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「繊維」にかかわる家庭科教科書の分析 : 「 繊維一覧表」の変遷

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Academic year: 2021

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(1)Title. 「繊維」にかかわる家庭科教科書の分析 : 「 繊維一覧表」の変遷. Author(s). 松田, 美帆; 増渕, 哲子; 森田, みゆき. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 68(2): 397-406. Issue Date. 2018-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/9642. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第68巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 68. No.2. 平 成 30 年 2 月 February, 2018. 「繊維」にかかわる家庭科教科書の分析 ― 「繊維一覧表」の変遷 ―. 松田 美帆・増渕 哲子*・森田みゆき** 北海道教育大学大学院教育学研究科(院生) *. 北海道教育大学札幌校家庭科教育学研究室. **. 北海道教育大学教育学部札幌校被服学・生活環境工学研究室. An Analysis of Home Economics Textbooks about Fiber ― History of Tables for Fiber ―. MATSUDA Miho, MASUBUCHI Satoko* and MORITA Miyuki** Graduate School, Hokkaido University of Education, Sapporo, 002-8502 *. Home Economics Education, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education, Sapporo, 002-8502. **. Department of Engineering of Life and Environment, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education, Sapporo, 002-8502. 概 要 我々は北海道の教員養成大学の学生に,「繊維」の理解度に関する調査を行い,理解度と教 科書との関連性について示した。 こうした結果をふまえ,戦後の繊維学習がどのようであった かを教科書分析から明らかにするために, 「繊維一覧表」に着目し分析を行った。 分析は,①一 覧表の用途,②繊維の種類,③原材料の記載,④顕微鏡写真の有無の4つの観点から行った。 その結果,用途は手入れに特化したものがほとんどであったこと,繊維の種類は時代背景との 関連性も見られ,化学繊維の記載が最終的に3大合成繊維のみとなっていたこと,原材料の記 載や顕微鏡の写真の掲載がほとんどみられなかったこと等が明らかとなった。 戦後の教科書に おいても,一覧表であるからこそ示すべき,体系的なものとはなっていなかった。. 1.緒 言 現在,松田は中学校の時間講師として技術・家庭科を担当しているが,生徒が「知識として身に付いたも のを実生活で活かす」ことに課題があると感じている。 特に衣生活学習に関しては,家庭科の時数が減少し, 実習を含め,じっくりと取り組ませる時間をとることが難しくなっており,限られた時間の中で,いかに生. 397.

(3) 松田 美帆・増渕 哲子・森田みゆき. 徒に実践を伴いながら知識を身につけさせていくかが問われている。 現行中学校学習指導要領1)における指導事項は,「⑴衣服の選択と手入れ」と,「⑶(衣生活の)生活の工 夫について ア)布を用いた物の製作を通して,生活を豊かにするための工夫」である。 これらについて学 習指導要領解説2)では,衣服の選択においては「既製服を中心に取り扱う」こととし,手入れについては「中 学生が日常着として着用することの多い綿,毛,ポリエステルなどを取り上げ,…手入れにかかわる基本的 な性質を理解し…」としている。 西山ら3)によると,大学生の実態として,「吸水性や吸湿性の低い寝衣を常用している,就寝時と日常着 が一緒である」等が明らかとなっている。 衣生活学習の柱の一つは「何をどう着るか」の理解にあるが,衣 の学習の出発点である「繊維」への理解が不十分なのではないかと推測される。 人間が毛皮をまとうことからはじまった衣の文化は,動物や植物の繊維から糸を紡ぎ,布へと加工する技 術を獲得した4)。 現代,様々な化学繊維が登場する中においても,天然繊維がなくなることはない。 そして, 繊維が衣の原点であることも変わらない。 まず,「繊維」を知ることが衣生活学習にとって大前提であると 考え,我々はこれまで天然繊維としての羊毛に着目し,家庭科教材を視野に入れた検討を行ってきた。 また,これまでに北海道の教員養成大学の学生に,「繊維」の理解度に関する調査を行った5)。 内容は, 繊維に対する理解度として①衣服の繊維の特徴を理解しているか,②天然繊維の由来,③合成繊維の知識, また,毛についての知識と関心度として,①繊維の性質,②毛を含む衣服の所有状況,③それを毛と判断し た根拠,④毛を含む衣服の取り扱い(洗濯)経験である。 その結果,繊維とは何かを理解していない,繊維 に対する学習が不十分であることが明らかとなった。 そこで,彼らの使用した小・中・高等学校の教科書に 「繊維」とは何かについて, ついて, 「繊維」, 「毛」に関する記述分析をおこなった結果,小学校教科書6)では, まったく触れられておらず,中学校家庭科教科書7)においても教科書上の「繊維」の定義が行われないまま であった。 また,高等学校教科書で特徴的だったことは,繊維の記述が突然増え,化学繊維の中でも改良し た新繊維の記述が大きく目立っていたことである。 このような教科書で学ぶことにより,「繊維」への理解 が不十分となることが推測された。 小学校家庭科教科書よりも「繊維」に関して多少踏み込んだ記述をしているのが6年社会科の教科書8)だ が,その索引には, 「繊維」は掲載されない。 中学歴史教科書9)の索引には,「製糸業」「生糸」「綿花」など は掲載されているが,「繊維」はやはり掲載されない。 本来,「繊維」をキーワードにできる教科は家庭科だ と考える。 そこで本論文では,戦後の家庭科における繊維学習がどのようであったかを,教科書分析から明らかにす る事とした。 繊維全体への理解を強調しつつ促そうとしているのが「繊維一覧表」ではないかと考え,中学 校教科書の「繊維一覧表」に着目し分析を行った。. 2.教科書分析 2−1 分析対象 昭和27年から平成14年までの期間に発行された,開隆堂出版の中学校教科書を分析対象とした。開隆堂の 教科書は戦後から今日まで唯一継続発行されてきたが,同一出版社の記述変遷を追う目的から開隆堂に限定 した。 なお,現在は開隆堂,東京書籍,教育図書の3社から中学校教科書は発行されているが,東京書籍は 昭和53年から発行され,教育図書は昭和20~30年代に発行されたが,その後中断し平成24年に再発行されて いる。. 398.

(4) 「繊維」にかかわる家庭科教科書の分析. 表1 分析教科書. 分析した開隆堂の教科書と「繊維一覧表」が掲載されている箇所を表1に示す。 2−2 分析方法 分析の観点として,①一覧表の用途(掲載箇所:「手入れ」,「製作」等),②繊維の種類,③原材料(繊維 の由来・原料)の記載,④顕微鏡写真の有無,の4点を取り上げた。 また,化学繊維や洗濯機の普及などの 時代背景とも関連付けながら分析を行った。. 3.結 果 昭和27年発行の教科書に掲載されていたものを表2に示す。 一覧表は「手入れ」の箇所に掲載されていた。 化学繊維が普及していなかったため,天然繊維のみの記載となっている。 表の左側が,繊維の乾いたときを 表2 繊維の強さの変化と比較表(発行年 昭和27年 生活の喜び 家庭生活1 職業教育協会編 開隆堂). 左:乾いた繊維を100とした比較. 右:乾いたもめん・麻を100とした比較. 399.

(5) 松田 美帆・増渕 哲子・森田みゆき. 100として水につけた時の強さを示し,右側が乾いた もめん・麻を100としたときの各繊維の比較表である。 また,図1のような繊維に関する絵が扉頁に掲載さ れていたが,これには説明は記述されていなかった。 昭和32年発行の教科書に掲載されていたものを表3 に示す。 掲載箇所は「手入れ」である。表の縦列に, 織物の原料せんい,横列に,せんたくの温度等を示し, 天然繊維の綿,羊毛,絹に加えてレーヨン,アセテー ト,ナイロン,ビニロンなどの化学繊維が登場してい るが,繊維の由来・原料や構造を知ることができない 表となっている。 昭和36年発行の教科書に掲載されていたものを表4 に示す。 裏見返しに掲載されており,繊維の由来・原 料や顕微鏡写真,燃やしてみたときの写真などが加わ り, 体系的に見る事ができるようになっている。 また, 化学繊維に,アクリル,ポリエステルが登場している。 昭和49年発行の教科書に掲載されていたものを表 5,表6に示す。「手入れ」と「製作」の2箇所に掲. 図1 発行年 昭和27年 開隆堂 扉頁掲載. 載されていたが,再び昭和32年のような一覧表に戻っ 表3 せんいの性質(発行年 昭和32年 新版中学職業・家庭1 全国職業教育協会編 開隆堂). 400.

(6) 「繊維」にかかわる家庭科教科書の分析. 表4 発行年昭和36年 技術・家庭 女子用1 全国職業教育協会編 開隆堂 裏見返し掲載. 401.

(7) 松田 美帆・増渕 哲子・森田みゆき. 表5 繊維の種類と性質(発行年 昭和49年 技術・家庭 女子用1 全国職業教育協会 開隆堂). ている。 表5( 「製作」)は,縦列に性質,横 列に種類を示している。 性質に関して「大き い」 「強い」などの羅列となり,昭和32年と 同様,原料等の記載はない。 繊維も限定した もののみ記載している。 表6(「手入れ」)で は, 縦列と横列が入れ替わり,表5(「製作」) と関連させて比較しにくい表となっていた。 (表6中の手書き文字は指導書のみの記載で ある。) 次に昭和56年発行の教科書に掲載されたも のを表7と表8に示す。 表7-1,表7-2 は「製作」の箇所に,表8は「手入れ」の箇 所に掲載されていた。 いずれも縦列に種類を 示している。 表7-1( 「製作」)は,吸湿性,ひっぱり に対する強さ等の特徴を示しているが,繊維 の原料(由来) ,構造などの記載がないため, この特徴と繊維の由来・原料,構造を関連づ けて理解することができない。 表7-2も同 様である。 加えて,表8(「手入れ」)では, 比重や水分率の数値と,繊維の由来・原料,. 402. 表6 繊維の種類と洗たくに関係あるおもな性質 (発行年 昭和49年 技術・家庭 女子用2 全国職業 教育協会 開隆堂).

(8) 「繊維」にかかわる家庭科教科書の分析. 表7−1 繊維の種類と性質(発行年 昭和56年 技術・家庭 上巻 開隆堂). 表7−2 繊維の種類と性質(発行年 昭和56年 技術・家庭 上巻 開隆堂). 表8 繊維の種類と性質(発行年 昭和56年 技術・家庭 上巻 開隆堂). 403.

(9) 松田 美帆・増渕 哲子・森田みゆき. 構造を関連づけて理解することができない。 平成5年発行の教科書に掲載されていたものを表9に示す。「手入れ」の箇所に掲載されていたが,やは り繊維の由来・原料,構造は記載されず,表の形態はまったく変わらない。 天然繊維の記載は綿と毛のみと なり,化学繊維では3大合成繊維とレーヨンの記載のみとなった。 平成14年発行の教科書に掲載されていたものを表10に示す。 繊維に関する性質の項目は減少した。 繊維の 由来・原料,構造から繊維を理解することはできないままである。 天然繊維には再び麻と絹が登場するが, 化学繊維は3大合成繊維のみの記載となった。 表9 繊維の種類と性質(発行年 平成5年 技術・家庭 上 開隆堂). 表10 繊維の種類と洗たくにかかわる性質(発行年 平成14年 技術・家庭 家庭分野 開隆堂). 4.考 察 4つの観点による分析をまとめたものを表11に示す。 ①一覧表の用途 昭和49年発行と昭和56年発行の2期間, 「製作」の箇所に一覧表が掲載されたが,それ以外は,ほとんど が「手入れ」の箇所に掲載されていた。唯一,昭和36年発行の教科書では用途は限定されず,繊維の資料と して掲載されていた。 ②繊維の種類 一覧表への化学繊維の登場には,例えば昭和30年代の化学繊維の普及に伴って,昭和36年にアクリルやポ リエステルが掲載されている等,時代背景との関連がみられた。 年代を追うごとに,化学繊維の記載が減り,. 404.

(10) 「繊維」にかかわる家庭科教科書の分析. 表11 4つの観点による分析. 最終的に,3大合成繊維のみとなっていた。 ③原材料(繊維の由来・原料)の記載,④顕微鏡写真の有無 一覧表には,繊維の由来・原料,顕微鏡写真とも,記載はほとんどみられなかった。 繊維には,化学構造が天然繊維に類似した化学繊維もあれば,原材料に天然繊維を用いて製造・合成する 化学繊維もある。 それらに由来して特性に違いが出てくるが,分析した一覧表のほとんどが,原料・由来と 繊維の特性を関連づけて理解することができないものであった。 一覧表とは, “一目でわかるもの”である。  表にすることで,繊維全体を見渡すことができるはずであるが,一覧表が登場して以来,その示し方は,一 貫して“繊維の種類に対するある現象の性質”を示すのみであった。 そしてそれは,ほとんどが「手入れ」 に特化しており, 「何をどう着るか」ということにつながらない。 また,一覧表に,繊維の由来・原料,顕 微鏡写真などの記載もほとんどなく,従って,由来・原料,構造から繊維を知ることができないものである ことは,現在と変わらない。 そのため,科学的に理解する事ができず,一覧表を暗記することで知識として 取り入れることになると推測される。 実際に何をどう着るかということに発展していかないのはここに関係 してくるのではないだろうか。 同じような問題は,一覧表を掲載していない小学校家庭科教科書6)にもみられた。 また,現行の小学校教 科書10)の衣生活の記述でも同様で,小学校の衣生活では基礎縫いの技術習得が中心課題となっているが,衣 生活学習の基礎に位置づくはずの繊維は学習対象とはされていない。 そのために,多少は記述がある布の構 造の理解につながらず,被服整理のヒントにもつながらない。 また,季節に応じた着方の学習があるが,繊 維の性質を度外視した奇妙な内容である。 例えば,涼しい着方,暖かい着方で例示されるのは,開口部の位 置や風の通しやすさ,布の厚さ,重ね着など衣服内気候としての空気の移動や空気層の形成であり,繊維の 性質は一切取り上げられない。 このような記述の問題は,冒頭に挙げたような大学生の繊維理解の実像にあ らわれているのではないだろうか。 「繊維」を知ることは,衣の学習の出発点であるが,「繊維」を知る,理解するためには,「繊維」とはま. 405.

(11) 松田 美帆・増渕 哲子・森田みゆき. ず何であるのか,そして,どのような由来・原料から成り,どのような化学構造によってそうした特性が生 じるかがつながり,関連づけられてはじめて理解できるのではないだろうか。 そして,それが“一目でわか る”のが一覧表の役割である。 戦後から途切れることなく掲載されてきた繊維に関する一覧表を活用して, 「繊維」への理解を促すことが重要であると考える。 そのためには,用途別ではなく,繊維全体を俯瞰でき る体系的なものであるべきだと考える。. 5.総 括 現在の大学生の実態と教科書分析からみえてきた結果をふまえ,戦後の繊維学習がどのようであったかを 中学校教科書から明らかにするために,繊維一覧表に着目し分析を行った。 分析は,一覧表の用途,繊維の 種類,原材料の記載,顕微鏡写真の4つの観点から行った結果,用途は手入れに特化したものがほとんどで あったこと, 繊維の種類は時代背景との関連性も見られ,化学繊維の記載が最終的に3大合成繊維のみとなっ ていたこと,原材料の記載や顕微鏡の写真の掲載がほとんどみられなかったこと等が明らかとなった。 これ らは, 現在の一覧表にも共通する特定の示し方である。 戦後から見られた,このような“一部のみを切り取っ た一覧表”では,断片的な学びにとどまってしまうのではないかと推測される。「繊維」全体を知ることで, 着方,手入れ,製作のすべてにつながり関連づけられると考える。「繊維」を知ることから始まる衣生活学 習には,そのような体系的な「繊維一覧表」の存在が必要不可欠である。. 【引用文献】 1)中学校学習指導要領,文部科学省,平成20年3月告示 2)中学校学習指導要領解説 技術・家庭編,文部科学省,平成20年9月,58-65 3)西山加奈,水野一枝,水野康,久慈るみ子,井上美紀,難波めぐみ,東北の学生の寝衣に関する実態調査,第60回日本家 政学会 東北・北海道支部 研究発表会要旨集,2016 4)西村三郎,毛皮と人間の歴史,紀伊國屋書店,2003,13-47 5)増渕哲子,松田美帆,森田みゆき,「繊維」を基礎とする衣生活学習,家政誌 No.11,Vol.68,2017,588-597 6)櫻井純子他,小学校 わたしたちの家庭科5・6,開隆堂,2005/渋川祥子他,新編 新しい家庭5・6,東京書籍, 2005 7)中間美砂子他,技術・家庭[家庭分野],開隆堂,2006/佐藤文子,渡辺彩子他,新編 新しい技術・家庭 家庭分野, 東京書籍,2006 8)北俊夫他,新編 新しい社会6上,東京書籍,2015,106-107,114 9)子どもと学ぶ歴史教科書の会,ともに学ぶ人間の歴史 中学社会歴史分野,学び舎,2015,168-169 10)渡邊彩子監修,文部科学省検定済教科書 新編 新しい家庭5・6,東京書籍,2015,76,105. (松田 美帆 北海道教育大学札幌校大学院生,札幌市立丘珠中学校(非)) (増渕 哲子 北海道教育大学札幌校准教授)  (森田みゆき 北海道教育大学札幌校教授)  . 406.

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