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「陸上運動・陸上競技」領域の存在意義に関する基礎的研究 : 学習指導要領の史的分析を中心として

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Academic year: 2021

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(1)Title. 「陸上運動・陸上競技」領域の存在意義に関する基礎的研究 : 学習指導 要領の史的分析を中心として. Author(s). 小野, 真澄; 城後, 豊. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 52(2): 139-154. Issue Date. 2002-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/257. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 2巻 第2号 北海道教育大学紀要 (教育科学編) 第5. 平 成1 4年 2 月. l 52 i i i Journa l of Hokkaido Uni ty ofEducat on) Vo on (奪du嫌t vers .2 . , No. FebmaIγ,. 2002. 「陸上運動・陸上競技」 領域の存在意義に関する基礎的研究 -学習指導要領の史的分析を中心として-. ・野. 真澄・城後. 豊. 北海道教育大学札幌校保健体育科研究室. A. Basic Study of Signi行cance 食 ) r Being of. “A hl i A i ies Track and Field” Z i t t etc ct- , -A HistoricaI Aぬa.ysis of co皿rse of study-. ONO M[asumi・JOGO Yutaka i i Depa嘘mentof Heal th al caI Educat l ld Phys on l s , Sapporo Camp , Ho ー直aido Uni i i ty of Edu錠t o2 8502 vers onm, sapporo o ‐. 1. 研究の目的 学校体育での運動・スポーツは” , 教師と児童・生徒の媒介をなす教材であり, 体育の目標を達成するた. ) 文化 財と して の一 定の 形 式 をと っ て おり さま ざま な 発生的 め に位 置 づ け られて いる‐ ス ポー ツ種 目は2 , , , 技術的 構 造, 特性な どの多 様な側 面 をも つ‐ しか し, 教材と し て位置 づ け られて いるス ポ ーツ種目 にお いて,. それらの側面が教育的配慮のもとに学習内容として整理されているのかは疑問である‐ ) 教育内容につ いての研究よりも 教育方法 すなわち指導方法 今日まで, 教育現場や授業研究などは3 , , , の自由を追求する傾向があると言われている‐ 教育内容と教育方法の関係を考えるのならば, この二つを分 けて考えることには問題がある. なぜなら, 教育内容 (教材) が同じでも, 教育方法 (授業) が違っている と, そ の 内容ま で もが違 っ てく る 場 合があ る か らである‐ そ の 原 因 は, 教 師に よ る 教材 解 釈 の違 い であ る.. ) 5 ) すでに文化的価値 教育的価値をもった教材から その意味を読み取り 内容をとらえ 教材解釈とは4 , , , , , 子どもたちに教授すべく価値をつ かむことである. しかし, 教材解釈が違えば, たとえ同じ 「教材」 を取り 上げても, 「学習内容」 は違ってくる. 陸上運動・陸上競技領域 (以下, 陸上領域と記す) においても, 体力的要素の強い運動とのイメー ジから, 単調 な ト レーニ ン グの 繰り 返 しや, 記録を 計測 す る だ けの 授 業 にな っ て しま う こ と があ る‐ これ は, 陸上 領. 域の特性をとらえる視点が違うからである. この問題に関する論議では, 教育内容を踏まえた技能の系統的 発展につ いて実践的な検証が乏しい. また, 新教育課程における授業時間数の削減や, 基礎・基本の定着及 び教育内容の厳選などから, 学習内容を問い直すことが必要である. いわゆる今日的課題として教材の持つ 本質的な意味や価値を見出すためにも, 陸上領域の 「基礎・基本」 を改めて精査することが迫られている. そこで本研究では, 時代背景を検証しながら陸上領域の史実的変化とらえ, 陸上領域の存在意義の内容を 明 らか にす る こ と に した. 139.

(3) . 小野 真澄・城後. 豊. 2 研究の方法 陸上領域の史的分析は, 明治期の改正小学教則以降の学校体育における陸上競技に関する資料, 大正期の 主な教授要目, 昭和・平成の各学校学習指導要領(表1)を対象とした‐ 分析区分は, 明治o大正期, 昭和初 期から終戦まで, 戦後から昭和31年まで, 昭和3 3年以降30年代, 昭和40年代, 昭和50年代, 平成元年, 平成 0年代に8区分し, 比較分析する. 1 表1. 分析資料. 学習指導要領, 教授要目 名. 発. 刊. 年. 1 1 大正2 ( 9 3 ) 年1月2 8日 大正1 5( 1 9 2 6 ) 年5月2 7日 第 2 次 改 正 学 校 体 操 教 授 要 目 昭和1 1( 1 9 3 6 ) 年6月 3日 学 校 体 育 指 導 要 綱 昭和2 2( 1 9 47 ) 年6月2 2日 学習 指 導要 領小 学 校 体 育編 (試案) 昭和2 4( 1 9 4 9 2日 ) 年9月1 中学校・高等学校学習指導要領 1 ) 年7月2 昭和2 6( 9 51 5日 学 改. 校 体 操 正 学 校 体. 教 授 要 操 教 授 要. 保 健 体 育 科 体 育 編 ( 試 案 ). 小学校学習指導要領 体育科編 (試案) 昭和2 1月3 8( 1 9 5 3 ) 年1 0日 1( 0日 1 9 5 6 高等学校学習指導要領 保健体育科編 昭和3 ) 年1月1 小 学 校 学 習 指 導 要 領 昭和3 3( 9 8 0月1日 1 5 ) 年1 中 学 校 学 習 指 導 要 領 昭和3 3( 9 5 8 0月1日 1 ) 年1 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 昭和3 5( 1 9 6 0 ) 年1 0月1 5日 小 学 校 学 習 指 導 要 領 昭和4 1 6 ) 年7月1 1日 3( 9 8 中 学 校 学 習 指 導 要 領 昭和4 9 4( 1 9 6 4日 ) 年4月1 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 昭和4 1 9 7 0 0月1 5( ) 年1 5日 小 学 校 学 習 指 導 要 領 昭和5 2( 9 3日 1 7 7 ) 年7月2 中 学 校 学 習 指 導 要 領 昭和5 2( 1 7 7 ) 年7月2 9 3日 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 昭和5 3( 1 9 7 8 0日 ) 年8月3 小 学 校 学 習 指 導 要 領 平成元 ( 1 9 8 8 ) 年3月1 5日 中 学 校 学 習 指 導 要 領 平成元 ( 1 9 8 8 5日 ) 年3月1 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 平成元 ( 9 8 1 8 ) 年3月1 5日 小 学 校 学 習 指 導 要 領 平成1 0( 1 9 9 9 ) 年1 2月1 4日 中 学 校 学 習 指 導 要 領 平成1 0( 1 9 9 8 ) 年1 2月1 4日 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 平成1 1( 1 9 9 9 ) 年3月3 0日. 3. 出. 版. 社. 文. 部. 省. 文部省訓令第 1号 文部省訓令第 22号 文部省訓令第 18号. 目 目. 東京書籍 大日本図書 大日本雄弁会講談社 明治図書. 教育図書 文部省告示第 8 0号. 文部省告示第 81号 文部省告示第 9 6号 8 6号 文部省告示第2 9 文部省告示第1 9号 文部省告示第2 8 1号 文部省告示第1 5 5号 文部省告示第1 6号 5 文部省告示第1 6 3号 文部省告示第 2 4号 文部省告示第 25号 6号 文部省告示第 2 文部省告示第1 7 5号 文部省告示第17 6号 文部省告示第 58号. 陸上領域の時代区分. ( ) 明治, 大正期 1 ) 秩序運動 徒手o手具体操の他に 走・跳・懸垂等の基 学制から2年後の明治7年の 「体操書」 には6 , , , 礎的な運動, 遊戯(綱引, 早駈, 他)などが含まれている. 日本での近代スポーツは遊戯との関わりが深く, )が国内で 明治期では移入してきたスポーツを遊戯として捉えていた経緯がある. 明治1 8年 「戸外遊戯法」7 )の語が用いられてい 初の遊戯の書であるが, その中では, 陸上競技を表していると思われる 「争強遊戯」8 }に遊戯に関 た. 明治30年代は, 遊戯に関する研究が盛んに行なわれ, 明治38年の体操遊戯調査会の報告書9 す る事 項 があ り, 「学 校 にお い て奨 励 す べき 遊 戯」 の う ち, 教 科 外 に 行う べ き もの と して, ベ ース ボー ル,. ローンテニス, 柔術, 弓術などのスポーツ種目の他にも個人でできる競争遊戯を含み, 徒歩競争, 種投げ, 高飛, 中飛などが含まれた. この分類は, 学校体育における陸上領域の種目の原型だと考えられる. しかし, 大正2( 191 3 )年 「学校体操教授要目」 公布によって, 体操科の領域分類は 「体操, 教練および遊戯」 となり, 体操は下肢, 上肢, 腹, 背, 跳躍など11分類され, さらに1 07の運動に分類され, 跳躍の中に高跳, 幅跳の 運動も含まれていた. 走運動については, 遊戯の 「競争を主とする遊戯」 のなかに鬼遊や徒競走として位置 づ いて い た.. 明治後期では, 競争遊戯としての歩・走o跳o投運動 であったが, 大正の初期は, 遊戯としての走運動以 外は体操として位置づいていた. それは, 走運動に関しては, 遊戯色が強いのに対して, その時代の背景か 0 ) 跳躍運動に関しては 体操 すなわち体力要素を高めるための運動としてしかとらえられていなかっ ら1 , , , 1 4 0.

(4) . . 陸上運動・陸上競技領域-学習指導要領の史的分析-. た. 陸上競技領域として, 独立して現れたのは, 大正15年 「改正学校体操教授要目」(表2)からである. 体 操の領域は, 「体操, 教練, 遊戯及び競技」 となっており, 前要目で 「遊戯」 と称されたものが改正要目で は 「遊 戯 及 び競 技」 と な っ て い る. こ れ は, ス ポ ー ツ 教 材 の導 入 を 示 して いる. そ の 内 容 は, 「走 技, 跳 技. 及投技」 として, 陸上競技種目とボール投げを含む, いわゆる現在の陸上領域に近い形態が出現した. この ) スウェーデン体操の運動配列が原則で内容が構成されているため 正課体育においては体操が中心 1 時代1 , , 的位置を占めていた‐ また, 当時の全体国家主義的傾向にある社会情勢において, 自由主義的で, 超国家主 2 ) 従って 学校体育でのスポーツ教材の発展に 義であるスポーツは体操に比して理論的根拠を欠いていた1 , . は限りがあった. 身体機能的な 「体操」 の中の跳躍運動でも幅跳, 高跳などが含まれており, 遊戯・スポー ツ的要素, 体力的要素の二つ の目的から陸上競技種目を位置づけていたことがわかる. しかし, 体操とは別 にス ポーツ領域が独立して示されていたことから, 「走技, 跳技及投技」 は競争を楽しむための領域だった こ と●がわ かる.. 表2 大正15( 1 9 2 6 ) 年 改正学校体操教授要目 小学校 領域 種目. 尋. 操. 跳躍運動. 体. 3 学年 2学年 上方跳 宵前振上方跳 前方跳 欝側振上方跳 跳上下(腰掛け) 幅跳 跳上下(跳び箱). カラカイ鬼. 円陣鬼 陣取. 源平球入. 戯 争 円 形リレーレース 投 技. 走技跳技 及. 遊戯 及競技. 遊競. 1学年 片脚跳 両脚跳 縄跳 脚側(前後)開閉跳 跳下(腰掛け). 短距離競走. 常. 科. 4学年 側向上方跳 瞥側振側向上方跳 上方跳 瞥前振前方跳 斜高跳 傭立跳上跳下(跳び箱). 5学年 前進跳 高跳 跳越(跳び箱) 跳下 瞥側振跳上下(跳び箱) 衝立跳越 垂直間(閉)脚跳. 長距離走法. 、一ドノ ノ レレース. 6 学年 嘗前(側)振前進跳 前進跳 前進側向跳 振幅跳 斜開脚跳. 縄跳. 直線リレーレース. 梶棒置換競走. 中距離走法. リレーレース 走幅跳 スポンジポール 投 バスケットボール 投. 走高跳 ホップステップジャンプ プレーグランドポール 投. 0 (小野, 2 0 1 ). ( 2 ) 昭和初期から戦後まで ) 画一的 統制的性格をいっそう強く持 3 昭和11( 1936 )年の第2次改正学校体操教授要目(表3の性格は1 , , ち, 前要目の 「身体の健全なる発達を期すべき」 から, さらに 「人格的陶台」 も強調している. また, 前要 表3 1 9 36(昭和”)年 第2次改正 学校体操教授要目 dビF校 尋常小学校 領域 種目 1 ・ 2学年 3 ・ 4 4斧年 5・6学年 整列競争 置換競争 障碍競争 廻施競争 5 0米疾走 受渡競争 円形総走 8 0米疾走 走 直線纏走 折返継走 01 0 0米疾走 0米走 5 ○中距離走 8 0米走 ○長距離走継走 手布取 高眺競争 長縄跳 鰯球 片脚競争 ○蛙跳 跳 川跳競浄 幅跳競争 走高跳 兎跳競争 短縄跳 走幅跳 三回跳 三段跳 源平球入 球投 投捕球 球中 投 封麟投 寵球投. 伽頭 瀞. 遊戯及競技. ※○は男子, △は女子. 高等小学校 1・2・3学年 △6 0米疾走 △i o o米疾走 06 0米競走 01 0 0米競走 障碍走 棒高跳. 目の 「走技, 跳技及投技」 が, 「走り跳o投」 に改 め られ て いる. 「技」 を 省 い た の は, 小 o 中学校で. の陸上競技が正式の競技を目標として扱われること ) ま た 教 材 の配列 を発 展 的 4 を警 戒 した とさ れ る1 ‐ ,. かつ系統的に配置しようとしていたことに特徴がみ られる. 全体主義的な方向を示しながらも, 大正期 の自由主義体育の長所を生かしていた. その後, 終 戦に至るまでは, 戦争の影響で, 国防力の増幅のた めに体力的要素が不可欠となり, 陸上競技も機能的. ・. 5 ) このため大正 な体力を補うものとして扱われた1 ‐ 期に発展しかけたスポーツ教材のゲーム的要素, 遊. (小野,200 1 ). 6 ) 戯的要素が極端に薄められた1 . 141.

(5) . 小野. 豊. 真澄・城後. { 3 ) 戦後から昭和32年まで 昭和20年第二次世界大戦終戦により, 戦時教育体制の廃止ともに, 国家主義, 軍国主義の思想及 び軍事訓 7 ) 終戦後の体育は民主主義社会の要求する人 練を削除し, 新教育の方向を打ち立てることが必要であった1 . 間形成の教育の一環であるところが出発点である. それには, 学習指導要領を必要としたが, 体裁を整えて 197 4 ) 年, 学校体育指導要綱が出された. 体育の教材 いないことから, 「学習指導要綱」 として, 昭和22( や学習内容は, 児童生徒の発育発達に即しており, 小学校低学年・小学校高学年・中学校 (仮称)・高等学 校 (仮称)・大学 (仮称) の各時期の発育発達の様相 を示し, それらに従っ た教材を充てている. 体育は 「身体発達のプロ グラム」 と捉えられた. しかし, 従来の体操中心から, 遊戯・スポー ツ中心へ切り変わっ 8 )博 ) たが, 新しい指導形態が十分に体系化されておらず問題も残った1 )年 1947 昭和22(. 表4-1. 鰯q. 蹴. 内. 形式. 繊. 学校体育指導要綱(小学校低学年) 容. 類別. 3愚年. 1・2学年. かけっこ・リレー 幅跳び・高跳び・なわ跳び. かけっこ・リレー. 鬼遊び・けん遊び. 球投げ. 遊戯. 鬼遊び・押 し出し遊び. 搬 水泳. 球送り・球入れ. フッ トベースボールなど. 水遊び. ダンス. 顔遊び. 沈み方, 浮き方など. 19 47 )年 昭和22(. 表4-2. 内. 形式. 麟. 学校体育指導要綱(小学校高学年) 容. 4紳. 5・6学年. かけっこ・リレー. かけっこ・リレー. 幅跳び・なわ跳び. 幅眺び・高跳び・なわ跳び. 職げ. 職げ. 鬼遊び・押し出し遊 鬼遊び・△馬乗り遊び び △すもう (小野, 20 01 ). △は男児のみ 20 01 ). 小学校低学年(表4-1)の運動教材では, 体操, 遊戯に類別し, 遊戯においては遊戯・球技・水泳・ダン スに分類された. 1・2学年においては 「遊戯」 は総合的な内容となっている. 3学 年 の 内容 で は, か け っ こ・リレーの他, 幅跳び・高跳び・球投げなどが位置づいており, 走・跳・投運動が遊戯に収められている. 小学校高学年(表4-2)の遊戯は, 小学校3学年の遊戯形式と内容はほとんど変わりないが, 4年の内容 から高跳びが一度削除されている. 5・6学年の内容において, 再び高跳 びが示されている. 表4-3 昭和2 2( 1 9 4 7 )年 学校体育指導要綱(中学校) 類別. 形 式. すもう. 男. 子. 各般. 短距離走・中距離走・長距 離走・継走・障害走. 幅跳び・高跳び. 幅跳び・高跳び. 跳び越し・なわ跳び. 類別. 形 式 陸上競技. 跳. 容. 子. ポー ツ. 陸上競技. ポー ツ. 走. 内. 女. 表4-4 昭和2 2( 1 9 4 7 )年 学校体育指導要綱(高等学校). 走 跳. 内 女. 各紙 幅跳び・高跳び 跳び越し・なわ跳び. 投. すもう (小野,2 0 0 ) 1. 容. 子. すもう. 男. 子. 短距離走・中距離走・長距 離走・継走・障害走 幅跳び・高跳び・三段跳び 砲丸投げ・円盤投げ すもう. 中学校(表4‐3)の運動 教 材 は, 体 操, ス ポー ツ・ ダンス ・ 理論 に類 別 さ れ て いる. 「ス ポ ー ツ」 に お いて. は陸上競技・球技・水泳に分類されている. ここで, 明治以来はじめて, 陸上競技種目が 「陸上競技」 領域 として確立し, 位置 づけられた. しかし, 陸上競技の内容は, 「走・跳・すもう」 となっており, 小学校に おける類別 「遊戯」 内の形式 「遊戯」 の内容をそのまま発展させ導入したと思われる. 高等学校(表4-4)では, 基本的な分類が中学校と同様であるが, 陸上競技につ いて, 「走・跳・投・すも う」 に分類され, 男子に 「投」 について砲丸投げ・円盤投げの種目が示されている. 女子は中学校と内容に 変化はみられない. これらのように, 学校体育で陸上競技と称された形式力逗誕生したのは戦後まもなくのことである. 走・跳・ 投運動が中・高等学校ではスポーツとして独立しているが, 運動文化としての陸上競技として捉えられてい るかは, 疑問がある. それは, 史実的に陸上競技の運動文化財にはすもうは含まれておらず, その特性から 考えても, 個人競技であること意外, 共通点はない. 19 49 昭和24( ) 年の学習指導要領小学校体育編 (試案) (表4-5)において, 児童の発達は, 1・2学年, 142.

(6) . . 陸上運動・陸上競技領域-学習指導要領の史的分析-. 506学年ごとに身体的特徴と, 精神的特徴に分けて示されている. 教材については, 体育の 目標を達成するために, 必要と思われる教材群を取り上げている. それらに含まれている運動は, 例示する 3 0 4学年,. に 過 ぎな い とい う 立 場 をと っ ている.. 教材群は9つ に分けられているが, その中にリレー・陸上運動教材群が含まれている. これは, 現在に至 るまで扱わ れてきた 「陸上運動」 の始まりである. し. 表4-5. 昭和24( 19 49 )年 学習指導要領小学校体育編(試案) 学. 教材群. 年. 3・4学年 5種類 1. 1・2学年 5種類 1. 鬼遊び “ リ し . 1 ・. かけっこ まわりっこ ならび競争 回旋リレー 障害リレー なわとび 旗取り競争 置換リレー 受け渡 リレー ポール渡しリレー ポール しリレー サークルリレー 輪くぐりリ 投げ越しリレー うさぎとびリレー レ一 月1とび競争 ハンカチ取り だるま運びリレー 救助リレー 馬 紅白たまならべ たま拾い競争 とびリレー 幅とび競争 高とび 競争 押し出し遊び 突き出し. 遊び 二人三脚 陸上運動. 学. て い る‐ 1・2学年のリレー教材群の中に 「川とび競. 争」 が例示されているが, 内容としては, 「幅跳び」 を遊びにした運動が含まれている. 「かけっ こ」 自体 もリ レー 教材 群 に位 置 づ け られて い る. ま た, リ レー. 教材群以外にも 「鬼遊び」 の中に, 15種類もの様々な 走運動を例示しているが, リレー教材群自体には陸上 競技教材を位置づけ, 主に陸上運動を遊びに据えてい. 年 5・6学年. 重なり鬼 反感遊び 旗取り 帽子とり 綱引き 馬乗り遊び 片 足ずもう 競走 継走 競歩リレー ジグザグ競走 持久走 黒板 リレー カンガルーリレー 幅とび 押し すもう. か し, こ こ で はリ レー と 陸上 運 動 が 分 離 して 考え られ. 高とび 3回とび なわとび 棒. (小野,2 ) 001. る‐ このこ と は, 3・ 4学年 においてさ らに表 現さ れ,. 馬とび, 幅跳び, 高跳びがリレー教材群の種目の中に 示されている‐ しかし, 陸上競技教材の以外にも, 突 き出し遊びなど, すもう遊びがこの分類に配置されて い る. こ れ に つ い て は, 5・6学年の 「陸上運動」 に. つ いて も 同 様で, す もう が 配 置さ れ て いる‐ 5・6年においてはリレー教材群から名称を変え, 陸上運動と して 提示 さ れて い る. 小 学校 4 学年ま で名 称 が 「リ レー」 な の は, 集 団 で楽 しみな が らで きる こ と を 目 的と して いる か らで あ り, 50 6 学年 の 陸 上運 動 につ いて は, 個 人 でそ の種 目 に取り 組ま せ る こと をね らい と し て いる と考え られる. しか し, 小 学校全体 を通 して, 鬼遊 びoリ レー の 実践例 か ら走運動 が主 にな っ て いて,. 跳運動を組み合わせることによって, 基礎的な身体能力を高めることを目的としている‐ 体育目標から, 内 臓強化などの健全な発育o発達を期待している. 9 )年の中学校・高等学校 昭和26( 1 51. 学習指導要領保健体育科体育編(試案)(表4-6)では, 体育の目標. 6( 1 9 5 1 表4-6 昭和2 )年 中学校o高等学校学習指導要領保健体育科体育編(試案) 中学校男子. 高校男子. 中学校女子. 1 歴史 2 .ジョッキ ング 3 ‐練習法 4 ‐補助運動 5 .規則と審判 左同 陸上競技一般 .. 法 6 .例話 .競技会の運営 8 ‐記録 7. 左同. 1 ‐フォーム(足の運び方・腕の振り方・体の前 側 2 ‐スタート(クラ 123 4同じ 5 競走 . ‐‐ ‐ 5 10 OM~2 00M) 短 距 離 走 ウチングスタート・スタンディ ングスタート) 3 .ペース 4 .フィ ( .競走( 60M~10 OM) ニッ シュの仕方 5 60M~200M) ‐競走(. 1 ‐呼吸法 3 ‐ なし ‐フォーム(足の運び方・腕の振り方・体の前傾) 2 中 距 離 走 ペース 4 30 0M~10 0 OM) ‐競走(. 高校女子 左同 中学女子と同じ. 4 40 0M~1 50 0M) ‐競走( 12同 じ. 3持久. . . 1フ ーム 促もの運び方・腕の振り方・体の前掴 2 .呼吸法3 ‐ペー 1.2同 じ 3.持 久 走 4 競走(2000M~1000OM) 走(かけ足2分~5 長 距 離 走 ‐ ォ . 1 50 0M~500 0M) (かけ足5分~1 0分) ス 4 ‐競走 ( 分) 0 1 ‐2同 じ 3 ‐競走(6 3 6 0M~ZO OM) .競走( M~80M). 障. 害. 60M~1 0 OM) 走1 .ハー ドリング 2 .ハー ドル間の走法 3 .競走(. リ. レ. 1 バ トンタッチ(基本・セパ レートコース・オープンコース) 2 50 ‐1 .2同 じ 3 ‐競走( ー ‐ 中学男子と同じ 作戦 3 0OM~2 M~1 0 0Mずつ) 0OM) ‐競走(ひとり1. 中学女子と同じ. 幅. 跳. 1 立幅跳び 2 ‐助走と踏み切り 3 ‐フォ ームと着地(はさみ跳び) 左同 び .. 左同. 4 ‐競技. 左同. なし. 1 助走と踏み切り 2 ‐フォームと着地(正面跳び,ロールオーバー) 1 .3同 じ 2 ‐(正面跳び,ロールオー 中学女子と同じ ‐(正面跳 2 び ‐ バー,ベリーロール) 3 び) ‐競技 : 三 段 跳 び1 なし なし 中学男子と同じ .立 段跳び 2 ‐助走と踏み切り 3 ‐フォームと着地 4 ‐競技 4 1 棒の持ち方 2 棒幅跳び 3 助走と踏み切り フォ ームと着地 . . ‐ . なし なし 棒 高 跳 び 中学男子と同じ 走 高 跳. 5 .競技 4キログラム) 砲 丸 投 げ1 .競技( ‐持ち方 フォーム 3 混 成 競 技1 .競技(既習種目より3~5種目組み合す). なし. ( 4~6キログラム) 3 ‐. なし. なし. 中学男子と同じ. なし. 143.

(7) . . 小野. 真澄・城後. 豊. を決定する立場を 「体育は身体活動を通して教育の一般目標達成に貢献しようとするのである.」 とし, 体 育を手段としていることが伺える. また, その上で, 生活の中に身体活動を正しく位置 づけ, 活用するため には理解や態度や技能をも目標にしなければならないとした. 教材について運動的教材と理論的教材に分け, その前者の方は, いわゆる教材評価を試み, 各種目を五つの体育目標の側面から1 0点満点で評価してその特 性を見出し, 中心教材と選択教材とに分けるなどの特色がみられる‐ 体育の立場からみた生徒の発達として 中学校期 ( 12~1 5才) 8才) にわけ, 詳しく解説しているが, その中で, 疾走や跳躍の 15~1 , 高等学校期 ( 能力は男子では14~1 3才項を中心として最大の発達を示すとしている. また女子は男子 5才, 女子では12~1 ほどでもないとし, 1 5才以後になると発達が停止状態になり, 高等学校後期においては低下する傾向がある としている. これら体育の目標と発達の特徴に合わせて教材を位置づけているが, 中心教材においては発達 上の価値が高いものが大部分であり, 運動を発達刺激として強調する域にとどま っている‐ 陸上競技は中学校女子・男子, 高等学校女子・男子に中心教材, 選択教材 (中心教材以外の種目) に位置 づけられている. 中学校と高等学校では, さほど変わりない内容となっているが, 若干距離や砲丸の重さ, また走り高跳びにおいてのスタイルが変化している. 前述したように, 高等学校女子においては, 走力が低 下するという発達特性を示していたように, 教材内容においても, 長距離走内の持久走の時間が短縮されて いる. また中学校女子において行なわれた障害走が削除されている. 幅跳びにおいては, 各学校性別ともに 同様の内容である. したがって中学校と高等学校では, 系統的な内容の発展は指導要領には示されておらず, 技の発展を重視するのではなく, 発育発達面においてのみの配慮だと言える. 従前の高等学校の陸上競技の ように 「すもう」 は含まれておらず, 陸上競技本来の種目特性につ いて分類されている. 理論としての歴史 も内容に含まれており, 陸上競技が “組織だてられた経験のまとまり” としての教材であることがわかる. 昭和28( 1 9 53 ) 年の小学校学習指導要領体育科編 (試案) (表4-7)は戦後独立期の指導要領であり, 最 大の特徴は体育において初めて真正面から 「学習内容」 を取り上げている. すなわち学習目標を児童の発達 と必要から考え て具体的な形で学習 表4-7 昭和2 8( 1 9 5 3 )年 小学校学習指導要領 体育科編(試案) ソし▼1・ 力試し の運動 “. \. 学. 低. 学. 習. 年. か け っ こ 川 と び ゴム と び た ま な げ・ た ま あ て す もう 置 換 リ レー 折 り 返 しリ レー ま わ り い ろ い ろ な 形 で 歩 き, ぶ(ア ヒ ル, ニ ワ トリ な ど). 内. 中 学 なわとび 旗とり ころ ころ 走 り, と. 内容として表し, 指導計画が目標に. 容. 年. 高 学. 年. *徒手での運動 *徒手での運動 競走 幅 と び 高 競走 幅 と び 高 とび なわとび とび なわとび ボー ル投 げ すも ポー ル投 げ すも う ス タ ンツ う ス タ ンツ 回旋リ レー 障害 回旋リ レー 障害 リ レ ー 折 り 返 し リ レー 円形 リ レー リ レー. 0 0 (小野.2 . ). つ な が る よ う 考 慮 して い る‐ 指 導 に. つ いても記述を具体化し, 生活への つ な が り も 強 調 し て い る‐ 体 育 の 日. 標も前回の学習指導要領と比べよ り 具体性を増し, 身につ けた知識や態 度 を どの よ う に 使 う の か, と い っ た 総 合 的 能 力 を 考 慮 し て い る‐ ま た,. 小学校を低学年・中学年・高学年と3段階に分け, それぞれ 「発達の特性」 をまとめ, 「発達上の特性に応 する必要」 がある 「学習内容」 を位置づけている. 学習内容としての教材の配列 については, 「学校内外で 行える望ましい活動を経験して興味を深め, 必要な技術能力を発達させる.」 という目標が基盤となってい る‐ その目標から, 経験主義的な主旨がうかがえる. 教材の中で 「力試しの運動」 内容があり, その特性を 子どもたちがかなり強い欲求をもっているところの比較的単純な未組織的な自然運動で, その運動のまま自 己の力や進歩も試しやすいとしている. 従前の 「リレー」 「陸上運動」 教材群がなくなり, その中に位置づけられていた種目は 「力試しの運動」 に位置 づけられた‐ 中学年からは, 走運動は組織的に発展す るので 「リレー」 として分離している. この 「リ レー」 は, 従 前 の リ レー 教 材 群 と 違 い 走 運 動 と しての リ レー が 位 置 づ け られて い た 陸 上 運 動 は独 立 , .. した組織化された運動形態ではなく, 競走, 幅とびや高とび, ボール投げという陸上競技教材が, 未組織的 な形態として捉えられた‐ 運動文化財としてではなく, 体育の目標達成を目指すために発育o発達に応じた 内容で運動を位置づけることだけが重視されたことがわかる. 144.

(8) . 陸上運動・陸上競技領域-学習指導要領の史的分析-. 1956 )年高等学校学習指導要領 保健体育科編 表4-8 昭和31( 男 子 陸上競技 女 子 50~60m 短距離走 100~200m 中距離走 400~i500m 走 長距離走 2000~1000om かけ足 障 害 走 60~loom リ レ ー ひ と り1 00~200m 0~loom ひ と り5 幅 と び 1 立 ち 幅 と び 2 走幅とび 1 立ち 幅 と び 2 走 幅 と び 跳 高 と び 1走 高と び 2 棒高と び. 三段と び 三段とび 投 砲丸投 げ 4~6kg 競 技 会 1規則と審判法. 2記録の仕方. 3競技会の運営. )年, 高等学校学習指導要領保健体 昭和31( 19 56 育科編(表4-8)の最大の特色は, それまでの要 領 は 参 考 資 料 で あ っ た の に 対 し て, は っ き り と. 「指導を計画し, 実施する際の基準を示すもの」 と し, 基準 的 な性 格 を も つ こ と によ っ て, 目標 と. 内容と若干の留意事項で構成される程度となり, 学習指導要領は著しく簡単なものとなった. 高等 学校の保健体育科は 「保健と体育の正しい理解と. (小 野,2001 ). 実践に基 づき, 心身の健全な発達を図り, 個人な らびに集団生活における保健, 体育やこれらに関するレクリェーショ ン等の問題を科学的に解決する能力や 態度 を 養 う こ と を 目指 す」 こ と を目 標 と して いる‐ こ れ は, 生 活の 中 で の運 動, ス ポ ー ツ につ い て重 ん じて. おり, 日常生活でよく活用できる種目等を独立して考え, 運動の分類を 「個人的種目, 団体種目, レクリェー ショ ン的種目」 として明確に位置づ けているのが特徴である‐ 個人種目は体力などの身体的目標に関連し, 団体種目においては特に社会的目標に関連し, レクリェーショ ン的種目では, 健全な活動によって生活を豊 か にす る こと が 目標 で あ っ た.. 陸上教材につ いて従前の学習指導要領と比較すると, 内容構成はほとんど同じであるが, 女子の高とびが 削除された. また, 男子の場合は障害走の距離を除いては, 同様である. 以上, 戦後から昭和32年までの学習指導要領について検証してきた. 短い期間の中で次々と指導要領が改 訂された背景には, 体操中心の体育から, 遊戯oスポーツ教材中心の体育に転換したことがあげられる. 戦 後に至るまで, 陸上競技の種目は体操領域, 遊戯領域に個々に扱われていたが, 「陸上競技」 として明文化 されたのは, 昭和22年の 「学校体育指導要綱」 であり, 中学校・高等学校の体育授業に陸上競技領域が位置 、け られ た ま た づ . , 表5寸. 蝿 種目. 種目. 1選年. 2選年. 3き年. 4泌年. 5学年. 6学年. かけつこ 短距醗 0m そろってス 約50mスタンディ 約80mクラウチン 約l 約30mまっすぐに 約3 oom 体をやや 約l o om 体 をやや 走る‐ タートする. ングスタートで腕 グスタートで迂tる‐ 前に傾けて走る . 前に傾けて, 手足 を調子よく振って の調和を保って直 走る. 線やコーナーを走 る- 円形リレー 折返しリレー リレー 決まった方法で置 じょうずに回って 走りながらバ トン 走りながらバトン 約5歩ないし6歩 リレーゾーンが÷上 置換えリレー. 回旋リレー. 換えや引継ぎをす 走る. る-. 種目. 昭和2 4年の 「学習指. 3( 1 9 昭和3 5 8 ) 年 小学校学習指導要領. の受け渡しをする. の受け渡しをする. 走りながらバトン 手に走れる‐ 追い越すときは外 を受け取る‐ 側から追い越す‐. 並びっこ. 障害走 障害物をいくつ か きき足で踏み切れ. 位置を移動して早 く並ぶ‐ 種目. 置いて越す‐. として教材群に独立 して い る. しか し 陸. 上競技種目をス ポ ー ッ と して 位 置 づ け た. のではなく, 発達刺 激の運動としておさ. かけ足 持久走 約1分間同じ調子 約2分間みんなで 約3分間みんなで 同じような調子で 同じような調子で. の小学校学習指導要. 約10 0omを走る.. 切ってとぶ‐. てとぶ‐. ふ 1 .. 形でとぶ‐. 走り高跳び. ひざの高さぐらい 腰の高さぐらいを 片足踏切で横木を 片足で踏み切り , 助走や踏切を考え とび越し方や着地 をとび越す‐ 走っていってとふま とび越す‐ 横木をとび越す‐ てとぶ1 を考えてとぶ‐ .. 種目. 「リ レー o 陸上運動」. え て い る‐ 昭和26年. 片足や両足でとび 片足や両足で踏み 片足踏切でとぶ. 助走に速度をつけ 踏切線を決めてと そりとびのような. 越す. ゴムとび 種目. (試案)」 においても,. るように足をあわ せる.. でかけ足をする. 調子を合わせてか そろってかけ足を 約600m走る‐ け足をする. する‐ 川とび 走り幅跳び. 種目. 導要領小学校体育編. 領体育編では, アメ リカの経験主義教育 が 背 景 に あ っ た20) .. 特に, 中学校, 高等. 学校では経験主義的. 立ち三段跳び. に陸上競技種目をと. 腕を大きく振って とぶ.. りあげ, 投げ方, 跳. (小野,2 0 0 ) 1. び 方 な どの フ ォ ー ム 145.

(9) . 小野. 真澄・城後. 豊. を重視した内容となっている. 小学校では, 遊戯運動の中で, 陸上種目を取り上げようとしており, 鬼遊び, リレーな どを工夫し, 児童中心の生活体育を目指す新しい体育の方向を示している. ( 4 ) 昭和33年以降30年代 小学校と中学校の学習指導要領が同時に定められたが, これまでと違って, “文部省告示” として文部大 臣から告示された‐ 従来の学校教育法施行規則の一部を改正することにより, 法的根拠を明らかにし, 国が 定めるところの基準性を明確に打ち出しているのが特徴である. 1 )では, 内容についても簡素にして厳密に示 し, また各学 ) 年の小学校学習指導要領(表5 昭和33( 19 58 - 年別に配置し, いずれの学年においても取り扱うこと を必要とする内容を精選して示している. 体育の第一 8年) の 「身体の正常な発達を助け, 活動力を高める」 ことから, 「基礎的な運動能力 目標は, 従前 (昭和2 を養い, 心身の健全な発達を促し, 活動力を高める」 ことに変わり, 「基礎的運動能力」 の記述がみられる. また, 身体活動を通しての民主的態度育成や, 生活への活用 など, 運動手段論的立場をとっている. 基礎的 な運動能力を養うためにも, 教材について「遊戯的な簡単な運動」(低学年) →「やや形の整った運動」(中学 年) →「やや組織だった運動」(高学年) という系列で考えて技能を身につけさせようとした. 陸上運動については, 技能的目標は1学年から6学年まで が 「走・跳の能力を高める」 ことが提示されて いる. ま た, 技 能 につ い て も, 初 歩 的な 技 能 か ら身 に つく よ う に, 教 材 に も段 階 を つ けて, やさ しい もの か. ら難しいものへと技能内容を配置している. 従前の学習指導要領は, 学習内容が未分化な状態であり, 「力 試しの運動」 として陸上種目が扱われていたが, 今回の学習指導要領ではそれらを解決し, 陸上競技種目の 1つ1つに技能的段階をつけて学 ばせようとした. また, 前回は児童の発育発達の状況に応じての刺激的な 意味での運動の位置 づけだったが, 今回は, 陸上競技種目の基礎的な運動技能を児童に身につけさせること を前 提 に して い る.. 1 9 58 ) 年の中学校学習指導要領 (表5-2) では, 小学校同様に, この時期の基本方針は活動力 昭和33( に満ちた健康な心身の育成 を図ること 1 9 5 8 表5-2 昭和33( ) 年 中学校学習指導要領. 隊競技. 1学年. 2紳. 3逃年. 発走法:クラウチングスター 発走法:クラウチングスター 不必要な緊張を除いてl o o ト ト m走り通す.. 短距離走. 疾走法:腕の振り方, 体の 疾走法:腕の振り方, 体の 前傾の仕方などを知って走 前傾の仕方などを知って走. 「走・跳の技能を高める」ことがねらい と な っ て い る. ま た一 般 の 陸 上 競技 と. ハードルをとび越す‐ ハー ドル(高さ約7 0q ) の n 間隔は7m程度とし, 調子 よく走る‐. して の多 く の種 目 が み られる. リ レー. については小学校から連続しての学習 と考えられるため, 1学年のみの扱い で, 走幅とび・走高とびは2学年まで,. そりとぴまたははさみとび そりとぴまたははさみとび. 正面とびまたはベリーロー 正面とびまたはペリーロー. 3学年においては三段とびが導入され. ル (助走と踏切, とび越し 方, 着地などに注意してと ぶ‐). 三段とび. 1 5m程度の助走でホッ プ・ ステッ プ・ジャンプを調子 よくとぶ.. 走法およびペースのとり方 自分の能力に応じて調子よ 自分の能力に応じて調子よ 0 0m程 0 (男子は2 0 0 0m程度, 女子 く走る. (男子は20Gom 程 く走る. (男子は2 長距離走 は持久走として 1 0 0 om程度 度, 女子は持久走として 度, 女子は持久走として とする-) 10 0 om程度とする‐) 1 0 0om程度とする‐). 砲丸投げ (男子)ま た はソ フ トボー ル. 腰や足の力を利用 して正し く投げる‐. 投げ. 1 ) (小野, 200. 1 4 6. 陸上教材につ いて小学校では 「走・ であったが, 中学校においては各学年. 5mの助走) 走幅とび (足裏全体で踏み切る‐ 踏 (約1 切線で踏み切る‐ ) 走高とび. 科 と して 考え られて い た.. 跳の能力を高める」 ことが主なねらい. る. る‐ l o omを走り通す. loomを走り通す. バトンタッチ ( 2 0mのリレー ゾーンを用いる‐ ひとりが リ レ ー 50mないしio o血走る‐ コー ナートップの方法も用いる‐. 障 害 走. であり, 体育は重要な役割を果たす教. ている. 従前 (昭和26年) と比較する と, 大きく改善されたのが, 学年ごと に学習内容が割り当てられ, 小学校か らの一貫指導を根底に置いていること がわかる. 運動内容につ いて, 中距離 走・棒高跳び・混成競技が配置されず, 経験主義的な従前より, 一つの種目 ご とに対して指導順序を踏ま えた過程で.

(10) . . 陸上運動・陸上競技領域-学習指導要領の史的分析-. 表5-3. )年 1960 昭和35 (. の技能配置であるこ. 高等学校学習指 導要領 陸. 競. 上. 技. と がわ かる‐. スタート, 疾走フォ ーム 走 (男女) 小・ 中・高校教育 バトンの受け渡し方 ー (男女) レ リ ペース ーム 走 法 スタート, 疾走フォ , 走の運動 中 ・ 長 距 離 走 (男子のみ) の一貫 性を はかると 走 (女子のみ) 走り方 (競走的な扱いではなく, 体力に応じた指導) 持 久 と もに, 昭和31年の イ ンターバルの走り方, 障害の越し方 走 (男女) 障 害 助走と踏み切り, 空間のフォーム, 着地の仕方 走 り 幅 と び (男女) 改訂での精神 をより 走 り 高 と び (男女) 助走と踏み切り, 空間のフォーム, 着地の仕方 法 跳 躍 跳の運動 徹底させ, 時代の進 助走と踏み切り, 空間のフォーム, 着地の仕方 三 段 と び (男子のみ) 着地の仕方 助走と踏み切り, 空間のフォーム, 棒 高 と び (男子のみ) 展 に即 応さ せる こと 持ち方, ステッ プまたはホッ プのしかた, 突き出し方や投げ方 砲 丸 投 げ 邑…として男子) 投てき法 投の運動 持ち方, ステッ プまたはホッ プのしかた, 突き出し方や投げ方 を ね ら い と し, 昭 和 ソフトボール投げ 住…として女子) (小野,2 0 0 ) 35 (1960) 年 の 高 等 1 *走・跳・投を個々に扱ぅのではなく, 混成競技形式でも行なぅ. 短. 距. 離. 学校学習指導要領(表5-3)では, 従前の運動3領域 (個人・集団・レクリェー ショ ン) から7領域 (徒手体 操, 器械運動, 陸上競技, 格技, 球技, 水泳, ダンス) に改めている‐ 陸上教材についての内容は前回と同様に走・跳・投の運動形態から構成されていて, 男子は走o跳の運動 の中から2種目, 女子は1種目以上選択 し, 投については, 男女とも1種目以上選択するようにした. 走・ 跳・投の技能や基礎的運動能力を高め, 正規の規則に準じて競技や審判ができるようにすることがねらいで ある‐ 中学校からの一貫で考えられた内容であるが, 短距離についは中学校の内容とほぼ同様である. 以上, 昭和33年以降30年代の学習指導要領について検証した. 教育界では, 戦後からの経験的学習が批判 され, 子どもたちの学力低下問題との論議から, 科学や文化の体系を学ぶ系統学習が再検討されたことによっ 1 ) 「経験的学習から系統的学習の考えに変化し, 教師の自 て, 経験的学習 から系統学習へ大きく転換した2 . 主研究や創意工夫よりも, 指導要領の解説書に依存 し, 教育技術に力点が置かれる現象が顕著になって きた )とあるように 指導要領に示された指導過程につ いても段階的な順序で技能を配置 しようとしてい 2 2 時期」 , る. しか し, そ の 技能 内 容が, 種 目 の 特性 を踏ま え た指 導 順序 であ っ たか は, ここ で は追 及 しな い. ま た,. 陸上運動の内容に ) 年小学校学習指導要領 3( 19 68 表6-1 昭和4 1憾年. 2響. (約 50m) スタンディ (60~80m) スタ ーイ ングスター ングスター トで, 腕を ンブ 曲げて前後に振って走 トで, 腕を曲げて ること‐ 前後に振り, もも を上げて走ること‐ “/レー・. 陸. 置換えリレー, 置 換えリ レー,・回 折り返しリレー 走 回旋リレーをす 旋 リ レー をす る こ りながらバトンの受 と- け渡しをすること. ること-. 6学年. 5学年. 4学年. l. 短距離走. 約30メートルを 約30メートルを 全力で轟とること‐ 全力で走ること .. 3学年. oom) ク (80~l oom) ク (80~l ラウチングスター ラウチングスター トで, 体をやや前 トで, 前傾姿勢と 傾して走ること‐ 腕・脚の調和を保っ て直線やコーナー を走ること.. 走りながらバトン 決められたゾーン 速度をおとさない の受-力渡しをする のなかで, ノぐトン で, バトンの又モナ の受け渡しをする 渡しをすること‐ こと‐ こと‐. 上. ひとり鬼, けん 場所とり鬼, 手 鬼をすること‐ つ なぎ鬼をする こと-. ること.. 00 om) 自分 0メー (約1 1 同じ調子で約2分間か 隊おoem)100メー 鎌総OC m)10. 持久走. 同じ調子で約1 分間かけ足をす. け足をすること‐. 運 み切り, 遠くま みきり, 遠くま たは高くとぶこ たは高くとぶこ と. と-. 走 り幅 とび. 動. 片足や両足で踏 片足や両足で踏. 0秒ぐらい のペースを知り, トルを30秒ぐらい トルを3 の速さで走ること. の速さで走ること‐ それを守って走る こと- ゴム ひも (高さ約 障害 (高さ40~5 0 きき足で踏み切り, 障 30cm) をまたぎ cm) を越して走 障害 (高さ50~60 害 越して走ること ること cm) を越して走 . ‐ 走 ること-. つ い て も, グ ルー. プでの活動に関し ての記述が多々見 られ, 集団行動に つ い て 重 ん じた 目. 標であった. 小学 校 o 中学校・高等. 学校, 一貫して運 動文化財を示して 軍 いる こ と か ら, 運. 動文化財の体系と 運動技能を系統的 に連続した教育環. 短い距離の助走をし 助走の速度を生か そりとびのような そりとびのような 動作でとぶこと- 動作でとぶこと‐ て片足踏み切りでとぶ してとぶ;こと‐. 境の中で養うこと. こと-. を重視していたこ. 走り高とび. と に, こ の 時 期 の. 片足で踏み切りで横木 片足踏み切りで横 正面とびのような 正面とびのような をとび越すこと. 木をとび越すこと . 動作でとび越すこ 動作でとび越すこ. 特徴がある といえ. 1 ) 仲野 0 0 ,2. る・ こ れ によ り, 運動 手 段論 的な 立. と‐. と.. 147.

(11) . . 小野 真澄・城後. 豊. 場から, 運動そのものが目的であるという立場に転換しようとしている移行期といえる.. ( 5 ) 昭和4 0年代 東京オリンピックの惨敗や, 児童生徒の体格の著しい向上, また運動遊びの時間・場所の減少・不足など から 「体力」 が注目され, 体育の目標も体力向上へむけての内容が中心となった. 昭和43( 19 68 ) 年の小学校学習指導要領(表6-1)では, 前回, 「活動力」 として示された目標が 「体力」 として示された. この体力につ いて, 要因をしぼりだし, 運動に関わる体力を 「筋力・瞬発力」 「持久力」 「調整力 (平衡性, 巧級性, 敏捷性) , 柔軟性」 に分けて考え, それと発達に応じた学習内容の配置を考慮し ている. 小学校の段階では全体として, 体力の中でも調整力が重視されていて, 各学年ともに調整力を高め る こと が 中心 の ね らい にな っ て いる.. 陸上領域につ いて, 前回の学習指導要領の 「その他の運動」 が分解され, それぞれの内容が他の領域に分 類さ れ, 陸上 運動 に は鬼遊 びが加 わ っ た. こ れ らによ っ て, 運動 の 概 念 を大 きく 3つ に分 類 した. 一 つ は, 「か ら だ づく り」 が大 き な ね らい で あ る 体 操, 一 定 の ルー ルで 運 動 技 能 を競 う ス ポ ー ツ, 自 ら が 生 み 出 して いく 活 動 に富 ん で いる ダ ンス, の 3 つ で あ る. 陸上 運動 はス ポ ー ツ の なか に含ま れた. 陸上運 動 は, 陸上 競. 技に発展する系統の運動のうち “走る, とぶ“ 運動と, 子どもの遊戯教材である鬼遊びの運動で構成してい る. 体育の目標自体が体力向上となり, 陸上運動の目標も走・跳の能力を高めることは当然として, 低学年 は 「遊び」 , 中学年から 「初歩的技能」 , 高学年では 「基礎的技能」 を高めることが示され, 従前の技能を系 統的に習得させる意志は受け継いでいることがわかる. 1学年, 2学年の陸上運動の内容は, 走ったりとん だりする各種の遊びとして位置づ け, 3学年から走り幅とび, 走り高とびなど, 種目として分化した形式を 示 して いる.. 昭和44( 1 969 )年の中学校学習指導要領(表6-2)は, 小学校と同様に, 体力向上を基本的なねらいとして 改訂された. 陸上競技につ いては, 小学校. 表6-2 昭和4 4( 1 9 6 9 )年 陸 上 競 技. 短距離走( 50~l oom) , リレー. 中学校学習指導要領. の陸上運動からの発展種目であるが, その 運動の形態である走・跳o投運動 について. スタートと疾走法, バ トンパス. 長距離走 ( 2 0 0 0m程度、男子) , 走法とペースのとり方 持久走 ( 0 1 0 om程度, 女子) 障害走 ハードリングとイ ンターバルの走り方 走り高とび. ず着地 はさみとびの助走, 踏み切り, 空間動作および着地. 走り幅とび. ‐地 そりとびの助走, 踏み切り, 空間動作および着地 距離投げの投げ方. ソフトボール投げ. 2 0 ) 0 1. は, 体力を高めるものとして「体操」領域で も 扱 わ れ て い る‐ 内 容 の 精 選 と いう 立場 か ら, 跳躍種 目の 三段と びが削 除さ れ, ま た, 「内 容 の 取 り 扱 い」 に お い て, 走 り 高 と び. の跳躍スタイルのベリーロールが着地の条件などで事故が多発し, 学習すべき内容から外されている. 体力 向上が体育の目標であるが, スポーツ領域については, 従前と同様にその技能を身につ けることも重要とさ れ, 陸上競技では, 走・跳の技能を養う ことから陸上競技の技能を養うことが目標とされた. 5( 昭和4 197 0 ) 年高等学校学習指導要領の基本方針 は, 小・中学校同様 「健康と体力の増進」 が示されて いる. 各運動領域の内容も, それぞれの特性に応じてできるだけ基本的な事項に精選集約し, 地域や学校に 応じた弾力的な取り扱いができるように配慮された. 陸上教材についての記述は極めて簡素化され 内容は , 「疾走, 持続走」 「高とび, 幅とび」 「距離投げ」 の走o跳o投運動とした. 従前と比較して “精選集約” の 言葉のもと極端に簡素化されたが, 実際そのスポーツの学習内容の取り組み方については示されなかった‐ 以上, 昭和44年代の学習指導要領につ いて検証した. 全般的に国民生活の向上, 文化の進展, 社会情勢の 変化, 国際的地位の向上などを考慮し, 教育内容の一層の向上をはかることを目的としている. 総則第3 に おいて, はじめて 「体育に関する指導」 が示され, 特に体力の向上が強調されたのが特徴である. その背景 には, 昭和39年の東京オリンピックでの日本の成績不振と高度経済成長期の強健な労働力の必要性があり, 底辺拡大の意味をこめて, すべての児童・生徒に体力向上に努めさせた経緯がある. 従前の学習指導要領の 運動の系統的学習を生かし, 技能を養いながら, 体力を向上させる内容にしようとしたが, それはスポーツ 3 ) ス ポー ツ は技能 習 得 が 目標 と な た の 目指 す と こ ろ で はなく, 体 操 の 領 域 が 直 接受 け持つ こ と にな り2 っ . , 1 4 8.

(12) . . 陸上運動・陸上競技領域-学習指導要領の史的分析-. 陸上競技も技能習得が目標であるが, 実際は, 体力の概念が瞬発力, 調整力, 持久力等陸上競技と関連深い 体力要素であっ たことから, 具体的に体力が学習内容として示された.. ( 6 ) 昭和5 0年代 学習指導要領の改善の基本方針が 「人間性豊かな児童生徒を育成」「ゆとりある充実した学校生活の実現」 「基礎的o基本的な内容の重視と, 個性や能力に応じた教育」 を趣旨として, 小・中o高校の学習指導要領 が全面的に改訂された. 体育・保健体育については, 健康の増進や体力の向上をはかり, 強靭な心身を養う ことは従来どおりであるが, 特に生涯を通じて運動を実践する態度や能力を養うことを強調しているのが特 徴である. さらに, 運動の特性と学習者の立場を重視し, 内容の構成や精選に注意を払っている. いわば, 児童生徒一人一人に各運動自体の特性に触れさせ, 楽しさ・喜びを味わわせようとするもので, “楽しい体 育” へ の 動 向 で あり, ま た “生 涯ス ポ ー ツ” の精 神 を 目指す 考 え 方 で あ っ た‐. 1 977 ) 年の小学校学習指導要領(表7 昭和52( 1 )は, 内容の弾力化を図るために学習内容につ いて, 2学 - 表7-1 昭和5 1 )年 小学校学習指導要領 2( 9 7 7. 粥. 岬. 鋤. 鋤. 陸上運動. 領域 領域 2学年 1学年 洋年 辞年 基本の運動 歩・走・跳の 歩・走・跳の 歩・走・跳 歩・走・跳 リレー・短距 リレー・短距 の運動 の運動 醗 鰭走 , 搬, 醒走 , , 一 ム 鬼遊び及びリ 鬼遊び及びリ リレー 走り幅跳び 走り高跳び ゲ リレー レー遊び レー遊び (小野, 2001 ). 年 ごとに構成している. 低学年で は基礎的な能力を総合的に発達さ せるため, 以前の6領域 (体操, 器械運動, 陸上運動, 水泳, ボー ル運動, ダンス) を 「基本の運動」 「ゲーム」 の2領域に整理統合し. た. 低学年・中学年では各種の運動の基礎的な能力を高め, 規則正しく安全に運動ができる能力や態度を育 成することに重点をおいている. 高学年においては, 各種の運動の正しい実践の仕方や基礎的な運動技能を 身につけさせることに重点をおき, 運動領域では, 体操, 器械運動, 陸上運動, 水泳, ポール運動, 表現運 動 とな っ ている-. 0年代においては, 小学校1学年から陸上運動を位置づけ,.陸上教材の走・跳の運動を分化し, 昭和30 ,4 一貫して走・跳の能力や技能習得に重点をおいてきた. しかし今回は5, 6年に独立するまでは, 児童の発 達特 性に着目 し, 基 本の運動 と して 総合的 に捉え られている‐ スポー ツの 基礎 を教え るので はなく て, ス ポ ー. ツをできる基礎をつくる, という発想の転換である. また, 目標には 「楽しく」「楽しさ」が強調され, 「楽 しければ運動が好きになる」という発想でもある. 従前の技能習得中心の段階的な指導や, 体力増加中心の 運 動 は,“楽 しさ” に反 し て おり, 結 果 的 に 体育 嫌 いを生 み 出 したと して, 遊 びや ゲームと して運 動 をと らえ. た. また, 「記録を高める」 ことも目標に含まれ, 競技形式の中で, 記録をねらっ て楽しく運動をする授業 を 目標 に して い たこ と がわ かる‐. 2( 977 ) 年の中学校学習指導要領(表7-2)の陸上競技は 「個人スポーツ」 に位置づいているが, 昭和5 1 「個人スポー ツ」 は個人の技能を最高に発揮することに ス個. ツ的. 陸 上 競 技. 表7-2 昭和5 19 )年 中学校学習指導要領 2( 7 7 o短距離走・リレー, 長距離走及び障害走 o走り幅跳び又は走り高跳び (第3学年においては, 陸上競技, 器械運 動又は水泳のうち一又は二を選ん で指導す る こ と が で き る こ と。) (小野,2 01 0 ). 特徴があるとしているが, そのうち陸上競技はこの特徴 そのものを課題とし, 個人の努力や工夫によって技能, 記録の向上を目指すことが課題の競技スポーツとしてと らえている. 小学校に引き続き, 学習指導要領に示され た陸上競技に関しての事項は極めて簡素化されている‐. 中学校では, 長距離走が位置づいているが, 持久走は体 操領域に関連させて指導し体力を養い, 陸上競技領域によってより速く走り続ける能力を養うと区別してい る‐ ま た, 「短 距 離 e リ レー」 につ い て, 小 学校 に お いて は 「リ レー・ 短 距 離」 と して 扱 わ れ, 実 際 に はリ. レーの指導であったが, 中学校でも短距離はリ レーを融合させた指導として, 切り離して指導するよりも相 互に関連させた方が効率的だとした. 基本的な考え方として, 体操領域で基礎的な体力を向上させ, ス ポー ツ と しての 競技 の技能を身 につ ける という ことを 陸上競技教材のね らい と してい る. このよう に, 目的によ っ 1 49.

(13) . 小野. 真澄・城後. 豊. てその領域に運動内容を分けて位置づけた. 8 ) 年の高等学校 197 新制の高等学校が登場して以来, 初めて大幅な改革が行なわ れたのが, この昭和53( 学習指導要領である. これも小o中と同じように, 学習指導要領が 「基礎・基本重視の大綱的基準」 として 示されているものであり, 学校の自主的判断と, 教師の創意工夫が強く要求されるものになっている. 従前 の体育では, 運動の実践の方法や運動技能を習得させることによって, 運動の生活化を目指すことに重点が おかれていたが, 技能習得が遅れた生徒及 び運動ができなかった生徒は運動離れに結 びついてしまった. ま たレクリェーショ ンとしての運動という面からだと, 運動自体の面白さ だけを体験して, 運動の持つ本来の 楽しさや喜びを体得するまでいかなかった. そこで, 現指導要領では, 「運動を行う過程のなかでそ れらの 態度を身につ けさせる.」 と従前の指導方針を反省し, 今回の指導要領では弾力化を図っている. 陸上競技について, これは 「個人スポーツ」 のなかに位置するものだが, 「器械運動・陸上競技・水泳」 のうちから各学年1から2を選んで履修することになっている. また学習指導要領においての記載は 《陸上. 競技》 のみで, 中学校からの引き続きでの授業が展開されたと推測 できる. 以上, 昭和50年代の学習指導要 領について検証した. この時期の学習指導要領の改訂から, 体育では運動 の楽しさや生涯スポーツの重視という目標を持ち, 運動の特性を改めて検討した. この時代は, 科学技術な どの急速な進歩により, 生活水準が向上し自由時間の増大な どから, 一方で運動不足, 精神ストレスな どの 社会的問題が増加し, 人々の健康, 運動, スポーツへの関心が高ま った時期であった. 教育界にもこの社会 的要請が影響し, 運動技能の習得と同時に運動の楽 しさを味わわせることが目標となったのである. しかし これら 「生涯スポーツ」 には 「楽しさ」 という情意が先立ち, 運動技能を軽視する風潮があった. それが, 顕著に現れたのが小学校低学年・中学年の 「基本の運動」 と 「ゲーム」 であり, 多様な運動を行わせること によって, 運動に親 しませることを目的としている. 高学年では運動種目の特性に触れさせて楽しさを体得 させることを目的としているため, 陸上運動では1年 ごとに走り幅跳 び, 走り高跳びを位置づけ, いわゆる 体験的な運動から生徒の興味を引き出そうとした. また, 従前の体力増加中心の体育授業は, 児童生徒の運 動, ス ポ ー ツへ の 興 味を引 き 出 しにく か っ たと いう 反 省 もあ っ た.. ( ) 平成元年 7 この時代背景として, 科学技術の進歩, 経済の発展, 物質的な豊かさ, 情報化, 国際化, 価値観の多様化, 核家族化, 高齢化など社会の各方面で大きな変化を遂げていることが多く挙げられる‐ 今後これらのことが, ますます加速するものとして, 「心の教育の充実」「基礎・基本の重視と個性教育の推進」 「自己教育力の育 成」 「文化と伝統の尊重と国際理解の推進」 を基本的なねらいとして学習指導要領の全面改訂を行った. 体 育, 保健体育については, 生涯スポーツの考え方がいっそう強調され, また中学校以降において, 運動領域 自体が複数学年で選択できるようになり, 選択内容の大綱化や弾力化が可能とされた. 領域, 領域内の選択 とあわせ, 大幅な選択制の導入が顕著となっている. 小学校では, 従前までの各学年の目標や内容が, 1・ 2学 年, 3・ 4学 年, 5 ・ 6 学年 ごと にま と め られ た.. 1989 ) 年の小学校学習指導要領(表8-1)の体育の総括目標は, 従前通り, 「生涯体育・スポーツ」 平成元 ( 「体力向上」の目的 表81. 198 9 ) 年 小学校学習指導要領 平成元 ( 5・6学年 3・4学年 領 域 年 1・2学年 び障害走 リレー・短距離及び障害走 基本の運動 走・跳の運動, 力試し 走・跳の運動, 力試し 領 域. ゲーム. 鬼遊び. 陸上運動. には変わ らないが,. その際 「運動の楽. 走り幅跳び及び走り高跳び り高跳び しさや喜びを味わ (小野,2 0 0 1 ) わせて 各種の運 ,. 動の基礎的・基本的な能力を養うこと」 に重点をおいている. 各学年の目標も 「運動を楽しく」 の文言が加 えられており “楽しさ” を強調している. 表面的な楽しさだけを追求するのではなく, 同時に運動の本質的 な特性に触れる楽しさや “喜び” を体験させることにした. 学習指導においても, 個人差に応じた多様な学 1 5 0.

(14) . 陸上運動・陸上競技領域-学習指導要領の史的分析-. 習活動が必要になり, 内容を弾力的に扱えるようにした. 陸上領域について, 小学校低学年の 「基本の運動」 と「ゲーム」は昭和50年代から設けられているが, 従前 の 「基本の運動」 内の運動の課題が把握できず, 効果があげられなかっ た. 「基本の運動」 の歩・走o跳の 運動では 「競争や記録の向上」 を課題とした 「陸上運動」 と区別しようとしたが, 有効な指導方法が見当ら ” “ “ な か っ た か らで ある. したが っ て, 体操 的な 意 味 の「基 本 の運動」のね らい に 競 争 や いろ いろ な 課 題 へ の 取 り組 み” を 加 え た‐ そ こ で, 今ま で 「ゲー ム」 領域 内 に 位 置 づ い て い たリ レー 種 目 が 「基 本 の運 動」 の. ポーツに目 なかに移動した(表7‐1) . 506学年の 「陸上運動」 の位置づ けは, いずれも中学校以降のス を向けている運動領域であり, 児童が 「やってみたい」 という興味や関心を満たすことに着目 して内容が構 成さ れ て いる‐ 目標 につ いて も, 自 己の 能力 に適 した課 題 を 持 つ こと を強調 して い る.. 中学校学習指導要領(表8-2)の保健体育の目標は従 19 89 ) 年 中学校学習指導要領 表8-2 平成元 ( 容 内 領 域 長距離走及び障害走 短距離走・リレー ァ , 陸上競技 イ 走り幅跳び及び走り高跳び. 内容の取扱い 《選択について》 ・第1学年においては ,体操, 陸上競技ともにすべて生徒に履修させる。 ・第2学年においては, 体操については, すべての生徒に履修させる こと。 器械運動、陸上競技、水泳はこれらのうちから2をそれぞれ選択 して履修できるようにする。 ・第3学年においては, 体操については, すべての生徒に履修させる こと。 器械運動、陸上競技、水泳はこれらのうちから1または2 をそれ ぞれ選択して履修できるようにする。 ・陸上競技の運動にっいては, ァ及びイに示すそれぞれの運動のうち から選択して履修させることができること。 (小野, 2 001 ). 表8-3. 9 )年 198 平成元年(. 内 領域 陸上競技 ァ兄総 ィ. 高等学校学習指導要領 取 り 扱 い から選択可 ァ~ウ ウ 淑き 容. 臓. (小野,2001 ). 前とほとん ど変わりないが, 体育の第一目標はこれま での 「体力向上」 から 「技能を高め楽しさ を味わう」 こと に入れ替わった. また, 「運動の楽しさ」 に「喜び」 も加わり, より質の高いところでの運動の特性にふれ る こ と をね ら い と した. この こ と か ら 「楽 し い 体 育」 にさ らに拍 車 が か か っ て いる こ と がう か がえる.. 陸上競技領域には, 従前より, さらに選択について 弾力化された‐ また, 陸上競技の目標についても, 「自 己の能力に適した課題を持つ」 ことを強調している. 高等学校学習指導要領(表8-3)の改訂にあ たって, 小・中学校とその方針は変わりない. それは, 高等学 校進学率が9 4%を超え, 中学校からの一貫教育として の性格を持つようにな っていた. 社会へ対応できる生 徒をはぐくむために高等学校の体育教育の方針として, 個性を生かす教育の充実 と生涯体育・スポーツの基礎. 作 り の 観 点 を い っ そ う 重 視 したこと にあ る‐ 保 健 体育 の 目標 に 「計 画 的 に」 と明 示 して生 涯ス ポ ー ツ へ の基. 盤づくりを強調している‐ 陸上領域について, 従前の学習指導要領では, 「陸上競技」 の一文であったが, 今回は競走, 跳躍, 投てきの走・跳o投になっている. しかし, これらの運動内容も選択域の中に組み込ま れ, 小学校からの一貫的な運動体系の習得が難しいことがわかる‐ 以上, 平成元年に全面改訂された学習指導要領について検証した. 平成元年の指導要領改訂は, 昭和50年 代の指導要領の基本方針を受け継 ぎ, さ らに内容の大綱化や弾力化が推 し進められた. また, 平成3 991 ) 年, 学習指導要録の改訂から新しい学力観が提唱され, 体育の学力とは何かが論議さ れた. 学習指 ( 1 導要録に示された観点別学習状況では, 従来の 「技能」「知識・理解」「関心・態度」 の!剛序で3つの観点だっ たが, 今改訂では 「関心・意欲・態度」「思考・判断」 「技能」「知識・理解」 の順序で4つの観点になり, 体 育の学力も技術や知識の習得を後退させて, 「自分の力にあっためあてがもてるか」 などのいわゆる 「学び 方」 を学力評価基準として考えられた. 児童・生徒の関心が引きやすい教材や教具が開発やめあて学習や問 う教えるか」 を追及し, 「運動・スポーツの 題解決型学習など, 学 び方の実践などの研究が多く見られ, 「ど ・ 何を教えるのか」 は徹底されなかったと言える.. 1 51.

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