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静岡県南伊豆町方言における無核型音調の音響学的特徴と聞こえ

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(1)

【論文】

静岡県南伊豆町方言における無核型音調の

音響学的特徴と聞こえ

亀 田 裕 見

On Fundamental Frequency P

a

t

t

e

r

n

s

o

f

Unmarked

Type Accent i

n

Minamizu-cho D

i

a

l

e

c

t

Hiromi Kameda

南伊豆町方言の無核型の音調ノTリエーションを音響分析を施すこ とによって見直す。東京語の無核型と比べて、基本周波数の変化動 態が様々で変化量も幅がある。基本周波数は文節中で初頭の高さを 下まわることがある一方、上昇が小さく下降の傾斜が緩やかである ことから、東京語的な聴き取りでは下降位置を定めにくく感じられ る。しかし、重起伏や連続下降の発話を分析すると、東京語と同じ 「初頭の高さ

J

が基準となって働いていると考えられる。 キーワード:南伊豆町方言、無核型、基本周波数曲線、重起伏、連 続下降

1

.はじめに一南伊豆町方言における無核型音調の問題点一 本稿は拙稿

(

1

9

9

8

、以下前稿と呼ぶ)に引き続き、特殊アクセントとい われる南伊豆町方言の

3

拍名詞無核型の音調バリエーションを、基本周波 数を抽出し、その変化パターンと調査者の聴き取りとの対照、および東京 語との対照という方法を用いて、その特徴を考察するものである。 有核型を考察した前稿で、調査者の聴き取りはあくまで東京語的な聴き 取りであり、当該方言に特有の基本周波数変化を必ずしも正確に聞き取っ ていないことが分かつた。また、共通語で下降位置の聴き取りの関わって 1

(2)

-「文学 部紀 要」文教 大 学文 学部 第12-1号 亀 田裕 見 い る基 本 周 波 数 の 「始 点 を下 まわ る位 置 」 とい う特 徴 よ り、 当 該 方 言 で は 「下 降 が 始 ま る位 置 」 の 方 が 有 核 型 の 各 型 を特 徴 づ け て い た 。 無 核 型 に お い て は ど うで あ ろ うか 。 当 該 方 言 の無 核 型 の音 相 は、 共 通 語 話 者 か らす る と非 常 に微 妙 で 聞 き取 りに くい 。 しか も、1語 が 複数 の 音 相 に よ っ て 発 音 さ れ る。 この 聴 き取 り に お い て認 め られ る音 相 バ リエ ー シ ョ ン に つ い て は拙 稿(1994)に 示 して い る。 無 核 型 の 特 徴 を ま とめ て 述 べ れ ぼ、 他 の型 よ り音 相 の 種 類 が 多 く聞 か れ 、 最 も よ く聞 か れ るの は[○ ● ○ 〉][○ ● θ 〉](○ はや や 高 い 拍 を 表 す)と い う音 相 で あ る。 また 、 下 降 の 段 差 が小 さい もの や 、 そ れ が 連 続 して 複 数 の 下 降 が 聞 こ えた り、2回 目の 上 昇 が あ っ て 重 起 伏 に 聞 こえ た り す る。 こ の よ う な 特 徴 は、 伊 豆 南 部 の 多 地 点 調 査 の 結 果 を 記 述 し た 中 條 (1996)に お い て も同 様 に報 告 され て い る 。 中 條 氏 に よ る と、 男 性 は平 板 に発 音 す る傾 向 が 優 勢 だ が 、 女 性 に[● ○ ●]∼[● ○ ◎]∼[● ○ ○]に 発 音 す る 傾 向 が あ り、 地 域 に よ っ て は[○ ● ○ 〉][○ ● ● 〉][○ ◎ ◎ 〉]も あ りゆ れ が 目立 つ とい う(◎ は や や 高 い 拍 を表 す)。 同氏 の 別 論 文 (1983)で は、2拍 名 詞 に つ い て で あ る が 、 東 京 語 で 平 板 型 に 当 た る 語 (飴 、 牛 な ど)の 音 相 は[○ ● レ][○ ● 〉][● ○[〉]の よ う に 動 揺 が 多 く、 「平 板 型 を 欠 く個 人 も い る」 と述 べ られ て い る の も、 あ る 意 味 で は頷 け る こ とで あ る。 上 野(1977)に は、 無 核 型 に は上 野 氏 の 言 う と ころ の 「句 音 調 」 が そ の ま 出や す い とい う こ とが 指 摘 され て い る。 こ の考 え 方 に よ れ ば 、 無 核 型 に 現 れ る音 調 が非 弁 別 的 な特 徴 を見 出 す鍵 とな るわ け で あ る。 まず は共 時 的 な観 点 か ら これ らの 音 相 が どの よ うに位 置 づ け られ るの か 、 話 者 に お い て どの よ う に意 識 され て い る の か を問 う こ とが 重 要 で あ る。 少 な く と も筆 者 は まだ 、 当該 方 言 の無 核 型 が 有 核 型 に移 行 す る途 中 で あ る とい う通 時 的解 釈 を述 べ るだ けの 材 料 を持 た な い。 こ の上 野 氏 の観 点 を考 慮 し つ つ 、無 核 型 に所 属 す る語 に認 め られ る様 々 な音 相 を まず は明 確 に捉 え、 そ の性 質 を 2

(3)

静岡県南伊豆町方言における無核型音調の音響学的特徴と聞こえ 改めて考えたい。

2

.

分析の観点と方法 東京語における基本周波数のパターンの特徴については、杉藤美代子氏 の研究 (1969a・1969b・1972) が、絶対的な音の高低配置ではなく、音 調の「動態

J

、すなわちアクセント核のある次の母音の下降が、アクセン トの聞こえを決定していることを明らかにしている。また、

2

拍名詞の結 果であるが、篠木・佐藤 (1991・1992) にも詳しい分析がある。資料とし ているのは

NHK

アナウンサーの発話である。これによると、

/00[>/

の下降は緩やかで、高い

2

拍目と最も低い助詞の基本周波数の差は平均 56Hzで、

/00

寸[>/の平均周波数差149Hzと比較すると二つの型の違 いは明らかである。基本周波数の動態は、 1拍目は低く 2拍目は高く続く が、

2

拍目以降は真っ平らではなく

2

拍目以降助詞にかけて緩やかに下降 し、助詞は

1

拍目より高くつく傾向にあるo この「助詞が

1

拍目より高く つくか低くつくか

J

は平板型と尾高型を区別するとしているo いずれにし ても、無核型における下降は緩やかで、、それを東京語話者は下降として開 き取っていない。いわゆる「自然下降

J

である。 これらの東京語の先行研究を参考に、本稿では以下の観点、で基本周波数 の変化パターンを記述し、東京語との比較および調査者の聴き取りとの関 係を見ることにする。

A.

基本周波数の変化ノfターン ①基本周波数曲線の上で下降が始まる拍 ②発話初頭の高さを下まわる拍 ③

2

回目の上昇・下降の有無(重起伏・連続下降)

B

.

基本周波数の絶対変化量 ①上昇量(基本周波数の発話初頭値と文節中の最高値との差) 3

(4)

-厂文学部 紀 要」文 教大 学 文 学部 第12-1号 亀 田裕 見 ② 全 体 下 降 量(文 節 中 に お け る 基 本 周 波 数 の最 高 値 と最 低 値 の差) ③ 下 まわ り下 降 量(発 話 初 頭 値 を基 準 とし て文 節 中 にそ れ を どの 程 度 下 まわ る か 。① 一② の計 算 で 求 め 、 マ イ ナ ス の値 を とれ ば下 まわ る こ と を表 す) Aの ① ∼ ③ は 前 稿 で も扱 っ た 観 点 で あ る。Bの ① ∼ ③ の 観 点 は、 南 伊 豆 方 言 だ けで な く東 京 語 も無 核 型 の音 調 は基本 周 波 数 の変 化 量 が 小 さ い た め 、 両 者 の 違 い を よ り明 確 に記 述 す るた め に付 け加 え た もの で あ る。 3.調 査 と資 料 に つ い て 本 稿 の資 料 は、 前 稿 と同 様3拍 名 詞 の 文 発 話(○ ○ ○ ガ ア ル)を ラ ンダ ム に 読 み上 げて も らっ た 結 果 で あ る 。 静 岡 県南 伊 豆 南 伊 豆 町 の 話 者 はTK 氏(大 正 ユ3年 生 ま れ ・女 性)、 東 京 語 の 話 者 はNM氏(昭 和51年 生 ま れ ・女 性)とNHKア ナ ウ ンサ ー(注1)で あ る。 調 査 に つ い て の 詳 し い こ とは 前 稿 に 述 べ た と お りで あ る。TK氏 の 発 話 回 数 は1語 に つ き 平 均 25.8回 で あ っ た が 、 こ の うち 録 音 状 態 な どの不 備 の た め に 音 響 分 析 に耐 え られ な い もの もあ り、 本 稿 の分 析 に は この うち1語 に つ き20発 話 が 分 析 対 象 とな っ た(注2)。NM氏 の 調 査 は10回 発 話 、N:HKア ナ ウ ンサ ー の発 話 は1発 話 で あ る。 分 析 語 例 は、 南 伊 豆 町 方 言 で は 「車 」 「煙 」 「二 十 歳 」 厂椿 」 の4語 を取 り上 げ る。 この う ち 「二 十 歳 」 と 「椿 」 は東 京 語 に お い て は頭 高 型 で あ る が 、 南 伊 豆 町 方 言 に お い て は 音 相 の バ リエ ー シ ョ ン の 出 現 の 仕 方 か ら 「煙 」 や 「車 」 と同 じ型 で あ る と判 断 さ れ る(注3)。 東 京 語.の分 析 語 は 「車 」 と 「煙 」 で あ る が 、NHKの ア ナ ウ ンサ ー の 発 話 で は 「煙 」 が な い た め 厂鯨 」 を示 す 。 基 本 周 波 数:の抽 出 に は音 声 録 聞 見(東 大 音 声 研)を 使 用 した 。 結 果 を ま と め た表 中 の1頂番 は発 話 順 で は な く、 基 本 周 波 数 変 化 の上 で 第1下 降 の 始 ま る拍 が 早 い順 に配 列 して あ り、 発 話NOは 便 宜 的 な もの で あ る 。 4

(5)

静岡県南伊豆町方言における無核型音調の音響学的特徴と間こえ

4.

東京語における無核型の基本周波数曲線の特徴 先に東京語の特徴について述べる。

N M

氏の結果を表

1

2

に、アナウ ンサーの結果を表

3

4

に示す。これを見ると両者の聞には若干異なる点 がある。それは、基本周波数変化の絶対量と、下降の始まる拍である。 絶対的な変化量では、上昇の大きさがアナウンサーは

5

0

-

-

-

-

-

6

0

H

z

に対 して、

N M

氏は「車」での平均

33.6Hz

、「煙jで平均

2

8

.

3Hz

と小さい。 全体下降量もアナウンサーで大きく、

N M

氏は小さい。これは図1 (アナ ウンサー)と図 2・3

(NM

氏)に示した実際の基本周波数曲線の全体的 な形状を見ても確認される。アナウンサーは明瞭な「への字

J

型を描く が、

N M

氏は平坦な形を措く。上昇量も、「自然下降

J

といわれる基本周 波数の低下も非常に小さい。 下降の始まる拍は、アナウンサーが

2

拍白からであるのに対して、

N M

氏は 3拍のはじめ、あるいは 3拍の途中からと遅い。つまり、

N M

氏は

1

拍目が上昇、

2

拍目はほぼ平らに続き、

3

拍目から徐々に下がり気味にな るという動態を示す。 しかし、両話者には文節中(助詞の末尾までの問)で初頭の基本周波数 の高さを下まわるかどうか、という点では一致している。両者とも下まわ らない(*)かあるいは、わずかに下まわるとしても末尾の助詞で下回 る。その絶対量は大きくても

6Hz

で、ほぽ文節中では初頭の高さを下ま わらないといえるo この結果は、前述の篠木・佐藤両氏の先行研究の結果 のとおりであることを確認したことになるo

5

.

南伊豆方言の基本周波数変化パターンの特徴 以上の東京語の特徴と比べながら、表

5

-

-

-

-

-

8

に示した南伊豆町方言の基 本周波数変化の特徴について述べる。 一 5ー

(6)

1 ① 1 〈凡 例 〉 下降 の始 まる拍 初頭の高 さを下 まわ る拍 第2上 昇 の有 無 上昇 の聞 こえ 下 降の聞 こえ 厂0 51L22 。 3 1拍 目か ら3.5=3拍 目途 中か ら 1拍 目途中か ら4:4拍 目か ら 2拍 目か ら4.514拍 目途 中か ら 2拍 目途中か ら 3拍 目か ら 1 2 3 葉 1拍 目 中に 2拍 目 中に 3拍 目 中に 4拍 目 中に 文 節末 まで下まわ らない 1:[「 ○ ○ ○ △ …] 2:[○ 「○ ○ △ …] 3:[○ ○ 「○ △ …] 1 1.5 2 3 [(=)「○ ○ △ ● ●]3.5:[○ ○ ○ △ 一1・ ・] [○ ○ 「 ○ △ ・ ・]4:[○ ○ ○ △ 一1・ ・] [○ ○ 「 ○ △ ・ ・]0.[○ ○ ○ △ …] [○ ○ ○ 「 △ ・ ・] ↑:有 り マイナ ス付き数値 は聴き取 りにお いて、下降 の段差 が小さ いことを示す [表1]東 京 NM氏r車 」/○ ○○/ 注:各 発話 は似 た音相同士 を並 べて配列 してあ り、発話NOは 発音の順 を示す ものではな い。 [表3]闇Kア ナ ウ ンサ ー 「車 」/○ ○ ○/ L恥 」 ♂1馬 発話NO 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 発話NO 1 基本 周波 数の 絶対 変化量 上 昇(Hz)・ ・ ・ … ① 31 48 44 19 25 18 25 49 42 38 基本 周波数 の 絶対 変化量 上 昇(Hz)・ ・ ・ … ① 50 全 体 下 降(Hz)・ … ② 25 25 2 25 31 24 19 35 31 18 全 体 下 降(Hz)・ … ② 52 下 ま わ り下 降(Hz)① 下② 6 23 42 一6 一6 一6 6 14 11 20 下 ま わ り下 降(Hz)① 一② 一2 基本 周波数 の変化 下降 の始 まる拍 3' ・3・ 3 3.5 3、5 、3.5 3.5 3,δ・ 3.5・ ジ3げ51 基本 周波数 の変化 下 降 の始 まる 拾::・ ・ 2 初頭 の高さ を下 まわる拍 * * * * 4 * * * * * 初頭 の高 さを下 まわる拍 * 聞 こえ 上昇 の聞 こえ 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 聞 こえ 上昇 の聞 こえ 2 下降 の聞 こえ 一3 0 0 0 一3 0 0 0 一3 0 下降 の聞 こえ 0 [表2]東 京NM氏r煙 」/OOO/[表4]闇Kア ナ ウンサ ーr鯨 」/○ ○ ○/ 発話NO 1 2 3 4 5 6 7 8 9 皇0 発話NO 1 絶 対変化量 基 本 周 瀲 の1上 昇(H・)● ● ●."① 30 31 18 24 30 30 24 24 29 43 基 本周波数 の 絶 対変化 量 上 昇(Hz)・ ・ ・ … ① 60 全 体 下 降(Hz)・ … ② 30 25 12 30 24 24 12 24 15 20 全 体 下 降(Hz)・ … ② 60 下 ま わ り下 降(Hz)① 一② 0 6 6 一6 6 6 12 0 14 23 下 ま わ り下 降(Hz)① 一② 0 基本周波数 の変化 不降 の始ま る拍 … .1、3,、卜 ・、3坐 }・ン 熾 織:51、 、31灘集 』 ;:藁8諭 il 「/ξ ㌧rl冖 二;;1「ピ 基本周波数 の変化 苓 降 の:始泰 る抽 湯 ツ ∼ ・ …ご2} 初頭 の高 さを下まわ る拍 * * * 4 * * * * * * 初頭 の高 さを下まわ る拍 * 聞 こえ 上 昇の聞 こえ 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 聞 こえ 上 昇の聞 こえ 2 下降 の聞 こえ 0 0 0 0 0 0 一4 0 一3 0 下降 の聞 こえ 一4 [衷5]南 伊 豆TK氏r車 」/OOO/ 発話NO 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11' 正2 13 14 15 16 17 18 19 20 基本 周波数の 絶対 変化量 上 昇(Hz)・ ・ ….・ ① 0 21 51 18 13 48 37 38 37 37 52 12 12 20 44 6 37 18 29 49 全 体 下 降(Hz)・ … ② 54 40 49 69 56 62 42 51 ・37 50 37 32 37 44 26 32 45 58 37 26 下 ま わ り下 降(Hz)① 一② 一54 一19 2 一51 一43 一14 一5 一正3 0 一13 15 一20 一25 一24 18 一26 一8 一40 一8 23 基本周波数 の変化 第1幟 降の始 まる拍∵ 漫 嘱一・・ぼ:∴ 』窪、,拠i・ む:…2灘・ i松 欝、弓'尸广卜 ! 燬 麟 泌5わ し3甑驫翫 ∼i 第2上 昇の有 無 ↑ ↑ ↑ ↑ 第2:下 降 の 始 ま る 拍1菰レ 」 け 「∴ 三き4,「. 匸1 鴨 ・賊 ,、』弓 丁 .窯 』"』'ジ11'「1=卜㌧端レ』、 ・';匸、1・繊b』 }ゲ鷲 1「 ・1・。、、皆ご淳1・ り 穏・」 、 鞭 『 き・「ド撚 嵩;欝 う 頭 強 哀 ….7∵・』」r;、一2{ 「「广 初頭 の高 さを下まわ る拍 1 3 * 2 3 4 4 4 5 4 * 3 3 2 * 3 4 3 4 * 聞 こえ 上 昇の聞 こえ 1 一2 2 1 1 2 2 2 2 一2 2 1 1 1 2 一2 2 一2 2 2 第f下 降 の 歸 こ え 〔1'ご1. 一1∵ 」2!、∵ぴ・、,蟻 、ら 广乱■=■ r,紘1' ll:磯 「国 矍霍 '」与 =トウ, モ广 ・:ゴ・1晦麟 1≒3匸.一 射 ご や.、o: 第2下 降の 聞こえ 4・ 一3 一3 一3 1 一4 一4 4 一3 一3 一3 一 嶺諮 L 髏 匿 1 一 覗且 田

(7)

刈 [衷6]南 伊 豆TK氏r煙 」/○ ○○/ 発 話NO 藍 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 基 本周波数 の 絶 対変化量: 上 昇(Hz)・ ・ ・ … ① 0 26 43 37 71 19 35 24 44 17 29 38 68 32 68 37 43 39 37 35 全:体下 降(Hz)・ … ② 63 ・39 45 49 .56 56 86 29 63 43 43 43 43 55 51 50 46 63 52 30 下 ま わ り下 降(Hz)① 一② 一63 一13 一2 一12 15 一37 一51 一5 一19 一26 一14 一5 25 一23 17 一13 一3 一24 一15 5 基本周波数 の変化 第喰下降の嫌 魏 舶 ※ 1議努6≒ 幺臠 2務 ;膿昏 露s ごi…舗 譲愈騨:幺 、1騨…瀚 、}岱ぎ 黛3 、1ミ鷺ふ、1:茖 1:1::;灣ii 尸9!" ぎ :.3…1葺、3;5 第2上 昇 の 有 無 ・ ↑ ↑ 第2下 降 の始 まる拍 ド1、卜 孕 ←」 鮮3蓬 己! 帽'匸 、3、蠡 ♂ζ・嵐 ゼ4 Ψ 4癒 魚.,粍ぼ 1:罫llドぐ ト ・;囁「、7 』∫げ 弓 4 μ 4汚:1・ μ 尸 初 頭の高 さを下まわ る拍 1 4 4 4 * 2 3 4 4 3 3 4 * 4 * 4 4 4 4 * 聞 こえ 上 昇の聞 こえ 1 一2 2 一2 2 1 一2 一2 一2 1 1 一2 2 一2 2 一2 一2 一2 一2 一2 第 主下降の闘 こえ 冖∵ 譖 嘱2.3・ 尸:暇警・冷:2 ,.、 念 15 乏 1・碗3・ 戸卜FP i篇 、2 、、、麺1 弓丁尸壱 」 、蠡3 撰 、;麟 曙 」幺… 3 鑿魂 :、一 焦 ' 「.「4・ 第2下 降 の聞 こえ 一4 一3 3.5 一4 一4 一4 [表7]南 伊 豆TK氏r二 十歳」/○ ○○/ 発 話NO1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 豆2 13 14 15 16 正7 18 正9 20 基本周波数 の 絶対変化量 上 昇(Hz)・ ・ ・ … ① 56 50 62 31 56 49 43 25 56 31 74 50 58 49 68 29 44 62 62 26 全 体 下 降(Hz)・ … ② 62 50 45 62 37 80 58 19 71 61 62 50 58 23 26 32 44 33 62 26 下 ま わ り下 降(Hz)① 一② 一6 0 17 一31 19 一31 一15 6 一15 一30 12 0 0 26 42 一3 0 29 0 0 基本周波数 の変化1 第1下 降 め始 嵐る拍 「、2・ 、2 '∴2,:「 尸2 '壌 懇1:含5 秘落 2賦!{羅5 3護』:β 一 トぎ 葺3 3∴ 3 .31: 3秉i 13・ 4.、5 第2上 昇 の有無 ↑ ↑ ↑ 第2邪 降 φ始 まる拍 ・'レ 、 4 」4,護 姦毳皆 「辷尸了匸Fi鵬 己 「 「 瑾i誤 、il、F げ〉 蜘45 ドロ族 ;4.・51 初頭の高 さを下 まわ る拍 4 * * 2 * 2 4 * 3 2 * * * * * * 4 * * * 聞 こえ 上昇の 聞こえ 1 一2 2 1 2 1 一2 2 一2 1 2 一2 1 一2 2 一2 一2 2 一2 一2 第 ・1下降iの閉 こ1洛\ ㌦ 』 ご壕2・ 匡4 61 藤 ・辱2 4 繍 1擁 ;噸 尸 li:2 議懿評 猶 」砲2 , 趣ll綿 幺て、・2i 一3 ・:』2㌧ 4 第2下 降 の聞 こえ 1-4 一4 3 一3 4 一4 【表8]南 伊 豆TK氏r椿 」/OOO/ 発話NO 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 正5 i6 17 18 19 20 基本周波数 の 絶対変化 量 上 昇(Hz)・ ・ ・ … ① 43 50 35 42 37 38 29 35 25 44 43 49 49 26 41 32 42 39 42 38 全 体 下 降(Hz)・ ・.・ ・② 81 84 56 63 45 75 26 75 58 39 62 43 75 58 47 32 45 39 82 76 下 ま わ り下 降(Hz)① 一 ② 一38 一34 一2豆 一21 一8 一37 3 一40 一33 5 一19 6 一26 一32 一6 0 一3 0 一40 一38 基本周波数 の変化 第1下 降 の始 ま る拍一 24、 、 '21 '魑: a 辺5 貌 募5,慧2:5'慧 冨,∵窰:な 悪i轟3 "恥 言 ・:1冒観f 3}1"3、 窩3: .麟暇 匸實 3 弓』3 第2上 昇 の有無 ↑ ↑ 第2不 降 の始 ま る 抽,、 、 「- 。*: ト气,

急{へ7L 、蚤ら :弓 藷i丁 塩 φ 嚥・鵠陣・、A・,iボ ー

り弓,b尸 ト ビ 忍45 .4;弐5、 415, 初頭の 高さを下 まわ る拍 3 3 3 2 4 3 * 3 3 * 3 * 4 3 41* 4 * 3 3 聞 こえ 上昇の 聞こえ 1 2 2 一2 2 一2 一2 一2 1 一2 一2 2 一2 一2 2 一2 一2 2 2 一2 第1下 降 の聞1こ宜 夙盛 韮.5、 2 露 ・:「 冒3f ,題. 塗1 ←蠣 ・1蓋 一3. 一3 譲} 2 ∴・:3い 0 ・ヤ 、、o" ,o ・2 、 轡2、 第2下 降 の聞 こえ 一3 一3 一3 国 コ叫1 言 q 鯊 鴫 ㊦ 田匿 嬾 伴 臼 淋》

(8)

「文学部紀要

J

文教大学文学部第12-1号 亀田裕見

2

工 図 1 東京アナウンサー「車」 図 2 東京N M氏『車J 図 3 東京N M氏 f煙J (発話No.i T 発話NO.8) 発話NO.2) 図 4 南伊.aT K氏「椿J 図 5 南伊豆 T K氏「車J 図 6 南伊豆 T K氏「煙」 (発話NO.1 ) 発 話NO.5) 発話NO.14) -O~- 0.1 図 7 南伊豆 T K氏「車J 図 8 南伊豆 T K氏「車』 図 9 南伊豆 T K氏「煙J (発話NO.1 ) 発 話NO.12) 発話NO.10)

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ttlo e 図 10 南伊豆 T K氏「車J 図 11 南伊豆 T K氏f煙J 図 12 南伊豆 T K氏『二十歳J (発話

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.

175~ 発話NO.11) 発話NO.5)

8

(9)

-静 岡県南伊 豆 町方 言 にお ける無核型 音調 の音 響学 的特徴 と聞 こえ 5-1.基 本 周 波 数 の 変 化 パ タ ー ン ① 下 降 が1回 の音 相 南 伊 豆 町 方 言 の 音 調 に は、 文 節 中 に 下 降 が2回 現 れ て 連 続 下 降 を した り、 更 に第2上 昇 が 起 きて重 起 伏 にな る こ とが あ るが 、 先 に下 降 が1回 の み の 発 話 に 限 っ て 見 る。 まず 、 下 降 の 始 ま る拍 は 「1」∼ 「4.5」ま で と幅 が 広 い。 そ の 中 で も出 現 頻 度 の 高 い 位 置 は 「2」(図4)「2.5」(図5)「3」(図6)で あ る。 全 体 中2例(「 車 」NO.1、 「煙 」NO.1)し か な い が 「1」(図7)も 確 か に 存 在 す る。 これ は前 稿 で 扱 っ た/σ ○ ○/(東 京 語 の頭 高 型 に相 当 す る) に も見 られ な か っ た パ タ ー ンで あ る。 初 頭 の 高 さ を 下 まわ る拍 は 「1」∼ 「*」 と、 これ も範 囲 が 広 い。 出 現 頻 度 の 高 い位 置 は 「*(下 まわ らな い)」 「4」「3」で あ る。 下 降 の 始 まる 拍 と初 頭 の高 さ を下 まわ る拍 との組 み 合 わ せ に も、 取 り立 て て 傾 向 は見 い だ せ な い。 例 え ば 「車 」 の 発 話NO2∼4の よ う に、 下 降 の 始 ま りが 「2」と早 くて も、初 頭 の 高 さ を下 まわ る 拍 は 「2」「3」「*」 が そ れ ぞれ が あ る。 語 に よ る傾 向 に も特 に 目立 つ もの は無 く、4語 の 傾 向 が 似 通 っ て い る こ と は、 これ らが や は り同 じ型 の所 属 語 で あ る こ と を裏 付 け て い る。 た だ 、 「二 十 歳 」 の 初 頭 を下 ま わ る拍 に 「*(下 ま わ ら な い)」 が10発 話 あ り、 他 の 語 よ り多 い こ とが 目立 つ 。 「二 十 歳 」 の発 話 だ け は助 詞 を 「が 」 で な く 「に」 を と っ て 、 「二 十 歳 に な る」 とい う発 話 文 に な っ て い る こ とが 原 因 か も しれ な い 。 し か し、 こ の10発 話 の う ち6発 話 は、 下 まわ り下 降 量 が 「OHz」、 つ ま り文 節 末 で 初 頭 の 高 さ と ち ょ う ど同 じ位 置 まで 下 が っ た 発 話 で 、 実 は 「*」 に近 い。 これ を除 け ば ほ か の 語 例 と大 差 は な い。 ② 第2下 降 の あ る音 相 次 に第2下 降 の あ る連 続 下 降 や 重 起 伏 の形 を 示 す 発 話 に つ い て見 る。 前 稿 の 有 核 型 に も、 と りわ け/○ ○ σ/に 同 様 の 発 話 が 存 在 して い た 。 東 9

(10)

「文 学部紀 要」文 教大学 文学 部第12-1号 亀 田裕見 京 語 の無 核 型 で も、 ア ナ ウ ン サ ー の発 話 に顕 著 な よ う に、確か に下 降 は何 拍 に もわ た っ て徐 々 に続 いて い る が、 これ は連 続 下 降 と は見 な さ な い 。当 該 方 言 で 第2下 降 が あ る と指 摘 で き る の は、1度 下 降 を した 後 に再 び上 昇 を した り基 本 周 波 数 が 平 坦 に な る こ とが あ る か らで あ る。 基 本 周 波 数 曲線 の形 状 は、 前 者 はM字 型 に 山 が 二 つ で き(図8・9) 、 後 者 は階 段 状 に な る(図10・11・12)。 こ の 第2下 降 の 始 ま る 位 置 は 「3。5」「4」「4.5」 「*」 で 、 この うち 多 い の は 「4」「4.5」で あ る。 これ らにつ い て は後 に ま た 述 べ る。 5-2.絶 対 変 化 量 上 昇 や 下 降 の 絶 対 的 な 基 本 周 波 数 の 変 化 幅 か ら見 て も同 じ こ とが 言 え る。 次 の 図13・14は 上 昇 量 と下 降 量 の関 係 をプ ロ ッ トした グ ラ フで あ る こ こ に示 す 下 降 量 は、初 頭 か ら助 詞 まで の第2上 昇 ・第2下 降 を含 め た 文 節 全 体 とし て の変 化 量 の 幅 で あ る。 これ を 見 る と、 東 京 語 と南 伊 豆 方 言 の音 調 バ リエ ー シ ョ ンの 広 さの 違 い が 明 らか で あ る。わず かだが双 方 とも グ ラ フ 中 の プ ロ ッ トは右 上 が りの 分 布 で 、 上 昇 量 が 大 き い ほ ど下 まわ る下 降 量 は少 な い とい う相 関 関 係 が あ る程 度 認 め られ る。 しか し、 南 伊 豆 は東 京 に比 べ て上 昇 量 も下 降 量 も分 布 領 域 が幅 広 い。 ま た 、東 京 語 の下 降 量 はプ ラス の 値 が 多 く、初 頭 の 位 置 を文 節 中 は 下 まわ る こ とが な い が 、 一 方 南 伊 豆 方 言 で は プ ラ ス 値 も示す が、 発 話 の 約3分 の2 10一

(11)

静 岡県南 伊豆 町方 言 にお ける無核 型 音調 の音響 学 的特徴 と聞 こえ はマ イ ナ ス値 を 示 し、 初 頭 の高 さ を下 まわ る こ とが多 い 。 6.聞 こ え と基 本 周 波 数 曲 線 の対 応 篠 木 ・佐 藤(前 掲)に 指 摘 さ れ て い る聴 き取 り にお け る調 査 者 自身 の方 言 の 影 響 は 、 東 京 語 的 な聴 き取 りをす る調 査 者(筆 者)が 南 伊 豆 町 方 言 を 聴 き取 る に あ た って も同様 に認 め られ る こ とは前 稿 で確 認 した。 特 に連 続 下 降 や 重 起 伏 な どの 音 相 は必 ず し も基 本 周 波 数 の とお りに聴 き取 って い な か った 。 無 核 型 の 音 調 は ど うで あ ろ うか 。 まず 、 無 核 型 の 聴 き取 りは 、 有核 型 に ま して下 降位 置 を特 定 し に く く感 じ、 ま た そ の 上 昇 下 降 も段 差 が 小 さ くて 不 明 瞭 な 印 象 を受 け る。 この よ う な 中 途 半 端 な 高 さ に 感 じ ら れ る 音 相 は 前 述 の 中 條(前 掲)や 、 馬 瀬 (1961)で も指 摘 さ れ て い る。 表 中 で は これ を マ イ ナ ス 付 きの 数 値 で 表 し て い る。 調 査 者 は南 伊 豆 の発 話 の ほ とん ど を小 さ な段 差 と して聴 き取 っ て い る。 数 は 少 な い が 、 明 瞭 な 段 差 だ と感 じ る発 話 を み る と、2拍 目 以 前 に 明 瞭 な 下 降 を 聞 き取 る の は 、 下 まわ り下 降 量 が 「一38∼ 一51Hz」 の よ う に大 きい もの で あ る 。3拍 目 よ り後 で な ら ば 「一10Hz」 に以 下 で も、 ま た 「4(助 詞 の後 の 下 降)」 な らば初 頭 の高 さ を下 まわ らな くて も明 瞭 だ と 感 じ て い る。 し か し、例 え ば 「煙 」 のNO.12とNO。17の よ う に 、似 た よ う な基 本 周 波 数 で も異 な る段 差 に聴 き取 って い る。 絶 対 的 な 数値 の幅 に 決 定 的 な 差 は認 め られ な い 。 下 降 が あ る と聞 こ え る位 置 に つ い て は 、 東 京 語 で は ほ ぼ 「0」に 聴 い て お り、 と き に 「一4」(助 詞 の 後 で や や 下 が っ て 聞 こ え る)や 「一3」 が あ る程 度 で あ る。 これ に対 し て南 伊 豆 で は格 段 に種 類 が 多 い 。 前 項 で見 た よ うに基 本 周 波 数 の 動 態 と変 化 量 自体 に幅 が あ る の だ か ら当 然 の こ とで は あ る。 この 聞 こ え を 、 東 京 語 の基 準 とな って い る初 頭 の 高 さ を下 まわ る拍 との 関係 か ら み る,東 京 語 的 聴 き取 りをす る調 査 者 は これ を基 準 に して い る と 一11一

(12)

「文学部紀要j文教大学文学部第

12-1

号 亀 田 裕 見 予想されるが、下まわり位置が同じ「煙

J

N

O

.

2

-

-

-

.

.

.

.

4

1

4

-

-

-

.

.

.

.

1

7

や「二十 歳

J

NO.2• 3

8

'

"

"

'

-

'

1

0

1

2

-

-

-

.

.

.

.

1

5

1

9

でも下降位置を異なって聴き取っ ていて、相関は見いだせない。南伊豆方言有核型の特徴となっていた下降 の始まる拍との関係を見ても、「車」の

N

O

.

4

-

-

-

.

.

.

.

l

l

のようにこれも様々に 聴き取っている。 基本周波数曲線の上で連続下降や重起伏を示す発話についても、「車

J

NO.18

や「椿」の

NO.18

などのように、第

2

下降が無視され、基本 周波数上の変化を必ずしも聞き取っていない。この点、は前稿でも指摘した ことだが、無核型ではさらに「車

J

NO.2.4

6、「二十歳」の

NO.

9

2

1

2

などのように、基本周波数上にはない第

2

下降まで聴いている 点が注意される。 このように、基本周波数の特徴と聞き取りの聞には明確な対応がないの はなぜであろうか。南伊豆方言の基本周波数は文節中で初頭の高さを下ま わることが多く、そのため下降があると聞こえるが、その一方で上昇の幅 も小さく下降の傾斜が非常に緩やかであることが原因ではないかと思われ る。東京

N M

氏のように上昇も小さく下降の傾斜が緩やかであっても、 初頭の高さを下まわらなければ聴き取りに迷いはない。前稿に示した(注 4)有核型の基本周波数と比べても、東京語では初頭の高さを下まわると きはかなり明瞭な下降を示す。この違いが、南伊立の音調では初頭の高さ を下まわった位置をはっきりさせられない、かといって下降がないとも言 えないという、調査者にとっては不安定な聞こえに感じさせているのであ ろうo 7. 連続下降及び重起伏と初頭の高さ 以上のように南伊豆方言の無核型の音調は基本周波数曲線の上でもバラ エティに富み、聴き取りにおいては不安定である。このこと自体が無核型 の特徴ではあるが、もう一つの特徴について述べたい。それは、先にも少

12

(13)

-静岡県南伊豆町方言における無核型音調の音響学的特徴と聞こえ し触れた連続下降と重起伏に見られる。なお、基本周波数曲線の形状が階 段状や

M

字型になっていなくても聞こえの上で連続下降に聴き取ってい るものがあったが、以下ではそれを除いて考える。 連続下降と重起伏の聞には第

2

上昇の有無という違いのほかに、もう一 つの傾向がある。それは第

2

下降が起こる以前に基本周波数が初頭の高さ を下まわるかどうかという点である。今回の資料で第

2

下降のある発話は

2

5

例あるが、そのうち第

2

上 昇 を 持 つ

1

1

例 中

9

C

f

J

NO.1

1

2

1

3・1

4

、「煙

J

NO.10

、「二十歳

J

NO.4・1

0

、「椿

J

NO;4・9

)

は 第

1

下 降の後、初頭の高さを下まわっている(図 8

9)。第 2上昇を持たない連 続下降は、

1

4

例 中

1

0

C

f

J

NO.17・1

9

、「煙

J

NO.9・1

1・1

8・1

9

、 「二十歳

J

NO.5 • 1

6・1

8

、「椿

J

N

O

.

1

8

)

が第

1

下降の段階では初頭の高 さを下まわらない(図

1

0

'

"

'

-

'1

2

)

。第

2

下降の後で下まわるが、時には「二 十歳」の

NO.5

NO.18

のように、第

2

下降の後でも文節中は初頭の高 さを下まわることのない発話もある。 さらに、重起伏音相の第

2

上昇の大きさを見ると、ほぼ初頭の高さにま で戻っている発話がが多く、

9

例中

7

例ある。残りの

2

例は初頭の高さに は及ばないが、初頭の高さ以上に上昇することはない。また連続下降

9

例 の中では、第

1

下降の結果、初頭の高さと同じ位置まで下がり、その位置 で高さを保って平坦な形状を示す発話が

4

C

f

J

NO.19

、「煙

J

NO.

9

• 1

1・1

9

)

ある(図

1

1)0 模式図で表すと次のようになる。 連 続 下 降 重 起 伏 初 頭 の 高 さ →

--~ス---L竺、ー園、一一

-~----つまり、第

1

下降でまだ発話初頭の高さを下まわっ.ていなければ、初頭 の高さと同じかそれ以上の基本周波数を文節末近くまで維持し、第

1

下降 で初頭の高さを下まわってしまえば、文節末で初頭の高さまで一旦戻る。 すなわち、「発話初頭の高さ」を文節末にまで維持しよう、維持できなけ れば回復しようとする動きであるといえないだろか。重起伏になる発話の l 3

(14)

-「文 学部 紀要 」文教 大学文 学部 第12-1号 亀 田裕見 下 まわ り下 降 量 は 、 最 低20Hz以 上 、 平 均 で29.3Hzで あ り、 先 の 図13 の 中 に位 置 づ け て み て も下 降 量 の大 き い 発 話 で あ る こ とか ら も納 得 で き る。 つ ま り、 南 伊 豆 方 言 の無 核 型 の 音 調 に は 、 東 京 語 に は見 られ な い文 節 中 に初 頭 の 高 さ を下 ま わ る音 調 が 多 く、 しか も その 下 ま わ る位 置 は い ろ い ろ な拍 で起 こ るの だ が 、 そ れ で も 「初 頭 の高 さ」 とい う もの が 何 らか の基 準 と して働 い て い る とい う こ とで あ る。 従 っ て 、 無 核 型 で重 要 な の は第2下 降 で は な く、 高 さ を平 らに 維 持 す る、 また は第2上 昇 をす る こ との方 だ と い う こ とに な る。 そ もそ も第2下 降 自身 は下 降 量 が 小 さい 上 に、時間上 の 長 さ も非 常 に短 い 。 調 査 者 に は聴 き取 れ な い こ と も あ る。 第2下 降 の な い 発 話(図4∼6)に お け る、 時 間 をか けた 緩 や か な 下 降 と は 異 な り、 短 く 落 ち る よ うな感 じで あ る。 む ろ ん 、 こ の 高 さ の 維 持 や 第2上 昇 は 必 ず あ る と は か ぎ ら な い。 表 5∼7を 見 て の とお り、第1下 降 で 早 々 に初 頭 の 高 さ を下 まわ っ た ま ま、 文 節 末 ま で下 が り続 け る発 話 も多 い の で あ る。 この よ うに無 核 型 に お い て も 厂発 話 初 頭 の高 さ」 とい う もの が 基 準 と し て働 い て い る こ と は確 か だ と思 わ れ る。 それ が い つ も働 く とは 限 ら な い の は な ぜ だ ろ うか。 この 基 準 が効 力 と して 弱 い た め に働 か な い こ とが あ る の か 、働 か せ な い何 か が あ るの だ ろ うか(注4)。 当 該 方 言 の 音 調 は 、機 能 や性 質 を一 元 的 に 考 え られ な い よ うで あ る。 これ は有 核 型 と併 せ て 考 察 し た い 。 8.ま と め 以 上 述 べ た よ う に南 伊 豆 町 方 言 の無 核 型 音 調 の基 本 周 波 数:変化 に 見 られ る特 徴 は、 変 化 量 の 幅 も、 下 降 の始 ま る位 置 や 初 頭 の 高 さ を下 まわ る位 置 な どの変 化 パ タ ー ン 自体 もバ リエ ー シ ョ ン に富 ん で い る こ とに あ る 。 東 京 語 との最 大 の違 い は 発 話 初 頭 の高 さ を文 節 中 で 下 まわ る こ とで あ る。 しか 一14一

(15)

静岡県南伊豆町方言における無核型音調の音響学的特徴と聞こえ し、南伊豆方言の無核型の上昇は小さく下降は緩やかで、実際のところ、

NHK

アナウンサーの無核型の語の発話の方がよほど下降の傾斜は急であ る。そのため、東京語的聞き取りでは下降したと感じる位置が特定しにく く、下降も段差が小さく感じられるのである。 緩やかな下降と言って思い出されるのは、上野

(

1

9

8

8

)

の「下降式アク セント

J

や佐藤

(

1

9

8

7

1

9

9

6

)

の「下降調」であるo 南伊豆町方言の無核 型音調がこの下降式に相当するとは言わないが、「緩やかな

J

下降が多く の方言において弁別的に機能していないからといってそれが「不安定

J

な、あるいは「過渡的な

J

音調であるという理解は誤りであるという佐藤 氏のことばは重要である。本稿も南伊豆町方言には「緩やかな下降

J

とい う音調が存在することを積極的に認めたい。 また、連続下降・重起伏という音相は、聞こえと一致しない場合もある が、少なくとも基本周波数曲線の上で確かに存在することが確認できた。 これらは、下降が初頭の高さを維持したり、「初頭の高さjに戻ろうとす ることによって生まれた音相であると考えられる(注

5

)

0

残された課題は、本稿の無核型の結果と、前稿の有核型の結果と併せて 3拍名詞の全体として南伊豆町方言の基本周波数変化の特徴をまとめるこ とである。特に有核型

/000'/

と無核型

/000/

は、下降の始まる 位置の許容範囲が広いという似た傾向を持っており、両者の境界が明確に 見いだせるかどうかが問題である。また、これらの特徴は、実際の話者に おげる認識に合致するものであるかも明らかにする必要があるだろうO 〈注〉 1 .杉藤美代子ほか(1992)

I

全国共通項目(2)

J

(r日本語音声におりる韻律 的特徴の実態とその教育に関する総合的研究』音声データベース)より抽 出した。 2.

I

車・煙・二十歳・椿

J

の4語とも 20回分の発話が分析できたのは偶然 の一致である。

3

.語の型所属は拙稿 (1994)を参照 -15

(16)

「文学 部紀 要」文教大 学文 学部 第12-1号 亀 田裕 見 4.前 稿 の 図5・7・10・12 5.拙 稿(1994)で 、 聴 き 取 り に よ る音 調 バ リエ ー シ ョ ンか ら帰 納 し た2つ の 音 声 的 規 則 く 初 頭 さ が り規 則 〉(発 話 の初 頭 で 上 昇 し そ の 後 す ぐに 下 降 し な け れ ば な らな い)と く 高 さ保 ち規 則 〉(音 韻 論 的 に下 降 の許 さ れ る標 識 の 位 置 まで は 明 らか に 高 く発 話 し な けれ ば な ら な い)の う ち 、 後 者 と類 似 す る。 音 響 分 析 に よ る 考 察 で も 同 様 の 結 果 に 導 か れ た こ お は 重 要 で あ る。 〈参 考 文 献 〉 今 川 博 ・桐 谷 滋(1989)「DSPを 用 い た ピ ッ チ ・フ ォ ル マ ン ト実 時 間 抽 出 と r そ の発 音 訓 練 へ の応 用 」 『電 子情 報 通 信 学 会 技 術 研 究 報 告 』SP-89-36 上 野 善 道(1977)「 新 潟 県 村 上 方 言 の ア ク セ ン ト」 『金 田 一 春 彦 博 士 古 稀 記 念 論 文 集 第2巻 』 三 省 堂 上 野 善 道(1988)「 下 降 式 の 意 味 す る もの 」 亀 田 裕 見(1994)厂 自 由 変 異 体 の 多 い 方 言 音 調 の 構 造 的 記 述 一 静 岡 県 南 伊 豆 町 方 言 に お け る3拍 名 詞 に つ い て 一 」 『国 語 学 』179 亀 田 裕 見(1998)厂 静 岡 県 南 伊 豆 町 方 言 に お け る 音 調 バ リ エ ー シ ョ ン と基 本 周 波 数 曲線 一 有 核 型 の 下 降 に 関 す る 形 状 と聞 こ え 一 」 『文 教 大 学 文 学 部 紀 要 』11-2 佐 藤 栄 作(1987)「 ア ク セ ン トの 「下 降 調 」 を め ぐ っ て 一 併 せ て 香 川 県 高 瀬 ア ク セ ン トの 用 言 の 音 調 の 報 告 一 」(日 本 方 言 研 究 会 第44回 研 究 会 発 表 原 稿 集) 佐 藤 栄 作(1996)厂 ゆ る や か な 下 降 調 の 聴 き取 り と 内 省 に つ い て 」 『言 語 学 林 1995∼1996』 三 省 堂 篠 木 れ い 子 ・佐 藤 和 之(1991・1992)「i無 形 ア ク セ ン トの 音 相 実 態 と共 通 語 化(1)(2)一 栃 木 県 氏 家 町 方 言 ア ク セ ン トを例 と し て 一 」(文 部 省 重 点 領 域 研 究 「日本 語 音 声 」 研 究 成 果 報 告 書 『東 日本 の 音 声 論 文 編(1)(2)』) 杉 藤 美 代 子(1969a)「 動 態 測 定 に よ る 日 本 語 ア ク セ ン トの 解 明 」 『言 語 研 究 』55 杉 藤 美 代 子(1969b)「 音 程 動 態 測 定 に よ る大 阪 ・東 京 ア ク セ ン トの 一 考 察 」 『国 語 学 』79 杉 藤 美 代 子(1972)厂 お そ 下 り考 一 動 態 測 定 に よ る 日 本 語 ア ク セ ン トの研 究 (そ の 一)」 『大 阪 樟 蔭 女 子 大 学 論 集 』10 中 條 修(1983)「5『.静 岡 県 の 方 言 」 『講 座 方 言 学6中 部 地 方 の 方 言 』 国 書 刊 行 会 一16一

(17)

静 岡 県南伊 豆 町方 言 にお ける無 核 型音 調 の音 響 学的特 徴 と聞 こえ 中條 修(1996)厂 伊 豆 南 部 特殊 ア ク セ ン ト」 『日本 語研 究 諸 領 域 の 視 点 下 巻 』平 山輝 男博 士米 寿記 念会編 明治 書 院 馬瀬 良雄(1961)「 三 、方 言の実体 と共 通 語化 の問題 点9.山 梨 ・静 岡 ・長 野 」 『方 言学 講座2東 武 方言』 東京 堂 一17一

参照

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