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二次使用料制度に関する研究 : 中国著作権法における規定の整備を中心に

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Academic year: 2021

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(1)二次使用料制度に関する研究 ──中国著作権法における規定の整備を中心に── 胡 雲 紅. はじめに 商業用レコードの二次使用料制度とは,放送 事業者又は有線放送事業者が,市販されている. に二次使用料制度を設定するのかについて検討 する. 一.二次使用料制度に関する概説. 商業用レコードを用いて音楽等の実演を放送す. ㈠ 二次使用料を創設する意義. る際に実演家又はレコード製作者に一定の使用. 日本において商業用レコードの二次使用料制. 料を払わなければならない制度である.ローマ. 度が設けられた趣旨について,「著作権法逐条. 条約や WPPT によれば,商業用レコードの二. 講義」によれば,「今日における機械的手段の. 次使用料制度は音を演ずる実演家のみに適用さ. 発達によって,実演家の生実演に代えて実演が. れている.すなわち,放送機関は固定された映. 録音されているレコードの使用が一般化してお. 像の実演に対しては,二次使用料を払う義務が. りますが,もしレコードという機械的手段が存. 課されていないのである.. 在しなかったならば実演家が実演を行うことに. 2007 年 6 月に,中国は WPPT に加盟する際. よって収益をあげることができたはずでありま. に,第 15 条第 1 項における商業用レコードの. すから,使用されたレコードに吹き込んでいる. 二次使用料制度に関する規定を留保することと. 実演家であるか否かを問わずこのようなレコー. したが,国内において実演家等の要望及び放送. ドの二次使用によって生ずる実演家の機械的失. 機関と著作隣接権者の利益のバランスに鑑みれ. 業について補償を与えようという点にありま. ば,近い将来二次使用料制度の整備が必要とな. す.更に,レコードをその業務の不可欠の要素. ると思われる.二次使用料制度が設けられなけ. として使用する者は,その使用によって,実演. れば,WPPT の他の加盟国の実演家は中国に. 家に出演を依頼することなく相当の収益をあけ. おいて,国際条約の実施に関する規定により条. ているわけでありますから,ある程度その収益. 約における二次使用料請求権を行使することが. の一部を実演家に還元すべきであるという経済. できるが,中国の実演家は行使することができ. 的均衡論の考え方も含まれております」と説明. ないということは内外国の差別待遇となるおそ. されている1).換言すれば,商業用レコードの. れがある.また,中国国内において歌手などの. 二次使用料制度は,実演家にとって,機械的失. 実演家達は自分の権利保護に対する意識が高ま. 業についての補償であるとともに,実演家と放. りつつあるため,二次使用料請求権の創設を望. 送事業者の間の経済的なバランスが考慮された. んでいる.したがって,本稿においては,二次. 結果であるといえる.. 使用料の意義及び国際条約における二次使用料. 録音録画機械 の 出現 に 伴 い,公衆 は 劇場 な. に関する規定を紹介した上で,中国は今後いか. どに行かなくても,CD やレコードなどを買え.

(2) 32. 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 1・2 号(2009 年 8 月). (32). ば,歌手等の実演を鑑賞することができるよう. レコードに限られている.まず,そのレコード. になった.それに加え,放送事業者の存在によ. は「商業上の目的のために発行されたもの」で. り,公衆は CD やレコード等の固定された実演. ある.他の場合,例えば,放送のために作成さ. を買わなくても,鑑賞することができるように. れたレコードあるいはまだ発行されていないレ. なった.放送事業の発達に伴い,実演家にとっ. コードは,ここで言うレコードの範囲に含まれ. て,機械的失業はいっそう厳しくなりつつあ. ないと考えられる.次に,「放送又は公衆への. る.このような現状を踏まえ,二次使用料制度. 伝達」に使用される場合に限られている.ここ. が設けられることとなった.. でいう「公衆への伝達」行為は放送以外の方法 で実演を公衆に伝達する行為をさすと思われ. ㈡ 二次使用料に関する国際条約における規定. る.したがって,航空機内において行われる音. 1.ローマ条約における規定. 楽の放送や,インターネット3)を通じて,伝達. ローマ条約第 12 条においては,レコードの. する行為も含まれると思われる.最後は,「直. 二次使用 に 関 す る実演家又はレコード製作者. 接」でなければならない.すなわち,実演家又. の権利が規定されている.ローマ条約第 12 条. はレコード製作者はレコードを直接用いた放送. の創設については,「レコード使用の結果は,. 又は公衆への伝達行為に関し,報酬を請求す. 芸術家にとっての機会を減らすことになる.. ることができるが,その放送を受信し有線放. 仕事を失い,また仕事を得ることが更に難し. 送による同時再送信を行う非直接的な行為に. く な り,彼 ら は,技術的失業 に 苦 し む.一方. 対しては,報酬を請求することができないこ. では,更に彼らは,彼らのレコードを使用す. ととなる.. る者が得る利益の配分を受けない.彼らは娯. ここで注意すべきであるのは,ローマ条約. 楽市場において,逆説的に云えば彼ら自らが. 第 3 条におけるレコードの定義によれば,レ. 寄与したレコードとの競争に直面している.」. コードは実演の音その他の音の専ら聴覚的な. 2). と解説されている .. 固定物に限られているということである.し. 第 12 条によれば, 「商業上の目的のために発. た がって,映画 や 無言劇 な ど の 録音録画物又. 行されたレコード又はその複製物が放送又は公. は録画物に関しては,実演家がレコードの二. 衆への伝達に直接使用される場合には,単一の. 次使用料を請求することはできないと考えら. 衡平な報酬が,使用者により実演家若しくはレ. れる.. コード製作者又はその双方に支払われる」こと. しかし,放送機関は映画のサウンド · トラッ. となっている.また, 「当該報酬の配分の条件. クを用いて放送を行う場合,実演家に二次使用. については,当事者間に合意がない場合には,. 料を支払う義務があるか否かについて検討すべ. 国内法において定めることができる. 」と定め. きである.同条約第 19 条によれば,「この条約. ている.すなわち,レコードに録音された実演. のいかなる規定にもかかわらず,実演家がその. 又はその複製物が放送又は公衆への伝達を目的. 実演を映像の固定物又は映像及び音の固定物に. として直接利用される場合には,放送事業者あ. 収録することを承諾したときは,そのとき以後. るいは公衆へ実演を伝達する者は実演家若しく. 第 7 条の規定は,適用しない」と定めている.. はレコード製作者又はその双方に報酬を支払わ. すなわち,映像又は映像と音の実演を行った実. なければならないこととなっている.. 演家はいったん実演を収録する許諾をすれば,. ⑴ 適用対象レコードの範囲. その固定された実演に関しては,第 7 条におけ. 二次使用料徴収の対象となるレコードは,レ. る権利が及ばなくなるのである.しかしなが. コードすべてではなく,一定の条件を満たした. ら,ここでいう実演家の権利が適用されない固.

(3) 二次使用料制度に関する研究(胡). (33). 33. 定物は「映像の固定物」と「映像及び音の固定. 際に,収益はどうなるのかについて全くわから. 物」に限られている.映画のサウンド · トラッ. ないため,低い報酬をもらう可能性がある.仮. クのような専ら音の固定物に対し,俳優である. にその映画が大ヒットになり,放送やビデオに. 実演家が権利を行使することができるかどうか. 利用されると,予想以上の利益を得ることがで. 明らかでないのである. 「隣接権条約 · レコー. きるが,この利益は全部映画の製作者に属する. ド条約解説」によれば, 「実演家がその実演を. こととなる.このような状況は実演家にとって. 映画に含めることに同意したときから,実演家. 不利益ではないかと思われる.とりわけ現在あ. の最低限の保護を保障する第 7 条は,適用され. る映画が成功できるか否かはかなりの程度でそ. なくなる.実演家は,固定が映画館上映を意図. の映画に出演している俳優達に大きく頼ってい. したか又はテレビ放映を意図したかにかかわら. るため,視聴覚的実演家の保護について無視し. ず,固定された自己の実演のいずれの使用をも. てはならない課題であると思われる.. 阻止することができない.例えば,ある俳優が. ⑵ 二次使用料請求権の主体. 映画スタジオ又はテレビ · スタジオにおいて,. ローマ条約第 12 条によれば,商業用レコー. ある役を演ずる.彼がカメラの前にいるという. ドが放送又は公衆への伝達に使用される場合に. ことだけで,彼は,彼の演技が映画館上映又は. 権利者に単一の衝平な報酬が支払われる5).そ. テレビ放映のために映画に収録されることに同. の報酬を請求する権利は,それが支払われるべ. 意したことになる.自分の演奏が映画のサウン. き各締約国の国内法によって定められる事項で. ド · トラック用に録音されることに同意する音. あ る.受益者 は,実演家又 は レ コード 製作者. 楽家についても,同じである.いったん公開さ. あるいはその双方とすることができる.すな. れると,それらの実演は,実演家が考えていな. わち,報酬請求権の主体としては,「実演家の. かった使い方(例えば他の映画や放送への挿入. み」,「レ コード 製作者 の み」,「実演家及 び レ. 又は販売用のビデオの作成)をすることができ. コード製作者の双方」という三つの選択肢があ. る.俳優も音楽家も,そのような使用について. り,そのいずれを選ぶのかは締約国に委ねられ. の支払いを確保するために条約を援用すること. ている.また,その報酬の配分については,当. はできない.彼らの唯一の救済は,最初の映画. 事者の合意によって分配できるが,当事者間に. の製作者に対してのみ,かつ,契約がその用に. 合意がない場合には,国内法において定めるこ. 4). 定めている場合に限り,存在する. 」 とされて. とができるとされている.換言すれば,契約優. いる.すなわち,実演家はいったん映画の実演. 先の原則により,当事者間の契約において報酬. に参加すれば,音のみの固定物か映像及び音の. に関する合意があれば,契約の条件に従い報酬. 固定物かにかかわらず,その映画の著作物に関. が支払われるが,報酬に関する合意がなけれ. するいずれの利用に対しても,第 7 条における. ば,国内法の規定によって,報酬が支払われる. 実演家の最低限の保護を享有することができな. こととなる.. くなる.. こ の よ う に,レ コード の 二次使用 に 関 し,. しかしながら,映画の著作物の流通の特殊性. ローマ条約では実演家に報酬を請求する権利の. 及び映画の収益の不確定性に鑑み,実演家であ. 根拠規定 は 一応規定 さ れ て い る も の の,実演. る俳優達の権利が映画の発行前に契約により決. 家がレコードの二次使用に関し,報酬請求権を. められることは,実演家にとって,不利益にな. 有するか否かについては,各締約国の国内法に. るおそれがあるのではないかと考えられる.有. よって定められることとなる.. 名なスターである実演家を除き,特に普通の脇. ⑶ 義務主体. 役である俳優達又は若手俳優が映画に参加する. 第 12 条によれば,二次使用料を支払う主体.

(4) 34. 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 1・2 号(2009 年 8 月). (34). は,発行されたレコード又はその複製物を用い. いるかどうかにかかわらず,そのレコードは商. て放送や公衆への伝達を行う者と考えられる.. 業上の目的のために発行されたものとみなされ. すなわち,ラジオ局やテレビ局などの放送機関. る,ということを意味している.」と説明して. 及び他の公衆への伝達を行う者である.. いる7).. 2.WPPT における規定. また,WPPT 第 15 条に関する合意声明によ. WPPT で は,権利者 に 商業用 レ コード の 放. れば,「第 15 条の規定は,フォークロアの実演. 送及び公衆への伝達に関する報酬請求権も付与. 家及びフォークロアを録音するレコード製作. されている.. 者に対して,そのようなレコードが商業的な. 第 15 条第 1 項によれば, 「実演家及びレコー. 利益のために発行されていない場合に,同条が. ド製作者は,商業上の目的のために発行された. 規定する権利を付与することを妨げるものでは. レコードを放送又は公衆への伝達のために直接. ないと理解される」と規定されている.すなわ. 又は間接に利用することについて,単一の衡平. ち,レコードに固定されたフォークロアに関し. な報酬を請求する権利を享有する」とされてい. ては,商業的な利益のために発行されていなく. る.この規定を見ると,二次使用料請求権の権. ても,放送又は公衆への伝達のために利用され. 利者,義務主体及び対象物であるレコードが限. る場合に,利用者はフォークロアの実演家及び. 定されているのである.. フォークロアを録音するレコード製作者に報酬. ⑴ 適用対象となるレコードについて. を支払わなければならないと考えられる8).例. WPPT 第 15 条第 1 項によれば,二次使用料. えば,放送機関は研究のためにレコードに固定. に関するレコードである「商業上の目的のた. されたフォークロアを利用する場合に,その. めに発行されたレコード」とは,CD やレコー. フォークロアの実演家及びレコード製作者に報. ドなどの有体物に固定された音であり,その. 酬を支払うことが必要となる.. ほか,同条第 4 項によれば,「有線又は無線の. このように,WPPT における商業用レコー. 方法により,公衆のそれぞれが選択する場所. ドの適用範囲はウェブサイトにおける音の固定. 及び時期において利用が可能となるような状. 物に及ぶ点で,ローマ条約より広いといえる.. 態に置かれたレコードは,商業上の目的のた. ⑵ 利用方法について . め に 発行 さ れ た も の」も「商業用 レ コード」. 商業上のレコードの利用方法に関し,実演家. 6). に含まれている .すなわち,インターネット. 又はレコード製作者の報酬請求権がローマ条約. 環境に置かれたレコードの音はすべて商業上の. 第 12 条においても付与されているが,「レコー. 目的のために発行されたものとみなされる.例. ド又はその複製物が放送又は公衆への伝達に直. えば,放送機関が,CD やレコードを直接利用. 接使用される場合」にのみ,その権利が働き,. せず,インターネットから音楽又は歌をダウン. 間接に使用される場合には働かなくなる.すな. ロードして公衆に放送したとしても,その音楽. わち,「再放送」及びその他の再送信が報酬請. 又は歌が利用可能となるような状態に置かれて. 求権の対象から除外されることとなっている.. いたのであれば,商業上の目的のために発行さ. これに対し,WPPT においては,直接又は. れたレコードと同様に権利者に二次使用料を支. 間接を問わず,商業上の目的のために発行され. 払わなければならない.. たレコードを放送又は公衆へ伝達する行為であ. 利用可能化状態に置かれたレコードについて. りさえすれば,実演家及びレコード製作者に報. WIPO は, 「これは,ウェブサイトにレコード. 酬請求権が与えられている.換言すれば,商業. をアップロードして「利用可能化」することに. 用レコードを用いて放送,再放送又はその他の. より,その行為が商業上の目的や効果を持って. 再送信が行われるいずれの場合にも,実演家及.

(5) 二次使用料制度に関する研究(胡). (35). 35. びレコード製作者に報酬を支払わなければなら. め,実演家やレコード製作者にローマ条約によ. ないのである.. り強い権利が付与されていることとするもので. ま た,こ こ で い う「公 衆 へ の 伝 達」は,. あると考えられる.. WPPT 第 2 条における定義によれば, 「実演の 音又はレコードに固定された音もしくは音を表. ㈢ 日本著作権法における規定. すものを放送以外の媒体により公衆に送信する. 日本 に お い て,1971 年 に,現在 の 著作権法. ことをいう」とされている.WIPO 解説によれ. が施行され,初めて実演家に放送局での商業用. ば,この定義には, 「公衆によって受信される. レコードの二次使用に対する使用料請求権が与. ための無線送信が除外されているが,いったん. えられた.使用料を徴収する際の指定団体とし. 送信されたもの(放送されたものを含む)の有. て文化長官により認可を受けたのは,社団法人. 線再送信はすべて含んでいる.また,この定義. 日本芸能実演家団協議会(略称:芸団協)であ. には,有線(又は無線)による(レコード)の. る.また,放送局側の使用料額の公証及び支払. 「利用可能化」 (WPPT 第 10 条及び第 14 条に. の窓口になっているのは NHK 及び日本民間放. 9). 規定されている)は含まれていない」 とされ. 送連盟である11).. ている.. 日本著作権制度審議会はレコード二次使用料. 第 15 条の適用について, 第 2 条において「公. の趣旨について以下のように述べている.「レ. 衆への伝達」は,レコードに固定された音又は. コードの二次使用によって実演家がいわゆる機. 音を表すものを公衆が聴くことができるように. 械的」失業に陥ることについては,実演家に何. することを含む」とされている.すなわち, 「こ. らかの補償を与える必要があると考えられると. のような行為は,公衆の面前で行われるか,又. ころであり,また,レコードが通常目的とする. は,少なくとも公衆向けにオープンになってい. 使用の範囲よりもさらに広く多くの人が聴ける. る場所で行われるものであり,ベルヌ条約の場. ように使用され,かつ,それによって利益が挙. 合 に は「上演・演奏」 (第 11 条⑴ ⒤及 び 第 11. げられる場合には,そのようなレコードの二次. 条の 3 ⑴ ⒤又は放送された著作物の音の「公. 使用によって利益を得ることをまったく自由で. の 伝達」 (第 11 条 の 2 ⑴ ⒤)に 該当 す る」と. あるとすることは,レコード製作者とレコード. 説明されている10).. 使用者の利益の均衡から考えて適当ではないと. ⑶ 報酬請求権の権利者. 考える」12).したがって,日本においては,レ. ローマ条約第 12 条で規定されている報酬請. コードの二次使用について,実演家の機械的失. 求権の権利者は, 「実演家若しくはレコード製. 業に関し,実演家に何らかの補償を与える必要. 作者又はその双方」となっているため,実演家. があると認識しつつ,報酬のうち相当部分が実. に とって,報酬請求権 は 獲得可能 な 権利 で あ. 演家に分配されるべきであるとされていた.. り,確実な権利でなかった.WPPT 第 15 条に. 日本著作権法第 95 条 に お い て は,放送事業. おいては,報酬請求権の受益者が明らかに規定. 者及び有線放送事業者は,商業用レコードに録. され,実演家及びレコード製作者の双方となっ. 音された実演を用いて放送又は有線放送を行っ. ている.実演家やレコード製作者にとって,確. た場合には,当該実演に関係する実演家に二次. 実な権利であるといえる.. 使用料を支払わなければならないと規定されて. これは,WPPT における二次使用料に関す. いる.. るレコードの範囲,利用方法及び権利者等の規. 1.二次使用料を受ける実演の範囲. 定は,インターネットの発達に伴う著作権上の. 二次使用料を受ける実演に関しては,レコー. 問題への対応のために設けられた制度であるた. ドに収録された実演に限られているため,映画.

(6) 36. (36). 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 1・2 号(2009 年 8 月). や無言劇など,映像を固定した録画物を放送又. 放送を業として行う者をいう」とされている.. は有線放送によって公衆に伝達する際に,その. この放送事業者と有線放送事業者の定義を見る. 実演を行った実演家が二次使用料を求める権利. と,インターネットを通じ放送を行う者は放送. は付与されていない.. 事業者に含まれないと考えられる.なぜなら. 2.支払義務を負う主体の範囲. ば,インターネット放送行為は第 2 条第 1 項の. ま た,ローマ 条約第 12 条 に よって,二次使. 第 9 号の 3 における「自動公衆送信」に当たる. 用料の支払義務を負うのは,放送事業者又は公. ため,インターネット放送を行う者は当然放送. 衆に伝達する者であるとされている.日本著作. 事業者又は有線放送事業者に含まれないことと. 権法においては,二次使用料の義務主体は放送. なる.. 事業者と有線放送事業者に限られている.その. 第 9 号の 4 によれば, 「自動公衆送信」とは「公. 理由については, 「著作権法逐条講義」によれ. 衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に. ば, 「なぜ本項(第 95 条第 1 項)の適用範囲を. 行うもの(放送又は有線放送に該当するものを. 放送及 び 有線放送に限定して,同じく音楽を. 除く)」をいうこととされている.「著作権法. 営業の不可欠の要素とする喫茶店等に及ぼさな. 逐条講義」に よ れ ば,「本号 は,ネット ワーク. かったかといいますと,こういった 2 業種はレ. の発達に伴って急速に普及してきた送信形態で. コードを大量に使用するものであり,その使用. ある「インタラクティブ送信」を「自動公衆送. する効果が通常レコードの予定している領域を. 信」という概念により定義したもの」である.. はるかに超えているのに対し,喫茶店その他の. 「インタラクティブ送信」である「自動公衆送. 業種では,立法当時には,使用枚数もそれほど. 信」は放送又は有線放送により同一の内容の放. 多くなく,使用の効果も限定されたサークルや. 送番組を公衆に一斉に送信するという方式と異. グループの延長という程度のものでありました. なり,「公衆からの求めに応じ」送信するもの. ので,二次使用料の支払義務を課すほどの必要. である.すなわち,公衆からのアクセスがあれ. 性は薄いと考えられたからであります. 」とさ. ば,送信行為が行われることとされている.ま. れている.. た,この送信行為は「自動的に」行われる必要. しかし,支払義務を負うこととされている実. がある.. 演が録音されている商業用レコードを用いて放. したがって,自動公衆送信行為と放送又は有. 送した放送事業者又は有線放送事業者に,イン. 線放送行為と異なるため,インターネット放送. ターネットを通じ放送を行う者が含まれるか否. を行う者は第 95 条における商業用レコードの. かについては,検討を要する.. 二次使用料の支払義務を負う主体ではないとさ. 日本著作権法第 2 条第 1 項第 8 号と第 9 号に. れている.. よれば,放送とは, 「公衆送信のうち,公衆に. インターネット環境における商業用レコード. よって同一の内容の送信が同時に受信されるこ. の利用について,第 92 条の 2 により実演家に. とを目的として行う無線通信の送信をいう」も. 送信可能化権が付与されているため,レコード. のとされており,放送事業者とは, 「放送を業. に固定された実演を公衆送信可能化しようとす. として行う者をいう」ものとされている.また,. る際には,実演家の許諾が必要となる.した. 同条第 9 号の 2 と第 9 号の 3 の規定によれば,. がって,この場合,実演家は二次使用料という. 有線放送とは, 「公衆送信のうち,公衆によっ. 報酬請求権より強い許諾権を行使することが可. て同一の内容の送信が同時に受信されることを. 能となる.. 目的として行う有線電気通信の送信をいう」も. 3.商業用レコードの間接的利用について. のとされており,有線放送事業者とは, 「有線. 平成 18 年 12 月に日本著作権法が改正される.

(7) 二次使用料制度に関する研究(胡). (37). 37. 前の著作権法第 95 条第 1 項においては, 「放送. いる13).. 事業者及び有線放送事業者(以下この条及び第. 改正後 の 第 95 条 に お い て は,「放送事業者. 97 条第 1 項において「放送事業者等」という. ). 及び有線放送事業者(以下この条及び第 97 条. は,第 91 条第 1 項に規定する権利を有する者. 第 1 項において「放送事業者等」という.)は,. の許諾を得て実演が録音されている商業用レ. 第 91 条第 1 項に規定する権利を有する者の許. コードを用いた放送又は有線放送を行った場合. 諾を得て実演が録音されている商業用レコード. (当該放送又は有線放送を受信して放送又は有. を用いた放送又は有線放送を行った場合(営利. 線放送を行った場合を除く. )には,当該実演. を目的とせず,かつ,聴衆又は観衆から料金を. (第 7 条第 1 号から第 6 号までに掲げる実演で. 受けずに,当該放送を受信して同時に有線放送. 著作隣接権の存続期間内のものに限る.次項か. を 行った 場合 を 除 く.)に は,当該実演(第 7. ら第 4 項までにおいて同じ. )に係る実演家に. 条第 1 号から第 6 号までに掲げる実演で著作隣. 二次使用料を支払わなければならない」と規定. 接権の存続期間内のものに限る.次項から第 4. されていた.この規定をみれば,二次使用料を. 項までにおいて同じ.)に関係実演家に二次使. 徴収する対象は商業用レコードを放送又は有線. 用料を支払わなければならない.」と定めてい. 放送に直接に利用する場合に限られていたので. る.. ある.間接的利用について,例えば,商業用レ. すなわち,商業用レコードを用いた放送又は. コードを用いた放送又は有線放送を受信して,. 有線放送を行う放送事業者は直接的利用か否か. 放送又は有線放送を行った場合には,実演家に. に関らず,実演家に二次使用料を支払わなけれ. 二次使用料を支払わなくてもよいこととなって. ばならないこととなる.. いた.. なお,営利を目的とせず,かつ聴衆又は観衆. し か し,WPPT 第 15 条第 1 項 に お い て は,. から料金を受けずに,商業用レコードを用いた. 商業用のためレコードを「放送又は公衆への伝. 放送を受信して同時に有線放送を行う場合に. 達のために直接又は間接に利用する」場合に,. は,二次使用料を支払う義務がないこととされ. 二次使用料が支払わなければならないとされて. ている14).すなわち,放送事業者は,商業用レ. いる.すなわち,直接的利用か間接的利用かに. コードの直接的利用に関しては,営利目的であ. 関らず,商業用レコードを使った場合,二次使. るか否かを問わず,実演家に二次使用料を支払. 用料を支払う義務を負わなければならないので. わなければならないが,間接的利用の場合は,. ある.. 営利を目的とせず,かつ視聴者から料金を受け. したがって,平成 18 年 12 月の法改正によっ. ずに,その放送を受信して同時に有線放送をす. て,商業用レコードを放送又は有線放送に間接. る場合には,二次使用料を支払う必要はないと. 的な利用行為でも二次使用料を徴収することと. されている.. なっている.その改正の経緯については,文化. また,同条によれば,二次使用料請求権の存. 庁長官官房著作権課によれば,日本著作権法を. 続期間は,実演家の財産的権利の存続期間内の. 改正する際に, 「放送を受信して行う有線放送. ものに限るとされている.. の大規模化により,再送信についても,権利者 の利益を確保すべき利用行為として考えられる ものとなっている.今回の改正は,このような. 二.中国著作権法における二次使用料制度の整 備について . 状況を踏まえ,条約の考え方にあわせ,有線放. 中国においては,ラジオ局やテレビ局は国家. 送による実演の再送信についても報酬請求権を. の宣伝機関として,著しく強い位置づけがされ. 付与することとするものである」と説明されて. ていた.また,中国はローマ条約に加盟してい.

(8) 38. (38). 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 1・2 号(2009 年 8 月). ないため,商業用レコードの二次使用料制度が. から,放送機関は,商業用レコードあるいは自. 設けられていなかったが,2007 年の WPPT に. ら固定した実演を用いて再放送を行う場合,実. 加盟する際に,第 15 条第 1 項における規定を. 演家の許諾を得ずに,かつ報酬を支払わずに利. 留保にしたが,二次使用料請求権が実演家やレ. 用できることとされていると考えられる.. コード 製作者 に とって不可欠な権利であるた. 2.二次使用料制度不備の原因. め,近い将来二次使用料制度の創設を予想でき. ⑴ ローマ条約に加盟していないこと. る.本節においては,中国における二次使用料. 中国版権局により「中華人民共和国著作権法. 制度の不備及びその背景と今後の二次使用料制. 改正案(草案)に関する補充説明」によれば,. 度の構築について論じる.. 2001 年に中国著作権法が改正される前に,旧 法 43 条において,「ラジオ局,テレビ局が非営. ㈠ 中国著作権法における二次使用料制度の不 備及び原因. 利的に出版された録音製品を用いて放送する場 合,著作権者,実演家及び録音制作者の許可を. 1.現行著作権法における関係規定. 得ることを必要とせず,かつ,報酬を支払わな. 中国著作権法においては,二次使用料の規定. くてもよい」と規定されていた.すなわち,ラ. が設けられておらず,原則として,実演家は生. ジオ局及びテレビ局による録音製品の利用を権. の実演の放送や録音録画に関する許諾権を行使. 利制限の範囲に入れていたのである.その後,. する際にのみ,報酬請求権を同時に行使するこ. 2001 年に著作権法が改正される際に,ラジオ. とができる.すなわち,放送事業者は商業用レ. 局及びテレビ局による録音製品の利用につい. コードを用いて実演を放送する際に,実演家や. て,意見が大きく分かれることとなった.ある. レコード製作者に報酬を支払わずに,自由に使. 学者は,国際条約における関係規定によって,. 用することができるとなっている.. 外国人の出版された録音製品に報酬を支払わな. 第 43 条においては, 「ラジオ局,テレビ局が. ければならないことを前提として,中国のラジ. すでに出版された録音製品を放送する場合,著. オ局及びテレビ局の国営的な性質及び財源を考. 作者の許諾を得る必要はないが,報酬を支払わ. 慮し,第 43 条をしばらく改正しないほうがよ. なければならない.当事者間で別途約定のある. いと主張した.また,他の学者は,中国が参加. 場合は除く」と規定している.すなわち,当事. している国際条約における関係規定を根拠にし. 者の間に別途の契約がある場合を除き,ラジオ. て,著作権保護制度の整備又は国内外著作者の. 局やテレビ局がすでに出版されたレコードを用. 権利平等の視点から,第 43 条を改正しなけれ. いて放送する場合には,著作者の許諾を得なく. ばならないと主張した.すなわち,原則的に著. ても,報酬さえ支払えば,利用することができ. 作者が享有すべき放送権を肯定し,放送者に報. ることとされている.しかし,その録音製品を. 酬を支払う義務を課すこととし,具体的な方法. 制作した者に関しては,いかなる権利あるいは. は国務院により規定すればよいとしたのであ. 報酬を付与するのかについて,何ら言及されて. る.. いない.. これらの議論はベルヌ条約及び TRIPS 協定. また,放送機関と実演家の関係に関しては,. に お け る 関係規定(当時 は 中国 が WCT 及 び. 第 37 条第 3 項において,放送機関が生の実演. WPPT に加盟していない.)に基づき展開され. を放送しようとする際に,実演家から許諾を得. て い た.ベ ル ヌ 条約第 10 条 の 2 に お い て は,. るほか,報酬を支払わなければならないと規定. 著作者の放送権及び公衆への伝達権が規定され. しているが,固定された実演の放送に関する報. ているが,権利を行使する条件は,同盟国の法. 酬の支払いについては規定がない.以上のこと. 令の定めるところによることとなっている.但.

(9) 二次使用料制度に関する研究(胡). (39). 39. し「その条件は,これを定めた国においてのみ. 又は団体と比較し,より強い力があるからこそ,. 効力を有する.その条件は,著作者の人格権を. 放送に用いられる実演やレコードに関する実演. 害するものであってはならず,また,協議が. 家やレコード製作者の利益を重視することが実. 成立しないときに権限のある機関が定める公. 演家の保護の観点からみて重要な課題であると. 正な補償金を受ける著作者の権利を害するも. 思われる.典型的な例を挙げると,1999 年に. のであってはならない」とされている.また,. 起きた著名な中国芸能人陳佩斯,朱时茂 vs 中. TRIPS 協定においては,放送機関が公表され. 国国際テレビ総会社(中国国際電視総公司)と. た録音製品を用いてそれを放送する場合に,著. いう訴訟がある16).. 作者等に報酬を支払わなければならないという. 原告である陳佩斯,朱时茂という二人の芸能. 規定はないが,ベルヌ条約の規定から,少なく. 人は 1983 年から 1997 年まで数年間の間に,毎. とも著作者に報酬を支払わなければならないこ. 年の大晦日に中国中央テレビ局により行われ. と と な る.放送機関 に 実演家及 び 録音製品 の. た「春節連歓晩会」という春節を祝うためのテ. 制作者に報酬を支払う義務を課す国際条約は,. レビ番組で「小品」(一種の観衆を笑わせる短. ローマ条約のみであり,中国がローマ条約に加. い演劇)を演じた.被告である中国国際テレビ. 盟していないため,実演家に報酬を支払わなく. 総会社は中央テレビ局に直属しているテレビ番. ても条約違反にはならないと考えられる.した. 組の制作及び発行(譲渡に当たる用語)を主な. がって,結論として放送機関による録音製品の. 業務とする会社である.1994 年から 1999 年ま. 放送については,結局著作者にのみ報酬を支払. でに被告は両原告の許諾を得ず,彼らの行った. 15). うこととなっている .. 「小品」を繰り返して複製し,発行した.この. 2007 年 6 月に,中国が WCT 及び WPPT に. 行為に対し,原告側は「小品」の著作者及び実. 加盟する際に,WPPT の第 15 条第 1 項につい. 演家として,発行された「小品」の著作権,実. ては留保することとしたが,今後放送機関と実. 演家の隣接権及び報酬請求権を主張した.裁判. 演家及び録音製品の制作者の衡平な利益を考慮. の調査によると,原告側が中央テレビ局で出演. すれば,二次使用料制度を創設する必要がある. をする際に,固定の許諾をしたが,その固定さ. と考える.. れた実演の複製及び発行に関しては,許諾しな. ⑵ 放送機関の国営かつ独占的性質. かったのである.したがって,被告は原告の許. 中国著作権法における関係規定によれば,放. 諾を得ずに,その固定された実演を発行する行. 送機関は出版された録音物を自由に使用するこ. 為は原告の権利侵害になったと判じられた.. とができる.このような規定により,放送機関. 判決の結果は原告側が勝ったが,その後,両. には実演家やレコード製作者と比べ,より強い. 原告は中央テレビ局に排斥され,「春節連歓晩. 優位が付与されている感じを受ける.これは,. 会」に出演することができなくなった.. おそらく中国のラジオ局やテレビ局はすべて国. レコードでなく映像の録画物の利用に関する. 営かつ独占的な性質を有するため,情報の円滑. 事例であるものの,この事案からは,両原告が. な流通を確保する観点から,放送機関により強. 自ら利益を主張することは正当な権利の行使で. い優位を与えているものと思われる.しかし,. あるにもかかわらず,いったん中央テレビ局を. 放送機関による実演の利用は実演家やレコー. 提訴したならば,裁判で勝ったとしても,実際. ド製作者の経済的利益に大きな影響を与えるた. にはその後の出演機会などの利益を失うことが. め,彼らに少なくとも補償金を支払うべきだと. 伺える.換言すれば,現状において,個人の実. 思われる.また,中国では,放送機関が国の企. 演家や著作者は国営の企業と直接対決した場. 業であり,実演家やレコード製作者などの個人. 合,著しく弱い位置づけをされていることがわ.

(10) 40. (40). 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 1・2 号(2009 年 8 月). かる.. また,中国の放送機関は国の企業であるた. したがって,中国著作権法においては,いかに. め,より強く位置づけられている.著作権法に. 実演家,レコード製作者及び放送機関の間の利. おいては,実演家及び著作者の権利を明確に規. 益のバランスを取るのか,またいかに個人の権. 定しなければ,単なる実演家自身の訴訟では著. 利者の利益を重視して,より公平な法律環境を. 作者及び実演家の権益を保障することは難しい. 作るのかということが今後の重要な課題になる. こととなる.したがって,放送機関と実演家及. と考えられる.. びレコード製作者の間に利益の均衡性を考える. ⑶ 実演家自身の権利保護に関する意識の未成. と,二次使用料制度の設立が必要となる.. 熟. 2.実演家達の要望. 前述のとおりに,改革政策が実施される前に. 一方,中国国内においては,実演家の利益に. 中国の実演家達は国営の団体に属しており,国. 関する保護の強化という声も大きくなりつつあ. 家から給料をもらっていたため,自分自身の権. る.2007 年 3 月 に 全国人民代表大会及 び 政治. 利及び演出機会等が全部それぞれの演出団体に. 協商委員会が行われた際に,著名な男子歌手吴. 管理されていた.したがって,実演家達は自分. 雁泽という人をはじめ,41 人の文芸界におけ. 自身がいかなる権利を持っているのか又はいか. る委員を含め「音楽作品の実演家は音楽作品の. に自分の権利を保護するのかについての意識は. 製作者と同様な二次使用料請求権を享有すべき. 非常に低かった.ラジオ局又はテレビ局は国家. である」という提案を出した.. の独占的放送機関で強い立場にあり,実演家達. 提案 に よ れ ば,1992 年中国音楽著作権協会. と相対する際に非常な優位を持っているため,. が成立された以来,作曲家,作詞家及び音像製. 実演家達は放送機関に対し,権利を主張する勇. 作者の権益は重視されているほか,経済的な利. 気も少なかったのである.. 益も保障されている.しかし,舞台で活躍して. そのため,ごく最近になってからようやく,. いる音楽の実演家の権益はまだ保障されていな. 実演家達は二次使用料請求権に関する要望を出. いと主張していた.. したのである.. 典型的な例を挙げると,中国の放送局やテレ ビ局等の放送機関は無制限で音楽作品を利用し. ㈡ 中国著作権法において二次使用料制度を創 設する必要性. ているが,音楽作品の重要な伝達者としての実 演を行った歌手や演奏家及び指揮者は報酬を得. 1.放送機関と実演家等の利益のバランスの均衡. ることはできない.. 前述のとおりに中国における放送事業者は国. 実演家達は,実演家の寄与がなければ,音楽. 営企業であるため,独占的な優位を持っている. の作品をレコード化したり,放送したりするこ. のである.放送事業者はレコード製作者及び実. とができないため,実演家に二次使用料を払わ. 演家の実演を用いて放送するとき,レコード製. ないと不公平であると述べていた.. 作者や実演家に使用料を払わないが,コマー. 一方,放送局やテレビ局は商業用レコードを. シャルを放送するとき,個々の企業から広告費. 用いて,大きな収入を得られるが,実演家に. を徴収している.一方,レコード製作者や実演. とって,そ の 放送 は 自分 の 出演機会 や 収入 を. 家は放送機関による実演の放送がもたらした経. 減少させる原因となり,その結果,国家の音楽. 済的利益の損失を負担しなければならない.こ. 芸術の発展を阻害する可能性がある.したがっ. れは,レコードの製作にたくさんお金及び精力. て,中国においてもローマ条約や WPPT 等の. をこめたレコード製作者及び実演家にとって,. 国際条約における二次使用料制度を創設するこ. 不公平ではないかと考えられる.. とが望ましい..

(11) 二次使用料制度に関する研究(胡). (41). 41. この提案からは,近年,中国における知的財. 物と同様の位置づけをされている.1982 年中. 産権の保護の強化に伴い,権利者達の権利保護. 国ラジオ・テレビ部により「録音録像製品の管. の意識が強くなってきたことが伺える.. 理に関する暫定規定」が公表され,2001 年著. したがって,放送機関と実演家の間の利益の. 作権法を改正するときも,録画物と録音物は共. バランスを取る手段として,二次使用料請求権. に著作隣接権の客体として保護されている.ま. の創設は必要であると考えられる.. た,近年,中国において「小品(一種の笑い演 劇)」や「漫才」などを記録した録画物がテレ. ㈢ 中国著作権法における二次使用料制度の整備. ビ局により繰り返して放送される場合も少なく. 1.権利主体. ない状況に鑑み,二次使用料請求権の権利主体. WPPT 第 15 条によれば二次使用料の報酬を. としては,録音物のみならず録画物の制作者も. 受ける権利者となるのは, 「実演家」及び「レ. 含めることが適切であると思われる.. コード 製作者」の 双方 で あ る.ま た,中国 が. 2.義務主体. WPPT に加盟したこと,国内において実演家. 第 15 条によれば,二次使用料を支払う主体. から二次使用料の請求の要望もあることに鑑. となるのは,「放送又は公衆への伝達」を行う. み,商業用レコードの二次使用料に関する権利. 者とされている.すなわち,「放送」には「有. も「実演家」及び「レコード製作者」の双方に. 線放送」と「無線放送」が含まれるため,ラジ. 付与すべきであると思われる.同条第 2 項によ. オ局やテレビ局等が義務主体となる.また,再. れば,報酬請求権の主体は国内法令において定. 放送その他の再送信についても二次使用料の対. めることができることから,中国著作権法にお. 象になるべきであると思われる.. いて実演家とレコード製作者双方に付与するこ. 「公衆への伝達」としていったい何が含まれ. とに問題はないと思われる.. るのかについて条文では明らかにされていな. ま た,WPPT に お い て は,レ コード に 収録. い.通常,インターネットを通じた公衆への伝. された実演は音の実演のみに限り,映像の実演. 達に関する許諾権及び報酬請求権は利用可能化. が含まれないこととなっているが,録画物は録. 権に含まれているため,ここでいう義務主体と. 音物と同じく実演の固定物であり,ローマ条約. なる「公衆への伝達」を行う者は「放送」又は. や WPPT において録音物にのみ保護を与えるの. 「ウェブサイト」以外の公衆に伝達する行為を. は,保護の不均衡となるおそれがある.特に,. 行う者をさすのではないかと考えられる.例え. ローマ条約が締結されて以来,録画技術が急速. ば,飛行機や喫茶店において,商業用レコード. に発展してきており,実演の固定物の中でも録. を用いて音楽を公衆に伝達する場合には,「公. 画物が占める割合がますます高くなりつつあ. 衆への伝達」行為に当たるため,実演家及びレ. る17).し か し,仮 に ローマ 条約及 び WPPT に. コード製作者に報酬を支払うべきであろう.. おける二次使用料制度をそのままに録画物に適. 要 す る に,二次使用料 の 義務主体 と な る の. 用するとすれば,例えば,テレビ局が録音物や. は,ラジオ局やテレビ局等の放送局及びウェブ. 録画物を放送する場合,レコード製作者には報. サイトの事業者を除いた公衆への伝達を行う者. 酬を支払わなければならないが,録画物の制作. であると思われる.. 者には報酬を支払わなくてもよいこととなる.. 3.適用の対象物について. このような状況は,保護の均衡を著しく欠くこ. WPPT 第 15 条において,二次使用料の客体. ととなると考える.. となるレコードとは,「商業上の目的のために. 中国著作権法において,音の実演に限らずす. 発行されたレコード」のみならず,利用可能化. べての実演を保護しているため,録画物は録音. の状態におかれた音の固定物も含まれることを.

(12) 42. 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 1・2 号(2009 年 8 月). (42). 踏 ま え,中国著作権法 に お い て は,商業用 レ コードの範囲にインターネット環境における音 の固定物を含めるべきであると思われる. また,前述のとおり,中国著作権法において 録画物が録音物と同様の位置づけをされてお り,テレビ局により繰り返し放送される録画物 も少なくない状況に鑑み,二次使用料請求権の 対象物に録画物を含めるべきではないかと考え る. また,フォークロアの固定物について,商業 目的であるか否かに関らず,その固定物を用い て放送又は公衆への伝達が行われる際に,利用 者にフォークロアの実演家及びレコード製作者 への報酬を支払う義務を課す規定を設けるべき であると考える.録画物に関する二次使用料請 求権の取り扱いと同様に,フォークロアの固定 物としては WPPT における音の固定物である レコードに限らず,それに係る映像の固定物も 含めるべきであると思う. 終わりに 以上述べたとおりに,二次使用料制度は,実 演家のみならず,録音製作者にとっても,無視 してはいけない制度である.特に,中国におい て知的財産権の保護はますます重視されている 現実を踏まえ,今後,二次使用料請求権の創設 に関しては,ローマ条約や WPPT における規 定も参考としつつ,国内の様々な状況及び要望 を考慮した上で設けるべきであると考える.. 注 1)加戸守行『著作権法逐条講義(五訂新版)』 (社 団法人著作権情報センター,2006)505─506 頁. 2)社団法人著作権資料協会『隣接権条約 · レコー ド条約解説』(1983)71 頁 . 3)ローマ条約が作成されるとき,インターネッ トは伝達手段としてまだ出現していなかった が,条約における「公衆への伝達」は「放送以 外の伝達手段に及ぶ」ことが想定できるため, 条約を適用する際に,インターネットを通じて 実演等を公衆に伝達する場合も「公衆への伝. 達」の範囲に含まれると思われる. 4)社団法人著作権資料協会『隣接権条約 · レコー ド条約解説』 (1983)93─94 頁. 5) 「ローマ条約」第 12 条:商業上の目的のため に発行されたレコード又はその複製物が放送又 は公衆への伝達に直接使用される場合には,単 一の衡平な報酬が使用者により実演家若しくは レコード製作者又はその双方に支払われる.当 該報酬の配分の条件については,当事者間に合 意がない場合には,国内法において定めること ができる. 6)WPPT 第 15 条第 4 項:こ の 条 の 規定 の 適用 上,有線又は無線の方法により,公衆のそれぞ れが選択する場所及び時期において利用が可能 となるような状態に置かれたレコードは,商業 上の目的のために発行されたものとみなす. 7) 『 WIPO が 管理 す る 著作権及 び 隣接権諸条約 の解説並びに著作権及び著作隣接権用語解説』 (社団法人著作権情報 セ ン ター,2007 年 3 月) 294 頁. 8) 『 WIPO が 管理 す る 著作権及 び 隣接権諸条約 の解説並びに著作権及び著作隣接権用語解説』 (社団法人著作権情報 セ ン ター,2007 年 3 月) 293 頁. 9) 『 WIPO が 管理 す る 著作権及 び 隣接権諸条約 の解説並びに著作権及び隣接権用語解説』 (社 団法人著作権情報センター;2007 年 3 月)276 頁. 10) 『 WIPO が管理する著作権及び隣接権諸条約 の解説並びに著作権及び隣接権用語解説』 (社 団法人著作権情報センター,2007 年 3 月)276 頁. ベルヌ条約第 11 条⑴:演劇用又は楽劇用の 著作物及び音楽の著作物の著作者は,次のこと を許諾する排他的権利を享有する.⒤著作物を 公に上演し及び演奏すること(その手段又は方 法のいかんを問わない. ) . 第 11 条 の 2 ⑴:文学的及 び 美術的著作物 の 著作者は,次のことを許諾する排他的権利を享 有する.⒤著作物を放送すること又は記号,音 若しくは映像を無線で送るその他の手段により 著作物を公に伝達すること. 第 11 条 の 3 ⑴:文学的著作物 の 著作者 は, 次のことを許諾する排他的権利を享有する.⒤ 著作物を公に朗読すること(その手段又は方法 のいかんを問わない. ) . 11)http://www.lait.jp/serial.php?itemid=314. 12)昭和 41 年 4 月 20 日著作権制度審議会答申. 13)文化庁長官官房著作権課「著作権法の一部を 改正する法律について」コピライト 47 巻 551 号 29 頁(2007 年 3 月 29 日)頁. 14) 「日本著作権法」第 95 条:放送事業者及び有 線放送事業者は,第 91 条第 1 項に規定する権.

(13) 二次使用料制度に関する研究(胡). 利を有する者の許諾を得て実演が録音されてい る商業用レコードを用いた放送又は有線放送を 行った場合(営利を目的とせず,かつ,聴衆又 は観衆から料金を受けずに,当該放送を受信し て同時に有線放送を行った場合を除く.)には, 当該実演に係る実演家に二次使用料を支払わな ければならない. 15)国家版权局 ,《中国著作权实用手册》(法律出 版社 ,2005)25─26 頁.. (43). 43. 16) http://www.law.1caifu.com/200611/ Article_322359_2.shtml. 17)李明德,许超《著作权法》法律出版社,2003 年 8 月,190 頁. [コ ウ ン ホ ン 横浜国立大学大学院国際社会科 学研究科博士課程修了,中国河北経貿大学法学院 講師].

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