国語科における音読授業づくり
∼子どもたちのこだわりの音読を通して∼
中 村 正 雄
国語科の学習において声に出して読む活動は機会も多く,特に低学年では楽しみながら取り組むことができる。 子どもたちが「自分だったらこういう風に音読する」 「もっと音読したい」と思う気持ちを大切にしていくことが 重要である。本研究では,2学年国語科「お手紙」を3つのこだわりを通して取り組んでいく。子どもたちが物語 を読んで感じたことにこだわりをもって音読していくことで,考えを深めていくことや楽しみながらより多くの 物語に触れることが出来るのではないかと考え研究した。 キーワード:音読,お手紙,アーノルド=ローベル,並行読書,単元を貫く言語活動,こだわり1
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研究目的
本校の研究主題 「問い続け学び続ける子どもたち」 に迫っていけるように子どもたち一人一人をみとりな がら学習を進めていく。子どもたちが学習課題に興味 をもち,友だちと意見を交流する中で新しい見方や国 語科教材のおもしろさに気付いていけるように単元を 貫く言語活動を位置付けることにした。本研究では, 物語の「こだわり」(本学級では選りすぐりをこだわり と呼ぶ)を交流し合うことにより,アーノルド=ローベ ル作品を十分に味わえるようにした。子どもたちが物 語を読んで選りすぐったところを声に出すことで物語 のおもしろさを表現し,音読の楽しさにも触れ,多読に もつながると考えた。 2研究方法
本研究では, 2学年国語科 「お手紙」の実践について 記述する。 「お手紙」とは手紙がきっとこないだろうと悲観 的になっているがまくん,友達であるがまくんのため にお手紙を出して励まそうとするかえるくんの温かい 物語である。低学年の子にとっては登場人物が身近な 生き物であり,物語を通して友達について思いを巡ら すことが出来る教材である。子どもたちがこだわって 音読したいところを 「こだわりポイント」として授業 の中で交流する。①物語の中でなぜそこを選んだのか ②選んだこだわりポイントをどう音読するのかという ことに焦点を当てながら授業を進めていく。 2. 1.付けたい力の明確化 学習指導要領の指導事項に沿いながら子どもたちを みとり,発達段階に応じた指導を設定した。自分のクラ スでは,毎日の取り組みもあり音読への興味が高い。 「お手紙」の学習を通して自分が1番好きなアーノル ド=ローベル作品を自分なりにこだわって音読するた めに単元の学習目標として次のように設定した。 ◎「がまくんとかえるくん」シリーズからお気に 入りの物語を選び,場面の様子や登場人物の様 子が表れるようにこだわりをもって音読する ことができる。0
「がまくんとかえるくん」の物語の様子につい て豊かに想像を広げながら読むことができる。 2. 2.単元を貫く言語活動 単元目標を達成するため言語活動として「こだわり のお話を音読する」という活動を位置付け学習してい くことにしt~ そのために「お手紙」を通してがまく んやかえるくんの心情に焦点を当てながら音読してい くようにした。 2. 3.単元計画 付けたい力を軸にしながら言語活動を考え,「お手紙」 の単元計画として以下のように設定した。 第1次単元の見通しをもつ。 ① 教師が「お手紙」を音読し,音読への興味をもたせ る。感想を交流し合う。 ② 学習課題を設定し,学習の見通しを立てる。 第2次 「お手紙」のこだわりポイントを交流する。 ③ 「お手紙」クイズを通しておおまかな内容をつかむ。 ④ 登場人物の気持ちが伝わるようなこだわりポイン トを探す。 ⑤ がまくんが不幸せな気持ちで待っている場面のこ だわりポイントを交流する。 ⑥ かえるくんがかたつむりくんにお手紙を出す場面 のこだわりポイントを交流する。 ⑦ がまくんとかえるくんがお手紙について会話のや り取りをしている場面のこだわりポイントを交流-12-する。 ⑧ 2人が幸せな気持ちで座っている場面のこだわり ポイントを交流する。 第 3次 音 読 劇 を す る。 ⑨ 自分が選んでいる音読をしたい作品について登場 人物の気持ちが伝わるようなこだわりポイントを 探す。 ⑩ァでこだわりポイントを話し,音読の練習をす る。 ⑫ グループ同士で音読を発表し,アドバイスする。 ⑬ 音読を発表し,振り返りをする。 自分が物語の中でこだわって音読したいところ(登 場人物の気持ちがよく表れているところ)を交流する。 子どもたちの「ここを大切に音読したい」「自分だった らこんな風に読むよ」といった子どもたちの考えをも とに音読することで子どもたちの工夫あふれる音読が 出来るのではないかと考えた。 2. 4. 教材との出合い 単元学習に入る前にアーノルド=ローベル作「ふた りは」シリーズを読み聞かせした。読み聞かせたのは 「クッキー」「アイスクリーム」「なくしたボタン」の 3つ の話である。3話読み聞かせした時点で1番好きな作 品を子どもたちに選ばせた。子どもたちは悩みながら も選んだ作品に自分の名札をつけた。「こだわり掲示 板」と名づけた掲示板にお気に入りの作品を視覚化さ せ,子どもたちの作品に対する興味•関心を高めた。 ま た,子どもたちには好きな作品が変わったら名札を貼 りかえても良いと伝え,教室に読書コーナーを作った。 (2 0作品から選りすぐった作品をこだわりのお話と 名付けることにしt-=.,,)そして,全 20話の話を掲示す ると朝の読書で「ふたりは」シリーズを読んだ子が早速 名札を変えに来た。毎日,写真を撮って記録をしながら かわった子には理由を聞いたり,みんなの前で紹介し たりするなどの活動をした。
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(図 1 好きな物語の視覚化) こだわりのお話が変わった子は「親友って言葉が心 に残ったから」「がまくんが面白いから」などと自分で 作品を読み味わいながらお気に入りの話を決めていた。 また,図書ボランティアの方々にも読み聞かせをして いただいた。中にはどんどん好きな作品に出合って名 札の位置が変わったり,好きな作品がいくつもあって 選ぶのに迷ったり,「やはりこの話が1番だ」となかな か変わらなかったりした子どももいた。どの子どもも 楽しそうにお話を選んでいる姿を見ることが出来た。 教室の一角には読書コーナーを作り朝の読書や休憩時 間に手にとって作品を読めるようにした。休憩時間に は絵本を手にとって友達と楽しそうに音読をする姿も 見られた。 3 学習の実態 3. 1.単元のはじめ 単元の始めには「お手紙」という作品に興味をもち, 音読を意識して学習に取り組むことが出来るように教 師 2人でがまくん,かえるくん役に分かれて音読を行 った。音読の後には,心に残ったところや感想を交流し た。がまくんとかえるくんの関係や物語の面白さに着 目した子どもや最後の幸せになったというところが心 に残ったと書いた子どももいた。1番多かったのはお 手紙の内容がとても心に残ったという意見である。 3. 2.こだわりポイント 「お手紙」の第2時では何人かが音読した後に,「ど うしたらもっと上手に音読できるか」と訊いてみた。子 どもたちからは「がまくんやかえるくんになりきって」 「お話の世界に入って」「すらすらと」「声の大きさを考 えて」などの意見が出た。子どもたちから「もっと上手 に読みたい」という想いが感じられた。すると一人の女 の子が「こだわり音読をしてみては?」とつぶやいたの でみんなの前で紹介してもらった。すると違う子ども から「それやったらこだわって読むところを見つけた らいい」という発言が出た。そして,今度はまた違う子 どもが「こだわりのところを工夫したらいい」と言った。 一人のつぶやきから思考がつながった瞬間であった。 よって課題を「こだわったお話(お気に入り)でこだわ ったところをこだわって音読する」という「2 Aこだわ り音読たい」として音読をしていくことにした。(3つ のこだわり)そして,授業では「お手紙」の中で自分が こだわって音読したいところをこだわりポイントとし て交流していくことを確認した。-
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本学級では本読みを毎日の宿題として習慣づけてい る。主に△ (もう少し) .0
(だいたいよい) ・◎ (た いへんよい)の三段階で保護者に聞いて頂き評価して もらうのだが,回数を重ねるごとに評価が上がり,一生 懸命音読している姿が見られた。今回は, 「2 Aこだわ り音読たい」という題で新しい音読カードを作った。 音読やがまくん,かえるくんの心「青を意識できるよう に項目を 「声の大きさ」「すらすら」「がまくんになり きって」「はやさ・間のとり方」「こだわったところ」 とした。保護者にも呼びかけ,本番として1回お家の人 に聞いてもらうこととした。最初は△が多かったが, 「◎をとりたい」「もう少し速さに気を付けて読むよう にするよ」と子どもたちからももっと上手に読みたい という気持ちが感じられた。また,保護者のコメントか らも「∼ところがかえるくんにそっくりでした。」「が まくんになりきって読めていました」などと工夫して 音読する姿も増えていった。 保設尊f
のコメントや成長 したところは絶えず子どもたちに声をかけていくよう に心がけた。 3. 3 こだわりポイントの交流 子どもから出たこだわりが抽象的であったので子ど もたちと一緒に定義付けをした。子どもたちからは「心 に残ったところやがまくん,かえるくんの気持ちがよ くわかるところ」として「こだわりポイント」と名前を 付けた。そして,「お手紙」の中でこだわりポイントにな りそうな候補に線を引いた。そのあと,自分が最も大事 にしたい(こだわりたい)ところを選び,理由を書いて場 面ごとに交流していった。以下,子どもたちが考えたこ だわりポイントである。 ・「今,一日のうちのかなしい時なんだ。つまり,お手紙 をもつ時間なんだ。そうなるといつもぽく,とてもふ しあわせな気もちになるんだよ」 ・「だって,ぼく,お手紙もらったことないんだもの」 •かえるくんは大いそぎで家へ帰りました。 えんぴつ と紙を見つけました。紙に何か書きました。紙をふ うとうに入れましだ。ふうとうにこう書きましこ ・「今まで,だれも,お手紙くれなかっだんだぜ。きょう だって同じだろうよ」 ・「ばからU
ハこと言うなよ」 ・「だって,ぽくが,きみにお手紙だしたんだもの」 •そしてかえるくんからのお手紙を,がまくんにわたし ましだ。お手紙をもらって,がまくんはとてもよろこ びました。 ・『親愛なるがまがえるくん。ぽくはきみがぼくの親 友であることを,うれしく思っています。きみの親友, かえる』 •お手紙をもらって,がまくんはとてもよろこひました。 第7時では,がまくんとかえるくんがお手紙につい て会話のやり取りをしている場面について学習した。 教師: こだわりポイントを紹介しましょう。 けんと:「だって,ぼくが,きみにお手紙出したんだも の」のところです。(音読する) 教師:じゃあ同じ所を書いた子読んでみようか。 みか: (3人音読する)「出したんだもの」を強めに 読みます。 教師:なぜかえるくんはがまくんにバラしてしまっ たのかな。 さとる:内緒だと (がまくんが) かなしいままだか ら。 ゆうと:でも渡した方力刻喜以\よ。 さくら:今まですっとかえるくんは(お手紙を出し たことを)秘密にしている。がまくんを喜 ばせたい。だからちょっと強く読んでみる。 こだわったところについて「00
だからわたしは∼ 読む」というようにがまくんやかえるくんの立場にな って考え,音読することが出来ていた。理由と共に交流 し,何人かに音読してもらう活動を入れた。友達のこだ わりポイントについても自分から「読みたい」と進ん で音読する姿もあった。読み方が違ったり理由が違っ たりする場合は子どもたちにその理由を訊いて本文に 戻って考えた。 授業の最後には場面を音読し,友達同士で音読レベ ル(まちがえずに,声の強弱,なりきって)を星 3段階 で詔価し合った。友達に評価してもらった後には「星 3 つもらっ t~ 」「00 くんのなりきり度がすごかった よ」という声があがった。-
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-(図3 ペアで音読する) 4授業の考察 第7時では「お手紙」の中でがまくんの心情が大き く変化した「だって,ぼくが,きみにお手紙出したんだ もの」のところを中心として授業を行った。子どもた ちのこだわりポイントを事前にみとり,授業の半ばで 考えるつもりが始めの方で意見を出させてしまった。 しかし,中心部分を始めに考えることで本文の前の部 分から登場人物の心情を考え,音読することが出来て いた。かえるくんが何回も窓からかたつむりくんが来 るのを待っていることに着目することが出来たのであ る。よって今まで秘密にしていたけど,がまくんの言動 に耐えきれなくなって言ってしまったという意見が授 業をより深めることに繋がった。その反面始めにこだ わりポイントを前に貼って視覚化したのだが,子ども たちの意見を発表し,全て共有化することが出来なか った。教師がしつかり考えさせたいところとそうでな いところの軽重をつけることができれば良かったと思 う。また,こだわりポイントを紹介した後に子どもたち に音読してもらうのは,違いや自分が選んでいなくて も友だちの意見を聞いて音読する姿があったのでとて も良かったと感じる。しかし,授業の中でもっと多くの 子どもたちに音読させることが出来れば良かった感じ た。そうすることによって友達のこだわりポイントが 自分の音読を向上させる1つの要素になりうるからで ある。どんどん音読させることによって「自分だった