特別支援学級(自閉症・情緒障がい) 自立活動学習指導案
1 題材名 「オリジナル石けんをたくさん作ろう」 2-(2)、2-(3)、3-(1)、3-(3)、4-(5) 2 指導観 ○ A児は、自閉症・情緒障がい特別支援学級に在籍する小学校○年生の児童である。これまで、基 礎的な活動スキルや周囲とのコミュニケーション能力の獲得を目指し、身体の動きや人間関係の形 成、コミュニケーションの区分を組み合わせて指導を行ってきた。例えば、製作活動や調理活動を 「毎月の活動」として位置付け、目と手の協応を意識した学習活動や、共同作業を設定して協力し ながら共通の製品や作品を作る学習を仕組んできた。その結果、分量に合わせて材料を取ったり、 かき混ぜる、溶かすなどの工程のためにスプーンや電子レンジなどの道具を適切に使用したりする ことができるようになっている。また、友達と役割分担をして、困ったときには手伝いの要求をす ることができるようになっている。前題材「入浴剤をたくさん作ろう」においては、販売する商品 を作る過程で製作に伴う活動の仕組みを整え、授業を行ったことにより、題材を進めるにしたがっ てA児は活動を自ら始めたり、次の工程へ自分で移動したりする姿が少しずつ見られるようになっ てきた。 ○ 本題材のねらいは、活動に対する注意を喚起し、集中を持続していくことができるようになりつ つあるA児が、課題に対してより深く集中して取り組むことができるようにすることである。その ために、題材「オリジナル石けんをたくさん作ろう」を設定する。オリジナル石けんとは、グリセ リンソープを溶かし、食紅やアロマを入れて固め、再度石けんとするものである。好きな形や色に することができ、児童の興味・関心を喚起しやすいものであると言える。また、前題材の入浴剤作 りと工程が似ており、既に獲得している活動スキルも活用しながら製作することができる。少ない 手順で作ることが可能であると同時に、作業自体も比較的簡単なものである。したがって集中が保 ちやすく、一つを作るまでの達成感を得るのに短い時間で済むという良さがある。これはA児が今 後、少しずつ注意を阻害する要因となりうる複雑な手順の作業に向かっていく上で、段階的な発展 を見通していく中での初期段階として望ましい。これらのことは、この題材で取り扱う心理的な安 定や環境の把握の力を高めることにつながるものである。 ○ 本題材の指導に当たっては、まず気付く段階で「オリジナル石けんをたくさん作ろう」というめ あてをつかむことができるように、校区内の店舗から石けん製作の依頼の手紙が届いていることを 知るという活動を仕組む。その際、絵と吹き出しを用いて、良質な石けんがたくさん必要であるこ とが分かるようにする。その後、製作の手順をつかむことができるように、授業者と一緒に石けん の試作品を作る。A児が戸惑ったり、無意識に工程に沿わない行動をしたりしているときにはその 都度授業者が声を掛けたり演示をしたりする。そして、A児の意欲を喚起し、次時の活動につなげ ることができるように、出来上がった石けんとA児の製作中の姿の良さ、製作の留意点を振り返る 活動を仕組む。その際、石けんの出来栄えや製作において頑張っていた姿を称賛する。そして、現 時点でのA児の集中の程度や、自力でできる製作工程を把握するために、A児一人で石けんの試作 をする。その際は、極力介入をしないようにする。その後、注意を喚起し、集中を持続させること にもつながる作るときの留意点と、できていることに気付くことができるように、一人で製作して いる様子の動画を振り返る活動を仕組む。その際、留意点については分量が一杯で十分なものを何 杯か入れたり、かき混ぜ続けたりするなど活動を終えるときに手助けを必要としたことなどを示し たビデオを提示する。最後に、題材のめあて「集中して、最後まで一人でオリジナル石けんをたく さん作ろう」を設定する。 次に続ける段階で、実際の製作活動を行う。A児の製作活動の自発頻度と意欲を維持し、最後ま で一人で作り続けることができるように、製作工程の途中と最後に楽しいことができる「一息タイム」と、自分の成長を実感することができる「振り返りタイム」の活動を仕組む。その際「一息タ イム」では、製作の見通しをもつことができるように、一単位時間の「気付く」段階で、手順ボー ドを使って「一息タイム」の設定位置をA児が決定する。また「振り返りタイム」では、製作の様 子を撮ったビデオの中で自発的に行動したり、自分で終了できたりしているところを中心にフィー ドバックする。A児が伸びを実感していくことで成長そのものが動機となり、自発行動の頻度が上 がるという好循環となるようにするために、それから毎時間「一息タイム」の設定位置を決定し、 製作活動に取り組み、活動の様子の良かった点のフィードバックを行うことを繰り返していく。ま た工程の中の良かった点については、毎時間「A児がんばり表」に示す活動を仕組む。その際、無 くてもできるようになった支援や製作環境についてはフェイディングしていく。 最後に、分かる段階で、A児が自身の成長を実感することができるように、A児がんばり表を振 り返る活動を仕組む。その際、できるようになったことはシールで示し、シールの増加ができるよ うになったことの増加として視覚的に分かる形とする。また、届けた石けんに対して感謝を示した 手紙を絵と吹き出しを用いて示し、本題材をまとめる。 3 題材目標 ○ 自分自身で「一息タイム」の位置を決定・実施したり「振り返りタイム」で自分の成長を確かめ たりすることを通して、見通しをもって最後まで活動を続け、自分自身の伸びを実感することがで きる。 ○ 毎時間の振り返りの結果から自分で「一息タイム」の位置を決定することで、適切なスケジュー ル設定の仕方を身に付けることができる。 4 指導目標を達成するために必要な項目の選定 選 定 さ れ た 項 目 1 健康の保持 2 心理的な安定 3 人間関係の形成 4 環境の把握 5 身体の動き 6 コミュニケーション ○ 状況の理 解と変化へ の対応に関 すること ○ 障害によ る学習上又 は生活上の 困難を改善 克服する意 欲に関する こと ○ 他者との かかわりの 基礎に関す ること ○ 自己の理 解と行動の 調整に関す ること ○ 認知や行 動の手掛か りとなる概 念の形成に 関すること 具 体 的 な 指 導 内 容 ・前題材のことを振り返るこ とで、本題材の進め方の見通 しをもって、活動を進めるこ とができるようにする。 ・製作所要時間の評価を積み 重ねていくことで、行動の自 発及び集中の持続を実感し、 成功体験を積み重ねていく ことができるようにする。 ・題材全体を通した自身の成 長を振り返り、その伸びを実 感することができるように する。 2-(2)、2-(3)、3-(1) 2-(3)、3-(1)、3-(3)、4-(5) 2-(2)、2-(3)、3-(3)、4-(5)
5 題材計画(総時数9時間) 学習活動と内容 主な支援 配時 気 付 く 1 入浴剤作りの学習を想起し、題材のめあてを 決める。 (1) 店舗から届いた手紙を読んで、本題材の目標 を決める。 ○ 製品であるので、質が良くたくさんの数が必 要であることを認識できること (2) 授業者と一緒に石けん作りをする。 ○ 製作の手順をつかむこと (3) 製作を振り返り、次時の活動につなげる。 ○ 次時の製作活動に対する意欲を喚起すること ・店舗からの依頼内容を、絵と吹き出しを用 いて提示する。 ・製作が円滑にいかないときは、授業者が声 を掛けたり演示をしたりする。 ・製作の留意点をカードや写真で示す。 ・石けんの出来栄えや、製作の様子を称賛す る。 ・次回は一人で製作することを伝える。 ・個で製作するためのタブレット動画を提示 する。 3 ① (4) 製作環境を基に一人で石けんの試作をして、 本題材のめあてを設定する。 ○ 一人で製作する際における自身の良さや課題 をA児が理解し、めあてをもつこと ○ 道具や工程ラインなど、製作環境の使い方を 把握すること (5) 前時の製作時の良さや課題点を基に、一人で 石けんを2回製作する ○ 試作時の良さや課題点を修正し、自身の成長 と「振り返りタイム」の意義を実感すること ・製作の様子を動画で提示する。 ・できている点とこれからがんばりたい点を 明らかにする。 ・製作の様子をまとめるA児がんばり表を提 示する。 ・前時のよかったところと課題点を、A児が んばり表を使って示す。 ② 続 け る 2 商品【オリジナル石けん】を製作する。 (1) 「一息タイム」と「振り返りタイム」を設定 して、実施しながらオリジナル石けんを製作す る。 ○ 製作活動の自発頻度と意欲を維持すること ○ 最後まで一人で作り続けることができること ・手順ボードを提示する。 ・「一息タイム」「振り返りタイム」を実施す る。 ・製作の様子の動画を提示し、できていると ころを中心にフィードバックする。 ・できたことをA児がんばり表に示す。 5 ① 本 時 ) 1 / 1 ( (2) 前時の振り返りを生かして「一息タイム」の 位置を決定し、オリジナル石けんを製作する。 ○ 製作のための行動の自発及び継続が定着でき ること ○ 自分の伸びを実感できること ・必要のなくなった支援を取り除く。 ・製作途中にA児のできていることを随時ス モールフィードバックする。 ④ 分 か る 3 本題材を振り返り、できるようになったとこ ろを確かめる。 ○ 自分自身の成長を実感し、認めること ・これまでの成長点の記録を表にしたものを 提示する。 1 ① 「たのまれた石けんを先生とためしに作ってみよう」 「集中して、最後まで一人でオリジナル石けんをたくさん作ろう」
6 本時の目標 ○ 手順ボードを使って、「一息タイム」の位置を決定・実施することを通して、集中を保って最後 まで活動を続けることができるようにする。 〇 「振り返りタイム」でのフィードバックを通して、本時の自分自身の成長に対する感想と、次時 の目標をもつことができるようにする。 7 本時の展開(第4時) 段階 学 習 活 動 ・ 学 習 内 容 主 な 支 援 気 付 く 続 け る 分 か る 1 本時学習のめあてをつかむ。 (1) 前時の活動の様子をビデオで振り返る。 ○ 本時の活動の目標の把握 (2) 手順ボードを使って、「一息タイム」の位置を決定 する。 ○ 本時の活動の流れの把握 2 手順に従って石けんを作る。 ○ 製作活動の自発頻度の向上と意欲の維持 ○ 「一息タイム」の意義の実感 3 製作の様子をビデオで振り返り、本時をまとめる。 ○ 現状の達成度の自己認知と次時への目標設定 ・前時の良かったところと課題点を、 A児がんばり表を使って示す。 ・ビデオで前回のことを振り返る。 ・手順ボードで製作の流れを示す。 ・手順ボードに「一息タイム」の位置 をA児が貼る。 ・前時の課題から改善が見られたら、 その都度、すぐ称賛する。 ・一息ついた後の気持ちを聞いたり、 その後の様子でよくなったところを フィードバックしたりする。 ・前時と比較しながら、本時のA児が んばり表を記入する。 ・A児がんばり表を使って、ビデオか ら分かったA児の工程ごとの良さや 課題を、製作活動の自発の観点でま とめる。 めあて 集中して、最後まで一人で石けんを2回作ろう。 ※「一息タイム」を途中に入れよう。 ①計量カップに固形ソープを入れる。 ②食紅を入れる。 ③アロマオイルを加える。 ④レンジで温める。 ⑤よく混ぜる。 ⑥シリコン型に入れる。 ⑦型抜きをする ※ 7手順の中に、「一息タイム」を挿入する。 やっぱり楽しいです。 すっきりしました。 前より○○がよくなりました。 一息タイムのあとはがんばれました。 久しぶりの「一息タイム」の後の気持ち はどうですか。 よく集中して、一人で作ることができて います。 お手本のとおり、上手に作れています。 次は、○○ができたらいいです。 A児 教師 教師 A児 少し休めたらいいです。 前の時間、2回目を作ったときは、疲れ てしまいましたね。疲れたときにはどう したらいいでしょう。 A児 教師 どこに「一息タイム」を設定しますか。 教師 工程⑥の後がいいと思います。 A児
8 準備 ○ 手順ボード、A児がんばり表、記録用紙、提示用ビデオ ○ グリセリンソープ、アロマオイル、食紅、小さじ、計量カップ、電子レンジ、シリコン、バット 9 評価基準 本時の目標 評価基準 評価 ○ 手順ボードを使っ て、「一息タイム」の 位置を決定・実施する ことを通して、集中を 保って最後まで活動 に続けることができ るようにする。 ○ 前回、課題となったところを基に、今回の「一息タイム」の 位置を決定することができる A…前回の課題点の後に、自分で設定 B…教師の支援を受けて、前回の課題点の後に設定 C…無回答及び教師による設定 ○ 一工程における「自発、継続、終了、移行」の4場面におい て、補助支援を必要としたかどうか A…補助支援が5回未満 B…補助支援が7行程中に5回以上 C…全ての工程において、一回以上の支援が必要 ○ 「一息タイム」に対する感想を聞いた時の返答の内容 A…「集中できる」「頑張れる」等、意義を感じている発言 B…「いいです」「楽しい」等、報酬活動そのものの感想 C…無回答 or 無関係な発言 〇 「振り返りタイム」 でのフィードバック を通して、本時の自分 自身の成長に対する 感想と、次時の目標を もつことができるよ うにする。 ○ 本時の製作の様子のフィードバック数から、本時の自分の成 長に対する感想と、次時の目標を設定することができる。 ・本時の感想 A…前回からの成長を認識している発言 B…「いいです」「頑張りました」など本時のみの感想 C…無回答 or 無関係な発言 ・次時の目標 A…本時の良かったところや課題を受けての目標設定 B…振り返りとは無関係の次時の目標設定 C…無回答