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変貌するメコン経済圏 (フォトエッセイ)

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Academic year: 2021

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全文

(1)

変貌するメコン経済圏 (フォトエッセイ)

著者

石田 正美

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

232

ページ

26-29

発行年

2015-01

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003301

(2)

  メ コ ン 川 が 流 れ る 中 国 ・ 雲 南 省 、 ミャンマー 、 ラオス 、 タ イ 、 カンボ ジア 、 ベトナムから成る大メコン圏 の研究に携わるようになっ て、一〇 年あまりが過ぎ た。二〇〇 四年に各 国を回ったとき 、 カンボジアとラオ スは筆者にとり初めての国であり 、 中国 ・ 雲南省の昆明やベトナムのホー チミン市も初めての地であった 。 初 めて買ったデジカメ越しにみる風景 は 、 目新しいものばかりで約四 〇 〇 枚もの写真を撮った。 撮りたいと思っ た写真は 、 主観になるが 、 良い写真 になった 。 その後二 〇 〇 九年からは 約四年半あまり 、 バンコクを拠点に この地域をみる機会に恵まれたが 、 同じ土地を再び訪れると 、 目新しさ なき故かシャッターを切る回数も減 り 、 感動なき故か写真の出来も今ひ とつとなっていった 。 ところが 、 筆 者の膝元のバンコクで 、 相次ぐ高層 ビルの建設など目まぐるしい変化を 経験し 、 そうした変化を写真に収め な か っ た こ と に 気 付 き 、 後 悔 し た 。 そこで 、 帰国まで一年を切った二 〇 一三年半ば頃から 、 以前訪問した地 を訪ねるときは 、 定点観測を心掛け るようにした。 小稿では、 カンボジア、 ラオス 、 ミャンマー 、 ベトナム 、 タ イの五カ国において 、 二時点間で撮 影した写真を対照することで 、 こ の 地域の変貌振りの一部を紹介したい。 ● 進む貧困削減   プノンペンを初めて訪ねた二 〇 〇 貧困削減が進むカンボジア・プノンペン 上: 2004 年 9 月 2 日 左 :2013 年 11 月 6 日

フォトエッセイ

写真・文

石 田 正 美

Masami Ishida

(3)

活気付く国境貿易:ミャンマー・ミャワディ国境貿易ゾーン 右:2010 年 2 月 5 日 左 :2013 年 12 月 1 日 工場が立ち始めたラオス・サワンパーク 右: 2010 年 9 月 1 日 左 :2014 年 8 月 31 日 四年 、 トンレサップ川の河畔の公園を歩 いていると 、 子 どもたちが物乞いのため 近づいて来た 。 金銭を渡したところで 、 そのお金は誰かに持っていかれる 。 そ う 思うと、 金銭は支払いたくなかった。 ただ、 冷たくあしらいたくもなく 、 子どもたち の写真を撮り 、 その写真をすぐにみせる と 、 子どもたちは笑みをもらし 、 物乞い することも忘れていた 。 た だ 、 写真でも わかるように 、 子どもたちは上半身裸と 裸足で 、 ひ とりの子どもはパンツすらも 履いていない。   二 〇 一三年 、 筆者は同じ場所を訪れた 。 両写真右側のホテルは 、 ま ったく変わっ ていない 。 ところが 、 公園に敷き詰めら れたタイルや街頭は変わり 、 公園に関す る限り別の場所となっていた 。 そ して何 より 、 複数の母親が子どもを遊ばせてい たが 、 子どもは皆靴を履き 、 きれいな服 を着ていた。   その間 、 カンボジアの一人あたり G D P は 二 〇 〇 四年の四 〇 六ドルから一三年 には一 〇 一七ドルにまで約二 ・ 五倍に膨 らんでいる。 ● 工場が建ち始めた工業団地   カンボジアやラオスで工業団地や経済 特別区 ︵ S E Z ︶ を建設する動きは 、 二 〇 〇 〇 年代後半から顕著になってきた 。 しかし 、 そ のパンフレットは夢を抱かせ る美しいイラストで飾られているものの 、 現場を訪れるとフェンスに覆われた荒地 に一部の土地が造成されている程度で 、 工場立地が進んでいないのが実情であっ た。

(4)

  二〇一〇年、ラ オ ス・ サワンナケート 県のサワン ・ セ ノ S E Z 内のサワンパー クを訪れた 。 同工業団地の設立が二 〇 〇 八年二月 、 当時は粗く造成した土地によ うやく一軒の工場が建設されているのみ であった ︵ 前ページ右上 ︶。 ところが二 〇 一四年に訪ねると 、 前ページ左上の写真 に示すように複数の工場が操業を始めて おり、その多くは外国企業である。 ● 活気付く国境貿易   ミャンマーとタイとの国境の町ミャワ ディで国境貿易区の建設が決まったのは 二〇〇六 年 一〇月。二〇〇九 年 に 入 り、 この国境貿易区も稼働し始めた 。 しかし 、 筆者が現地を 二〇一〇 年二月に訪れると 、 その入り口は自動小銃を持った軍人が警 備していた 。 軍政下で 、 しかも少数民族 カレン族の反乱が治まらない地域であっ たためであろう 。 た だ 、 そのためか積替 所を利用するトラックはほとんど見られ なかった︵前ページ右下︶ 。   二 〇 一一年にテインセイン大統領が就 任し民主化が進 み、二〇 一三年八月には 外国人の越境も認められるようになった 。 筆者が二 〇 一三年一一月に訪ねた際は 、 積替所には多数のトラックが停車してい た︵前ページ左下︶ 。 ● 摩天楼化するメガシティ   冒頭でも述べたとおり 、 バンコクでは 高層ビルの建設ラッシュが続いているが 、 ベトナムのホーチミン市でも状況は同じ である 。 右上の写真は 二 〇 〇 六年にホー チミン市を訪れた際 、 サ イゴン川ほとり 安全対策が進むタイ・バンコクの BTS スカイトレイン 上:2004 年 9 月 16 日 下 :2014 年 3 月 3 日 摩天楼化するベトナム・ホーチミン市 右上: 2007 年 11 月 13 日 右下 :2014 年 10 月 19 日

(5)

のメリン広場から 、 ルネッ サンス ・ リバーサイドホテ ル ・ サイゴン ︵左︶ とメリン ・ ポ イ ン ト・タ ワ ー︵右︶を 撮影したものである 。 と こ ろ が、二〇 一四年に同じ地 点から撮影すると 、 一番右 手に地上一六五メートルで 四四階建てのタイムズスク エア ・ ベトナムが 、 その中 間に地上二六二メートル六 八階建て 、 ホーチミン市で 二番目の高さを誇るビテク スコ ・ フィナンシャル ・ タ ワーが建設されていた 。 さ らに一番左手でも高層ビル 建 設 が 進 め ら れ て い る が 、 前 年 に 筆 者 が 訪 ね た と き と 比 べ 、 資 金 ショートのためか 、 建 設はほとんど進ん でいなかった。 ● 安全対策も進むスカイトレイン   最近日本の地下鉄などでも線路への転 落や列車への接触を防ぐ ﹁ ホームドア ﹂ と呼ばれる安全対策が施されている 。 こ うした安全対策は 、 バンコクの B T S ス カイトレインでも進められている。 前ペー ジ左の写真はチョンノンシ駅で 二〇〇四 年と一四年に撮影したものだが 、 ホ ーム ドアが駅のホームに備え付けられている 。 二 〇 一三年現在 、 タイの一人あたり G D P は六二三二ドル 、 バンコクの同地域総 生産は一万九二五二ド ル︵二〇一 一 年 ︶ である。 ● 嗜好品消費の波及   バンコクでは 、 スカイトレインに直結 したショッピング ・ モールなどで高級品 を買う人も増えている 。 こ れまで所得水 準の低い国からみてきたが 、 こ こで再び 一人あたり G D P 一三九四ドルのラオス の首都ビエンチャンに戻ることとしたい 。 写真を見比べると 、 そ の間に資生堂の店 舗が開業している 。 調べてみると 、 同 社 は二 〇 〇 九年八月にラオスでの事業展開 を開始している 。 嗜 好品の消費意欲はラ オスにも波及しているのである。   貧困の減少 、 外国投資による工業化 、 国境貿易の拡大 、 大都市での摩天楼化 、 高級品を求める消費意欲の波及 。 大 メコ ン圏はいまや ﹁ メコン経済圏 ﹂ として 、 変貌し続けている。 いしだ まさみ/ アジア経済研究所 開発研究センター長 1993 年アジア経済研究所入所。1997∼2000 年在ジャカルタ海外派遣(調査)員。 2009 年 7 月から 2014 年 3 月まで、バンコク研究センター主任研究員。 新興国にも波及する嗜好品消費:ラオス・ビエンチャン 右: 2008 年 3 月 10 日 下: 2014 年 8 月 31 日

参照

関連したドキュメント

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端を示すものである。 これは漸江省杭州市野下人 民公社に関する 1958

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出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所/Institute of Developing Economies (IDE‑JETRO) .

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア 経済研究所 / Institute of Developing.

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国際図書館連盟の障害者の情報アクセスに関する取

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