向性と階層性―論評と表彰の役割―
著者
竹野谷 みゆき
著者別名
Miyuki Takenoya
雑誌名
dialogos
号
13
ページ
17-37
発行年
2013-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005044/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja市民によるスピーチクラブの例会構造にみる
双方向性と階層性
一 論 評 と 表 彰 の 役 割 一
竹 野 谷 み ゆ き Abstract ThepresentstudyinvestigatedthespeechactivitiesofTbastmastersClubsand examinedtheinteractiveandhierarchicalnatureoftheirclubactivities.Italso analyzedhowtheyviewedpublicspeakingintheirprogram.Thestudyclaimed thatasignificantinteractivenesswasobservedintheirdialogicalrelationships between(1)speakersandspeechevaluators;(2)speakersandevaluationteam memberssuchasTimer,Grammarian,andAh-Counter;and(3)speakersand clubmemberswhowerevotingonthebestspeakersinthethreecommunication areasofTableTbpicspeeches,Preparedspeeches,andEvaluationspeeches. Thestudyalsopointedoutthattherecognitionofgoodperfbrmanceattheclub meetingsplayedveryimportantrolesinmakingtheeffbrtsofmembersvisible andinprovidingthepositivereinfbrcementsintheirlearningenvironment. Keywords:publicspeaking,speech,mteraction,evaluation 1.0はじめに パブリックスピーキングというコミュニケーション活動が注目を集めて いる。米国大統領のバラク・オバマのスピーチは日本でのスピーチ人気の 火付け役となった。英語スピーチの訳本やⅣDの販売は高い売り上げを 記録し、注目を集めた。オバマ政権が二期目を迎えるなか、日本ではスピー チへの注目はさらに広がりを見せている。NHKではスーパープレゼンテーションという番組の中で、TEDというスピーチ活動の様子を解説付きで放
映し始めた。TEDは、technology(技術)、entertainment(エンターテイメント)、
design(デザイン)の頭文字であり、業種を超えたスピーチの一大イベン
トとなっている。カリフォルニア州で始まったこのスピーチのイベントは6ideasworthspreading'をモットーに掲げ、年に一度のスピーチ大会で多く
の注目をあつめる有名人や「広げるに値する考え」を持った一般市民もス ピーチの機会を得るイベントとなっている。昨年には、日本でのオーディ ションも始まったようだ。 これまで英語のコミュニケーション活動と言えば、英会話力の向上が関 心事の中心であったが、公共の場でスピーチをすることに英語を使うこと の意義を感じる学習者も増え、英語でのスピーチが日本でも注目を集める ようになった。このような社会の英語活動への注目の変化の中で、英語を 母語とするアメリカの中でスピーチがどのようなものとしてとらえられ、 アメリカ市民がどのような活動を通してスピーチと関わっているのであろ うか。本稿ではその様子をとらえたい。 アメリカで最も成功しているスピーチグループはトーストマスターズク ラブ(TbastmastersClub,以下TMC)であろう。TMCは1905年にYMCAの 職員によって始められた市民のためのスピーチ練習クラブであり、現在で は115以上の国々に広がり、27万人の会員を持つに至っている。本研究では、 このアメリカ発の歴史の長いスピーチクラブの活動の中で、スピーチとい うものがどのようなものとして捉えられているのかをクラブのマニュアル やその他の資料の分析をとおして明らかにする。 2.0市民のスピーチクラブであるトーストマスターズクラブ 本研究の対象となるトーストマスターズクラブ(TbastmastersClub,以下 TMC)は、1905年に創始者のRalphSmedleyによって始められた。イリノ イ州の大学を卒業したSmedleyは、その頃YMCAに就職し、自分のまわりの青少年がスピーチをしたり、会議を運営したりする技術を身につけさせ る必要があると感じていた。実際に、自分のまわりにそのような青少年が いたので、ニーズがあることは実感していたようであるが、その活動をど のような名前で読んだら魅力的になるかには心を配ったようだ。名前のつ け方に配慮した様子が次のように書かれている。 Itwouldnotdotoofferapublicspeakingclassnoradebatingsociety5 norevena(literarysocietyj'sincesuchanamewouldnotbeattractiveto theyoungmen.(Smedleyl993,p.8) パブリックスピーキング教室やディベート協会をやってもうまく いかなかったでしょう。ましてや、「文芸協会」をするつもりも ありませんでした。というのも、このような名前は若い男子たち には魅力的なものではなかったからです。(和訳、著者) Smedleyは教室や文芸クラブなどという男子に人気のなさそうな名前をつ けなくなかったようである。しばらく周囲の人々と意見交換しているうち に、自分がやろうとしていることが、短いスピーチやディベートと会議の 議事進行について練習をすることに決まり、ほどなくしてトーストマス ターズクラブがよいという意見がまとまったという。というのもこの名前 であれば、楽しそうで、社交的な響きがあり、今まで学校で勉強したのと は全く違うものを連想させたからだという。Tbastmasterというのは日常語 では、パーティーなどで乾杯の音頭をとる(totoast)人のことを意味する ので、社交的な響きがあり、楽しそうなイメージを作り出したのだと思わ れる。ただ、日本などではトーストマスターという語の響きはトーストを 焼く人なのかと勘違いする人もいるようである。 最初の例会は(英語ではミーティング、meetingと呼ばれている)1905 年3月24日に開催されたという。この時には、夕方に集まる例会にし、ま
ずは夕食を提供し、その後にミーティングをしていたようだ。夕飯を出し たのは、なによりも学校の教室とは違う社交的な雰囲気を出したかったた めで、教室で学ぶ堅苦しさでなく楽しい雰囲気を出すことができたようだ。 最初の例会はYMCAで開催された夕食会という形を取っていたが、次第 にその例会は大人の男性を対象とした例会として発展するようになる。そ
れは、創始者のSmedleyがイリノイ州のフリーポートのYMCAに異動して
からのことであるが、そこでは少年のためではなく大人の男性のための例 会が始まった。参加したのは弁護士、医者、セールスマン、工業主、商人 たちであり、町の有力者たちであった。最初の例会は農協の晩餐会の折に 行われた。そのときに行われたスピーチのタイトルは、「農業における新 旧の手法」、「とうもろこしは王様」、「もく愈ら、その生態と存在意義」、「わ が国のよい道」、「めんどりと卵」、「農家を組織化する」といったもので、 その地域の産業やビジネスに直結した内容であったことがわかる。 最初はYMCAに集まる青少年を対象としており、その後、成人男性を中 心に活動が発展したTMCもその発展の過程で女性会員も受け入れるよう になり、現在では会員資格を次のように定めている。 Allindividualmembersofthisclubshallbeatleastl8yearsofage.No personshallbeexcluded廿omindividualmembershipin,orfromany programoractivityofthisclubbecauseofage(exceptthosepersons underl8yearsofage),race,color,creed,gender,nationalorethnic origin,sexualorientation,orphysicalormentaldisability>solongas theindividual,throughhisorherownefMHort,isabletoparticipateinthe program.(Tbastmasterslnternational2011fp.4) このクラブのすべての個人会員は少なくとも18歳でなくてはなら ない。何人たるともその個人の努力によってプログラムに参加で きる限り、年齢(18歳未満の者を除いて)、人種、肌の色、性別、国籍、民族、性的指向性、あるいは肉体的および精神的ハンディ キャップを理由としてクラブやプログラム、活動から個人会員と して除外されることがない。(和訳、著者) この中で興味深いのは会員資格を18歳以上の成人に限っていることであ る。高校生や大学生の一部は年齢においてメンバーになることができず、 社会人に向けた教育クラブであることがわかる。社会人の教育活動をめざ すTMCであるが、活動の中心となるのは定期的に開催されるクラブ例会 である。また、その活動は、例会を中心とした定期的な会員参加型の活動 であり、その活動目的を次のように定めている。 ThemissionofaTbastmastersclubistoprovideamumallysupportive andpositivelearningenvironmentinwhicheveryindividualmember hastheopportunitytodeveloporalconnnunicationandleadershipskills, whichinmrnfbsterselfconfidenceandpersonalgrowth.(MasterYbur Meetings,Tbasmasterslnternational2011f;p.4) トーストマスターズクラブの使命は互いに援助的で肯定的な学習 環境を提供することであり、その中で個人のクラブ会員がオーラ ルコミュニケーションとリーダーシップのスキルを上達させる機 会を得られるようになることであり、その過程で自分に対する自 信と人間としての成長を育むことである。(和訳、著者) TMCは設立当初より、人前で話すための短いスピーチの練習を中心とす るコミュニケーションの訓練と会議の運営や議事進行を中心とするリー ダーシップの技術を向上させることを目的とする相互学習と教育を目的と していることがわかる。指導者というものは存在せず、メンバーがそれぞ れの学習目標に向かいながら活動する中でお互いを評価しあい、成長を認
知し、表彰しながら進む活動形態をとっている。それでは、次にクラブ運 営の中心となる例会の構成を見ていこう。 3.0クラブ例会の構成 アメリカのTMCの活動は毎週1回、1時間から2時間程度の例会の活
動を基盤としている。日本の首都圏では二週間に一度、一回2時間程度が
一般的なようだ。例会の形式は決まっており、次のような進行形態をとる。ここではMasterYburMeetings:AGuidetoQualityintheClubというマニュア
ルで提供されている(pp.8-9)、90分の例会を想定して書かれているサンプ
ルアジェンダをもとに、活動の典型的な流れを紹介する。例会はまず、下記のとおりpresident(クラブ会長)によって開会が宣言
される。開会宣言後の5分間の流れを上記のマニュアルでは次のように書 いている。 T I M E A C T I V I T Y 00:00 PRESIDENT Callsmeetingtoorder Introducesmembergivinginvocationor thoughtfbrtheday(optional) M E M R E R Givesinvocationorthoughtfbrtheday(optional) PRESIDENT Introducesmemberleadingpledgetonag(optional) M E M B E R Leadspledgetoflag PRESIDENT Introducesguests開会後は、@Thoughtfbrtheday'(今日考えたこと)について一人の会員よ り2∼3分のスピーチが発表される。活動歴の長いクラブではアメリカ合
衆国の国旗に向かい起立してPledge(誓いのことば)を述べることもある。
その後、クラブを見学に来たゲストの自己紹介をしてもらう。ゲストは今 後入会するかもしれない会員予備軍として大事な存在である。 その後、次の10分間(開始後5分目から15分目まで)は次のような流れ となる。 T I M E A C T I V I T Y 00:05 Conductsbusinessmeetmg Callsfbrreports Secretary'sreport Tifeasurer'sreport Treasurersreport Officers'reports O髄cersreports Unfinishedbusiness Newbusiness IntroducesTbastmaster クラブ会長は10分ほどでビジネスセッションと呼ばれる打ち合わせ会を 行う。その中では、クラブの役員に必要な連絡事項を報告するように求 め、発言の必要のある役員が発言する。ここでは、secretary(書記)と treasurer(会計)の報告を想定しているようである。連絡事項の発表が終 わると、presidentは今日の例会を担当するTbastmaster(トーストマスター、 司会進行役)を紹介する。 Tbastmasterがpresidentに紹介されて演台に立つと、まず初めに手短かに 関連する話をすることが期待されている。次に、スピーチの質をチェック する評価チームのリーダーであるGeneralEvaluator(総合論評者)を紹介し、演台に導く。GeneralEvaluatorがTbastmasterに代わって演台に立つと、 スピーチの質をチェックするいくつかの担当者が紹介される。ここで挙げ られているのはEvaluator(論評係)、Timer(計時係)、Grammarian(文法係)、 Ah-Counter(言いよどみ係)という担当者たちである。Evaluatorは準備ス ピーチの構成や内容を評価してコメントする係、Timerは決められたスピー チ時間を守るよう経過時間を知らせたり、最終的なスピーチ時間を記録す る係、Grammarianはスピーチの中で用いられる文法的間違いを書きとめ、 直す係、Ah-Counterはスピーチの中で用いられる不適切な言いよどみや不 必要な音を記録し、知らせる係である。「ああ」や「えっと」などがその 対象となる。 T I M E A C T I V I T Y 00:15 TOASTMASTER Makesopenmgremarks Introducesthegeneralevaluator GENERALE,侭LIJATOR Introducesevaluators,timerjgrannnadan,Ah-Counter IntroducesTbpicsmaster これらのそれぞれの係の役割は上記のサンプルアジェンダではGeneral Evaluatorが紹介するように書かれているが、実際の例会ではTbastmaster の進行のまま、それぞれの係が起立して発言することが多いようである。 TMCでは人前で話す機会を作る事を重要視しており、係が例会で自ら 発言することを促進している。評価チームの役割紹介が終わると、次に Tbpicsmasterが紹介され、演台に招かれる。
T I M E A C T I V I T Y 00:20 00:40 TOPICSMASTER
E
X
p
l
a
i
n
s
T
a
b
l
e
T
b
p
i
c
s
T
M
ConductsTableTbpicsTMsession Callsfbrtimer'sreportC
a
l
l
s
f
b
r
v
o
t
e
f
b
r
B
e
s
t
T
a
b
l
e
T
b
p
i
c
s
T
M
S
p
e
a
k
e
r
(
O
p
t
i
o
n
a
l
)
Remrnscontroltopresident Intennission Tbpicsmasterは多くの例会ではTableTbpicsMasterと呼ばれ、食事をしなが ら気軽に話をする場面を想定した短い即興スピーチの練習を進行する人 のことである。Tbpicsmasterは、話を展開しやすそうな質問をいくつか用 意し、例会参加者に投げかける。上記のサンプルアジェンダによれば、 TbpicsmasterはまずTableTbpicsがどのようなもので、どのように進めるか を説明する。次に、あらかじめ用意してきた4∼5つの別々の質問を発表 し、それぞれを別々の会員に指名し、手短なスピーチをするよう依頼する のである。指名された会員は起立してトピックにあうスピーチを即興で作 り上げる。その時間はTimerによって計測され、記録される。また、Table Tbpicsで指名されたスピーカー達はその出来映えが投票の対象となる。最 後の即興スピーチが終わると、Tbpicsmasterは、クラブ会長であるpresident に進行を戻し、presidentは休憩を入れるよう宣言すると前述のサンプルアジェンダには書かれている。実際の例会では、Tbpicsmasterは司会進行役
のTbastmasterに進行担当を戻し、Tbastmasterが休憩の宣言をすることが多 いようである。T I M E A C T I V I T Y 00:45 TOASTMASTER Introducesspeaker#1(Speakergivespresentation) Instructsmemberstogivewdttenfeedbacktospeaker Introducesspeaker#2(Speakergivespresentation) Instructsmemberstogivewrittenfeedbacktospeaker Introducesspeaker#3(Speakergivespresentation) Instructsmemberstogivewrittenfeedbacktospeaker Callsfbrtimer'sreport Callsfbrtimersreport CallsfbrvotefbrBestSpeaker(optional) 休憩のあと、司会進行役のTbastmasterが演台に立ち、準備スピーチ部門が 始まる。Tbastmasterは第一番目のスピーカーを紹介し、スピーカーを演台 に招く。スピーカーは演台に立ち、スピーチを始める。スピーチを聴いた あと、聴衆はあらかじめ配られたコメントシートに短いコメントを書くよ うに依頼される。一人目のスピーカーが終わるとTbastmasterが代わって演 台に立ち、スピーカーを座席に送り出す。そして、2番目のスピーカーを 紹介し始める。こうして、最後のスピーカーが話し終わり、Tbastmasterが 再度演台に現れる。Tbastmasterは、Timerに全部のスピーチの計測時間を 報告するように依頼し、決められたスピーチ時間に該当しているかどうか を確認する。該当しているスピーチは、投票の対象になる。一番よかった スピーチに対して、参加者全員が投票する。上記のサンプルアジェンダに は書かれていないが、投票の紙を集計する係がいる例会もあり、その場合 Vote-counter(集計係)と呼ばれる。 最後の準備スピーチが終わると、司会進行役のTbastmaseterは評価チー ムのリーダーであるGeneralEvaluatorを演台に招き、スピーチの論評部門 が始まる。論評部門では一つの準備スピーチに対して一人のEvaluator(論
評者)が用意されている。Evaluatorはその日のスピーチを聴いたあと、即 興で論評スピーチを準備する。GeneralEvaluatorはまず一人目のEvaluator を紹介し、演台に招じ入れる。招かれたEvaluatorは、演台において2∼3 分の論評スピーチをする。論評スピーチはTimerによって計測され、時間 内にスピーチが終わるよう確認される。 T I M E A C T I V I T Y l:08 G E N E R A L E M L U A T O R Callsfbr: Speechevaluators'reports VotefbrBestEvaluator(optional) Grannnarian'sreport GranⅢnanansreport Ah-Counter'sreport Makesgeneralcommentsonmeeting RemrnscontroltoTbastmaster そのように最後のEvaluatorが論評スピーチを終えると、GeneralEvaluator が演台に立ち、一番よかった論評スピーチに投票するよう例会参加者全 員に依頼する。Vote-Counterが票を集計している間に、GeneralEvaluator はGrammarianにすべてのスピーチについての文法的事項についてのコメ ントと報告を依頼する。続いて、Ah-Counterに言いよどみや不必要な音 の使用についてコメントと報告を依頼する。評価部門の最後にGeneral Evaluatorは例会の運営を論評する。時間配分はどうだったか、即興スピー チの質問は適切だったか、準備スピーチはよく準備されていたか、スピー チの達成目標にあっていたか、論評スピーチは建設的だったか、学びを 育む環境や雰囲気が例会で提供できたか、などについて評価や改善点を 1 分 か ら 2 分 で 指 摘 す る 。 こ れ も 即 興 の ス ピ ー チ の 一 つ と 考 え ら れ る 。
GeneralEvaluatorは自分の仕事が終わると司会進行係のTbastmasterを演台 に招き、司会役を渡す。 T I M E A C T I V I T Y l:20 1:25 1:30 TOASTMASTER Presentsawards Retumscontroltopresident PRFSIDENT Thanksguestsfbrattending Makesclosingcomments/announcements ADJOURN そこからはTbastmasterが司会を始め、Wte-Counterに集計した投票の結果 の発表を依頼する。即興スピーチ、準備スピーチ、論評スピーチという3
部門でのBestSpeaker(一番よかったスピーカー)が発表される。3部門
で選ばれたスピーカー達は、それぞれの名前が呼ばれ、演台に再度出るよ うに依頼される。司会進行役のTbastmasterより表彰のリボンや表彰カード の授与を受ける。会員たちは受賞者を拍手で迎え、記念の写真を撮ったり して、例会は晴れがましい雰囲気につつまれる。 賞の授与の仕事が終わると、司会進行役のToastmasterの仕事は終わり、 司会役がクラブ会長であるPresidentに渡される。Presidentは最後に、参加 ゲストにコメントを求める。それは参加ゲストに短いスピーチをする機会 が与えられることを意味する。上記のサンプルアジェンダには書かれてい ないが、BusinessSessionとよばれる打ち合わせ会を再度する例会もある。 BusinessSessionでは、クラブ運営の報告事項や審議事項が紹介され、意見 交換をしたり、決議をしたりする時間となる。Announcements(お知らせ) 事項が終わると例会全体の終了となり、Presidentは閉会を宣言する。4.0クラブ例会の双方向性と階層性 TMC例会の構成で特徴的なのは、司会進行役の構成が階層的になって いるという点である。開会と閉会の宣言はクラブ会長であるPresidentが行 う([1])。例会の実質的な進行は、Tbashnasterによって行なわれる([2])。 各部門内の進行はそれぞれの担当者によって行なわれる。即興スピー チ部門はTbpicsmasterによって([3])、準備スピーチ部門はTbastmaster によって([3])、評価部門はGeneralEvaluatorによって([3])、表彰部 門はTbastmasterによって([3])進められる。このように、President、 Tbastmaster、と各部門担当者の3層によって進行が運営されているのであ る。 Tablel:例会構成の階層性 開会President……・………・……… 部門紹介Tbastmaster・……… 即興スピーチ部門Tbpicsmaster………… 部門紹介Tbastmaster・……… 準備スピーチ部門Tbastmaster………・… 部門紹介Tbastmaster…・……… 評価部門GeneralEvaluator………・ 部門紹介Tbastmaster…………・………… 表彰部門Tbastmaster・・………・ 閉会President…・………・……… [1] [2] [3] [2] [3] [2] [3] [2] [3] [1] また、TMC例会のスピーチは評価と表彰という行為において、3つの 別々の役割グループと双方向性を構築している。例えば、準備スピーチは 論評スピーチと1対1の相互行為性をなしているので、論評者という役割 とスピーカーという役割は双方向性を構築している。と同時に、評価チー
ムのTimer、Grammarian、Ah-Counterという担当者によってその質がチェッ クされ、確認される仕組みになっているので、スピーカーとそれぞれの担 当者は双方向的な関係を構築している。また、3つ目の役割グループは例 会参加者全体であるが、投票という形でスピーチの質の評価に関わってい るので、スピーカーと双方向性を構築している。即興スピーチにおいては、 スピーカーは評価チーム(Timer、Grammarian、Ah-Counter)と相互行為 性をなしており、ベストスピーカーを選ぶ例会参加者全員とも別の双方向 性が構築されている。論評スピーチにおいても同様で、論評者は総合論 評者(GeneralEvaluator)や評価チームのメンバー(Timer、Grammarian、 Ah-Counter)によって評価され、また同時に、聴衆によって投票されるので、 論評者と総合論評者、論評者と評価チーム、論評者と聴衆という関係にお いて、それぞれ双方向性を構築している。 その日の例会の質は評価チームのリーダーであるGeneralEvaluatorに よって評価される。時間運営はどうだったか、即興スピーチの質問は手短 かで適切な内容だったか。準備スピーチはよく計画され、練習され、学習 目標が達成されていたか。論評スピーチは、建設的なものだったか。多く を学ぶよい例会だったか。等々、例会全体が評価の対象になるのである。 このように例会構成はクラブ会員のすべてが何らかの役割を演じ、それを 全うするところにあり、お互いがお互いを評価し、認識し、表彰し、可視 化するという特徴を持っているのである。また、それは二者が双方向的で
あるだけでなく(例えば、Speakerと聴衆、あるいはSpeakerとEvaluator)、
多層的である(SpeakerとEvaluatorをGeneralEvaluatorが論評する、あるいは、 準備スピーチを論評する論評スピーチがクラブ会員によって投票されるな ど)。この双方向性と多層性というのがTMC例会の構成の特徴と言えるで あろう。論評チームのリーダーであるGeneralEvaluatorは、例会のすべて を評価することになっており、全員と双方向性を構築している。スピーカー を論評するEvaluatorはGeneralEvaluatorによって評価される仕組みになっており、双方向性は階層的になっている様子がわかる。 評価の階層性に加え、表彰もTMCの特徴と考えられる。例会に参加す るすべてのクラブ会員はSpeakerやEvaluatorをはじめ、なんらかの役割を 担うようになっている。それは、Timerであったり、Grammananであった りするわけであるが、それと同時に「投票者」という役割を同時に担うこ とになる。投票は3部門によって行われる。 即興スピーチ部門で一番よいスピーカー 準備スピーチ部門で一番よいスピーカー 論評スピーチ部門で一番よいスピーカー BestTableTbpicsSpeaker BestSpeaker BestEvaluator 表彰部門において、投票結果は大々的に発表され、受賞者はその努力が認 知され、表彰される仕組みになっている。投票結果の発表も儀式として 例会では定着している。ベストスピーカーとして選ばれた3部門のスピー カーたちは名前が呼ばれると演台に立つように求められ、リボンや証明書 が手渡される。司会者と3名のベストスピーカーたちは写真におさめられ、 クラブのホームページに載せられることもある。努力や成果を見える形に する、というのがTMCの特徴であろう。それはリボンであれ、紙であれ、 形として可視化されるのである。 TMCにおいてスピーチは双方向的な関係性のなかで行われるものとし て位置づけられている。例会においてはすべてのクラブ会員は出席者で あり聴衆であり、また同時に例会の運営メンバーであり、評価者であり、 投票者である。また、スピーチはそれぞれのメンバーが順番で担当して いくものであり、一部の会員に固定されるものではない。よって、今回 Evaluatorの者も次回には論評される側になる可能性がある。役割を順番で まわしていく環境の中で、自分が評価したり評価されたりする双方向性の 中でスピーチが成り立っている様子がわかる。市民にとってスピーチは聴
くものだけでなく、論評の対象とするものであり、評価の対象となるもの である。同時に、論評スピーチもまた論評の対象となるものであり、総合 的な意見交換のスタート地点となるものとしてとらえられていると言えよ う。そのようなスピーチ環境をTMCは提供しているように見える。 5.0おわりに 本研究はTMCのスピーチ活動において、スピーチがどのようにとらえ られているかを明らかにすることを目的とした。分析の結果、TMCの活 動の中でスピーチが相互行為的なものであるととらえられている様子を明 らかにした。準備されたスピーチはあらかじめ決められた論評者によって 論評スピーチの形でリスポンスをもらう。論評者のスピーチは総合論評者 によって評価され、その質が評価される。準備スピーチは聴衆であるクラ ブ会員によって投票され、その質が評価され、表彰という形で可視化され る。このように、TMCのスピーチ活動に見られる相互行為性は同時に階 層的特徴を持っていることを明らかにした。 一見すると、スピーカーと聴衆という一対の対称性をなしているかのよ うなスピーチであるが、実はその前提にはスピーチを「評価する」とい う視点がある。TMCのスピーチのとらえ方は、アメリカ社会の中でのパ ブリックスピーチのとらえ方の一つのあり方と言えるであろう。本研究 はTMCのスピーチ活動の例会構成の分析に焦点を当てた。TMCの学習プ ログラムはスピーチ活動によるコミュニケーション分野と役員活動を中 心 と し た リ ー ダ ー シ ッ プ 分 野 の 両 分 野 を 用 意 し て い る 。 今 回 の 分 析 は 主 に、スピーチ活動のコミュニケーション分野を中心として分析しているが、 TMCのプログラムが2つの分野を用意しているので、今後の分析におい てはコミュニケーション分野のみならず、リーダーシップ分野においての スピーチ活動の位置づけを考察する必要があるだろう。 また、本研究はTMCの出版する資料をもとにスピーチ活動の分析をし
ているが、実証データによるコミュケーションの分析が必要であろう。 TMCの国際本部によって提唱されているスピーチ活動がそのとおりに運 営されているのか、またその運営の中でスピーチはどのように実践されて いるのかの分析が次の段階として必要であろう。その分析は、スピーチと コミュニティの研究に重要な資料を与えてくれるものと期待できるが、そ のモデルをどのようにとらえることができるであろうか。本研究では、コ ミュニティとしてのTMCにあまり触れていないが、スピーチをコミュニ ティ実践ととらえると、スピーチ、文化、コミュニティを結ぶモデルを構 築することができるであろう。その基盤となる理論的枠組みを模索する必 要があろう。スピーチ実践を続けているTMCは、言語実践、文化、コミュ ニティをつなぐ舗重要なデータを提供してくれる貴重なスピーチ実践コミュ ニティである。様々な視点からの分析を試み、その奥深い実践を明らかに する必要があろう。
文献リスト Blanchard,H.2008.B花a""gihe/te:7WeSioryq"fセノe"Bノα"cルα城DTMICalifbmia: HBlanchardEnterprises. SmedleyjR.1966.凡耐o"αノか助eα""g.SantaAna,Tbastmasterslntemational. SmedleyjR.1993a・剛eSio"qf乃as""αsteKs.RanchoSantaMalgarita,CA:Tbastmasters International. Smedley)R.1993b.7WeGre"此ace"α此er.RanchoSantaMargarita,CA:Tbastmasters Intemational. Thompson,WD.1998a.aleα""g/brPm/〃α"dP/e"z"E:Mz""grルeP/α施γ加恥戒 んr】b".Nee曲amHeights,MA:AllynandBacon. Tbastmasterslnternational.1998.TWeSro"qf乃as”αsre応:ノ96LI998.肋ノ."Rancho SantaMargarita:Tbastmasterslnternational. Tbastmasterslnternational.2011a.4Zb""""rer晩α応M""yHQ":meRoノesqfq Me"16er.MissionViCjo,CA:Tbastmasterslnternational. Tbastmasterslnternational.2011b.C〃α〃"α":肋"rG"deroLeqr"加gqMee〃"9. MissionViejo,CA:Tbastmasterslnternational. Tbastmasterslnternational.2011c.Higルルノプbr"α"ceLedde芯h躯乱乃asrmasre応 加er"α伽"α/Lea咋芯〃わDeveノ。p腕e"rPPngm"2.MissionViejo,CA:Tbastmasters International. Tbastmasterslnternational.2011d.Higルル碗r"zα"ceLea娩恋伽:G"j血"ceCo加加j"ee 助成加ok.MissionVido,CA:Tbastmasterslnternational. Tbastmasterslntemational.2011e.HowIoB"〃α乃as""asrerbα"6.MissionViejo, CA:Tbastmasterslnternational. Tbastmasterslnternational.2011fM"reノMフ"rMee""邸:」4G"jderog"α"〃j〃rhe α"6.MissionVido,CA:Tbastmasterslnternational. Tbastmasterslnternational.2011g.Pz"o〃αGoodShow:Mee""gPノα""erH上z"肋COル. MissionViejo,CA:Tbastmasterslnternational. Tbastmasterslnternational.2012.HowroB"〃4乃as""qsrersCノ"6:/4Step-hy-Srep G"jde.MissionViejo,CA:Tbastmasterslnternational.
附 録 90分例会のサンプルアジエンダ(Tbastmasterslnternationa,2011f;pp.8-9) T I M E OO:00 00:05 00:15 ACTIVITY PRFSUDENT Callsmeetingtoorder Introducesmembergivinginvocationorthoughtfbrtheday(optional) M E M B E R Givesinvocationorthoughtfbrtheday(optional) PRFSIDENT Introducesmemberleadingpledgetonag(optional) M E M B E R Leadspledgetoflag PRFSIDENT Introducesguests Conductsbusinessmeeting Callsfbrreports Secretary'sreport Treasurer'sreport Treasurersreport Officers'reports Unfinishedbusiness Newbusiness IntroducesTbastmaster TOASTMASTER Makesopeningremarks Introducesthegeneralevaluator GENERALE,公LUATOR Introducesevaluators,time,grammarian,Ah-Couter
00:20 00:40 00:45 l:08 1:20 l:25 IntroducesTbpicsmaster TOPICSMASTER ExplainsTableTbpicsTM ConductsTableTbpicsTMsession Callsfbrtimer'sreport CallsfbrvotefbrBestTableTbpicsTMSpeaker(Optional) Remmscontroltopresident Intermission TOASTMASTER Introducesspeaker#l(Speakergivespresentation) Instructsmemberstogivewrittenfeedbacktospeaker Introducesspeaker#2(Speakergivespresentation) Instructsmemberstogivewrittenfeedbacktospeaker Introducesspeaker#3(Speakergivespresentation) Instructsmemberstogivewrittenfeedbacktospeaker Callsfbrtimer'sreport Callsfbrtimersreport CallsfbrvotefbrBestSpeaker(optional) GENERALE,偽LIKTOR Callsfbr: Speechevaluators'reports WtefbrBestEvaluator(optional) Grammarian'sreport Ah-Counter'sreport Makesgeneralcommentsonmeeting ReturnscontroltoTbastmaster TOASTMASTER Presentsawards Retumscontroltopresident PRESIDENT Thanksguestsfbrattending
1:30
’
Makesclosingconnnents/announcements