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水文・水質モデルを用いた加古川流域における降雨時・平水時の窒素動態解析

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Academic year: 2021

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水文・水質モデルを用いた加古川流域における降雨時・平水時の窒素動態解析 大阪大学 ○森正憲 嶋寺光 松尾智仁 近藤明 兵庫県環境研究センター 古賀佑太郎 鈴木元治 1.はじめに 閉鎖性海域である瀬戸内海では,高度成長期には富栄養化の影響で赤潮が頻発していたが,瀬戸内海環境保全 特別措置法による規制の結果,流入汚濁負荷量は大きく減少し,水質の改善が進んできた.一方で 1990 年代後半 頃から,水産業が盛んな当海域において,ノリの色落ちや漁獲量の減少が確認されており,その原因として貧栄 養化の影響が懸念されている.瀬戸内海東部に位置する播磨灘においての窒素濃度には,流入河川からの窒素負 荷量が影響していると考えられている.そのため,流入河川流域における窒素発生量を正確に推定できれば,河 口流出量を計算し,それを基に海域の窒素濃度の推測,貧栄養化対策策定への貢献が可能である.大気中や地表 面の窒素は降雨により地下水や河川に流入することが知られているが,各自治体等で実施されている河川水中の 窒素濃度の常時監視は平水時を対象としており,降雨時のデータは少ない.そこで本研究では独自に行った降雨 時の採水調査のデータを用いて,降水時及び平水時の両方を対象とした,全窒素(TN)の動態解析を行った. 2.解析方法 計算領域は播磨灘への流入河川で最大の流域面積を有する加古川流域とし,水平解像度 1km で 1852 メッシュ に分割した.計算期間は流域内での汚濁発生源のデータが入手可能であった 2004 年~2016 年とした.Hydrological River Basin Environment Assessment Model(Hydro-BEAM)1)を基にした水文モデルで,水路網データ,土地利用デ

ータ,気象データから流域内の降雨流出過程を計算した.続いて水質モデルで,水文モデルにより計算した河川 流量と,窒素負荷発生源データから河川水中 TN の動態解析を行った. 計算結果の妥当性評価のため,計算値と観測値の比較を行った. 平水時の観測値として,国土交通省水文水質データベースより取 得した板波,古川橋,万願寺,大島,国包,池尻においての河川 流量,TN 濃度データを用いた.また,降雨時の TN 濃度データに ついては,降雨時に池尻において 2010 年 7 月,10 月に 1~3 時間 ごと,中西条において 2015 年の 11 月に 2 時間ごと,2016 年の 2 月に 4 時間ごとの採水・分析を各月1回実施した.図 1 に加古川 流域における流量および TN 濃度の観測点の分布を示す. TN 発生源として点源(下水処理場,事業所)と,面源(土地利 用別)を考慮した.表 1 に各土地利用の流域内面積割合2)と降雨 時の採水を実施した 2010 年,2015 年及び 2016 年の TN 面源負荷 原単位を示す.原単位は,尼崎にて観測された窒素の湿性沈着量 を基に,各土地利用の特性を考慮した上で算出した(山林,水田, 畑,市街地)3).面源負荷は原単位に基づく年間負荷量を表面流の時系列変化に応じて分配した.また畑に関して は耕作期間である 4 月 30 日~9 月 27 日にかけて肥料からの負荷を考慮した. 表 1 流域内の土地利用割合と TN 面源負荷原単位 土地利用 山林 水田 畑 肥料 市街地 面積率2)(%) 66.4 18.7 1.0 11.3 原単位(2010)(kg/ha/year) 1.01 28.8 9.18 125 9.18 原単位(2015)(kg/ha/year) 1.19 29.2 10.8 125 10.8 原単位(2016)(kg/ha/year) 1.12 29.0 10.2 125 10.2 図 1 加古川流域内の観測点分布

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3.結果・考察 森ら4)は図 1 に示す加古川流域内の流量観測点において,2015 年における流量の良好な再現性を確認した.流 量の実測値が存在しない地点での TN 負荷の実測値を推定するため,本研究では同様の手法で 2004 年~2016 年の 流量を計算し,流量の計算値に TN 濃度の実測値を掛けた値を TN 負荷の実測値として扱った.図 2 に平水時の TN 濃度実測値が得られた 6 地点における 2004 年~2016 年までの TN 負荷の計算平均値と実測平均値を示す.流 域内の複数の地点にて,平水時の TN 負荷の良好な再現性が確認された.このことから,平水時の主な窒素発生源 である点源からの窒素流出は正確に再現できたと考えられる.また図 3 に降雨時の TN 濃度実測値が得られた池尻 及び中西条においての TN 負荷変動を示す.一部時間帯においては負荷量のピーク及び下降するタイミングにずれ が見られたものの,全体的に降雨時の TN 変動の再現性は非常に良好であった.以上より,降雨時における面源由 来の窒素流出を正確に再現できたと考えられる. 4.まとめ 本研究にて,平水時及び降雨時の両方で TN 負荷の再現性が良好であると確認された.今後は本モデルを加古川 以外の他流域に適用することで,播磨灘の TN 動態を解析する際の境界条件としての活用が期待される.また本研 究では入力データの不足により,2004 年以降の解析に留まったが,1995 年頃からの汚濁発生源のデータを入手, もしくは推定することで,播磨灘の水産資源が減少し,貧栄養化が懸念され始めた時期からの河川からの TN 流入 負荷量が計算可能となる.その上で,TN 流入負荷量の経年変動が把握できれば,播磨灘の貧栄養化と河川流入負 荷量との関係を解析できると考えられる. 【謝辞】 本研究は,公益財団法人 河川財団の河川基金助成事業によって実施しました. 参考文献

1)Kojiri, T. et al., Assessment of global warming impacts on water resources and ecology of a river basin in Japan. Journal of Hydro-Environment Research, 1, 164-175, 2008

2)国土数値情報ダウンロードサービス,http://nlftp.mlit.go.jp/ksj

3)環境省_越境大気汚染・酸性雨対策調査,https://www.env.go.jp/air/acidrain/

4)森ら,水文・水質モデルを用いた加古川流域における窒素動態解析 ,水文・水資源学会研究発表会要旨集 pp68-69,2018

キーワード:Harima nada, Kako river basin, Total nitrogen, Water quality model, Nonpoint source

図 3 池尻及び中西条における降雨イベント時の TN 負荷の計算値及び実測値

図2 平水時 TN 負荷の実測値と計算値の 平均値比較(2004~2016)

図 3  池尻及び中西条における降雨イベント時の

参照

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