第66回 月例発表会(2004年04月) 知的システムデザイン研究室
次世代無線
LAN
∼ワイヤレス時代の未来∼
千野 晋平,狩野 浩一
Shinpei CHINO,Koichi KANO
1 はじめに
近年,光ファイバに代表されるブロードバンドを実現 するインフラが急速に普及してきた.それに伴い,光 ファイバを利用した大容量コンテンツに対する要求が高 まっている.一方,無線 LAN はまだ 100Mbps の伝送 速度に対応しておらず,無線 LAN を使う際のセキュリ ティも懸念されている.そのため,従来のままでは,ブ ロードバンド時代に対応できない.そこで本発表では, 次世代無線 LAN について考えることにする.2 従来の無線 LAN 規格
無線 LAN の規格は,IEEE(米国電気電子学会) で LAN 技術の標準化を策定している 802 委員会が定めてい る.現在市販されている無線 LAN 規格「IEEE802.11b」 「IEEE802.11a」「IEEE802.11g」のそれぞれの特徴と性 能を比較する.Table 1 で各規格における最大伝送速度, 無線周波数帯,通信範囲を示す. Table 1 無線 LAN 規格別性能 無線 LAN 規格 802.11b 802.11a 802.11g 最大伝送速度 11Mbps 54Mbps 22-54Mbps 無線周波数帯 2.4GHz 5.2GHz 2.4GHz 通信範囲 100m 50m 80m 2.1 IEEE802.11b 障害物に強く,伝送距離も長い.しかし,同じ 2.4GHz 帯の電波を使う電子レンジや医療用機器などが近くにあ ると電波干渉で通信速度が落ちる. 2.2 IEEE802.11a ノイズに強く,安定した通信をすることができる.し かし,障害物に弱く見通しの悪いところには不向きであ る.また屋外での利用も法律で禁止されている. 2.3 IEEE802.11g 伝送距離が長く,最高伝送速度も速い.しかし周波数 は 2.4GHz 帯であるため,IEEE802.11b と同じく電波干 渉により通信速度が落ちることがある.
3 次世代無線 LAN 規格
従来の無線 LAN 規格では,光ファイバの伝送速度よ り遅いため,ボトルネックになってしまう.また,セキュ リティの脆弱性も大きな問題である.そこで IEEE802 委員会ではより高速かつセキュアな次世代無線 LAN 仕 様を検討している. 3.1 さらに高速なネットワーク通信 現在,IEEE802.11n の標準化が進められている.一 番のポイントとしては,IEEE802.11a や IEEE802.11g といった規格とも互換性を保ちつつ,実測スループット で 100Mbps 以上の保証を検討している.IEEE802.11n で後方互換性を保ちつつ高い伝送速度を実現するため の手段として,MIMO(Multi-input Multi-output) 技術 の応用が検討されている.MIMO では Fig. 1 のように, 送信側,受信側双方に複数のアンテナを用意し並列化す ることでそれぞれのアンテナに届く電波の位相差を生 じさせ,電波を分離させることができる.そうすること で,複数の伝搬路を使って伝送を行うことができる.利 用チャネル数を増やしていけば,倍々でスループットの 向上が期待できる.しかし, アンテナ数が増えるとそ れだけ符号化・複合化におけるプロセッサの負担も増す ため,単純にパフォーマンスが上げれるわけではない. 少ない演算量で高品質な伝送特性が得られる分離処理方 法の開発が課題となっている. Fig. 1 MIMO伝送方式 IEEE802.11nは 2006 年に標準化を完了させる方向で ある.この規格が標準化されれば,今後主流になるであ ろう光ファイバが導入されても,無線 LAN がボトルネッ クになることはなくなり,ワイヤレスブロードバンドに さらに拍車をかけることが期待される.それに伴い,以 前から懸念されていたセキュリティに対して,対策が必 要となるだろう. 13.2 セキュリティ対策の強化 3.2.1 認証方式
IEEE802.1Xはユーザ名とパスワードを使ってユーザ 認証を行うための規格のことである.Fig. 2 で示すよう に認証サーバである RADIUS(Remote Authentication Dian In User Service)と認証や鍵の情報をやりとりす るために用いる. ࡙ࠩฬߣࡄࠬࡢ࠼㧘 ߹ߚߪ㧘㔚ሶ⸽ᦠߢ⸽ Radius ⸽ࠨࡃ ࠕࠢࠬࡐࠗࡦ࠻ ৻ቯᤨ㑆ߏߣߦ WEPࠠࠍ⥄േᦝᣂ ߔࠆߎߣ߽น⢻ Clients ή✢ WEPࠠࠍ㈩Ꮣ Fig. 2 IEEE802.1X 無線 LAN でユーザ認証を行うには,クライアント (無 線 LAN 端末) とアクセスポイントの双方が IEEE802.1X に対応している必要がある.クライアントがアクセスポ イントに最初に接続する際,認証が行われ,認証が成功 した場合のみ,以降の通信が許可される. 2004年 4 月 13 日から NTT コミュニケーションが提供 している全域のホットスポットにおいて,IEEE802.1X 認証を導入している.また,Microsoft Windows XP に も標準搭載されている. 3.2.2 次世代を担う暗号方式 暗号方式 DES の後継として 2000 年に NIST(National Institure of Standards and Technology)が暗号アルゴ リズムを公募したところ,その中からベルギーの RIJN-DAELというアルゴリズムが AES(Advanced Encryp-tion Standard)という名称で採択された.特徴としては, 以下の項目が挙げられる.
• ライセンスフリーで利用可能
• ブロック長は 128bit,鍵の bit 長は 128,192,256bit
をサポート
• ラウンドの基本構造に SPN 構造を使用 • 3 種類の変換部によって構築
• ラウンド数は 10∼14 回
RIJNDAEL は Fig. 3 で 示 す よ う に SubBytes(1 バ イ ト ご と の 置 換),ShiftRows(行 の シ フ ト),Mix-Columns(列の混合),AddRoundKey(鍵との排他的論理 和) を繰り返すことで,暗号化している.
ജ㧔ࡆ࠶࠻ࡃࠗ࠻㧕
S S S S S S S S S S S S S S S S
MixColumns MixColumns MixColumns MixColumns
ജ㧔ࡆ࠶࠻ࡃࠗ࠻㧕 SuByte ShiftRows MixColumns AddRoundKey Fig. 3 Rijndael暗号化の 1 ラウンド ブロック長が 128bit に対応している AES 方式のほ うがブロック長が 64bit の DES 方式より安全といえる. また,Subytes はバイトごとに,ShiftRows は行ごとに, MixColumnsは列ごとに並列処理ができるというメリッ トもあるため,高速化も期待できる. AESはアメリカだけでなく,欧州暗号標準プロジェ
クトである NESSIE(New European Schemes for Signa-tures, Intergrity, and Encyption)で公式認定,日本で も電子政府推奨暗号に選ばれており,今後世界中で広く 利用されていくことだろう.無線 LAN でも,既に AES が組み込まれた製品が出荷され始めているので,今後, 新たな暗号方式として活躍することは間違いない.