着や指 しやぶ りを,保護 者 は どの よ うに受 け止 め,理解 し,対応 しているのだろ うか。基本的に , 先 の出現状況や 出現理 由 と比べ る と, 保護者 は この点について多 くを語 って くれ なかった。そ のため,相対的に多 く資料が集 まった次の観点 にのみ焦 点 を絞 って, 出現頻度 をま とめてみた。 その観 点 とは, 移行対象-の愛着や指 しやぶ りを,多少無理 してで もや め させ るべきだ と考 えてい るか,あるいは子 どもが 自然 にや め るよ うにな るの を待 つ べ きだ とかんが えてい る か,である。 もちろん, こ うした問題 は単純な二分法で 分 け られ るものではない。 両方面の間には折衷案 ともい Table6 移行対象 ・指 しやぶ りへの受容と理解 人数%
無理 にや め させ ない方向 やめさせる方 向 時が来ればや め させ る方向 緩やかにや め させ る方向 24 21% 9 8% 5 4% 3 3% 過去の経験 をもとに待つ方向 1 1% うべ きい くつかの中間的な意見 も出 され た。Table6は, その受容 と理解 の方 向性 を 5つ に分 けて,その出現頻度 をま とめた ものである。 最 も多 く見 られたのは,移行対象-の愛着や指 しやぶ りを無理 にや め させ ない方 向である。以下にい くつか事 例 をあげ よ う。 (事例10)1歳 0ヶ月か ら4歳1ケ月現在 まで,指 しや ぶ り。/4
歳 になった とき,「
4
歳 さんだか らや め る」 と本人は言ったが,や は り眠い ときには無意識 に してい るよ うである。今 の ところ無理 にや め させ よ うとは して いない。様子 を見て 「や めてみ る?」とい う程度 に声 を かけてい るQ (事例83) 1歳7ケ月か ら4歳5ケ月まで,毛布-の愛 着。/家族 としてはそれ があれ ば落 ち着 くのな ら-・と い う気持 ちでいた。最近 は 自然 にな くて も眠れ るよ うに なった。また,毛布 を見た ら寝 る時間 とい うことが分かっ ていた よ うだ。 (事例48) 0歳7ケ月か ら5歳2ケ月現在 まで,お くる み-の愛着。/5
歳 になってか ら少 しずつ洗濯 も我慢 で きるよ うにな りま した。特 に絵本 の 「ジェイ ンの毛布 」 を読 んでか らです。い
つかは さよな らをす る とい うのが 分かったみたいです。 「もー」 と読 んでい るこのお くる みは,子 どもの宝物 として家族 で も大切 に しています。 事例10では, 「や めてみ る?」と声かけは してい るが, 基本的にはその子が 自然 にや めるよ うになるのを待 って い るよ うである。事例83も同様 に,家族 はその子 に とっ てのその対象物 の意味を理解 し,意味がある うちはその まま に してお く方 が よい と考 えてい る よ うで あ る。 ま た,子 どもに とってその対象物 はある種 しる しの よ うな ものではないか とも考 えてい る。事例48では,家族 は絵 本 「ジェイ ンの毛布」 を読んで聞かせ ,いっか 自分で さ よな らす るだろ うと子 どもに語 りかけ,子 ども自身 もそ れ によって, 自分 とその対象物 との関係 をよ り具体的に 理解 できた様子である。 次に,や め させ る方 向の事例 を紹介 しよ う。 (事例18)1歳 0ヶ月か ら3歳8ケ月現在 まで指 しやぶ り,2歳6ケ月か ら現在 までタオルや服 のタグ-の愛着。137 乳幼児期の移行対象 と指 しやぶ りに関する調査研究 /なるべ くやめさせたいので,「やめな さい」 とか 「恥 ずか しいよ」 といっている。 (事例78) 0歳 6ケ月か ら4歳 5ケ月現在まで,指 しや ぶ り。/テ レビを見ているとき,寝 るとき,集 中してい ない とき。手を軽 くたたいた り,注意 した りするが,す ぐに指 しやぶ りをする。キズテープを貼った り
指
に絵を
描いた り,いろいろやったけど治 らなかった。 両事例 ともに,家族はなるべ くそれをやめさせたいと 考え,言葉で直接的にやめるようにと言っている。事例 78ではそれに加え,手を軽 くたたいた り, しゃぶる指先 にテープを貼るなどしている。 しか し両事例 ともに,そ うした取 り組みは現在 まで効果 を発揮 していない よ う だ。 次に,時が来ればやめさせ る方向と緩やかにやめさせ る方向を見てみよう。 (事例66) 1歳 0ヶ月か ら6歳5ケ月まで,毛布-の愛 着 と指 しやぶ り。/家族 (私 と夫)は1年位前から 「1 年生になるし,やめたは うがいい」と言っていますが, なかなか難 しいです。 (事例1) 0歳 0ヶ月か ら3歳4ケ月まで,母親の唇を 触 りながら指 しやぶ り。/3
歳を過ぎてやめさせ よ うと 思い,両手を握って気を紛 らわせなが ら寝かせつけてい たら, 1ケ月 くらいで自然に
しなくなった。 (事例95) 0歳 1ケ月か ら2歳 6ケ月まで,お しゃぶ り -の愛着。/お しゃぶ りをやめさせ よ うとした ときは, あや した り,他の玩具で気をそ らした りしていた。 事例66は,家族は子 どもが小学校に入学する前に,そ れをやめさせた方がよいのではないかと考えている。似 た よ うな例 として,「入園前 には」「
3
歳 になった ら」な どが見 られた。発達の一つの節 目を境に,何 とかそれ と お別れ させる方法を,家族は模索 しているのである。事 例1と95では,家族は子 どもに言葉で直接的にや めるよ うに言 うのではなく,寝てる間に何 らかの方策を講 じた り,気をそ らした りして,子 ども自身が気づかぬ うちに それ とお別れするよう仕向けている。 以上のように,子 どもによる対象物-の愛着や指 しや ぶ りを目の当た りにして,保護者は実に様々なことを考 えるが,本研究で集め られた 自由記述 を見る限 り,無理 にでもやめさせたい,あるいはそ うすべきだ と考えてい る保護者は,相対的にずいぶん少ないようだ。保護者の 多 くはそれを子 どもにとって必要なことと考え,子 ども な りの意味に対 して理解 を示 し,子 どもが 自然 とそれを 手放すまで見守ろ うと考えている。一方で,それが永遠 に続 くことも望ま しくない ことを理解 している。それゆ え,保護者によっては子 どもが気づかぬようそれを遠 ざ けた り,気をそ らした り,あるいは時期が来た らやめよ うね と,親子の対話の中で子 ども自身に自覚を促そ うと した りするのだ。 また,移行対象や指 しやぶ りの出現は,保護者 によっ ては自らの子育てや子 ども-の接 し方 を見直す機会を与 えて くれるようだ。保護者にとっては保護者な りの理由 があってのことではあるが,親 と子の間に現れた第三者 ともい うべきその対象物は,それまでの親子関係 にいっ たい何を訴えかけているのか と悩み考えた とき,親チ関 係の中でそれまで見えなかったものも見えてくるのかも しれない。最後に保護者によるそのよ うな記述 を紹介 し て,本論文を締めくくることにす る。 (事例211) 3歳0ヶ月か ら4歳 0ヶ月まで, シャツ-の愛着。3人きょうだいの 3番 目の男児。/テ レビを見 なが らシャツをかんでいま した。一時的なもので,やっ ていた時期が2回あ りま した。や らな くなった と思って いた ら,何 カ月後かにまたや り始めま した。両方 とも 1ケ 月の間だったと思います。/その2回 ともの時期 は,や は り自我の強い時期だったように思います。手 のかかる 子 どもでもあった し,3人の子育てで大変だったので, 育児に余裕のない時期で,私のほ うも子 どもに対 して考 えの足 りない部分もあったよ うに思います。/余談です が,一番上のお姉ちゃん (10歳)は指 しやぶ りな どなかっ たものの,その代わ りにいまだに人の耳を触る癖 があ り ます。特に自分が寝 ようとす るときにひ どく出ます。旦 歳に して二人の妹 ・弟のお姉 ちゃんになって, あま り甘 えられなかったのではと,耳を触ってくるたび にその子 に対 して悪いなとい う気持ちでいっぱいです。 こ うい う 症状はやは り寂 しさの表れなので しょうか ?もっ ともっ と余裕のある子育てをしたい と思 う今 日この頃 です。文
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