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実測によるモデル図の要素の正当化が力学のルール学習に及ぼす効果

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(1)

実測によるモデル図の要素の正当化が力学のルール

学習に及ぼす効果

著者

宮田 佳緒里

雑誌名

東北教育心理学研究

14

ページ

1-10

発行年

2017-03-31

URL

http://hdl.handle.net/10097/00121899

(2)

実測によるモデル図の要素の正当化が力学のルール学習に及ぼす効果

宮 田 佳 緒 里

(東北大学大学院教育学研究科*)

問題と目的

学習場面において,言葉だけで説明されるよりも,図 を使って説明された方がわかりやすい場合のあること を,多くの学習者が経験していると考えられる。 図は一般に,指示対象を空間的配置として外的に表 現したものとして定義される (Vekiri. 2002; Hegarty. 2011 ; Schnotz. Baadte. Muller.& Rasch. 2010)。理 科の学習場面においては,科学的知識の獲得を促す目的 で, しばしば図が使用される。例えば.Mayer (1993) が調査したアメリカカリフォルニア州の小学6年生の科 学の教科書には. 1ページに平均1.9個の図が掲載され, 占有面積の比率は,図が55%.文章が45%と,ほぼ半々 であったという。日本では,小山・越桐 (2006)が昭和 33年 平成10年の各学習指導要領に対応した2社(東京 書籍と啓林館)の小学校理科の教科書を分析し,総面積 に占める図の比率が24%から50%まで増加したことを 明らかにした。このように,理科学習では,図が重要な 教材のーっとして頻繁に使用されている。 その一方で,使用された図が効果的に機能しない場合 のあることが指摘されている。例えば,凸レンズを光が 通過する様子を表す図の理解に関する調査では,当該内 容の授業を受講済みの対象者が,図の意味がわからない と回答し(山下.2011).図示された情報を記述する場 面では,図を参照せずに,実験を行った経験や概念的知 識だけを頼りに答える傾向にあること(佐久間・定本, 2010)が示されている。 図の中でも,学習者にとって理解が困難となる図の特 徴として.Vosniadou (2010)は,そのような図が科学 理論やルールなどの科学的知識を指示対象とし,科学的 知識を構成する要素との構造的類似性を持つことを指摘 した。本研究では,これらの特徴を持つ図を「モデル図」 と呼び,研究対象とする。 情報伝達機能の側面からいえば,モデル図の特徴は 科学的知識を伝達する機能を持つ点で,以下の図とは 異なる。例えばLevin(1981. 1989; Levin. Anglin.& Carney. 1987;Carney& Levin. 2002)が指摘したような, *現,兵庫教育大学 紙面を装飾する機能を持つ図 (e.g..本の表紙の絵).文 章の情報を具体化する機能を持つ図(eふ装置の写真)• 文章の情報を組織的で一貫性のあるものにする機能を持 つ図 (e.g..樹形図や折れ線グラフ).文章の情報を変換 して記憶しやすくする機能を持つ図(e.g..マックーン という人名の記憶を促すアライグマ (raccoon)の絵)は モデル図ではない。一方,雷の仕組みを表す図 (Mayer. Bove. Bryman. Mars.& Tapangco. 1996; Mayer. Hegarty. Mayer. & Campbell. 2005). 天 気 の 移 り 変 わ り や 風 向 き 表 す 天 気 図(Lowe. 1999; Hegarty. Canham. & Fabrikant. 2010).力の合成分解の法則を 表すカの矢印(塩川・鈴木・村山.1987;進藤.2000a. b;宮田.2007. 2008. 2011a. b).凸レンズによる像 のでき方を表す図(石井・橋本.2001;佐久間・定本, 2010;山下.2011;麻柄・岡田.2006)などは,科学法 則や原理を表しているためモデル図に該当する。 またモデル図は,科学的知識を構成する要素との構造 的類似性に基づいて当該知識を指示する点に特徴があ る。例えば,太陽を中心とする同心円上に惑星を配置し た,惑星の公転軌道のモデル図は,天体システムの考え 方と構造的に類似している (Vosniadou.2010)。しかし, このモデル図の表現は,地球からの天体の見え方とは異 なるものである。つまりモデル図は,私たちの自己中心 的な視点や,特別な技術を使わずに行う知覚的経験とは 異なる形式で対象を表現する (Vosniadou. 2010)。この 点が,指示対象との視覚的類似性に基づいて対象を表す 図とは異なる。 そのため,モデル図から科学的知識を読み取るには, モデル図を構成する各要素の視覚的特徴と,その要素 の指示対象である科学的知識の構成要素の特徴とがど のように対応づけられるかを説明する知識が必要とな る。そのような知識は表示スキーマ (displayschema ; Hegarty. 2011)と呼ばれる。モデル図から科学的知識 が学習される過程では,表示スキーマに基づいてモデル 図の個々の要素の視覚的特徴が,科学的知識の要素の特 徴へと変換され,それらの科学的知識の要素が領域固有 知識と統合されて,科学的知識(ルール)が形成される。

(3)

その際,表示スキーマがなければモデル図を正しく理解 することができないため,理科の教科書ではモデル図の 表示スキーマの形成を促すために,モデル図の要素の視 覚的特徴を,科学的知識の要素の特徴に変換するための 規則が明示されている (e.g.,岡村・藤嶋, 2012a, b)。 ところが,そのような教示を受けた学習者が,当該 モデル図を理解できない状態に止まる場合がある (eふ 山下, 2011;佐久間・定本, 2010)。このニとは,表示 スキーマを保持しているだけでは,モデル図を十分に理 解できず,モデル図によって伝達される科学的知識の学 習に至らないことを示している。 その一因は,学習者の保持する領域固有知識が,モデ ル図で伝達される科学的知識に抵触する点にあると考え られる。学習者は,学校で科学的知識を教わる以前に, 日常経験を通して科学的知識とは異なる領域固有知識を 構築することが知られている (eふ細谷, 2001;麻柄・ 進 藤 ・ 工 藤 ・ 立 木 ・ 植 松 ・ 伏 見 2006; V osniadou, 2008, 2010)。そのような誤った領域固有知識を保持す る学習者は,当該知識に抵触する教示内容を受け入れ ない傾向がある(細谷, 2001;麻柄他, 2006; Chinn & Brewer, 1993; Gunstone & White, 1981)

モデル図を用いた科学的知識の教授場面においても, 当該の科学的知識が学習者の領域固有知識に抵触する場 合,学習者はその知識を受け入れない。例えば,力学分 野のカの分解では,

1

分解角度が大きくなるほど分力が 大きくなる」との関係が成り立つ。それに対して,学習 者の中には12人で荷物を支えればl人で支えるよりも 常に小さいカで支えられる」との誤った領域固有知識を 保持する者が確認されている(進藤, 2000a, b,宮田, 却07,2008)。宮田 (2011a)は,そのような誤った知識 を保持する学習者に,力の分解のモデル図を提示し,そ こから読み取れる分力の大きさ(すなわち科学的知識の 要素の特徴)の妥当性を評定させた。その際,分力の大 きさが当該知識に抵触するような大きい値を示す場合の モデル図と,当該知識に抵触しなU叶、さい値を示す場合 のモデル図の両方を提示した。その結果,誤った知識保 持者は,当該知識に抵触しない分力の値は妥当と判断し たが,抵触する値は妥当性が低いとして受け入れなかっ た。このことから,誤った領域固有知識を保持する者は, モデル図の要素によって示された,科学的知識の要素の 特徴を領域固有知識と照合し,当該知識に抵触しない特 徴だけを妥当と判断して選択的に受け入れていると考え られる。 誤った知識保持者の上記のような態度からは,

1

モデ ル図の要素が科学的知識の要素を正しく表す」との認識 (モデル図の要素の妥当性認識)が低下している可能性 が伺える。モデル図の要素が妥当でないと認識されれば, モデル図全体の妥当性認識も低下し,モデル図によって 伝達される科学的知識の学習が妨げられると推察され る。それならば,誤った知識保持者に対してモデル図の 要素の妥当性認識を高める教示を行えば,モデル図全体 の妥当性認識の低下が抑えられ,科学的知識の学習を促 すことができるのではないか。 従来の研究で,モデル図の要素の妥当性認識を扱った ものは見られない。誤った領域固有知識が,モデル図か らのルールの学習を困難にさせることを示す研究(塩川・ 鈴木・村山, 1987;進藤, 2000a, b;宮田, 2011b)は 見られるが,それらの研究では,モデル図の要素の妥当 性認識に対するアプローチはとられていない。そのため, 妥当性認識を高める教授要因は明らかになっていない。 モデル図の要素の妥当性認識を高めることは,モデル 図だけを提示するような従来の教示方法(塩川・鈴木・ 村山, 1987;進藤, 2000a, b;宮田, 2011b)では困難 であると考えられる。というのも,モデル図を含む図 は一般に,それだけでは図示された事物が自然界に存 在するという確証を与えることができないからである (Peirce, 1931-1935;米盛, 1981)。そのような確証を与 えうるのは,指示対象物から物理的影響を受けるもので ある (Peirceは指標記号と呼んだ;Peirce, 1931-1935; 米盛, 1981)。例えば,風見鶏は風の方向を指示する指 標記号であり,寒暖計の水銀柱の高さは気温を示す指標 記号である。 力学のモデル図の場合,科学的知識の要素であるカか ら影響を受けるものの一つに,ばねばかりによる力の実 測値がある。矢印で示された力の大きさと,カの実演

u

値 が一致することを誤った知識保持者に確認させれば.1矢 印の長さが力の大きさを正しく表している」と認識され るようになると予想される。矢印で示されたカの大きさ とカの実測値との一致を確認することは,より一般的に いえば,科学的知識の要素の実測値によるモデル図の要 素の正当化といえる。誤った知識保持者にモデル図を提 示する際に,モデル図の要素を正当化する教示を与える ことにより,モデル図の要素の妥当性認識が高まると考 えられる。さらに,モデル図の要素の妥当性認識が高ま れば,モデル図全体の妥当性認識の低下が抑えられ,モ デル図で示された科学的知識の学習が促されるであろ

そこで本研究では,力学を題材として,誤った知識保 持者に,カの実測によってモデル図の要素を正当化する 教示を与える教授活動が,モデル図の要素の妥当性認識

(4)

を高め,科学的知識の学習に効果を持っか否かを確かめ ることを目的とする。 仮説:カの実測によって力学のモデル図の要素を正当 化する教示を力学の誤った知識保持者に与えることが, モデル図の要素の妥当性認識を高め,分解角度と分力の 関係ルールの獲得に効果を持つだろう。

方 法

O

.

実験計画 力の実測を要因とするl群事前・事後テストデザイン であった。事前で誤った領域固有知識を保持していた者 が,事後ではどのように課題遂行するかを分析した。 なお,本実験のデザインは,処遇以外の要因の影響(履 歴の脅威)や,事前テスト実施の影響(測定の脅威)に 十分に対処できない点で内的妥当性が低いとの指摘があ る(南風原.

2

0

0

1

)

。これらの脅威に対して以下の対処 を行うことで,内的妥当性をできる限り確保するよう努 めた。 履歴の脅威に関して,教授セッションには,注目する 教授要因である力の実測以外に,実験者による力の分解 についての解説等が含まれていた。しかし,力学のルー ルを教示する目的上,実測以外の教授要因の影響を排除 することは困難で、あった。そこで,教材を力の実測を主 軸とした構成とし,その他の教授要因をカの実測を補強 する活動として位置づけることにより対処した。また, 事後テストを教授セッションの直後に行うことで,教授 セッション以外の要因の影響を排除した。 測定の脅威に関しては,本研究の教授セッションで事 前テストの回答のフィードパックを明示的に行わないこ とで,事後テスト遂行への影響を排除した。また,本 研究と問様のデザイン及びテスト課題を使用した宮田

(

2

0

1

1

b

)

では,事前テスト受験者が必ずしも事後テスト において十分な成績の向上を示さないことが報告されて いた。そのため,仮に事後テストで成績が伸びたとして も,それが直ちに事前テスト実施によるものとはいえな いと考えられる。 1 .実験参加者及び実施時期 実験参加者は国立A大学の文科系学部生72名,理科 系学部生

3

3

名の計

1

0

5

名であった。実験者が.

2

0

1

1

7

月上旬の教育心理学の講義中に実施した。

2

.

手続き 実験は集団形式であり,事前テスト,教授セッション, 事後テストの順に実施した

(

T

a

b

l

e

1

)

。事前テストは教 授セッションの直前に実施した。その際,正答のフィー ドパックを行わなかった。事後テストは,教授セッショ ンの直後に実施した。 教授セッションの手続きは,以下のとおりである。 (1)力の大きさと方向ルールの学習 参加者に,力の大きさと方向ルールに関する発問に取 り組ませた。続いて,実験者が正答のフィードパックを 口頭で行い,力の大きさと方向ルールを教授した。 (2)分解角度と分力の関係ルールの学習 1 参加者に,分解角度と分力の関係ルールに関する発問

T

a

b

l

e

1

実験の流れ 実験参加者の活動 ・事前テストに回答。 . [カの大きさと方向ルールに関する発問]に回答。 [分解角度と分力の関係ルールに関する発問I]に回答。 [分解角度と分力の関係ルールに関する発問1I]に回答。 事後テスト

-3

一 実験者の活動 . [力の大きさと方向ルールに関する発問]の正答の フィードノfック。 -力の大きさと方向ルールの教示。 -分力の実測による正答のフィードパック0 .分解角度と分力の関係ルールの教示。 -分解角度の異なる複数の図を板書し,分解角度を大 きくすると分力が大きくなることを教示。 -分力の実測による正答のフィードパック0 .分解角度が

1

2

0

度以上の場合の解説。 -まとめ。

(5)

Iに取り組ませた。続いて,参加者2名に協力しても らい,分力の大きさを測定する確認実験により正答の フィードパックを与えた。さらに,実験者が力の分解の 作闘を黒板に行い,分解角度と分力の関係ル}ルを導出 して教示した。

(

3

)

分解角度と分力の関係ルールの学習

2

初めに実験者が「分解角度と分力の関係ルールに即し て考えると,分解角度が大きくなるほど分力はどんどん 大きくなっていくことになる。また作図をしてもやはり そうなる」と教示し,黒板にその変化の様子を作図して 見せた。その後,分解角度と分力の関係ルールに関する 発問 Eに取り組ませた。 参加者が発問に回答後,分力の大きさを測定する確認 実験により正答のフィードパックを与えた。さらに,実 験者が黒板に力の分解の作図を行い,それに基づいて確 認実験の結果を解説した。解説の内容は,①分解角度 120度で分解前の力・分力・それらの矢印の先端を結ぶ 補助線が正三角形になるため,分解前の力と分力の大き さが等しくなる,②分解角度が120度を超えると分力の 方が大きくなる, したがって,③分解角度と分力の関係 ルールはどのような角度でも成り立つ,であった。

3

.

材料の構成 (1)教材の構成 教材は,発問とル}ルの記入欄を印刷した A3判用紙 l枚であった。教材では.

r

分解角度が大きくなるほど 分力は大きくなる」という分解角度と分力の共変関係を 「分解角度と分力の関係ルール」として教示した。さらに, このル}ルだけでは,なぜ分解角度と分力の聞に共変関 係があるかがわかりにくいため,その前提となる「カの 大きさと方向ルール

J

(目標から逸れた方向に力を働か せると余計に力が必要になる)も併せて教示した。した がって,教授セッションでは,カの大きさと方向ルール に関する発問,分解角度と分力の関係ルールに関する発 問I.分解角度と分力の関係ルールに関する発問Eの順 に出題した(Figure1)。 力の大きさと方向ルールに関する発問 力の大きさと 方向ルールに近い考え方で解決できる課題であった。宮 田(2凹7)では,力学の誤った知識を保持する者でもこれ と同様の課題で正答する者の比率が高かったことから, この発聞に回答することで力の大きさと方向ルールに関 連する知識が想起され,直後で教示される当該ルールの 学習が促されることが期待された。この発問の後にルー ル記入欄を設け,カの大きさと方向ルールを記入させた。 分解角度と分力の関係ルールに関する発問

I

小間

3

[力の大きさと方向ルールに関する発問

1

レールの上 のトロッコをヲ│っばって動かします。このトロッコ は,進行方向に向かつてまっすぐ100kg重の力を働 かせると動き出します。それでは,進行方向に向かつ てななめの方向に引っぱると,力がどのくらいの大 きさのときに動き出すと思いますか。正しいと思う ものの番号に

O

をつけましょう。 ①100kg重で動き出す 進行方向

100kg重より大きい力で

ご二ごエ二」ー_n

動き出す

寸「寸臨二高司

T

③100kg重より小さい力で

北 ギ 単 一 ← →

動き出す

M ?N 【分解角度と分力の関係ルールに関する発問I]2人 で荷物を支えます。この荷物は. 1人で支える場合 は1000g重の力が必要です。次の角度で支えるとき, l人分のカの大きさはどのくらいになると思います か ? (1) 2人でまっすぐ上に向かつて 支えるとき

Q

2

500g重のカ ②500g重より大きい力 ③500g重より小さい力 (2) 2人で30度の角度をつけて ななめに支えるとき ①500g重の力

oOOg重より大きい力 ③500g重より小さい力 (3) 2人で60度の角度をつけて ななめに支えるとき ①500g重のカ ~500g 重より大きい力 ③500g重より小さいカ

姐姐姐

【分解角度と分力の関係ルールに関する発問1I]角度 をどんどん大きくすると. 1人分の力の大きさはど うなるでしょう? (1) 1人で支えた時と同じ大きさ の力になると思いますか。 卑なると思う②ならないと思う

4

③わからない

e

¥

l

'r..___

s ¥

1

6

(2) 1人で支えた時よりも,大き

P

いカになると思いますか。,..., A A ^

L

むなると思う ②ならないと思う ③わからない Figure1 教授セッションの発問 下線の付いている選択肢が正答であった(Figure2も同様)。 聞からなり,発問に使用した事例は全て,分力が分解前 の力よりも小さく,誤った知識に抵触しない値であった。 この発問の後にルール記入欄を設け,分解角度と分力の 関係ルールを記入させた。 分解角度と分力の関係ルールに関する発問E 小問 2 問であった。発問に使用した事例は,分力が分解前の力

(6)

I

分担課題】AさんとBさんは.150。の角度で鉄球を 引き上げています。 Eさんは同じ鉄球を一人で引き 上げています。ム主ムと旦主Ivのパネばかりの示す 値はどのような関係になっているでしょうか。正し いと思うものの番号に

O

をつけてください。

i

l

l

A > E ② A < E ③ A = E A B E [ルール活用課題1]洗濯ひもに.300gの洗濯物をか けます。洗濯物をかけると,洗濯ひもが洗濯物の重 力で引っぱられて,ひもをとめているフックに力が 働きます。洗濯物をかけたときの角度が90度になる 場合と.130度になる場合とでは,フックに働くカが 大きくなるのはどちらでしょう? ヲヲー 2回d量 ①90度の方が力が大きい

¥

]

2

130度の方がカが大きい ③どちらも同じ大きさ フ9ク 130" 3品d量 ※ここでは、なぜ、その答えを選びましたか。理由が あれば教えてください。(回答欄は省略) [ルール活用課題

2

]

ある日,あなたは,知り合いの 中学生が図のようにして荷物を重そうに運んで、いる 様子を見かけました。彼らにアドバイスするとした ら,あなたはどのようなことを言ってあげますか? (回答欄は省略) Figure2評価課題 と等しくなるもの,及び分力の方が大きくなるものであ り,いずれの分力の値も,誤った知識に抵触する大きさ であった。

(

2

)

評価課題の構成 事前テストは教授セッションの発問とともにA3判用 紙l枚に印刷した。事後テストは別のA3判用紙1枚に 印刷した。 事前テスト 力の分解の誤った知識を保持する参加者 を同定するための事前分担課題1問であった(Figure2)。 事後テスト 誤った知識に抵触する分力の値の受け入 れ状況を測定する事後分担課題 1問,及び,教示された jレールの獲得状況を測定するためのルール活用課題2聞 の計 3問であった。 事後分担課題は,事前分担課題の角度と荷物の種類を 変えたもので、あった。 ルール活用課題1(Figure2)は,学習事例とは異なる 事例にルールを適用させる課題であった。力学の初心 者は,力を働かせる人が介在しない事例では,ルール の適用が困難であることが知られている(宮田.2010; Clement. 1993)。この課題で用いた事例は,カを働かせ る人が介在せず,分力の向きが下向きであるという点で 学習事例と異なっていた。さらに,事後分担課題,及び ルール活用課題lでは,回答の理由を自由記述させた。 ルール活用課題2(Figure2)は,ある状況の改善案を jレールに即して考案させる課題であった。課題では,ひ もとひもの角度が大きくなるようにして荷物を重そうに 支えるこ人の中学生を見かけたという設定で,彼らにか ける助言を自由記述するよう求めた。

4

.

評価課題の採点基準 事前事後の分担課題で用いた分力の値は.

i

2人で分 担すると常に軽くなる」という力の分解の誤った知識に 抵触する大きさであった。宮田 (2008)では,この課題 で

i

2

人で支えるカ

<1

人で支える力jと答えた者は分 解前の力と分力の大きさの関係の理解が不十分であり, カの分解の誤った知識を保持する者の比率が高いことが 示されている。したがって本研究では,事前分担課題で 「②A<EJを選択した者を,力の分解の誤った知識保 持者とみなした。また.

i

A

= EJを選択した者をそ の他の誤答者とした。 一方,事前分担課題,事後分担課題の正答はいずれも 「①A

>

EJであった。宮田(2008)では,同じ課題で正 答した者は,カの分解において分解前の力と分力の大き さの関係を正しく理解していることが示された。した がって本研究では,事前分担課題で正答した者をカの分 解の正しい知識を保持する者とみなした。 ルール活用課題lの正答は「②130度の方がカが大き い」で、あった。ルール活用課題2は,分解角度を小さく することを指摘した記述を正答とした。

(7)

-5-結果と考察

O

.

分析対象者の属性 事前テスト,教授セッション,事後テストの全てに回 答した87名を分析対象とした。カの合成分解の学習経験 については, 1経験あり」と答えた者が33名(38%),1経 験なし」または「忘れた」と答えた者が61名 (59%),未 記入者が3名(3%)であり,本研究で扱った内容に関 して学習経験を想起できない者が約6割を占めた。

1

.分担課題の遂行 事前分担課題では,正しい知識保持者34名,誤った知 識保持者49名,その他の誤答者 4名であった (Table2)。 事後分担課題では,事前の正しい知識保持者34名は全員 が正答した。また,事前の誤った知識保持者45名 (92%), その他の誤答者3名 (75%)が事後では正答へ転じた。 このことから,事前の誤った知識保持者の多くが,事後 では誤った知識に抵触する分力の値を受け入れた様子が 伺われる。 Table2 事前分担課題から事後分担課題への人数変化 事後分担課題 事前分担 正しい知識誤った知識 その他の 合計 課題 保持者 保持者 誤答者 正しい知識 34

。 。

34 保持者 誤った知識 45 4

49 保持者 その他の 3 l

4 誤答者 合計 82 5

87 事前で誤った知識を保持し事後で正答に転じた45 名の,事後分担課題における回答理由を分類したとこ ろ, 1分解角度120度が臨界点で,それ以上大きいと二人 で支える方が重くなるから」のように,分力と分解前の カの大小関係が入れ替わる際の角度に言及した者が19 名(42%)と最も多かった。続いて, 1角度が大きいほ ど分力が大きくなるから

J

1

まっすぐ

5

1

いた方が軽くな るから」のように教示されたルールに基づく理由が14名 (31 %),角度の大きさのみに言及した者が 3名 (7%), 教授セッションでの実験結果に言及した者が2名 (4%) であった。以上の理由は,参加者が教授セッションの内 容を受け入れたことを伺わせる記述であった。それに対 して,

1

計算した

J

のように自分なりの判断基準に基づ いて回答した者は 3名 (7%)に止まった。また,分類 不能がl名 (2%),未記入が 3名 (7%)であった。し たがって,回答理由の記述内容からも,モデル図に即し て教示した内容が受け入れられたことが見て取れる。 一方,事後分担課題誤答者の回答理由は, 1120度で“A さんの力-“Cさんの力"となる。今,角度は80度な のでjのように,臨界点の角度を手がかりにしようとし たが,着目した角度の大きさが誤っていた者が3名見ら れた。また, IAさんとBさんは2人でおもりを持って いて,確かに160度の角度はあるが, 1人で持っている Cさんの方が重いと思うから」と答えた者がl名見られ た。この参加者ふ臨界点の角度に着目すればよいこと への理解を示しているが,

1

何人で持っか

J

へのこだわ りを捨てきれない様子が伺われた。

2

.

ルール活用課題

1

2

の遂行 ルール活用課題1では,事前の正しい知識保持者は全 員が正答し,事前の誤った知識保持者は48名(98%),事 前のその他の誤答者は3名 (75%)が正答した (Figure3)。 0.9 0.8 0.7 MI 0.6 絢 0.5 同 0.4 0.3 02 0.1 0 Jレール活用課題l 課題 ルール活用課題2 -事前正しい 知識保持者 懇事前誤った 知識保持者 懇事前その他 の誤答者 Figure3 ルール活用課題の正答率 事前の誤った知識保持者のうち,ルール活用課題1で 正答した48名の回答理由を分析した結果,教示された ルールに言及した者が最も多く,分解角度と分カの関係 ルールに言及した者が30名(63%),力の大きさと方向 ルールに言及した者が2名(4%),

1

ルールを使った」 がl名(2%)であった。また,臨界点の角度に言及し た者が3名 (6%),作図をして理由を説明した者が 1 名 (2%)見られたのに対し,

1

計算した

J

という自分な りの判断基準を挙げた者はl名 (2%),分類不能が5 名(10%),未記入 5名 (10%)であった。事後分担課題 と同様に,回答理由の記述内容からも教示内容が受け入 れられたことが見て取れる。 jレール活用課題2の記述内容を分類したのが Table3 である。分力を小さくする方法として挙げられた主なも のは12人の聞の距離を縮める

J

(54%)と, 1ひものな す角度を小さくする

J

(40%)であった (Table3)。これ

(8)

Table3 ルール活用課題 2の記述分類 助言内容 適切 2人の間の距離を縮める 角度を小さくする その他 交代で運べ 抱えた方が楽 がんばれ ひもが長すぎ 2人で手を取り合って運べ 計 該当者数

8

2

(

4

7

)

(35) 5 (各1) 87

0.9 ~

哲也

7 ,t( 0.6

0.5 ~ 0.4 æ~ 0.3

2

0

2

~ 0.1 」 (1)分解前の力=分力 (2)分解前の力く分力 「分解角度と分力の関係ルールに関する発問IIJ -事前正しい 知識保持者 総事前誤った 知識保持者 慰事前その他 の誤答者 Figure4

I

分解角度と分力の関係ルールに関する発問

r

r

J

で「なると思う」と回答した者の比率 らの助言内容は,いずれも分解角度を小さくすることを したがって, 1回目の確認実験だけではモデル図の要素 指摘したものであるため適切内容とみなした。適切内容 の妥当性認識が十分に高まらなかった者が多いことが分 を記述した者は,事前の正しい知識保持者13名 (94%), かる。この結果と,事後分担課題で見られた教示内容の 事前の誤った知識保持者46名(94%),事前のその他の 受容率の高さを併せて考えると,誤った知識を保持す 誤答者4名 (100%)であった (Figure3)。 る者にモデル図の要素の妥当性認識を高めるためには, 以上のルール活用課題2聞 の 結 果 か 仏 教 示 さ れ た 誤った知識に抵触しない実測債を確認するだけでは不十 ルールを獲得した者が多かったといえる。 分であり,誤った知識に抵触する実測値を確認する必要

3

.

確認実験の効果 教授セッションのどの段階で,モデル図の要素の妥当 性認識が高まったかを明らかにするために,教授セッ ションでの発問の回答内容を分析した。教授セッション では,実測によるモデル図の要素の妥当性確認を2回 行った。 l回目の確認実験では,分力が誤った知識に抵 触しない値を示すことを確認した。 2回目は,初めに実 験者が誤った知識に抵触する大きさの分力を作図して見 せ,その後に「分解角度と分力の関係ルールに関する発 問

r

r

J

を行い,実測による確認を行った。したがって, もしl回目の確認実験で,モデル図の要素の妥当性認識 が高まったならば,その直後に,実験者が作図した分力 の億が誤った知識に抵触しても,その値を正しいと評価 するはずである。この場合.1分解角度と分力の関係ルー ルに関する発問

r

r

J

では,肯定的な回答の比率が高くな る。一方, 1回目の確認実験だけではモデル図の要素の 妥当性認識が十分に高まらなければ,モデル図提示直後 の「分解角度と分力の関係ルールに関する発問

r

r

J

では, 肯定的な回答の比率が低くなるはずである。 そこで,

I

分解角度と分力の関係ルールに関する発問

r

r

J

における肯定的な回答の比率を示したのがFigure4 である。事前の誤った知識保持者は.1分解前の力=分力j になると思うと答えた者が51%(25名),

I

分 解 前 の 力 < 分力」になると思うと答えた者が41%(20名)に止まった。 があるといえる。 討 論 本研究では,力学を題材として,誤った知識保持者に, 力の実測によってモデル図の要素を正当化する教示を与 える教授活動が,モデル図の要素の妥当性認識を高め, 科学的知識の学習に効果を持っか否かを確かめることを 目的とした。 事後テストの結果より,事前の誤った知識保持者は事 後において,Q:分解角度と分力の関係ルールを獲得した 者が多く,②各課題の回答理由としてモデル図に即して 教示された内容に言及した者が多いことが示された。モ デル図の要素が妥当であると認識していなければ,② の結呆のように,モデル図に基づいて教示された内容に 従って課題解決することは困難と考えられる。したがっ て,事後テストに回答する段階において,ルール獲得者 の多くが,モデル図の要素が妥当であると認識していた と考えられる。よって,仮説は支持された。 科学的知識の要素の特徴と学習者の領域固有知識との 関係を考慮すると,実測がより効果を持つのは,誤った 知識に抵触する特徴を実測して確認した場合であるとい える。確認実験の効果の分析で検討したように,誤った 知識に抵触しない値の分力を実測して確認した段階で は,モデル図の要素の妥当性認識が高まった者の比率が

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低かった。しかし,その後に誤った知識に抵触する値の 分力を実測して確認し事後分担課題に回答する段階に なると,モデル図に基づいて教示された内容を受容した 者の比率が高まっていた。これらの結果から,モデル図 の要素の妥当性認識を高めるためには,科学的知識の要 素の特徴が学習者の誤った知識に抵触しない場合だけで なく,抵触する場合においても実測を行う必要があると いえる。 このように実測の効果が特定の値に限定化したのは, 「個別的事実しか与えられない

J

という実測の特性によ るものと考えられる。実測は一度に一つの値しか示すこ とができないため,実測によって示されるのは個別の事 実である。米盛(1981)によれば,指標記号は,

i

まさに その対象を個体的に具体的に指示する記号であるがゆえ に,それはその対象を一般的に記述することはできない (p.154)

J

という。力学のモデル図についていえば,力 の大きさの特定の実測値は,

i

カと矢印がどのような場 金主一致する」との一般的な情報を与えるのではなく, 特定の値あるいはそれに近い値において「力と矢印が一 致する

J

ことを示すにすぎないと考えられる。そのため, 誤った知識に抵触しない値の分力を実視Jjした場合は,当 該知識に抵触しない値の範囲内で,モデル図の要素の妥 当性認識が高まったと考えられる。しかし,その認識の 高まりは限定的であるため モデル図で示された分力が 誤った知識に抵触する値を示せば,依然としてモデル図 の要素が妥当でないと判断されたと考えられる。一方, 誤った知識に抵触する値の分力を実測して確認した後 は,モデル図の要素の妥当性認識の高まりが誤った知識 に抵触する値へと拡大していたため,モデル図によって 伝達されたルールが学習されたと考えられる。このよう に,科学的知識の要素の実測値が,モデル図の要素の妥 当性認識の向上に効果を持つ範囲は限定的であるといえ る。 一方で,妥当性認識が一旦高まってしまえば,さらな る実測が必ずしも必要とならない可能性もある。事後テ ストの分析で明らかになったように,誤った知識に抵触 する値の分力を実測して確認した後は,学習者の多くが 教示内容を受け入れ,学習事例と類似した事例のみなら ず,ルール活用課題1のように学習事例とは異なる事例 にもルールを適用していた。この結果は,モデル図の妥 当性認識の高い状態が,学習事例を超えて維持されてい たことを示唆している。したがって,科学的知識の要素 の実測により,モデル図の要素の妥当性認識が高まれば, その後は逐一実測して確かめなくても認識の高い状態が 維持され,様々な事例でルールを適用できるようになる 可能性がある。ただし,本研究の事後テストは,取り上 げた事例の数や多様性が限られていたため,ここでは上 記の可能性を指摘するに止め,今後の検討課題としたい。 引用文献

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(11)

実測によるモデル図の要素の正当化が力学のルール学習に及ぼす効果 誤った知識を保持する学習者は, しばしばモデル図を理解することを困難とする。本研究では,実測によってモデ ル図の要素を正当化することで,モデル図からのルールの学習が促されるか否かを検討した。大学生105名を対象に. 分力の値を示す複数の図を呈示し,その妥当性を力の実測により確認させた。教示した分力の値は,誤った知識に抵 触しない値と誤った知識に抵触する値の両方であった。その結果,事前に誤った知識を保持

L

ていた参加者の多くが, 事後テストではルールを適用して問題解決を行った。この結果から,実測によってモデル図の要素を正当化すること で,学習者がモデル図の要素の妥当性が高いと認識するようになり,結果としてモデル図の理解とルール学習が促さ れることが示された。

J

ustification of Components of Graphic Models by Measuring Their Referent Improves Learning of Rules in Mechanics.

Learners who have misconceptions often fail to understand graphic models. This article examined whether justification of components of graphic models by measuring its referent improved rule learning. One hundred five undergraduates were showed several graphic models which displayed valu巴ofcomponent of force. and checked their validities by measuring forces. The values of component of force which were taught included both which fitted a mechanics misconception and which did not fit it R.esults suggested that most participants who had preliminarily had misconceptions got to apply rules and solve problems after the instruction. The findings suggested that justification of components of graphic models by measuring its referent made learners recognize that the components of graphic models were valid. As a result. the learners understood the graphic models and learned rules. Key words: graphic mode

.

l

misconception. rule learning

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