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下部胆管癌切除例の予後因子に関する臨床病理学的研究

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原  著

〔書女麟4鐸護、饗言〕

下部胆管癌切除例の予後因子に関する臨床病理学的研究

東京女子医科大学 消化器外科学(主任:羽生富士夫教授,指導:中村光司教授)    ヒラ      ノ        ヒロシ

   平  野    宏

(受付 平成3年12月28日) AClinicopatllological Study on Carcinoma of the Lower Bile Duct with         Special Reference to Prognos廿。 Factors

Hiroshi HIRANO

Department of Gastroenterolo錘cal Surgery(Chairman:Prof. Fujio㎜, Director:Prof. Mitsuji N…) Tokyo Women’s Medical College   This report concerns 56 patients who had pancreatoduodenectomies for the lower bile duct carcinoma at Tokyo Women’s Medical College between 1968 and 1990.   The clinicopathological data in the 38 patients were analyzed to assess prognostic values. The overa115−year survivai rate after the surgery was 41.3%.   Generalized Wilcoxon’s test demonstrated that postoperative survival rates were different with statistically significance in pancreas invasion(p<0.01), duodenal invasion(p<0.01), lymph node metastasis(p<0.01), blood vessel invasion(p<0.05), and no tumor invasion to the surgical margine of. the bile duct(p<0.05).   Cox’s proportional hazards model demonstrated that pancreas invasion(chi squareニ3.67785), no tumor invasion to the surgical margine of the bile duct(chi square=3.06270), and lymph node metastasis(chi square=1.89340)ldentified a group of patients with high risk. We conclude that pancreas invasion, no tumor invasion to the surgical margine of the bile duct, and lymph node metastasis contained the large amount of prognostic information.          緒  言  下部胆管癌は予後不良とされる胆管癌の中に あっては切除率も高く,十分に根治が期待できる 癌腫である1)∼12}.しかし,その遠隔成績をみると, 未だ満足すべき成績とはいえないのが現状であ る1)∼14).この下部胆管癌の遠隔成績を向上させる には,その予後に影響を及ぼす因子を把握し,治 療にあることが必要であると考える.しかるに現 在までの下部胆管癌の予後に影響を及ぼす因子に 関する報告をみると,いずれも対象症例数が十分 ではなくゆ統計学的方法を用いた定量的検討もな されていない.そこで,本研究は臨床病理学的諸 因子の中から,予後に影響を及ぼすと思われる因 子を選び,統計学的方法を用いて定量的に解析, 検討した.         対象および方法  1968年1月より1990年6月までに東京女子医科 大学消化器外科学教室で経験した下部胆管癌総数 は80例で,うち手術例は70例(87.5%),切除例は ’56例(70.0%)で,全例膵頭十二指腸切除術を施 行したものである.  対象は,切除例56例のうち,相対非治癒切除以 上の治癒度が得られ,臨床病理学的検:討が可能で あった38例である.切除例のうち,膵頭部癌との 重複癌1例,胆嚢癌との重複癌2例,直死6例お よび明らかに癌の遺残を認め,1年以内の癌死例 が11例中6例と極めて成績不皐である絶対非治癒 切除11例は除外した(図1).       〕

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     14(17,5%) 対  象   38例

[補轟剰

 非手術例

 10σ2.5%) 図1 下部胆管癌80症例の内訳と検討対象 表1 予後因子に関する病理学的検討項目とカテゴ  リーの内訳 検討項目 カテゴリー 症 例 膵臓浸潤 pahc(一) 13 panc(十) 25 十二指腸浸潤 d(一) 29 d(+) 9 リンパ節転移 n(一) 29 n(+) 9 リンパ管浸潤 lyoly監 17 1y21y3 21 静脈浸潤 VoV1 27 V2V3 11 神経周囲浸潤 pnopn1 26 pn2pn3 12 外科的剥離面 ewO 25 癌浸潤 ew里 13 肝側胆管断端 hWo 35 癌浸潤 hWl 3  検討項目は予後に影響を及ぼすと思われる臨床 病理学的諸因子の中から,病理学的項目である膵 月蔵浸潤(panc),十二指腸浸潤(d), リンパ節転移 (n),リンパ管浸潤(ly),静脈浸潤(v),神経周囲 浸潤(pn)の6項目と,外科的項目である外科的 剥離面癌浸潤(ew)と上側胆管断端癌浸潤(hw) の2項目の計8項目を選んだ.各検:討項目のカテ ゴリーは臨床的および統計学的に検討するために 表1のごとく分類した.なお,臨床病理学的検討 項目については,“胆道癌取扱い規約“15)(以下, “規約”)に準拠した.  1)膵臓浸潤(panc):本研究では膵臓浸潤をさ らに厳密に規定し,panCl(癌浸潤が下部胆管域に 存在し胆管外膜を越えるが膵実質には達しないも の,または癌浸潤が膵実質に達するが5mm未満 のもの)を,panc、。(癌浸潤が胆管外膜を越えるが 膵実質には達しないもの)とpanc、b(癌浸潤が膵 実質に達するが5mm未満のもの)とに分け, panc をpanc(一)〔panc。, pancla〕とpanc(十)〔panc、b, panc2, panc3⊃.とに分類した.  2)十二指腸浸潤(d):dをd(一)〔d。〕とd(+) 〔d、,d、, d、〕とに分類した.  3)リンパ節転移(n):nをn(一)〔n。〕とn(十) 〔n1, n2, n3乳n4〕とに分類した.  4)リンパ管浸潤(ly):lyをlyo, lyl群とly2, ly3群とに分類した.  5)静脈浸潤(v):vをv。,v、群とv2, v3群とに 分類した.  (6)神経周囲浸潤(pn):pmをpn。, pnl群と pn2, pn3群とに分類した.  7)外科的剥離面癌浸潤(ew):ewをew。と ew、とに分類した.

 8)肝側胆管断端癌浸潤(hw):hwをhWoと

hw1とに分類した.  解析方法としては,まず,A:(1)相対非治癒切 除以上の切除がなされた対象38例の累積生存率 (以下生存率)を算出した.次いで,(2)単変量解 析による各検討項目の術後生存期間に及ぼす影響 を検討するために,膵臓浸潤,十二指腸浸潤,リ ンパ節転移,リンパ管浸潤,静脈浸潤,神経周囲 浸潤,外科的剥離面詰浸潤,肝側胆管断端癌浸潤 のカテゴリー別の生存率を算出した.Bl各検討 項目が術後生存期間に及ぼす影響の大きさを多変 量解析し,それぞれの予後に影響を及ぼす因子独 自の重みを求めた.  病理組織学的検索は切除標本を20%ホルマリン 液固定後5mm間隔の全割切片とし, hematoxylin eosin染色後,光顕的に膵臓浸潤,十二指腸浸潤, リンパ節転移,リンパ管浸潤,静脈浸潤,神経周 囲浸潤,外科的剥離面忘浸潤,肝側胆管断端癌浸 潤の検索を行った.なお,リンパ管浸潤,静脈浸 潤においては,主腫瘍の中心切片にelastica van− Gieson染色あるいはVictoria blue染色を追加施 行し,リンパ管浸潤,静脈浸潤の判定を行った.  各検討項目のカテゴリー別の累積生存率はKa・ plan−Meier法にて算出し,単変量解析の検定には generalized Wilcoxon検定を用い, p<0.05を有

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意差ありとした.術後生存期間に及ぼす影響の大 きさの解析にはCoxの比例ハザード法16)∼18)を用 いた.          結  果  A.単変量解析による予後に影響を及ぼす因子 の検討  1.対象38例の生存率  相対非治癒切除以上の切除がなされた対象38例 の5年生存率は48.8%であった(図2).  2.臨床病理学的項目の生存率  1)膵臓浸潤(panc)  膵臓浸潤では,panc(一)群13例, panc(十)

群25例であり,響町の5年生存率はそれぞれ

89.0%,25.6%であった.両群間に有意差を認め た(p<0.01)(図3).  2)十二指腸浸潤(d)  十二指腸浸潤では,d(一)群29例, d(十)群 9例であり,各群の5年生存率はそれぞれ67.1%, 0%であった.両群問に有意差を認めた(p< 0.01)(図4). 生存率(%)  100 50 11、]… 生存率(%)  100 d(+) (n騙9) d(・) (n=29) 50   0        5       10  (年)       糊 p<0.01 図4 十二指腸浸潤別累積生存率曲線(Kaplan  −Meier法) 生存率(%)  100 50 n(一)

 }

n(+〉 n(一) (n=29) n(+) (n=9) (n=38)   0        5       10  (年) 図2 相対非治癒切除以上切除例の累積生存率曲線  (Kaplan−Meier法)   0        5       10  (年)       ★★ Pく0.0睾 図5 リンパ節転移別累積生存率曲線(Kaplan  −Meier法) 生存率(%>  100 50 panc(一} (n=13)   panc(一)

     }

  panc(+) panc(+) (n=25)   0         5   ド    10   (年〉       費費 p<0.01 図3 膵臓浸潤別累積生存率曲線(Kaplan−Meler法)  3) リンパ節転移 (n)  リンパ節転移では,n(一)群29例, n(十)群 9例であり,各群の5年生存率はそれぞれ61.0%, 13.4%であった.両群間に有意差を認めた(p< 0.01)(図5).  4)リンパ管浸潤(1y)  リンパ管浸潤では,lyo, ly1群17例, ly2,1y3群 21例であり,各群の5年生存率はそれぞれ68.3%, 31.1%であった.両群間に有意差は認められな かった(図6).  5)静脈浸潤(v)  静脈浸潤では,v。, v、群27例, v2, v3群11期目あ り,各回の5年生存率はそれぞれ57.3%,18.3% であった.両群間に有意差を認めた(p<0.05)(図 7).  6)神経周囲浸潤(pn)  神経周囲浸潤では,pn。, pn、群26例, pn2, pn3

群12例であり,各群の5年生存率はそれぞれ

61.0%,22.0%であった.両群間に有意差は認め

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生存率(%)  100 50 :;::;1コ・・ [yol舅  (n=17) Iy21又3 (n=21)   0        5       10  (年)        N.S.:no significance 図6 リンパ管浸潤別累積生存率曲線(Kaplan  −Meier法) 生存率(%)  100 50

謡コ聡

pno pn1 (n=17) pn2 pn3 (n畢21>   0        5       10  (年)        N.S.:no significance 図8 神経周囲浸潤別累積生存率曲線(Kaplan  −Meier法) 生存率(%)  100 50 1:1:ユ Vo v1 (n=27) v2 v3(n=11}   0        5       10  (年〉        ・pく0.05 図7 静脈浸潤別累積生存率曲線(Kaplan−Meier法) 生存率(%)  100 50 e物 ew毒 ew 1(n胃13) ewo(n=25} られなかった(図8).  7)外科的剥離面癌浸潤(ew)  外科的剥離面癌浸潤では,ew。群25例, ew群13 例であり,各群の5年生存率はそれぞれ63.4%, 20。7%であった.両下間に有意差を認めた(p< 0,05)(図9).  8)一側胆管断端癌浸潤(hw)  肝側胆管断端癌浸潤では,hw。群35例であった のに対し,hw、群は3例のみで, hw。群の5年生存 率は51.2%,hw、群では3年生存例もみられな かった.両朝間に有意差は認められなかった(図 10).  B.多変量解析による予後因子の検討  上記の8検討項目のうち,肝側胆管断端癌浸潤 のカテゴリー間の母数には著しい格差があるため 統計学的検討は不能と判断し,この項目を検討項 目から除外した.したがって,膵臓浸潤,十二指 腸浸潤,リンパ節転移,リンパ管浸潤,静脈浸潤, 神経周囲浸潤,外科的剥離面癌浸潤の7項目を検 討項目とし,Coxの比例ハザード法により解析を   0        5       10  (年)        ・p<0.01 ’図9 外科的剥離面癌浸潤別累積生存率曲線(Kaplan  −Meier法) 生存率(%)  100 50

㌍・・

hwO(n=35> hw1(n罵3) 0 5    10  (年) N.S.:no significance 図10 肝側胆管断端癌浸潤別累積生存率曲線(Kaplan  −Meier法) 行った.術後生存期間に及ぼす影響の大きさ,す なわち因子独自の重みは,λ:2値の大きい順に,膵 臓浸潤(κ2=3.67785),外科的剥離丁半浸潤(κ2= 3,06270),リンパ節転移(κ2=1.89340),十二指 腸浸潤(λ12=1.03115),神経周囲浸潤(λ12= 0.66242),リンパ管浸潤(κ2漏0.36001),静脈浸 潤(κ2漏0.07811)の順であった.またκ2値の大き

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表2 術後生存時間に影響を及ぼす因子(Coxの比例ハザード法) 検討項目 パラメータ推定値 κ2統計量 有意確率 膵臓浸潤 0.17651 3.67785 0.0551 十二指腸浸潤 0.88152 1.03115 0.3099 リンパ節転移 0.10519 1.89340 0.1688 リンパ管浸潤 0.42080 0.36001 0.5485 静脈浸潤 一〇.23691 0.07811 0.7799 神経周囲浸潤 一〇,64632 0.66242 0.4157 外科的剥離面癌浸潤 0.12983 3.06270 0.0801 さからみると,膵臓浸潤,外科的剥離面心浸潤, リンパ節転移の3因子が予後に大きく影響を及ぼ す重要な因子であることが示唆された(表2).          考  察  下部胆管癌は,予後不良とされている胆管癌の なかにあって,上中部胆管癌と比較すると,切除 率,遠隔成績ともに良好とされている.切除率に ついてみると,角田ら14)は82.6%(23例中19例), 竜ら9)100%(19例中19例),橋口ら8)85.0%(20例 中17例),伊佐地ら7)86.7%(15例中13例),中山ら19) 61.4%(44例中27例),永川ら20)77.8%(27例中21 例)と報告しており,当教室でも70。0%(80南中 56例)と切除率は高率であった.一方,切除例の 5年生存率をみると,中山ら19)は43%,浦ら21) 44%,伊佐地ら7》38%,永川ら20)44.4%,Forrest ら13)25%,Taraziら22)16.7%, Michelassiら10) 0%,羽生ら2)は42.4%と報告している.本研究 で,絶対非治癒切除を除いた相対非治癒切除以上 の治癒度が得られた切除例に限っても,5年生存 率は48.8%に過ぎず,その遠隔成績は決して満足 すべき成績とはえない。この現状に対して,どの ような因子が遠隔成績に影響を及ぼす因子である のかを十分に把握し,これを踏まえ,外科治療に あたることが遠隔成績向上につながるものと考え る.  そこで遠隔成績の一つの指標としての術後生存 期間に対してどのような因子が影響を及凝すかと いうことを明らかとするため,諸家がどのような 対象に,いかなる方法で検討してきたかをみてみ る.まず対象例についてみると,Warrenら23),伊 佐地ら7),橋口ら8),中山ら19),浦ら21)はいずれも絶 対非治癒切除例をも含めた切除例を対象とし, Warrenら23)の47例を除いては,15例,14例,27例, 25例と決して十分な症例数とはいえない.また予 後に影響を及ぼす因子を検討するための統計学的 解析方法も,各因子のカテゴリーの累積生存率を 算出しているのみ7)9)21)23)であり,各因子独自の術 後生存期間に影響を及ぼす重みを求め,予後に影 響を及ぼす因子を定量的に評価検討するといった 報告はこれまでにはみられていない.  そこで,著者は明らかな癌遺残を認め,術後1 年以内に11例中6例が癌死するような絶対非治癒 切除例は,予後因子を解析する際の対象としては 不適切と考え,これを除外した相対非治癒切除以 上の治癒度が得られた38例を対象とし,下部胆管 癌の予後に影響を及ぼす因子を検討した.予後に 影響を及ぼす因子は年齢,性別,術前合併症など の宿主因子,腫瘍の浸潤や転移など病理学的因子 よりなる腫瘍因子,術式,外科手術による剥離面 や胆管断端への癌浸潤の有無などの治療因子の3 因子に大別される.著者は病理学的な腫瘍因子で ある膵臓浸潤,十二指腸浸潤,リンパ節転移,リ ンパ管浸潤,静脈浸潤,神経周囲浸潤の6因子と 治療因子である外科的剥離面癌浸潤,肝側胆管断 端癌浸潤の2因子を検討項目とし選び,その予後 へ及ぼす影響を統計学的方法を用い,定量的に評 価,検討した.  まず,各因子を単変量解析したところ,膵臓浸 潤,十二指腸浸潤,リンパ節転移,静脈浸潤,外 科的剥離面癌浸潤の各カテゴリー間に有意差を認 めた.すなわち,膵臓浸潤,十二指腸浸潤,リン パ節転移のないものがあるものに比べ,静脈浸潤 のないものや軽度のものが高度なものに比べ,ま た外科的剥離面から5mm以内に癌浸潤を認めな

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いものが5mm以内に癌浸潤を認めるものに比べ 有意に術後生存期間の延長がみられた.リンパ管 浸潤,神経周囲浸潤,山側胆管断端癌浸潤の各カ テゴリー間には有意差は認められなかった.  次に,各検討項目相互の影響を考慮し,術後生 存期間に対する影響を適切に把握することがで き,さらに各因子の重みを推定することが可能と されるCoxの比例ハザード法による解析を行い, 術後生存期間に影響を及ぼす因子を検討した.こ の結果,術後生存期間に影響を及ぼす因子独自の 重みは,その重い順に,膵臓浸潤,外科的剥離面 癌浸潤,リンパ節転移,十二指腸浸潤,神経周囲 浸潤,リンパ管浸潤,静脈浸潤の順であることが 明らかとなった.さらにκ2値の大きさか航膵臓 浸潤,外科的剥離面癌浸潤,リンパ節転移因子が 重要な予後に影響を及ぼす因子であることが示唆 された.  ここで予後に影響を及ぼす因子について,諸家 の報告をみると,Warrenら23}はリンパ節転移陽 性例の生存率が不良であると報告している.中山 ら19》はリンパ節転移陽性例の予後は不良であり, 膵臓浸潤陽性例の予後は有意差をもって不良であ るとしている.橋口ら8)は深達度と外科的剥離面 癌浸潤が重要な因子であるとしている.伊佐地 ら7)は膵臓浸潤,十二指腸浸潤,リンパ管浸潤につ いてはカテゴリー間の偏りが大きく,検討できな かったとしているが,静脈浸潤と神経周囲浸潤陽 性例は有意差は認められないものの予後不良であ り,一方,リンパ節転移の有無による予後の明ら かな差はみられなかったとしている.浦ら21)はリ ンパ節転移,膵臓浸潤,十二指腸浸潤,胆嚢浸潤 のいずれの因子においても生存曲線上有意差はみ られなかった’としている.また以上諸家の報告で は,リンパ節転移,壁深達度,膵臓浸潤,外科的 剥離二二浸潤,静脈浸潤,神経周囲浸潤が予後に 影響を及ぼす因子としてあげられているが,各報 告者の予後に影響を及ぼす因子についての見解は 必ずしも一致をみていない.この理由としては, 前述のように絶対非治癒切除を含めた切除例を対 象に検討されていること,いずれの報告も統計学 的検討を加えるに+分な症例数が得られていない ことなどが影響していると考えられた.  著者の本研究から得られた結果は,下部胆管癌 切除例の遠隔成績を向上させるには,膵臓浸潤, 外科的剥離桂坤浸潤,リンパ節転移の3因子に対 する外科治療上の対策を考慮することが必要であ ると考えられた.          結  論  下部胆管癌の遠隔成績を向上させるため,下部 胆管癌切除例を対象に,臨床病理学的諸因子を統 計学的方法を用い,定量的に評価,検討し,以下 の結論を得た.  1)単変量解析にては,膵臓浸潤(p〈0.01),十 二指腸浸潤(p〈0.01),リンパ節転移(p<0.01), 静脈浸潤(p<0.05),外科的剥離面癌浸潤(p< 0.05)の5因子の各カテゴリー間に有意差を認め た.  2)多変量解析にて,術後生存期間に及ぼす影響 の大きさ,すなわち因子独自の重みはん2値の大き い順に膵臓浸潤(λ12=3.67785),外科的剥離面癌 浸潤(κ2=3.06270),リンパ節転移(κ2= 1,89340),十二指腸浸潤(κ2=1.03115),神経周 囲浸潤(λ12=0.66242),リンパ管浸潤(κ2= 0.36001),静脈浸潤(κ2=0.07811)の順であり, κ2値の大きさから膵臓浸潤,外科的剥離面心浸 潤,リンパ節転移の3因子が予後に影響を及ぼす 重要な因子であることが示唆された.  稿を終えるにあたり,直接御校閲を賜りました東京 女子医科大学消化器外科学教室主任羽生富士夫教授, 終始御指導を賜わりました中村光司教授に深甚なる 謝意を捧げます.また本研究にあたり病理組織の御教 示を賜りました吉川達也講師ならびに膵胆道グルー プの諸兄,東京女子医科大学消化器病センター臨床病 理学教室の諸兄姉,統計解析の御援助をいただいた塩 野義製薬解析センターの諸氏に深く感謝の意を表し ます.  なお,本論文の要旨は第37回日本消化器外科学会総 会(1991年2,月名古屋),ならびに第15回日本膵切研究 会(1991年5月札幌)において発表した.          文  献  1)吉川達也,江一礼紀,今泉俊秀ほか:胆道(含む   胆嚢)癌の外科的治療成績順天堂医学33:

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  325−333, 1987 2)羽生富±夫:胆道癌の外科.日消外会誌22:   2163−2171, 1989 3)吉川達也,羽生富士夫,中村光司ほか:胆道癌の   遠隔成績からみた外科治療上の問題点と対策.日   消外会誌 21:1179−1182,1988 4)羽生富士夫,吉川達也,中村光司ほか:胆道癌手   術療法の現況.1(arkinos 1:53−60,ユ988 5)吉川達也,羽生富士夫,中村光司ほか:胆道癌に   対する手術.診断と治療 78:1951−1954,1990 6)中山和道,有田恒彦,木下壽文ほか:中下部胆管   癌の治療成績からみた拡大手術の意義.日外会誌   91 :1245−1248, 1990 7)伊佐地秀司,大橋直樹,久留宮隆ほか:膵頭部領   域癌の手術成績日消外会誌 23:140−151,1990 8)橋ロ文智,村井隆三,吉見 優ほか:肝外胆管癌   組織学的深達度の検討.日消外会誌22:   1801−1805, 1989 9)竜 崇正,山本義一,小出義雄ほか:再発様式お   よび非治癒切除の要因からみた胆道癌外科治療の   問題点.日消外会誌 20:1899−1904,1987 10)Michellassi F, Erroi F, Dawson PJ et al:   Experience with 647 consecutive tumors of the   duodenum, ampulla, head of the pancreas, and   distal common duct. Ann Surg 210:544−556,   1986 11)Reding R, Buard JL, Lebeau G et al: Surgi・   cal management of 552 carcinoma of the extra−   hepatic bile ducts. Ann Surg 213:236−241,1991 12)Jones BA, Langer B, Taylor BR et a1:Per   iampullary tulnors:Which ones should be   resected. Am J Surg 149二46−52,1985 13)Forrest JF, Longmire WP Jr:Carcinoma of   the pancreas and periampullary region:A   study of 279 patients. Ann Surg 1891129一ユ38,   1979 14)角田 司,土屋涼一,原田 昇ほか:肝外胆管癌   に対する外科療法の問題点とその対策.日外会誌   87 :1090−1093, 1986 15)日本胆道外科研究会編:胆道癌取扱い規約 第2   版・金原出版,東京(1986) 16)富永祐民:治療効果判定のための実用統計学 第   4版.pp77−134,蟹書房,東京(1987) 17)浜辺 豊,佐藤美晴,斉藤洋一:食道癌の予後因   子に関する臨床病理学的研究.日外会誌 89:   805−814, 1988 18)丸岡康洋,前谷俊三,戸部隆吉:大腸癌の予後に   関する病理学的因子の統計学的解析.日外会誌   89 :181−191, 1988 19)中山和道,福田義人:切除成績の現況と問題点   一中・下部胆管癌一.臨外 39:1389−1392,1984 20)永川宅和,上野桂一,大田哲生ほか:膵頭部領域   癌の進展様式よりみた広範囲拡大郭清膵頭十二指   腸切除術の適応.日消外会誌 22:251}2515,   1989 21)浦 一秀,江藤敏文,松元定次ほか:膵頭領域癌   切除例の予後.日門外会誌 24:2523−2529,1991 22)Tarazi RY, Herman醜RE, Vogt DP et a藍:   Results of surgical treatment of periampullary   tumors:Athirty一丘ves・pace・year experience,   Surgery 100:716−723, 1986 23)Warren KW, Choe CS, Thomas JH et al:   Results of radical resection for periampullary   cancer. Ann Surg 181:534−540,1975

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