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ザンビアの金属汚染に関わる国際共同研究を通して

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Academic year: 2021

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(1)ザンビアの金属汚染に関わる国際共同研究を通して. 37. 学界展望. ザンビアの金属汚染に関わる国際共同研究 を通して 北海道大学大学院獣医学研究院毒性学教室 中. 1. 国際共同研究の課題 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化 A) 「低濃度・ 長期慢性暴露における鉛の毒性発現に腸内細菌叢が関係 するか?」. 2. 海外の共同研究パートナー ◦Dr. John Yabe (Lecturer, University of Zambia), Zambia.. 3. 研究内容・目的 本研究は,ザンビア共和国のカブウェ鉱床地域で鉱山 周辺および離れた地域に住む人びとを対象としている。 血中・尿中・糞便中の鉛濃度の推移および糞便を用いた 腸内細菌叢解析を行い,鉛暴露が腸内細菌叢に及ぼす影 響を明らかにすることを目的としている。. 4. 上記の研究者を共同研究者として選ぶに 至った経緯 共同研究者の John Yabe 氏とは北海道大学大学院獣医 学研究科(当時の所属名。現在は研究院)で一緒に博 士号を取得した関係にある。筆者が 2008 年 4 月より, Yabe 氏が 2008 年 9 月より博士課程を開始し,ザンビア での調査研究や北大における実験,データ解析,論文執 筆など,博士課程を通じて一緒に研究を行ってきた。つ 連絡先:〒 060-0818 札幌市北区北 18 条西 9 丁目 北海道大学大学院獣医学研究院毒性学教室 e-mail: [email protected]. 山. 翔. 太. まり,当初より,Yabe 氏は一番信頼できる友人かつ研 究カウンターパートであった。博士号取得後,Yabe 氏 がザンビアに帰国した後も,筆者は彼と継続的に共同研 究を実施・発展させてきた。このような経緯があり,ザ ンビアで国際共同研究を実施するために本国際共同研究 加速基金(国際共同研究強化 A)を申請するにあたり, 共同研究者として打診する相手は彼以外には考えられな かった。そして,打診のメールを送った当日には快諾を 頂き,現在に至っている。北海道大学の大学院やポスド ク時代に多くの留学生や海外共同研究者(ザンビア,ガー ナ,南アフリカ,エジプト,ナイジェリア,カメルーン, ウガンダ,ケニア,エチオピア,スーダンなど)と知り 合いになれたのは非常に有難いことだと感じる。現在, Yabe 氏以外にも様々な国の研究者と共同研究を実施で きているのは幸せなことである。. 5. 研究の進展状況 現地で必要となるゲノム抽出装置,遺伝子増幅装置な どのラボのセッティングを行うとともに,約 800 名の子 供から血液,尿,および糞便を収集することができた。 ザンビアの各クリニックにおけるオンサイト血液中鉛濃 度測定を終了し,低濃度から高濃度の広範囲における血 中鉛濃度を示す検体を集めることができている。さらに, 糞便由来の腸内細菌叢解析を実施するために,ザンビア 大学獣医学部に設置したラボにおいて細菌ゲノムを抽出 した。一部の検体については遺伝子情報を解析する機器 を用いた次世代シークエンス解析を実施しており,現在, 細菌叢の構成変動に関しての多変量解析などを実施して いる。 さらに,本国際共同研究の重要な目的である途上国に おける環境学・毒性学の研究者育成のためにザンビア大.

(2) 38. 中 山 翔 太. いかと土壌や動物の研究結果より考えるようになり,こ れは何とかできないものかと Yabe 氏に相談した。そし て博士課程 2 年次から 3 年次にかけてザンビア保健省の 研究倫理許可を取得し,実際に博士課程の4年次からポ スドクにかけて,ザンビアの血液サンプルを採取すると ともに世界で初めてザンビア国外(日本)への試料輸送 6. 国際共同研究を推進していく上での工夫 に成功し,所属ラボで精緻な鉛濃度分析を実施し,その や直面した課題およびその解決策 データをザンビア政府に提供した。 また,「気づき」という点では,意外にも自分は海外 一番気を付けている点は,相手国研究者および相手国 側の意見がどのようなものであるかを事前に自分でも考 (先進国よりは途上国)に行って研究をするのが好きな のかもしれないと,研究を続けるうちに知らない自分を えてみたり,直接聞いて確認してみたりして進めること である。相手国側のカウンターパートと問題点を共有し, 発見したことがある。初めは学部生時代の研究テーマを 続けようと思い博士課程に進学したが,幸か不幸かちょ 相談しながら解決策を共に見つけることが大変重要だと うどアフリカでの共同研究プロジェクトが所属する研究 感じている。どちらかが一方的に決めるのではなく,一 室で開始され,筆者が唯一の日本人博士課程在学生だっ 緒に同じ方向を向いて取り組むことが共同研究の大前提 たこともあり,そちらにコンバートされた。最初は何を ではないかと考えている。 するのかも分からず同行するだけであったが,実際に現 また,プラクティカルなことで言えば,日本とは異な る各種手続きなどの大幅な遅延について,極力待ったり, 地に行って研究が始まりと,自分でもザンビアにおける 環境問題について主体的に真剣に考えるようになり,現 耐えたりすることも必要ではないかと考えている。例え 在取り組んでいる金属汚染問題について Yabe 氏ととも ば,現地で採取した試料の日本への輸出許可に 1 ~ 2 年 掛かったことも複数回あったが,これはこれで仕方ない に研究を進め,論文を執筆してきた。このような研究 基盤が今の国際共同研究加速基金や 2016 年より開始さ と割り切りつつ,同時進行で研究を進められるようなプ れた JST/JICA SATREPS 事業「ザンビアにおける鉛汚染 ラン B から D くらいまで想定・準備しておくように心 のメカニズムの解明と健康・経済リスク評価手法および 掛けるようにはしている。 予防・修復技術の開発」,および 2020 年より開始された JST aXis 事業「ザンビア鉱山地区における鉛汚染環境お 7. 国際共同研究を行うにあたって感じたこ よび鉛中毒対策としてのリスクベースアプローチの実践 と,気づいたこと と効果検証」に繋がっていると思う。はじめは少人数で 進めていたものが,今では日本・ザンビア合わせて 200 私がザンビアで研究をはじめたときに一番感じたこと 名以上の参画者がいる国際共同研究になっている。やっ は,現地の子供たちの笑顔が可愛くとても楽しそうに過 ごしていることである。ザンビア中を周り,土を集め, とスタートラインに立てた気がするが,今後とも可能な 限り本問題の解決に尽力出来ればと考えている。また, 魚や野生ラットを採材し,金属濃度を調べたが,どこに このような自身の経験や経緯から,今は積極的に,指導 行っても歌ったり,踊ったり,サッカーで遊んだりと元 する学生(学部生,大学院生)を現地に渡航させ,本人 気な子供たちに出会ったものである。これらの出会いや が主体的に研究に取り組む環境を整備するように心掛け 一緒にサッカーをしたりするひと時の休息が楽しく,そ れが遠く離れたアフリカで研究を「継続する」モチベー ている。列挙できないほど多くの共同研究者や学生が調 ションになっている。一方で,そのような彼らの中にも 査同行,データ取得,論文執筆,対外発信など本共同研 「見えない高濃度の鉛」が体内に存在しているのではな 究の発展に貢献してくれた。この場を借りて感謝したい。 学より研究者(Golden Zyambo 氏)を北海道大学に招聘 し,関連研究分野における技術移転を実施した。招聘者 はザンビア大学の学生に教育・指導を実施しており,当 該研究分野の推進に貢献している。.

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