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(シンポジウム 自己免疫疾患をめぐって)自己抗原応答性リンパ球出現の調節

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(1)

シンポジウム

自己免疫疾患をめぐって

〔塁壁薦91穐籍62劉言〕

自己抗原応答性リンパ球出現の調節

東京女子医科大学 ウチ ヤマ

内 山

微生物学教室 タケ ピコ

竹 彦

(受付 昭和61年11月22日)

Regulatory Mechanisms in the Generation of Autoreactive Lymphocytes

Takehiko UCHIYAMA

Department of Microbiology, Tokyo Women’s Medical College

Autoimmune disease develops though two processes which we can consider as separate events: clonal expansion of autoreactive lymphocytes and induction of clinical disorders resulting from the autoimmune response. In the present report, the author focused the discussion on the regulatory mechanisms in the generation of autoreactive lymphocytes. Experimental findings from many

laboratories indicate that autoantibody−producing cells are present in activated rather than in resting state in the immune system of healthy individuals,although cell number in each autoreactive clone are

not many;(1)autoantibody−producing hybridomas are obtained by fusing myelomas w童th B cells from healthy normal mice.(2)Frequencies of autoantibody−producing clones are much higher in large

activated than in small resting B cells in the spleen from healthy normal mice,(3)Ly 1+Bcells which are relatively large in size and produce exclusively autoantibodies are present in the peritoneal cavity

and spleen of healthy normal mice. These findings suggest that the immune system of healthy

individtlals is under the strict regulatory control to avoid the clonal expansion of autoantibody−

producing B celis. Actually the induction of organ−specific autoimmune diesases and production of

organ−specific autoantibodies have been reported to be regulated positively or negatively by different T cell subsets;Ly 1−2−Tcells induced organ−specific autoimmune diseases and autoantibody production, and Ly 1+2−Tcells suppressed the generation of the diseases indtlcedわy Ly 1 2 Tcells, The regulatory mechanisms in the generation of autoreactive lymphocytes were discussed in this report,

はじめに 自己免疫病は,ある個体にその個体を構成する 成分に特異的な抗体や感作リンパ球の作用により 惹起される病的状態と定義される.脊椎動物以上 の高等動物は免疫応答を起こす能力を備えている が,それはその個体に存在しない抗原に対してで あり,個体の構成成分に対しては応答を示さない. このように,生体は外来抗原に対する応答性を準 備し,かつ自己抗原に対する不応答性を保持する 巧みな調節機構を備えていると考えることが出来 る.したがって,自己免疫病はこの調節機構の何 らかによる破綻もしくはその能力を超えた異常の 発生の結果生じると考えられる. 近年,免疫応答についての解析が進み,免疫シ ステムを構成する細胞,すなわちT細胞,B細胞, それにマクロファージについての形態的,機能的 特徴,そしてこれらの細胞間の相互作用について 多くの研究が蓄積されてきた.それに伴って,自 己抗原に対する免疫応答の調節機構も少しずつそ の姿をあらわしはじめた.現時点では,自己免疫 病についての明確な図式を描くことは困難である が,今日を出発点とした自己免疫病研究のために, 184一

(2)

表題に掲げた内容について考察することは重要と 思われる. 1.リンパ王求クローンについて 1)免疫応答の特異性の獲得 免疫システムは個体に通常存在しない抗原決定 基をもつ物質に接触すると,それに対して特異性 をもつ抗体産生B細胞,細胞性免疫T細胞,また これらの細胞の応答性を調節するT細胞の活性化 とその数の増加を示す.この反応は特異性が厳密 であり,たとえぽ産生された抗体は免疫原となっ た抗原決定基ないしはそれに類似した抗原決定基 とのみ結合し,類似性のないものとは結合しない. このような特異的抗体を産生する細胞集団は莫大 なi数のクローンからなる.例えばある1つのク ローンは細胞表面上のレセプター(免疫グロブリ ンである)を介して抗原決定期を認識し分裂増殖 し,レセプターのγ一グロブリンと同一のアミノ酸 配列をもつ抗体分子のみを産生するようになる. 抗体産生細胞クローンのこの特異性はどのよう にして獲得されたのだろうか.Burnet1)によれぽ, 生体には,胎生期のある時期までに,将来遭遇す るであろうあらゆる抗原決定基に対応してそれぞ れ特定の抗体分子のみを産生するように運命づけ られた莫大な数のクローン集団が準備される.こ の場合,抗体分子の特異性を規定する遺伝子はク ローンの母細胞の分裂増殖の過程で体細胞突然変

異により生ずる.これに対して,Hood and

Talmage2)は,抗体の特異性の多様性は生命体の 進化の間に蓄積されたもので,各抗体産生細胞ク ローンの遺伝子にはすべての抗体の遺伝情報が組 み込まれており,各クローンはそのうちの1つの パターンのみを発現するように制御されていると 考えた.その後抗体の特異性の多様性の獲得につ いてTonegawaをはじめ多くの研究者によって 研究が続けられた.クローンの母細胞は抗体グロ ブリンを規定する遺伝子をまとまった遺伝子座に 有限個並列して準備しており,母細胞の分裂増殖 時に特徴ある遺伝子の組み換えをおこす.また, 抗体分子を規定する遺伝子には免疫応答に伴う細 胞分裂時に体細胞突然変異をおこす.さらにγ一グ ロブリンH鎖とL鎖の任意の組み合わせによって も特異性のレパートリーは増加する3). 免疫リンパ球は先に述べたようにT細胞とB 細胞よりなっているが,このクローン性はいずれ の細胞群にも存在する.一般に個体の免疫システ ムは外来抗原に対しては鋭敏な応答性を示すが, 自己抗原に対しては応答性を示さない.しかし, 免疫システムの特異性の多様性の獲得,すなわち 莫大な数のクローンの出現過程を考えれば,生体 には外来抗原に対するクローンのみではなく,自 己抗原応答性クローンも少なくとも未成熟細胞の 段階では,出現することに気が付く. 2)自己抗原に特異的クローンの存在について 前に述べたように,莫大な数のクローンの中に は自己抗体産生細胞となり得るものが含まれてい る.Burnetによれぽ,それらのクローンは胎生期 に周囲に存在する自己抗原と接触し未熟細胞で あったが故に分裂増殖に向わずに消滅してしま い,外来抗原に対応するクローンのみが残存して 機能的な免疫細胞として成熟する.したがって成 熟動物の免疫システムには自己抗原に特異的なク ローンは原則として存在しない.しかしこの理論 では説明出来ない実験結果が数多く見られた.例 えば,マウスにB細胞を抗原非特異的に活性化す る処置,lipopolysaccharide (LPS)の投与4)や graft versus host reaction(GVH反応)の誘導

を行えば,自己抗体の産生が見られる.図1に示 すように,GVH反応を誘導されたマウスでは,ヒ トの全身性エリテマトーデス(SLE)と類似の自 己抗体産生を示す5).また,健康ヒトの末梢血に は,EVウイルス(抗原非特異的にB細胞を活性化 する)を感染させれぽ,自己抗体産生細胞は自己 免疫患者由来末梢血の場合とほぼ同じ頻度で観察 される6)(表1).これらの所見は,多様な特異性 をもつ自己抗体産生B細胞クローンは,自己免疫 病の時に限らず,常時機能的免疫細胞となり得る 状態で存在していることを示している.T細胞に ついても,自己抗原応答性T細胞が健康なヒトや 正常実験動物に存在する.例えば,末梢血やリン パ節からT細胞と非T細胞に分離し,再構成して 培養すれぽ,T細胞は非T細胞のIa抗体を認識し て分裂増殖することが観察される(autologous or

(3)

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図1 GVH・F1マウス(●)と対照マウス(△)のSLE関連自己抗体産生の比較 7 −8週齢メスのDBA/2マウス(H−2dld)の脾細胞とリンパ節細胞の混合9×107を (C57BL/10×DBA/2)F1マウスに0日と5日に静注し,以後各種自己抗体を測定し た(C57BL/6マウスはH・2b/b).(a)抗胸腺細胞抗体;(b)直接クームス試験(抗 赤血球抗体);(c)抗核抗体;(d)抗二重鎖DNA抗体;(e)皮ふ基底膜の免疫 グPプリンの沈着;(f)抗サイ・グロブリン抗体(E,Gleichmanら‘)より) 表1 EVウイルスでトランスフォームされたヒト リンパ球培養上清中の自己抗体活性 EVウイルスでトランスフォームされたことに より組織反応性を示すヒトリ ンパ球培養 リンパ球の 提供者 IgM抗体 IgG抗体 テスト数 陽性率(%) テスト数 陽性率(%) 患 者 1 17 82 34 29 2 65 58 11 9 3 未検査 40 23 健康者 1 64 86 15 20 2 70 61 40 23 EVウイルスでトランスフォームされたヒトリンパ球(自 己免疫患者と健康人)の培養上清のサル膵臓と甲状腺組織 に対する反応性が調べられた.結果は,γ一globulin産生陽 性を示すすべての培養に対する膵臓と甲状腺のいずれかの 組織と反応性を示す培養のパーセントとして表現された. (C.garzelliら6}より)

syngeneic m玉xed lymphocyte reaction,自己あ るいは同系MLR)7). Miyaharaら8>9)はこの自己 認識T細胞の出現について興味ある報告をしてい る.肝臓を部分切除されたマウスでは短期間に肝 細胞の増生がおこり元に回復するが,肝細胞の増 生時に自己Ia抗原応答性T細胞の活性化が起こ る(図2). これらの観察結果より,健康な個体の免疫シス テムには自己抗原応答性T細胞やB細胞は消滅し ないで機能的な免疫細胞となり得る状態で存在し ていると考えられる.しかし,外来抗原に対する 免疫寛容誘導の実験で見られるように,自己抗原 に対する高親和性自己抗原応答性クローンは免疫 寛容により消滅し,残在するクローンはすべて自 己抗原に対して低親和性であるという可能性は考 えられる.さて,存在する自己抗原応答性クロー ンは静止期に眠っているのであろうか,それとも 活動しているのであろうか. 3)自己抗体産生細胞の活性化の状態 健康なヒトや正常無処置実験動物の血清中には 一186一

(4)

20 題

5

§ 書10 § の

圏 ●・一● OHEP σ一一◎ 2HEP 層一引4HEP

H6HEP

▲一一▲10HEP ▲ 3

4

Days in CultUre 5 図2 肝部分切除マウスのリンパ節細胞は自己Ia抗 原に対して第2次反応を示す.0,2,4,6,10日前 に肝部分切除を受けたBALB/Cマウスのリンパ節 細胞(5×105/well)を6日前に肝部分切除を受けた 同系マウスの1×104肝細胞(抗原は主としてIa+ クッパー細胞)で3−5日間刺激した.3H一サイミジ ンの取り込みのstimulation indexとして表現.(S, Miyaharaら8ぽり) 多種類の自己抗体が含まれていることが知られて いる.例えば,免疫吸着法を用いれば,正常ヒト の血清から種々の自己抗体が高い頻度で検出され る10).また,正常無処置マウスB細胞は,in vitro

で培養した時,自己免疫MRL/lprマウスの抗

DNA抗体と共通したイディオタイプを持つγ一グ ロブリンを何らの刺激なしで産生する11).さらに, 正常無処置マウスの脾細胞とミエローマ細胞の融 合により,種々の自己抗体産生ハイブリドーマが 得られた12)13).例えば,Prabhakarらは外分泌系, 内分泌系組織と反応する自己抗体を産生するハイ ブリドーマを報告している13)(表2).ミエローマ 細胞とB細胞を融合させてB細胞由来特異抗体を 産生するハイブリドーマを得るには,そのB細胞 は活性化された状態にあることが要求される.以 上の例はすべて,自己抗体産生B細胞クローンの あるものは正常状態で常時活性化されており,少 量ながら自己抗体を産生していることを示す. 4)自己抗体産生細胞の選別 自己抗体産生細胞を外来抗原に特異的なB細胞 から選別出来るだろうか.リンパ球は活性化され ると静止期の時よりも大形化し低比重となる. Portnoi14)らは,この性質を利用して,正常無処置 マウスのBリンパ球を比重が1.060∼1.070の低比 重画分と1.070以上の高比重図説に分画し,LPS で刺激して,自己抗体(サイログロブリンやプロ メライン処理自己赤血球)や外来抗原(KLHや羊 赤血球)に対する抗体産生細胞の出現頻度を調べ た.単位細胞あたりのIgM型自己抗体産生細胞数 は高比重根分より低比重画帳に約10倍多い比率 で,一方外来抗原に対する抗体産生細胞は両画分 にほぼ同じ比率で検出された.この結果は,自己 抗体産生細胞はかなりの部分が常時活性化されて いること,そして外来抗原に対する抗体産生は大 部分が静止期にあること(低比重画分のB細胞は 高比重画分より割合が小さい)ことを示唆する. 遺伝性全身性自己免疫病を発生するNZBマウ スや(NZB×NZW)F1マウスの脾臓には,これ 表2 正常マウスから得られたモノクローン抗体の反応パターン モノクローン抗体a> 脳下垂体前葉 胃細胞 唾液腺 膵 臓 卵 巣 睾 丸 核 MOR−N1 十 十 十 十 十 MOR−N2 十 十 十 一 一 一 MOR−N3 十 十 十 MOR−N4 十 十 十 MOR−N5 十 十 一 一 一 } 一 ST−N1 十 ST−N2 『 十 一 一 一 一 一 NA−N1 『 一 一 一 一 一 十 a):これらの抗体を産生するハイブリドーマはポリエチレングリコールを用いて正 常BALB/cマウスの脾細胞とミエローマ細胞を融合させることにより得られた. (Prabhakarらエ3より)

(5)

までT細胞のみに表現されると考えられていた しy 1抗原を表現するB細胞(Ly1+B細胞)が他の 正常マウスの脾より数多く存在する15)16). Hayakawa17)らの解析によれば,プロメライン処

理自己赤血球,DNAそしてT細胞に対するlgM

型自己抗体産生細胞は,Ly1−B細胞才分に比較 して,Ly 1+B細胞画分にぎわめて高頻度に存在 する.一方外来抗原刺激に対しては,Ly1−B細胞 画分は十分に反応するが,Ly1+B細胞は反応を 示さな:い.図3に両細胞多分におけるプロメライ ン処理自己赤血球に対する自己抗体産生細胞の頻 度を示した.これらの所見は,自己抗体産生細胞 はLy1+B細胞画分にあることを示す. 以上の所見は,正常個体には,自己抗体産生B 細胞クローンは,活性化の程度や細胞表面の抗原 構造に関して,静止期にある大多数の外来抗原に 対する抗体産生細胞クローンとは異なる様相を呈 することを示唆する.解決すべき問題点は多い. (NZB×NZW)F1マウスでは自己抗体:はSLE様

病状の進行とともにIgM型からIgG型へ移行す

るが,Ly1+B細胞由来の自己抗体はIgM型であ り,IgG型自己抗体産生とLy/+B細胞の関連性 は不明である.また,ヒト末梢血にはマウスの Ly1+B細胞に相当するT1+B細胞が存在するこ とが報告されているが18),自己抗体産生や自己免 疫病との関連性は今後の研究課題であろう.さら に,自己免疫病はSLEに代表される全身性自己 免疫病とBasedow氏病のような臓器特異的自己 免疫病に大別される.両疾患群の自己抗体産生は, グループ内での重複はしぼしぼ見られるが,グ Stεしinin9 r」エーaotior1 No. of sorted cellS ×10『∂ PFC Cells PFC rccovcred, recovelled, % % Sort l. Ly−1/igM 100 悪 蛙10 ス 目 1 0.1 ∠ 密’ Unseparated 24() σ o ∼ σ

レ\ ・

↑ Discard ↓ /B 0.1 1 ユO lOO

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Lyt−2/【gM 40 Sort 2. Unseparated 240 1850 500 100 奪 邑ユ。 冠 ゴ 1・ O./ 0. 30 ユ600 100 2 L7 100 100 27 2

@ ( /・ ↑ D撃「d /B 1 1 10 100 工gM per ce[1 2 50 25 440 1 21 100 2 25 図3 Ly1+B細胞のブロメライソ処理自己赤血球に対する抗体産生 LPS10μgを 1日前に投与されたマウスの脾細胞をsort 1ではA(IgM+, Ly1+)とB(lgM+,

Ly1一)に, sort 2ではA(IgM+, Ly2+)とB(lgM+, Ly2つに分画し,プロメラ

ィン処理マウス赤血球に対する抗体産生細胞(PFC)の測定を行った.(K. Hayak−

awaら17)より)

(6)

ループを越えて重複することはあまりない.これ は,両疾患群の自己抗体産生細胞クローンはそれ ぞれ異なる性質をもつ細胞群に属しているか,自 己抗体産生を調節するT細胞による調節の様式 が異なることを意味しているのだろうか.また, Ly1+B細胞は免疫応答の調節作用をすることを 示唆する報告がある19)20).例えば,ある特定のイ ディオタイプに特異的なレセプターを持つLy1+ B細胞により増強される20).これらの所見は,近年 その実体が明らかにされつつあるJerneの提唱し た免疫ネットワーク説21)においてLy1+B細胞の 重要な約割を示唆しているかも知れない. 2.臓器特異的自己免疫病の発症を調節する丁 細胞の存在 前章で自己抗体産生B細胞は正常個体の免疫シ ステム中に活性化された状態で存在するという可 能性について検討した.それ故に,自己免疫病が 頻発しないのは,自己抗体産生B細胞のクローン サイズが小さく抗体の産生が少量であることに依 ると考えられる.クローンサイズの拡大を抑制す る機構としては,①抑制性T細胞によるヘルパー T細胞やB細胞の抑制,②抗体,B細胞それにT 細胞を含んだイディオタイプネットワークによる 調節,③自己抗体産生B細胞の一定経過後の免疫 システムからの消滅等が考えられる.これらの機 構は互に密接な:関連を持つと考えられる.ここで は臓器特異的自己免疫病の発症を調節するT細胞 について検討したい. 自己抗体産生の調節に抑制性T細胞が関与する であろうことはこれまで長い間考えられて来た. (NZB×NZW)F1マウスは生下時胸腺切除によ りSLE様自己免疫病の発症が増強する22>.通常は 自己免疫病を発症しない系統の実験動物でも,生 後一定時間に(マウスでは3日後)胸腺を切除す れぽ,臓器特異的自己抗体の産生と組織破壊が観 察される23).骨髄や出生前の肝臓や脾臓に出現し たT前駆細胞は胸腺に入り成熟T細胞へ分化し て,末梢リンパ節へ移行する.胸腺切除による自 己免疫病発症の誘導は,自己抗体産生を増強する T細胞の成熟過程は抑制性T細胞よりも早いため に,胸腺切除マウスでは増強性T細胞が抑制性T 細胞より優性になるためと解釈される.最近自己 免疫病発症に増強性T細胞と抑制性T細胞が関与 することを強く示唆する研究がSakaguchiらに より報告された24).遺伝的に胸腺の欠失を示す BALB/c系ヌードマウスは,リンパ組織に成熟T 細胞が欠除するかその数に限りがあり,生涯にわ たって自己免疫病を発症することはない.この ヌードマウスに正常BALB/cマウスの脾細胞を 抗しy1抗体または抗しy1抗体と抗しy2抗体を併用 表3 T細胞サブセットの移入によるヌードマウスの臓器特異的自己免疫病 の誘導 実験群 脾細胞の抗血清処理 移入細胞数(×107) 自己免疫病の発症頻度 卵巣炎 胃 炎 甲状腺炎

A

正常マウス血清 4 0/12 0/12 0/12 B 抗Thy1.2 4 0/10 0/10 0/10 C 抗しy12 4 6/12 3/12 1/12 D 抗しy2.2 4 0/10 0/10 0/10 E C十D おのおの2 0/10 6/10 0/10 F 抗しy1.2+抗しy2。2 4 8/15 4/15 3/15 G モノクローナル Rしy1.2+抗しy2.2 4 6/12 2/12 1/12

H

抗しy1.2+抗しy2.2+ RThyl.2 4 0/10 0/10 0/10 1 D十F おのおの2 0/10 0/10 0/10 」 D十F 1(D)+3(F) 0/10 0/10 0/10 10−12週目nu/+マウス脾細胞を抗血清と補体で処理し,6−8週置ヌードマウス (nu/nu)に移入した.細胞移入を受けたヌードマウスは細胞移入3ヵ月後に,卵巣,胃, 甲状腺組織の病理組織像が調べられた.(S.Sakaguchiら24)より)

(7)

して処理し,従ってLyr2+T細胞かLyr2−T

細胞を移入すれぽ,細胞移入を受けたマウスには 数ヵ月後に種々の臓器の組織破壊(表3)と自己 抗体の産生が見られる.抗しy2抗体処理脾細胞 (Ly1+2−T細胞)の移入では自己免疫病の発症は ない.そしてLy1−2−T細胞の移入時にLy1+2−T 細胞を同時に移入すれぽ,自己免疫病の発症が抑 制される.この実験結果は,Ly1−2 T細胞は自己 免疫病発症の増強作用を,Ly1+2−T細胞はその 抑制作用をそれぞれ持つことを示唆する.Ly! 2+ T細胞の作用は明らかでない.興味ある疑問点と して,外来抗原に対する免疫応答の抑制には Lyr2+T細胞が大きな比重で関与するという報 告が多いが,この実験系ではしy1−2+丁細胞は関 与しないように見える.外来抗原に対する免疫応 答と自己抗体に対するそれでは,抑制の機序は異 なるのであろうか. 3.全身性自己免疫病発症の調節 ヒトの場合のSLEと類似の自己免疫病を発症

するモデルマウスとしては,NZBマウス,

(NZB×NZW)F1マウス, BXSBマウス(オス) それにMRL/lprマウスが知られている.これら のマウスでは共通してB細胞の機能充進が見られ る25).前3系統マウスではB細胞に内在する異常 が,後者のMRL/lprマウスではT細胞異常によ る二次的なB細胞の機能充塞が考えられる26}.全 身性自己免疫病発症の調節機構については優れた 総説27)があるので参照いていただきたい. 4.自己抗原に対する免疫応答の調節のこれか らの研究方向 Jerneは,イディオタイプネットワーク説の中 で21),免疫システムには,構成クローンのレセプ ター間のイディオタイプ抗イディオタイプ反応を 介したクローン間の連鎖により緊密なネットワー クが形成されており,これにより免疫システムの 恒常性が維持されていると考えた.近年になって イディオタイプネットワークの解析が進み,B細 胞とT細胞の種々の組合せの間に連鎖が存在する ことを示唆する研究報告が蓄積されて来た.自己 抗体産生B細胞は活性化された状態にあるという 観察結果を受け入れるならぽ,Zanettiのよう に28>,自己抗体産生細胞を取り巻くT細胞やB細 胞のクローン間に連鎖,すなわちネットワークが 存在し,これによって自己抗体産生細胞クローン の拡大が阻止されているのかも知れない.これか らの研究によってその実体が明らかにされるであ ろう. 稿を終えるに臨み,東京女子医科大学第52回総会シ ンポジウムに参加する機会を与えて載いた東京女子 医科大学微生物学教室,吉岡守正教授と東京女子医科 大学リウマチ・痛風センター,御巫清充教授に謹んで 感謝の意を表します. 文 献

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参照

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