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Wi-Fi電波強度を用いた通路上における通行人数推定手法の検討

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(1)情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2017-ITS-68 No.4 2017/2/28. Wi-Fi 電波強度を用いた 通路上における通行人数推定手法の検討 倉聖美†1,a) 白石陽†1,b) 山口弘純†2,c) 概要:近年,ショッピングモールやビルなどの屋内施設における人数推定を行う研究が盛んに行われている.中でも 通路の歩行者数を把握できれば,例えばベビーカーや大きな荷物を持つ歩行者に混雑していない通路情報を提供で き,施設内全体の人流把握などにも役立つと考えられる.これまでに,Wi-Fi 送受信機の組を用いて送受信機間に存 在する人体の影響による電波強度の変動を検出し,人数推定を行う手法が提案されているが,それらの既存手法では, オフィス空間など比較的移動性の低い歩行者や滞留している人を対象としていたため,送受信機間を短時間で通過す る歩行者の人数を正しく推定できないという課題がある.そこで本研究では,Wi-Fi 電波強度を用いた通路上の通行 人数推定手法を提案する.提案手法では Wi-Fi アクセスポイントなどの送信機とそれに接続している PC やスマート フォンなどの受信機が通路の両側に配置された環境を想定し,その送受信機間を通過する人数を推定する.提案手法 では,人の通過と電波強度の変動傾向の関係を定量化するため,減衰量や分散を特徴量として利用し,それらを訓練 データとして用いた機械学習により検出器を生成する.既設の送受信機を用いる際の可用性を示すため,大学施設内 の通路に送受信機の組を様々な相対位置関係をなすように配置し,送受信機の相対位置が精度に与える影響の評価を 行った.その結果,送受信機の組を通路方向に対して直角に配置するよりも斜角をなすように配置したほうがより F-measure が 0.9 以上と高精度に人数推定を行えることが示された.. A Method for Counting Pedestrians in Walkway Using Wi-Fi RSSI Measurements SATOMI KURA†1,a) YOH SHIRAISHI†1,b) HIROZUMI YAMAGUCHI†2,c). 1. はじめに. に歩行者の検出を行うことができるが,機器のコストが高 いという問題がある.. 近年,ショッピングモールやビルなどの屋内施設におけ. 一方で,近年 Wi-Fi などの無線通信を用いた人数推定の. る人数推定に関する研究が盛んに行われている.人数推定. 研究が盛んに行われており,Wi-Fi プローブ要求を用いた. を行うことで,その推定結果を混雑推定や人流推定に活用. 手法や Wi-Fi 電波強度を用いた手法が知られている.文献. でき,混雑に応じた空調管理を行う BEMS(Building Energy. [6,7]では,歩行者が保持するスマートフォンなど Wi-Fi 端. Management System)のような次世代ビルエネルギー管理シ. 末からの Wi-Fi プローブ要求を解析することで人数推定を. ステムに利用できる.また,施設訪問者に対し通路上の歩. 行う手法を提案している.しかし,これらの手法では端末. 行者の人数を提供できれば,混雑した通路を避けた屋内ナ. の非保持者を計測することができない.これに対し,文献. ビゲーションなど高度なユビキタスサービスの実現につな. [8-10]などでは Wi-Fi 送信機と受信機の間の電波強度変化. がると期待される.. を用いたデバイスフリーな人数推定手法を提案している.. 既存の人数推定手法の多くはカメラや赤外線センサなど. これらの手法は Wi-Fi の送受信機間に存在する人体の影響. の設置型センサを用いる[1-5].部屋の入り口など比較的被. により生じる Wi-Fi 電波強度の変動を捉えて人数推定を行. 写体の近距離に設置されたカメラからの動画像から,個々. うため,被計測者の端末保持率に依存しない.また,例え. の歩行者を抽出し,正確に人数をカウントするシステムが. ば既設の Wi-Fi アクセスポイントとそのアクセスポイント. 実用化されつつある.一方,カメラを用いた手法では,計. に接続するクライアント群を用いれば,汎用機器を用いた. 測方向に指向性があるため,カメラの検出範囲が特定の検. 比較的低コストでかつ設置位置の制約が少ない計測環境が. 出方向に限定されるといった問題がある.加えて場所や時. 実現できる.しかし,これらの研究ではオフィスなどの空. 間によっては,防犯カメラの動画像はプライバシー上の問. 間を比較的低速度で移動したり一定時間滞留する人々を計. 題から利用が難しい場合もある.また,赤外線センサであ. 測対象としているため,Wi-Fi 送受信機間を比較的短時間. るレーザレンジファインダを用いた研究[4,5]では,高精度. で通過する人々を対象とした人数推定を考慮できていない. 特に,複数人が並んで通行することも多い通路上において. †1 公立はこだて未来大学システム情報科学部 School of Systems Information Science, Future University Hakodate. †2 大阪大学大学院情報科学研究科 Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University. a) [email protected] b) [email protected] c) [email protected]. ⓒ 2017 Information Processing Society of Japan. 通過人数を正しく検出することは容易でない. そこで本研究では,Wi-Fi 電波強度を用い,Wi-Fi 送信機 と受信機の間の計測領域を通過する歩行者の人数を推定す. 1.

(2) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2017-ITS-68 No.4 2017/2/28. る手法を提案する.通路を想定する場合,Wi-Fi 送信機. する.次に,そのゲートを人が通過することによって生じ. (Wi-Fi アクセスポイント)と受信機(Wi-Fi クライアント). る特徴量を動画像から抽出するとともに,その特徴量を用. の間(以下,送受信機間)を比較的短時間で歩行者が通過. いた回帰分析を行うことでゲートの通過人数を推定してい. する.著者らは,先行研究において,歩行者が通過した際. る.. の電波強度の変動傾向を調査し,歩行者の通過に伴い電波. また,赤外線センサであるレーザレンジファインダを用. 強度が減衰することを示している[11].この知見に基づき,. い,その計測範囲内を移動する歩行者の影響によるセンサ. 本稿では,歩行者が通過した際に生じる電波強度の変動を. 値の変動から歩行者を検出する手法も提案されている[4,5].. 表現するいくつかのパラメータから人数推定に有効な特徴. 文献[5]では,室内の複数箇所に設置したレーザレンジファ. 量を検討し,それを用いた学習を行うことで歩行者の通過. インダのデータを統合して,歩行者の検出を行っている.. 検出ならびに通過人数の判定を行う手法を構成する.本研. 特に,オクルージョンが頻繁に発生するような群衆密度の. 究の想定環境を図 1 に示す.. 高い環境でも歩行者の検出が可能な手法を提案している. 2.2 Wi-Fi 技術を用いた人数推定 2.2.1 Wi-Fi プローブ要求を用いた人数推定 Wi-Fi アクセスポイントに接続する Wi-Fi 端末が通信を 行う際に発信する Wi-Fi プローブ要求を解析することで人 数を推定する手法がある.文献[6,7]では,Wi-Fi アクセス ポイント付近に存在する Wi-Fi 機能を有効にしたスマート フォンなどの Wi-Fi 端末保持者の数を推定している.この 手法では,Wi-Fi 機能を有効にした Wi-Fi 端末が発信するプ ローブ要求内の MAC アドレス数を計測することで人数の 推定を行っている.特に,文献[7]では既設の Wi-Fi アクセ スポイントを利用し,それに接続している Wi-Fi 端末の保. 図 1. 通路上の人数推定. 前述のように,送信機は例えば施設に既設である Wi-Fi. 持者の歩行速度を考慮した人数推定を行っている. 2.2.2 Wi-Fi 電波の性質を用いた人数推定. アクセスポイントを活用し,受信機は PC やスマートフォ. Wi-Fi 電波強度を用いた人数推定の研究として,文献. ンなどの Wi-Fi 端末,あるいはマイコン等で構成可能な専. [8-10]では,オフィスなどの比較的広い空間内を比較的低. 用の小型通信端末を想定し,これらの送受信機が通路を挟. 速で移動する人や滞留する人々の影響により生じる Wi-Fi. んで存在する環境を前提とする.図 1 のように通路の複数. 電波強度の変動から人数推定を行っている.特に文献[8]. 地点で通過人数を推定できれば,それらを統合し,通路全. は,送受信機間の電波の搬送経路を数学的にモデル化し,. 体の人数推定を行うことも可能になると考える.. 比較的低速で歩行する人の影響により生じる電波強度の変 動から最大誤差 2 人で推定が可能な手法を提案している.. 2. 関連研究. 文献[9]は,Wi-Fi のチャネル接続状況を示す多次元のデー タで構成された CSI(Channel State Information)を 2 次元デ. 本章では人数推定に関する既存研究を述べる.2.1 節で. ータに変換し,送受信機間に歩行者がいない確率を算出す. はカメラや赤外線センサなどの設置型センサを用いた研究. ることで送受信機間を比較的低速度で移動する人数を推定. について述べ,2.2 節では Wi-Fi 技術を用いた研究について. している.この手法では,15 人までの人数を高精度に推定. それぞれ述べる.2.3 節では本研究の位置づけを述べる.. しており,歩行者の歩行速度による推定精度への影響を考 慮することを今後の課題としている.一方,文献[10]では,. 2.1 設置型センサを用いた人数推定. 室内に設置した Wi-Fi アクセスポイントに接続している PC. 設置型センサであるカメラからの動画像を解析し,人検. やプリンタなど複数のクライアント群で取得したデータを. 出を行う研究が盛んに行われてきている.文献[1]では,人. 統合し,送受信機間に滞留する人々の検出を行っている.. が存在する画像と存在しない画像を比較することで特徴点 を抽出し,人検出を行っている.さらに,動画像上の特徴. 2.3 本研究の位置づけ. 点の移動は歩行者であると判断し,歩行者検出を行ってい. 提案手法では,Wi-Fi 電波強度を用いて,通路上の既設. る.文献[2,3]では,屋内に設置された防犯カメラを想定し,. Wi-Fi アクセスポイントと簡易で汎用的な Wi-Fi クライア. 天井に設置したカメラの動画像上に仮想的なゲートを設定. ント機器の間の計測領域を短時間で通過する歩行者を対象. ⓒ 2017 Information Processing Society of Japan. 2.

(3) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2017-ITS-68 No.4 2017/2/28. とした通過人数推定手法の実現を目指している.Wi-Fi 電. スポイント,受信機として PC,スマートフォンなどの Wi-Fi. 波強度は基本的に Wi-Fi 送信機と受信機の間に存在する人. 端末を利用することを想定する.本研究では,これらの送. 体の影響により変動することから,文献[6,7]の手法のよう. 受信機間を人が通過した際に生じる電波強度の変動から人. に被計測者の端末保持率に依存しない.また,既設の Wi-Fi. 数推定を行う.具体的には,通路上の送受信機間の一定領. アクセスポイントとそのアクセスポイントに接続している. 域を歩行者が短時間で通過した際に生じる電波強度の変動. クライアント群を用いることを想定しているため,カメラ. から通過の判定を行い,特徴量を抽出して人数推定を行う.. やレーザレンジファインダのような機器コストがかからず, あるいはプライバシー上の制約を受けにくく,汎用機器を 活用した位置制約の少ない計測環境を実現できる.文献. 3.2 人数推定手法の概要 提案手法における人数推定の手順を図 3 に示す.. [8-10]のような Wi-Fi 電波強度を用いた手法は提案手法に 類似する既存手法であるものの,文献[8]や[10]が対象とす る歩行者速度は,近接する送受信機間を比較的短時間で一 度に通過する歩行者の検出を目的とする提案手法とは大き く異なる.また,文献[9]では CSI を用いているものの,我々 の予備実験では本研究が対象とする環境において通過歩行 者による CSI の変動特性に一定の傾向がみられにくいこと が分かっている.また受信電波強度とは異なり,物理層に おけるサブチャネル群の状態情報である CSI をアプリケー ションレベルで取得することは容易でないことも課題とし て挙げられる.. 図 3. 提案手法における人数推定のプロセス. 提案手法は,学習フェーズと人数推定フェーズから構成. 3. 提案手法. される.学習フェーズでは,事前に歩行人数別の電波強度. 本章では Wi-Fi 電波強度を用いた人数推定について述べ. の取得を行い,取得した電波強度データからその変更傾向. る.3.1 節では,本研究の目的について述べ,3.2 節では提. を表現する特徴量を抽出するとともに,計測領域を通過し. 案する人数推定手法の概要について述べる.3.3 節では研. た人数を正解データとして記録する.ただし,同一の歩行. 究課題と研究課題に対するアプローチについて述べ,3.4. 人数でも電波強度の変動が異なる場合もあるため,安定し. 節では提案手法の具体的な手順について述べる.. た変化を示す特徴量を採用し,その値を学習データ DB に 格納する.有効な特徴量選択には決定木学習を用いる.. 3.1 研究目的. 人数推定フェーズでは,推定対象の通路上の計測領域で. 本稿では,Wi-Fi 電波強度を用いて通路上の計測領域を. 電波強度データを取得し,前述の特徴量を抽出する.次に,. 通過する歩行者の人数推定手法の提案を行う.提案手法の. その特徴量データを入力とし,前述の決定木に基づく判定. 想定環境を図 2 に示す.. アルゴリズムを用いて人数推定を行う. 3.3 研究課題とアプローチ 本節では,本研究の研究課題とアプローチについて述べ る.3.3.1 項では,計測領域の検討について述べる.計測領 域を定義することで,計測領域内の人数計測性能評価を定 量的に行うことができる.3.3.2 項では,送受信機間の歩行 者の通過判定方法について述べる. 3.3.1 計測範囲の検討 Wi-Fi 送受信機間には,人が存在することにより電波強 度への影響が生じる第一フレネルゾーンが存在する.そこ. 図 2. 提案手法の想定環境. で本研究では,第一フレネルゾーンを計測領域と定義し, その計測領域に存在する人を対象として人数推定を行う.. 前述のように,提案手法では通路の両側に Wi-Fi 送受信. 計測領域の半径 r は,式(1)で算出する.. 機が存在する環境を想定する.送信機として Wi-Fi アクセ. ⓒ 2017 Information Processing Society of Japan. 3.

(4) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report r. 300 d1  d 2  f d1  d 2. Vol.2017-ITS-68 No.4 2017/2/28. …(1). の進入時刻から退出時刻までの範囲)に着目して人数推定 を行う.過去の一定時間での電波強度の変動傾向を捉える ため,電波強度の減衰部分にスライディングウィンドウを. 式(1)の f は周波数(MHz)を表す.また,d1 と d2 は図 4. 適用し,ウィンドウ内のデータの特徴を抽出し,サンプル. のように送信機と受信機を結ぶ直線上の任意の点から,送. 取得時刻における特徴ベクトルとして,ウィンドウ毎の人. 信機までの距離と受信機までの距離を,それぞれ表す.. 数推定を行う. 3.4 Wi-Fi 電波強度を用いた人数推定手法 3.3.2 項での検討内容に基づき,提案手法では以下のアル ゴリズムを用いる.なお,推定歩行者人数を Ng で表す. STEP1. ある基準値 base を設定. STEP2. i 番目のサンプル取得時刻 i から,各 i-tw までを 含むウィンドウを SWi で表す.SWi 内の電波強度 の最小値と基準値 base の差の絶対値 Depthi を算 出. STEP3.1. Depthi-1>Depthi の場合,Ng=0,i=i+1 とし,STEP2 へ. 図 4. 計測領域の模式図. STEP3.2. Depthi-1≦Depthi の場合,Ng≧0 とする. STEP4. 特徴量を算出し,その特徴量を用いて Ng の推定 を行う.そして,i=i+1 とし,STEP2 へ. 式(1)により図 4 に示すような楕円体空間の計測領域が 規定される.この計測領域内に存在する人数を,歩行人数. はじめに,歩行者が 0 人(N=0)の時の電波強度の最頻. の通過に伴う電波強度の減衰に対し正解データとしてラベ. 値を基準値 base に設定する.これは人が通過しない時間帯. ル付けを行う.. に一定時間計測することで得られる.次に,SWi 内におけ る電波強度の最小値と base の差である減衰量 Depthi を計算. 3.3.2 送受信機間の通過判定方法の検討 一人の歩行者が計測領域を通過した際の受信電波強度の 変動のグラフを図 5 に示す.. する.このときの SWi は,ウィンドウサイズ tw に対し,電 波強度 RSSIi から RSSIi-tw を含む.そして,一つ前の窓 SWi-1 内の減衰量 Depthi-1 と比較し,Depthi-1>Depthi の場合は,SWi は Ng=0 人とし,Depthi-1≦Depthi の場合は,Ng≧0 人とする. これは,計測領域に歩行者が進入することで電波強度が減 衰する傾向が見られるためである.そして,歩行者 Ng≧0 人と判断された窓 SWi 内から特徴量を抽出し,それに基づ いた人数推定を行う.. 4. 特徴量選定のための実験および性能評価 本節では,3 章までに述べた基本方針に基づき,人によ る Wi-Fi 電波強度の変動を良く表現する特徴量発見のため の実験,ならびに性能評価実験について述べ,その結果を 考察する.4.1 節では実験環境について述べ 4.2 節では,特 図 5. 人の通過に伴う電波強度の変動. 徴量選定のための実験について述べる.4.3 節では送受信 機の配置方法別の精度評価実験について述べ,4.4 節では. 図 5 の縦軸は電波強度(mW),横軸はサンプル数であり, 経過時刻に対応している.計測領域内に歩行者が進入する. 計測場所別の精度評価実験について述べる.4.5 節では考 察と今後の課題と展望方針について述べる.. と,図 5 の進入時刻から電波強度の減衰が生じる.その後, 計測領域外に退出すると電波強度が増加する.このことか ら,歩行者が通過した際に生じる電波強度の減衰部分(図 5. ⓒ 2017 Information Processing Society of Japan. 4.1 実験環境 実験環境の設定を表 1 に示す.. 4.

(5) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 表 1. Vol.2017-ITS-68 No.4 2017/2/28. 実験環境の設定. 項目. 詳細. 4.2 特徴量選定のための実験 人数推定に有効な特徴量を選定するための実験を行った.. 場所. 公立はこだて未来大学 3F 通路. まず,各ウィンドウ内の電波強度データの特徴量を選択す. 周辺環境. 壁あり. る.時系列データの変化の定量化で一般に用いられる特徴. 通路方向に対して直角配置. 量を,歩行人数と電波強度の変動の関係性を調査した上で. 通路方向に対して斜角配置. 決定した.検討した特徴量を表 2 に示す.. 送受信機の配置方法 送信機. Wi-Fi ルータ AtermWR165N. 受信機. Android 端末 FJL22. Wi-Fi 規格. IEEE802.11b/g/n,2.4GHz 帯. 更新間隔. 3sec. 表 2. 各窓内における検討した特徴量. 属性名称. 説明. depth. 基準値 base と最小値の差の絶対値. depth_rate. depth の出現割合. rssi_variance. 分散. 階の通路幅が 2.5m の壁に挟まれた通路にて行った.送受. rssi_first. 基準値と最初の出現値の差の絶対値. 信機の配置方法は通路方向に対して直角となるような配置. rssi_end. 基準値と最後の出現値の差の絶対値. (以下,直角配置)と,斜角をなすような配置(以下,射. change_num. 変化回数. 実験環境は,図 6 に示すように公立はこだて未来大学 3. 角配置)の 2 通りとした.送信機は NEC 社製の Wi-Fi ルー タ AtermWR165N で,IEEE802.11b/g/n(2.4GHz 帯)を使用. 表 2 の depth は基準値 base と窓内の電波強度の最小値と. した.受信機は Android 端末 FJL22 を使用し,電波強度の. の差の絶対値を表す.depth_rate は窓内における depth の出. 更新間隔は 3sec のものを使用し,1sec 毎にデータを取得し. 現割合を表し,rssi_variance は窓内の電波強度の分散を表. た.取得した電波強度に対してスライディングウィンドウ. す.rssi_first は基準値 base と窓内の電波強度の最初の出現. を適用する際のパラメータは,窓幅を 3sec とし,時間幅を. 値との差の絶対値,rssi_end は基準値 base と窓内の電波強. 1sec とした.ここで,計測領域を求めるために 3.3.1 項で. 度の最後の出現値との差の絶対値を表し,change_num は窓. 述べた式(1)を用いて計測領域の半径 r を算出する.送受信. 内の電波強度の変化回数を表す.これらの特徴量のうち,. 機 間 の 距 離 が 2.5m で あ る こ と か ら , 最 大 半 径 は. 特に人数推定に有効な特徴量を選定するため決定木学習を. d1=d2=1.25m の地点で最大となる.この時の r を最大半径. 行った.表 2 の特徴量を使用した決定木学習の結果から,. rmax と す る と , 送 信 機 の 周 波 数 f=2400(MHz) の と き ,. depth_rate,rssi_variance,rssi_first,rssi_end のみが人数推. rmax=29.05cm となる.このように r の値を計算することで. 定に有効な特徴量であることが示唆されたため,これら以. 計測領域を算出し,この計測領域内に存在する歩行者を対. 外の特徴量は使用しないこととした.. 象として人数推定を行う.また,実験で使用したデータは, 計測領域内を立ち止まらずに通過する人のみを対象として. 4.3 送受信機の配置方法別の精度評価実験. 計測されたものである.実験中は,1 人以上の歩行者の群. Wi-Fi アクセスポイントなど,既設機器を用いる場合に. 衆がその前に通過した群衆から一定時間を空けて計測領域. はそれらの配置位置関係が必ずしも通路方向に対し直角に. を通過しており,前の歩行者による電波強度への影響がな. ならない場合も多い.そういった際の可用性を示すため,. くなってから,次の歩行者が計測領域に進入していた.そ. 送受信機の組を通路に対して異なる角度に配置して,送受. の結果として,電波強度の減衰は離散的に発生していた.. 信機の相対位置が精度に与える影響を含めた推定精度の評 価を行った. まず,送受信機を通路方向に対し直角に配置した場合の 推定精度を評価した.計測領域を歩行者(N=0~4 人)が通 過した際の計 1,003 の電波強度データより特徴ベクトル空 間データを生成し,機械学習ツール Weka[12]を用いて最近 傍法による通行人数の推定を行った.10-分割交差検定で精 度評価を行った結果,99.5%の推定精度が得られた.表 3 にデータの分類結果と,F-measure を示す. 表 3 より,歩行人数が N=0~4 人の時の F-measure はい ずれも 0.90 以上であり,全体的に高精度に人数推定を行う ことができている.このことから,選択した特徴量が有効. 図 6. 実験環境. ⓒ 2017 Information Processing Society of Japan. であることが示唆される.ここで,実際の歩行人数は 2 人. 5.

(6) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2017-ITS-68 No.4 2017/2/28. の場合に 1 人と誤推定してしまう場合(1 ケース)や,3. 受信機を通路方向に対し直角配置する場合,斜角配置する. 人を 1 人および 2 人と誤推定してしまう場合(2 ケース). 場合のいずれも高精度に推定を行うことができ,特に,送. に着目し,これらの 3 ケースの誤推定の原因を分析した.. 受信機を通路方向に対し斜角配置する場合は,複数人が並 んで歩行する場合の精度低下への影響を緩和することがで. 表 3. 送受信機の直角配置時の人数推定精度評価結果. 信機を通路方向に対し斜角配置し,実験を行う.. 実人数(実際の歩行人数) N=0. 推 定 結 果. N=1. N=2. N=3. きることが分かった.このことから,以降の実験では送受. N=4. Ng. =0. 855. 0. 0. 0. 0. Ng. =1. 0. 87. 1. 0. 0. Ng =2. 0. 0. 19. 1. 0. 表 4. 送受信機の斜角配置時の人数推定精度評価結果 実人数 N=0. N=1. N=2. N=3. N=4. 0. Ng=0. 1909. 2. 0. 0. 0. 15. Ng=1. 0. 417. 1. 0. 0. Ng=2. 0. 0. 113. 0. 0. Ng=3. 0. 0. 0. 30. 0. その結果,計測領域内に存在する複数の歩行者が図 7 (i). Ng=4. 0. 0. 0. 0. 19. のように電波の進行方向上に並んだ場合,人体による電波. F-measure. 0.999. 0.996. 0.996. 1.000. 1.000. Ng =3 Ng. =4. F-measure. 0 0 1.000. 1. 1. 0 0.989. 0 0.927. 22 1 0.917. 0.968. 推 定 結 果. 強度への影響が小さくなってしまったことが原因の一つと 考える.これに基づき,送受信機の配置方法を通路方向に 対して図 7 (ii)のように斜角をなすように配置することで,. 4.4 計測範囲別の精度評価実験 本節では,施設内の複数個所にて人数推定を行うことを. 電波の進行方向上に複数人の歩行者が重なるケースを削減. 想定し,同一通路上の 2 地点における評価を行った.電波. することができると考えられるため,この場合の評価を行. 強度の計測は,通路の入り口(以下,計測場所 A)と,同. った.. 一通路上の計測場所 A から 10m 離れている通路の中央(以 下,計測場所 B)にて行った.計測場所 A において,歩行 者(N=0~3 人)が送受信機間を通過した際に,取得した データは 2,472 ケース(以下,データ群 a)であり,計測場 所 B において,歩行者(N=0~3 人)が送受信機間を通過 した際に,取得したデータが 250 ケース(以下,データ群 b)であった. まず,これらのデータのうち,データ数が多いデータ群 a を訓練データとして生成した検出器 a を使用し,データ 群 b(歩行人数 N=0~3 人)を最近傍法で評価した.その. (i) 通路方向に対し直角 図 7. (ii) 通路方向に対し斜角. 電波進行方向上の歩行者の重なり方. 結果,100%の精度で人数推定を行うことができた.このと きのデータの分類結果を表 5 に示す.. まず,前述の実験と同様に,歩行者(N=0~4 人)が通過. 表 5. 通路中央のデータ群 b の精度評価結果. した際の計 2,491 の電波強度データから最近傍法を用いて. 実人数. 通行人数の推定を行った.10-分割交差検定で精度評価を行. N=0. った結果,99.8%の推定精度が得られた.このデータの分 類結果と F-measure を表 4 に示す. 表 4 より,歩行人数 N=0~4 人時の F-measure が 0.90 以 上であり,全体的に高精度に推定を行うことができている. これは,送受信機を通路方向に対し直角配置した場合の表. g. 推 定 結 果. N=1. N=2. N=3. N =0. 170. 0. 0. 0. Ng=1. 0. 40. 0. 0. Ng=2. 0. 0. 22. 0. Ng=3. 0. 0. 0. 18. 1.000. 1.000. 1.000. 1.000. F-measure. 3 の結果と比較すると,全データ数に対する誤推定の割合 が減少している.また,歩行人数が N=2~4 人の時の適合. 表 5 より,歩行人数 N=0~3 人時のデータ全てをそれぞ. 率を算出すると 1.000 であることから,電波の進行方向上. れ正しく推定することができている.これは,このときテ. に複数人が並んで歩行することで電波強度の変動が小さく. ストデータとして使用したデータ群 b は検出器の生成に使. なるという問題を解消したと考える.以上の結果より,送. 用したデータ群 a のデータ数より少ないことから,データ. ⓒ 2017 Information Processing Society of Japan. 6.

(7) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2017-ITS-68 No.4 2017/2/28. 群 b がデータ群 a に対し親和性が高い可能性があると考え. 5. おわりに. る.反対に,データ群 b を学習することで生成した検出器. 本研究の目的は,Wi-Fi 電波強度を用いて,通路上の計. b を使用して,データ群 a(N=0~3 人)を最近傍法で評価. 測領域における通行人数を推定する手法を提案することで. した場合も 99.1%の精度が得られた.このデータ分類結果 と F-measure を表 6 に示す.. ある.提案手法では,通路の両側に送信機と受信機が配置 されていることを想定し,送受信機間の計測領域を歩行者 が通過した際の電波強度変化を捉えて人数推定を行う方法. 表 6. 通路入口のデータ群 a の精度評価結果. を提案した.第一フレネルゾーンをもとに計測領域を設定. 実人数 N=0 推 定 結 果. N=1. することで歩行者の通過判定方法を検討し,時系列の電波. N=2. N=3. 強度変化を定量化するための特徴量を抽出した.これらの. Ng=0. 1909. 0. 0. 0. 特徴量を用い,送受信機の配置や配置箇所を変えた場合の. Ng=1. 1. 418. 0. 0. 検出精度を評価した.その結果,いずれの場合も F-measure. Ng=2. 0. 0. 114. 0. が 0.9 以上で検出が可能であることが分かった.今後の課. Ng=3. 0. 0. 0. 30. 題として,より多様な通路環境でのデータ取得および検出. 1.000. 1.000. 1.000. 1.000. F-measure. 表 6 より,歩行人数 N=0~3 人時において F-measure が おおよそ 1.000 の精度であり,全体的に高精度に推定する ことができている.以上の結果より,今回の実験で生成し た検出器 a および検出器 b は,同一通路上の異なる計測場 所における人数推定において有効であると考えられる.こ こで,計測場所 A と計測場所 B における周辺環境について 分析したところ,計測場所 A と計測場所 B は 10m しか離 れていなかったことから,計測場所の周辺環境にほとんど 違いがないことが分かった.両計測場所に共通した周辺環 境の条件として,同一通路上であるため周辺のアクセスポ イント数に変化がなく,電波の反射に影響を及ぼす壁や床 の素材に違いがなかったことが考えられる.したがって, 今回作成した検出器は,計測場所の周辺環境条件がほとん ど同一であれば,提案手法に有効であると考えられる.今 後は,異なる周辺環境で行うことを考慮し,異なる通路上 においての調査を行う必要がある. 4.5 今後の課題と展望 本稿の実験で使用したデータは,1 人以上の群衆が計測 領域を離散的に通行するケースを対象として計測されたも のである.しかし,より一般的な環境を想定すると,複数 の群衆が連続して送受信機間を通行する場合が考えられる ため,今後の課題は,複数の群衆の通行により生じる電波 強度の変動を捉え,高精度に歩行者を検出することが挙げ られる.また,精度評価実験では一つの通路のみを対象と した実験による精度評価を行ったことから,今後は他の通 路においても同等の精度で人数推定を行うことが可能であ るか調査する必要がある.また,通路上の複数箇所におけ る計測領域の推定結果を統合し,通路全体に存在する歩行 人数を推定する方法へ展開していきたいと考えている.. ⓒ 2017 Information Processing Society of Japan. 実験評価を行っていきたい.. 参考文献 [1]. Fujisawa Shizuka, Go Hasegawa, Yoshiaki Taniguchi and Hirotaka Nakano, “Pedestrian Counting in Video Sequence based on Optical Flow Clustering,” in Proceedings of the 11th International Conference on Applications of Electrical and Computer Engineering, pp.51-56(2012). [2] 川西康友,清水渚佐,椋木雅之,美濃導彦,“固定カメラ映 像を対象とした回帰と通過検出の併用による通過人数カウ ント”,電子情報通信学会技術研究報告.PRMU,パターン認 識メディア理解,Vol.114,No.90,pp.49-54(2014). [3] Zheng Ma,Antoni B.Chan,“Crossing the Line: Crowd Counting by Integer Programming with Local Features,” in Proceedings of IEEE Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR) 2013, pp.2539-2546(2013). [4] Ajo Fod, Andrew Howard and Maja J Mataric, “Laser-Based People Tracking,” in IEEE Conference on Robotics and Automation, pp.3024-3029(2002). [5] Takumi Fukuzaki, Kazuhisa Fujita, Takamasa Higuchi, Akihiko Hiromori, Hirozumi Yamaguchi and Teruo Higashino, “Indoor Localization utilizing Tracking Scanners and Motion Sensors,” The 11th IEEE International Conference on Ubiquitous Intelligence and Computing, pp.112-119(2014). [6] Yuki Fukuzaki, Masahiro Mochizuki, Kazuya Murao and Nobuhiko Nishio, “A Pedestrian Flow Analysis System using Wi-Fi Packet Sensors to a Real Environment,” UbiComp’14 Adjunct, pp.721-731(2014). [7] Kai Li, Chau Yuen and Salil Kanhere, “Sense Flow: An Experimental Study of People Tracking,” in Proceedings of the 6th ACM Workshop on Real World Wireless Sensor Networks, pp.31-34(2015). [8] Saandeep Depatla,Arjun Muralidharan and Yasamin Mostofi “Occupancy Estimation Using Only WiFi Power Measurements,” IEEE Journal on Selected Areas in Communications ,Vol.33, pp.1381-1393(2015). [9] Wei Xi,Jizhong Zhao,Xiang-Yang. Li, Kun Zhao,Shaojie Tang,Xue Liu and Zhiping Jiang,“Electronic frog eye: Counting crowd using WiFi,” in Proceedings of IEEE INFOCOM 2014,pp. 361–369(2014). [10] Takuya Yoshida and Yoshiaki Taniguchi, “Estimating the number of people using existing WiFi access point based on support vector regression,” Information, Vol.19, No.7A, pp.2661-2668(2016). [11] 倉聖美,松林勝,白石陽,“屋内施設利用者の歩行通路決定. 7.

(8) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2017-ITS-68 No.4 2017/2/28. のための Wi-Fi 電波強度を用いた人数推定手法の提案”,第 24 回マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集, pp.76-83(2016). [12] Weka3 – Data Mining with Open Source Machine Learning Software in Java,入手先(http://www.cs.waikato.ac.nz/ml/weka/) (2016.06.28).. ⓒ 2017 Information Processing Society of Japan. 8.

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表  1  実験環境の設定  項目  詳細  場所  公立はこだて未来大学 3F 通路  周辺環境  壁あり  送受信機の配置方法  通路方向に対して直角配置  通路方向に対して斜角配置  送信機  Wi-Fi ルータ AtermWR165N  受信機  Android 端末  FJL22  Wi-Fi 規格  IEEE802.11b/g/n,2.4GHz 帯  更新間隔  3sec  実験環境は,図  6 に示すように公立はこだて未来大学 3 階の通路幅が 2.5m の壁に挟まれた通路にて行った.送受 信

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