Author(s)
圓田, 浩二; 平良, 俊; 平田, 健人; 前田, 毅志
Citation
沖縄大学法経学部紀要 = Okinawa University JOURNAL OF
LAW & ECONOMICS(26): 47-58
Issue Date
2017-03
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/21510
1.国際観光都市「香港」 本稿では、国際観光都市である香港と、国際観光都市を目指す沖縄での観光客の比較調査から、 沖縄観光の発展にとって、何が必要かを調査し、報告し、考察する。 香港は中国大陸南部・河口東岸に位置し、人口700万人、面積1,104平方キロ(日本の札幌市と ほほ同じ大きさ、東京都の半分の大きさ)で、人が住める地区は全体の25%ほどである。香港の 正式名称は、「中華人民共和国香港特別行政区」である。「香港国」ではなく、中国の広東省や福 建省などのような「香港省」でもなく、北京市や上海市のような「香港市」でもない。中国の特 別行政区とは、香港のほかにはマカオのみの「特別」な地区であり、比較対象を決めることも難 しい。香港は世界一の長寿地域としても知られている。医療環境が安定しており、1980年代まで は70歳代前半だった平均寿命だが2015年には女性が87.32歳、男性が81.24歳で男女ともに世界一 になった(『日本経済新聞』2016. 7.28朝刊、第13版、沖縄県版、1面)。 香港は国際観光都市でもある。2015年には、観光客数が2,600万人を超えている(世界観光機 関の調査)。香港の観光の特色・魅力は何か、現地でフィールドワークを行いながら、日本人観 光客にアンケート調査を行った(2016年6月19日から24日 48部回収)。また、比較調査として、 沖縄でも、香港人観光客に、同じ内容でのアンケート調査を行った(2016年9月19日、9月20日、 9月21日、10月10日、10月28日の計5日間 31部回収)。 2.香港の歴史・経済・政治 香港の特異性は政治の面でもみられる。社会主義国の中国において、資本主義の体制を維持す る「一国二制度」の政治体制は特殊と言える。これには、植民地化から中国への返還までの香港 の歴史が重要な要因となっている。1842年、アヘン戦争に敗れた清国は、「南京条約」によって 香港島をイギリスに割譲し、1860年には、アロー戦争で再びイギリスに敗北し、「北京条約」で 九龍半島を割譲した。1898年には、イギリスは清国と「新界租借条約」を結び、新界を99年とい う期限つきで租借した。こうして、現在の香港特別行政区に相当する地域が、イギリスの統治下 に置かれた。植民地として異民族支配の下に置かれた香港は、むしろその間に本国以上、ある面 【調査報告】 キーワード:観光、香港、沖縄、比較調査 圓 田 浩 二*1 平 良 俊 平 田 健 人 前 田 毅 志
香港・沖縄観光調査報告書
では宗主国以上に、大きく発展したのである。19世紀半ばまでは、中国南部の辺境の、ありふれ た農漁村だった香港は、イギリスの統治によって初めて貿易港として発展した。 香港を取り戻す際、中国もこの事実に直面せざるを得なかった。香港が中国大陸の社会主義と は相容れない資本主義という制度によって発展したこと、その住民は祖国・中国を非常に恐れ嫌 悪していることも現実であった。中国と香港が互いにどう向き合うべきかという問題を複雑にす る理由である。 返還後、香港のさまざまな方面で「中国化」と称される動きは進んでいき、香港と大陸の経済 関係も変化していった。中国経済が香港を上回る速度で成長を続けたことで、香港経済は低下の 一途をたどり、経済の勢いを取り戻せない中で、新型「SARAS」が香港を襲い、返還後の6年 間は香港の暗黒時代となった。そんな状況下にもかかわらず、香港政府は北京の中央政府の強い 求めに応じ、不人気法案「国家安全条例」の成立を強行しようとした。政治・言論等の活動の脅 威として、「国家安全条約」は民主派やメディアから強い懸念の声が上がった。 「国家安全条例」反対を掲げる民主派のデモに、不景気や失政への不満を溜めた市民が参加し 香港島の主要道路を埋め尽くして参加し、「五十万人デモ」と称された。北京の中央政府はこれ に衝撃を受け、より積極的に香港内政に関わるようになり、ここからさまざまな側面で香港の「中 国化」が進展する。「中港融合」政策導入により、経済などは回復したが、香港市民の生活のさ まざまな面に、副作用を及ぼした。例えば、香港のインフラ利用の増大や、市民生活の質の低下、 転売目的で日用品を買い占めるために大陸からやって来る中国人「イナゴ」の出現、大陸と香港 の市民間の感情的対立などである。 そして経済融合の進展と同時に、中央政府は民主化も「中国化」させた。すなわちイギリスか ら引き継いだ民主化を中国式政治体制の混入へと転化させたのである。中国化が進む香港だが経 済面で、中国と政府の役割に大きな違いがある。特に金融やエネルギー、重工業などにおいて国 営企業の比率が高く、政府が市場の主要な役割を務める「国家資本主義」とも称される中国に対 して、政府が市場に対する不干渉の方針を積極的に採っている「積極的不干渉主義」の香港政府 は市場への介入を最大限回避してきた。米国・ヘリテージ財団の2015年版「経済の自由度指数」 で、香港は21年連続で世界一の評価を受けている。一方の中国では、調査対象178 ヶ国・地域中 の139位で、両地の経済の自由度には大きな差がある。 政治体制の相違はより本質的である。中国政府に対しての不満が香港の人々のなかで生まれて いる。2014年8月31日、北京の全人代常務委は、香港の2017年行政長官の選挙をしてもよいが、 選挙に出馬するには、これまで行政長官選挙委員会と同様の1,200人の指名委員会の過半数の指 名を条件とすると決定した。民主派にとって、親政府派が圧倒的多数を占める委員会では、民主 派が過半数の指名を受ける可能性はゼロに等しく、民主派の立候補の道はほぼ閉ざされた。これ は八・三一決定と呼ばれる。 この決定に最も積極的に反応したのは学生ら若者であった。香港各大学の学生会の連合組織は 抗議するため一週間のボイコットを発動した。 金アドミナリティ鐘 で5万人が集まった。集会現場に向かう学 生や市民が数万規模に達し、ついに人々が 金アドミナリティ鐘 周辺の車道にあふれ出した。警察はこれを排除 しようと催涙弾を撃ったが、これが市民の怒りを増幅させ、さらに大規模な市民の動員に繋がっ た。人々は催涙弾などから雨傘をさして対抗した。79日間続いたこの「雨傘運動」は結局目に見
える成果は得られず、中央政府は「八・三一決定」を撤回しなかった。 返還後の香港では、中国の経済力と国際的な政治力の増大を背景に、「中国化」と言われる現 象が政治・経済・社会の各方面で進められてきた。自治の後退や自主性の減退が不断に取りざた された。自由の減退とそれへの抵抗を最も象徴するのが、メディアの状況だろう。香港の主要メ ディアの大部分は、大陸と関係の深い財界人が所有しており、大陸でのビジネスや、年々存在感 の強まる中国系企業からの広告収入に配慮して、中国政府批判を控える「自己検閲」の傾向があ ると言われている。 返還後の香港を貫くテーマは「中国化」であり、政治面での主権の確保と、経済面での影響の 拡大を背景に、中央政府は香港での存在感を増大させた。香港の政治学者は、この過程を「再植 民地化」と論ずる。「再植民地化」の刺激があったからこそ、香港の人々は抵抗や自立の必要性 を感じ、「脱植民地化」に向かった。政治・経済の「再植民地化」と、社会・人々の意識の「脱 植民地化」の猛烈なせめぎ合いが「雨傘運動」の原動力となったのである。複雑な歴史をもち、 何もかもが特殊である「香港」はこれからも変化し続けるだろう。 3.香港観光の特色 香港は中国であるため、中国の伝統文化も残しつつ、 イギリスの植民地時代の影響も受けている、他にはない 一風変わった行政区である。最近では、経済都市として も注目されており、香港の経済を特徴づけているものは 自由貿易と低い税率、そして経済に対する政府の介入が 最小限であることも強みである。 さらに最近では世界各国から香港に食で勝負しようと多 くの企業が香港に進出している。日本のチェーン店も多く 進出しており、CoCo壱番屋や吉野家、和民など香港で日本 食を恋しくなっても心配ない。香港にいるだけで世界各国 の料理が味わえるのも国際都市・香港の魅力の一つである。 もちろん本場の香港料理も非常に人気で、飲茶や小籠 包、中国四大料理など昔から親しまれているものから、 日本とは違い1年中楽しめる火鍋などがある。スイーツ では、杏仁豆腐のイメージが強かったが、最近ではマン ゴープリンやおしるこなどを売りにしているお店も多く そちらも注目である。その中でも香港ローカルグルメが 今、注目を集めており、ローカルグルメ目的で来る海外 旅行者も多いだろう。ローカルグルメは、麺や飯、粥など安くて美味しい食事を味わえるお店も多い。 香港では、「見る」を目的とした観光スポットも多く存在する。所狭しと並ぶネオン看板や近 代的な高層ビルが多く立つ香港である。その高層ビル郡を山の上などから見た景色は、日本では 決して見ることのできない光景である。特に代表的なのが香港一高いビル、スカイ100(高さ490 メートル)から見る景色と、山の上から見るビクトリアピークからの景色は圧巻だ。もちろん夜 画像1 香港の海鮮料理 (2016.6.23撮影) 画像2 香港の飲茶 (2016.6.24撮影)
景を見るのがおすすめだが、昼に行ってもビジネス街で見る高層ビル群の光景も圧巻である。日 本では味わえない、景色を見ることができる。 香港を訪れる外国人観光客は、その多くがショッピングを目的としているだろう。香港は、経 済都市であることから世界中からビジネス目的などで、多くの富裕層が集まる。そのためかブラ ンドショップが非常に多い。しかし、ブランドショップだけではなく庶民でも気軽に買い物がで きる、ショピングモールも数多く存在する。 日本とあまり物価は変わらないが、香港でしか手に入らない流行のアイテムなどを探してみる のもよいだろう。香港デザイナーが手がけるアジアンテイストの強い洋服や小物を見て回るだけ でも楽しめる。香港は「特別行政区」と言っても、中国の伝統もしっかり残っている。例えば、 中国茶葉や茶器である。茶器も金魚や花をモチーフにした中国らしいかわいい色づかいや模様が 特徴で、茶葉や茶器をお土産に買っていくのも人気があるようだ。しかし、ショピングを楽しみ たいならナイトマーケットに行くのが、おすすめである。香港には、男ナムヤンガイ人街と女ノイヤンガイ人街という代表 的な二つの大きなナイトマーケットがある。ナイトマーケットは、とても活気があり、高級ブラ ンドのコピー品から香港のお土産までさまざまな商品が売っている。見て回るだけでも楽しいが、 日本とは違い、とても客引きが強い。しかし、日本ではあまりできない値引き交渉に挑戦してみ るのもよいだろう。このように香港は、「食べる」、「見る」、「買う」などの分野はとても充実し ていて、観光客をとても満足させることができている。 香港に観光で訪れた際には、香港の都会的できれいな街並みの富裕層が住むところだけではな く、富裕層ではない地元民が生活している所もぜひ見て欲しい。香港社会の特色に格差社会があ ると思う。同じ香港でも、電車に乗って2つ駅をこえると、全く別の街並みが広がる。例えば、 深 サン 水 ソイ 歩 ポー である。香港の下町である深サン水ソイ歩ポーは、街全体がき れいとはいえず、香港特有の悪臭(生ごみの臭い)もす る。あまり、観光客が行くところではないだろう。しか し、香港のきれいな所だけではなく、香港人の日常生活 を見て感じた方がより香港について深く知ることがで きると思う。そこでは、上半身裸で果物を売る八百屋や、 肉をそのまま外に並べる精肉店など映画でしか見るこ とができない光景を味わうことができるだろう。 4.アンケート分析 4-1 香港での日本人観光客アンケート調査 今回のアンケート調査(48名、男性10名、女性38名) から日本人の香港での観光行動を知ることができた。香 港はアジアでも人気の観光地であり、多くの日本人も観 光やビジネスなどで香港に訪れている。日本から近いこ ともあり安いパッケージツアーを利用し、学生や社会人 の若年層に人気を誇っている。 アンケート調査から香港旅行は図表1を見ての通り 図表1 男女比 ■男性 ■女性 性別 21% 79% 画像3 ナイトマーケット (2016.6.24撮影)
男女比の差が大きいことがわかった。女性が79%とほぼ 女性が占めている。香港を訪れている日本人観光客の年 齢層はどうなっているのだろうか。グラフを見ての通 り20代が多いことがわかる。理由として香港は、ショッ ピングやグルメが若い女性たちに人気があるため、香港 は治安が良い地域としてしられているのでその結果グ ラフのように20代女性が多いことは理解できる。 香港への日本人観光客出身地などアンケートを取っ た結果、関東地方と中部地方が多く見られた(図表2)。 理由としては、関東地方と中部地方が、人口が多いため だと考えられる。また関東地方と中部地方から香港に 行く飛行機の便が多いためこのような結果になったと 言える。観光客の職業などを調べると会社員が多く見ら れ、その理由としては調査日が週末であったため社員旅 行や、休みを利用して近場の香港に訪れたと考えられる。 香港への訪問回数を調査したところ「初めて」の人 が81%と多いことがわかった(図表4)。その理由とし て日本人にとって昔から有名な観光地であり治安もよ くそのため香港が選ばれたと考えられる。またパッケー ジツアーも多いことからこのような結果になったこと が考えられる。 5回以上香港に訪れている人が多い理由としては、ビ ジネスなどで訪れていると考えられる。今後の香港観光 の課題としては、リピーターの観光客を増やすことが課 題と言える。九龍と香港どちら側に宿泊しているのかを 調べると半分以上の日本人観光客が香港側に宿泊して いることがわかった(図表5)。理由としては、香港側 にはビクトリアピークなど景色がきれいなところがあ り、昼間街中を観光し、夜には景色のきれいなホテルに 宿泊するパターンが多いためだと考えられる。 「誰と訪れましたか?」という質問に対しては友人が 32人になっており、社会人が12人となっている(図表 6)。友人や社員旅行で訪れている人が多いことがわか る。また5名以上が半数を占めており、次に2名が多い ことから5名以上は社員旅行で2名は友人と訪れてい ることが推測できる。 香港での移動手段は、電車、バス、徒歩が多いことが わかった(図表7)。徒歩で移動するときは、ホテルの 図表2 出身地 図表3 年齢 図表4 訪問回数 図表5 宿泊場所 0 2 4 6 8 10 12 14 関東地方 中部地方 関西地方 九州・沖縄 地方 四国地方 中国地方 北海道地方 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 19歳以下 20 代 30 代 40代 50 代 60 代 70 代 ■初めて ■3回目 ■5回以上 今度の訪問で何度目ですか? 81.5% 6% 12.5 % ■九龍 ■香港島 九龍と香港島どちら側に宿泊しますか? 37% 63% 図表6 誰と訪れましたか 0 5 10 15 20 25 30 35 友人 家族 恋人 社員 近親者 無記入
近場で遠い所は電車やバスを利用していることが考え られる。電車、バスが多い理由は香港には、オクトパス カードという一種の電子マネーカードがあるため電車、 バスが多かったと考えられる。オクトパスカードは、乗 り物に乗る時に、カードリーダーにとかざせばそれだけ で運賃が精算される。乗り物だけではなく、コンビニや スーパーマーケットで便利に使える。 一人当たりの予算は、6万円以下が50%以上なのがわ かる(図表8)。その理由としては、週末を利用した短 期旅行なので多くの金銭を必要としないためだと考え られる。また9万円以上が多い理由としは、香港での ショッピングやマカオのカジノで多くのお金を使用す るためと考えられる。私達の反省としては、カジノな どがあるので9万円以上の回答欄を作成すればよかっ たと感じた。観光の申し込み手段としては、やはりパッ ケージツアーが多いことがわかった(図表9)。香港 を訪れる日本人観光客の多くが初めて訪れるため安い パッケージツアーでの観光が多かったと考えられる。 利用したエアラインを調べてみるとキャセイパシ フィック航空が多いことがわかった。その理由としてま ずキャセイパシフィック航空が日本各地空港からのエ アラインを多く持っていること、また料金が大手航空会 社より安いことが考えられる。香港観光での目的として は、香港は有名な観光地のため観光スポットや観光行 動の選択肢が多いため回答数が割れていることがわか る(図表10)。ショッピングが多い理由としては、香港 観光といえば昔も今もショッピングが有名であるため、 回答数30という結果になったと言える。 「また訪れたいですか?」との質問に「はい」と答え る人が多いことがわかった。その理由として、観光地と して一定の満足を得られたところから「はい」と答え た人が多いと考えられる。だが先ほどの訪問回数の質 問では、リピーターが少なかったことが結果として出 ていた。その理由としては、満足できたが2回も香港 に行くほどではないという考えになったと推測できる。 再び観光で香港を訪れるという気持ちを持ってなかっ たためだと推測できる。また訪れた際の目的を質問し たところやはりショッピングが多くその理由としては、 図表 10 香港での目的 図表11 食べた、食べる予定 図表7 移動手段 図表8 1人あたりの予算 図表9 旅行の申し込み手段 0 5 10 15 20 25 30 35 ショッピング 食事 夜景 ディズニー ランド 世界遺産 ビジネスその他 無記入 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 飲茶 火鍋 中国 四大料理 ローカル グルメ おかゆ 海鮮料理 ■電車 ■徒歩 ■バス 40% 31% 29% レンタカー0% ■5万以下 ■5~6万 ■6~7万 ■7~8万 ■8~9万 ■9万以上 31% 34% 23% 4% 2% 4% 0 5 10 15 20 25 30 35 パッケージツアー その他 個人手配 無記入
香港観光でのショッピングに満足し、またショッピング をしたいと思ったと考えられる。他の回答数も多い理由 としては、観光スポットや観光の選択肢が多いため回答 数が割れたと考えられる。 「食べた」また「食べる」予定の食べ物を質問したと ころ、有名な飲茶や海鮮料理、おかゆなどが多いのがわ かった(図表11)。また有名なスイーツや露店などが多 いことからローカルグルメ目的の日本人観光客が多い と考えられる。 「香港がイギリスの植民地だったこと」を質問したと ころ、「はい」が37%と、植民地だったことを知らないと 答えた人が多いことがわかった(図表12)。若い人が香 港の歴史について興味を持っていなかったことはとて も意外だった。 「雨傘運動について知っているか?」質問したところ、 大部分の人が分からないと答えた(図表13)。植民地の ことはわかっていた人も雨傘運動について知らないの も意外だった。日本人観光客は観光で来ているので政治 的には興味がないことがわかった。 また図表はないが、「香港を周りの人にオススメした いですか?」と質問したところ、「とても思う」、「思う」 がかなり多かったことから観光地としては合格点だと いえる。おすすめしたいと思わない人の理由としては、 町の汚さなど快適さに欠けることからだと思われる。 料金について質問したところ、交通料金については、「妥当」と「安い」、「とても安い」がす べての票を占めていたので、「妥当」または「安い」と言える(図表14)。宿泊の料金としては、「高 い」「とても高い」が4%なので高いとは言えず、これも「妥当」または「安い」と言える。物 価の料金は、「安い」とは言えず「妥当」または「高い」と言える。食事の料金は、「妥当が」全 体の64%を占めており、こちらは「妥当」と言える。最後に料金を総合的に見ると、「妥当」と 答えた人が77%もいたので料金は「妥当」と言える。 香港への満足度について質問したところ交通に対し て「不満」に思う意見が少なく、「満足」・「とても満足」 と回答した人が全体の3割程度、「ふつう」と回答した 人が全体の7割を占めた。日本と比べ、香港も交通機 関の整備がほとんど差がないと考えられる結果になっ たといえる。宿泊に対しても同じような回答が多かっ た。観光地として求められる公共機関の整備やホテルの サービスを不満に思う意見が少ないというのは、香港の 図表12 植民地について 図表13 傘運動について ■はい ■いいえ 63% 37% 知っていますか? ■はい ■いいえ 10% 90% 知っていますか? 図表14 交通について ■高い ■普通 ■安い 77% 19% 4% とても高い0% とても安い0% 図表15 景色について ふつう 12% 満足 20% 不満0% とても満足 15%
観光地としての強みと言ってよいだろう。 さらに香港での観光目的として多くの人が挙げた景 色への満足度は、不満の意見が無く、全体の7割が香港 の夜景に満足したと答えた(図表15)。料金への満足度 も、交通・宿泊と同じく、「ふつう」という意見が多数 なので日本と比べても特別に物価が高いというマイナ スイメージは持たないことが分かった。国際金融情報セ ンターの2016年2月の日本の物価との比較が図表17で ある。実際に見てみると食料品価格は香港の方が高いが、交通費などの生活インフラ価格は日本 よりも安い。高いものと安いものでバランスがとれているので、料金に対して「ふつう」という 回答が多い結果も納得できる。 日本と香港の物価を比較すると図表17のようになる。卵1個1.66倍で、タクシー初乗りが0.45 倍、牛肉1㎏1.26倍、液晶カラーテレビ0.79倍、食料品は日本より高いが、タクシー初乗りと液 晶テレビは日本よりも安い。平均すると日本と同じぐらいであった。 総合的な満足度はとても満足・満足という意見が全体の5割以上を占め、香港は日本人観客を 十分に満足させる場所と言ってよいだろう。次に実際に香港に来て、「イメージ通り」であった かという質問には「イメージ通り」であると答える意見が多数で、良くも悪くもネットや雑誌の 情報を超えるような驚きは、感じなかったと言える。観光地として満足度の高い反面、当初香港 にいだいた期待や満足を上回ることができず、また行きたいと思う人がいなかった理由として考 えられる。 そしてアンケートの最後に、香港の良い点と悪い点を箇条書きで記入してもらった。良い点と して、「景色がきれい」という意見が5人で最も多く、「人が良かった」の意見が4人、「街並み がほかのアジアと違う」、「店が多い」などが1人ずつからあがった。やはり景色は香港の目玉と して多くの観光客の心を掴んでいる。反対に悪い点として「汚い」という意見が最も多く6人、 「蒸し暑い」という意見が3人、「臭い」や「外と室内の温度差が激しい」、「人が多い」、「ゴキブ リがいる」、「空気が悪い」、「現地人の英語能力が低い」、「タクシーが短い距離を乗せてくれない」 が1人ずつ、良い点より悪い点のほうが多く具体的な意見が挙がった。 私たちも実際に香港に行きアンケートの回答には、多く共感できる。景色は今でも鮮明に思い出 せるほど素晴らしかった。悪い点としてあがった「汚い」という意見も、香港の下町を通った時 図表16 料金について ふつう 75% とても不満0% 不満2% 満足 15% とても満足 8% 調査年月 卵(1個) タクシー初乗 牛肉(1㎏) 液晶カラーテレビ 日 本 2015.8 25 730 2620 57606 香 港 2015.1 42 333 3301 45391 中国・上海 2015.5 31 274 2213 25396 台 湾 2014.1 26 246 2074 不明 韓 国 2015.5 33 338 3268 不明 図表17 各国の物価水準(日本の物価との比較)から作成 (http://www.jcif.or.jp/PubWorldDL.php?file 2017.1.20閲覧)
や地元の商店街を見て感じた。このアンケートを通して 人それぞれの観光というものを考えることができた。観 光地としての香港はアンケート調査を見てわかるように、 観光客をさまざまな欲求を満たす場所としては最適な場 所であり、観光地としての沖縄は香港から学ぶ所もたく さんある。 4-2 沖縄における香港人観光客調査 那覇空港において、香港から来た観光客を対象に行っ た沖縄観光についてのアンケート結果から沖縄の観光 について考える。 実施日時は9月19日、9月20日、9月21日、10月10日、 10月28日の計5日間で、31名に回答していただいた。図 表18を見ての通り、回答者は女性が多く、全体の7割を 占めている。 年齢層は10代、20代が少なく、30代が回答者のおよそ 半分を占め、50~60代も多い割合なので、金銭的余裕の ある層が沖縄に来ていることが分かる。また、回答者の職業として会社員が多く、香港のビジネ スマンからの沖縄人気が窺える。 「今回の訪問で何度目ですか?」という質問に対して、初めての訪問と答えた人が7割を占め ている。リピーターは2割ほどと少ないことから、そのほとんどが日本観光の入口として沖縄に 来ていることが考えられる。 さらに図表19の滞在期間の質問で4泊以上の回答者 が多いことから、のんびり過ごせる沖縄のリゾート感に 期待しているのではないかと推察した。宿泊場所は那覇 市内が多く、空港から近いことやモノレール等の交通手 段の利便さが理由として挙げられる。 「何人で訪れましたか?」という質問では、1人旅、 女性の2人旅なども多いと結果が出たので、沖縄に対し て治安の良さや安心感のイメージを持っていることが わかる。 次に「複数回答あり」として「誰と訪れましたか?」 の質問には友人、家族が多数で、宿泊期間中に行動する 人が変わるという回答もいくつかあった。 図表20の移動手段は見ての通り、やはりモノレール が多く、その次がレンタカーの利用である。レンタカー 会社も空港までの送迎バスを用意したり、空港内で会社 のプラカードを出したりと海外の観光客への対応がよく、利用者が多い理由と考えられる。 図表21の1人あたりの予算は平均的に日本円で10万円以上と高い結果になった。アンケート回 図表18 男女比 女性 70% 男性 30% 図表19 滞在期間 4泊以上 42% 1泊6% 2泊 26% 3泊 26% 日帰り 0% 図表20 移動手段 レンタカー 37% モノレール 45% バス 0.2% タクシー 11% 徒歩 0.5% 図表21 予算 3000$~ 5000$ 13% 5000$~ 7000$ 23% 7000$~ 10000$ 38% 10000$~ 20000$ 26% 20000$以上 0%
答者で宿泊期間が長い回答が多かったので 妥当といえるだろう。 「今回の旅行はどのようにして申し込み ましたか?」という質問に対して、アンケー トに回答した全員が個人で手配したと答え ている。香港も日本と同様、またはそれ以 上にインターネットが普及していることが わかった。 次に利用したエアラインの質問に対し て、こちらも全員の回答が一致しており、LCCである 香港航空と答えている。偏りの理由としてこのアンケー トは那覇空港国際線で計5日間、同じ時間帯に実施した ため偏った結果となった。そのためその全員が同じ回答 をするのはこのアンケートの信頼性を証明する結果と いえる。 沖縄での目的についての回答ではショッピングが圧 倒的に多く、日本のブランド意識が強いことが分かっ た。また、ビーチや世界遺産と答えた人が少なくないの で、沖縄としての観光アピールも大切だと考える。そし てその他としてウェディングの回答があり、リゾート地 としても香港人に認識されている。 図表23を見ると、また訪れたいですかという質問に、 全員が「はい」と答えていて、私たちが空港で感じた香港 人のやさしいイメージがこの質問からにじみ出ている。 沖縄での食事について、食べる予定のものを聞いたと ころ、寿司や焼肉が多いことから日本としての観光にも期待していることが窺える。沖縄そばや ぜんざいの回答も少なくなかったので、沖縄について、ある程度調べてから来ていることもこの 結果からわかった。 沖縄の政治や歴史についての質問でも香港人が沖縄について予習して来ていることが分かる結 果となった。沖縄の「琉球王国時代」の時代について知っていますかという質問で、「はい」と 答えた人が24人、「いいえ」と答えた人が7人となり、香港人は観光以外にも関心を持っている ことが分かる。沖縄の基地問題の質問では「はい」と答えた人が22人、「いいえ」と答えた人が 9人と、こちらも高い関心度を示した。理由として香港は高等教育で政治問題への関心が強いた めだと推測できる。日本人観光客が香港の歴史などにほとんど関心がなかったのに対し、香港人 観光客は関心を持っている人が多く、この質問で違いが出た。 料金について交通、宿泊施設、食事、物価とそれぞれ妥当という声が多く、総合的にみて金銭 感覚が近いことが分かる。満足度も同じように「ふつう」、「満足」の声がアンケートのほとんど を占めた。最後の質問での実際に訪れてみてイメージ通りでしたかという質問でも、図表24の通 図表22 香港為替 出典: http://info.finance.yahoo.co.jp/fx/convert/?a=1&s= HKD&t=JPY 外国為替計算YAHOO!ファイナンスより(検索日2017/1/7) 図表23 また訪れたいですか? はい 100% いいえ 0% 図表24 イメージ通りでしたか? ふつう 33% とても満足 13% とても不満足0% 思う 53% 思わない 0%
り3分の2は沖縄観光を楽しんだと回答しているので、 このアンケート全体を通して香港人はイメージ通りの 沖縄観光を楽しめたといえるだろう。 4-3 日本人観光客と香港人観光客の比較 香港における日本人観光客調査と沖縄における香港 人観光客調査を経て、それぞれの違いや共通点が見えて きた。共通点として回答者の男女比の割合が挙げられる。 アンケート回答者はどちらも女性の割合が多くなっ てしまった。男女同じようにアンケートを「お願い」し ても、日本でも香港でも女性の方が協力してくれる可能 性が高く、共通した部分である。アンケートの結果を見 ると男女比に偏りがあるが、それぞれ現場では男女の 割合は偏りが無いように感じたので、平等に取れなかっ たのが今回の反省点といえる。 次に歴史、政治の関心について日本人観光客と香港人 観光客とでは違いが生まれた。図表27と図表28を見てみ ると、日本人観光客は香港の政治問題にほとんど関心が 無かったのに対し、香港人観光客は沖縄の基地問題につ いて知っているという回答が多かった。この結果から香 港人観光客は観光だけでなく、歴史、政治などにもある 程度の知識を持っていることがわかる。ここで大きな違 いが出た。 5.沖縄観光への提言 観光産業に力を入れている沖縄は2015年度に外国人 観光客が100万人以上、2016年度は200万人以上訪れた。 今後も沖縄を訪れる外国人観光客は増えていくだろう。 外国人観光客が200万人を超えるようになり、外国人 観光の質についても考えていく必要がある。今後は香港 人観光客のような優良な外国人観光客を増やし、リピー ター化させることが沖縄観光における外国人観光客誘 致政策において重要になってくる。 つまり、沖縄観光客は「数」にこだわる時代から観光 客の「質」にこだわる時代への転換点にさしかかっているといえるだろう。沖縄を訪れる外国人 観光客の中でも香港人は知識レベルが高く、金銭的余裕があり、沖縄観光にとって最良の部類の 観光客といえる。 今回のアンケート結果から沖縄観光に提言することがあるとすれば次のようなことだろう。観 図表25 香港の日本人観光客 女性 80% 男性 20% 図表26 沖縄の香港人観光客 図表28 沖縄の基地問題について知っ ていますか 図表27 雨傘運動を知っていますか 女性 70% 男性 30% いいえ 90% はい 10% はい 71% いいえ 29%
光客数について、日本人観光客の大幅な増加が少子高齢化と経済的停滞のために期待できない今、 外国人観光客に大きな期待がかかっている。しかし、沖縄のインフラ問題(空港については那覇 空港の第二滑走路も2020年に完成する予定である)も今後大きな問題となってくるだろう。香港 のように、海と陸域に、網の目のように、外国人観光客にも分かりやすく、低価格で便利な交通 手段を用意する必要があるだろう。沖縄観光は、「量から質」への転換点を迎えている。 謝辞 本研究は、2016年度沖縄大学教務部、沖縄大学法経学会のゼミ活動補助を得て行われた。ここ に明記して、感謝の意を表したい。 *1 圓田浩二(沖縄大学 法経学部 法経学科 教授)、平良俊・平田健人・前田毅志(沖縄大 学法経学部 法経学科 3年次)。本稿は、圓田浩二が1節と5節、平良俊が3節、平田健 人が4節、前田毅志が2節を執筆している。 文献 ダイヤモンド・ビッグ社編集部 2016『地球の歩き方MOOK香港 ランキング&マル得テクニッ ク!』 ダイヤモンド・ビッグ社 倉田徹・長彧暋 2015『香港:中国と向き合う自由都市』 岩波書店(新書) 旅行ガイドブック 編集部 2016『まっぷる 香港 マカオ (まっぷるマガジン)ムック』 昭文社