102 (15) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
ヒロ セ トシ オ廣瀬俊夫(昭和2
医学博士 乙724号昭和60年6月21日
学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者)
Two dimensional electrophoresis of frog retina
(カエル網膜の二次元電気泳動一網膜タンパクの 二次元電気泳動法による検索) (主査)教授 菊地 鎗二 (副査)教授 渡辺 宏助,教授 武田 佳彦
論 文 内 容 の 要 旨
目的 網膜細胞を単離あるいは,細胞単位での電気生理学 的性質は解明されつつあるが,網膜細胞の光による化 学的性質の変化については,視細胞以外は依然として 不明な点が多い.そこで網膜のタンパク成分の光によ る性質の変化を二次元電気泳動法を用いて調べた. 方法 ウシガエルを48時間以上暗順応した後,その片眼よ り剥離網膜標本を作り,強い光(約300LUX)を室温で 約5分間あて明順応網膜を得る.明順応網膜と暗順応網膜はFrog Ringerで洗い, TCAを加えて
homogenateを得る.その後,遠心分離(1,500rpm× 20min)を行ない,沈殿物を溶解して一次元目の電気泳 動である等電点電気泳動を行なう.一次元目は円柱型 のacrylamideを主としたgelに,電位に従ってpH勾 配を形成するAmpholineを用いる.泳動後, gelを緩 衝液中に置いた後,二次元目のSDS平板型のge1上に 載せ電気泳動を行なう.泳動を終わったサンプルは Coomasie blueによって48時間染色した.明順応網膜 と暗順応網膜から得られたサンプルの電気泳動をそれ ぞれ行ない,タンパクspotの位置の比較を行なった. 一次元目,二次元目の電気泳動はすべて定電力電源を
用いた.舗点敢繭のpH勾配は, gelを13㎜ご
とに切断し,pHメーターによって測定し,SDS電気泳 動法については,RNA polymeraseのsubunitの分子 量によって分子量勾配を測定した. 結果 以上の方法によって得た平板gelを観察し, spotの 位置を調べたところ,暗順応サンプルでは120spotsが 検出され,殆どがpH 5~7,分子量26,000~200,000の 範囲にあり,明順応サンプルでは約100spotsが検出さ れた.そのうち,明順応サγプルと暗順応サンプルで は,26spotsが明らかに異なった点に存在し,全spot の約半数は分子量50,000~100,000であった. 光によって性質を変えるタンパクは視細胞中の photopigment, PDE活性などが知られているが,この 実験によれぽ,現在知られているタンパク以外にも, 光によって性質を変えるタンパクがいくつか存在する ことが明らかにされた. 考察 1.本実験によっては,明,暗順応の著しく異なる条 件で,タンパク成分の分析を行なったが,光照射条件 の相違による成分の違いについては,今後の実験の結 果を俊たねばならない. 2.視細胞中のロドプシンの,光により誘発される分 解が,温度に依存することは知られているが,異なっ た温度条件下の光照射によるタンパク成分の変化につ いては,今後検討する必要がある. 3.この方法の適用により,今後,シナプス伝達を, 遮断したり,PDEの阻害剤を用いた条件下,あるいは 免疫学的手法を適用することによって,網膜細胞のど のレベルのどのタンパク成分に変化があるかが,明ら 一724一103 かとなる可能性がある. 総括 同一ウシガエルの左右の眼から,明確に明暗順応の 異なった剥離網膜標本を作り,光照射に伴うタンパク 成分の変化を二次元電気泳動法を用いて追及した. この方法により検出されたタンパク成分は,約120 で,そのうち光照射により26が変化し,その総タンパ クの半数の分子量を推定した。 尚,この方法と,網膜については現在得られている 他の生理学的な知見を組み合わぜることにより,今後 の問題解決の方向に考察を加えた.
論 文 審 査 の 要 旨
本論文は,脊椎動物の網膜を用い,明暗順応条件が明らかに異なる場合,既に変化することが知ら れている幾つかのタンパク以外にも,変化するタンパクがあることを示し,その数と,約半数の分子 量を推定したものである.今後,この研究に用いた手法と結果から出発して,更に網膜の分子生理学 的知見が得られることが予想される.この方面の新しい研究方向を開拓したものと判定され,学問上 価値ある論文と認める. 主論文公表誌Two dimensional electrophoresis of frog retina
(カエル網膜の二次元電気泳動法一網膜タンパクの 二次元電気泳動法による検索一)
東京女子医科大学雑誌 第51巻 6号 573~580頁(昭和56年6月25日発行) 副論文公表誌
1)Measurement of oslnolarity of some solutions used for electrophysiologlcal experlments on excised tissues
(摘出標本における電気生理学的実験に用いる 溶液の浸透圧測定)
東女医大誌 51(11)1532~1537(1981) 2)Asaline solution for electrophyslologlcal
experiments on isolated bullfrog retina
(摘出ウシガエル網膜に対する電気生理学的実 験に用いる生理食塩水)
The Zoological magazine 91(1)8~11
(1982)
3)Cyclic GMP in the process of vision
(視覚におけるサイクリヅクGMP) 東女医大誌 53(1)1~7(1983)
4)Difference in sensitivity of diffenrent
myelinated fiber groups in bull frog sciatic nerve to a local anesthetic agent
(異なる神経線維に対する局所麻酔薬の効果に ついて)
東女医大誌 54(9)861~867(1984)