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中国沿岸部における農家自営兼業型中小企業に関する実証的研究

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Academic year: 2021

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Title

中国沿岸部における農家自営兼業型中小企業に関する実証

的研究( 内容の要旨(Summary) )

Author(s)

中川, 洋介

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(農学) 甲第429号

Issue Date

2007-03-13

Type

博士論文

Version

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/21361

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

名(本(国)籍)

の 種 類

記 番 号

学位授与年月

学位授与の要件

研究科及び専攻

研究指導を受けた大学

学 位

論 文 題 目

査 委

中 川 洋

(北海道)

博士(農学)

農博甲第429号

平成19年3月13日

学位規則第3条第1項該当

連合農学研究科

生物生産科学専攻

信州大学

中国沿岸部における農家自営兼業型中小企業に関す

る実証的研究 主査

信州大学

副査

信州大学

副査

岐阜大学

副査

静岡大学

副査

信州大学

一隆

睦 正 木

藤々部嶋池

小 小 授 授

授 授

教 教

文 の 内

の 要 旨 第二次世界大戦後の中国における「革命」と「改革」はすべて農村を基盤としている。 現在の経済発展は、人民公社時代の社隊企業、人民公社解体後の郷鎮企業、所有制改革に よる郷鎮企業から民営・私営企業の成立と発展という発展経路を辿り、農村を基盤にした 農村工業化によってもたらされた。年率10%以上を誇る中国の近年の経済発展の牽引役 ・担い手は民営・私営企業である。そうした農村を基盤にした民営・私営企業の多くが農 村戸籍あるいは農家・農民による「農家自営兼業型中小企業」であることを、中国沿岸部、 とりわけ漸江省・広東省の中小企業調査とそこでの労働者調査をもとに検討したのが本論 文である。とりわけ、かかる「農家自営兼業型中小企業」の成立と変動、そこでの「労働 者の意識と行動」を分析し、中国農村工業化の現代的存立構造を明らかにしている。 本論文が明らかにしたオリジナリティ4点は次以下のごとくである。 第一に、「現代中国プロト工業化」としての農村工業の性格規定。従来の「プロト工業 化論」は、ヨーロッパの産業革命以前における農村工業を「工業化の第一局面」と捉え、 農家世帯員の多就業・稼得構造、家庭工場、資源(人的資源を含む)の域内活用および商 品の地域外・国外供給を特徴としていたが、中国におけるプロト工業化にはそれとの質的 差違が存在することを明らかにしている。「現代中国プロト工業化」の特徴は、内陸部農 村から流入する無尽の如くの人的資源を基礎とし、外資と結合(合弁・合作、そしてアウ トソーシングの担い手等)且つ一部にダイレクトに世界市場と結びつくという形態のもの が多いことである。農村を基盤とし完全に脱農化しない農家自営兼業型中小企業が広汎に 成立し、経済発展の担い手であることは、中国経済発展の基本的特徴である。

(3)

-36-第二に、「農家自営兼業型中小企業」概念規定。所有制改革及び国有企業改革・郷鎮企 業改革によって国有・郷鎮企業の比重の低下と私営企業の発展が展開されたが、私有企業 の大部分が農村に存立基盤を有する農民・農村戸籍の経営者によるものである。北東アジ アの水田農耕地域、とりわけ中国おいては歴史的にも農家副業が存在し(多就業・稼得構 造)、所有制改革以降にかかる農家副業がベンチャー的自営業・家庭企業へ変質・変貌し た。すなわち、農村戸籍の農家・農民は完全に土地(農地)から離脱することなく、農村 土地承包権を保有し、自営業・工場を設立・展開させており、この点を筆者らは「農家自 営兼業型中小企業」概念を提唱している。 第三に、沿岸部農村の農家自営兼業型中小企業の「長江デルタ型」「珠江デルタ型」の

析出。中国沿岸部農村の農家自営兼業型中小企業の展開は、歴史的経過で形成された地域

個性に規定されており、それは「長江デルタ型」「珠江デルタ型」の二形態に大別されて いる。人民公社解体による社隊企業の郷鎮企業への転換と、所有制改革による郷鎮企業の 衰退という歴史的展開の中で形成された家庭工場的な企業が、「長江デルタ型」において は大部分を占め、その結果、いわゆる低品質かつ大量生産された単一商品が国内・世界市 場へと供給されている。「珠江デルタ型」は、香港・マカオという植民地開放都市を抱え、 国境処置・国境防衛の意味から重厚長大型国有企業の存在が極めて少なく、中小集体企業 ないしは民営・私営が発達し、それ自体がベンチャー企業的性格の来料加工等の企業で、 当初から「世界の工場」を目指した。すなわち、内陸部農村からの若年女子出稼ぎ労働力 の絶え間ない流入および暫定戸籍制度に規定された低賃金システム、外資・国内企業の積 極的な誘致システムとしての経済発展公司がそれを可能にした。外資導入による「世界の 工場」化は、珠江デルタの地元農民によるベンチャー的な工場の急速な展開を準備した。 第四に、「長江デルタ型」「珠江デルタ型」の差異=国内指向と世界指向。その差違は 労務管理においても質的差違としてあらわれ、長江デルタでは域外出稼ぎ労働力よりも国 有企業のリストラ労働力を前提にし、比較的高賃金かつ高い男性比率を特徴とし、出稼ぎ 労働者とリストラ労働者の二層の労働市場が形成されている。珠江デルタは、内陸農村か らの若年女子出稼ぎ労働力の絶え間ない流入と暫定戸籍制度の運用による低賃金を基底と し、外資企業サプライヤーとして成立し、若年女子出稼ぎ労働力は労働集約的企業形態に 適合的な存在で、離職率が極めて高く、「ネオ・テーラー的労務管理」に類似した労務管 理が成立している。 農家自営兼業型中小企業の現段階は、「淘汰・再編・転換期」の過渡的な段階であり、 大きく変貌としている。構造変動下の農家自営兼業型中小企業の解明は、中国型経済発展 論の一分野を拓くものといえる。

果 の 要 旨

第二次世界大戦後の中国における「革命」と「改革」はすべて農村を基盤としでいる。

現在の経済発展は、人民公社時代の社隊企業、人民公社解体後の郷鎮企業、所有制改革

による郷鎮企業から民営一私営企業の成立と発展という発展経路を辿り、農村を基盤に

した農村工業化によってもたらされた。年率10%以上を誇る中国の近年の経済発展の牽

引役・担い手は民営・私営企業である。そうした農村を基盤にした民営・私営企業の多

くが農村戸籍あるいは農家・農民による「農家自営兼業型中小企業」であることを、中

国沿岸部、とりわけ漸江省・広東省の中小企業調査とそこでの労働者調査をもとに検討

(4)

-37-したのが本論文である。とりわけ、かかる「農家自営兼業型中小企業」の成立と変動、

そこでの「労働者の意識と行動」を分析し、中国農村工業化の現代的存立構造を明らか

にしている。

本論文のオリジナリティは次以下の点である。

第一に、「現代中国プロト工業化」としての農村工業の性格規定をおこなった。「現

代中国プロト工業化」の特徴は、内陸部農村から流入する無尽の如くの人的資源を基礎

とし、外資と結合(合弁・合作、そしてアウトソーシングの担い手等)且つ一部にダイ

レクトに世界市場と結びつくという形態のものが多く、農村を基盤とし完全に脱農化し

ない農家自営兼業型中小企業が広汎に成立していることである。

第二に、「農家自営兼業型中小企業」概念規定をおこなった。所有制改革及び国有企

業改革・郷鎮企業改革によって国有・郷鎮企業の比重の低下と私営企業の発展が展開さ

れたが、私有企業の大部分が農村に存立基盤を有する農民・農村戸籍の経営者によるも

のである。北東アジアの水田農耕地域、とりわけ中国おいては歴史的にも農家副業が存

在し(多就業・稼得構造)、所有制改革以降にかかる農家副業がベンチャー的自営業・

家庭企業へ変質・変貌した。すなわち、農村戸籍の農家・農民は完全に土地(農地)か

ら離脱することなく、農村土地承包権を保有し、自営業・工場を設立・展開させている。

第三に、沿岸知農村の農家自営兼業型中小企業の「長江デルタ型」と「珠江デルタ型」

を析出した。公社解体による社隊企業の郷鎮企業への転換と、所有制改革による郷鎮企

業の衰退という歴史的展開の中で形成された家庭工場的な企業が、「長江デルタ型」に

おいては大部分を占め、その結果、いわゆる低品質かつ大量生産された単一商品が国内・

世界市場へと供給されている。また、域外出稼ぎ労働力よりも国有企業のリストラ労働

力を前提にし、比較的高賃金かつ高い男性比率を特徴とし、出稼ぎ労働者とリストラ労

働者の二層の労働市場が形成されている。「珠江デルタ型」は、香港・マカオという植

民地開放都市を抱え、国境処置・国境防衛の意味から重厚長大型国有企業の存在が極め

て少なく、中小集体企業ないしは民営・私営が発達し、それ自体がベンチャー企業的性

格の来料加工等の企業で、当初から「世界の工場」を目指した。すなわち、内陸部農村

からの若年女子出稼ぎ労働力の絶え間ない流入および暫定戸籍制度に規定された低賃金

システム、外資・国内企業の積極的な誘致システムとしての経済発展公司がそれを可能

にした。外資導入による「世界の工場」化は、珠江デルタの地元農民によるベンチャー

的な工場の急速な展開を準備した。また内陸農村からの若年女子出稼ぎ労働力の絶え間

ない流入と暫定戸籍制度の運用による低賃金を基底とし、外資企業サプライヤーとして

の成立し、若年女子出稼ぎ労働力は労働集約的企業形態に適合的な存在で、離職率が極

めて高く、「ネオ・テーラー的労務管理」に類似した労務管理が成立している。

農家自営兼業型中小企業の現段階は、「淘汰・再編・転換期」の過渡的な段階であり、

大きく変貌としている。

以上について、審査員一同、本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学位論文と

して十分価値あるものと認めた。

【基礎となる学術論文】

1.

中川洋介・加藤光一・李広志・劉永嵐「中国漸江省における農戸自営兼業型

中小企業の成立と変動」『農業・食料経済研究』第52巻2号、p.1∼p.13、2006

年6月。

2.

中川洋介・加藤光一・小坂直人「中国・華南における経済発展公司の分配シ

ステム」『公益事業研究』(受理・印刷中)

参照

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