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非デスマス形の機能による分類方法の検討 : 情意的態度と聞き手目当て性の観点から

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非 デスマ ス形の機能に よ る分類方法の検討

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情意的態度 と 聞き手目当 て 性の観点から 一

An Investigation of Classification M ethods According to the Function of Non-

desu/masu Form

L of Japanese : From the Perspective of A ffective Attitude and

Addressing Level

岡 崎

渉*

OKAZAKI Wataru

デスマ ス形 ・ 非 デスマ ス形は, 文末に 「 です / ます」 が付加 さ れるか どう かと いう 形式上の特徴によ り 区別 さ れるが, 機能面 か ら 見 た場合, 非 デス マ ス形は必ず し も 一 つのス タ イ ル と は言え ない。 Cook (2002) は, 非 デス マ ス形 にはイ ン フ ォ ーマ ルス タ イ ル (IF) と イ ンパ ーソ ナ ルス タ イ ル (IP) が混在す る こ と を指摘 し , そ れぞれの典型的 な特徴 を挙げ て い る。 し か し , 非 デスマ ス形 を話 し手の 「情意的態度」 と 「聞 き手目当 て性」 と いう 機能面から見た と き, 独話的発話 と 呼ばれる タ イ プは IF ・ IP のいず れに も該当 し ない。 そ こ で本研究では, 非 デスマ ス形 を IF ・ IP ・ 独話的発話に分類す る こ と は妥当 な のか, ま た, こ の三 タ イ プは どのよ う な基準 に よ り 分類 で き る のか, 検討 を行 っ た。 デ ー タ には, デス マ ス 形が主に使われる二者間の雑談 (11組, 約290分) と , 非 デスマ ス形が主に使われる二者間の雑談 ( 6 組, 約160分) を用 い た。 そ の結果, タ イ プ間 の中間的 な発話は一部見 ら れた も のの, 非 デス マ ス形は IF ・ IP ・ 独話的発話の三 タ イ プに分 類可能 で あ る こ と が認め ら れた。 ま た, 主 に 「裸の非 デス マ ス形」 と , 非 デス マ ス形発話 に用 い ら れた 「補助動詞」 「文 末詞」 「文末の上昇音調」 「疑問詞」 の用法 を分析す る こ と で, 非デスマ ス形の三 タ イ プへの分類基準 を作成 し た。 キ ーワ ー ド : ス タ イ ル シ フ ト , 非 デ ス マ ス形 , イ ン フ ォ ーマ ルス タ イ ル, イ ンパ ー ソ ナ ルス タ イ ル, 独話的発 話 Key words : style shift, non-desu/masu form, informal style, impersonal style, soliloquy

1 . 非 デ ス マ ス形に混在 す る異 な る タ イ プ 1.1 一つの ス タ イ ル と し て の非 デ ス マ ス形 日本語には, デスマ ス形 と 非 デスマ ス形 と い う 二つの ス タ イ ル ' があ り , 一般的 に, 相手 と の上下関係や親 疎 関係 , 場面等 に応 じ て使い分け ら れる と さ れて い る ( 日本語記述文法研究会, 2009) 。 し か し , 実際には日上 の人や初対面の人 と デスマ ス形 で話す と き で も , と き お り 非 デスマ ス形が用い ら れる。 こ のス タ イ ル シ フ ト と 呼 ばれる現象 につい ては, 従来多 く の研究がな さ れてお り , その主 な機能 と し て, 相手に対す る親 し さ の表示や心理 的距離の短縮, 堅苦 し い雰囲気の緩和 と い っ た情意的機 能が挙げら れてい る (生田 ・ 井出, 1983; 三牧, 2000; 陳, 2003; 廣瀬 ・ 長谷川, 2010 等) 。 と はいえ , シ フ ト は自由 に な さ れる わけ ではな く , 非 デスマ ス形の中で も特定の特徴 を も っ た発話が, 特定の 発話環境 におい て用い ら れる傾向が見 ら れる。 例え ば, 終助詞の 「 ね」 「 よ」 はほ と ん ど用 い ら れない こ と (伊 集院, 2004) や, 情報要求 と その応答 を行 う 際には用い ら れに く い こ と (Megumi, 2002) 等で あ る。 こ のこ と は, 非 デス マ ス形の発話には, 何 ら かの点 で異 な る タ イ プが混在 し て い る こ と を示 し て い る。 非 デ ス マ ス形 は 「普通体」 「常体」 「 ダ体」 と も呼ばれ, 「です / ます」 が 用 い ら れない こ と に よ り 丁寧 さ の欠如 を表す一 つのス タ イ ルと し て扱 われてい る。 だが, 同 じ非 デスマ ス形であ っ て も , 実際の運用 では異 な る も のと し て用い ら れてい る 以上, どのよ う な観点 によ り 区別 で き るのかを検討す る 必要があ る。 1 .2 イ ン フ ォ ーマ ル ス タ イ ル と イ ン パ ー ソ ナ ル ス タ イ ル M aynard (1991) は, 雑談 と 小 説, 随筆 を デー タ に, 非 デスマ ス形の特徴 を分析 し た結果, 非 デスマ ス形は, 強い意識 を伴 っ て聞 き手 / 読 み手 に直接宛 て ら れる も の と , 聞 き手 / 読み手への意識が希薄であ り , ほと ん ど話 し手 / 書き手自身 に宛て ら れる も のに大別 さ れる と し た。 Maynard (1991) を踏ま え た Cook (2002) は, 小学 校での授業やイ ン タ ビュ ー会話, 新聞記事等 を分析 し , 非 デス マ ス形 にはイ ン フ ォ ーマ ルス タ イ ル ( IF) と イ ン パ ー ソ ナ ルス タ イ ル (IP) が混在す る こ と を指摘 し た。 IF は, 聞 き手 に対す る話 し 手の態度や気分, 対人関係 と い っ た情意的態度 を表す も ので あ り , 例 (1) のよ う な 非 デスマ ス形発話 を指す。 * 兵庫教育大学大学院教科教育実践開発専攻言語系教育 コ ース, グロ ーバル教育セ ンタ ー 助教 平成29年10月12 日受理

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例(1) 【Cook (2002: 151-152) 】 2

01 H: 何が一番お も し ろか っ た ? 02 T: さ っ き話 し たよ。 03 H: で れ一 と し て ね, ぶんな ぐ っ て も 怒 んな い の。 こ れは家族の会話 であ るが, 三つの非 デスマ ス形発話 だけ を見 て も , 両者が近 し い関係であ る こ と がう かがえ る。 IF は, こ のよ う に聞 き手 に対す る情意的態度が表 示 さ れる こ と で, 聞 き手 と 親 し い関係, 心理的に近い関 係であ る こ と が指標 さ れる。 その典型的な特徴 と し ては, 終助詞や文末の上昇音調, 母音の引 き伸ばし , 倒置 (例 「 おい し い, こ れ。」) , 音の縮約 (例 「読ま ない」 → 「読 ま ね一」 ) と い っ た affect key と 呼ばれる要素の共起す る点 が挙げ ら れてい る。 IP は, 話 し 手の意識が, 聞 き 手 よ り も 発話の情報内 容に向け ら れてい る こ と が指標 さ れる非 デスマ ス形発話 で あ る。 例 (2) は, 焼鳥屋 で イ ン タ ビ ュ ー を行 っ てい る イ ン タ ビ ュ ア ー と 来店客 に よ る やり と り で あ る。

例(2) 【Cook (2002: 157) 】

( I : イ ン タ ビユアー, c 2 : 来店客) 01 I: あの, 焼き鳥の魅力は どう い う と こ ですか ? 02 C2: あ, や っ ぱり 安 く て おい し い んで , おい し い か ら。 03→I: 安 く ておい しい。 04 自分 で あの作 つち やお う な んて気は ? 05 C2: あり ません。 06→I: ない。 イ ンタ ビユアー の質問 (01, 04行目) に来店客が答え て い る が (02, 05行目) , イ ン タ ビ ュ ア ーは そ の応答 を 簡潔に言い換え ている (03, 06行日) 。 この03, 06行目の よ う な発話が IP に当 た る。 例の非 デス マ ス形発話は, 相手 と の親 し さ や心理的距離の短縮と い っ た対人関係 を 表 し てい るわけ ではな く , 情報内容のみが提示 さ れてい る。 IP の形態的特徴 と し ては主に, 裸の非 デス マ ス形 が用い ら れる。 IF ・ IP は以上の よ う に特徴づけ ら れる が, で は, 非 デス マ ス形発話は そ れら の特徴 だけ で IF ・ IP に区別 で き る だ ろ う か。 終助詞等の affect key の有無が大き な目 安 に な ろ う が, affect key がない場合 で あ っ て も , 必ず し も IP にな る わけ ではない。 岡崎 (2017) は, デス マ ス形主体 で あ る初対面二者間の雑談 を デー タ に用 い , シ フ ト さ れる非 デスマ ス形発話の情意的態度が どのよ う に 表示 さ れてい る のか を調べ てい る。 例 (3) は, 会話の収 録 を実施 し た大学に初めて立 ち入 っ た二人のやり と り で あ る。 FO2は, こ の大学が思 っ た以上に広 く , 建物 も豪 華 であ っ た こ と から , 旅行に来たよ う な気分であ る と 興 奮気味 に話 し てお り , F01 も そ れに同調 し てい る。

例(3) 【岡崎 (2017: 27) 】

01 FO2: 若干 ( ん一) , プチ旅行 [hhhh。 02→F01: [ プチ旅行。 03 そ う (hhhh) , そ う さ っ き も その話 し て 04 (hhhh) , ち よ つと 旅行, ( ね一) し た気分で。 05 FO2: な んか, 旅館の部屋か ら見 え る 一 hhhh 06 (hhhh) 。 07→F01: 旅館の部屋。 08 FO2: そ う ですね一。 F01 に よ る02行目 と 07行目 に affect key は共起 し て お ら ず , 情報内容のみが提示 さ れて い る ので , IP の よ う に思え る。 だが, こ れらは直前の相手発話の一部 を繰り 返 し た も ので あ り , いずれも 繰り 返 し を行 う こ と で冗談 と い う 文脈が引 き 立 て ら れ, ま た, FO2への同調が示 さ れてい る。 こ のよ う な場合の情意的態度を岡崎 (2017) は, 発話が特定の連鎖上の位置に置かれる こ と によ り 生 じ る も のであ る と し てい る。 非 デスマ ス形発話 を区別 し よ う と し た と き , 発話単体のみで判断す るこ と はで き な い こ と が窺え る。 1 .3 独話的発話 Cook (2002) は, 非 デス マ ス形 に IF ・ IP が混在 し て い る こ と を指摘 し たが, あ ら ゆる非 デス マ ス形がこ の二 タ イ プ に分類 で き る と し て い る わけ で は な い。 IF ・ IP のいず れに も 該当 し ない と 思 われるのが 「独話的発話」 であ る。 本稿での 「独話的発話」 と は, 会話におい て他 者に聞かれるこ と を承知の上で発せら れる 「聞き手不在」 (仁田, 1991) の発話である。 例(4) に三牧 (2000) から 引用 し た独話的発話の例 を挙げ る。 こ れは母語話者 と非 母語話者に よ る雑談で あ る。

例(4) 【三牧 (2000: 44) 】 3

01 Ns じ や, 失礼ですけ ど, 今, おい く つですか ? 02 NNS あ, 22歳 (//です) 。 03→NS //22歳。 04 NNS そ う 。 ふふ。 05→Ns {後方に大き く のけ反り , 上を仰ぎながら } あれ, 若い な あ。 何 で や ろ。 06 NNS ふふふ。 07→NS {後方に大き く のけ反 っ たま ま} 22 ? NS は01行日 で デス マ ス形に よ り 質問 し てい るが, 03 行目の 「22歳」 は, 02行目の発話の一部をそのまま繰り 返 し た非 デスマ ス形 で あ り , 情報内容へ意識が向け ら れ てい る こ と が指標 さ れる IP と 解釈 で き る。 一方, 05, 07行目の発話は, 聞 き 手 に直接宛 て ら れない と い う IP の特徴 と , affect key で あ る終助詞 「 な ( なあ)」 や文末 の上昇音調 と い っ た IF の特徴 をあわせも っ てお り , IF ・

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IP の どち ら に も該当 し ない。 Cook (2008a) では, IP の用法の中に独話的発話も含 め て あ る が, こ の点 につい て詳述は な さ れてお ら ず, ま た, 取 り 上げ ら れて い る IP の例は裸の非 デス マ ス形 に 限 ら れてい る。 そのため, 終助詞等の affect key が付加 さ れた場合は, c ook (2002) に従え ば, 終助詞 と 共起 し てい る こ と が特徴 の一 つ で あ る IF と い う こ と にな る。 し か し , IF は日上の者や疎の関係の者に対 し ては通常 用 い る こ と が で き な い一方 で , 独話的発話は, 三牧 (2000) で も 示 さ れて い る よ う に , デ ス マ ス形主体の会 話で も 頻繁 に用 い ら れる。 IF と 独話的発話のこ う い っ た違いは, 発話が聞 き手に宛 て ら れてい る か どう かの違 い に よ る た め, 終助詞が付加 さ れて い て も 即座 に IF と 見 なす こ と はで き ない。 以上のよ う に独話的発話は, 聞き手に直接宛て ら れず, かつ話 し手の情意的態度が表示 さ れる と い う 点 で, IF ・ IP のい ず れと も 異 な る。 非 デ ス マ ス形発 話 に は, 少 な く と も IF ・ IP ・ 独話的発話の三 タ イ プが混在 し てい る と 言え るが, では, すべての非 デスマ ス形発話が, こ の 三 タ イ プのい ず れかに分類 さ れる だ ろ う か。 ま た, 分類 可能な ら どのよ う な方法によ り 分類で き る だ ろ う か。

2 . 研究課題

本研究の課題は以下二点 と す る。 1 ) 非 デスマ ス形の発話は, IF ・ IP ・ 独話的発話に分類 可能か。 2 ) 非 デス マ ス形の発話は, どのよ う な方法 によ り IF ・ IP ・ 独話的発話に分類で き る か。 3 . デ ー タ 用い る デー タ は, 特定の制度的 な文脈に依存 し ない会 話 であ る雑談が適 し てい る。 制度的 会話 4 の場合, 非 デスマ ス形発話の理解が制度的文脈に依存す る ため, 雑 談の方がよ り さ ま ざま な タ イ プの会話 に一般化 で き る可 能性 を も つ ためで あ る。 デー タ には デス マ ス形主体の会話 (以下 , デス マ ス形 会話) と , 非 デスマ ス形主体の会話 (以下, 非 デスマ ス 形会話) を用い た。 デスマ ス形会話 を用い るのは, シフ ト さ れる非 デ ス マ ス形 には IF の使用 が控 え ら れる で あ ろ う こ と から , IP ・ 独話的発話の特徴 を浮き彫り にす る の に適 し てい る と 考え た た め で あ る。 非 デ ス マ ス形 の使 用 に制約がない非 デスマス形会話 と比較 し つつ, IF ・ IP ・ 独話的発話それぞれの特徴, 及び分類基準 を検討す る。 用いたデータ セ ッ ト は, 筆者が2011年に広島県の大学 で採集 し た 『初対面同学年の二者によ る雑談』 に加え, 他の研究者が2010年から2011 年にかけ て兵庫県の大学で 採集 し た初対面二者間の雑談, そ し て 『BTSJ によ る日 本語話 し言葉 コ ーパス』 (宇佐美, 2007a) 所収の二者間 の雑談であ る。 デスマ ス形会話はすべ て初対面 であ る11 組 (約290分) に よ る も ので あ り , 非 デス マ ス形会話は 友人間会話 4 組と 初対面会話 2 組 (約160分) によ る も のであ る。 デスマ ス形会話のデー タ 概要 を表 1 に示す。 協力 を得た会話参加者は, 男性が 4 名, 女性が14名,

計18名であった。 内 4 名 (MO3, F01, FO2, FO4) は2 度

会話に参加 し てい る。 正確 な年齢は不詳 な者 も あ るが, 概ね年齢の近いペ アであり , 大学生, 大学院生, 社会人 か ら な る。 P-01 ~ P-08が, 他の研究者が採集 し たデー タ であり , P-09~ P-11が筆者の採集 し たデータ で あ る。 前 者に つい ては, デ イ ス カ ツシ ヨ ンに参加 し て も ら う と い う 名目で来 て も ら っ た初対面 と な る参加者二名に, 同 じ 筆者が採集 し た 3 組の会話は, 大学内のカ フ ェ で収録 し た も ので あ る。 協力 者 には カ フ ェ に直接来 て も ら い , 同 じ テ ー ブルに座 っ た初対面 と な る二名 に, 内容は何で も 良いので50分間自由に話 し て も ら う よ う 伝え た。 P-11の デ ー タ に つ い て は , IC レ コ ー ダーの ト ラ ブ ルに よ り , 会話開始から20分ほ ど経過 し た後の部分のみを デー タ に 用い てい る。 表 1 デ ス マ ス形会話のデ ー タ 概要 会話 No. ペアの組み合わせ (M: 男 / F: 女) 会話 時間 (分) p-01 F01 (社会人 ・ 27歳) FO2 (社会人 ・ 26歳) 22 P-02 FO3 (博士 1 年 ・ 20代半 ば) FO4 (修士 2 年 ・ 20代後 半) 19 P-03 FO4 FO7 (社会人 ・ 20代後半) 22 P-04 Me t (博士 2 年 : 30代半 ば) FO5 (修士 1 年 ・ 40代) 18 P-05 MO2 (学部 2 年) MO3 (学部 4 年) 22 P-06 MO3 FO6 (学部 1 年) 22 P-07 MO4 (学部 4 年) FO2 17 P-08 F01 FO8 (学部 4 年) 18 p-09 FO9 (学部 4 年) FIO (学部 4 年) 49 p-10 F11 (学部 4 年) F l 2 (学部 4 年) 50 p-11 F l 3 (学部 4 年) F l 4 (学部 4 年) 33 表 2 非 デ ス マ ス形会話のデ ータ 概要 5 コ ーノ

ス番号 会話 コ ー ド 性別 関係 会話 時間 (分) 音声 デ ー タ N-01 (59) NF01-NF02 (BF02-FO2雑談) 女一女 友人 14 N-02 (63) NF03-NF04 (BF03-FO3雑談) 女一女 友人 15 N-03 (77) NM 01-NM 02 (BMO4-MO8雑談) 男一男 友人 15 N-04 (80) NM 03-NF05 (BMO5-FO9雑談) 男一女 友人 20 N-05 NF06-NF07 初対面 女一女 48 有 N-06 NF08-NF09 女一女 初対面 55 有 表 2 は非 デスマ ス形会話のデー タ概要で あ る。 会話参 加者はすべて学生であり , 友人間会話が 4 組, 初対面会

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話が 2 組であ っ た。 学内の個室やカ フ ェ で自由 に話すよ う 求 め, 雑談 を行 っ て も ら っ た も のであ る。 初対面の 2 組については, デスマ ス形会話 P-09, P-10, P-11と同様 の手続き で採集 し た。 分析には書き 起こ さ れた文字化資料 を用い, 適宜音声 デー タ も 参照 し たが, 非 デス マ ス形会話 で音声 デー タ を 有 し てい る ペ アは, 初対面会話の 2 組のみで あ っ た。

4 . 方法

4.1 ス タ イ ル及び非 デ ス マ ス形の分類 4.1.1 発話文の認定 本研究 では, ス タ イ ルを認定す る単位 を 「発話文」 と し, 統語的単位である 「文」 を基に区分 し た。 具体的な 認定方法については, 基本的に宇佐美 (2007b) に従っ た。 相違点 と し て, 宇佐美では相づ ち的 な発話や笑い も, 前後に間があ る場合は発話文 に含めてい るが, 本研究で は含 めな か っ た。 相づ ち的 な発話 と は, 「 あ 一 / へ 一 / え」 と い っ た フ イ ラ ーや, 「 な るほ ど」 「 そ う / う ん / は い / いや / いえ」 等の相づ ち, 感嘆詞, 応答詞等 を指す。 こ れら は三牧 (2002) の言う よ う に, 質 ・ 量 と も に他の 実質的 な発話 と 同等の も の と 見 なす こ と はで き ない ため であ る。 し か し , 「 そう / う ん / はい / いや / いえ」 と い っ た ス タ イ ル上の対立 を も つ発話は, 構文 と し て疑問 文 であ り , かつ情報要求 と し て用い ら れてい る発話に対 し て, 応答詞 と し て単独で用い ら れた場合は, 他の実質 的な発話と同等のも のと 見な し, 発話文 と し て認定 し た。 「 そ う ね」 「 そ っ か」 のよ う に終助詞 を伴 っ た形の場合, 非 デスマ ス形 であ る こ と が明示 さ れる ため, 発話文 と し て認定 し た。 そ の他 に , 「 は じ めま し て / す みま せ ん」 と い っ た定型的 な挨拶 も , ス タ イ ル上の対立 を も た ない も のは発話文 に含 め なか っ た。 4.1 .2 ス タ イ ルの分類 認定 さ れたすべての発話文 を, 各発話文の文末形式 に よ り , 「 デス マ ス形」 「非 デスマ ス形」 , あ るいは 「 中途 終了」 のいず れかに分類 し た。 ス タ イ ルは節末 で も 選択 が可能 だが, 本研究で用い たデー タ に, 節末で デスマ ス 形が用い ら れる こ と はほぼな か っ た ため, 本研究では発 話末形式のみを研究対象 と し た。 『BTsJ によ る日本語話 し 言葉 コ ーパ ス』 に所収の デー タ に対 し て も , 上記の本 研究におけ る発話文の定義 を適用 し た。 本研究におけ る 「 デスマ ス形」 は, 発話末が 「 です / ます」 , ま たは, 「 です / ます」 に終助詞, あ るいは終助 詞的 に用い ら れた接続助詞が付加 さ れてい る発話文 であ る。 終助 詞的 に用 い ら れた接 続助詞 と は, 「 ので / か ら / け ど / が / し」 を指す。 こ れら が付加 さ れた発話は, 内 容的 には完 結 し た発話 と 見 な さ れ得 る た め ( 白 川, 2009) , 主節 に当 た る発話が直前にあ り , 倒置 さ れてい る と 見 なせ る場合 を除き , 接続助詞に前接す る発話末形 式 に よ っ て デス マ ス形 か非 デス マ ス形 に分類 し た。 「非 デスマ ス形」 は, 発話末に 「 です / ます」 が用い ら れてお ら ず, 動詞 ・ 形容詞 ・ 形容動詞の終止形, ま た は名詞で終了 し てい る発話文, あ るいはそ れら に終助詞, ま たは終助詞的 に用い ら れた接続助詞が付加 さ れてい る 発話文 と し た。 名詞で終了 し てい る発話文 も含めたのは, 形態的には 「 です / ます」 を付加でき る発話であり , 非 デスマ ス形の用言で終え ら れる発話同様の機能 を果た し う る と 思 われ る た めで あ る。 「中途終了」 は, 自発的に言い切 ら れなかっ た発話文 である。 具体的には, 陳 (2003) , 伊集院 (2004) 等と 同様に, 述部が省略 さ れた場合や, 従属節のみで主節が 省略 さ れた場合, 発話末の音調が上昇 ・ 下降 し てお らず 平板 に引 き伸ば さ れた場合, 言い淀 んだ場合 を指す。 他 に も , 連用形の 「 て / で」6 や, 「 みたい な」 「 っ てい う 」 「 と か」 等 で終え ら れる発話 も 見 ら れたが, 終助詞が付 加 さ れた場合 も含め, 一律で中途終了発話と し た。 4.1 .3 非 デ ス マ ス形の分類 続い て, 非 デス マ ス形 の分類 につい て述べ る。 Cook (2002) や三牧 (2000) 等 を踏まえ る と , IF ・ IP ・ 独話 的発話の定義は以下の通り と な る。 イ ン フ ォ ーマ ル ス タ イ ル (IF) : 聞 き手に対 し て強 く 意識が向け ら れており , 且つ, 聞 き手 と 親 し い関係, 心理的に近い関係で あ る こ と が指標 さ れる非 デス マ ス形発話 イ ンパ ー ソ ナル ス タ イ ル (IP) : 聞 き手に対す る意識が希薄であり , 話 し手の意識が 発話の情報内容へ向け ら れてい る こ と が指標 さ れる 非 デスマ ス形発話 独話的発話 : 聞 き手不在 で あ るかのよ う に発話 さ れ, 思考や心情 が率直 に表出 さ れる こ と によ り , 話者間の心理的距 離 を短縮 さ せ る非 デスマ ス形発話 本研究 では, こ れら の概念的 な定義に基づい て, 実際 の会話 で用い ら れる さ ま ざま な非 デス マ ス形 が, どのよ う な分類基準によ り , 上記の三種に分類で き るかを考察 す る。 その際の着眼点は, 発話におけ る話 し手の 「情意 的態度」 と 「聞き手目当 て l生」 の二点であ る。 「 情意的 態度」 につい ては, IF の 「聞 き 手 と 親 し い関係, 心理 的 に近い関係 で あ る こ と が指標 さ れる」 こ と と , 独話的 発話の 「話者間の心理的距離 を短縮 さ せ る」 こ と は同様 の機能 であ り , こ の機能がない IP と は対称的で あ る。 「聞 き手目当 て 性」 につい ては, IP の 「聞き手に対す る 意識が希薄」 である こ と と , 独話的発話の 「聞き手不在 であ るかのよ う に」 発話 さ れるこ と は同様の機能であり , IF の 「聞 き 手 に対 し て強 く 意識が向け ら れて」 い る こ

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と と対称的 であ る。 以上 を図示す る と 表 3 のよ う にな る。 表 3 情意的態度 ・ 聞 き手目当 て性 から 見た非 デスマ ス 形の タ イ プに よ る相違 強 弱 情意的態度 IF ・ 独話的発話 ◆ ◆ IP 聞き手目当て 性 IF ◆ ◆ IP ・ 独話的発話 非 デ ス マ ス形 の三 つ の タ イ プは , 「 情意的態度」 と 「聞 き手目当 て性」 , それぞれの度合い を強弱 で判断す る こ と によ り 分類で き る こ と にな る。 本研究ではこ の仮説 を検証す る と と も に, 具体的 な分類方法の検討 を行 う 。 分類方法 を検討す る上で, 裸の非 デスマ ス形は観点の一 つ と な るが, その定義につい て メ イ ナ ー ド (1991, 1993) では, 終助詞や補助動詞, ノ ダ構文等のモ ダリ テ イ要素 が共起 し てお ら ず, 文が繋辞の 「 だ」 , あ るいは用言の 終止形 で言い切 ら れた非 デスマ ス形発話 を指す と さ れて い る。 こ れに加え本研究 では, 「 だ」 も 情意的態度 を表 す要素 と な り 得 る ためモ ダリ テ イ要素 と 見 な し , 終助詞 と合わせて文末詞 と称す る。 ま た, 用言の終止形だけ で な く 名詞で言い切 ら れた場合 も , 裸の非 デスマ ス形に含 む も の と す る。 なお , 本稿 では, 非 デス マ ス形発話 と 共 起す る こ と で情意的態度 を表す要素 を 「 モ ダリ テ イ要素」 と し , affect key を含むも のと す る。 4.2 分析方法 ま ず, 非 デス マ ス形会話 ・ デス マ ス形会話, そ れぞれ におけ る発話文 を, 「 デス マ ス形」 「非 デスマ ス形」 「中 途終了」 に分類 し た。 次に, すべての非 デスマ ス形発話 に対 し , IF ・ IP ・ 独話的発話の分類 を試みた と こ ろ , 「 裸の非 デスマ ス形」 「文末詞」 「文末の上昇音調 (以下, 上昇音調)」 に加え, 「補助動詞」 「 疑問文におけ る疑問 詞 (以下, 疑問詞)」 も , モ ダリ テ イ 要素 と し て タ イ プ の区別に関与 し てい る と 考え ら れた。 他のモ ダリ テ イ 要 素 と し て, Cook (2002) では, 音の引 き 伸ば し , 音の 縮約, 倒置が挙げ ら れてお り , さ ら に Cook が参照 し て い る Oohs (1988) では, テ ンス, アスペ ク ト , ボイ ス, 語順, 直示 (指示詞, 代名詞, 等) , 数量詞と い つたも の も 挙げ ら れてい る。 本研究 では, 特 に タ イ プの区別 に 関わっ てい る と 思われる 「 裸の非 デス マ ス形」 「文末詞」 「 上昇音調」 「補助動詞」 「 疑問詞」 の観点か ら分析 を行 う が, その他のモ ダリ テ イ要素につい て も 適宜考察に加 え る。 次 に, 全体的 な傾向 を見 る ために, 上記五種がそ れぞ れ非 デス マ ス形発話に どの程度用 い ら れてい る か を調べ た。

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つの発話文に文末詞およ び補助動詞が複数用い ら れてい た場合 , そ れら すべ て を区別 し て集計す るのは煩 雑 と な る ため, タ イ プの区別 に最 も 強 く 関与す る で あ ろ う , 末尾 にあ る要素のみ を集計対象 と し た。 例え ば, 「 よ ね / だ ね / け ど ね / か も し れ な い ね」 等 は す べ て 「 ね」 と し て, 「のだ」 は 「 だ」 と し て集計 し た。 特に非 デス マ ス形会話 には, と き お り 地方方言が見 ら れたが, 直接対応す る標準語形があ る も のは変換 し て集計 し た。 例え ば 「 そ う な んや」 「 そ う な ん じ や」 の 「 や」 「 じ や」 は 「 だ」 と し た。 直接対応す る語形がない場合は, 分析 の対象外 と し た。 ま た, 一発話文 に複数の種類のモ ダリ テ イ要素が共起 し た場合は, すべて を集計 し た。 例え ば, 「夏休 み ど っ か行 く ? 」 の場合, 疑問詞と 上昇音調の使 用 を そ れぞれ 1 回 と し て数え た。 上昇音調に つい ては音声 デー タ が必要 と な るが, 『BT SJ に よ る日本語話 し 言葉 コ ーパス』 か ら用 い た 4 組の 会話 デ ー タ は, 音声 デー タ を有 し て お ら ず, 文字化 デー タ で も , 疑問符 “ ? ” は疑問文の機能 を果た し てい る文 に付 さ れてお り , 上昇音調か どう か判別 で き ない。 その た め , 筆 者が採集 し た デ ー タ の非 デス マ ス形発話 のみ ( 2 組, 計約100分, 発話文数1454) を集計対象 と し た。 音声 の ない デ ー タ に つい ては, 疑問符 “ ? ” が付 さ れて い る も の も 裸の非 デスマ ス形 と し て集計 し た。

5 . 結果 と 考察

5.1 全体の傾向 まず, デスマ ス形会話, 非 デスマ ス形会話におけ る各 ス タ イ ルの使用頻度 を表 4 に示す。 表 4 各 ス タ イ ルの使用頻度 デ スマ ス形 非デ スマ ス形 中途終了 非 デ ス マ ス 形会話 33 (1.0%) 2585 (79.0%) 655 (20.0%) デ ス マ ス 形 会話 3112 (62.0% ) 922 (18.4% ) 983 (19.6%) 非 デ ス マ ス形 会話 で は デ ス マ ス形 の使用 はほ と ん ど な く , IF の使用 に制約はかか っ てい ない と 考え ら れる。 デスマ ス形会話ではすべ ての話者が, ス タ イ ルの中で デ スマ ス形 を最 も多 く 用い てお り , ま た, 会話の途中から デス マ ス形使用が減少す る話者 も 見 ら れな か っ た こ と か ら , 会話 を通 し て IF の使用 に制約がかか っ てい る と 考 え ら れる。 続い て, 非 デス マ ス形 に占め る裸の非 デス マ ス形, お よ びモ ダリ テ イ要素 を含む非 デスマ ス形の使用回数 を表 5 に示す。 表 5 裸の非 デ ス マ ス形及び モ ダ リ テ イ 要素 を含 む非 デ スマ ス形の使用頻度 非デ スマ ス形 会話 (n=2585) デ スマ ス形会話 (n=922) 裸の非デスマ ス形 759 (29.4%) 511 (55.4%) モ ダ リ テ イ 要素 を 含む非デ スマ ス形 1826 (70.6%) 411 (44.6%)

(6)

非 デス マ ス形会話に おけ る裸の非 デス マ ス形 には, 上 昇音調が共起 し てい るであ ろ う 発話 も含 ま れてい るため, 正確な実態 を反映 し た も のではないがそ れで も 裸の非 デ スマ ス形は, デス マ ス形会話のほう が多 く 用い ら れてい る。 メ イ ナー ド (1993) では, 20組の友人間によ る日常 会話 (計60分) で用い ら れた裸の非 デスマ ス形は, すべ ての非 デス マ ス形発話の約12 % だ っ た こ と が報告 さ れて い る。 本研究 と同様に, 名詞で終え ら れた発話 も 裸の非 デスマ ス形に加え た場合, その使用率は約28% と なり , 29.4 % で あ っ た本研究での裸の非 デス マ ス形に近い使用 率 と な る。 こ のこ と から , 非 デスマ ス形主体の雑談一般 に おけ る , 非 デス マ ス形 に占 め る 裸の非 デス マ ス形の割 合は, およ そ 3 割程度であ る と 言え る。 一方, デスマ ス形会話では, 非 デスマ ス形発話の半数 強 を裸の非 デスマ ス形が占 めてお り , モ ダリ テ イ要素の 使用 に制約がかか っ てい る こ と がう かがえ る。 5.2 裸の非 デ ス マ ス形 と 各 モ ダ リ テ イ要素の特徴 Cook (2002) では, IP には主に 「 裸の非 デスマ ス形」 が用い ら れ, 非 デスマ ス形発話によ る情意的態度は, 主 に affect key と さ れる モ ダリ テ イ 要素 と の共起に よ る と い う 。 だが, こ れは典型的な特徴であ り , 非 デスマ ス形 発話の分類 を決定づけ る わけ ではない。 その ため, どの よ う な特徴 を も っ た非 デス マ ス形発話が, どのよ う な場 合 に, IF ・ IP ・ 独話的発話 の ど れに な る のか を調べ る必 要があ る。 以下では, 「裸の非 デスマ ス形」 「補助動詞」 「文末詞」 「疑問詞」 「上昇音調」 と い う 特徴に基づ き , 非 デスマ ス形発話の分類につい て, 事例 を挙げつつ論 じ る 。 5.2.1 裸の非 デスマ ス形 裸の非 デスマ ス形は, 先述 し たよ う に制度的会話の特 定 の文 脈 に お い て は IF に も な り 得 る (Cook, 2002, 2008a) 。 では, 制度的文脈に依存 し ない雑談におい て, どの よ う な場合 に裸の非 デ ス マ ス形 は IP に な ら な い の だ ろ う か。 デスマ ス形会話 と 非 デスマ ス形会話 を比較検 討 し た結果, 裸の非 デスマ ス形は, 以下の三つの発話環 境 におい て, IF, ま たは独話的発話 と し て認め ら れた。 (1 ) 質問に対 する答え と し て用い ら れた と き M aynard (1991) で は, 裸の非 デス マ ス形が用 い ら れ やすい発話環境の一つ と し て, 相手 と 親 し い関係であ る こ と , 社会的に近い関係であ る こ と を表す と き が挙げ ら れてい る。 例 (5) の02行目のよ う な発話であ る。

例(5) 【メ イナー ド (1993: 123) 】

01 A: ツイ ス ト のたか し ち やん知 つて る ? 02→B: 知 つて る。 メ イ ナ ー ド (1993) では, 例 (5) のよ う な, 相手に よ る質問の述部 を繰 り 返 し て答え る例, あ るいは相手が質 問の述部 ま で言い切 ら ない内 に, 述部 を先取 り す るかの よ う に応答 を行 う 例が取 り 上げ ら れてい る。 本研究の非 デス マ ス形会話 におい て, 裸の非 デス マ ス形は, 例 (6) , (7) のよ う に繰り 返 し や先取 り で ない場合 に も , 質問 に 対 す る応答 に用い ら れてい た。

例(6) 【N-06】

01 NF09: 屋台 と か行 っ た ? 02→NF08: 屋台は行かない。

例(7) 【N-03】

01 NM01: 院 どこ に行 く の ? 結局は。 02→NM02 : わかんない。 非 デス マ ス形会話におい て, 例 (5) (6) (7) のよ う な , 疑問文の形 を と っ た情報要求 に答 え る際の, 裸の非 デス マ ス形の使用は頻繁 に見 ら れたが, デスマ ス形会話では 二例見 ら れたのみで あ っ た。 質問 に対 す る応答 はモ ダリ テ イ要素が共起 し てい な く て も , 自動的に聞き手目当 て の発話 と な り , 失礼 にな り やすい ためと 考え ら れる。 こ のよ う な場合の非 デスマ ス形は, 聞 き手 と 近 し い関係で あ る こ と が指標 さ れる IF で あ る と 言え よ う 。 例 (8) は, デス マ ス形会話 で見 ら れた二例の内 の一例 であ る。 02行目で FO9が FIOのあだ名 を尋ねてい る。

例(8) 【P-09】

01 FIO: 入学当時のは引 き ずつてます。 02 FO9: な んて呼ばれてますか ? 03→FIO: ォ あだ名サ 。 04 FO9: え, かわいい。 03行目で FIOは, 自分のあ だ名 を名詞一語で答え てい る。 こ のあ だ名は 2 音節 だが, どち ら の音節 も同 じ母音 で あ り , 聞 き取 り に く いせいか, FIOは音節 を区切 っ て は っ き り と 発音 し てい る。 デスマ ス形会話におい て, 質 問への答 え で あ っ て も , こ のよ う な場合 には非 デス マ ス 形が用い ら れやすい と す れば, 聞 き手の知 ら ない固有名 詞等 を答 え る際には, 聞 き手への情意的態度よ り も , 情 報内容 に焦点化 さ れる IP と し て理解 さ れやすい と 考え ら れ る。 (2) 率直な感情 を表出する と き 裸の非 デ ス マ ス形 が IP と な る か ど う かの判断 には, 発話内容 も考慮す る必要があ る。 Geyer (2008) は, 非 デ ス マ ス形 の理解 に関 わ る要素 と し て , Cook (2002) の言 う affect key 等のモ ダリ テ イ要素, 連鎖組織に加え , どのよ う な行為 である こ と を表す内容の発話かと い う 点 を挙げ てい る。 デス マ ス形会話 におい て も よ く 見 ら れた のは, 例 (9) のよ う な場合 で あ る。

(7)

例(9) 【P-09】

01 FO7: 大学生ですか ? 02 FO4: あ, 院生 [ です。 03 FO7: [ あ院生, [ こ こ の。 04 FO4: [ はい。 05 はい。 06→FO7: あ一, 羡ま し い。 07 FO4: え hhh FO4が大学院生で あ る こ と を知 り , 社会人 で あ る FO7 は 「 羡ま し い」 (06行目) と , 自身の率直な感情 を表出 し てい る。 こ のよ う な発話環境 で非 デス マ ス形への シ フ ト が起こ り やすい こ と は, 先行研究で も多 く 報告 さ れて い る ( 生田 ・ 井出, 1983; 三牧, 1993, 2000; Okamoto, 1999) 。 こ の発話が率直 な感情表出であ る と 言え るのは, 裸の非 デスマ ス形が即時的 な反応 であ る こ と を指標す る こ と (Maynard, 1991) に加え, 「羡ま しい」 と いう 話 し 手の感情 を表す語が用い ら れてい る こ と によ る。 デスマ ス形会話での同様の例は, 多 く の場合, 「す ごい」 「怖い」 と い っ た形容詞一語での短い発話が用い ら れてい た。 こ のよ う な, 話 し手が率直な感情 を表出 し てい る発話は, 聞 き 手目当 て と は理解 さ れない ため, 裸の非 デス マ ス形 であ っ て も , IP ではな く 独話的発話 と 認定で き る。 (3) 自己訂正 を行 う と き 自己訂正 を行 う 場合の裸の非 デスマ ス形 も , 独話的発 話 と 解釈で き る。 例 (10) では, FO6が会話収録に参加 し た経緯 を話 し (01-04行目) , MO3がその内容 を確認 し よ う と し た際に自己訂正 を行 っ てい る (05-06行目) 。

例(10) 【P-06】

01 FO6: え っ と , 母が, (はい) え っ と , ォ 調査者サ さ ん 02 (はい) , あの, 母が大学で教え てて ォ 調査者サ 03 さ ん を , で その (はい) , 紹介 みたい な , 感 じ , 04 [ で一 05 MO3: [ あ ォ 調査者サ さ んの, お母 さ ん [ が, [ あ 一ち ゃ 06 ち ゃう hh。 07 FO6: [ は [ あ 一やや 08 一そう です hh。 09 MO3: お母 さ んが (はい) , ォ 調査者サ さ んに教え て て, MO3は, 自身の発話途中で 「違 う 違う 」 を縮約 さ せた 「 ち ゃ ち ゃ う 」 (05-06行目) と 発話す るこ と で, 自身の 発話内容が誤 っ ていたこ と を表示 し てい る。 こ の発話は 自身 に宛 て ら れた も の で あ り , ま た , 同一語句 の連呼 (Oohs, 1988) , 音の縮約, 笑い と い っ た複数の要素によ っ て, 情意的態度が表示 さ れてい る。 こ れら の特徴から , 05-06行目は独話的発話で あ る と 認定で き る。 以上, 裸の非 デス マ ス形が IP に な ら ない三つの例 を 見 たが, こ の他に例 (3) のよ う に, 冗談の文脈におい て 相手の発話 を繰り 返すこ と で, 情意的態度が表出 さ れる 場合 も挙げ ら れる。 こ の場合 も , 聞き手に特定の働き か け を行 っ てお ら ず聞 き手目当 てではない と い う 点 で, 独 話的発話に分類 さ れよ う 。 5.2.2 補助動詞

Maynard (1991) , メイナー ド (1991, 1993) において

補助動詞は, 非 デスマ ス形に用い ら れる こ と で話 し手の 情意的態度 を表す も のと し て扱われてい る。 だが, 補助 動詞 には さ ま ざま な種類があ る ため, デー タ に基づ き 個 別 に検証 を行 う 必要がある。 表 6 に非 デスマ ス形会話, デス マ ス形会話 そ れぞれにおい て, 非 デス マ ス形発話に 用い ら れていた補助動詞の種類 と 使用回数 を示す。 表中 の括弧は使用者数が 1 名のみだ っ た こ と を指す。 表 6 補助動詞の使用回数 使用 さ れた補助動詞 非デ スマ ス形会話 デ スマ ス 形会話 じ やない 73 2 で し よ う 24 0 ら しい (伝聞) 14 (1) だ ろ う 11 7 そ う (様態) 3 11 よ う (意向) (5) 0 たい (4) 2 みたい 3 (1) はず (2) 0 ない と いけ ない (1) 2 て く れ (1) 0 か も しれない 0 6 て しま う 0 5 ま ま 0 (1) てほ しい 0 (1) すぎる 0 (1) 補助動詞はその多 く の種類が少 ない サ ン プル数ではあ るが, そ れぞれの補助動詞が用い ら れた非 デスマ ス形が, どのよ う に IF ・ IP ・ 独話的発話 に分類可能か を論 じ る。 (1) 「 じ やない」 「 じ やな い」 は 「 さ っ き 言 っ た じ やな い。」 のよ う な と き の 「 じ やない」 で あ る。 非 デスマ ス形会話の中で も 特に友人間会話におい て, 縮約形で あ る 「 じ やん / やん」 の形 で頻繁 に用 い ら れてい たが, デス マ ス形会話では 2 例見 ら れたのみ だ っ た。 「 じ やない」 は, 聞 き 手が当然 知 つてい るはずの知識 を活性化 さ せる も ので あ り (庵他, 2001) , 聞き手に宛て ら れる IF と 言え る (例(11) ) 。

(8)

例(11) 【N-06】

01 NF09: そ こ がな んか, みんなはや っ ぱ春休み と か 02→ で さ , 家探 し に [行 っ た り さ , す る じ やん。 03 NF08: [ あ , 探 し た , ん一。

(2) 「 でし よう」

「 で し よう 」 も 「 じ やない」 と 同様に, 聞き手の知識 を活性化 さ せ る確認要求であ る (庵他, 2001) 7。 形態的 には 「 だ ろ う 」 と対立す る デスマ ス形 であ るが, 丁寧 さ を欠い た発話 に な り やす い た め, ス タ イ ル シ フ ト の研 究 で は 非 デ ス マ ス 形 に 分 類 さ れ る こ と も あ る (Cook, 2008b 等) 。 非 デスマ ス形会話では24例の使用が見 ら れ, 縮約形 の 「 で し よ」 の形 で よ く 用 い ら れて い た が (例 (12) ) , デス マ ス形会話では一例 も見 ら れなか っ た。 「 で し よう 」 は聞 き手 と 親 し い関係, 近 し い関係であ る こ と を指標す る IF に相当す る も のと 考え ら れる。

例(12) 【N-03】

01 NM 02: 俺な にげに ね一 , ら んぶ亭 と か好 き な んだよ 02 ね。 03→NM01: あそ こ 高いで し よ。

(3) 「 ら しい」

伝聞の 「 ら し い」 の使用は, デスマ ス形会話では 1 例 のみだ っ たが (例 (13) ) , 非 デスマ ス形会話では 6 名に 14例見 ら れた。 デス マ ス形会話 で は, デス マ ス形の 「 ら し い です」 を用い てい た者は7名い たこ と から , 「 ら し い」 の使用自体 に乏 し か っ た わけ では な い。 「 ら し い」 は , 伝聞 と し て聞 き手に新情報 を伝達す る発話であ るため, 聞き手に宛 て ら れる IF で あ る と 言え る。

例(13) 【P-10】

01 Fl2: ォ店名サ は行 っ たこ と あり ますか ? 02→F i t : ォ店名サ ない んですけ ど (はい) す ごい高い ら 03 し い。 04 F l 2: あた し , あそ こ のバイ ト 店員 な んですよ。

(4) 「だろ う」

デ ス マ ス形会話 で用 い ら れて い た 「 だ ろ う 」 は, 「 で し よう 」 のよ う に聞 き手の知識 を活性化 さ せる も のでは な く , すべて疑問詞と 共起 し , 話 し手が回想 を行 っ てい る こ と や思考 を 巡 ら せ て い る こ と を 表す も の で あ っ た (例 (14) ) 。 こ う い っ た, 自身 に宛 て ら れた情意的態度 を 表す発話は, 典型的な独話的発話と 言え よ う 。

例(14) 【P-09】

01→FIO: あ た し いつ以来行 つて ない んだ ろ。

(5) 「そ う」

様態の 「 そ う 」 は, デスマ ス形会話で 7 名に見 ら れた。 すべての発話が例 (15) のよ う に, 率直な感情の表出であ っ たため, 独話的発話 と 解釈で き た。

例(15) 【P-10】

01 F l 2: 足 のバ レ ーみたい な感 じ の ( あ 一) , ス ポー ツ あ 02 る んで す [ け ど, み んな す る。 03→F i t : [ お も し ろ そ う 。 04 え, す ごい器用です ね, 足で, (6) その他 以下, 使用が少 なかっ たその他の補助動詞につい て述 べ る。 「 て し ま う 」 は デス マ ス形会話のみで見 ら れ, す べ て縮約形の 「 ち やう 」 で用い ら れてい た。 すべ て積極 的 に聞 き手 に働 き かけ る発話ではない こ と から , 独話的 発話 と 解釈 さ れた。 「 か も し れない」 「 ない と いけ ない」 「 みたい」 「 ま ま」 は, 自身の客観的 な考え を そのま ま投 げ出 し た も ので , 情報内容に焦点化 さ れる IP にな り や すい傾向が認め ら れた。 「 たい」 「 てほ し い」 は自身 の欲 求 と い う 情意的態度 を表 し てい る こ と か ら , 「 す ぎ る」 は 「 す ごす ぎ る」 と い う 率直 な感情表出に用い ら れてい た こ と か ら , いず れも 独話的発話 と 解釈 さ れた。 以上, 補助動詞の共起 し た非 デスマ ス形の分類につい て論 じ た。 本研究のデー タ では事例数が少 な く , 非 デス マ ス形の各 タ イ プ と 補助動詞の関連 に つい ては, 傾向 を 示す に と どま る。 今後 , 多 く の事例にあ た る必要があ る も のの, 情意的態度が表示 さ れてい る か どう か, 聞 き手 目当 てか どう かには曖味 な も の も含 ま れる ため, 一律の 判断基準 を設け る こ と は難 しい。 5.2.3 文末詞 文末詞の付加 さ れた非 デスマ ス形発話につい て論 じ る。 非 デスマ ス形発話に占める各文末詞の使用率 を図 1 に示 す。 文末詞の内 , 一人の話者に し か用い ら れなかっ た も のはサ ン プル と し て検討 が難 し い た め, 図 に含 めてい な い o

I

n ね 非 デ ス マ ス 形 に 占 める 使 用率 ( % ) ■ デ スマ スJI 会 話 口デ スマ スJI 会 話 [ = っ け

-n

l

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n よ 図 1 非 デ スマ ス形発話に占め る各文末詞の使用率

(9)

デスマ ス形会話 と 非 デスマ ス形会話 と の間 で, 非 デス マ ス形発話への文末詞の使用傾向には大 き な違いのあ る こ と がわか る。 以下, 各文末詞が IF ・ IP ・ 独話的発話 の区別 に どう 関わ っ てい る のか を考察す る。

(1) 「 ね / よ / の」

「 ね / よ / の」 が, 非 デスマ ス形会話では多用 さ れて い るのに対 し , デスマ ス形会話では明 ら かに使用が控え ら れてい る。 大学生同士 に よ る デス マ ス形主体の初対面 会話 を デー タ に用い た伊集院 (2004) で も , 「 ね / よ」 が付加 さ れた非 デ ス マ ス形はほ と ん ど見 ら れな か っ た こ と か ら も , 「 ね / よ / の」 で終え ら れる非 デス マ ス形は 基本的 に, 聞 き手に対す る情意的態度 を表示す る IF に な る と 言え る。 こ れら の文末詞は デスマ ス形会話で も わ ずかに使用が見 ら れた も のの, すべて例 (16) , (17) のよ う に , 聞 き手目当 て 性の弱い発話におい て で あ っ た。

例(16) 【P-11】

01 F l 4: オ ーナ ーのこ と ど う だ っ た っ てい う の聞い た 02 ら な んか, す ごい古株のバイ ト の人 が 一, や, 03 正直 だめだ っ た と 思いま す と か言い出 し て, 04→ ゆえ よ じ やあ。 05→F l 3: そ う 思 っ た ら言え よ。 06→ [最初 つか ら 言え よ 。 07 F l 4: [ あ た し た ち には言え ない んだ か ら ゆっ て く れ 08 よ っ て 一

例(17) 【P-01】

01 F01: あ の, で も な んか, そ の瞬間 て な か な か ね一, 02 な る一 多分立 ち会え る こ と な んて減多 にない 03 .です よ ね。 04 FO2: そ う ですよ ね一。 05 F01: ん一, 自分, 06→FO2: 自分のと き は自分が必死やし ね。 07 F01: そう そう そう 。 例 (16) は, 形態的特徴だけ をみれば典型的な IF で あ るが, 04行目は回想におけ る当時の心情 を表出 し たも の, 05, 06行日は相手の心情 を代弁 し たも のであり , 明 ら か に 「今 ・ こ こ」 の聞 き 手 に対 し て宛 て ら れた も のでは な い。 よ っ て, 定義の上で例(16) は独話的発話に該当す る。 例(17) は, 接続助詞の 「 し」 を用い, 補足的な内容の発 話 を行 う こ と で, 聞き手目当 て性が弱めら れてい る。 だ が, 聞 き手に宛 て ら れてい ない と ま では言え ない こ と か ら , IF と 独話的発話の中間的 な発話 と 位置づけ ら れる。

(2) 「ので」

「 ので」 は, デス マ ス形会話では多用 さ れてい たが, 非 デスマ ス形会話では 1 回の使用が見 ら れたのみであ っ た。 主観的 な 「 か ら」 と 比べ, 「 ので」 は客観的 で あ る こ と か ら 丁寧 さ を も つ と さ れる (国広, 1992) 。 非 デス マ ス形 であ っ て も 「ので」 で終わる発話は, 丁寧 さ や聞 き手への敬意が指標 さ れるのであ ろ う 。 こ の特徴は IF ・ IP ・ 独話的発話, いずれに も 該当せず, 機能的 にはむ し ろ デス マ ス形 に近い も の と 考え ら れる。

(3) 「 から / けど / し」

「 か ら / け ど / し」 は, デス マ ス形会話 で そ れぞれ, 10名, 5 名, 6 名に用い ら れており , 非デスマス形会話 と の間で使用率に大 き な差 も生 じ てい ない。 デスマ ス形 会話 で も 制約 な く 用 い ら れてい る こ と か ら , こ れら は聞 き手目当 て性 を減 じ さ せ る も ので あ る と 考え ら れる。 文 末に用い る こ と で, 聞 き手への非難や不満 と い っ た情意 的態度が強 く 表 さ れる場合 も あ るが (例 「 そ こ 私の席な んだけ ど」) , 本研究のデー タ に こ う い っ た用法はな く , 発話 を後景化 さ せ る役割が大 き い も の と 感 じ ら れた。 そのため, 「 から / け ど / し」 で終え ら れる非 デス マ ス 形は, 主に発話の情意的態度よ り も情報内容に焦点化す る IP に な り やすい も の と 判断 し た。 なお , 接続助詞の 「 が」 で終え ら れる非 デ ス マ ス形 は, 本研究のデー タ に は観察 さ れな か っ た。

(4) 「 だ / か/ な / つけ」

「 だ / か / な / つけ」 は affect key で あ る ため, こ れ ら が付加 さ れた発話は情意的態度 を表出す る発話 と なり やす い が, 「 ね / よ / の」 と 異 な る のは, 聞 き 手 に宛 て ら れない発話 に な り やす い と い う 点 で あ る。 特 に デス マ ス形会話では, 「 そう な んだ」 「 そ っ か」 「いい な一」 「 な んて言 う のかな」 と い っ た独話的発話 と し て用い ら れて い た。 だが, 非 デスマ ス形会話では, 例 (18) のよ う に独 話的発話では ない用 い方 も な さ れてい た。

例(18) 【N-01】

01→NF02: で も , 私, DVD 2 つ買 つたんだ。 02 NF01: あ, 何と何 ? こ の場合, 情報提供の発話 と し て聞 き手に宛て ら れて お り , IF と 判断で き る。 非 デス マ ス形会話 では他 に, 確認要求 ・ 明確化要求の発話 も見 ら れた。 (5) その他 その他の文末詞 と し て , 非 デス マ ス形会話 で は, 「 さ / も の ( も ん) / わけ / っ て / わ」 が, デス マ ス形会話 では 「 わ / ぞ」 が観察 さ れた。 「 わ / ぞ」 は, 非対話的, 独話的な用法があ る (日本語記述文法研究会, 2003) が, デスマ ス形会話ではすべて独話的発話 と 認めら れた。 5.2.4 疑問詞 疑問詞の使用回数およ び非 デスマ ス形発話におけ る使 用率は, 非 デスマ ス形会話が130回で5.0% , デスマ ス形 会話が44回 で4.7% と , 使用率 にはほ と ん ど差がなか っ た。 だが, デスマ ス形会話での使用の大半は, 例 (19) の

(10)

よ う に, 「 かな」 「 つけ」 す るこ と で, 回想 し たり き で あ っ た。 「 だ ろ う 」 と い っ た要素 と 共起 思考 を巡 ら せたり し てい る と

例(19) 【P-06】

01→MO3: で な んか俺 も な んか, な んや っ た かな。 02 特進 コ ースや っ て (はい) , も う そ れやか ら 全然 03 余裕で行け た んですけ ど, な んか, な んで し よ 04 う ね。 非 デスマ ス形は疑問詞が付加 さ れた場合, 情報要求や 確認要求 で あ れば IF, 自問の発話で あ れば独話的発話 と な る傾向が見 ら れた。 5.2.5 上昇音調 発話末の上昇音調の使用回数, 及び非 デスマ ス形にお け る使用率は, 非 デス マ ス形会話が249回, 17.1%, デ スマ ス形会話が18回, 2.1% であ っ た。 音声 デー タ を有 す る会話が非 デス マ ス形会話は 2 組のみだ っ たが, デス マ ス形会話 と の間 で, 使用頻度に差があ る こ と は明 ら か であ る。 デスマ ス形会話で用い ら れてい た18例の上昇音 調の内, 複数の話者に用い ら れてい たのは, 以下に挙げ る四つの発話環境 におい てであ っ た。 (1 ) 驚 き や率直な感情 を表出する と き 話者の驚き や率直 な感情 を表出す る と き には非 デスマ ス形 へ の シ フ ト が起 こ り やす い ( 生田 ・ 井出, 1983; Okamoto, 1999; 陳, 2003 等) 。 その際の非 デスマ ス形発 話は聞 き手目当 てに な ら ず, 且つ情意的態度 を表出す る ため, 独話的発話 と し ての性質 を も ち やすい。 だが, 上 昇音調 で発話 さ れた場合は異 な る よ う であ る。 例 (20) で は, F l 3が, 初対面 で あ る F l4が同郷の者で あ る こ と を 知 り , 驚い てい る。

例(20) 【P-11】

01 F l 3: 佐賀 で も 佐賀出身 (はい) じ やない です, 02 [ よ ね。 03 F l4: [ あ, いえいえばり ばり 佐賀出身ですよ。 04→F l 3: あ, ほんと ? 【声高ぶる】 05 F l 4: はいはい hh, ほんと ですほんと です, 例の 「 ほ ん と ? 」 (04行目) は, 相手 に関す る内容の 発話が上昇音調で な さ れる こ と によ り , 聞 き手に宛 て ら れた発話 と な っ てお り , 05行目で Fl 4 も こ れに答え てい る。 こ の例から , 率直な感情 を表出す る発話で も , 上昇 音調の共起によ り , 聞 き手に対す る情報要求や確認要求 と 聞 かれる よ う で あ れば IF と な る こ と がわかる。 (2) 自身 の用 い た語句が不確 かで ある こ と を表す と き 例 (21) は, 自身の発話の中で用いた語句が, 不確かな も ので あ る こ と を表す 際に用 い ら れた上昇音調 で あ る。

例(21) 【P-10】

01 F l 2: 取 れな い んです か, チ ケ ッ ト っ て。 02 F11: す つごい たか一 あ , で も , アイ ス ホ ッ ケ ーと か 03 も す ごい人気 で高 い ん ( はい) で すけ どあ の, 04 な んで , な んて言 う んですかね。 05→ こ一 ケ ー リ ン グ ? 06 Fl2: あ一, あり ます ね。 あ る ス ポー ツ競技 の名前 を思い出 そ う と す る中 で の F 11に よ る 「 ケ ー リ ン グ ? 」 (05行 目) は, い わ ゆる半 疑 問形であり , 自問である と 同時に, 聞き手の助けや承認 を求 めてい る も の と し て も聞 く こ と がで き る。 こ う い っ た場合, IF と 独話的発話のいずれと も判断 し がたい。 IF では失礼 に な り かねず, 独話的発話では相手の反応が引 き 出せ ない お そ れがあ る ため, あえ て曖味に聞かれる中 間的 な も の と し て発話 さ れてい る と 思 われ る。 (3) 相手の発話 を繰 り 返すと き 文末詞 と同 じ く 上昇音調 も , 例 (22) のよ う に相手の発 話の一部 を繰り 返す と き に見 ら れた。

例(22) 【P-06】

01 MO3: あで も俺も , 22年間大阪ですよ。 02→MO2: 大阪? 03 MO3: も う ず っ と 。 MO2が, MO3によ る発話の一部で あ る 「大阪」 を, 上 昇音調によ り 発話 し てい る (02行目) 。 こ れは直前の相 手発話の一部 を繰 り 返 し た も ので あ り , IF で あ る質問 と も , 独話的発話で あ る自問 と も と れる。 こ の場合 も例 (21) と 同様に中間的 な発話 と 解釈で き , その曖味 さ ゆえ に, MO3は02行目に対す る直接の反応を示 さ ない こ と も 可能 と な っ てい る も の と 思われる。 ま た, 上昇音調が共 起 し た繰り 返 し は, デスマ ス形会話では他に 1 例見 ら れ たのみだ っ たが, 同 じ く 名詞一語の発話 だ っ た。 非 デス マ ス形会話では動詞の場合 に も用い ら れてお り , 非 デス マ ス形発話の聞 き手目当 て性には, 品詞の種類も関わっ てい る こ と が示唆 さ れる。 (4) 質問者が質問の答え に な り 得 る候補 を先取 り のよ う に挙げ る と き 上昇音調には, 例 (23) のよ う に, 話 し手が質問 を行 っ た直後, 聞き手の答え を先取り す るかのよ う に, 答えの 候補 を提示す る と き に用い ら れるパ タ ー ンも 観察 さ れた。

例(23) 【P-10】

01 Fl 2: え帰省す る と き (はい) な んで帰 り ます ? 02→ バ ス ? 03 F i t : いや, 普通, 04→Fl2: [新幹線 ?

(11)

05 F i t : あ 一で も , バス ー, だ っ た り 新幹線 だ っ た り 。 02, 04行日は, 01行日の質問への補足的な発話 と し て 立 て続け にな さ れる こ と で, 聞き手目当 て 性が弱めら れ てい る。 と はいえ, 上昇音調が共起す る こ と で, 明示的 に情報要求 を行 う 発話 と な っ てい る ため, IF と 解釈す る のが妥当 に思 われる。 6 . ま と め 以上, 非 デス マ ス形発話につい て, 「 情意的態度」 と 「 聞 き 手目当 て 性」 の観点 か ら , 「 裸の非 デス マ ス形」 「補助動詞」 「文末詞」 「疑問詞」 「上昇音調」 と いう 形態 的 ・ 音声的特徴に基づ き , IF ・ IP ・ 独話的発話への分類 を試みた。 その結果, 非 デス マ ス形発話 を IF ・ IP ・ 独話的発話 に分類す る こ と は, 概ね妥当 であ る こ と が認めら れた。 どの タ イ プに も当 てはま ら ない発話 も見 ら れたが, そ れ は タ イ プ間の中間的 な発話であ り , 三種に分類す る こ と の妥当性 を損 ねる も のでは ない。 IF ・ IP ・ 独話的発話の分類基準 につい ては, 結果 を表 7 にま と める。 こ こ で提示す る分類基準は目安であ り , 常 に こ のよ う に分類 さ れる と い う 規則 ではない。 ま た, 文末詞 に 「 ので」 が含 ま れてい ないのは, 「 ので」 で終 わる発話が, 形態上は非 デスマ ス形であ っ て も , 機能的 には デ ス マ ス形相当 と 考え ら れた ため で あ る。 分類が難 し い中間的 な発話 も見 ら れたこ と につい て, 本研究のデー タ では, 特に補助動詞や上昇音調のサ ン プ ルに乏 し く , デー タ を追加 し て さ ら に分類基準の妥当性 を検証 し てい く 必要があ る。 し か し , そ れは観察 さ れな か っ た他のパ タ ー ン を探 る ためで あ り , IF ・ IP ・ 独話的 発話の どれに該当す るかと い う 一律の分類基準 を求め る ためでは ない。 聞 き手 に宛 て ら れてい るのか どう か, 話 者の情意的態度が表示 さ れてい るのか どう かと い つた こ と は, 話者間で も常には っ き り と 判断で き る も のではな い か ら であ る。 その ため, 一律の分類基準 を求めよ う と す れば, 話者自身が行 っ てい る こ と の記述から乖離 し て し ま いかねない。 む し ろ , 話者は非 デスマ ス形発話 を基 本的 には三種 に使い分け つつ も , どのよ う な場合 に, ど のよ う な方法によ り , 分類の難 し い曖昧 な非 デスマ ス形 発話 を用 い てい るのか, そ れによ り どのよ う な機能が果 た さ れてい るのかと い う 点が, 今後, 一考に値す る課題 で あ ろ う 。 表 7 IF ・ IP ・ 独話的発話の分類基準 IF IP 独話的発話 裸 の 非 デ ス マ ス 形 ・ 質問に対す る 答え と し て用い ら れた と き ( た だ し, 発話が聞 き 手に と っ ての 新情報 と な る固 有名詞で あっ た と き は IP) ・ モ ダ リ テ イ要 素等に よ り 話 し 手の情意的態度 が表示 さ れてお らず, 聞き手目 当ての発話では ない と き ・ 率直な感情 を 表出す る と き ・ 自己訂正 を行 う と き ・ 冗談の文脈で 相手の発話 を繰 り 返す と き 補 助 動 詞 「 じ や な い 」 「で し よ う」 「ら しい」 「だ ろ う 」 「 て し ま う 」 「か も し れない」 「 な い と い け な い 」 「み た い 」 「ま ま」 「 だ ろ う 」 「 そ う」 「たい」 「て ほ し い 」 「す ぎ る」 文 末 詞 「ね」 「よ」 「の」 「だ」 「か」 「な」 「つけ」 (ただ し, 「今 ・ こ こ 」 の 聞き手に宛て ら れてい る と き ) 「か ら」 「け ど」 「 し」 ( ただ し , 情報 を後景化す る発話 と し て用 い ら れた と き ) 「だ」 「か」 「な」 「 つ け 」 「 わ」 「ぞ」 疑 問 詞 情報要求や確認 要求 を行 う と き 「かな」 「つけ」 等 と 共起 し , 回 想 し た り , 思考 を巡 ら せ た り し てい る と き 上 昇 音 調 情報要求や確認 要求 を行 う と き 自問 を行 う と き

7 . 結論

多 く の ス タ イ ル研 究 に おい て非 デ ス マ ス形 は, そ の文 末形式 に基づい た一つの カ テ ゴリ ーと し て扱われがち で あ る。 し か し , 同 じ形式 で あ っ て も 異な る機能 を果たす 発話が混在 し てい る以上, 非 デスマ ス形発話の機能 を考 慮 し た分類方法 を検討す る必要があ っ た。 本研究 では, Cook (2002) によ る非 デス マ ス形発話 の IF ・ IP への分類には独話的発話が該当 し ない こ と , な ら びに こ の三種は話者の 「情意的態度」 と 「聞 き手目 当 て性」 の度合い によ っ て区別 で き る こ と を指摘 し , デ スマ ス形主体の雑談 と , 非 デスマ ス形主体の雑談 を デー タ に用い, その妥当性 を確認 し た。 ま た, IF ・ IP ・ 独話 的発話の分類方法 と し て主に, 「裸の非 デスマ ス形」 「文 末詞」 「 上昇音調」 「補助動詞」 「 疑問詞」 が, どう 用い ら れてい るか を見 る こ と で検討 し , 分類の目安 を作成 し た。 こ の分類方法 を精緻化 し てい く ためには, よ り多様 な デー タ に基づ き 検討 し てい く 必要があ る。

言語の 「 ス タ イ ル」 には本来 さ ま ざま な も のが含 ま れ, ま た, 言語形式自体 を指す も のではないが, 本 研究 では, 文の 「 デスマ ス形 / 非 デスマ ス形」 と い う 形式 を指す も の と す る。 ま た, 「 デス マ ス形 / 非 デスマ ス形」 は, 「丁寧形 / 普通形」 「親体 / 常体」

(12)

「 デ ス マ ス体 / ダ ・ デ ア ル体」 と も 呼 ばれる が, 基 本的 に こ れら に含 ま れる範囲 と 異な る も のではない。 2 . 本稿で引用 し てい る Cook (2002, 2008a) の会話例 は, 原文 ではロ ーマ字表記であ る。 3 . 会話例中の二重斜線 “//” は, 相手 と の発話の重複 が開始 さ れた地点 で あ る こ と を , “ ( ) ” は聞 き取 り が不明瞭な箇所であ る こ と を表す。 ま た, 行番号 と矢印, 発話の下線は筆者によ る。 4 . 「制度的会話」 と は, 会議や授業, 病院での診察等, 会話の目的や話者間の関係, 発話内容 と い っ た, そ の場 でのふる まい方 につい ての知識が, あ る程度当 該社会 で共有 さ れてい る タ イ プの会話 を指す。 し ば し ば 「日常会話 (雑談) 」 と対置 さ れる概念であ る。 5 . コ ーパス番号及び会話 コ ー ド欄の括弧内は, 宇佐美 (2007a) での名称であ る。 6 . こ の場合の 「 て / で」 で終了 し てい る発話は言い切 ら れてい ない こ と を表す発話で あ り , 「 ほ ら , こ れ 見 て」 「今日休講だ っ て」 のよ う な言い切 ら れた発 話の場合は非 デス マ ス形 と な る。 7 . 「 で し よう 」 には推量 と 確認要求 と い う 二つの用法 があ るが, 庵 (2009) によ れば, 実際の使用で見 ら れるのは多 く の場合, 確認要求であ る。 本研究の非 デスマ ス形会話に見 ら れた 「 で し よう 」 も , 例 (12) のよ う にすべ て確認要求 であ っ た。 会話例に用いた記号凡例 本稿の会話例に用い てい る記号は, 会話分析で通常用 い ら れる ジ ェ フ アー ソ ン ・ シス テ ムを基に し た も のだが, 可読性 を重視 し , やや簡略化 し た。 以下に記号の意味 を 記す。 発話 非デ スマ ス形 で あ る こ と を判断 し た述部 (発話) 発話進行中の相手に よ る相づ ち 言い よ どみ [ 隣接す る発話 と の重複が開始 し た地点 - 直前の音の声門閉鎖音に よ る中断 。 発話の言い切 り 直前の部分が, 発話が継続す る こ と が予 ' 測で き る音声的特徴で発せ ら れてい る 直前の部分が上昇音調 笑い , ま たは隣接す る部分が笑い なが ら h 発話 さ れてい る # 聞き 取 り 不可 ォ サ プ ラ イ バ シー保護に よ る伏せ字 出典 宇佐美ま ゆみ監修 (2007a) 『BTSJ によ る日本語話 し言 葉 コ ーパス 1 (初対面 ・ 友人, 雑談 ・ 討論 ・ 誘い) 』 「談話研究 と 日本語教育の有機的統合のための基礎的 研究 と マ ルチ メ デ ィ ア教材の試作」 平成15-18年度科 学研究費補助金基盤研究 B (2) (課題番号15320064) 研究成果

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