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<研究ノート>保育者養成校と保育・子育て支援実践の場との連携に関する研究

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Yasuko Yahagi, Mikiko Saiki A Study on Cooperation between the Teacher Training Institution and practitioners of Child Rearing Support

保育者養成校と保育・子育て支援実践の場との

連携に関する研究

は ぎ

や す

 斉

さ い

〈要  旨〉  本研究は,保育者養成校教員である筆者らが,併設園である認定こども園1)において継 続して実践してきた教員によるわらべうた実践,ならびに学生による子育て支援事業2) の参加体験への取り組みを養成校と保育・子育て支援実践の場との連携のあり方を考える 観点から振り返り,考察を加えたものである。  その結果,2015 年 4 月の子ども・子育て支援新制度施行において新たな幼保連携型認定 こども園としてスタートした当該園と保育者養成校との連携については,大学教員の来園 を期待し,世代の近い学生の参加を身近な存在として受容する保護者の実態,実習とは異 なる学生の親子体験の成果を高く評価する一方で受け入れ姿勢を模索する支援者の実態, 参加学生に認められた養成教育における体験の有効性などが確認された。そして,養成校-実践現場間の学生や親子に対する共通理解や,事前打ち合わせや事後の振り返りを協働的 に行うことの必要性が明らかとなるとともに,日々の実践に追われる保育・子育て支援実 践の現場,教育活動以外に様々な学務に追われる養成校教員の実態から,その時間的余裕 のなさが課題として改めて明らかとなった。 〈キーワード〉 保育者養成,子育て支援,連携,わらべうた実践,学生参加

Ⅰ.はじめに

1.問題の所在と目的  2012 年 8 月に参議院で可決・成立し,新制度施行に伴い施行された改正認定こども園法の 第二条(定義)に見るとおり,幼保連携型認定こども園とは,満 3 歳以上の子どもに対する教育な らびに保育を必要とする子どもに対する保育を一体的に行うとともに,保護者に対する子育ての支 援を行うことを目的として設置された施設であり,また,同法で言う子育て支援事業とは,地域の子

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どもの養育に関する保護者の相談に応じ,必要な情報の提供および助言を行う各事業を指すも のである。つまり,認定こども園とは,法令上,このように在園児の保育と保護者に対する子育て 支援,そして,地域の子育て親子に対する子育て支援事業を実施する施設であると言える。  本研究の筆者は,いずれも大学併設の認定こども園やその他の保育・子育て支援実践の場に おいて,在園する子どもや地域の子育て中の親子に対する当該園の保育・子育て支援事業への 支援を実践してきた。併設園の場合,具体的には,認定こども園の在園児やそこに併設されてい る地域子育て支援センターに来所する地域の子育て中の親子を対象とした大学教員によるわらべ うた講座の実践,同センターの土曜日事業への保育学生派遣,同センターにおける「子育て支援 実習」の実施などである。  音楽教育ならびに保育学・保育者論を専門とする筆者らは,併設園と本学との連携事業とし て,保育現場に入り,わらべうたの実践ならびに子育て支援事業への学生参加の取り組みを継続 的に行ってきた。しかし,これまで保育現場と養成校側との連携において,この実践を研究的な視 点で分析するには至っていない。また,以下のⅡ.先行研究に見るとおり,連携の視点からこの種 の実践を取り上げた研究は少ない。  そこで本稿では,まず,保育・子育て支援実践の場でわらべうたの実践ならびに子育て支援事 業への学生参加がどのように受容されているのか,また参加学生自身は自己の経験をどのように捉 え,その後の養成教育や保育者の職務に従事しているのかについて聞き取り調査を行い,それら の成果と課題から,保育者養成校と保育・子育て支援実践の場との連携のあり方について探って いきたい。 2.研究方法  実践記録,連携先の認定こども園の地域子育て支援センター職員ならびに保育教諭,参加学 生への聞き取り調査などをもとにした分析・考察を行う。 3.倫理的配慮  聞き取り調査結果に関しては,本研究以外の目的で使用することはないこと,職員名,保育教 諭名,参加学生名が特定されないようにすること,来所親子のプライバシーに配慮した記述とする ことについて,調査先併設園の施設長の同意を得ている。また,同様の内容について,参加学 生全員に説明し,同意を得た上で聞き取り調査を実施している。

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Ⅱ.先行研究

1.わらべうたの保育実践に関する先行研究   保 育におけるわらべうたの意 義について述 べられた研 究は多い。その中でも,尾 見 (1999,2001)3),秋山(1999,2003)4)は,わらべうたには多面的な教育力があり,表現力,共感す る力,社会性,人格形成に寄与するものであるとしている。さらに障害児保育における実践では, 和田(2010)5)は身体の共鳴や応答性に着目し,わらべうたには,共感が生まれるしかけ,相互主 体的な関係が育まれるしかけがあるとし,保育者の身体性を通して子どもに働きかけられることが, 子どもの様々な育ちに対して大きな意義をもつと述べている。わらべうたがもつ特性が人と人との 関わりを深め,そこを土台とするからこそ,様々な育ちへとつながっていくのだろう。さらに,親子を 対象とした子育て支援におけるわらべうたの実践においては,斉木(2008)6)が,子どものみならず, 親自身も変化することで子どもとの関係性が深まることを述べた。このように,わらべうたが保育の 教材として有意義なものであることは広く受け入れられているが,保育者養成の段階で単に保育 実技の一つとしてわらべうたを学ぶ・知る機会があるだけでなく,わらべうたによって学生自身も育 つことを示した研究として,嶋田(1999)7),尾見(2008)8)梶谷ら(2015)9)が挙げられる。嶋田は, わらべうたをソルフェージュ教材として用いることで音楽の基礎力に留まらず,保育者として求めら れる「声」の表現力へとつながる可能性を示唆している。一方,尾見,梶谷らは,養成校の学生 がわらべうたを保育の場で実践的に経験し,その後の省察を繰り返しながら,継続的に学ぶこと での成果を述べており注目に値する。尾見は,1 年間にわたり,わらべうたをテーマに卒業研究を 目指す学生と教員の連携で,2 歳児をもつ親子を対象としたわらべうたの保育実践を継続的に行 い,親子の変化を肌で感じ取ることで学生がわらべうたへの深い理解を得たとしている。梶谷ら は,養成校において,応答する身体性(注 1)に着目し,わらべうたの学びを演習科目や実習体験 だけでなく,心理学,児童文化論でも取り上げるなど,多方面からのアプローチによるわらべうたを 核とした 4 年間の教育プログラムを構成し,その成果について述べている。  これらの先行研究から,わらべうたの実践は,子ども,養育者,保育者の関係性を深めてくれる だけでなく,養成校の学生においても,知識だけに留まらない身体的な学びを得ることができること が分かる。その意味で,保育者養成におけるわらべうた実践の有効性は確かに認められると言え るが,その知見については,保育・子育て支援実践の場である併設園に十分に伝えられていると は言い難い。また,それが,保育・子育て支援実践の場で実施され得る可能性については,併 設園との間で協議の途にも上っていないのが実情となっている。従って,養成校教員による併設 園でのわらべうた実践が,親子や支援職員ならびに保育教諭にとってどのような意義があるかに ついて,まずは明らかにしておく必要があると言えよう。

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2.子育て支援実践の場への学生参加に関する先行研究  近年,子育て支援に関する研究分野は,保育研究の中の一翼を担う分野として年々着実に拡 大してきている。その中から子育て支援実践の場への学生参加を取り上げている研究について, 過去 5 年間の全国保育士養成協議会の第 51 回~第 55 回研究大会「研究発表論文集」,なら びに日本保育学会第 65 回大会~ 69 回発表要旨集を概観してみたところ,次のような状況となっ ている。すなわち,前者発表論文集では,5 年間で 46 ほどの研究報告がなされ,後者の発表要 旨集では,29 の研究発表が認められた。中でも目を引くのは,保育者養成校の学内子育て支援 施設あるいは実践における活動の歩みと学生の学びを取り上げている研究10)の多さである。アウ トリーチ型,出前出張型,学外の子育て支援センターでの実践,サークル活動やゼミ単位での地 域の子育て支援事業への参加,地域連携事業の一環としての子育て支援実践などにおいても養 成課程の保育学生の体験と学びが研究成果として報告されているものの,学内子育て支援施設 における研究成果報告と比較するとずっと少ない。  学生による子育て支援実践の場への参加に関しては,狩野ら11)(2012,2013,2014)が,学 内の子育て広場での学生の体験と学びを,子どもの発達支援・親子関係支援・保育カンファ レンスやエピソードを活用した対話や省察を通じた子ども・保護者・学生相互の育ち合とい う視点から様々なアプローチを試み,実習指導の実質化と体系化を図っている。また,小原ら (2012,2014,2015,2016)12)は,保育者養成校が行っている子育て支援活動の実態や,学生に身 に付くことが期待される知識や技術などについてアンケート調査し,学生の実習体験との違いをイ ンタビュー調査し,さらに,子育て支援活動に参加する学生の学びに関する研究結果を報告する など,一貫して子育て支援力の育成に関して追究している。矢萩(2013,2014,2015,2016)13)もま た,自らが主宰する 2 歳児保育室での学生の体験と学びについての振り返りと位置づけを試み, 選択必修科目として 2013 年度に立ち上げた「子育て支援実習」の評価項目の検討経緯を考察し, 子育て支援施設と保育者養成校との連携について,現場での聞き取りや協議を重ねた結果,養 成校と保育・子育て支援実践の場との連携と養成と育成との連続性が,保育者養成における不 可欠の課題であることを示した。この「子育て支援実習」については,2012 年度にすでに取り組ま れている例14)もあり,また,筆者(矢萩)の視察訪問によれば,岐阜県にある大学では「地域子育 て支援実習」15)として手間暇をかけ,精緻な指導書も作られ,15 日間実習が実施されている先行 例もある。  以上のことから,学生による子育て支援実践の場における経験については,養成校側としては, かなりその意義と重要性を評価してきていると言えるであろう。但し,その実践や実習プログラム は,その地域や受け入れ施設,養成校固有の条件や状況に細かく影響を受ける面が否めず,さ らに,そのプログラム実施は,特定の教員による調整・采配と実行力にかかっており,具体的な連 携のあり方については,未だ十分には検討されていない。そこで,本研究では,受け入れ側であ る地域子育て支援センター職員がどのように保育学生を受け入れ,参加学生が自身の体験をどの

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ように捉えているかということを通して検討していく。

Ⅲ.実践報告

1.大学教員によるわらべうた実践 (1)実践の概要 1)実践の対象 ①併設園の在園児(0 歳児,1 歳児,2 歳児,3 歳児,4 歳児,5 歳児)(注 2) ②地域子育て支援センターにおいて,わらべうた講座を受講した親子 (※講座は,申し込み制で定員 15 組である。) 2)実践の目的 ①併設園:  当該園の教育の特色は,「子どもも大人も一人ひとりが尊重され,生きる喜びがもてるところ」とい う保育理念が,以下の当該園が願う子どもの姿として集約されている。わらべうたの実践は,この 教育の特色に位置づくものとして導入された。  “大人の愛情につつまれ安心して育つ子ども”  “心も体も弾ませてすこやかに育つ子ども”  “人とかかわる楽しさを感じながら育つ子ども” ②地域子育て支援センター:  当該センターでは,“ふれあい”“学びあい”“支えあい”“分かち合い”を柱とし,様々な取り組みが 行われている。わらべうたの実践は,その柱に位置づくものとして取り入れられている。現在では わらべうたを知らない母親が多く,親子のふれあいのきっかけ,さらには講座を通して親同士の友 達づくり(母親と子どもの一対一の関係に留まるのではなく)に拡がることを期待している。  これらの方針を踏まえ,わらべうたの実践は,まずは大人と子ども,さらには子ども同士の関係性 やつながりを深めることを第一の目的として行った。 3)園児および,受講親子の背景 ①園児: 0 ~ 2 歳児までは 3 号認定児,3 ~ 6 歳児までは,1 号認定児(従来の幼稚園児)と2 号認定児(従来の保育園児)の混合である。 ②地域子育て支援センターの親子:  核家族がほとんどである。参加者は,子どもの年齢が 0 ~ 1 歳児の親子が多く,2 ~ 3 歳児は 少ない。その理由として,まだ自由に歩き回ることができない乳児の間は,ゆったりとしたふれあい 遊びをやりたいと考えわらべうた講座を希望するが,年齢が上がるにつれ子どもが動く遊びを好む ことや,動くと迷惑をかけるという遠慮から選ばない傾向があることが挙げられる。

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4)実践履歴  筆者(斉木)の併設園ならびに地域子育て支援センターにおける 7 年間のわらべうた実践の履 歴を以下の表 1 にまとめる。 年度 対象 年間実践回数計 在園児・対象クラス 地域子育て支援センター親子 2011 11/22(月)3,4,5 歳児2012/1/20(木)0 ~ 1 歳児,2 歳児 11/18(木),2012/1/20(木) 4 2012 6/3(金)1 歳児,9/21(水)2 歳児,11/16(水)3 歳児 2013/1/18(水)4 歳児, 3/13(火)0 ~ 1 歳児 6/3(金)1 歳児,9/21(水), 11/16(水) 2013/1/18(水),3/13(火) 10 2013 7/9(火)2 歳児,9/6(金)0 ~ 1 歳児2014/2/12(水)3 歳児 7/9(火),9/6(金),2014/2/12(水) 6 2014 6/10(火)2 歳児,9/8(月)0 ~ 1 歳児2015/2/6(金)2 歳児 6/10(火),9/8(月),2015/2/6(金) 6 2015 7/3(金)2 歳児 ,9/16(水)0 ~ 1 歳児2016/3/2(水)3 歳児 7/3(金),9/16(水),2016/3/2(水) 6 2016 6/1(水)2 歳児 ,9/2(金)0 ~ 1 歳児 6/1(水),9/2(金) 4 総計 36 <表 1 わらべうた実践の実践履歴> 5)実践の内容 ・実践時間:①在園児(15 分~ 20 分),②地域子育て支援センター(30 分) ・選曲について  在園児,地域子育て支援センターの双方ともに,各回の選曲については,発達を考慮し,0 歳 から 3 歳までは,大人と子どもの一対一の関係で行い,関係性を深める遊び(スキンシップ,手遊 び,見せる,こもりうた等)を中心とした。4 歳以降,一対一の関係で行うものは年齢が上がるにつ れて減らし,子ども同士で行う遊びを中心に選曲した(集団遊び)。さらに,同じわらべうたであっ ても,その場の状況に応じて臨機応変に対応し,発達や場の状況によって遊び方を変化させてい るものもある。例えば,乳児対象であれば,しぐさ遊びまでに留め,幼児対象では,そのしぐさを 伴いながら子ども同士が関わって遊ぶことなどがあげられる。7 年間を通して実践で用いた曲につ いては表 2 を参照されたい。  なお,わらべうたは,筆者が活動する実践日のみではなく,保育者が園生活の中で取り入れた り,わらべうたの講座終了後,別の日に復習もかねて紹介するなどをしている。

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<表 2 わらべうたの実践で取り上げた曲名一覧> ※分類 1:遊び方 ※分類 2:活動内容  ※*,**,***は,同じ曲だが,遊び方を変えて実践したため別分類とした。 6)指導上の留意点 ・ 実践においては,保育の場にわらべうたの時間を意図的に設定しているため,子どもの生活リ ズムや場の環境に寄り添ったものとは言い難い。そのため,例えば今は動きたい子どもに対して, わらべうたをするために定位置に居させるよう抱っこしている状態を強制することはしないようにし ている。しかし,その場で保育者や保護者には覚えてもらうことで,保育中の自然な状況下で子 ども達に働きかけてもらうことを意識している。 ・ 地域子育て支援センターにおいては,特に保護者に覚えてもらうために,わらべうたを何度も繰り 返して歌い遊ぶことを意識している。 (2)実践の様子 ①併設園について  ここでは,継続して行ってきた 0 ~ 2 歳児の実践の様子を中心に記述する。 ・0 歳から 2 歳児  子どもにとっては,突然知らない人物が部屋に入ってくることから,活動の始めは遠巻きに実践 者の様子を伺っていることが多い。人見知りの時期に入っている子どももいるので,突然近寄るこ

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とはしない。様子を見ながらあまり怖が らない子どもに対してスキンシップやくす ぐり遊びをすると,周囲の子ども達は興 味をもち始め,やがて実践者の前に来 てやってもらおうと集まってくる。それで もやはり少数の子ども達は遠巻きに見 ており,保育者の膝から離れない子ど ももいる。近寄ってこない子ども達や, まだ動けない乳児に対しては,保育者 が実践者と同じように働きかけている。 <喜ぶ>  わらべうた遊びの楽しさを知ると,実践者,保育者の所へ何度も行って「もう1 回」「もう1 回」と アピールする子どもが多い。部屋のあちこちで保育者と実践者でわらべうた遊びをする状態になる と,子ども達の喜ぶ声であふれる。こども達が声をあげて喜ぶのは,主にくすぐり遊びや揺らす遊 びである。 <見て,真似る>  実践者が行っている手遊びを,興味をもって集中してじっと見る子どもが多い。2 歳頃になると, 実践者の真似をして自分の指を一生懸命動かし始める姿が見られる。 <聴いて,うたう>  2 歳頃になると片言の言葉を発することが出来るので,実践者が歌っている後をすぐ追いかけて なぞるように真似して言葉を発する子どもや,歌い出す子どももいる。中には旋律もかなり正確にな ぞって歌える子どももいて驚くこともある。 <見て,聴いて,身体を動かす>  実践者が歌いながら布やたまごマラカスをふったり,何らかの刻みを明確に感じるわらべうたで は,同期するかのようにその刻みに合わせて身体を揺らす姿も見られる。 ・3 歳~ 5 歳児  3 歳児から保育者一人あたりの子どもの人数が増えるが,月齢により発達に差が見られることや, 3 歳から幼稚園児として新しく入園してくる子ども達もおり,まだ一人一人への対応が必要とされる 部分を残している。その状態で集団遊びをしてもすんなりとは遊びが成立しにくい。そのため,そ の時にきちんとした形になることを目指さず,集団遊びを経験するファーストステップとして実践して いる。また,集団遊びの他に,子ども同士で関わらずに出来るしぐさ遊びや手遊びなども行うが, 一人で行うものであっても子ども達全員が共に動く楽しさを感じるよう心がけている。4 歳児からは 集団遊びのルール等の理解がよりできるようになり,子ども同士で関わることに遊びの楽しさを見出 すようになる。役割交代遊びでは,役割を担った子どもがドキドキしているような様子で次に役割を <写真 1 実践の様子>(注 3)

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渡していた。さらに5 歳児は遊びながらルールについて自分の考えをハッキリ言える子どもも見受け られた。 ②地域子育て支援センターについて  満 1 歳未満の子どもが多く,ほとんどの子どもが母親の膝の上にいる。動ける子どもは部屋の 中を活発に自由に動くことが多い。わらべうた指導については,実践者がわらべうたの遊び方を 示した後,まずは保護者に子どもに働きかけてもらう。その後,一組ずつ回り,子どもが嫌がらな ければ実践者も子どもに働きかける。まだ抱っこの子どもも多く,保護者と一緒にいることから子ど もが一人で実践者のところに集まってきてやってもらおうとする光景はない。しかし,よく動く子ど もは,実践者が何かモノをつかって遊んだ際,モノに興味を惹かれて実践者のところまで来るこ とがある。スキンシップでは,保護者が働きかけて 1 回目から喜びの反応を示す子どももいれば, ビックリした顔をする子どももいる。その時の機嫌で嫌がる子どももおり,その際は,「無理にやら ず,お子さんのリズムが良い時にやってあげて下さい。」と伝えている。また,働きかけに対して子 どもが何らかの反応を示した際,実践者もその反応を言葉にして保護者に伝え,一緒に喜ぶよう にしている。 <喜ぶ>  顔にふれたり,くすぐり遊びや揺らす遊びなどをするとニコ~ッと笑ったり,喜びの声が多く聞こえ るようになる。子どもが笑顔になると,「あ,笑った。」と言って嬉しそうにする保護者もよく見かける。 その際,隣に座っている保護者もその様子をのぞき込んで笑顔になることもある。 <見て,聴いて,身体を動かす>  ①で記述したのと同じように,実践者が何らかの刻みを感じるわらべうたを歌い遊ぶと,動き回れ る子どもの中には,うたに同期するかのように身体を動かす姿をよく見かける。この姿を見かけた 際は,保護者に聞こえるように褒めたりしている。時には,その子どもの保護者以外の保護者も賛 同して褒めることもある。 <きょうだいがあやす>  保護者が 3 歳以上の兄,姉を一緒に連れてきた際,上の子がわらべうたを覚えて,下の子に やってあげている姿を見ることが 2 回ほどあった。保護者は上の子が働きかけている姿と働きかけ られて嬉しそうにする下の子の反応をみて嬉しそうにしていた。 2.保育学生の子育て支援実践の場への参加 (1)実践の概要 1)実践の対象  当該地域子育て支援センターは,認定こども園として 2010 年に開園後,駅前大型タワーマン ション等の建築が続き,核家族の転出・転入が多く人口増加する都市部の地域に隣接している立 地条件から,年々多くの利用者数を抱えている。その事業運営において,地域の子育て中の親

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子に対して,様々な事業内容を工夫し実施しており,その中の一部について養成校である大学に 保育学生動員の要請がある。それは,年 1 回の土曜日開所事業(注 4)であり,そのプログラムに 予約参加している親子 20 組~ 35 組が対象となる。このプログラムでは,母親対象の育児講演 会,救急法講座,ヨガ&体操などが年度によって企画されており,その参加時間中は父親が子ども と遊ぶ時間とされていて,学生は主にその父子の時間帯の補助のために配置されている。  養成校側は,地域子育て支援センターからの要請に応じる形で,正規カリキュラム外での保育 ボランティア参加,正規カリキュラム科目の一部に位置づけての参加,正規カリキュラムの選択実 習科目としての参加など,様々なやり方で保育学生を送り出してきた。学年や人数は,そのときの 条件や状況に応じて考えられ,1 年次生~ 4 年次生までいろいろである。筆者(矢萩)は,その学 生動員の窓口として,併設園の副園長と調整を行ってきた。 2)実践の目的  地域子育て支援センター側は,開催するプログラム実施に必要な人員確保としてはもちろんであ るが,子育て支援実践の場を養成課程にある保育学生に開き,そこでの経験の機会を保障してく れている。一方,養成校側は,幼稚園・保育所における正規の教育実習・保育実習では経験さ せることが難しい,乳児ならびに低年齢児とその保護者を含めた親子とのかかわりを経験させられ る貴重な実践の場として捉えている。  送り出せるのは,一部の限られた人数の学生ではあるが,地域子育て支援センター・養成校双 方が,保育者養成を共通の目的としていると言える。 3)実践履歴  子育て支援事業への保育学生参加の履歴は,以下の表 3 のとおりである。なお,*および**の 学生派遣については,次の 4)で説明する。 年度 日程 派遣学生 派遣事由 2011 2012/1/28(土) 3 年生:男子 3 名,女子 4 名 保育ボランティア 2012 10/20(土) 3 年生:男子 1 名,女子 3 名 保育ボランティア 2014 8/28(月) 1 年生:女子 3 名 必修授業科目の一部* 10/25(土) 4 年生:女子 2 名 ※筆者ゼミ生 保育ボランティア 2015 10/24(土) 1 年生:女子 4 名 保育ボランティア 8/17(月)~ 8/21(金)4 年生:女子 1 名 選択実習科目:「子育て支援実習」** 2016 10/29(土) 1 年生:男子 2 名,女子 4 名 必修授業科目の一部* 8/22(月)~ 8/26(金)4 年生:女子 1 名 選択実習科目:「子育て支援実習」** <表 3 子育て支援事業への保育学生参加の実践履歴> 4)多様な派遣事由  ここで,前項目 3)の表 3 に挙げた派遣事由について説明する。これは,送り出した学生たちを 養成課程カリキュラム上,どのような位置づけで送り出したのかということを表している。保育ボラン

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ティアのうち 3 年生は,筆者が科目担当していた保育所実習指導授業において,1 年生は,「保育 マインド実践講座」授業において希望を募って配置した。  必修指導授業の一部*とあるのも,実はこの 1 年生必修科目である「保育マインド実践講座」で ある。2014 年度は,学生自身の居住地域にある地域子育て支援施設への半日見学訪問という 夏期休暇中の課題であったが,2016 年度は,保育教材の実演演習課題として実施された。いず れについても,履修学生全員が何らかの形でいずれかの実践の場でその課題に取り組んだもの である。  選択実習科目「子育て支援実習」**とあるのは,筆者(矢萩)が,本学のカリキュラム改正時に 科目担当者となり2013 年度より立ち上げた,正規実習を全て終えた 4 年次生を対象とした選択実 習である。実習期間中の通勤時間の関係から,通勤可能な学生を配属する必要があり,併設園 の地域子育て支援センターには科目開設 3 年目以降の配属となった。  以上の様々な派遣事由から言えることは,養成校と実践の場とを繋ぐ役割を担う教員個人と派 遣先の職員との打ち合わせや調整によって保育学生の子育て支援実践の経験が確保されてきた 経緯を経ながら,少しずつ養成カリキュラムに組み入れられ,組織的取り組みとして整備されつつ あるということであろうか。しかしながら,それは 1 学年全員が経験出来る仕組みになっているにも かかわらず,その参加率の推移が 1 割程度という実態からすると,遅々とした歩みであると言わざ るを得ない。 (2)実践の様子  各回の学生派遣において,その様子がどうであったかについては,教員の引率が可能であっ た日程(「子育て支援実習」については,必ず実習巡回訪問指導を実施)とそうでない日程がある が,派遣先の併設園担当者とは必ず連絡し合うことにしており,把握するようにしている。保育ボ ランティアや,1 年生の参加姿勢については,当初より, よくやってくれた,一生懸命かかわろうとしていた,よい 経験になったのではないかなどが中心の講評であるが, 授業の一部や選択実習ということになると目的も変わっ てくるため,参加姿勢については受け止めながらも,親 子を前に実演する場面についての練習不足や緊張度 などについての講評も出てくるようになった。  引率や巡回訪問時の印象では,保育学生だけあっ て,親子と遊ぶ場面では笑顔もあり,保護者(特に父 親)の傍らで子どもとよく遊んでいたり,乳児にかかわる 保護者の代わりにきょうだい児を進んで担当していたり する様子が見られた。但し,これは,ある程度正規実 習を経験してきた上位学年に言えることであり,実習を <写真2 実践の様子> ※エプロンをつけてしゃがんでいるのが学生

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経験していない 1 年生となるとまた別である。保護者がすぐ傍にいるという状況の中で,どのように 身を置き,どんなふうに振る舞ったらよいか,保護者にどんなふうに語りかけたらよいのか,当然な がらその戸惑いはより大きい。

Ⅳ.聞き取り調査結果とその考察

1.大学教員によるわらべうた実践に関する聞き取り調査結果  実践の場に参加していた保育者に,子どもや親子の様子について半構造化インタビューを行っ た。先方の職務上,勤務中の時間の調整を依頼することとならざるを得ず,限られた時間内での 聞き取り調査を円滑に進めるため,事前に聞き取り項目を書き出した質問用紙を送付し,回答内容 についての心づもりを依頼した上で実施した。また,記録は手書き記録の他に,ICレコーダーによ る録音記録を行った。 ・対象者:①併設園保育教諭 1 名(注 5),②地域子育て支援センター職員 2 名 ・実施日時:2016 年 11 月 11日(金)16:00 ~ 17:00 ・実施場所:併設園相談室 ・質問内容の概要: 1)実践中および実践後の子どもや親子の様子について 2)保育教諭・支援センター職員または保護者からの感想について 3)大学教員が講師として保育の場に入り,実践を行うことについて 4)わらべうた実践に関する課題や展望について (1)在園児に対するわらべうた実践に関する聞き取り調査結果 1)実践中および実践後の子どもや親子の様子,および 2)保育教諭・支援センター職員または保 護者からの感想について ・ 保育者自身,わらべうたに興味があり,普段から研修の場等で学んだものを,日常のふとした場で積極的 に取り入れている。例えば,筆者が実践で行った《いちりにり》などをおむつ換えの際にやりながら,やりと りを楽しんでいる。 ・ 1歳児は《てってのねずみ》が好きだった。1人がやっていると「やってやって」と子どもたちが集まってくる。 わらべうたは笑いを引き出す要素のあるものが多く,子どもと大人も共に笑いながらできる。 ・ 「ワクワクひろば」(注 6)で 2 歳の時に《もぐらどん》をやった。その後,もう飽きたかと思ったが,ずっと子ど も達が好きで続けていた。 ・ 子どもが園で覚えたわらべうたを家で歌った時に,保護者が「このうたは何ですか?」と聞いてくることが あった。  ※《いちりにり》《てってのねずみ》《もぐらどん》については,表 2 を参照のこと。

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・ふれあううた,遊びに,子ども達も喜んで何度も遊んでいた。 ・ 赤いボール(注 7)に興味をもち,手に取り遊んでいた。甲高い音でもなく,心地よい音が子ども達にも良 かった。 ・ 始めは,どんなことが始まるのかとじっと見ていたが,一人の子どもが実践者とふれあい遊びをすると,僕 も私もとやってもらいたい気持ちが出てきていた。ふれあうあそびが好きな子どもたちだと遊びを通して感 じられる。 ・ わらべうたは馴染みがなく,普段は子どもたちにやってあげていないが,心地よいリズム,節を聞いて穏 やかな子どもたちの表情を見ると,わらべうたの良さ,大切さをより感じる。もっと他にもわらべうたを知りた い。調べたいと思う。 ・ 時期として聞くことを楽しんでいたところから(前回の実践),今の時期だと真似をして一緒に歌ったり言っ たりできるため,この時期にまた来てもらえると違った子どもの姿,様子が見られるかもしれない。 3)大学教員が講師として保育の場に入り,実践を行うことについて ・ 実践者の声に惹きつけられるので,初めてでも子どもが喜ぶ。また,担任が歌ったり話したりするのと違 い,色んな人に出会えるのは良いことだと思う。 4)わらべうた実践に関する課題や展望について ・機会があれば定期的にやって欲しい。 ・ 園では,お便りや懇談会,親子遠足等で,わらべうたを紹介することがある。保育園の子ども達は,保 護者と家で一緒に過ごす時間が少なく,しっかり向き合う時間があまりない。少しの時間でもわらべうた が家庭の中に入って行くと良いと考えている。今後も保護者に紹介していきたい。 <考察>  ここでは,“保育者と子どもの関わり”“保育者にとってのわらべうた”について見てみたい。まず, 保育者と子どもの関わりについてであるが,1)実践中および実践後の子どもや親子の様子,2)保 育教諭・支援センター職員または保護者からの感想について,3)大学教員が講師として保育の 場に入り,実践を行うことについての回答から,遊びを通して人とふれあうことで,子ども達は楽し そうに喜んで遊ぶ姿が見られた。子どもが自ら遊びを求め,繰り返す姿から,わらべうたが保育者 と子どもの関わりを楽しみながら深めていけるものであることが分かる。次に,保育者にとってのわ らべうたであるが,わらべうたに馴染みのない保育者にとっても,2)保育教諭・支援センター職員 または保護者からの感想の点線部分をみると,その良さを感じることで取り入れたいという能動的 な気持ちになっていることが分かった。  さて,大学との連携で講師が保育の場に入ることについてであるが,各回答の下線部から,意 義を見出せるのではないだろうか。馴染みがない保育者にとっては,わらべうたを知る機会になり,

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馴染みがある保育者にとっても,レパートリーを増やしたり,新たな角度で子ども達をみる機会となっ たりするようである。さらに,保育者ではない音楽教育を専門とする実践者が訪れる非日常の場で あることも意味があるように思われる。例えば,実践者の声だけでなく,わらべうたと一緒に遊ぶた まごマラカスを持って遊んだ日があったが,楽器を知ることやもちい方なども含めて新たな視点とな る可能性がある。  では,今後の継続的な展望として,回答の波線部分にあたる園児の家庭にもわらべうたを伝え たいという点について述べたい。今回の実践では,実践者自身,園の保育の場でという想定で 行ってきた。しかし,家庭にもわらべうたをという願いを伺い,実際に保護者が子どもが口ずさん だわらべうたを「何だろう?」と思い,保育者に尋ねてきたというエピソードから,一つの実践が園の 保育の場を越えて家庭へと拡がる可能性を知ることが出来たことが,大きな発見であり喜びであっ た。今後は,そのような方向に拡がる可能性を担えることを踏まえた上で実践を行いたいと考えて いる。  なお,今回,インタビューをさせて頂いたのは数年に渡り1 ~ 2 歳クラスの担任をしていた保育 者であり,3 歳以上の幼児クラスを担任していた保育者には調査を行っていない。その理由として, 2012 年度以降,3 歳クラスは実践を行っているものの,継続的に行っているのは 0 ~ 2 歳であるこ とを付け加えておく。 (2)地域子育て支援センターの親子に対するわらべうた実践に関する聞き取り結果 1)実践中および実践後の子どもや親子の様子について <その1>支援が必要な子どもをもつ母親が,0 歳児の時から地域子育て支援センターに何度か来ており, 最初は子どもが固まっていて何もできなかったが,1 歳児になり来室 10 回目に当たる頃,わらべうた講座を 受講し,子どもがポジティブな反応を示し,わらべうたで遊べることを喜んでいた。 <その 2>わらべうた実践後,別の日に 0 歳児の母親が子どもに《うえからしたから》を歌ってハンカチで働 きかけている姿をみて,わらべうたを受講していない母親が「それなぁに?」と尋ねる場面があった。 2)保育教諭・支援センター職員または保護者からの感想について ・ 保護者からアンケートをとっていないので,詳細は分からないが,終わったあとは楽しかったという感想は聞 いている。また,受講後にうたを口ずさんでいる姿も見られる。毎日来ている親子は,よく子どもに歌ってあ げている。 ・絵本(わらべうた)の紹介も良い。どのような絵本を選んだら良いか教えて欲しい母親もいるので参考になる。 ・子どもや保護者ばかりでなく,保育者自身にとっても,自らの実践の向上に繋がるので今後も続けて欲しい。

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3)大学教員が講師として保育の場に入り,実践を行うことについて ・ 保育者が実践を行うのと,実践者が行うのとでは,保護者の反応が違う。その理由として,実践者の声 に惹きつけられることと,大学教員が来ることで保護者も興味が湧くのではないかと考えられる。 4)わらべうた実践に関する課題や展望について ・ わらべうたを受講するのはどうしても0 歳児が多く,年齢が上の子どもを連れてきて子どもがその場で遊 ばないと「あぁダメだった。」という様な印象をもつ母親も多い。または,動いて騒いでしまうと申し訳ないと いう思いから参加しない。その場で子どもが興味を示さないと興味がないと思ってしまう。そのため,リ ピーターが少ない。 ・ 現在の母親世代は,わらべうたを知らない人達が多い。昔聞いたわらべうたは実践できるが,初めて知 るものだと中々覚えられず,もちかえって自分でやるのは難しい。講座ではなく,通常の日にわらべうたを 行っていて,保育者に子どもを差し出して,やってもらいなさいという感じで働きかけることをゆだねてしま い,自分でやろうとはしないケースも少なくない。こちらは提供はできるが,母親が覚えていかないと意味 がない。 <考察>  ここでは,“親子のかかわり”“親同士の関わり”について見ていきたい。まず,実践の際,親子の 様子を見ていると,スキンシップによって子どもがニコッと微笑む顔や,揺らすことで楽しそうに声を あげる場面を毎回目にする。また,保護者も喜ぶ子どもの姿を見て嬉しそうにしている。1)実践中 および実践後の子どもや親子の様子<その 1>の事例では,実践者が紹介したわらべうたをその 場で母親が実際子どもに働きかけてみたところ,最初は何だろう?と言うようなキョトンとした顔をした ものの,繰り返すと段々に表情が和らぎ嬉しそうな顔をするようになった。このように,支援を必要 とする子どもにもわらべうたの働きかけが効果をもたらすことは,Ⅱ‐1.で挙げた先行研究でも示さ れている。この働きかけを繰り返し行い,親子の関わりが深まることによって,子どもの成長の助け となるだろう。次に“親同士の関わり”については,1)実践中および実践後の子どもや親子の様子 〈その 2〉にある通り,わらべうたを実践している親子を見た保護者が,興味をもって話しかけるこ とで保護者同士の関わりが生まれた事例である。しかし,保育者によると,こういったケースはまれ であるとの事であった。  では,大学との連携の意義についてである。質問 3)大学教員が講師として保育の場に入り, 実践を行うことに対する回答の波線にあるように,大学教員の講座という肩書きは,講座を受けて みようという保護者の興味を惹く力になるようである。それとも関係してくるが,回答 2)保育教諭・ 支援センター職員または保護者からの感想の波線にある通り,絵本選びにも一役買っているようで ある。  最後に,この聞き取り調査により明らかとなった 4)わらべうた実践に関する課題や展望について

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述べる。わらべうたの受講者は,0 歳児がほとんどである。その要因として二点挙げられる。一 点目は,年齢が上がるにつれ動くものを好むことから,講座の開催数の少なさと次回までの間に子 どもが動きだして成長していくことである。わらべうたは,乳児期だけでなく動き始めた子どもにとっ ても意義深いものであることの理解をひろめる必要があるだろう。二点目は,現在の母親世代はわ らべうたに馴染みがなく,一度その場で覚えても忘れてしまい,家庭にもちかえるには難しさがある ことである。わらべうた自体は歌いやすさという点ではメロディに難しいものは少なく,その場で一 緒に歌うとすぐに歌えてしまうもの7が多いが,シンプルであるが故に継続して歌わないと記憶が曖 昧になりやすい。30 分の実践という限られた時間の中で出来る限り繰り返し歌うことを意識してい るが,その後,質問 2)保育教諭・支援センター職員または保護者からの感想に対する回答の下 線にあるように,地域子育て支援センターに通って継続することで定着を図れるだろう。このように, 浮かび上がったこれらの課題に対して,講座を受け持つ実践者と地域子育て支援センターの連 携の在り方を今後検討していく余地がある。しかし,今回の調査は保育者への聞き取り調査に留 まっており,講座受講者に直接調査を行っていないことから,量的にも質的にも実相を捉えることが 十分とは言えない。まずは,受講者の生の声を聞くことがこの先の展開に向けての第一歩となるだ ろう。 2.保育学生の子育て支援実践の場への参加に関する聞き取り調査結果  聞き取り調査に関する手順については,基本的には,前節と同様である。但し,参加経験のあ る学生・卒業生への聞き取り調査に関しては,一部メールアンケートとそれに対するメール確認を 行っている。なお,質問項目については,対面での聞き取り調査と同一のものとした。 ・対 象 者: ①地域子育て支援センター職員 2 名,管理職 1 名,②土曜日事業プログラムに参加 経験のある在学生(現 1 年生・2 年生・3 年生)と卒業生(在職 2 年目),本センター にて「子育て支援実習」経験のある学生(現 4 年生)と卒業生(在職 1 年目・一時保 育室担当保育士)の計 13 名。 ・実施期間:2016 年 11 月 11日(金)~ 17日(木) ・実施場所:地域子育て支援センターの保育室ならびに教員研究室 ・質問内容の概要:  (1)施設職員対象 1)学生受け入れの目的について 2)学生受け入れの意識について 3)親子の反応や様子について 4)学生に期待することについて 5)学生受け入れに関して感じる課題について 6)学生を派遣する大学に対する希望・要望について  (2)施設管理職職員対象 ※7)の項目についての考えを自由にお答えいただいた。

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7)大学との連携および学生ボランティアを受け入れる意義について  (3)参加学生対象 8)乳幼児と触れ合った感想・保護者の様子について 9)親子の前で実演した感想・そのときの親子の様子について 10)地域子育て支援センターの職員から学んだことについて 11) 参加してみてどうだったか・参加経験がその後の実習または,保育士の 職務に対してどのような意味があったと思うかについて (1)保育学生の子育て支援事業への参加に関する施設職員への聞き取り結果 1)学生受け入れの目的について  受け入れ目的については,明確な回答が得られず,上司を通じた養成校からの依頼に沿って受 け入れている実状が明らかとなった。 2)学生受け入れの意識について  保育学生をどのような意識で受け入れているかという質問に対しても,具体的な回答は得られな かった。職員は,公立保育園における長い保育士経験をもっていることから,いわゆる実習生(= 保育学生)を受け入れることは,敢えて問い直すまでもなく,当然のこととして認識している様子で あった。 3)親子の反応や様子について  「保護者の方々は,緊張しながら参加している学生さんたちを好意的に見ていると思う」「男子 学生が目新しいようだった」「お母さんの方から学生に質問していて,それに答える形でやりとりして いた」「間に子どもがいることで,かかわるきっかけになっていた」など,職員は,親子が概ね好意 的に学生を受け入れていると認識している様子が窺われた。保護者に対しては,学生の方からか かわるよりも,むしろ保護者の方から学生に対して話しかけており,それは,普段と違って職員以外 のどんな人が今ここにいるのか“探る”ような感じもあったとのことであるが,それをきっかけにして学 生たちは,保護者とのやり取りを行っていたことが分かった。 4)学生に期待することについて  保育ボランティアや必修科目の一部として参加した 1 年生に対しては,「よくやっていた」「頑張っ ていた」「初めは緊張していたが、だんだん自然になっていった」「学生同士のつながりがあって良 かった」など,とにかく支援の場で親子と楽しく過ごしてもらえるようにという願いを第一に抱いてい る様子であった。一方,「子育て支援実習」の 4 年生に関しては,「実習期間中,施設としても行 事が入っていたため実習生にも仕事があって良かった」「イベントが何もないと,子育て支援の場で の実習は大変かもしれない」といった実習スケジュールや実習内容に関する話から入って,やがて, 学生が支援の場で経験できた保護者とのやり取りについて,「自分の中だけで消化してしまって実 習日誌に記述するのではなく,職員と共有することを学んで欲しい」という意見が表れた。こうした 情報の共有によって,職員としても親子に対する次の支援に繋げられるということがその理由として 語られた。

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5)学生受け入れに関して感じる課題について  正規実習とは異なるこうした形での保育学生受け入れに関して,「大学との事前のやりとりがもっ とあるとよい」「受け入れる学生に関する情報が欲しい」ということが述べられた。両名とも,保育 士を長年経験してきた支援者だからこそ,子育て支援実践の場は,正規実習で経験する幼稚園 や保育所の保育実践の場とは異なる使命を持っていると感じている。保育者と支援者との専門性 の違いを痛感している立場から,また,自分たちが受けてきた実習や経験してきた実習生指導とは 異なる世代の違いから,現在の保育者養成がどのように行われているのかということや,配属され る保育学生に関してそれまでの実習結果あるいは学生の特徴などについて,養成校側との事前 のやり取りの必要性を感じていることが課題として明らかとなった。 6)学生を派遣する大学に対する希望・要望について  4)でも示したとおり,特に 4 年生の「子育て支援実習」について,実習配属時期に関する要望 が挙げられた。「学生にとっては,配属時期に何かしらの行事やイベント,例えば,身体測定や誕 生会などがあれば,学生自身もその手伝い等で参加しやすく,親子の姿も捉えやすいと思うが,何 もないと参加しにくいのではないか」ということだった。ひろば事業の日常では,地域子育て支援セ ンターはあくまでも親子が遊ぶ場であり,保護者同士の出会いと交流の場であることから,直接的 介入や援助は適切でないため,観察中心となり,子育て支援の場の日常を体験することで,かえっ て退屈な実習になってしまうのではないかと懸念していることが分かった。  以上の他,職員がイベント参加保護者に記入を依頼している簡単な感想メモがあり,それを見 せてもらうことができた。保護者の学生に対する感想については,研究上の倫理的配慮からその ままここに記すことは避けるが,その内容については概ね次のとおりであった。  保護者は,学生たちが緊張したり,恥ずかしがったりしている姿を「可愛かった」「よかった」と 好意的に受け止めている。また,手遊びや絵本,ペープサートなどの実演発表については,「楽し かった」「よかった」と評価している。しかし,その一方で,遊びの場面で消極的な学生の姿に対し ては,もう少し積極的に我が子に声をかけてもよいのではないかという意見なども見られた。 <考察>  今回の聞き取り調査を通じて,保育学生受け入れの目的や意識に関して,現場職員の話は,具 体的な学生の様子に関する内容が中心となり,明確な回答が得られなかったことから,この点につ いての認識や意識を期待するのであれば,大学として,担当教員が,受け入れ先施設の現場職 員とも日常的な関係性を築きながら養成側の考え方や捉え方を伝えることや,事前打ち合わせを 丁寧に行っておく必要があると言えるだろう。養成校の教員は,学生のために実践の場を計画す る際,どうしても園長や施設長といった立場である管理職員への働きかけや交渉・説明が中心と なるが,学生の実践的学びを支える上で考えると,現場職員とも十分な情報の共有や交換が必要

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であり,それも現状のような依頼書類を通じてという形だけではなく,直接対面して口頭によって説 明され,確認がなされることが望ましいということが,改めて明らかとなったと言えよう。とりわけ,職 員自身が受けてきた実習や経験してきた実習生指導とは異なる保育学生の受け入れに際して,ど のような意識や認識をもって臨めばよいかについてはなおさらである。併設園という関係性から, 筆者は定期的とは言えないまでも,本園を訪れる機会が折に触れてあり,センターの職員ともそれ なりに顔を合わせる間柄ではあったが,質問4)~6)への回答を通じて初めて,職員が支援職の 役割や支援のあり方について抱いている考え方や,保育学生受け入れに対する率直な受け止め 方を具体的に感じることが出来た。学生を子育て支援実践の場に送り出す立場である以上,支 援者である職員が自らの専門性や支援のあり方についてどのように捉え,日々大勢の親子を迎える 実践に臨んでいるかは今更ながら,認識と理解を要する事柄であることを痛感した次第である。  特に,「子育て支援実習」については,それまでの養成課程において学んだ,記録を書くという 行為を通じて真摯に省察しようとする学生の姿に違和感を覚え,その場で対話を通じて理解し合 いたいと願う支援職員は,実践者であり,実践者から実践を学ぶことについての根本的なテーマ がここにあると言えるのではないかと考えさせられる。同様のことが,じっと観察することの困難を 予想している発言にも窺える。日常の支援のあり方をありのままに経験するという意味では,イベン トと表現する特別な活動がないノンプログラムの場での経験こそ有意義であるはずだが,そのこと に対する具体的な学生指導は,科目担当教員である筆者にもまだ十分には検討しきれていない問 題である。観察するとは,何をどのように見ることであるのか,特別な活動が用意されている訳で はない支援の場の日常性の中から何をどのように学ぶことができるのか。何らの方向づけも示され ないまま経験の意義や成果を全て学生に委ねて送り出すことは避けたいとの思いから,「子育て支 援実習」履修学生は,前年度の 3 年次に「子育て支援論」を学ぶことが実習要件となっているもの の,子育て支援実践の場の日常をどう経験し,何を学ぶかという課題も改めて明確となったと言え るだろう。  次に,質問3)の回答は,子育て支援実践の場に若い世代の保育学生が入り込むことの親子に とっての意味を考える上で示唆的である。保護者は,学生たちを好意的に受け入れ,話しかけて くれているとは言え,施設職員によれば,そこには“探る”ような意味合いも読み取れるようである。 子育てについてそれぞれに何らかのニーズをもってこの場を利用している保護者に対して,学生た ちの実践をどのように伝え,互いの出会いと育ち合いの場を共有することができるようにしていけば よいかということもまた,課題と言えるだろう。  さらに,養成校と子育て支援実践の場の連携ということに関して,時間的な制約という問題が常 に存在していることも今回の調査場面の設定そのものを通じて改めて明らかとなった。直接の質 問項目にはないが,併設園に聞き取り調査のための時間と場を依頼し設定するにあたり,職員の日 常業務のどの時間帯をどれくらい確保できるか,また,常勤職員と非常勤職員という両名の立場 の違いを考慮してどのように可能かは,当該センターを管理する立場にある副園長の調整によると

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ころが大きかった。そこで確保された当初の時間は,30 分間であったが,職員の好意により延長 された時間を含めても,1 時間程度であり,限られた時間内での実施とならざるを得ないのが実状 である。一方それを,調査者である養成校教員のスケジュールと調整していく必要もある。今回 の聞き取り結果に基づいて,併設園と養成校との関係性を発揮して,さらに掘り下げたやり取りが 出来るだけの時間をどう確保していくかということもまた,残された課題と言えよう。 (2)保育学生の子育て支援事業への参加に関する施設の管理職職員への聞き取り結果 7)大学との連携および学生ボランティアを受け入れる意義について  園や施設として,管理職の立場から,養成校の学生ボランティアあるいは「子育て支援実習」を 受け入れる意義について以下のような意見をいただいた。 ・子育て世帯ばかりでなく,社会全体が孤立化する現代,子育て世代の子育て力の低下ばかりを 論ずる姿勢ではなく,子育て子育ちを取り巻く社会環境が変化していることをまずは認識しておくべ きである。 ・養成校との連携や学生の受け入れは,以下の点で意義がある。  ① 学生の存在は,乳幼児にとっては嬉しいものであり,子どもに一生懸命に丁寧にかかわる学 生の姿は,自身の日々の子育ての振り返りが出来たという声からも,母親に良い影響を与えて いる。乳幼児と子育て家庭,学生とを繋げる取り組みは,将来保育者を目指す学生にとって も有意義である。  ② 子どもが育つには,多様な人とのかかわり,多様な場での経験が必要であり,専門機関である 園や施設が,異世代交流の場,小・中・高・大との積極的な交流を促進することにより,若者 世代が親子の支援にかかわることでさまざまな世代間の支え合いが生まれてくると考える。  ③ 子どもに寄り添い,共感的・受容的に理解するには,保護者への相談援助・ソーシャルワー クの専門性が重要となってくるが,養成課程での学修や経験だけでは不十分であることや, 一般的にも学生が乳幼児をもつ親子と接する機会が少ない現状から,意図的な機会を作るこ とには意義がある。 <考察>  以上の意見から,園や施設の方針として,世代間交流や親子・学生相互の育ち合いという理 念をもって大学との連携や学生受け入れを考えていることが分かる。大学から学生を送り出す際 には,管理職員との協議や相互理解を図るための打ち合わせは,文書・電話・メール等で綿密 に行われ,対面でのやり取りも現場を任されている施設職員と比較するとそれなりに行われている ため,目的や意識に大きな齟齬がないどころか,むしろ,連携の意義については相互理解できてい ると言ってよいだろう。実践の場と養成の場とでは,立場こそ異なりはしても,保育・子育てのため にそれぞれの使命や責務を担って協力し合うことが何よりも重要であると考えられる。

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(3)保育学生の子育て支援事業への参加に関する学生への聞き取り結果  以下,8)~ 11)の聞き取り結果については,記録文を囲み内に示しながらまとめる。 8)乳幼児と触れ合った感想・保護者の様子について  乳児とのかかわりが初めてという学生もいれば,年下のきょうだいや友達のきょうだいとのかかわり の経験があったという学生もいたが,ほとんどの学生は,赤ちゃんとの触れ合い経験がなく,このセ ンターでの経験が初めてということであった。 ・ブロックで遊んだ。父親を間に挟んでかかわれたことであまり緊張せずにかかれたと思う。(1年生) ・ペットボトルのおもちゃで何度も「かんぱーい」といって遊んだ。(1年生) ・ 普段赤ちゃんとかかわることがないため,どうやってコミュニケーションをとったらよいか分からず,とても緊 張していて,赤ちゃんとかかわるよりもお父さんに話しかけていた。お父さんは「もっとこうしたらいいよ」と 教えてくれた。(1年生) ・赤ちゃんからすごく見つめられていた。/ずっと見ていた。/赤ちゃんと見つめ合っていた。(1年生) ・保護者の方とは挨拶程度の会話しかできなかった。(2年生) ・ お母さん達は笑顔でヨガ(のプログラム)に向かう姿があり,お父さん達は皆さん緊張しているように感じた。 (2年生) ・可愛いなと思った。(3年生) ・お母さんやお父さんと遊んでいる姿を見てとても可愛かった。(3年生) ・ 年の離れた妹がおり,赤ちゃんと触れ合うことは初めてではなかった。可愛いなと思ったのが一番の感想 で,泣かれてしまったらどうしようという不安もあった。(3年生) ・赤ちゃんとは触れ合うことができたと思うが,あまりよく覚えていない。(3年生) ・ 初めての経験ということもありあまりできなかったが,お母さんたちとはお話することができた。自分が想像 していたよりもお母さん達はとても優しかった。(3年生) ・ 乳児とかかわったのが初めてで,抱っこの仕方も不安だったため,お母さんから「抱っこしてみる?」と勧め られたが抱っこできなかった。(3年生) ・ どのようにかかわればよいのか分からず,笑ったり,いないいないばぁなどばかりして遊んでいた。しかし, その後お母さんがパンフレットをパラパラと開いたり閉じたりして遊んでいるのを見て,発達等,どの時期は どういうことに興味をもつのかなど,自分は全然知らないと思い,学ばなくてはならないと感じた。(3年生) ・ 首の座っていない赤ちゃんを間近で見たり,触れたりする機会がほとんどなかったので,壊れてしまいそう で怖かった。お父さんに月齢や名前を尋ね,赤ちゃんに話しかけたり,玩具を渡すなどするので精一杯 だった。(卒業生) ・ お父さん達はこういった遊び場に戸惑っている方がほとんどで,あまりお父さん同士でお話している姿が なかった。(卒業生)  下線部分に注目し,聞き取り結果を以下にまとめる。  「可愛さ」と同時に,泣かれたらどうしよう,触ったら壊れてしまいそうという「不安」が強かった様 子である。実際には,保護者から名前を教えてもらって呼んでみたり,おもちゃを渡してみたりした のが精いっぱいというところであったことが分かった。また,赤ちゃんの様子として特徴的に共通し

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て挙げられていた回答は,「じっと見ていた」「見られている感じがした」「見つめ合った」という視線 の共有体験であった。実際に近づいたり,触れようとすると泣かれてしまう赤ちゃんでも,この体験 は印象深く残っているようである。  保護者については,「抱っこしてみる?」と勧めてくれたり,優しく質問してきてくれたりなど,緊張の 中にも想像以上のかかわりをもつことができたということである。また,父親と母親を比較して,父親 は緊張していたようだったと捉えている感想があった。さらに,他には,母親からの話で「子育ては 大変だということや,産後の仕事復帰の難しさの現実を知った」(3年生)という回答もあった。 9)親子の前で実演した感想・そのときの親子の様子について ・お父さん達が入場のときに手拍子をしてくれて乗ってくれたのでやりやすかった。(1年生) ・赤ちゃんからは,じいっと見られている感じがした。(1年生) ・ 親子の反応があることで達成感を感じられた。アンパンマンの手遊びのポーズの説明をしたとき,会場が ウケてくれたので一気に気持ちがほぐれた。(1年生) ・一緒にやってくれたり,エプロンシアターのときは動物を指さしたりして真剣に見ていた。(2年生) ・大勢の子どもが見ているので,どこを見ても子どもと目が合い気が抜けないと感じた。(2年生) ・ 一緒に手遊びを真似していたり,親子でお互いの顔を見ながら楽しくコミュニケーションをとっている姿が あった。(2年生) ・ 緊張してしまいよく覚えていないが,真剣にきいてくれていた。初めに行った手遊びなども親子で快く参加 してくれた。(2年生) ・ とても緊張して途中考えていたとおりに上手く行かなかった部分もあったが,最後まで乗り切ることができ て安心した。子どもたちも真剣に聞いてくれた様子でやってよかったなと思った。(2年生) ・赤ちゃんは,じいっと見ていた。お母さん達は笑顔で見てくださった。(3年生) ・ 自分たちで物語を創作したので成功するか心配だったが,子ども達がとても楽しそうに見てくれたので自 分自身楽しくできた。(3年生) ・ 緊張していたのもあって演じるのはとても難しかった。子ども達は,何をするのだろうと不思議そうに見て いた。(3年生) ・ お母さん達は楽しそうに聞いてくれていた。子ども達は,歩き回る子どももいたが,真剣にじっと見てくれ る子どもの方が多かった。(3年生) ・ 気持ちを込めて演じた結果,話に集中してくれたのがとても嬉しかった。その後のアンコールでは,少しア レンジを加えたため緊張したが,子ども達やお母さん達の笑顔が見られて嬉しかった。(3年生) ・ 保護者の方とお話すると,こちらから聞き出さなくてもすぐに相談されたことから,やはり悩みが多いのだと 感じた。親子は,ママ友がいる人は子ども同士も一緒に遊ぶ姿があったが,それ以外の親子はその親 子で遊んでいる姿が見られた。子どもを幼稚園に通わせている保護者とそうでない保護者との間にやや 緊張感漂う場面があった。他にも,子どもをなかなか叱れない保護者の姿や,子どもへの接し方に悩み ながらかかわる姿があった。 (「子育て支援実習」を履修した4年生)  下線部分に注目し,聞き取り結果を以下にまとめる。  ほとんどの在学生が大勢の親子の前に立って演じた経験について,「心配だった」「緊張した」

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「思い通りにいかなかった」などと答えている。しかし,そのような中で子どもや保護者の反応して くれる様子(集中して見てくれた,真剣に見てくれた,楽しそうにしていてくれた,手拍子をして乗っ てくれたなど)に力を得て,「嬉しくなった」「乗り切れた」「達成感があった」と手応えを感じている様 子が窺える。一方子どもについては,前項とも重複するが,「じいっと」あるいは「不思議そうに」見 つめる姿が印象的であったようである。さらに,保護者は,学生の実演に対して肯定的に応援す る姿勢で参加していた様子が分かった。  一方,「子育て支援実習」を履修した 4 年生や卒業生は,かなり詳細に親子の様子を観察して おり,多様な保護者の姿,親子の姿があることに気づいている様子が分かる。 10)地域子育て支援センターの職員から学んだことについて ・職員の方達は思っていたより優しかったので自分自身も楽しくできた。(1年生) ・職員の方達は保護者と仲が良く親しげだった。名前を呼んだりしてすぐにコミュニケーションが取れていた。 (1年生) ・職員の子どもへのかかわり方を見ることで学ぶことができた。(1年生) ・職員の方は,こんなことが分からないだろうと予想される部分を先に教えてくれて,学生達が困らないよう に導いてくれた。そういう姿勢を学んだ。(1年生) ・子どもと一緒に遊びながら怪我をしないようにブロックをさりげなく端に避けたり,前にいる子と会話をしな がらも周囲の状況を見ていた。(2年生) ・2 人のお子さんがいる保護者が大変そうなときに,1 人のお子さんは保育者が見ていてもう1 人のお子さ んを見ることに専念できるような支援をしていた。(2年生) ・保護者の方と積極的に会話をしていて,子育てについてのアドバイスなど親子への支援の様子を知るこ とができた。(2年生) ・子ども達が帰ったあとに掃除をしたときに,子ども達が使ったおもちゃ一つひとつを丁寧に拭くということを 学んだ。(2年生) ・先生方の保護者の方への接し方が安心できるものであったこと,お母さん達が不安ごとの相談をしてい て先生方のことを信頼している雰囲気を感じることができた。それは日頃から不安ごとや楽しい話などを親 身になって聞いているからこそなのだと学ぶことができた。(3年生) ・お父さん,お母さんを迎えてゆっくりとした時間をすごせるように先生方も落ち着いていた。(3年生) ・職員の方がお母さんとお話されている姿を見て,この時間は保護者のためにもあるものなのだと感じた。 とても落ち着いた様子で安心できる場になっていたと思う。(3年生) ・職員間の連携について学ぶことができた。会議以外でも,ふとしたときに話をして連携を図っていた。保 護者に対しては,助言はするものの,提案の形で伝えるようにしているとのことだった。 (「子育て支援実習」を履修した4年生)

参照

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3 学位の授与に関する事項 4 教育及び研究に関する事項 5 学部学科課程に関する事項 6 学生の入学及び卒業に関する事項 7

を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に