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高等学校におけるキャリア教育の再構築 : ウィトゲンシュタインの言語哲学に注目して

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Academic year: 2021

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(1)

高等学校 におけるキャ リア教育の再構築

∼ウィ トゲンシュタインの言語哲学に注 目して

人 間発 達教育専攻

教 育 コミュニケ ー シ ョンコース

学籍 番 号

M12020C

氏名

湯 峯

(2)

目 次 序 章

課 題 の設定 第

1節

問題 の所在 。・ ・・ 0・ ・・・・ 0・ 0・ 0・ ・

0000・

2節

先行研 究の検 討 と本研 究 の特色・・ ・・・ 0・ ・ ・・・ ・・ 第

3節

論文構成・・

00・

・・・・・

00・

・・・・・ ・・・ ・ 0 第

1章

キ ャ リア教育 の現在 に至 るまでの歴史 的概 観 第

1節

日本 のキ ャ リア教育 の源流 と しての アメ リカのキ ャ リア教育の歴史・・・ ・・ 第

2節

日本 のキ ャ リア教育 の歴 史・・・ ・・・ ・・・ ・・・・ ・ 1 第

2章

産 業界 の動 向 によ って変化 して きた キ ャ リア教 育 の現状 第

1節

「職 業教育」 か ら「キ ャ リア教育 」 へ変化 して きた背景・ ・

16

2節

文部行政 の変遷・ 0・ 0・ ・・ ・・・ ・・ ・・・・・・ ・

18

3節

進路 指 導 の改 革 とキ ャ リア教育・・・ ・ 0・ ・・・・・ ・

23

3章

キ ャ リア教 育 を 問 い直す ∼ ウィ トゲ ンシュタイ ンの言語哲学の観点か ら キ ャ リア教育のデ ィレンマ・

00・

・ ・・・・・ ・・・・ 「産業化社会」的発想のキ ャ リア教育の限界・・・・ 0・ 子供た ちの交換価値を高めるのが教育なのか・・・・・・ 自分が あることそのものの充足感を求め続 ける教育 ∼ 「与える教育」か ら「語 り合 う教育」への転換・・ 教育の新 しい展望・・・・・・・・・・

00・ 00・

・・ 言語の訓練 を とお した生徒 の変容

∼ウィ トゲンシュタインによる乗り越え・・・

48

1   3   7 8   1 第

1節

2節

3節

4節

5節

6節

32

34

37

39

43

60

63

67

72

終章 キ ャ リア教育 の再構 築 を考 え る∼ 「名乗 りの教育」 第

1節

これ まで の ま とめ・・・

00・

0・ ・ ・・ ・・・・・・ ・ 第

2節

対話 の訓練 か らめ ざす 「名乗 りの教 育」 0・ 。・・・・ ・ 第

3節

日本 のキ ャ リア教育 にお いて 言語 の活動 を教材化 する ことの課題・・ 0・ 参考・ 引用文 献・・・ ・ 0・

00・

・・・

00・

000・

0・ ・・

(3)

課題の設定

1節

問題 の所 在 本研 究 の 目的は、 キ ャ リア教 育 、特 に高等 学校 にお け るキ ャ リア教 育 の 問題 点 を明 らか に して 、今後 の新 たな視 点 と再構 築の可能性 を提示す る ことで ある。

53.8%の

大 学・ 短 大 をは じめ と して 、専 門学校 を加 え る と進学 者 が

708%と

な る とは い え (数値 は平 成

26年

度 学 校 基 本 調査 速 報 版、文部科 学省)、 就職 してす ぐ社 会 に出 る生徒 も多 い高等学校 (同速報 版 で は

17.5%)で

は 、生徒 のキ ャ リア意識 の育成 は喫緊 の課題 で あ る。 義務教 育 と違 って 、学校 間 の違 い も大 き く、 半数 以 上 の生徒 が就 職 す る学校 も少 な くな い。 キ ャ リア教 育 の推進 を教 育委員会 も支援 して いるのだが、そ んな学校 で の成果 に つ いて は課題 が多 い。そ れ は、社 会環 境 の問題 もあ るが、非正規雇用 の問題や 就職 か らそ れ ほ ど長 くな い期 間で の離職 の問題 と して現 れて い る。 また、 ほぼ全員 が就職 に直 結す る 高等 教 育や 、社会 人 と して の資 質 を育 成 す る以 前 の基 盤 的 な課 題 と して キ ャ リア教 育 を扱 う小・ 中学校 とは、違 った視 点で の取 り組 みが求 め られ る。 問題点 の追求 と今後 の展望 を 示す にあた って 、論 点が 散 漫 にな らな いよ う特 に高等 学校 に焦 点 を絞 る。 高等 学校 にお け るキ ャ リア教 育 の 問題 点 は 、職 業 理解・ 就 業指 導 に偏 った 指 導 に あ る。 そ のた め に、現在 のキ ャ リア教育 が生み 出されて きた背景 を探 り、そ こに現 れ て くる教 育 とは違 った視 点か らの影 響 を確 か め、先行研 究 を も とに、改 めて教 育 的視 点か らの再検 討 と再構 築 を考 える ことが必 要 で あ る。そ して、 どんな高等 学校 で も どんな社 会 的環 境 で も 共通 して必要な視点 として 「言語」 を取 り上げる。我々は言語 を通 して 自分 を振 り返 り自 己を形成 していく。そ の過程 に踏み込んだ教育 の再検 討に、新たなキ ャ リア教育の展望 を 示 していく。学校 にお いて教師 と生徒、あるいは生徒同士 を結び付 ける媒介 とな る主な も のは言語である。言語 のや り取 りをとお して生徒は 自分 を見つめ 自分 の世界 を形成 してい く。そ の時の道筋 につ いて語 って くれ るのが ウィ トゲ ンシュタイ ンの言語哲学である。彼 の哲学 を導きの糸 にして、生きる姿その ものとして言語 を とらえる視点か らのキ ャ リア教 育の再構築を提示す る。 ① アメ リカのキ ャ リア教育 アメ リカにおいては、早い時期か ら心理学 的観点 によって 自我 につ いて論 じ られて きた。 日本 の進路指導やキ ャ リア教育の理論は、それ らの研 究 に学びつつ形作 られて いる。

19世

紀か ら

20世

紀の初 めにか けての職業紹介的な職業相談 vocatlonal counseling(日 本キ ャ リア教育学会

2008,p.46)か

ら、心理学研究が進む につれて、人の発達概念 を取 り入れ て職業指導 vocational guidanceか ら進路指導 career guidanceへ 変わ ってい く(渡辺 2007,

(4)

p.38‐44)。

20世

紀 の後 半 にな って就 業 形 態 が 多様化 して くる 中で 、個 人 と組 織 とのか か わ りの多 様性 に注 目した様 々な知見 が 出 され、 キ ャ リア意識 の育成 が語 られて きて い る。 一方 で教育行 政の動 きで は、

1960年

代 以 降 は教 育 の大衆化 と低 学 力化 の 問題 か ら学 力向 上 が大 きな課 題 とな った。

1971年

の連邦教育長官 マー ラン ド

(Marland,S.P.)の

発 言 で 初 めて キ ャ リア教 育 career educattonの 語 が使 われて以来、進路指導 career guidanceと キ ャ リア教育 career educatlonが 同時 に進行 して い く。

2002年

には改訂 「初等 中等教 育 法 」 いわ ゆ るNCBL tt No Chlld Left Behind Actが 制定 され 、進 学 と就職 の両 面 で の細 か い支援 方策が 、学校 と企 業 の連 携 の もとに全 国規模 で行 われて い く (日本 キ ャ リア教 育 学会編 2008,p.37-40)。 こうして アメ リカ にお いて は、心 理学 的なア プ ローチか らはキ ャ リアカ ウ ンセ ラーが置 か れ て 、子供た ちのキ ャ リアプ ランニ ングの支援 を して いる一方 で、学校 全体 と して は学 力保 障 の面 か らの教 育改革 の取 り組 みがな され 、そ の二面 を機 能 的 に複 合 させ よ うと して い る。 と ころが、 アメ リカ の心理学 的知見 を参考 に始 まった 日本 の進路指導や キ ャ リア教 育 にお いて は、現在 はそ の側 面 か ら離 れ て企 業 の論理 に傾 きつつ あ る。 ② 日本 のキ ャ リア教育 キ ャ リア教育 は、

1999(平

11)年

の 中央教 育審議会答 申で初 めてそ の語 が使 われ て 以 来 、初 等 。中等教 育 の一 つ のキ ー ワー ドと して盛 ん に議論 され実 践 された。それ とと も に、高等教育で の重要性 も強調 され て いる。 また、キー・ コ ン ピテ ンシー

(OECD)や

、 就 職 基礎 力 (厚生労働 省)、 社 会 人基礎 力 (経済産 業 省)、 学士 力 (文部科 学省)、 また 、

ア クテ ィブ・ ラーニ ングact市e learningや ジェネ リック・ スキルgenerlc skillsな ど も最

近 で は注 目され て い る。 ひ と く く りにキ ャ リア教育 とされて きた、それ らの言葉 で示 され た取組 は、 これ まで何 を求 めて きた のか、今何 を求 め よ うと して い るのか、 また、それ は 果 た して 、子 どもた ち の将 来 に有効 な働 きか け とな り得 るのか、そ して今後 どんな展 開 を 求 めて い けばよ いのか。本研 究で は、 これ まで のキ ャ リア教育 の問題点 を整理 して、今後 の展望 を高等学校 のキ ャ リア教育 に絞 って提起 して い く。

1999(平

成 11)年 の 中央 教育審議会答 申まで は、職 業指導や 進路指導 と言われ て いた。 大 正期 に始 ま る職 業教 育 と して の職 業 指導 が

1950年

代 に進 路 指導 とな り、そ れ が キ ャ リ ア教 育 といわれ るよ うにな って よ り幅 の広 い取 り組み をす るよ うにな って いった。 この変 化 の背 景 には、社 会構 造 の変化 に伴 う教 育 制度 の変化 と子供 た ちの意識構 造 の変化 及び産 業構 造 の変化 の両 面 の要 因が ある。 そ こで 、 まず 、 日本 のキ ャ リア教 育 の規 範 とな った アメ リカのキ ャ リア教育 と 日本 のキ ャ リア教 育 の歴史 を概 観 し、次 に、日本 のキ ャ リア教育 の これ まで の理論 と実践 をま とめ、 さ らに、そ こに教育 の論理 に侵入 して きた産業 界 の論理が優 勢 にな った ことを示す。そ の

(5)

点 に、 キ ャ リア教 育 の現 状 の 問題 点 と教 育そ の もの の抱 え る問題 点が見 えて くる。 以 上 の ことを踏 まえて眺 めた とき、企業 の論 理や変化 の激 しくな った社会状況 に と らわれ な い、 よ り基 盤 的な視 点か らのキ ャ リア教育 を構 築す る必 要性が浮かび上が って くる。そ こで、 本研究では、現在議論 されている問題点をさ らに掘 り下げ、職業観や社会観 のよ り根底 に あるもの、すなわ ち生徒 の 自己 についての意識の形成 に注 目す る。そ して、 この自己につ いての意識 を形成す るにあたっての言語 の問題 に焦点をあてて、今後 のキャ リア教育 につ いて一つの新 しい視点を提案す る。 第

2節

先行 研 究 の検 討 と本研 究 の特 色 先行研 究 で は、教 育社 会 学や 教 育哲 学 の諸研 究 に注 目す る。教 育社 会 学 で は、非 正規雇 用や 早期 離職 とい う弱 い立 場 に あ る若 者 に対 応 しきれ て いな い現在 のキ ャ リア教 育 の 問題 点 を指 摘 して くれ る、本 田 由紀 や 児美 川孝 一 郎 らの研 究や 提言 が あ る。 また 、そ もそ も若 者 が 抱 え る社 会化 の 問題 点 につ いて は、苅谷 剛彦や 古 市憲 寿 の研 究 もあ る。 彼 らの研 究 か ら、そ こで は まだ示 され て いな い高等 学校 にお け る具体 的な教 育 の取 り組 み につ いて の展 望 を考 え る。 一方 で、自己意識 にかか わ る問題 点 として 、心理学や教 育哲学等 の先行研 究 も検 討す る。 精 神 医学 の立 場か らの木村 敏 の示 唆 的な 自己意 識 の と らえ方や 、言語 に注 目 した今 井康雄 の研 究等 は、言語 か らの教 育 の新 たな展望 を考 えて い く時 に注 目した い。そ れ らの先行研 究 の検 討 か ら、言 語 を扱 う現 場 か ら立 ち上 げて い る ウ ィ トゲ ンシュタイ ンの言語 哲 学 とそ の諸研 究 を もとに、 これ まで検 討が及 んで いな い、具体 的な教 育現 場、特 に高等学校 にお け る言語 を手 がか りと した新 た な キ ャ リア教 育 の展 望 を考 え る。 ① 教 育社会 学や哲 学 の諸 説 を も とに 教 育行 政 の示す キ ャ リア教 育 が 抱 え る問題 点 に対 して 、教 育社 会 学 の立 場 等 か ら様 々な 批 判 が 出 され て い る。本 田 由紀 は 、今 のキ ャ リア教 育 で は就業 能 力 の低 い生徒 を さ らに悪 い就 業状況へ と導 いて しま うと して、企業 の側 か ら見 た 「適応」 の能 力でな く、生 きて い く 自分 を守 る「抵抗」の能 力 もつ けるべ きで ある と主張す る (本田 2009)。 児 美 川孝 一郎 は、 「個 人の意識 の問題 に還 元 しては いけな い」社 会構造 の問題 として、 「政策 と して の キ ャ リア教育」 「権 利 と して のキ ャ リア教育」 を提 唱す る (児美川 2011)。 玄 田有 史 は、 経 験 の非連続 性 、 異文化 性 、他 者 性 の向 こうに こそ あ る未 来へ の展望 を語 って 、失 望 や 挫 折 を経 験す るなか で葛 藤 し、 自分 の本 当の可 能 性 を知 る 「希望 学」 を提 唱す る (東大社研 2009)。 そ の どれ もが貴 重 な視 点 を提 供 して くれ る。ただ 、本研 究 では、そ れ らの学 び の

(6)

さ らに根 幹で あ る ところ、つ ま り、学びか ら遠 ざか るので はな く学 び に向か って い こうと す る姿 勢や 意欲 を引き 出す 教 育 に注 目 した い。 また 、 小学校 か ら大学 まで 、す べ て の校 種 で キ ャ リア教育 が論 じ られ て いる現在 で あ るが、特 に高等学校 の場合、大学で のキ ャ リア 教 育 の議 論がそ の ま ま持 ち込 まれ て い る問題 が あ る。 この点 に も留意 して 、高等 学校 に絞 って 、様 々な現在 の議論 の基盤 とな る問題 につ いて検 討す る。 そ もそ も、今 の状態 で何 も不満 を感 じな い、将 来 に多 くを望 まな い子供 たち の現状 が あ る。現在 取 り組 まれて いる教育 をそ のまま維持 した ま ま、教 育が期待す る機 能 を果 た さな いの は、人や運用 に課 題が あ る とい う問題 の立 て方そ の もの を再検 討す る必要 が ある。 苅 谷 剛彦 は 、 「学校 で の成功 か ら降 りて しま う、相対 的 に階層 の低 いグルー プの子 どもた ち に とって 、あえて降 りる ことが 自己 の有能感 を高め るはた らき を ももつ よ うにな って い る。」 (苅谷

2001,p.219)と

表現 して 、現 在 の教 育 の シス テ ムそ の もの の問題 点 を指 摘 した 。 努 力 しな い ことが不安 で はな く安 定 とな る。や った と して も 自分 にはで きな いか も しれ な いか ら、そ のた め に味わ う劣等感 を避 けるため に、そ れ か ら逃れ るた め に 「努 力か ら降 り る」 とい う心 の在 り方 を生 んで しま う。今 の教育 シス テム の抱 え る問題 で ある。 「右肩 上 が り」 の発達 を前提 に組み上 げた現在 の教 育 の ままで は、 こんな生徒 の現状 に対 して は有 効 な働 きか け とな って いか な い。 職 業 理解 や就 業指 導 のキ ャ リア教 育 を進 めて い くと、特 に就職 希望 者 の多 い高等 学校 で は 、就職 へ の意識付 け とは反対 に、就職活 動か ら降 りて い く生徒が 出て くる とい う逆 説 的 な現 状 が ある。キ ャ リア教育 の取 り組 み につ いて、根本 か らの見直 しが必要 とな って い る。 ど こに問題点が あるのか。教 育 の本 質 の問題点が ある と考 え る。今多 くで実施 され て いる キ ャ リア教育 は、すで に この社会 にある職 業 に生徒 を当て はめて い く教 育 とな って いる。 そ して 、そ の発想 の根 底 には、一方 向へ の子供 の発達 、すなわ ち小学校 か らの右肩 上が り に発達 して いき、そ の先 には、現 にある社 会へ の適応 、つ ま り社会化 のため に教 育が あ る とい う考 え方 で ある。 しか し、高度経済成長 を支 えて きたそ ういった意識 は、成熟社会 と な った現 在 で は通用 しな い。今我慢 して努 力すれ ば、や がて いつか は報われ る、将 来 の役 に立 つ といった一方 向の時 間軸 的発想 は、今 の子供 た ち を動 かす 力 として は弱 い。そ こに 流 れ て い るのは、社 会 で通 用 す る ことの交 換価 値 を高 めて い こ うとい う発想 の教 育 で あ る。 子 供 は交 換価 値 で測 る ので あ ろ うか 。交 換 とい う ことは、子 供 の存在 が何 か と対価 の 「も の」 と しての価値 で測 られ る とい う ことにな る。 もの と して の存在 。そ の 「もの」 の価 値 が低 いと実感 した時、その低 い自分 を拒否するあるいは低 い 自分か ら逃げるために、子供 たちは競争か ら降 りるので ある。 「もの」でない価値 とは、生きている実感のある存在 としてその人が認め られ る価値で ある。そ の生きている実感が ある時 に、人 に働 きかける諸要素のうち、本研究では特 に言 語 に注 目す る。言語 を発す る とは人が生きていることそ の ものであ り、言語 は人 を人た ら

(7)

しめ る もので あって 、人 の存在そ の もの と して意識化 して くれ る ものだ か らで ある。人 間 存 在 につ いてや言 語 につ いて の哲学 的な諸 説 を も とに、心 理学 的な諸 説 を も参考 に しなが ら自己 の意識 につ いて の検 討 を して い く。 ② 教 育人 間学や ウ ィ トゲ ンシ ュタイ ンに注 目 して 知識・理解 に偏 重 した積 み あげ る教 育 か らの変 革 は、す で に文部科 学 省 か らも提 唱 され 、 様 々 に試 み られて い る。課 題解 決学習

(PBL)や

共 同学習 、 プ レゼ ンテー シ ョンや デ ィス カ ッシ ョンな ど、意欲 的 に取 り組 まれ た りもす るが 、そ の形態や成果 に注 目が いつて、そ の過 程、特 に言語 を発す る ことの効用 にあま り注 目が されて いな い。 あ る事柄 につ いて考 えて い る とき、そ の考 えて い る ことそ の もの をモニ ターす る別 の意識 の働 き (メ タ認 知) が あ る。 この二 つ の意 識 の交互 作 用 (自己 内対 話

)が

自我 を形 成 して い く。 この働 き に意 図的 に仕掛 け る教 育 活 動 こそ が 、 自 ら考 え、 自 ら解 決 す る力 を育成 して い く と考 え る。そ の力は、教 師が あ らか じめ計画 した設 計 図 によって 生徒 につ けさせ る ことが で きる もので はな く、教 師 の語 り掛 け に生徒が答 え る中で 、生徒 が 自 らの葛藤 の中で獲得 して い くので あ る。そ の時 に言 語 が あ る。 この教 師 か らの働 きか け とい う、 これ まで の 「与 え る教 育」 か ら、言語 を意識 した 「語 り合 う教育」 へ の転換 が必 要で ある と考 え る。 新 た な教 育 の視 点 と して 、「語 り合 う教 育 」 とい う、教 師 がそ の生 き る姿 を示 し、 生徒 が 身 を もって感 じ取 る関係 の教育 につ いて 、教 育人 間学 の諸研 究 を もとに考 え る。そ の時、 教 師 と生徒 をつ な ぐメデ ィア と して の言 語 に注 目した い。言語 を発す る ことは、単 に伝達 の道 具 として利用す るので はな い。言語 を発す るそ の時 に、発 して いる 自分 をモニ ターす る ことによ って 、 生 きて い る 自分 を確 認 して い る作 業 で もある。そ れ を アイ デ ンテ ィテ ィ と言 って しまえばそ の時点で 固定化 して しま う。そ うではな く、言語 を発す る 自分 とモニ ターす る 自分 で対 話 を しな が ら、確 認 しつ つ 常 に変化 して いる 自己 を見 つ め続 け る作 業 で ある。 自己 を求 め見 つ め続 け る力 の育成 の必 要性 につ いて 、

OECDは

、 「まだ存在 しな い職 業 に向 け、 まだ発 明 されて いな い技術 を活用 で き るよ うに、 また私 た ちが まだ 問題 で ある と 認 識 し て い な い よ う な 問 題 解 決 の た め に 」 生 徒 を 育 て る 必 要 が あ る と 指 摘 す る

(OECD2010=2013,p.30:=の

前 は原著 の発行 年 、後 は 日本語 訳 の発行 年 を表 す 。以 下 同 じ。)。 こんな現状 に対 して、今 井康雄 は 「教 育が置 かれて い る文脈そ の もの を再構 築す る必 要 に人 は 迫 られ るので ある。 」 (矢野

2009,p.4)と

言 つた 。 一 方 で教 育 の 問題 点 と して齋藤 直子 は 、 「同化 や 全体 性 へ の回収 とい う暴 力 的要 素」 (矢野

2009,p.77)が

教 育 には ある と言 つた。 あ らか じめ出来 上 が り定 ま った社 会 が あ り、そ れ を教 室そ の他 で 再現 して 、そ こへ の適 応 を説 く教 育 の前提 が崩 れ て きた現 代 で あ る。捕 えが た い定 ま らな い世 の中で子 供 た ちが 自己 開発 しなが ら生 きて い く力 を、教師 とともに生み 出 して い くこ

(8)

とを課題 として組み上 げて い く教 育が必 要 で あ る。そ のた め には、教 え る者 か らの与 え る 視 点で はな く、教 師 か ら発せ られ た言 語 に よって 生徒 が 自分 を振 り返 り自分 の言語 を発 せ られ る場 、そ んな場 を追及 す る視 点か らの教育 を構 築す る ことが喫 緊 の課 題 で あ る。 言 語 を発す る 自分 とモニ ターす る 自分 で対話 を しなが ら、確 認 しつつ 常 に変化 して い る 過 程 が あ り、そ してそ の過 程 を経 て新 た に発す る言語 に新 た な意 味が持 たせ られ る。そ の よ うに して言語 とともに生 き、生 きつつ発す る言語 は、それぞれ の人が 生 きて いる姿そ の もので あ る。そ の言語 とともに生 き る ことつ いて真正面か ら取 り組 んだ のが ウ ィ トゲ ンシ ュ タイ ンで ある。彼が追及 した言語 の使 用 と生 きる ことの問題 は、 これ か ら取 り組 むべ き 教 育 につ いて の方 向性 を示 して くれ る。 「語 り合 う教 育」 とい う課 題 を解 く鍵 と して言語 に注 目し、 ウィ トゲ ンシュタイ ンの言 語 哲学 を手がが りと して考 察 して い く。職 種・ 職 業 に関す る知 識 、就職 試 験 に合格 す るた め のスキル 、 自己 ア ピール を うま くす るた めのスキル 、労働 問題 に関す る知識 、 これ らは す べて必 要で あ る。卒 業 まで に身 に付 け させ た い もので あ る。 しか し、 どうせ 大 した就 職 はで きな い、 い く ら頑張 って もそ んな に就職 回はな い とあき らめて いる生徒 には無 力で あ る。そ れ 以上 に、そ んな ことを考 え る ことか ら逃避す る姿勢 を生み 出 して しま う。 自 らの 道 を切 りひ らいて い く生 き抜 く力 をは ぐ くむ教 育 とは、 生 き るスキル を培 う教 育 で はな い もっ と根 幹 に働 くキ ャ リア教 育 とは何 か。それ は、 どんな 困難 に直面 して も自 らの力で 切 り抜 け る方策 を考 え る力 を養 う教 育 で あ る。そ んな 自律 の 力は どう育 まれ るのか 。 教 育 とは、生 徒 に知識 を授 け る ことだ けで はな い。 もち ろん、基 礎 的な 知識 や 技能 の習 得 をめ ざす の も教 育 で ある。 しか し、そ の上 に立 って 自 ら生 きて い く力 を引き 出す と ころ まで いか な い と、教育 の責任 を果 た した とは言 えな い。生徒 は 目の前 の何か の刺激 を契機 と して 、それ を どう自分 に取 り込 むか と意識 を働かせ る。刺激 を受 けて か ら、意識 を働 か せ て 自分 に取 り込む ことは生徒 自身 によ る反応 で あ り、教 師 はそ こに入 り込む ことはで き な い。教 師がで きるのは意識 へ の刺激 とな る素材 の提示で ある。つ ま り、教師 か ら生徒ヘ ー 直線 に教授過 程が あ るので はな く、 あるのは教 師 の提示 と生徒 の反応 が一つ のメデ ィア で 出会 う過程で ある。それ を生徒が どうと らえ どう取 り込 むか は、生徒 自身が判 断す るの で あ る。 生徒 は教師 とは違 う独 自の働 きで世界 を見て いる。それ ゆえ、 生徒 には、そ こに あ る 「もの」 と して で はな く、そ こに 「あ る ことそ の もの」 と して かか わ る。 か かわ る と き の メデ ィアは言語 で ある。言語 は世界 にある対象 を一つ一つ表象す る記号 と して あるの で はな い。世界 を分析 的に観察 して 、把握 した対象 を一つ一つ言語 として記号化 し、そ の 記 号 を足 し算 のよ うに総合 して世 界 が で き るので はな い。そ ういった 「 もの」化 した 世 界 観 で は、言語 は一つ ひ とつ の事 実 の代 理 とな り、そ の事 実 を運 ぶ よ うに伝 え る ことが言 語 によ る コ ミュニ ケー シ ョン とな る。そ して 、そ の コ ミュニ ケー シ ョンによ って 、大 人か ら 子 供 へ と文化 を伝 授 して い く ことが教 育 で あ る といった 、「もの」化 した教育観 では今 の生

(9)

徒 を動 か して い く有効 な働 きか け とな るのは難 しい。 確 か に今 の教 育観 はそ うい つた知識 の伝達 で はな く、生 徒が 自 ら取 り組 む こ とで 力 を付 けて い く ことをね らい と して い る。知 識 。理解 で は な く関心・ 意欲・ 態 度 が 評価 の第 一 と して挙 げ られているのはそ の表れである。「新 しい学 力観」は「自ら学ぶ意欲や社会 の変化 に主体 的に対応できる能 力」

(1989(平

成元

)年

告示学習指導要領

)で

あ り、根幹 に働 く キャ リア教育の求めるもののようではある。真正の評価 は この力を生きる文脈 の上で評価 しようとして いる。 しか し、何か をしよ うとす る過程であるはずの関心・ 意欲・ 態度その ものを評価 しようとすれ ば、それは獲得す る 目的 となって しまい、生身の生徒 の生きる過 程そ のものの実感か ら離れていって しまう。それぞれ の生きている実感 を産 み出す 力、そ の力を引き出す力の育成 に向かわず、実感な く目的化 した抽象的な力に向か ってい くよ う になって しま う。 そ こで、本研究では、言語 を使用す る過程その ものに注 目す る。言語 は手段であ り、そ の言語 によって、子供 を教師が導 いて いくという今 の教育観か らではな く、言語 を発す る ことの実感か ら立ち上げ、そ の中で生きている実感 と生きてい く展望 を生み出 して いく教 育の在 り方 を新た に求めて い く。そんな言語 を使用す る実例 を示 して、言語 の獲得 と世界 との関わ りを示 して くれ るのがウィ トゲ ンシュタイ ンである。特 に彼の後期 の思想 を示す 『哲学探究 』に注 目して考 えて い く。 第

3節

論文構成 言語 というメデ ィアを通 して生徒の力を引き出す教育、 これ までの教育観 に変革 を迫る 教育、教え導 く生徒ではな く生きて苦 しむ生徒か ら立ち上げる教育 を、言語 を発す るとい う生きる姿そ のものか ら立 ち上げる教育観 に基づいた教育 を考 える。そ こか ら、キ ャ リア 教育の新 しい一つのあ り方 を提起する。 よって、本研究 の課題 は次のように設定 され る。 まず、第

1章

では現代言われて いるキ ャ リア教育に至るまでの歴史 を概観す る。次 に、第

2章

では、

1950年

代以降の 日本 の教育 制度や教育行政、産業界の動向に注 目して、キ ャリア教育の現状 を明 らかにす る。さ らに、 第

3章

で、キ ャリア教育 の問題点だけでな く、教育そ のものの抱える課題 を明 らか に した うえで、ウィ トゲ ンシュタイ ンの言語哲学 に注 目してそれ らの課題 を乗 り越 える方 向性 を 探 る。そ して最後 に、終章では、キャ リア教育 を再構 築す るための方途 を示す。

(10)

1章

キ ャ リア 教 育 の 現 在 に 至 る ま で の 歴 史 的 概 観 第

1節

日本の キ ャ リア教育 の源流 と してのアメ リカのキ ャ リア教育の歴 史 ア メ リカ にお いて は、 早 い時期 か ら心 理学 的観 点 によ って 自我 につ いて論 じ られて きた。 そ れ が産 業社会 の発達 とともに、職 業へ の適性 の発見や さ らには一生の人生設 計へ応 用 さ れ て きた 。そ の動 向に学び なが ら日本 の職 業指導 、進 路指導や キ ャ リア教育 の理論が形作 られ て い る。そ こで、 まず ア メ リカ のキ ャ リア教 育 に注 目す る。 ア メ リカ の職 業指導 は、都 市 に集 中 して きた労働 力 をいか に して職業 に当て は めて い く か とい う職業紹介 的な職業指導 vocattonal guldanceと して始 まった。そ の後 、個 人 の特 性 を客観 的 。科 学 的 に解 明す る ことの研 究 が進 み、 これ と職 業特性 との適 合性 を追 求 して い くよ うにな る。次 に心理学研 究が進 む につれ て、長 い人生 の 中の一 回限 りの適 合で はな く、 人 の発達概 念 を取 り入れ て、人生 を構 成す る諸 要素 の うちの一つ と して職 業 を取 り込 む よ うにな る。 人 の成 長 と発達 を これ ら諸 要素 の総合 として見 て い くよ うにな って 、職 業 指 導 vocatlonal guldanceか ら進 路 指導 career guldanceへ とそ の視 点 を変 えて い つた 。こ れ は、産 業構造 が大 き く変化 して来 た現代 にお いて は、特 に重要 さを増 して きた視 点で あ る。そ して、特 に学校 段 階 にお ける指導 と して キ ャ リア教育 career educationが 論 じ られ て きて い る。 ① 職 業 ま旨導 vocational guidance

19世

紀 か ら

20世

紀 の初 め にか けて 、都 市で の工業 生産 力が 高 ま り、 人 口は農村 か ら都 市 へ と大 き く移 動 して いった 。 と ころが 、 労働 環 境 は整備 され て お らず 、犯 罪や 失 業 な ど の多 くの問題 を抱 えなが ら職 業選択 の効 率化 は大 きな課題 で あった。ボス トン大学 のパ ー ソ ンズ (Parsons,F。

)は

1908年

、職業 局 を開設 し、職業指導 vocational guldanceと い う語 を初 めて使 用 した 。職 業 指導 vocatlonal guidanceの 語 が示 す とお り、都 市 に集 中 し て きた労働 力 を職業 に当て は めて い く職業 紹介 的な職 業指導 が行 われ、個 人特 性 と職 業特 性 の適 合 (マッチ ング

)に

よ る職業相談 vocational counselingが 主流 とな る (日本 キ ャ リ ア教 育 学 会

2008,p.46)。

一方 で科 学 の進展 に ともな い、人 の心 を科学 的客観 的 に解 明 す る ことが研 究 されて いった 。フ ラ ンス の ビネー (Binet,A.)ら によ る集 団式知能検 査 が 、 個 人 と職 業 とのマ ッチ ング を測 る適 性検 査 と発 展 して い く。 こう して 、個 人 の能 力や 適 性 を科 学 的 0計量 的 に測 定す るよ うにな り、個 人特 性 と職 業 特 性 の適 合 (マ ッチ ング

)に

よ る職 業指導vocational guidance、 職 業相 談 vocatlonal counsellngが 主流 とな る。特 に

1930

年 代 の経 済恐 慌 の 中で 、公 共 の職 業斡 旋 が行 わ れ て 、個 人 の特 性 傾 向 の診 断や そ れ に応 じ

(11)

た職 業情報 の提供 が行 われ 、そ の実績 デー タが蓄 え られて い く (日本 キ ャ リア教 育 学 会 2008,p.46‐ 48)。

② 進路:旨導career gu■dance

この、個 人特性 と職 業特 性 の適合 によ る職 業指導 は、職 業選択 時 の

1回

、 人 生 にお け る

1回

限 りの選 択 の意 味合 いが強 か った 。そ こに発達 の概 念 を取 り入 れ て 、そ れぞ れ の発達 段 階 に応 じた職 業 選 択 の視 点 を提 唱 した のが 、スー パ ー

(Super,DoE.)で

あ る。ス ーパ ー は、職 業だ けでな く、人 を取 り巻 くそ れ以外 の様 々な環境 要 因 も互 い に影響 しあ う ことを 含 めて 、「ライ フ 0キ ャ リア・ レイ ンボー」(1980 A life‐ span,life‐space approach to career

development、

1996年

改 変

)と

して職 業 発達 を描 いた (渡辺 2007,p.38‐ 44)。 しか し、 そ の発達 は、段 階 的 に進 み後 戻 りのきかな い一方 向で ある こと等 、発達 そ の ものにつ いて は、固定的に狭 くとらえている。だが、 自己概念の発達 を職業 のみに限定せず、また、発 達 を成人期以降まで拡張す る ことで、職業選択時の

1回

限 りものではな くキ ャ リア という 人生全般への広が りを見せ、のちの職業指導vocatlonal guldanceか ら進路指導 career

guidanceへ

の視点の転換へのか じ取 りとなった。 ③ キャ リア発達 に沿 った進路指導 career guidance 現在、雇用のあ り方や就業形態が多様化 して いるが、組織 とのかかわ りの中での個人的 キ ャ リアの発達 につ いての理論化 をしたのが シャイ ン

(Schein,E.H.)で

ある。組織 との 関係で具体 的に現れ るものを外的キャ リア external career、 個人の内的な過程を内的キ ャリアmternal careerと 分 けて とらえ、キ ャ リアは組織 と個人 との相互関係で発達 して いくものであるとして、 この過程 をキ ャ リア・ ダイナ ミクス

career dynamicsと

呼んだ。 個人のキャ リア発達 の方 向づ けをする基盤がキ ャ リア・ ア ンカーcareer anchorで、 これ を認識す ることで個人のニーズ と組織 のニーズ を分析・ 統合 して 自分 自身の役割 のプラン ニ ングを行 う。 このアプローチ としてキャ リア・サバイバル career survlvalと い う概念 も提唱 した (渡辺2007,p.114-117)。 ここに加 えて、家庭での役割 と仕事での役割 の調 和 の視点 も含 めて、現代 のワーク・ ライ フ・ バ ランスの観点が早 くか ら論 じ られて いた。 ここまでのキ ャ リア理論は、客観的・ 科学的かつ個人の心理 に焦点 を当てた ものである ために、集団を相手 にす る実践的なキ ャリア教育、キ ャリア・ ガイダ ンスには十分 に対応 しきれないよ うになって い く。それに対 して、よ り実戦 に即 したアプローチ を して いった のが、ポス トモダ ン・ アプローチ と総称 され る理論である。

(12)

④ ポス トモダ ン・ アプローチ コクラン

(Cochran,L)は

、人は人生におけるさまざまな経験 を、時間軸 に沿 った 自 分 に関す るス トー リー として理解 し、そ の時々の選択 、解決、行動な どを 「物語」 として 作 り上げていくとして、ナ ラティブ 0ア プローチ narratlve approachを 唱えた (日本キ ャ リア教育学会2008,p.46ノ p.75-76)。 これによって、適性検査の結果を職業特性 に合致 させ る介入ではな く、検査結果か ら描 く本人の物語の筋書きづ くりに介入す る ことで、選 択 の主体 を本人 に持っていくかかわ り方 に変えていける。ナ ラティブ・ アプローチでは、 物語作 りということで、 自己 を固定的ではな くその都度の筋書きによって変化 して い くも の ととらえる ことができる。 また、クランボルツ

(Krumboltz,JD)は

、偶然の出来事 との遭遇が新 しいキ ャ リア発 達 を促す ことがあ り、偶然の遭遇 にうまく適合できるよ う自己の準備が必要である ことを 説 いたプラン ド・ハ プンスタ ンス

Planned happenstance理

論 を唱えた

(Krumboltz,J.D

Levln,A.S.花

田 2004〓2005)。 いずれ にせ よ、ポス トモダン・ アプローチは、個人の

特性や適性を固定的にとらえるのではな く、個人の自己概念 の発達 に焦点を当てて、常 に 変化す る者 として本人の積極 的な関わ り、主体性を求めるところに特徴がある。

⑤ キ ャ リア教育 career education

ところで、 日本では職業指導→進路指導→キ ャリア教育 と変遷す るのだが、アメ リカで は、vocational guidanceの あと career guidanceと career educationが 同時:こ進行 して い

く。キ ャ リア・エデュケー シ ョンの源流は、

1971年

連邦教育長官マー ラン ドの全米 中等教 育諸学校長会での「すべての人にキャ リア・ エデュケー ショを」 の発言 による。当時のア メ リカでは、大学進学率が上昇 して高等学校での職業教育が低下 し、職業観・勤労観が芳 しくない生徒がめだってきた。 また、いつ まで も進路決定できない青年が増加 した。一方 で、アメ リカ経済の国際競争力が低下 し、イ ンフレ、失業 といった問題が深刻であった。 こうした時代背景か ら、キ ャ リア・ エデュケー ションが全米 の幼稚 園か ら大学 まで導入 さ れていった。確かに、

1957年

のスプー トニク・ ショック後 の、アメ リカの

1960年

070

年代の教育問題の第一は大衆化 と低学 力化 であ り、

1959年

か ら

4次

にわたる「コナ ン ト報 告」以降、教育の関心 は学 力向上が主 眼で あつた。ただ、それ とキ ャリア教育 を対立的 に とらえるのは誤 りで、マー ラン ド以降様 々な施策が取 られ、キ ャリア・ エデュケー シ ョン は教育改革の骨格 として広が って い く。全ての児童・ 生徒・ 学生に、教養的教科 と職業 的 教科 を総合的に指導 して、卒業後 のふ さわ しい進路選択 を し、人間 としての望 ましい生き 方 を指導 しよ うとするもので ある。 「危機 に立つ国家A Nation at R■sk」 か ら

10年

後 の

1994年

、「学校か ら職業へ の移行

(13)

職 業 へ のス ム ーズ な移 行 を促 進 す る ことを 目的 と した もので あった。 高等 学校 卒業 者 の就 職 難 、高等学 校 中退 者 の増 加 、若 年者 の労働 力形 成 の 問題 が表 面化 した ことが 背 景 で あ る。 さ らに、

2002年

には、改訂 「初等 中等 教育法」いわ ゆる 「一人た りとも落 ち こぼ さな いた め の法 No Chlld Left Behind Act」 が 制定 され 、進 学 と就職 の両面で のキ ャ リア・ パ スが 選択 で き るよ うな き め の細 か い支援 方 策 が全 国規模 で行 わ れ 、体 系 的な キ ャ リア・ ガイ ダ ンス 、個別 に対応 したキ ャ リア 0カ ウ ンセ リング、エ ンプ ロイ ア ビ リテ ィ (就職 能 力

)の

育 成 な どを、学校 と企 業 の連 携 の もとに行 われ る こ とが求 め られ た (日本 キ ャ リア教 育 学 会 編

:2008,p.37-40)。

キ ャ リアカ ウ ンセ ラー が さま ざまな場面で有効 に活用 されつつ 、高校 中退 問題 とも密接 に結 びつ いて いる若 年無業へ の支援 な ども大 きな課 題 とな って いる。

2006年

の「職 業教育 法」 で は、 「職 業 教 育vocational education」 に替 わ って career and technical education が使 われてお り、従 来 の 「非進学者 向 けの教 育」 とい う固定観 念 の打破 をね らって よ り広 い取 り組 み を期待 して いる (日本 キ ャ リア教 育 学会 編

2008,p.193)。

この よ うに全米 的なス タ ンダー ドによ る教 育改 革 を進 め よ うと して きた ので あ るが 、 ア メ リカで は教 育 の権 限 は州 にあ るた め に、 これ までそ の進 行 には大 きな 異な りが あ った。 と ころが、

OECDの

提 言 によ る

EU地

域 で のキー・ コ ン ピテ ンシー議 論 の広 が りに対 して 、 ア メ リカ連邦労働 省 の リー ドで

21世

紀 型 ス キル の (21st Century Skills)の 議論 が全米 的 に広 が って い く。これ は、

SCANS(Secretary's Commission on Achleving Necessary

Skills)プロジェク トによ って、エ ンプ ロイヤ ビ リテ ィー のため の

5つ

の コ ン ピテ ンシー と

3つ

の技能 と個 人 的資質 が提示 され た もので ある。それ はマイ ク ロソ フ トな どの

ICT関

連企 業や教 育 団体 な どの設 立 によ る 「

21世

紀 型ス キ ルパ ー トナー シ ップ」

(P21)に

よっ て広 く教育改 革 を推進す る動 き とな って いる。さ らに、「

21世

紀 型 スキル のた め の教 育 と 評価 プ ロジェ ク ト (assessment&teaching of 21st century skllls,ACT21S)」 とい う国 際研 究 プ ロジ ェク トとな って広 が って い く (国立教 育 政策研 究所 2013,p.47‐ 49)。

一方 では、全米 州教育長協議会

(CCSSO)と

全 米 知 事 会

(NGA)の

リー ドによ って 、 コモ ンコア 0ス テイ トス タ ンダー ド

(the cOmmon Core States Standards,CCSS)が

示 され る。 これ は、英 語 と数学 に関す るスタ ンダー ドが州 の枠 を越 えて 開発 され た もので、 これ も全米 的 に広 が りつつ ある (国立教育 政策研 究 所

2013,p.54)。

2節

日本 のキ ャ リア教 育 の歴 史

文部 行 政 にお いて キ ャ リア教 育 の文字 が初 めて 出て きた のは、

1999(平

11)年

の 中 央 教 育審議会 答 申で あ る。そ こで は、「主体 的 に進 路 を選 択 す る能 力・態 度 を育 て る教 育」

(14)

と して定義 され て いるので あ るが 、

2003(平

15)年

の若者 自立・ 挑 戦戦略会議 「若 者 自立 。挑 戦 プ ラ ン」 、翌

2004年

の 「キ ャ リア教 育 の推進 に関す る総合 的調査研 究協 力者 会 議 報告 書」、

2011(平

23)年

の 中央教 育審議会答 申 と、次 々 に指針 が示 され て い る。

また 、そ の間、 「学士 力」 「人間 力」 「社 会人基礎 力」 「就職基礎能 力」や 、最近 で は ア クテ ィブ 。ラーニ ング active learningや ジェネ リック 0ス キルgenerlc sklllsな ど、様 々 な側 面 か ら、 高等 教 育 の場 で各方 面 か らた くさんの議論 が起 こって いる。高等 学校 にお け る場合 と高等教育 にお ける場合 の違 いに注 意 しつつ考 察 を進 めて いきた いので あるが 、高 等 学校 を含 む初等 中等 教 育 との関連 か ら職 業指 導 を見 た場 合 、 日本 にお いて はそ の始 ま り は大正期 に求 め られ る。 ① 職 業指 導 の初 期 職 業 指導 とい う用 語 が 日本 に紹介 され た のは大 正期 で あるが 、 これ によ ってそ の後 、東 京 や 大 阪 に職 業 相談所 等 が 開設 され て い く。学校 教 育 にお いて も、様 々な研 究 会 等 が組 織 され て い くので あ るが 、 昭和 にな って、高等小学校や 中学校 へ の進学が増 えた ことが背 景 とな って 、進学 問題 と職業指 導 とが一体 の もの として考 え られて いた。 しか し、そ の後 の 戦 時体 制 に突 き進 んで い く時 代 の流れ と と もに、職 業指 導 は停 滞 して い く (日本 キ ャ リア 教 育学会 編言2008,p.30‐ 32)。 ② 戦後 の進路 指 導 新 制 中学校 が義務教 育 と して発 足 す る とともに、

1947(昭

22)年

に新学習指導 要領 (試案

)が

作成 され 、そ れ に基 づ いて職 業 指導 が教科 と して位 置づ け られ る。職 業 指 導 科 は

2年

後 には職 業科 並 び に家 庭科 とな り、

1951(昭

26)年

には職業 0家庭科 、

1958(昭

33)年

には技術・ 家庭科 とな る。 しか し、職 業指導 とい う名称 は、職業教育 と混 同 され た り、就 業指 導 と して狭 く解 釈 され た り、 さ らに、進学指導や 生徒指導 と全 く分離 した活 動 と して捉 え られ た りな どの反省 か ら、

1957(昭

32)年

の 中央教育審議会答 申 「科 学 技 術 教 育 の振興 方策」 で 「進 路指 導 」 とい う語 に公 的 には統 一 され た。翌

1958年

の 「中 学校 学習 指導 要領」、

1960年

の 「高等学校 学習指導要領」の改訂 に伴 って 、すべて学校 で 行 う指導 は 「進路指導 」 とな った 。 これ につ いて は、職 業観 の育成や職 業 理解 につ いて の 懸 念 が 出 され たが 、

1969(昭

44)年

の学習指導 要領 の改訂 によ って、進路指導 は

HR

を 中心 と して学校 の教育活 動 全体 で取 り組 まれ る こと とな った (日本 キ ャ リア教 育 学会 編 2008,p.32‐ 34)。 さ らに、

1977(昭

52)の

中学校 、 翌年 の高等 学校 の学 習指 導 要領 の 全 面 改訂 に ともな って 、特別活 動 の重要性が強調 され る とともに、進路指導 は学校 の教 育 活 動 全体 を通 じて充実 を図 つて い く こととな った 。 しか し、 この頃か ら、 高等 学校 の進 学 率 の増加 とと もに受験教 育 の過熱 が進 み 、職 業教 育 は後 景化 して い く。 ア メ リカ で はキ ャ

(15)

リア・ エデ ュケー シ ョンを教 育 の大衆 化 と低 学 力化 に対 す る改 革 の一環 と して 取 り組 んで いた この時期 、 日本 では進 学率 の増加 を主 に普通科 で収容 して いたた め、大学受験 とい う 一元 的な価 値観 の もとで、進学指導 に重点 を置 いた進路指導 の過熱化 が進 む。そ のた め、 多様 性 とキ ャ リア教 育 の導 入 とい う方 向性 が 出 る まで に、 まだ しば らくの時 間が必 要 で あ った 。 た だ 、

1978(昭

53)年

改訂 の高等 学校 学 習指 導 要領 で 、 「勤 労 に関わ る体 験 的な学 習 (勤労体 験 学 習)」 が 取 り上 げ られ 、第

1章

1款

4に

お いて 「学校 にお いて は、地 域や 学校 の実 態等 に応 じて 、勤 労 に関わ る体 験 的な学 習 の指導 を適 切 に行 うよ うに し、働 く こ とや 創造 す る ことの喜 び を体 得 させ る とともに望 ま しい勤 労観や職 業観 の育成 に資す る もの とす る」 と して、改 めて職 業教 育 の必 要性 を説 くともに、そ れ を教科 で はな く学校 教 育 全 般 の問題 と位 置づ けよ う と した 。そ して 、

1989(平

成 元

)年

の学 習指導 要領改訂 で は、進路指導 は 「在 り方 生 き方」 の教 育 と して新 たな展 開 を見せ て い く。 この動 きがや が て キ ャ リア教 育 の導入へ と進 んで い く。 ③ 「 キ ャ リア教育 」 とい う語 の登 場

1993(平

5)年

の文部省編 「中学校 。高等 学校 進路指導 の手 引 中学 校 学級 担 任 編」

(3訂

版 日本 進 路指 導 協 会

)に

お いて 、す で に 「キ ャ リア教 育」 「キ ャ リア発達 」 の語 が用 い られて いるが、

1999(平

11)年

の 中央教 育審議会答 申で、 「学校 教 育 と職 業生 活 の 円滑 な接 続 を図 るた め、望 ま しい職 業観・ 勤 労観 及 び職 業 に関す る知 識 や 技 能 を身 に 付 け させ る と ともに、 自己 の個 性 を理解 し、 主体 的 に進 路 を選択 す る能 力・ 態 度 を育て る 教 育 (キャ リア教 育

)を

発達 段 階 に応 じて実 施 す る必 要が ある。」 と、 文部 科 学省 (当時 は文部省

)関

係 の行 政文 書 に初 めて 「キ ャ リア教 育」 の語 が登 場 した 。 「主体 的 に進 路 を 選択 す る能 力 0態度 を育 て る教 育 」 と して 定 義 され て いる ので あ り、児 童・ 生徒 の発達 段 階 に応 じた主体 的 な能 力 の育 成 を期待 して い る。戦後 の職 業教 育 を、教 科 と して の指導 か ら特別活動 さ らには学校教 育全体 へ と広 げて い く中で、職 業教 育か らキ ャ リア教育へ と広 範 囲化 した ので あ る。 そ れ を受 けて、 国立教育 政策研 究所 か ら

2002(平

14)年

、 「人 間 関係能 力」 「情報 活 用 能 力」「将 来 設 計能 力」「意 思決定 能 力」の いわ ゆ る「

4領

8能

力」が示 され る (「児 童 生徒 の職業観・勤 労観 を育 む教育 の推 進 に関す る調査研 究報告書」)。 そ の後 、

2003(平

15)年

、若者 自立・ 挑 戦戦略会議 (文科 省 、厚 労省 、経 産省 、内 閣府

)に

よ る 「若者 自 立・ 挑戦 プ ラ ン」 で は、 「教育段 階か ら職 場定着 に至 るキ ャ リア形成及 び就 職支援 」 の必 要性 が説 かれ る。 翌

2004年

、文部科 学 省 「キ ャ リア教 育 の推 進 に関す る総 合 的調 査研 究 協 力者 会議報 告 書」 で は、 「キ ャ リア」 の定 義 と して 、 「個 人が 生涯 にわ た って遂行 す る 様 々な立 場や 役割 の連 鎖 及 びそ の過 程 にお け る 自己 と働 く こと との関係 付 けや価 値 付 けの

(16)

累積 」 、 「キ ャ リア教 育」 の定義 と して 、 「児 童 生徒 一 人一 人 のキ ャ リア発達 を支援 し、 そ れぞ れ にふ さわ しいキ ャ リアを形成 して い くた めに必 要な意欲 。態度や能 力 を育て る教 育 」 が挙 げ られ た。 こ こには、児 童 生徒 の成長 を生涯 にわ た った もの と して と らえ、そ れ を支 え る視点か らのキ ャ リア教育 の在 り方 を提起 しよ うと した ので ある。 しか し、そ の後 に あ る 「端 的 には 「児童生徒 一人一 人 の勤 労観 、職業観 を育 て る教 育」」 とい う表現 によ って 、学校現場 には結 局 「勤 労観 、職業観 」の育成 のため の「職業教育」 とい う狭 い範 囲で と らえ られて しまって 、職 場体 験 がそ の柱 とな って広 まって い った。 「報告 書」 自体 の ト ー ンも、 「「キ ャ リア教育」 の推進 は、 「学校 教育 と職業 生活 との接続」 の改 善、言 い換 えれ ば、「学校 か ら職業 へ の移 行」にかか る課題 を克服す る観 点 か ら要請 され た ので ある。」 とあ るよ うに、職業教 育的な視 点か ら抜 け切れて いな い。そ こには、学校 で育て る能 力 と 社 会 や企 業 が必 要 とす る能 力 の一致 を前提 とした職 業 適応 的な キ ャ リア発達観 が支 配 して い る。 一方 で 、

2011(平

23)年

の 中央 教育審議会答 申で は、 「キ ャ リア」 とは、 「人が 、 生涯 の中で様 々な役割 を果 たす過 程 で、 自 らの役割 の価 値や 自分 と役割 との関係 を見 いだ して い く連 な りや積 み重ね」 、 「キ ャ リア教 育」 とは 、 「一 人一 人 の社 会 的・ 職 業 的 自立 に向 け、必 要な基盤 とな る能 力や態 度 を育て る ことを通 して 、キ ャ リア発達 を促す教 育」 と して 、 特定 の活動や指導方 法 に限定 され る もので はな く、様 々な教育活動 を通 して実践 され るべ き ことを強調 した。 しか し、 「新 しい教 育活 動 を指 す もので はな い」 と して きた ことによ り、従 来 の教 育活 動 の ままで 良 い と誤解 され た り、 「体験活動 が重要」 とい う側 面 のみ を と らえて、職 場体 験 活 動 の実 施 を もって キ ャ リア教 育 を行 った もの とみ な した り す る傾 向 が学校 現 場 には見 られ る。 キ ャ リア教 育 とは別 の観 点 か ら始 め られ た もので あ る が 、兵庫県 の「 トライや るウ ィー ク」な ど、成果 を上 げて いる活動 も確 か にある。しか し、 これ はそ のための事前 。事後 指導 も含 めた他 の活動 と関連 した よ り大 きな教 育活動 によ っ て の成果 で あつて、体 験活動 とい う現 象面 だ けを と らえて は いけな い。 もはや 学校卒業か ら就職へ の安 定 した連続性 は期待 で きな いゆ えに、生涯 にわ た って 自 己啓 発 が で き るキ ャ リア発達 観 の上 に立 って の実 践へ とは、な か な かつ なが らな いのが実 態 で あ る。 ④ キ ャ リア教 育 の広 が り

2003(平

15)年

には、 内閣府 か ら 「社会 を構成 し運営す る とともに、 自立 した一 人 の人間 と して 力強 く生 きて い くた め の総合 的な 力」 と して 「人 間力」 、

2004(平

成 16) 年 には、厚 生労働省 か ら 「企 業 が採 用 に 当た って重視 し、基 礎 的な もの と して 比 較 的短 期 間 の訓練 によ り向上可 能 な能 力」 と して 「就職 基礎 力」 、

2006(平

18)年

には経済 産 業 省 か ら 「職 場や 地域社 会 の 中で 多 様 な 人 々 とともに仕事 す る上 で必 要 な基 礎 的な能 力」

(17)

と して 「社会 人基 礎 力」 、

2008(平

20)年

には、 文部科学省 か ら「分 野横 断的 に我が 国 の学士課 程 教 育 が共 通 して 目指 す 「学 習成 果」 につ いて の参考 指針 」 と して 「学 士 力」 が提 唱 されて いる。 「学士 力」 は大学 卒業 にあた って の習得す べ き能 力 の指針 とい う点で は他 と少 し違 う側 面が あるが 、 どれ も社会 の 中で 自立 して他 と協 力 しなが ら業 務 を遂行 で き る力 と して 共通 してお り、キ ャ リア教 育 と並 んで育成す べ き力の議 論 の中 に出て くる語 で あ る。 また 、

2011(平

23)年

の 中央教育審議会答 申で は、 これ まで の 「

4領

8能

力」 か ら、新 た に 「基礎 的・ 汎用 的能 力」へ の転換 が示 され る。そ の理 由 と して 「 「

4領

8能

力」 をめ ぐる これ らの 問題 を克 服す るた め、就 職 の際 に重視 され る能 力や 、そ の後 に提 唱 され た類似 の高 い各種 の能 力論 (内閣府 「人 間 力」 、経済 産業 省 「社 会 人基 礎 力」 、厚 生 労働 省 「就 職 基 礎能 力」な ど

)と

ともに、改 めて分析 を加 え、「分野や職種 にかかわ らず、 社 会 的・職 業 的 に 自立 す るた め に必 要 な基 盤 」と して 再構 成 して提 示 す る こ と と しま した。」 (「キ ャ リア教育 の さ らな る充実 のた め に」

2011)と

説 明 され て いる。 そ の基盤 には、

OECDが

1997年

に立 ち上 げた 「成 人 の コン ピテ ンシー の定義 と選択」 (Deflnitlon and Selection of Competencies,DeSeCo)と 呼 ばれ るプ ロジ ェ ク トの、「人 生 の成功 と正 常 に機 能す る社 会 のた め に どんな コン ピテ ンシーが必 要か?」 の議論 か ら出 て きた

3つ

のキー・ コ ン ピテ ンシー につ いて の定義 が ある。詳細 は次 章で触 れ るが 、カテ ゴ リー

1「

相 互作 用 的 に道 具 を用 いる」 能 力、 カテ ゴ リー

2「

異質 な集 団で交 流す る」 能 力、 カ テ ゴ リー

3「

自律 的 に活 動 す る」 能 力 と して 整 理 され て い る。 これ は、す で に 日本 で

1989(平

成元

)年

の学習指導要領改訂で取 り上げた「新 しい学力」観 に通 じるものであ る。観点が 「関心・ 意欲・ 態度」 「思考・ 判断」 「技能・ 表現」 「知識・ 理解」 の順 とな り、 「関心・ 意欲

0態

度」 の評価 を筆頭 に置 く。旧来 の学力観が知識や技能 を中心 にして いたのに対 して、 「新 しい学力」観では、児童・ 生徒 の思考力や 問題解決能 力な どを重視 し、生徒の個性を重視す るとしている もので ある。 こうしてキ ャリア教育がめざ した 「一人一人の社会 的・ 職業的 自立 に向け、必要な基盤 となる能力や態度 を育て る ことを通 して、キ ャ リア発達 を促す教育」

(2011(平

成 23) 年 中央教育審議会答 申

)に

ついての議論 は、学校現場では限定的にと らえ られ るという問 題点を抱えた まま、文部科学省や学校現場 に留ま らず、社会全体 の大 きなテーマ となって 広がっていくことにな る。そ こで問題 となって くるのは、子 どもたちの力を どんな観点か らどんな指標で測 るのか、それが どんな能力であるのか といった根本的な問題点で ある。

(18)

2章

産 業 界 の 動 向 に よ っ て 変 化 して き た キ ャ リア 教 育 の 現 状 第

1節

「職 業教育」 か ら「キ ャ リア教育」へ変化 して きた背景 で は、なぜ このよ うに 「職業教育」か ら「キ ャ リア教 育」 へ の教育観 の変遷 が あった の か 。そ の背景 を探 る ことは、そ の 問題点 を探求 して課 題解 決 の策 を追求す るた め には有 益 で あ る と考 え る。 ① 職 業 指 導 か ら進路 指 導 ヘ 正確 には、職 業教育 か らキ ャ リア教育 に変化 して きた ので はな い。職 業教 育 と して の職 業指 導 が 進路指 導 とな り、そ れ が キ ャ リア教育 といわれ るよ うにな って よ り幅 の広 い取 り 組 み をす るよ うにな った ので あるが 、単純 に直 線 的 に変化 した わ けで はな い。 そ の変化 の 背 景 には、高等 学校 進 学 率 の高 ま り特 に普通科 教 育 の大 きな伸 びが あって 、実 はそ れ が た め に、高等 学校教育 の職業教育 的側 面が後 景化 して いつた とい う実 態が ある。

1970年

代 か ら

80年

代 にか けて、 高校・ 大学 へ の進学 が急 速 に増 えて い った。

1973年

には大学進学率 が

30%を

超 え、

74年

には高校進 学率が

90%を

超 え る (文部科 学省 学校 基 本 調 査)。 高校 の場合 、そ の進学率 の増加 を普通科 で収容 して きた。戦後 、新 制高校 にな って 「総合性」 「学 区制」 「男女共学 制」 の 「高校 三原則 」 の もとに学校づ く りが行われて きた ので あ る が 、普通科 と職業学科 の並 置 とい う 「総合性」 にお け る職業教育 は、施設 。設備 の整備維 持 に伴 う経 費等 の問題 か らや がて後 退 して い く。 一方 で は、主 に産 業界か らの要請 によ る職業教 育 の必 要性 か ら、職業 高校 の分 離 を提 唱 す る意見 もあった。そ の動 きか ら

1965年

前後 まで は、普通科 と職 業科 の比率 は

6:4の

ま まで維 持 されて きた。

1960(昭

36)年

発足 の池 田内 閣の 「所 得 倍 増 計画 」 で は、 工 業 高校 の定員 増 によ る 「人 的能 力 の 向上」 を掲 げて い る。 た だ 、職 業科 の充 実 は、産 業 の 発 展 とそ れ によ る政治 の安 定化 を 図 ろ う とす る国家 目標 に合 わせ た 人材 の育 成 の構 図 の 中 に、学校 教育が組 み込 まれて い くことにな るのだが。と ころが、

70年

以 降 は普 通科 が増 え る一方な のに対 して職 業科 は減少傾 向 とな る。

1976(昭

51)年

の理科教育及 び産 業教 育 審 議会 報告 で は、職 業教 育 は普 通教 育へ と接近 して い く (本田2009,p.69-76)。 文部 省 『学 制百二十 年 史 』で は、以下 のよ うに ま とめて い る。 昭和

40年

代 末 か ら

50年

代 にか けて 、我が 国 の産 業経済 は、急 速 な技 術 開発 の進 展 な どによ り著 しい発展 を遂 げ、世界経済 の一翼 を担 うほ どの経済 力を有す るよ うにな った。 この よ うな状況 の中で、理科教 育及び産業教 育審議会 は、高等学校 の職 業教 育 の在 り方 につ いて審議 を行 い、

51年

に最終報告 をま とめた。 この報告 は、1)基礎教 育 の重視 、2)

(19)

教育課程の弾力化 、専 門教科 。科 目の最低必要単位数 の引下 げ、3)学科構成 の過度の専 門分化傾向を是正 し、総合 的ない し基幹的な ものに改善、4)勤労にかかわ る体験的学習 の強化、という四事項 にかかわるものであった。

53年

の高等学校学習指導要領の改訂は これ らの趣 旨を踏 まえて行われた。 (第二編 第二章 第七節 一 昭和五十一年 の理 産審報告) このため、高等学校 までは就職 よ りも大学等高等教育への進学 を意識 した学習 を構想す る よ うにな り、職業教育 にお いて も進学 した後 を見越 して、就業そ のものよ りも 「在 り方生 き方」 の教育へ と広がって いくのである。 ② 普通科の偏重 一方で、新規一括採用 と長期雇用、企業内教育訓練 という 「日本的雇用」が

60年

代以 降急速 に広 まって い く。そ のため、企業の選抜は、基礎的基本 的な知識 。技能 を習得す る 能力を尊重す るという一元的な能力観 に基づ いた もの とな り、それ によって、高度経済成 長期 の労働 力確保 を図ってい くという構 図が出来上が って いく。

1997(平

9)年

中央教 育審議会

2次

答 申で振 り返 って指摘されたよ うに、 これが、 「学歴 (校

)偏

重」 とな り、 「よい学校

=よ

い会社

=幸

せな人生」といった図式が広 まって、「横並び意識や 同質志 向」 の社会 となってい く (第

2章

4節

)。 それが普通科偏重 とな り、大学進学率 も併せて増 加 していく中で、増加 して いつた高等学校進学者 を普通科で収容 して い くという構造 にな っていくのである。高等学校 に入学 してか らは、大学進学 に向けた教育体制 をどこで も取 るようにな り、入試 に向けた学力 とい う一元化 の中での競争が激 しくなって いく。それは 学校教育の質 を知識 の量 という単一の指標で測 ろうとする動向である。 当時のアメ リカで は、学力低下 に対す る教育改革の必要か らキ ャ リア・ エデ ュケーシ ョンの取組が行われて いたのと対照的で ある。ただ、 日本で もキ ャ リア・ エデュケー シ ョンを取 り入れた先進的 な取 り組み も学校 レベルでは見 られたのに、全体 の傾向 としてはその方 向には行かなかっ た。 別 の面か ら言 え ば、先 の 「よ い学校

=よ

い会社

=幸

せ な 人 生」 とい う図式 に示 され る も のが、普通科 の増 大 によって、高度経済成長期 の労働 力確 保 とい う企 業 の思 惑 を超 えて、 自分 の利益 た め の教 育 の受 益 とな って 教 育 の私 事化 が進 んで い くことにな る。 これ に対 し て行 政面で は、子 供 た ちの個 性 を尊重 して一 人ひ と りの得 意 を伸 ば して い こうとす る多様 化 の動 きが 、

1984年

か らの臨時教育審 議会 以 降は っき りと出て くる。

(20)

2節

文部行 政 の変遷 ① 中央教育審 議会答 申 進 学 率 の増加 とくに普通科 の量 的拡 大 に対 して 、文 部科 学 省 (文部省

)の

施 策 にお いて は 、受験教育 の過熱 を抑 え るため に、 中 。高等 学校 で の進路指導へ の多元 的な価 値 の導 入 が 示 され る。文部行 政 の理論 的裏付 け と政策提言 として の臨時教育審議会や 中央教 育審議 会 の答 申を見 る と、量 的拡 大 に対 す る政策 面 の変化 が見 て取 れ る。 さ らに、学校 指 定 によ る安 定 した学校 か ら企 業へ の就職環 境が変化 して きた ことをあげて、学歴偏 重 の一元 的な 価 値 観 か らの脱却 を求 め る。そ の表 れ と して 、

1992(平

4)年

の「新 しい学 力観」、1993 (平成

5)年

の総合学科 に象徴 され る高等 学校 の多様化 が打 ち出された。今 で言 うキ ャ リ ア教 育 的な視 点 と制度改革 の始 ま りは、

90年

代 前 半 には既 に示 され て いた ので あ る。 以 下 、

1971(昭

46)年

の 「

46答

申」 以 降 の変遷 を ま とめ る。

(1)「

今後 にお け る学校 教 育 の総 合 的な拡充 整備 のた め の基 本 的施策 につ いて」

1971(昭

46)年

6月

いわ ゆ る 「

46答

申」 で あ る。 戦後 、 民 間 の 「憲法研 究会 」 か ら 「憲 法 草案 要綱 」 を公 表 し、教 育基本 法 の原案作 りに もか かわ り、片 山内 閣・ 芦 田内 閣の文部 大 臣で あつた森 戸 辰 男 が委 員長 と して ま とめた 。 「国家 。社 会 の未 来 をか けた第

3の

教 育改 革 に真 剣 に取 り 組 むべ き時で ある」 と して 、 「

4年

とい う異例 の長期 間 にわ た って慎重 に審議 を行 った」 答 申で あ る。 「今後

10年

以 内 に、個 人お よび 国家・ 社 会 の要 請 に もとづ き、後 期 中等 教 育 の普及 率 は

90%を

突破 し、 高等 教 育 も

30%を

越 え る ことが予想 され る。」 と した進 学 率 は、高等教 育 は

2年

後 、後 期 中等 教 育 は

3年

後 に突 破 して しま う。 「量 的な拡 張 に伴 う 教 育 の質 的な変化 に適 切 に対 処す る とと もに、家庭・学校・社 会 を通 ず る教 育体 系 の整備 」 のた めの提案 がな され る。具体 的 には、幼 児教育 と小学校低学 年 の接続 、小学校 と中学校・ 中学 校 と高等 学校 の くぎ り方 の見 直 し、 高等学校 教育 の多 様化 、進 級 の例外 措 置 な どと と もに、高等教育 の改 革 につ いて も詳細 な提 言がな され て いる。

40年

も前 の もの とは思 えな い く らい に現在 の改 革 に通 じる内容 で あ り、以後 の改 革 の もととな って いる。

(2)臨

時教 育審議会答 申

1984(昭

59)年

設 置 、

1985(昭

60)∼

87(62)年 :第

1次

∼第

4次

答 申 「

46答

申」 を受 けて、 文部 省 で はな く当時 の 中 曽根 内 閣総 理大 臣の諮 問 を受 けた行 政 機 関 と して発足 。(1)個性重視 の原則 、(2)生涯 学 習体 系へ の移 行 、(3)国際化 、情報化 な ど 変 化 へ の対応 といった提言 が な され る 中で 、具体 的 には、 六年 制 中等学校 、単位 制 高等 学 校 、初任 者研 修 制度 の創設 、現 職研 修 の体 系化 、適格 性 を欠 く教 師 の排 除や 教 育 の規 制緩

(21)

和 な どが示 され る。平 成 の時代 にな って か らの さま ざ まな教 育 改 革 の方 向性 は 、 この段 階 で ほ とん ど示 され て い る。

(3)「

新 しい時代 に対 応 す る教 育 の諸 制度 の改 革 につ いて」

1991(平

3)年

4月 お もに「これ まで どち らか と言 えば画 一 的・硬 直 的 な傾 向が強 か った 高校 教 育 につ いて」 議論 され 、併 せ て 大学や 生涯 教 育 に も及 んで い るが 、そ の 中心 は高等 学校 で あ る。 進学 率 が

95%を

超 えた状 況 で、誰 もが平等 に高等 学 校 に進 学す るが ゆ え に起 きて い る格差 を どう す べ きか とい う点 か ら、(1)量的拡 大 か ら質 的充実 へ 、(2)形式 的平 等 か ら実 質 的平等 へ 、(3) 偏 差 値 偏 重 か ら個 性 尊 重 。人 間性 重視 へ と言 った提 言 が な され る。 具体 的 には 、職 業学科 の再評価 や総 合学科 の設置 な ど学科 制度 の再編成、選択科 目の多様化 による画 一 的な教育 の打破 、特色 のある学校 づ く り、いわ ゆ る飛び級等 の教 育上 の例外 措置等 が 上が って いる。 同 じ尺度 で測 る とそ こには序列 が 出来 上 が る ので あ って、 これ を解 消す るた め には さまざ まな 尺度 を用意す べ きだ と して 、教育 の多様化 に向 けた、 これ まで にな く思 い切 った提言 がな され て い る。

1989(平

成元

)年

に告示 され 、小学校 で は

1992(平

4)年

に実施 さ れ た学習指導 要領 で は 「新 しい学 力」観 が取 り上 げ られて いる。

(4)「

21世

紀 を展望 した我が国の教育の在 り方 について」

1996(平

8)年

7月 「変化の激 しい社会に的確かつ迅速 に対応す る教育が必要」 として、 「自分で課題を見 つけ、 自ら学び、 自ら考 え、主体 的に判断 し、行動 し、よ りよ く問題 を解決す る能 力」 を 育成す ることを目標 とした。 「生きる力」 0「ゆと り」 という言葉が初 めて登場 した答 申 である。具体策 としては、 「総合的な学習の時間」 の開設、学習内容 を基礎基本 に厳選、 授業時数 を縮減 して完全学校週5日制の実施な どが挙 げ られ るとともに、家庭教育や地域 教育 にまで踏み込 んだ提案がな された。 「ゆ とり」 の中で 「生きる力」 の育成 を 目標 とし た点 には、 「新 しい学力観」の反映が見 られ るが、 これ については後述す る。 また、翌

1997(平

9)年

6月 の

2次

答 申では、「一人ひ とりの能 力・ 適性 に応 じた教 育」、 「大学・ 高等学校 の入学者選抜 の改善」、 「学 (校

)歴

偏重社会 の問題」、 「中高 一貫教育」、 「教育上の例外措置」が続 く課題 として取 り上げ られた。 ただ、後 に詳 しく述べ るが、相前後 して起 こって きたいわゆる 「学力低下論争」や 「

P

ISAシ

ョック」 によって、す ぐに見直 しが行われ る ことになる。 (5〉 「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校 の学習指導要領等の改善に ついて」

2008(平

20)年

1月 現行 の学習指導要領の基準 になった もの。 「言語活動の充実」、 「理数教育 の充実」、 「伝統や文化 に関す る教育の充実」、 「道徳教育の充実」、 「体験活動の充実」、 「小学

参照

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