48 (8) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
コオリ カズ ヒロ郡和宏(昭和35
博士(医学) 甲乙239号平成6年2月18日
学位規則第4条第1項該当(医学研究科専攻,博:士課程修了者) Cloning and structural determination of human peptide YY cDNA andgene
(ヒトpeptide YYのcDNAおよび遺伝子のクローニングと構造決定)
(主査)教授 金野 公郎 (副査)教授 相川 英三,新田 澄郎論文 内 容 の 要 旨
目的 Peptide YY(PYY)はカルボキシル末端にチロシン アミド構造を有する36アミノ酸からなる生理活性ペプ チドで,主に下部消化管に存在し,膵臓,胃の外分泌 や消化管運動の調節作用を有している.ヒトPYYの 前駆体構造,遺伝子構造,発現調節に重要な遺伝子領域を解明することを目的に,ヒトPYYのcDNAおよ
び遺伝子のクローニングを行った. 実験方法ヒト結腸粘膜RNAより作成したcDNAライブラ
リーを,合成オリゴヌクレオチドをプローブに用いて ブラークハイブリダイゼーション法によりスクリーニ ングした.2種3個のcDNAクローンを単離し,ダイ デオキシ法により核酸塩基配列を決定した.次にcDNAをプローブに用い,ヒト食道癌DNAより作成
したヒトゲノムフルライブラリーをスクリーニングし た.PYY遺伝子全長を含む2つの陽性クローンのイ ンサートをサブクローニングし,核酸塩基配列を決定 した.転写開始点はプライマー伸長法により決定した.2種類のcDNAに対応するmRNAの発現をノザン
プロット分析とreverse transcriptase-polymerase chain reaction法により検討した. 結果 ヒトPYY遺伝子は全長約1.2kilobase pairであ り,4つのエクソンと3つのイントロンから構成されていた.第1エクソンはPYY前駆体mRNAの5’非翻
訳領域を,第2エクソンはシグナルペプチドとPYY
の大部分を,第3エクソンはPYYの残りの部分と前
駆体のプロセシング部位,カルボキシル端(C端)領域 の前半部分を,第4エクソンはC端領域の残りの部分 と3ノ非翻訳領域をコードしていた.またalternative splicingにより第3イントロン部分の配列が残存しているmRNAの存在が明らかとなった.この第3イン
トロンの配列を有するmRNAがコードする前駆体は C端領域のアミノ酸数が7アミノ酸短いがシグナルペ プチドとPYYの構造に相違はなかった. 考察ヒトPYY遺伝子はラットPYY遺伝子と同様の遺
伝子構造を有している.第3イントロンのalternative splicingは生理活性が不明な前駆体のC端領域をコードする部分に生じている.ヒトPYY遺伝子のプロ
モーター領域(一111~一2)とラットのプロモーター 領域とは81%の同一性を示し,この中にAP2結合部 位と考えられる配列が3カ所認められる.この領域が PYY遺伝子の発現調節に重要と考えられる. 結論ヒトPYYのcDNAおよび遺伝子を単離し,その塩
基配列を決定した.ヒトPYY前駆体の構造,遺伝子構 造,alternative splicingにより作られる.2種類の mRNAの存在,遺伝子発現調鰍こ重要な領域が明ら かとなった. 一654一49