伝統的書写指導の誤解と問題点の指摘
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(2) の粒子が安定し、携帯にも便利である。 1 9書写で半紙を使用する場合、裏面は墨の渉みが 大きいので、表裏を間違えないように注意して使用 する。 2 0感圧複写などに用いられる油性インクのポ-ルペ ンは、上を向いた状態では書写できないので注意す る必要がある。. る。中学校国語科書写の教科書は、この他にも3杜が発 行しているが、いずれもが教科用図書検定に合格したもの であり、例示する4社と大きな差はない。 小学校国語科書写の教科書の場合は、 6学年にわたっ て大きめの写真・図版で説明が加えられるが、学習者の発 達段階を考慮して文章化される部分は少ない。多くは「眼 で確かめる」といった視覚的効果を重視した扱いとなる。 当然のこととして、小学校低学年(1年生)は硬筆. 「0 3」が、冒頭で例示した問いである。墨が煤という 鉱物と腰から構成されていること考えれば、複数種を混合 したからといって化学変化が起こるはずもない。実際、書 道学習の中では油煙墨と松煙毒を混合して複雑な発色を 求めたり、唐墨と和墨を混合して表現効果をあげることな どが試みられている。墨汁を固形墨ですり、墨の粒子を細. による執筆・姿勢、中・高学年(3年生)は毛筆に よる執筆・姿勢が中心となる。 【中学書写一年】 (光村図書出版株式会社H14年度) 文字を古くときの姿勢. 上体を少しC'- 'S-tる.. 同様の視点から「禁止事項」として位置付けられる誤解で ある。. ●迂-層かけ、背筋を伸ばし、. 「行儀の悪いこと」と位置付けられ、それを回避する方策 として作り出されたからであろう。 「12」や「19」も、. ●机と体の間をこぶLEつくらい空けるO. 止事項」のように唱えられるのは、 「墨を混合して使用す る」や「半紙の裏面を使用する」ことなど、朕等の面から. ●両足は少し聞いて白状州に靖えるo. ●左手で用紙を起-押さえる。. かくしていくということも行われる。それが明らかに「禁. 多少の科学的な視点があれば、 「04」 ・ 「10」 ・ 「11」・「15」・「16」・「18」・「20」の 各間は容易に解明できるであろう。しかし、学校教育の中 では「文字の書き方」が重視されるため教養的な部分は置 き去りにされやすく、 「指導を受けた」とか「話を聞いたこ とがある」との回答は少ない。当然、学校教育があまりに 技術の伝授に傾斜しがちであるとの指摘は出来るが、本論 とは趣旨が異なるので詳しくは触れない。 ﹂用i訂こ加taaai盟sat監E33出E33日ESS. 3.教科書掲載の冒頭教材における誤解と問題点 (1)冒頭教材の実態 「新しい時代の教育」を謡う教科書には、名実共に数 多くの新しい試みと変化が生じている。系統的な要素別学 習しかり、単元学習しかり、書き込みスペースを伴った教 材やページのレイアウトしかりである。本項では、標題の 「伝統的書写指導の誤解と問題点の指摘」との立場から、 冒頭教材を中心に考察を進めていく.こととする。 白黒という限定された色彩が中心となる書写教育におい ても、児童・生徒の目を意識した数多くのカラーページが. ◆文字を書くときの姿勢 ●浅く腰かけ、背筋を伸ばし、上体を少し前に傾ける。 ●机と身体の間をこぶしーっくらい空ける。. 登場する。学習をリードするキャラクターを配したり、学 習のポイントを2色刷り・ 3色刷りで提示する。そのよう な中、書写教科書におけるカラーページの定番となりつつ. ●両足は少し開いて自然に構える。 ●左手で用紙を軽く押さえる. あるのは、冒頭の執筆・姿勢の写真である。. (斜め・横の執筆姿勢写真) (横の執筆姿勢写真は硬筆と毛筆の2種) ◆硬筆の持ち方. 表紙裏、あるいは扉裏に配される執筆・姿勢図は、出 版社ごとにモデルとなる生徒の雰囲気に異なりはあるもの. (鉛筆・ポ-ルペンの執筆写真). の、ほぼ同形式での提示であり、 「正しい姿勢は、正しい 書写につながる。」との主旨で締め括られる。以下、中学 校国語科書写の教科書の該当部分の写真と解説を例示す. ●いっもこのページを開いて、姿勢を確かめよう。. -90-.
(3) 基本となる点画 (基本点画の薄墨図版) 姿勢・筆の持ち方 六m<?./-蝣山一. 【中学新書写】 (中教出版株式会社H14年度) \ 、 . I P -. '實-bけhhりォォ*;.-. 1度vp**n吾'瓦. _∴∴リ蝣-'--->. <HJしい,**.<;*-.-.. ・. .. :. ;. :. ?. -. ・. -. <. -'-蝣is----*十. 蝣. をT{'・'すぐ.ILV-〟 '. -.i,f.e-1-.. 人毛山車の持ち方のポイントV. 鵬は懸職はでS.乙・僻は鵜. I.大きい-'蝣:-を油Hく職人Hには、. 的汁いく二・L.か多い/I. /lL'Li的扶¥Jf'3いてiI.. Icsこra腰介ltta. ∵. 言. -. ︰. 税は以帆は蝣WIHは札呪Mで. 主. ・一Lが払いノ. 蝣91-. -.. と、人差し指一本を前にかけて持っ単鈎法(写真③) がある。 (斜め執筆姿勢写真). -. (1)両足を少し開いて座り、机と体の問を少しあける。 (2)人差し指と中指を前にかけて持っ双鈎法(写真②). -. 小学校の書写で学習したことを思い出して確かめよう。 姿勢と筆の持ち方. -. また左の写真のような腕の構え方を提腕法(手腕 を紙面につける)という。指のかけ方は単鈎法で、中. け、ま?すぐに机t二向か. であるが、単鈎法(人差し指だけを前にかける)で書 いてもよい。. I.I:.蝣-. から離す)といい、大字を書くときに多く用いられる。 指のかけ方は双鈎法(人差し指と中指を前にかける). 郎〃少し間いて、・〓牧:: に絶える. にもたれかからないようにする。また、両足は少しあ け、足の裏を床につける。 上や左上のような腕の構え方を懸腕法(腕を紙面. は 右払い\. ㌔ 1・ 17. いすにはやや浅めにかけて、背筋を軽くのばし、机. _l l - W & Z 3 2 彫 E ォ 昭 s a 耶 間 Ⅷ 呂 I.7くのはLt肌にJたれかからないよ ・一,にす`至た、削り化は少しあけ、H化 .り・山4})昧H}つり::る一 ′・-﹂-.-'iI; 与懸脱法一脈乍机柵から鵬*-)といい、 人を乃ノ,ときに歩く間いられるJ柿 のかりんは双的活(人きし帖Is-1-1中指ルJ 、ハT.・、■鞠ォ'-''し 照たけ<-サi:側にかける)でk=いて-a-M.い。 また、1Iののような帆の川柳え〃H 'JsW漣i-Z-*-iL-∴)I.. 小:.--:!・仙、、・与 は=-ときに多-川いられる:. 姿勢・筆の持ち方. (毛筆大筆の執筆写真). 【新しい書写】 (東京書籍印刷株式会社H13年度). 字や小字を書くときに多く用いられる。 (斜め・正面の執筆姿勢写真) (毛筆小筆の執筆写真). (執筆に関するイラスト図2種). 【中学書写1】 (教育出版株式会社H14年度).
(4) <正しい姿勢のポイント> 1.いすに浅くかけ、背すじをまっすぐにして、上体 を少し前に傾ける。 2.からだと机の間を少しあけ、まっすぐに机に向か う。. 最大の要点としているのは、 「『正しい』とは、文字を書 く運動を高める機能性に裏付けされたものという意味であ り、形式的な形のみを指すものではない。」の部分である。 背筋が吃立し、教科書の姿勢写真と酷似していようが、そ れが文字を書くのに不自由なものであれば、 「正しい」と. 3.両足を少し開いて、自然に構える。 (斜め・正面の執筆姿勢写真). 位置付けることはできまい。その視点で考えると、前掲の 教科書の姿勢・執筆写真や解説には多くの誤解や問題点 が潜在しているのである。. (毛筆大・小筆の執筆写真3種) <筆の持ち方のポイント> 1.大きい字を書く場合には、腕は懸腕法で構え、 指は双鈎法で書くことが多い。.ただし、単鈎法で書 いてもよい。 2.大きい字を書く場合には、腕は提腕法または枕. ① 「体の構え方」と「足の配置」における誤解 ここで問題点として押さえるべきことは、 「体の構え方」 と「足の配置」、そして「執筆法」である。このうち、 「執 筆法」については、 「体の構え方」との関連部分のみを指. 腕法で構え、指は単鈎法で書くことが多い。. 摘し、他の事柄については後に詳しく述べることとする。 東京書籍の教科書では、 「両足は少しあけ」という指示. 執筆姿勢として共通する部分を抜粋すると、次の3項 目となろう。 ①いすには浅く腰掛ける。. に加えて、 「足の裏を床につける」という説明が付加され. ②背筋をのばす。. る。前傾の図版・ 写真が東京書籍 のもののみH13. ③両足は少しあけて腰掛ける。 「少し」や「自然に」という程度を表す表現の唆昧さを. 年度であるのは、 H14年度に左. 指摘する声もあろうが、文章表現上の問題点であり大きく 取り上げる必要はあるまい。まず問題とすべきは、前述の. 掲のようなチェッ. 「正しい姿勢は正しい書写につながる」における「正しい」 という規定である。. 強化が図られて. ク欄が登場し、 いることを比較 するためである。. (2) 「正しさ」の示すもの. これは、かなり. 論者は、かつて「正しさ」ということに対して、 『小学 校学習指導要領解説国語編』の中で次のように問題点 を指摘し、指導の方向性を提示している。. 特異な例である。. 他社の説明には、これほどの具体性はないが、掲載され. (ア)の「姿勢や用具の持ち方」は、こうした実情に配. る写真を見る限り同様に足の裏を床につけた姿勢が例示さ れている。一部の教科書には、明らかに足元を塗って「床. 慮した基礎的事項であるとともに、 「文字を手書きす ること」の入門期における重要な事項でもある。 「正. につけた」状態を演出しているものもある。このことから 考えれば、教科書の検定基準として「足を床につける」が. しい姿勢」や「正しい持ち方」の「正しい」とは、文 字を書く運動を高める機能性に裏付けされたものとい. 設定されていると考えられるのであるが、それを果して 「正しい姿勢」と位置付けることができるのであろうか。. う意味であり、形式的な形のみを指すものではない。 例えば執筆に際して親指が人差し指の先より下がった 場合、筆先を親指の先端が隠すため、児童は横から. 元来、程度としての幅があるものは指導に困難が伴う。 例えば、いわゆる「手本」とされる「教科書掲載教材」の. 紙面をのぞき込む姿勢をとる。このような執筆傾向へ. 点画の配置にしても、 「つける」か「離す」かで学習の難 易度が変化する。 「つける」という場合も確かに深浅の幅. の視点が欠落したままで、 「背筋をまっすぐに伸ばす」 といった指導のみが加えられた場合、児童は筆先を注 視することなく文字を書くことになる。. はあるが、 「離す」の場合には程度が大きな課題となる。 つまり、 「どの程度離すのか」が数学的な数値で示されず、 感覚に頼った結果として膨大な広がりと幅を持っからであ. また、紙面に文字を指書する際には、児童の多くは人. る。同様に潤渇(にじみ・かすれ)の場合も、その程度や幅. 差し指を使うものである。その現実から考えれば、用 具を正確に誘導すべき人差し指が反り返ったり硬直. に話題が集中する。結果、点画は精密に結合され、平板 とも思えるほどの均一化した墨量の教材が提示されること. 化したりするのでは、用具は自由に運用されにくい。 そのため、 「指一手-腕一体」へと展開する系統的・ 計画的な執筆や姿勢指導が求められるのである。. になる。 「足を床につける」という指示も、これと同様の要 素をもっていると考えられる。つまり、足裏全面が床につ く場合は指導が均一化されるものの、一部が床と接すると. -92-.
(5) なると部分・程度が問題となるのであろう。. うな発言までも導き出している。 「まっすぐにのびた背筋」 が「吃立する精神性」に結び付けられるのであろうが、か. 先に例示した教科書の中から、次のような表現を抜粋し、 さらに考察を深めてみよう。. っての精神的鍛錬の場としての習字教育を髪考とさせる場 面である。. 浅く腰かけ、背筋を伸ばし、上体を少し前に傾ける。. 「背筋をのばす」ということについて、 1981年当時、東 京大学医学部生理学教室講師であった大津-爽は、その. 通常、書字・書写の環境として言われることに、 「通常 より低めの机が好ましい。」という事柄がある。しかし、低. 著『習字の科学』の中で、 「『習字をする時は正しい姿勢 で書きましょう』というキャッチフレーズは指導要領の一. めの机に向かい、上掲の姿勢をとった場合、極めて窮屈で 不安定な姿勢になることに気付くであろう。つまり、低め. ページにも出ているが、姿勢を正した方が字が上手になる のか」と視線と身体運動の関係を例示しながら問題点の一. の机に向かい前傾した姿勢をとるということは、身体の重. 端を指摘している。 (注:問題のある表現を含んでいるが、 原文のままに引用する。). 心を前に置くということである。 「机にもたれかからない」 という書字・書写の機能性からの禁止事項があれば、前に. 毛筆の先を注視しなさいといいながら、筆の進行方. 倒れ掛かる身体を支えるのは左手(利き手の逆)と足にな る。しかし、面として床につく足裏には力が入らず、左手 と腹筋・背筋に大きな負担が掛かる姿勢となるのである。 背中を丸めて腰を落とす姿勢、左手の肘をっく姿勢となる. 向が手によって隠されて見えない(図3)。毛筆とは、 漢字の縦構築の要素と合わせて、目をっぶりながら書 きなさいと強要しているのだろうかという疑問にぶつ かる。縦か槙かは、次項で調べることにするが、ひら. のは、いわば必然とも思える。これを、自由な書字・書写 を実現する「正しい姿勢」とすることは不可能であろう。 書字・書写という行為を微細な精神運動と身体運動の 融合と考えれば、文字言語の理解や定着のみを論じること はできまい。ここでの執筆姿勢は、換言すれば機能的な身 体運動の確保を言っているわけであり、形骸化した形式的 な姿勢論議を繰り返しても不毛である。いわゆる「正しい 姿勢」を総括的にまとめれば、以下のような形になるであ ろう。. 仮名の起筆は四七文字の九〇%が左上から始まり、 手で隠される右下面で収筆するものが同じく九〇%あ る。漢字については、右手に毛筆をもつ人にとっては 横書き用に構成されていないので横線は盲目操作にな る。それをさけようとするには目の位置を変えるしか ない。すると姿勢が問題になる。. 芝書芸を苦三豊票,雷雲Y 位爪から写真をとると,右 下面が全くみられない.料 線mBE玩闇jm&ax&i いこうとすると`百E)操作を していることになるO班先 -^J見ないで辞をすることは, 適当な動作とはいえない。 三匹をirEませようとする:方向 セにらめるJ3LSにH Oliim "一・H娘さ-u一石訂U醗pvZEに なfc.この日の位鑑をかえ ることは,今王ら伽ていた 三半奴管内の体奴の位犀を 蝣JS3閑fSfSif;∃E33H長田 簡M'isiss.a 電撃の先の有視界披作がで きることになれば,碗溝の. 「正しい姿勢」とは、微細な精神運動の結果、 手指と視覚を関連させながら行われる書字・書写 行為の機能性を確保し、効率化を実現するもの でなければならない。そのため、前段階の身体の 構え方は、手指や視覚の活動を阻害しないもので あることが求められる。. 翁rag巨切毘BiiEm&ffX&s ろう.. 書写学習が基本的に縦書き書式に依存していることから 考えれば、 「背筋をのばす」ことを指導事項から削除して. 当時としては斬新な指摘であり、書写教育関係者が求. しまうことには疑問が残る。しかし、伝統的な書写指導に よって言われ、教科書等でも「正しさ」の基本事項として. めていた論理性を窺わせるが、現在では伝統的な書写指導 における誤解と同様に、いくつかの問題点を指摘しなけれ ばなるまい。. 扱われる「足の裏を床につける」は、 「足を引き気味にし て、足の親指に重心をかけるようにして構える」に変更さ. 吉事・書写の際に、書写点(書写用具の先端と紙面が. れなければなるまい。. 接する点)を注視することは必須の要件である。その意味 で、大津が例示している「毛筆の先を注視しなさい」は誤. ②執筆姿勢と執筆法の矛盾と誤解. りでない。しかし、大樺が書写用具を毛筆として『習字の 科学』を書いた時代と、社会的背景・教育的課題は大き. 個性的な表現が求められる高等学校芸術科書道では、 執筆姿勢や執筆法が指導の重点項目となることは少ない。. く様変わりしている。毛筆書写による学習は縦書き書式に よる書写しか想定せず、そのために論や指摘から一般性が 失われることとなる。. しかし、書写指導においては日常的な指導項目であり、 「背中が曲がって姿勢が崩れていると、文字や生活まで乱 れる」といった、ある意味では人格的な側面に立ち入るよ. 書写学習の導入段階で、鉛筆の先が三角錐の形に削ら. -93-.
(6) れるのかを討論することがある。単純な「削り易い」とい う意見が大半を占めるが、削ることを必要としない他の書 写用具が同様の先端型をしていることからも、否定するこ. のばす」という指導を加える場合、大津が言う「書写点を 見ないで書く操作」が強制されることとなる。 「正しい姿勢が正しい書写を可能にする」という伝統的. とは簡単である。先端部が三角錐であるのは、多くは六角 の棒型をとる鉛筆の角を削り落とし、先端部を見やすくし. 書写指導の誤解は、姿勢が優先し腕法や指法が軽視され た点にあろう。特に形式的な姿勢指導に陥った場合、用 具の持ち方への改善がないままに「背筋をのばす」との指. ようとする原理からである。その原理は、書写用具を保持 する手指の形にも影響を与える。つまり、親指が人差し指. 示が与えられる。持ち方が改善しない限り、背筋はのびな い。指導が逆転しているという矛盾の中、精神性を持ち出. より下がった位置を保持する執筆法の推奨である。このこ とにより、親指が書写用具の先端部を隠すことを避けるこ. しながら無謀な姿勢指導が展開され続けている。 先に、大津の論をについて「毛筆書写による学習は縦書. とになる。さらに右手による書写の場合、保持した用具の 軸はわずかに右傾するのが通常である。 「先端部の型」 ・ 「保持する指の形」 ・ 「用具の軸の傾斜」の3点によって、. き書式による書写しか想定せず、そのために論や指摘から 一般性が失われることとなる。」と指摘した。縦書き書式 による書写の場合、縦方向に並ぶ字粒の揃いは、中心線. 上から覗き込んだ視線を遮るものが除去され、初めて書写 点を確認しながらの書字・書写が可能となる。大津の場合、 この部分までの分析は進められているが、 「図3」として. に対噂する形で判定することになる。この場合、背筋をの ばして正面から文字を見ることは正当である。しかし、昨. 掲げている事例が硬筆書写的な提腕法となっており、大字 書写の場合の懸腕法を欠落させているのは問題であろう。. 今の書写環境は縦書き重視という状況ではなく、膨大な量 の横書き形式の文書が流通しているのである。つまり、縦. 毛筆書写における懸腕法が筆軸の中間を保持して肘を浮 かせるのは、書写点および書写方向を確認するための合理 性に裏付けされていることを見逃している。つまり、この. 方向に並ぶ字粒の揃いを確認するのに通している姿勢も、 横方向には対応しないということである。横書き書式で横 方向に展開する字粒の確認には、 「正しくない」とされる. 懸脱法による書字・書写においては、 「目の位置を変える しかない。すると姿勢が問題になる。」との問題点は生じ. 「首を傾けて覗き込む」という方法しかありえない。 かって縦書き書式が万能のように行なわれていた時代の. ないのである。視線の阻害や姿勢の変化は、 「先端部の型」 ・ 「保持する指の形」 ・ 「用具の軸の傾斜」の3点のい ずれかに、あるいは同時的に問題が生じたときに生じるO. 執筆姿勢と執筆法をあてはめようとしても、それは矛盾と 誤解を生じるだけであろう。現代には現代の執筆姿勢と執 筆法があり、それが伝統的な方法と異なるとしても、合理. 以前のようなデザイン重視を脱し、最近では人間工学に 基づいた製品開発が盛んである。そのため、一部の特殊な. 的なものであるならば形式にとらわれず、積極的に取り入 れていく姿勢が必要ではないかと思われる。ただし、以前. 「ファ!シー文具」の例を除いて、 「先端部の型」が大きく 変容することはない。三角錐の先端部の角度の深浅で保持. に問題にされたように、 「首を傾けて覗き込む」という姿 勢は脊椎側湾等の健康面への危供もある。書字・書写が. する位置に変化が生じるが、現在でははぼ一定で異なりを 見せない。問題点の中心は、 「保持する指の形」 ・ 「用具 の軸の傾斜」となる。. 健康を阻害するのでは、一体、何のための学習かというこ とになろう。緊急の課題として、押さえておかねばなるま い。. 書写指導の立場のみを優先して理想を述べるならば、 「用具の正しい持ち方」に合致する書写用貝が開発される のが望ましい。しかし、現実は全く逆で、先行する製品開. 4.執筆法が抱える問題点 以上、教科書の冒頭に掲げられる執筆姿勢と執筆法を. 発によって送出される書写用具に合わせて、持ち方が変容 しているのである。特にボールペンや-イポリマーを使用し たシャープペンシルの開発以降、この傾向は顕著である。. 対象としながら、伝統的な書写指導の誤解と問題点を指 摘してきた。多くは機能的合理性という視点からの指摘で あったが、問題は掲げる事柄に止まらない。理論的に問題 点が解消されたとされる執筆姿勢や執筆法と、学習者の実. 明らかな書字方向性を示すペン・万年筆の欠点を克服し た京-ルペン、折れやすい芯を強化した-イポリマーを使. 態があまりに掛け離れているからである。特に、執筆法で の隔たりが大きい。. 用したシャープペンシル、いずれもが科学技術の生み出し た先進の書写用具であることに間違いはない。ただ、硬質. 疑問の根源は、 「正しい持ち方」とされるスタイルを、 いっ、誰が、何を参考にして決定したのかという部分であ. の先端部の反発は、持ち方の変容を余儀なくするのである。 結果、親指は人差し指より前に押し出され、握圧を強化 するために人差し指は反り返り、軸を垂直に構えた書き方. る。毛筆に関する執筆法は、中国・日本でも数多くの研 究書によって解説が加えられている。しかし、硬筆の書写. への転換が起こった。このような状況下で、初めて用具の 先端部を覗き込む、書写点を覗き込む必要性が生じ、 「背 筋をのばす」ことが阻害されるのである。あえて「背筋を. 用具に関する執筆法の文献は、皆無といってよいはど見出 すことができない。にも関わらず、明治期になって、突如 として「硬筆書写用具の持ち方の図」が登場するのである。. -94-.
(7) 西洋文化の移入とともに伝来したペンや鉛筆が学校教育に 導入されるにあたり、 「文字を書く用具の持ち方は同じ」 という短絡的な考えにより、毛筆で行なわれていた持ち方 が流用され定着したのではないか。そう感じさせるほどの 近似性で、硬筆の「正しい持ち方」は例示されている。そ して、その図は硬筆による書写が中心となる英・米国で1 540年にMercatortが例示した持ち方とも、いわゆる昨今 のPincer gripとも大きく異なっているのである。 次ページに掲げる図版は、ぺんてる株式会社が開発し、 2002年の春に市販を開始した油性ボールペン「エルゴノミIy クス」の広告である。誇らしく「人間工学」という名を冠. (光村図書出版株式会社H14年度). したボールペンのコピーには、伝統的な書写指導で例示す る「正しい持ち方」には絶対に生じるはずがない「第4の 支点。」という衝撃的な文字が躍っている。. さらに、この持ち方と我々が問題として掲げる児童・生. 第4の支点。 人間工学が実現した握りやすさと描きやすさ。. 徒の持ち方を比較すると、妙な符合が生じていることに気 付くであろう。さらに、英国で典型とされる持ち方である. 従来の筆記具では考えられていなかった'-第4の支 点''を発見。その-'第4の支点"を可動式リアグリッ. Pincer gripとの近似性にも、我々は驚かされるのである。 掲げる図版のAは、論者がスケッチした学習者の執筆法で. プの採用により完全サポートO長時間の筆記の疲れ や、握り方による疲労を極限まで軽減。. あり、 BはPincer gripとして示される執筆法である。 A. エルゴノミックス-その特異な形状は筆記具の新た な時代を感じさせる。. 中. さらに、書きやすさのデータを例示するグラフには、 優れた「書きやすさ」と「疲れにくさ」を実現する. P. 疫. エルゴノミックス。 φ19mmのリアグリップは、モ. ニターテスト及び筋電図測定*を繰り返し導き出さ. ∫. れた筆記の為に最適な太さです。 *筋電図測定(筋肉使用時に発する電位を測. . 男一 子 … 中. 定したもの)結果による。. . 男 千. ー B ll. との説明が付加されている。筋電図測定等の医学的データ. I. による説明は、相当な説得力をもって伝わってくる。 製品「エルゴノミックス」を保持する指の形を抜粋・拡. 中 . 女 千 中. ● 女 千. 大したのが前掲の図版である。 「第4の支点」と表示され る部分に着目し、教科書掲載写真と比較してみると、その 相反する道筋は明らかとなる。. -95-.
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(9) い制約として位置付けていることであり、学習者の個性や 通性を否定することにつながる。また、提出物を「作品」 と言い続ける学習は、文字言語の規則性を学ぶという国語 科書写の基本を見失っている。一定の規範を強制するかの ような「批正」という用語も、国語科書写としての学習に は馴染まない。 伝統的な書写指導の誤解や問題点を指摘する道は、言 語教育に関わる国語科書写としての自覚を高めることに始 まる。さまざまな場面で指摘を繰り返しているが、教員養 成課程で実践される「書道(書写を中心とする)」の講義・ 演習が、単なる毛筆の運用力を促進することに終始してい ては、指導方法や授業力の育成は図れない。毛筆で書くこ 以上のことから考えれば、. とのみを習得した教師が教壇に立ったとき、授業を運営し ようとして想起するのは自らの小・中学校時代の学習経験 でしかない。その意味で、 「書写の学習指導の方法は、 10. 明治期になっての新しい硬筆の書写用具の登場に 対して、それまでの毛筆の持ち方を便宜的にスライド させ使用したのではないか。流入した初期はペンや鉛. 年は遅れている」と言うが、あながち誤りではあるまい。 朱を用いた添削や水書板への示範が平然と繰り返されるの. 筆が主たる用具であり、 「硬筆」とはいえ比較的弾力 性に富む用具であったために欠落が表面化しなかった。. みで、学習指導過程の構築や精選は放置されたままである。 かつて、隔週の学校五日制が実施されていた。その時間. そのため、何らの見直しもされることなく、いわゆる 「正しい持ち方」として定着した。 しかし、昨今のボールペンやシャ-プペンシルのよ. 割を編成する段階で、一部の現場教師は「漢字の学習は 大切だけれど、書写の学習は二週間に一回でいい」と公言. うな先の硬い、特に紙面からの反発が強い用具の登場 によって、保持には相当な力が必要となり執筆法の変 形が生じた。. し、土曜日の授業時間割に押し込めていた。文字の学習 こそが書写なのである。文字習得し、定着し、自在に運用 できるようになる言語教育に関わっているのが書写なので ある。それこそが、 「言語教育に関わる国語科書写として. との状況が推測されよう。伝統的な「正しい持ち方」を堅 持しようとすれば、機能的合理性を前面に出した訓練が必. の自覚を高めること」なのであるo未だ自らの担当するEg 語科書写の学習を「書道」と呼んだり、 「習字」と呼んで いるのでは、近代化への道のりは遠い。. 要となろう。それを「毛筆の持ち方の転用」として否定し、 新たな「正しい持ち方」を構築するならば、客観的データ に裏付けられた分析と考察が必要になろう。いずれにせよ、 用具が人間の手を規定するのではなく、人間の手の機能が 優先した「人間にやさしい書写用具」が登場しない限り、. 【参考・引用文献】 ◆平成13 - 14年度版中学校国語科書写教科書7社分. この抱える問題点は解決しない。. ◆ 『習字の科学』大津一乗著法政大学出版局1981 ◆ 『中学新書写一年用指導資料』中学新書写学習指導 研究会中教出版株式会社1984. 5.おわリに 毛筆を使用する、いわゆる「手本」と呼ばれる字例を参. ◆ 『文字の科学』大津-爽編著法政大学出版局1985 ◆ 『書写指導小学校編』全国大学書写書道教育学会編. 考にして反復学習が行なわれる、という形態の共通性から、 書写と書道が混同される場合が多い。本論で扱った執筆 姿勢や執筆法なども、多くは書道学習の中から生じて来た. 萱原書房1996 ◆ 『小学校学習指導要領解説国語編』文部省1999. ものである。同系統の問題点は、それらだけに止まるもの ではない。. ◆R.Sassoon, The Art and Science of Handwriting, Intellect Books, 2000. 例えば、学習場面で用いられる用語にしても奇異に感じ られるものは多い。あたかも学習の終蔦を予想させる「清 書」という用語などは、その典型的な事例であろう。各学 習時間の最終段階を「清書」という行為で閉じるならば、 学習の以降の発展は期待できまい。これは、学習成果の確 認に伴って行なわれる「まとめ書き」であり、いわば次へ のスタートとなるべき行為であるはずである。同様に提示 される字例を「手本」と称してしまうのでは、越えられな. -97-.
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優越的地位の濫用は︑契約の不完備性に関する問題であり︑契約の不完備性が情報の不完全性によると考えれば︑
これら諸々の構造的制約というフィルターを通して析出された行為を分析対象とする点で︑構